説明

液晶表示素子の製造方法

【課題】液晶がシール材によって汚染されることなく、セルギャップ調整を容易に行うことができ、生産性を向上できる液晶表示素子の製造方法を提供する。
【解決手段】複数の画素電極3が形成された表示画素領域4を有する液晶駆動基板6に、表示画素領域4を囲うように光硬化性を有するシール材21を環状に塗布する。次に表示画素領域4上に液晶23を供給する。次に透明電極13が形成された透明電極基板15と液晶駆動基板6とを、複数の画素電極3と透明電極13とが向かい合い、かつ液晶23とシール材21とが互いに接触しないようにして、シール材21を介して貼り合わせる。次にシール材21の内周表層部A21に所定照度の光UV1を照射する。次に透明電極基板15と液晶駆動基板6とのセルギャップ調整を行う。次にシール材21全体に所定照度よりも高い照度の光UV2を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子は、プロジェクタ、プロジェクションテレビ、ヘッドマウントディスプレイ等のディスプレイ分野に広く用いられている。
【0003】
ここで、液晶表示素子の一般的な製造方法について説明する。
【0004】
まず、液晶駆動基板又は透明電極基板の少なくとも一方に、素子毎にシール材を不連続部を有して環状に塗布する。
次に、液晶駆動基板と透明電極基板とをシール材を介して貼り合わせる。
さらに、貼り合わされた液晶駆動基板及び透明電極基板を素子毎に分断する。
上述の不連続部は液晶を液晶駆動基板と透明電極基板との間隙に注入するための注入口となる。
【0005】
次に、素子毎に、減圧環境下で液晶を注入口から上記間隙に注入する。
さらに、素子毎に、セルギャップ調整を行った後、注入口を封止剤で封止する。
以上の工程により、液晶表示素子が作製される。
【0006】
しかしながら、上述した液晶表示素子の製造方法では、分断された素子毎に減圧環境下の状態にして液晶の注入をそれぞれ行ったり、注入口を封止剤で素子毎に封止するため、生産性が悪いといった問題を有する。
【0007】
上述の問題を解決するための手段の一例が特許文献1に開示されている。
特許文献1に開示されている手段は、液晶駆動基板又は透明電極基板に、素子毎にシール材を不連続部を有さずに環状に塗布し、さらに環状内部に液晶を滴下した後、減圧環境下で液晶駆動基板と透明電極基板とを貼り合わせ、さらにセルギャップ調整を行った後にシール材を硬化させるものである。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されているような手段では、液晶駆動基板と透明電極基板とを貼り合わせるときに、未硬化状態のシール材に液晶が接触するため、シール材が液晶中に溶出して液晶を汚染する場合がある。
液晶の汚染は液晶表示素子の表示品質を悪化させる要因となる。
【0009】
そこで、液晶の汚染を防止するための手段の一例が特許文献2に開示されている。
特許文献2に開示されている手段は、未硬化状態のシール材の表層部を全体に亘って半硬化させてから、液晶駆動基板と透明電極基板とを貼り合わせるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−148215号公報
【特許文献2】特開2008−293000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2に開示されている手段では、シール材の表層部全体を半硬化させるための硬化条件の設定が難しいという問題がある。
シール材の表層部の硬化が不十分だとシール材が液晶中に溶出して液晶を汚染してしまう。
一方、シール材の表層部を硬化しすぎると、硬化した表層部によってセルギャップ調整が困難になる。
【0012】
また、特許文献2に開示されている手段では、シール材が形成されていない側の基板に、硬化した表層部を突き破るための複数の凸部を形成する凸部形成工程が必要であり、液晶表示素子の製造工程が煩雑になるため、生産性が悪く、さらなる改善が望まれる。
【0013】
そこで、本発明は、液晶がシール材によって汚染されることなく、セルギャップ調整を容易に行うことができ、生産性を向上できる液晶表示素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明は次の液晶表示素子の製造方法を提供する。
1)複数の画素電極(3)が形成された表示画素領域(4)を有する液晶駆動基板(6)に、前記表示画素領域を囲うように光硬化性を有するシール材(21)を環状に塗布するシール材塗布工程と、前記シール材塗布工程の後に、前記表示画素領域上に液晶(23)を供給する液晶供給工程と、前記液晶供給工程の後に、透明電極(13)が形成された透明電極基板(15)と前記液晶駆動基板とを、前記複数の画素電極と前記透明電極とが向かい合い、かつ前記液晶と前記シール材とが互いに接触しないようにして、前記シール材を介して貼り合わせる貼り合わせ工程と、前記貼り合わせ工程の後に、前記シール材の内周表層部(A21)に所定照度の光(UV1)を照射する第1の光照射工程と、前記第1の光照射工程の後に、前記透明電極基板と前記液晶駆動基板とのセルギャップ調整を行うセルギャップ調整工程と、前記セルギャップ調整工程の後に、前記シール材全体に前記所定照度よりも高い照度の光(UV2)を照射する第2の光照射工程と、を有することを特徴とする液晶表示素子(30)の製造方法。
2)前記第1の光照射工程では、前記所定照度の光を、前記内周表層部に対応する領域が光透過領域(A25)である遮光マスク(25)を介して前記内周表層部に照射することを特徴とする1)記載の液晶表示素子の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、液晶がシール材によって汚染されることなく、セルギャップ調整を容易に行うことができ、生産性を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の液晶表示素子の製造方法の実施例を説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明の液晶表示素子の製造方法の実施例における液晶駆動基板作製工程を説明するための模式的断面図である。
【図3】本発明の液晶表示素子の製造方法の実施例における透明電極基板作製工程を説明するための模式的断面図である。
【図4】本発明の液晶表示素子の製造方法の実施例におけるシール材塗布工程を説明するための模式的断面図である。
【図5】本発明の液晶表示素子の製造方法の実施例における液晶滴下工程を説明するための模式的断面図である。
【図6】本発明の液晶表示素子の製造方法の実施例における基板貼り合わせ工程を説明するための模式的断面図である。
【図7】本発明の液晶表示素子の製造方法の実施例におけるシール材半硬化工程を説明するための模式的断面図である。
【図8】本発明の液晶表示素子の製造方法の実施例におけるシール材半硬化工程を説明するための模式的断面図である。
【図9】本発明の液晶表示素子の製造方法の実施例におけるセルギャップ調整工程を説明するための模式的断面図である。
【図10】本発明の液晶表示素子の製造方法の実施例におけるシール材本硬化工程を説明するための模式的断面図である。
【図11】本発明の液晶表示素子の製造方法の実施例における素子分離工程を説明するための模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により図1〜図11を用いて説明する。
本発明に係る液晶表示素子の製造方法の実施例では、1つの半導体ウエハ及び1つの透明基板から複数の液晶表示素子が一度に得られるが、図2〜図11では、説明をわかりやすくするために便宜上、工程の初めから1つの液晶表示素子のみを示すこととする。
【0018】
<実施例>
本実施例では、反射型の液晶表示素子の製造方法を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではなく、本発明に係る液晶表示素子の製造方法を透過型の液晶表示素子に適用することも可能である。
【0019】
[液晶駆動基板作製工程]
図1(ステップ1)及び図2に示すように、まず、半導体基板1に、後述する液晶23を画素電極3ごとに駆動させる駆動回路部2を周知の半導体プロセスを用いて形成する。
次に、半導体基板1上に複数の画素電極3を形成する。複数の画素電極3が形成された領域は画像を表示するための表示画素領域4である。
さらに、半導体基板1上に、複数の画素電極3(表示画素領域4)を覆うように配向膜5を形成して、液晶駆動基板6を作製する。
【0020】
実施例では、半導体基板1としてシリコン(Si)ウエハを用いた。
また、実施例では、画素電極3として、アルミニウム(Al)又は銀(Ag)の少なくともいずれかを主成分とする光反射型の電極を形成した。
また、実施例では、配向膜5としてラビング処理されたポリイミド膜、又は酸化シリコン膜等の無機配向膜を形成した。
【0021】
[透明電極基板作製工程]
図1(ステップ2)及び図3に示すように、光透過性を有する透明基板11の一面11a側に反射防止膜12を形成し、他面11b側に光透過性を有する透明電極13及び配向膜14を順次形成して、透明電極基板15を作製する。
【0022】
実施例では、透明基板11としてガラス基板を用いた。
また、実施例では、反射防止膜12として酸化アルミニウム膜等の無機酸化膜を形成した。
また、実施例では、透明電極13としてITO(酸化インジウムスズ)膜を形成した。
また、実施例では、配向膜14としてラビング処理されたポリイミド膜、又は酸化シリコン膜等の無機配向膜を形成した。
【0023】
上述した“液晶駆動基板作製工程”及び“透明電極基板作製工程”の順序は限定されるものではない。
“透明電極基板作製工程”後に“液晶駆動基板作製工程”を行ってもよく、“透明電極基板作製工程”と“液晶駆動基板作製工程”とを同時に並行して行ってもよい。
【0024】
[シール材塗布工程]
図1(ステップ3)及び図4に示すように、シール材21を液晶駆動基板6上に、表示画素領域4を囲うように環状に塗布する。
【0025】
実施例では、シール材21として、未硬化状態の樹脂21aに所定の直径を有する球状粒子であるスペーサ21bが分散したものを用いた。
また、実施例では、樹脂21aとして、紫外線と熱による併用硬化型の樹脂を用いた。
なお、シール材21は実施例に限定されるものではなく、少なくとも光硬化性を有する樹脂を含むものであればよい。
【0026】
また、実施例では、液晶駆動基板6側にシール材21を塗布したが、これに限定されるものではなく、例えば透明電極基板15側にシール材21を塗布してもよく、また液晶駆動基板6側及び透明電極基板15側にシール材21をそれぞれ塗布してもよい。
【0027】
[液晶滴下工程]
図1(ステップ4)及び図5に示すように、シール材21で囲われた表示画素領域4上に液晶23を所定量、滴下する。
【0028】
[基板貼り合わせ工程]
図1(ステップ5)及び図6に示すように、減圧環境下で、液晶駆動基板6と透明電極基板15とを、画素電極3(又は配向膜5)と透明電極13(又は配向膜14)とが対向するようにして貼り合わせる。
このとき、液晶23は、液晶駆動基板6の配向膜5及び透明電極基板15の配向膜14にそれぞれ接触しているが、未硬化状態のシール材21には接触していない。
【0029】
実施例では、所定の圧力に減圧された真空チャンバ内で液晶駆動基板6と透明電極基板15との貼り合わせを行った。
【0030】
[シール材半硬化工程]
図1(ステップ6)及び図7に示すように、減圧環境下において、遮光マスク25を用いて、環状に塗布されたシール材21の内周面を含む内周表層部A21に低照度の紫外線UV1を照射する。
遮光マスク25は、内周表層部A21に対応する領域が光透過領域A25となっており、光透過領域A25以外の領域は、シール材21の内周表層部A21以外の領域B21及び表示画素領域4に紫外線UV1が照射されないように遮光領域B25となっている。
【0031】
低照度の紫外線UV1が照射された内周表層部A21(樹脂21a)は半硬化状態になる(図8参照)。
ここでいう半硬化状態とは、液晶23がシール材21に接触した際にシール材21(樹脂21a)が液晶23中に溶出しない程度に硬化した状態をいう。
【0032】
このとき、シール材21において、半硬化状態とされた内周表層部A21以外の領域B21(樹脂21a)は未硬化状態である。
また、このとき、液晶23は、シール材21の半硬化状態とされた内周表層部A21とは接触していない。
また、このとき、液晶駆動基板6,透明電極基板15,シール材21,及び液晶23によって囲まれた空隙Sは、減圧された閉空間となっている。
【0033】
[セルギャップ調整工程]
図1(ステップ7)及び図9に示すように、大気圧環境下で、液晶駆動基板6と透明電極基板15とのセルギャップ及びその分布範囲が所定の値及び所定の分布範囲となるようにセルギャップ調整を行う。
このセルギャップ調整の際に、液晶23は外周部に向かって広がるため、減圧状態の空隙Sは液晶23で充填される。
【0034】
セルギャップ調整の際、液晶23はシール材21の内周表層部A21に接触するが、内周表層部A21(樹脂21a)は半硬化状態にあるため、シール材21(樹脂21a)が液晶23中に溶出することを防止できる。
また、シール材半硬化工程で低照度の紫外線UV1を照射した際、内周表層部A21が所望の半硬化状態よりもさらに硬化が進んだ状態になってしまった場合においても、未硬化状態の領域B21のシール材21が外周方向に容易に広がるので、シール材21の形状は容易に変化する。このため、セルギャップ調整を容易に、かつ高精度に行うことができる。
また、セルギャップ調整の際、シール材21は外周部側で変形するものの、内周表層部A21は半硬化状態にあるので、内周部側ではほとんど変形しない。そのため、液晶23が充填される領域におけるセルギャップ調整による体積変化を抑制することができるので、セルギャップ調整を容易に、かつ高精度に行うことができる。
【0035】
[シール材本硬化工程]
図1(ステップ8)及び図10に示すように、遮光マスク27を用いて、表示画素領域4が遮光された状態で、シール材21全体に紫外線UV1よりも高照度の紫外線UV2を照射する。
遮光マスク27は、シール材21に対応する領域が光透過領域A27となっており、光透過領域A27以外の領域は、表示画素領域4に紫外線UV2が照射されないように遮光領域B27となっている。
【0036】
さらに、図1(ステップ9)及び図11に示すように、上記の液晶駆動基板6と透明電極基板15との貼り合わせ構造体29を所定の時間、所定の温度で加熱することにより、シール材21全体を本硬化させる。
ここでいう本硬化とは、硬化後のシール材21(樹脂21a)が所望の特性(例えば液晶駆動基板6及び透明電極基板15との密着強度や吸水率等)を有する状態になることをいう。
【0037】
[素子分離工程]
図1(ステップ10)に示すように、上記工程を経た貼り合わせ構造体29を素子毎に分断することにより、液晶表示素子30(図10参照)が一度に複数得られる。
【0038】
上述した液晶表示素子の製造方法によれば、特に、液晶と接触する側のシール材の内周表層部のみを半硬化させた状態でセルギャップ調整をした後に、シール材全体を本硬化させることにより、液晶がシール材によって汚染されることなく、セルギャップ調整を容易に行うことができ、また、硬化した表層部を突き破るための複数の凸部を形成する必要がないので生産性を向上できるという効果を奏します。
【0039】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよいのは言うまでもない。
【0040】
例えば、実施例では、シール材の内周面を含む内周表層部のみに紫外線UV1を照射するために遮光マスク25を用いたが、これに限定されるものではない。
遮光マスク25に替えて、光ファイバやレンズ等の光学部材を用い、紫外線UV1をスポット状に集光させてシール材の内周に沿って環状に走査させるようにしてもよいし、紫外線UV1をライン状に集光させてシール材の内周面を含む内周表層部のみを硬化するようにしてもよい。
【0041】
また、実施例では、表示画素領域を遮光してシール材全体に紫外線UV2を照射するために遮光マスク27を用いたが、これに限定されるものではない。
遮光マスク27に替えて、光ファイバやレンズ等の光学部材を用い、紫外線UV2をスポット状に集光させてシール材の内周に沿って環状に走査させるようにしてもよいし、紫外線UV2をライン状に集光させてシール材の内周面を含む内周表層部のみを硬化するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1_半導体基板
2_駆動回路部
3_画素電極
4_表示画素領域
5,14_配向膜
6_液晶駆動基板
11_透明基板、11a,11b_面
12_反射防止膜
13_透明電極
15_透明電極基板
21_シール材、21a_樹脂、21b_スペーサ
23_液晶
25,27_遮光マスク
29_貼り合わせ構造体
30_液晶表示素子
A21_内周表層部、UV1,UV2_紫外線、S_空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素電極が形成された表示画素領域を有する液晶駆動基板に、前記表示画素領域を囲うように光硬化性を有するシール材を環状に塗布するシール材塗布工程と、
前記シール材塗布工程の後に、前記表示画素領域上に液晶を供給する液晶供給工程と、
前記液晶供給工程の後に、透明電極が形成された透明電極基板と前記液晶駆動基板とを、前記複数の画素電極と前記透明電極とが向かい合い、かつ前記液晶と前記シール材とが互いに接触しないようにして、前記シール材を介して貼り合わせる貼り合わせ工程と、
前記貼り合わせ工程の後に、前記シール材の内周表層部に所定照度の光を照射する第1の光照射工程と、
前記第1の光照射工程の後に、前記透明電極基板と前記液晶駆動基板とのセルギャップ調整を行うセルギャップ調整工程と、
前記セルギャップ調整工程の後に、前記シール材全体に前記所定照度よりも高い照度の光を照射する第2の光照射工程と、
を有することを特徴とする液晶表示素子の製造方法。
【請求項2】
前記第1の光照射工程では、前記所定照度の光を、前記内周表層部に対応する領域が光透過領域である遮光マスクを介して前記内周表層部に照射することを特徴とする請求項1記載の液晶表示素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−170024(P2011−170024A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32328(P2010−32328)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(308036402)JVC・ケンウッド・ホールディングス株式会社 (1,152)
【Fターム(参考)】