説明

液晶表示素子の製造方法

【課題】視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、表示特性および長期信頼性に優れる液晶表示素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】上記液晶表示素子の製造方法は、導電膜を有する一対の基板の該導電膜上に、それぞれ、(A)下記式(A−I)


(式(A−I)中、Rは水素原子またはメチル基であり、YおよびYは、それぞれ独立に、酸素原子または硫黄原子である。)
で表される基を有するポリアミック酸および/またはポリイミド、ならびに(B)有機溶媒を含有する重合体組成物を塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程を経ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子の製造方法に関する。さらに詳しくは、視野角が広く、応答速度の速い液晶表示素子を製造するための新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子のうち、垂直配向モードとして従来知られているMVA(Multi−Domain Vertical Alignment)型パネルは、液晶パネル中に突起物を形成し、これにより液晶分子の倒れ込み方向を規制することにより、視野角の拡大を図っている。しかし、この方式によると、突起物に由来する透過率およびコントラストの不足が不可避であり、さらに液晶分子の応答速度が遅いという問題がある。
近年、上記の如きMVA型パネルの問題点を解決すべく、PSA(Polymer Sustained Alignment)モードが提案された。PSAモードは、パターン状導電膜付き基板およびパターンを有さない導電膜付き基板からなる一対の基板の間隙、あるいは2枚のパターン状導電膜付き基板からなる一対の基板の間隙に重合性の化合物を含有する液晶組成物を狭持し、導電膜間に電圧を印加した状態で紫外線を照射して重合性化合物を重合し、これによりプレチルト角特性を発現して液晶の配向方向を制御しようとする技術である。この技術によると、導電膜を特定の構成とすることにより視野角の拡大および液晶分子応答の高速化を図ることができ、MVA型パネルにおいて不可避であった透過率およびコントラストの不足の問題も解消される。しかしながらPSAモードでは、前記重合性化合物の重合のために例えば100,000J/mといった多量の紫外線の照射が必要であり、そのため液晶分子が分解する不具合が生ずるほか、紫外線照射によっても重合しなかった未反応化合物が液晶層中に残存することとなり、これらが相俟って表示ムラが発生し、電圧保持特性に悪影響を及ぼし、あるいはパネルの長期信頼性に問題が生じることが明らかとなり、未だ実用には至っていない。
これらに対し非特許文献1は、反応性メソゲンを含有するポリイミド系液晶配向剤から形成された液晶配向膜を用いる方法を提案している。非特許文献1によると、かかる方法により形成された液晶配向膜を具備する液晶表示素子は、液晶分子の応答が高速であるという。しかしながら非特許文献1には、いかなる反応性メソゲンをいかなる量で使用すべきかについての指針は全く記載されておらず、また必要な紫外線照射量も依然として多く、表示特性、特に電圧保持特性に関する懸念は払拭されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−107544号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Y.−J. Lee et. al. SID 09 DIGEST, p. 666(2009)
【非特許文献2】T. J. Scheffer et. al. J. Appl. Phys. vo. 19, p. 2013(1980)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、表示特性および長期信頼性に優れる液晶表示素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、本発明の上記課題は、
導電膜を有する一対の基板の該導電膜上に、それぞれ、
(A)下記式(A−I)
【0007】
【化1】

【0008】
(式(A−I)中、Rは水素原子またはメチル基であり、YおよびYは、それぞれ独立に、酸素原子または硫黄原子である。)
で表される基を有するポリアミック酸および
上記式(A−I)で表される基を有するポリイミド
よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体、ならびに
(B)有機溶媒
を含有する重合体組成物を塗布して塗膜を形成し、
前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、
前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程を経る液晶表示素子の製造方法によって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によって製造された液晶表示素子は、視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、十分な透過率およびコントラストを示し、表示特定に優れるうえ、長時間連続駆動しても表示特性が損なわれることがない。
また、本発明の方法によると、照射に必要な光の量が少なくてすむため、液晶分子分解の問題がなく、液晶表示素子の製造コストの削減にも資する。
従って、本発明の方法により製造された液晶表示素子は、性能面およびコスト面の双方において従来知られている液晶表示素子に勝り、種々の用途に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例および比較例にて製造した、パターニングされた透明導電膜を有する液晶セルにおける透明導電膜のパターンを示す説明図である。
【図2】実施例にて製造した、パターニングされた透明導電膜を有する液晶セルにおける透明導電膜のパターンを示す説明図である。
【図3】実施例にて製造した、パターニングされた透明導電膜を有する液晶セルにおける透明導電膜のパターンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<重合体組成物>
本発明の方法において用いられる重合体組成物は、
上記式(A−I)で表される基を有するポリアミック酸および
上記式(A−I)で表される基を有するポリイミド
よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体(以下、「重合体(A)」という。)、ならびに
(B)有機溶媒
を含有する。
[重合体(A)]
本発明で用いられる重合体(A)は、上記式(A−I)で表される基を有する。上記式(A−I)におけるYおよびYは、それぞれ、酸素原子であることが好ましい。
重合体(A)は、上記式(A−I)で表される基を0.4〜3.0ミリモル/gの範囲で含有することが好ましく、1.0〜2.5ミリモル/gの範囲で含有することがより好ましい。
重合体(A)は、上記式(A−I)で表される基のほかに、下記式(P)
【0012】
【化2】

【0013】
(式(P)中、Rは炭素数4〜40のアルキル基もしくは炭素数4〜40のフルオロアルキル基であるか、またはステロイド骨格を有する炭素数17〜51の炭化水素基であり;
は単結合、−O−、−COO−、−OCO−(ただし以上において、「*」を付した結合手がR側である。)であり、
IIはシクロへキシレン基またはフェニレン基であり、
IIは単結合または−(CHn5−(ただし、「*」を付した結合手がR側であり、n5は1〜5の整数である。)であり、
n1は1〜5の整数であり、
ただしn1が2以上であるとき、複数存在するRIIおよびZIIは、それぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよく、
n2は0または1であり;
III−O−、−COO−または−OCO−(ただし、「*」を付した結合手がR側である。)であり、
n3は0〜2の整数であり、
n4は0または1である。)
で表される基をさらに有するものであることが好ましい。
上記式(P)におけるRの炭素数4〜40のアルキル基としては、炭素数6〜40の直鎖のアルキル基が好ましく、具体的には例えばn−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ステアリル基などを;
炭素数4〜40のフルオロアルキル基としては、炭素数4〜20の直鎖のフルオロアルキル基が好ましく、具体的には例えば3−(トリフルオロメチル)プロピル基、4−(トリフルオロメチル)ブチル基、6−(トリフルオロメチル)ヘキシル基、10−(トリフルオロメチル)デシル基、3−(ペンタフルオロエチル)プロピル基、4−(ペンタフルオロエチル)ブチル基、8−(ペンタフルオロエチル)オクチル基などを;
ステロイド骨格を有する17〜51の炭化水素基としては、例えばコレスタニル基、コレステニル基、ラノスタニル基などを、それぞれ挙げることができる。
【0014】
上記式(P)におけるRIIのシクロへキシレン基およびフェニレン基は、それぞれ、1,4−シクロへキシレン基および1,4−フェニレン基であることが好ましい。
上記式(P)におけるn1は、1〜4の整数であることが好ましい。
上記式(P)において−(RII−ZIIn1−で表される2価の基としては、n1が1である場合として、例えば1,4−フェニレン基、1,2−シクロへキシレン基などを;
n1が2である場合として、例えば4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロへキシレン基、下記式
【0015】
【化3】

【0016】
(上記式中、「*」を付した結合手がR側である。)
のそれぞれで表される基などを;
n1が3である場合として下記式
【0017】
【化4】

【0018】
(上記式中、「*」を付した結合手がR側である。)
で表される基などを;
n1が4である場合として下記式
【0019】
【化5】

【0020】
(上記式中、「*」を付した結合手がR側である。)
で表される基などを、それぞれ好ましいものとして挙げることができる。
上記式(P)におけるn3は2であることが好ましい。ZII−(CHn5−である場合のn5としては1または2であることが好ましい。
重合体(A)は、上記式(P)で表される基を0.7ミリモル/g以下の範囲で含有することが好ましく、0.1〜0.5ミリモル/gの範囲で含有することがより好ましい。
【0021】
重合体(A)は、上記の要件を満たすものである限り特に限定されるものではないが、例えば
(A−1)テトラカルボン酸二無水物と
上記式(A−I)で表される基および2つのアミノ基を有する化合物を含むジアミンと
を反応させて得られるポリアミック酸(以下、「重合体(A−1)」という。)、
(A−2)上記ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド(以下、「重合体(A−2)」という。)、
(A−3)テトラカルボン酸二無水物と
カルボキシル基および2つのアミノ基を有する化合物を含むジアミンと
を反応させて得られるポリアミック酸を
上記式(A−I)で表される基およびエポキシ基を有する化合物と反応させて得られる重合体(以下、「重合体(A−3)」という。)、ならびに
(A−4)テトラカルボン酸二無水物と
カルボキシル基および2つのアミノ基を有する化合物を含むジアミンと
を反応させて得られるポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドを
上記式(A−I)で表される基およびエポキシ基を有する化合物と反応させて得られる重合体(以下、「重合体(A−4)」という。)
よりなる群から選択される少なくとも1種であることができる。
【0022】
{重合体(A−1)}
上記重合体(A−1)は、
テトラカルボン酸二無水物と
上記式(A−I)で表される基および2つのアミノ基を有する化合物(以下、「ジアミン(A−I)」という。)を含むジアミンと
を反応させることにより合成することができる。ここでジアミンとして、上記ジアミン(A−I)のほかに、上記式(P)で表される基および2つのアミノ基を有する化合物(以下、「ジアミン(P)」という。)をも含むジアミンを用いることにより、上記式(A−I)で表される基および上記式(P)で表される基の双方を有する重合体(A−1)を得ることができる。
【0023】
重合体(A−1)を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオンなどを;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物などを、それぞれ挙げることができるほか、特願2009−157556号に記載されたテトラカルボン酸二無水物を使用してもよい。
前記重合体(A−1)を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、これらのうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物のみを用いるか、脂環式テトラカルボン酸二無水物と芳香族テトラカルボン酸二無水物との混合物を用いることが好ましい。後者の場合、全テトラカルボン酸二無水物中に占める脂環式テトラカルボン酸二無水物の割合は、20モル%以上とすることが好ましく、40モル%以上とすることがより好ましい。
【0024】
重合体(A−1)を合成するために用いられるジアミンは、上記ジアミン(A−I)を含むものであり、好ましくはさらにジアミン(P)を含む。
ジアミン(A−I)としては、下記式(A−I−1)
【0025】
【化6】

【0026】
(式(A−I−1)中、Rは上記式(A−I)におけるのと同義であり、Xは単結合、酸素原子または−COO−(ただし、「*」を付した結合手がベンゼン環と結合する。)である。)
で表される構造および2つのアミノ基を有する化合物が好ましく、その具体例として例えば3,5−ジアミノ(2’−アクリロイルオキシ)エチルベンゾエート、3,5−ジアミノ(2’−メタクリロイルオキシ)エチルベンゾエート、4,4’−ビス(2−(2’−アクリロイルオキシ)エチル−4−アミノ−フェノキシ)−ビフェニル)、4,4’−ビス(2−(2’−メタクリロイルオキシ)エチル−4−アミノ−フェノキシ)−ビフェニル)、2,4−ジアミノ(2’−アクリロイルオキシ)エトキシベンゼン、2,4−ジアミノ(2’−メタクリロイルオキシ)エトキシベンゼンなどを挙げることができ、これらから選択される少なくとも1種を使用することができる。ジアミン(A−I)としては、3,5−ジアミノ(2’−メタクリロイルオキシ)エチルベンゾエートを使用することが好ましい。
【0027】
上記ジアミン(P)としては、上記式(P)表される基を有する芳香族ジアミンであることが好ましく、その具体例として例えばドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニルなどを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることが好ましい。本発明における特定ジアミンとしては、特にヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼンおよびコレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼンよりなる群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0028】
重合体(A−1)を合成するために用いられるジアミンとしては、
上記の如きジアミン(A−I)のみ、もしくはジアミン(A−I)とジアミン(P)のみを使用してもよく、または
ジアミン(A−I)、もしくはジアミン(A−I)とジアミン(P)のほかにその他のジアミンを併用してもよい。
ここで使用することのできるその他のジアミンは、上記式(A−I)で表される基および上記式(P)表される基の双方ともを有さないジアミン(以下、「その他のジアミン(1)」という。)であり、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどであって上記ジアミン(A−I)またはジアミン(P)に該当しないものである。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えば1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
【0029】
芳香族ジアミンとして、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジンなどを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを、それぞれ挙げることができるほか、後述のジアミン(C)を使用することができ、さらに特願2009−157556号に記載されたジアミンを使用してもよい。
その他のジアミン(1)としては、これらのうちの1種以上を使用することができる。
【0030】
重合体(A−1)を合成するために用いられるジアミンは、上記の如きジアミン(A−I)を、全ジアミンに対して、20モル%以上含むものであることが好ましく、30〜80モル%含むものであることがより好ましく、特に40〜70モル%含むものであることが好ましい。
重合体(A−1)を合成するために用いられるジアミンは、上記の如きジアミン(P)を、全ジアミンに対して、70モル%以下の範囲で含むものであることが好ましく、10〜60モル%含むものであることがより好ましく、特に20〜50モル%含むものであることが好ましい。
重合体(A−1)を合成するために用いられるジアミンは、上記の如きその他のジアミン(1)を、全ジアミンに対して、70モル%以下の範囲で含むものであることが好ましく、10〜60モル%含むものであることがより好ましく、特に10〜50モル%含むものであることが好ましい。
重合体(A−1)の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
【0031】
ここで重合体(A−1)を合成するに際して、上記の如きテトラカルボン酸二無水物およびジアミンとともに、適当な分子量調節剤を用いて末端修飾型の重合体を合成することとしてもよい。かかる末端修飾型の重合体とすることにより、本発明の効果を損なうことなく重合体組成物の塗布性(印刷性)をより改善することができる。
前記分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを挙げることができる。これらの具体例としては、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを;
モノアミン化合物として、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミンなどを;
モノイソシアネート化合物として、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを、それぞれ挙げることができる。
分子量調節剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物およびジアミンの合計100重量部に対して、10重量部以下とすることが好ましい。
【0032】
重合体(A−1)の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において、好ましくは−20℃〜150℃、より好ましくは0〜100℃において、好ましくは0.1〜24時間、より好ましくは0.5〜12時間行われる。
ここで、有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの非プロトン性極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール性溶媒を挙げることができる。有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物およびジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して0.1〜30重量%になるような量であることが好ましい。
以上のようにして、重合体(A−1)を溶解してなる反応溶液が得られる。
この反応溶液はそのまま重合体組成物の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれる重合体(A−1)を単離したうえで重合体組成物の調製に供してもよく、または単離した重合体(A−1)を精製したうえで重合体組成物の調製に供してもよい。この重合体(A−1)を脱水閉環して重合体(A−2)とする場合(後述)には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれる重合体(A−1)を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、または単離した重合体(A−1)を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。重合体(A−1)の単離および精製は公知の方法に従って行うことができる。
【0033】
{重合体(A−2)}
上記重合体(A−2)は、上記の如くして合成された重合体(A−1)であるポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。ここで前駆体である重合体(A−1)として、上記ジアミン(A−I)のほかに、上記式(P)で表される基を有する重合体を用いることにより、上記式(A−I)で表される基および上記式(P)で表される基の双方を有する重合体(A−2)を得ることができる。
本発明における重合体(A−2)は、重合体(A−1)が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造が併存する部分イミド化物であってもよい。本発明における重合体(A−2)は、そのイミド化率が40%以上であることが好ましい。このイミド化率は、重合体(A−2)であるイミド化重合体のアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。
【0034】
重合体(A−1)の脱水閉環は、好ましくは重合体(A−1)を加熱する方法により、または重合体(A−1)を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。
上記重合体(A−1)を溶解した溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、重合体(A−1)の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
このようにして重合体(A−2)を含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま重合体組成物の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除いたうえで重合体組成物の調製に供してもよく、重合体(A−2)を単離したうえで重合体組成物の調製に供してもよく、または単離した重合体(A−2)を精製したうえで重合体組成物の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
【0035】
{重合体(A−3)}
上記重合体(A−3)は、テトラカルボン酸二無水物と
カルボキシル基および2つのアミノ基を有する化合物を含むジアミン(以下、「ジアミン(C)」という。)と
を反応させて得られるポリアミック酸(以下、「重合体(A−3a)」という。)を
上記式(A−I)で表される基およびエポキシ基を有する化合物(以下、「化合物(E)」という。)と反応させることにより合成することができる。ここでジアミンとして、上記ジアミン(C)のほかに、上記の如きジアミン(P)をも含むジアミンを用いることにより、上記式(A−I)で表される基および上記式(P)で表される基の双方を有する重合体(A−2)を得ることができる。
重合体(A−3a)を合成するためのテトラカルボン酸二無水物としては、重合体(A−1)を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物として上記に例示したものを使用することができる。好ましいテトラカルボン酸二無水物の種類および好ましい使用割合も、重合体(A−1)の場合と同様である。
重合体(A−3a)を合成するために用いられるジアミン(C)としては、例えば3,5−ジアミノ安息香酸、1−(2,4−ジアミノフェニル)−ピペラジン−4−カルボン酸、4,4’−ジアミノビフェニル−2,2’−カルボン酸、3,5−ビス(4−アミノフェノキシ)安息香酸などを挙げることができ、これらから選択される少なくとも1種を使用することができる。
【0036】
重合体(A−3a)を合成するために好ましく用いられるジアミン(P)としては、重合体(A−1)を合成するために用いられるジアミン(P)として上記に例示したものを使用することができる。
重合体(A−3a)を合成するために用いられるジアミンとしては、
上記の如きジアミン(C)のみ、もしくはジアミン(C)とジアミン(P)のみを使用してもよく、または
ジアミン(C)、もしくはジアミン(C)とジアミン(P)のほかにその他のジアミンを併用してもよい。
ここで使用することのできるその他のジアミンは、上記式(C)で表される基および上記式(P)表される基の双方ともを有さないジアミン(以下、「その他のジアミン(2)」という。)であり、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどであって上記ジアミン(C)にもジアミン(P)にも該当しないものである。これらの例としては、その他のジアミン(1)の具体例として上記に例示した化合物のうち、ジアミン(C)に該当するものを除いた化合物を挙げることができるほか、ジアミン(A−I)も使用することができる。その他のジアミン(2)としては、これらのうちの1種以上を使用することができる。その他のジアミン(2)は、ジアミン(A−I)を含まないことが好ましい。
【0037】
重合体(A−3a)を合成するために用いられるジアミンは、上記の如きジアミン(C)を、全ジアミンに対して、30モル%以上含むものであることが好ましく、40〜90モル%含むものであることがより好ましく、特に50〜80モル%含むものであることが好ましい。
重合体(A−3a)を合成するために用いられるジアミンは、上記の如きジアミン(P)を、全ジアミンに対して、70モル%以下の範囲で含むものであることが好ましく、10〜60モル%含むものであることがより好ましく、特に15〜50モル%含むものであることが好ましい。
重合体(A−1)を合成するために用いられるジアミンは、上記の如きその他のジアミン(2)を、全ジアミンに対して、60モル%以下の範囲で含むものであることが好ましく、10〜50モル%含むものであることがより好ましく、特に10〜40モル%含むものであることが好ましい。
重合体(A−3a)の合成は、上記の如きテトラカルボン酸二無水物およびジアミンを使用するほかは、重合体(A−1)の合成と同様にして行うことができる。かくして得られる重合体(A−3a)を含有する溶液は、これをこのまま、または含有される重合体(A−3a)を単離、または単離および精製した後に、化合物(E)との反応に供すことができる。
【0038】
次いで、重合体(A−3a)を化合物(E)と反応させることにより、重合体(A−3)を得ることができる。
ここで使用される化合物(E)としては、エポキシ基としてオキシラニル基(1,2−エポキシ基)を有する化合物およびオキセタニル基(1,3−エポキシ基)の双方ともを使用することができる。オキシラニル基を有する化合物(E)としては、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルアクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、4−ヒドロキシブチルメタクリレートグリシジルエーテル、2−ヒドロキシエチルアクリレートグリシジルエーテル、2−ヒドロキシエチルメタクリレートグリシジルエーテル、3−ヒドロキシプロピルアクリレートグリシジルエーテル、3−ヒドロキシプロピルメタクリレートグリシジルエーテル、2−(4−ビニル−ベンジロキシメチル)−オキシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3−ビニル−7−オキサ−ビシクロ[4.1.0}ヘプタンなどを;
オキセタニル基を有する化合物(E)としては、例えば(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、3−アリロキシメチル−3−エチル−オキセタンなどを、それぞれ挙げることができ、これらから選択される少なくとも1種を使用することができる。本発明における化合物(E)としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルアクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、2−(4−ビニル−ベンジロキシメチル)−オキシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレートおよび3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0039】
化合物(E)の使用割合としては、重合体(A−3a)中の、ジアミン(C)に由来するカルボキシル基1モルに対して、好ましくは0.1〜1.0モルであり、より好ましくは0.4〜0.8モルである。
重合体(A−3a)と化合物(E)との反応は、好ましくは有機溶媒中で、必要に応じて触媒の存在下に行われる。
ここで使用される有機溶媒としては、重合体(A−1)の合成に使用される有機溶媒として上記に例示したのと同じ溶媒を使用することができる。有機溶媒の使用割合は、反応溶液の固形分濃度(反応溶液中の有機溶媒以外の成分の合計重量が反応溶液の全重量に占める割合)が5〜30重量%となる割合とすることが好ましい。
上記触媒としては、エポキシ基の開環反応を促進する触媒として働く3級アミン、4級アンモニウム塩、アルキル尿素、イミダゾール化合物などを使用することができる。これらの具体例としては、上記3級アミンとして、例えばジメチルベンジルアミンなどを;
上記4級アンモニウム塩として、例えばテトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、ヘキサメチルホスホロトリアミドなどを;
上記アルキル尿素として、例えば3−(3’,4’−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素などを;
上記イミダゾール化合物として、例えば2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどを、それぞれ挙げることができる。
触媒の使用割合は、使用する重合体(A−3a)の100重量部に対して10重量部以下とすることが好ましく、0.001〜2重量部とすることがより好ましい。ここで、重合体(A−3a)の合成に引き続いて重合体(A−3a)を含有する溶液に化合物(E)を加え、そのまま次段階の反応を行うことが、操作手順が簡単である点で好ましい。
【0040】
重合体(A−3a)と化合物(E)との反応温度は、好ましくは70〜110℃であり、より好ましくは75〜90℃である。反応時間は好ましくは2〜15時間であり、より好ましくは5〜10時間である。
なお、重合体(A−3a)と化合物(E)との反応において、化合物(E)の一部が重合体(A−3a)のアミック酸構造のカルボキシル基と反応しても、本発明の効果が損なわれるものではない。
このようにして重合体(A−3)を含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま重合体組成物の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除いたうえで重合体組成物の調製に供してもよく、て重合体(A−3)を単離したうえで重合体組成物の調製に供してもよく、または単離した重合体(A−3)を精製したうえで重合体組成物の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
【0041】
{重合体(A−4)}
上記重合体(A−4)は、テトラカルボン酸二無水物と
カルボキシル基および2つのアミノ基を有する化合物を含むジアミンと
を反応させて得られるポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド(以下、「重合体(A−4a)」という。)を
上記式(A−I)で表される基およびエポキシ基を有する化合物(E)と反応させることにより合成することができる。
上記重合体(A−4a)は、上記重合体(A−3a)を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。重合体(A−3a)を脱水閉環反応は、重合体(A−1)を脱水閉環して重合体(A−2)を得る場合として上記したところと同様にして行うことができる。重合体(A−4a)の好ましいイミド化率も、重合体(A−2)の場合と同様である。
かくして得られる重合体(A−4a)と化合物(E)との反応は、重合体(A−3a)と化合物(E)との反応として上記したところと同様にして行うことができる。
なお、重合体(A−4a)と化合物(E)との反応において、化合物(E)の一部が重合体(4−3a)に残存するアミック酸構造のカルボキシル基と反応しても、本発明の効果が損なわれるものではない。
このようにして得られた重合体(A−4)を含有する反応溶液は、これをそのまま重合体組成物の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除いたうえで重合体組成物の調製に供してもよく、て重合体(A−4)を単離したうえで重合体組成物の調製に供してもよく、または単離した重合体(A−4)を精製したうえで重合体組成物の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
【0042】
[その他の成分]
本発明で用いられる重合体組成物は、上記の如き重合体(A)と後述の(B)有機溶媒とを含有するが、本発明の効果を損なわない限り、これら以外にその他の成分を含有していてもよい。
かかるその他の成分としては、例えば上記重合体(A)以外の重合体(以下、「その他の重合体」という。)などを挙げることができる。
上記その他の重合体は、上記式(A−I)で表される基を持たない重合体であり、例えば上記式(A−I)で表される基を持たないポリアミック酸、ポリイミドなどを挙げることができる。
その他の重合体の使用割合としては、重合体の合計(重合体(A)およびその他の重合体の合計をいう。以下同じ。)に対して、95重量部以下であることが好ましく、85重量部以下であることがより好ましい。
【0043】
[(B)有機溶媒]
本発明における(C)有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを挙げることができる。
【0044】
[重合体組成物]
本発明において用いられる重合体組成物は、上記の如き重合体(A)、または重合体(A)と任意的に用いられるその他の成分とを、上記の如き(B)有機溶媒に溶解した溶液として調製されることが好ましい。
(B)有機溶媒の使用割合としては、重合体組成物の固形分濃度(重合体組成物中の(B)有機溶媒以外の成分の合計重量が重合体組成物の全重量に占める割合)が1〜15重量%となる割合とすることが好ましく、1.5〜8重量%となる割合とすることがより好ましい。
【0045】
<液晶表示素子の製造方法>
本発明の液晶表示素子の製造方法は、
導電膜を有する一対の基板の該導電膜上に、それぞれ、上記の如き重合体組成物を塗布して塗膜を形成し、
前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、
前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程を経ることを特徴とする。
ここで、基板としては例えばフロートガラス、ソーダガラスの如きガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートの如きプラスチックなどからなる透明基板などを用いることができる。
上記導電膜としては、透明導電膜を用いることが好ましく、例えばSnOからなるNESA(登録商標)膜、In−SnOからなるITO膜などを用いることができる。この導電膜は、それぞれ、複数の領域に区画されたパターン状導電膜であることが好ましい。このような導電膜構成とすれば、導電膜間に電圧を印加する際(後述)にこの各領域ごとに異なる電圧を印加することによって各領域ごとに液晶分子のプレチルト角の方向を変えることができ、これにより視野角特性をより広くすることが可能となる。
【0046】
かかる基板の該導電膜上に、重合体組成物を塗布するには、例えばロールコーター法、スピンナー法、印刷法、インクジェット法などの適宜の塗布方法によることができる。塗布後、該塗布面を、予備加熱(プレベーク)し、次いで焼成(ポストベーク)することにより塗膜を形成する。プレベーク条件は、例えば40〜120℃において0.1〜5分であり、ポストベーク条件は、好ましくは120〜300℃、より好ましくは150〜250℃において、好ましくは5〜200分、より好ましくは10〜100分である。ポストベーク後の塗膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
このようにして形成された塗膜はこれをそのまま次工程の液晶セルの製造に供してもよく、あるいは液晶セルの製造に先んじて必要に応じて塗膜面に対するラビング処理を行ってもよい。このラビング処理は、塗膜面に対して、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦ることにより行うことができる。ここで、特許文献1(特開平5−107544号公報)に記載されているように、一旦ラビング処理を行った後に塗膜面の一部にレジスト膜を形成し、さらに先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、領域ごとに異なるラビング方向とすることによって、得られる液晶表示素子の視界特性をさらに改善することが可能である。
次いで、前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成する。
ここで使用される液晶分子としては、負の誘電異方性を有するネマティック型液晶が好ましく、例えばジシアノベンゼン系液晶、ピリダジン系液晶、シッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶などを用いることができる。液晶分子の層の厚さは、1〜5μmとすることが好ましい。
【0047】
かかる液晶を用いて液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法を挙げることができる。
第一の方法としては、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。あるいは第二の方法として、液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、さらに液晶配向膜面上に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせるとともに液晶を基板の全面に押し広げ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。
その後、前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する。
ここで印加する電圧は、例えば5〜50Vの直流または交流とすることができる。
【0048】
照射する光としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線および可視光線を用いることができるが、300〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。照射光の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザーなどを使用することができる。前記の好ましい波長領域の紫外線は、前記光源を、例えばフィルター、回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。光の照射量としては、好ましくは1,000J/m以上100,000J/m未満であり、より好ましくは1,000〜50,000J/mである。従来知られているPSAモードの液晶表示素子の製造においては、100,000J/m程度の光を照射することが必要であったが、本発明の方法においては、光照射量を50,000J/m以下、さらに10,000J/m以下とした場合であっても所望の液晶表示素子を得ることができ、液晶表示素子の製造コストの削減に資するほか、強い光の照射に起因する電気特性の低下、長期信頼性の低下を回避することができる。
そして、上記のような処理を施した後の液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、液晶表示素子を得ることができる。ここで使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、またはH膜そのものからなる偏光板などを挙げることができる。
【実施例】
【0049】
<重合体(A)の合成例>
合成例1
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物110g(0.50モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン49g(0.15モル)、3,5−ジアミノ安息香酸49g(0.30モル)および3(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)コレスタン26g(0.05モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)800gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は60mPa・sであった。
上記で得られたポリアミック酸溶液にNMP1,800gを追加し、ピリジン80gおよび無水酢酸100gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶剤置換(本操作によりイミド化反応に使用したピリジンおよび無水酢酸を系外に除去した。以下同じ。)して、イミド化率約50%のポリイミドを含有する溶液を得た。
次いで、上記で得られたポリイミド溶液にグリシジルメタクリレート36g(0.25モル)を添加し、80℃で8時間反応を行うことにより、重合体(A−4−1)を約15重量%含有する溶液を得た。
【0050】
合成例2
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物110g(0.50モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン49g(0.15モル)、3,5−ジアミノ安息香酸49g(0.30モル)および3(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)コレスタン26g(0.05モル)をNMP800gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は60mPa・sであった。
上記で得られたポリアミック酸溶液にNMP1,800gを追加し、ピリジン80gおよび無水酢酸100gを添加して110℃で4時間脱水閉環を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶剤置換して、イミド化率約50%のポリイミドを含有する溶液を得た。
次いで、、上記で得られたポリイミド溶液に3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート49g(0.25モル)を添加し、80℃で8時間反応を行うことにより、重合体(A−4−2)を約15重量%含有する溶液を得た。
【0051】
合成例3
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物110g(0.50モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン16g(0.15モル)、3,5−ジアミノ(2’−メタクリロイルオキシ)エチルベンゾエート79g(0.30モル)および3(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)コレスタン26g(0.05モル)をNMP750gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は59mPa・sであった。
上記で得られたポリアミック酸溶液にNMP1,800gを追加し、ピリジン40gおよび無水酢酸51gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶剤置換することにより、イミド化率約50%の重合体(A−2−1)を約15重量%含有する溶液を得た。
得られた重合態溶液を少量分取し、NMPを加えて重合体濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は67mPa・sであった。
【0052】
<比較合成例>
比較合成例1
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物110g(0.50モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン49g(0.45モル)および3(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)コレスタン26g(0.05モル)をNMP750gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は58mPa・sであった。
上記で得られたポリアミック酸溶液にNMP1,800gを追加し、ピリジン40gおよび無水酢酸51gを添加して110℃で4時間脱水閉環を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶剤置換することにより、イミド化率約50%の重合体(a−1)を約15重量%含有する溶液を得た。
得られた重合体溶液を少量分取し、NMPを加えて重合体濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は69mPa・sであった。
<その他の重合体の合成>
合成例4
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物200g(1.0モル)およびジアミンとして2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル210g(1.0モル)をNMP370gおよびγ―ブチロラクトン3,300gからなる混合溶媒に溶解し、40℃で3時間反応を行うことにより、ポリアミック酸(a−2)を10重量%含有する溶液を得た。このポリアミック酸溶液の溶液粘度は160mPa・sであった。
【0053】
実施例1
<重合体組成物の調製>
重合体(A)として上記合成例1で得た重合体(A−4−1)を含有する溶液に、有機溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびブチルセロソルブ(BC)を加え、BC濃度が全有機溶媒に対して20重量%であり、固形分濃度が6.0重量%である溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いてろ過することにより、重合体組成物を調製した。
<液晶セルの製造>
上記で調製した重合体組成物を用いて、透明電極のパターン(2種類)および紫外線照射量(3水準)を変更して、計6個の液晶表示素子を製造し、下記のように評価した。
【0054】
[パターンなし透明電極を有する液晶セルの製造]
上記で調製した重合体組成物を、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いてITO膜からなる透明電極を有するガラス基板の透明電極面上に塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、150℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚600Åの塗膜を形成した。
この塗膜に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数400rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押しこみ長さ0.1mmでラビング処理を行った。その後、超純水中で1分間超音波洗浄を行ない、次いで100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
なお上記ラビング処理は、液晶の倒れ込みを制御し、配向分割を簡易な方法で行う目的で行った弱いラビング処理である。
【0055】
次に、上記一対の基板のうちの1枚につき、液晶配向膜を有する面の外縁に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック型液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより、液晶セルを製造した。
上記の操作を繰り返し行い、パターンなし透明電極を有する液晶セルを3個製造した。そのうちの1個はそのまま後述のプレチルト角の評価に供した。残りの2個の液晶セルについては、それぞれ下記の方法により導電膜間に電圧を印加した状態で光照射した後にプレチルト角および電圧保持率の評価に供した。
上記で得た液晶セルのうちの2個について、それぞれ電極間に周波数60Hzの交流10Vを印加し、液晶が駆動している状態で、光源にメタルハライドランプを使用した紫外腺照射装置を用いて、紫外線を10,000J/mまたは100,000J/mの照射量にて照射した。なおこの照射量は、波長365nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。
【0056】
[プレチルト角の評価]
上記で製造した各液晶セルについて、それぞれ非特許文献2(T. J. Scheffer et. al. J. Appl. Phys. vo. 19, p. 2013(1980))に記載の方法に準拠してHe−Neレーザー光を用いる結晶回転法により測定した液晶分子の基板面からの傾き角の値をプレチルト角とした。
光未照射の液晶セル、照射量10,000J/mの液晶セルおよび照射量100,000J/mの液晶セルのそれぞれのプレチルト角を表1に示した。
[電圧保持率の評価]
上記で製造した各液晶セルに対し、23℃において5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置としては(株)東陽テクニカ製、VHR−1を使用した。
照射量10,000J/mの液晶セルおよび照射量10,000J/mの液晶セルのそれぞれの電圧保持率を表1に示した。
【0057】
[パターニングされた透明電極を有する液晶セルの製造]
上記で調製した重合体組成物を、図1に示したようなスリット状にパターニングされ、複数の領域に区画されたITO電極をそれぞれ有するガラス基板2枚の各電極面上に液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いて塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、150℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚600Åの塗膜を形成した。この塗膜につき、超純水中で1分間超音波洗浄を行なった後、100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
次いで、上記一対の基板のうちの1枚の基板につき、液晶配向膜を有する面の外縁に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック型液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより、液晶セルを製造した。
上記の操作を繰り返し行い、パターニングされた透明電極を有する液晶セルを3個製造した。そのうちの1個はそのまま後述の応答速度の評価に供した。残りの2個の液晶セルについては、上記パターンなし透明電極を有する液晶セルの製造におけるのと同様の方法により、導電膜間に電圧を印加した状態で10,000J/mまたは100,000J/mの照射量にて光照射した後に応答速度の評価に供した。
なお、ここで用いた電極のパターンは、PSAモードにおける電極パターンと同種のパターンである。
【0058】
[応答速度の評価]
上記で製造した各液晶セルにつき、先ず電圧を印加せずに可視光ランプを照射して液晶セルを透過した光の輝度をフォトマルチメーターにて測定し、この値を相対透過率0%とした。次に液晶セルの電極間に交流60Vを5秒間印加したときの透過率を上記と同様にして測定し、この値を相対透過率100%とした。
このとき各液晶セルに対して交流60Vを印加したときに、相対透過率が10%から90%に移行するまでの時間を測定し、この時間を応答速度と定義して評価した。
光未照射の液晶セル、照射量10,000J/mの液晶セルおよび照射量100,000J/mの液晶セルのそれぞれの応答速度を表1に示した。
【0059】
実施例2〜4および比較例1
上記実施例1において、各成分の使用量をそれぞれ表1に記載のとおりとしたほかは、実施例1と同様にして重合体組成物を調製し、これを用いて各種液晶セルを製造して評価した。なお実施例3では重合体(A)とその他の重合体を併用し、比較例2では重合体としてその他の重合体のみを用いた。
評価結果は表1に示した。
【0060】
【表1】

【0061】
表1の結果から、本発明の方法においては、紫外線照射量を100,000J/m(PSAモードにおいて従来採用されてきた値である。)とすると得られるプレチルト角の程度が過剰となり、10,000J/mまたはそれ以下の照射量において適正なプレチルト角となることが分かる。また、照射量が少ない場合であっても十分に速い応答速度が得られており、さらに電圧保持率にも優れている。
従って、本発明の方法によれば、PSAモードのメリットを少ない光照射量で実現することができるから、高い光照射量に起因する表示ムラの発生、電圧保持特性の低下および長期信頼性の不足の懸念なしに、視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、透過率が高く、そしてコントラストが高い液晶表示素子を製造することができる。
さらに、上記実施例1〜4において使用した各重合体組成物を用い、ガラス基板の有するITO電極のパターンを変更したほかは実施例1と同様にして各種液晶セルを製造して評価した。いずれの重合体組成物を用いた場合も、図2に示したパターンおよび図3に示したパターンの双方において、実施例1〜4とそれぞれ同様の効果が得られた。
【符号の説明】
【0062】
1:ITO電極
2:スリット部
3:遮光膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電膜を有する一対の基板の該導電膜上に、それぞれ、
(A)下記式(A−I)
【化1】

(式(A−I)中、Rは水素原子またはメチル基であり、YおよびYは、それぞれ独立に、酸素原子または硫黄原子である。)
で表される基を有するポリアミック酸および
上記式(A−I)で表される基を有するポリイミド
よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体、ならびに
(B)有機溶媒
を含有する重合体組成物を塗布して塗膜を形成し、
前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、
前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程を経ることを特徴とする、液晶表示素子の製造方法。
【請求項2】
上記(A)重合体が、
(A−1)テトラカルボン酸二無水物と
上記式(A−I)で表される基および2つのアミノ基を有する化合物を含むジアミンと
を反応させて得られるポリアミック酸、
(A−2)上記ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド、
(A−3)テトラカルボン酸二無水物と
カルボキシル基および2つのアミノ基を有する化合物を含むジアミンと
を反応させて得られるポリアミック酸を
上記式(A−I)で表される基およびエポキシ基を有する化合物と反応させて得られる重合体、ならびに
(A−4)テトラカルボン酸二無水物と
カルボキシル基および2つのアミノ基を有する化合物を含むジアミンと
を反応させて得られるポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドを
上記式(A−I)で表される基およびエポキシ基を有する化合物と反応させて得られる重合体
よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項3】
上記(A)重合体が、下記式(P)
【化2】

(式(P)中、Rは炭素数4〜40のアルキル基もしくは炭素数4〜40のフルオロアルキル基であるか、またはステロイド骨格を有する炭素数17〜51の炭化水素基であり;
は単結合、−O−、−COO−、−OCO−(ただし以上において、「*」を付した結合手がR側である。)であり、
IIはシクロへキシレン基またはフェニレン基であり、
IIは単結合または−(CHn5−(ただし、「*」を付した結合手がR側であり、n5は1〜5の整数である。)であり、
n1は1〜5の整数であり、
ただしn1が2以上であるとき、複数存在するRIIおよびZIIは、それぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよく、
n2は0または1であり;
III−O−、−COO−または−OCO−(ただし、「*」を付した結合手がR側である。)であり、
n3は0〜2の整数であり、
n4は0または1である。)
で表される基をさらに有するものである、請求項1または2に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項4】
前記導電膜のそれぞれが、複数の領域に区画されたパターン状導電膜である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項5】
(A)上記式(A−I)で表される基を有するポリアミック酸および
上記式(A−I)で表される基を有するポリイミド
よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体、ならびに
(B)有機溶媒
を含有する重合体組成物であって、
導電膜を有する一対の基板の該導電膜上にそれぞれ塗膜を形成し、
前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、
前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程を経る液晶表示素子の製造方法において、
前記塗膜を形成するために使用されることを特徴とする、前記重合体組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製造方法によって製造されたことを特徴とする、液晶表示素子。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−186049(P2011−186049A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49173(P2010−49173)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】