説明

液晶表示素子の製造方法

【課題】液晶と液晶注入口封止剤の反応による輝度ムラを抑え、液晶表示素子の高温動作時に配向不良を発生させない液晶表示素子を提供する。
【解決手段】複数の画素電極を有する第一電極基板と該第一電極基板に相対する対向電極を有する第二電極基板を備え、前記第一電極基板と前記第二電極基板を所定の位置及び間隔で貼りあわせた後に、前記所定の間隔に液晶を封入し、液晶注入口封止剤にて封止を行ってなる液晶表示素子の製造方法であって、前記液晶注入口封止剤硬化時に、前記液晶と液晶注入口封止剤との反応部分を最低限に留めることを目的とした、前記液晶注入口封止剤の第1の熱硬化工程と、前記液晶注入口封止剤を完全に硬化させることにより、前記液晶表示素子の高温動作時に前記液晶注入口封止剤の未硬化部分の影響による配向不良を発生させないことを目的とした第2の熱硬化工程を有したことを特徴とした液晶表示素子の製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に液晶表示素子は一対の基板を所定の間隔を持つように封着された液晶セル内に、封着部の一部に設けられた液晶注入口から真空処理などの手法を利用して液晶を注入し、その後に液晶注入口を封止剤により封止して製造されている。従来、この液晶注入口の封止方法としては液晶注入口にエポキシ系などの有機接着剤を塗布する方法が行われているが、何れも機密性に欠けるため充分な信頼性を確保することが不可能であった。
【0003】
前記欠点を解決する方法として、特開昭51−34750号公報に示されているように液晶を注入した後、液晶セル側面に圧力を加えた状態でエポキシ系などの有機接着剤からなる封止剤を液晶注入口に塗布し、その後圧力を取り除くことによって封止剤の一部を液晶注入口内部及び液晶表示素子内に吸引して充分な機密性を得る技術がある。
【0004】
また、特開昭56−47022号公報に示されているように、封止剤の接着力を得るために封止剤がある程度硬化した時点で80℃から150℃程度に加熱することで、短時間で強い接着力を得る技術もある。
【0005】
前記のように、液晶注入口封止剤の硬化を行うためには熱硬化が必須である。さらに前記液晶注入後に配向安定を行うために熱処理により液晶を液体相にし、その後冷却により再度液晶相に戻すアニール処理が必要である。通常前記アニール処理と前記液晶注入口封止剤の熱硬化を同時に行う工程が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭51−34750号公報
【特許文献2】特開昭56−47022号公報
【0007】
図3は前記技術により、封止剤を硬化させた後の液晶表示素子の輝度分布を示す図であり、液晶表示素子輝度50%時の印加電圧をプロットした図である。
また、図3に用いた液晶表示素子はVAN(Vertical Alignment Nematic)液晶を用いた液晶表示素子であり、ノーマリーブラックである。
図4は図3の液晶表示素子を示した上面図であり、図3のプロットデータと位置的に相関を取った状態である。
図3のA部分は印加電圧値が他の部分より小さくなり、輝度ムラが生じていることが分かる。さらに図3のA部分は図4では注入口部分1にあたる。
【0008】
図4の注入口部分1では、液晶表示素子内の液晶(不図示)と液晶注入口封止剤2が反応を起こし、前記液晶表示素子注入口部分1での液晶の屈折率が変化したことにより輝度ムラを生じさせてしまっている。
【0009】
また、前記液晶と液晶注入口封止剤2の反応は前記注入口封止剤2の熱硬化時に生じるものであり、前記液晶と液晶注入口封止剤2の反応を生じさせないために前記注入口封止剤2の熱硬化を行わないと、前記液晶表示素子の高温動作時に前記注入口封止剤2の未硬化部分からの放出物により、前記液晶表示素子に配向不良が発生してしまう。
【0010】
前記液晶と液晶注入口封止剤2の反応は特にVAN液晶の高屈折率液晶使用時に多く見られる現象であり、前記液晶表示素子の高温動作時の配向不良発生を防止するためには前記液晶注入口封止剤2の完全硬化が必須であるが、前記液晶注入口封止剤2の完全硬化を行う際には前記液晶との反応が生じ、輝度ムラを発生させてしまう。
【発明の概要】
【0011】
複数の画素電極を有する第一電極基板と該第一電極基板に相対する対向電極を有する第二電極基板を備え、前記第一電極基板と前記第二電極基板を所定の位置及び間隔で貼りあわせた後に、前記所定の間隔に液晶を封入し、液晶注入口封止剤にて封止を行ってなる液晶表示素子の製造方法であって、前記液晶封止剤硬化時に、前記液晶と液晶注入口封止剤との反応部分を最低限に留めつつ、前記液晶注入口封止剤の硬化を行う工程と、前記液晶注入口封止剤を完全に硬化させることにより、前記液晶表示素子の高温動作時に前記液晶注入口封止剤の未硬化部分の影響による配向不良を発生させないことを目的とした第2の熱硬化工程を有した液晶表示素子の製造方法。
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図3に示すように、前記液晶注入口封止剤2を熱硬化により完全硬化を行うと、注入口部分1での液晶と液晶注入口封止剤2との反応による前記液晶の屈折率変化を原因とした輝度ムラが生じてしまう。
【0013】
また、前記液晶と液晶注入口封止剤2との反応を防止するために前記液晶注入口封止剤2への熱硬化を行わないと前記液晶表示素子の高温動作時に、前記液晶注入口封止剤2の未硬化部分からの放出物により、前記液晶表示素子に配向不良が生じ、その結果均一な表示が不可能となってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
複数の画素電極を有する第一電極基板と該第一電極基板に相対する対向電極を有する第二電極基板を備え、前記第一電極基板と前記第二電極基板を所定の位置及び間隔で貼りあわせた後に、前記所定の間隔に液晶を封入し、液晶注入口封止剤にて封止を行ってなる液晶表示素子の製造方法であって、前記液晶注入口封止剤硬化時に、前記液晶と液晶注入口封止剤との反応部分を最低限に留めることを目的とした、前記液晶注入口封止剤の第1の熱硬化工程と、前記液晶注入口封止剤を完全に硬化させることにより、前記液晶表示素子の高温動作時に前記液晶注入口封止剤の未硬化部分の影響による配向不良を発生させないことを目的とした第2の熱硬化工程を有したことを特徴とした液晶表示素子の製造方法とする。
【0015】
複数の画素電極を有する第一電極基板と該第一電極基板に相対する対向電極を有する第二電極基板を備え、前記第一電極基板と前記第二電極基板を所定の位置及び間隔で貼りあわせた後に、前記所定の間隔に液晶を封入し、液晶注入口封止剤にて封止を行ってなる液晶表示素子の製造方法であって、前記液晶の液体相転移温度及び前記液晶注入口封止剤硬化温度以上で保持時間をなくし、温度上昇、温度下降時に所定の時間を有する第1の熱硬化工程と
前記液晶の液体相転移温度及び前記液晶注入口封止剤硬化温度以上で且つ、前記液晶表示素子の高温動作時の補償温度以上で長時間の保持時間及び温度上昇、温度下降時に所定の時間とを有する第2の熱硬化工程を有したことを特徴とした液晶表示素子の製造方法とする。
【発明の効果】
【0016】
前記液晶注入口封止剤硬化時に、前記液晶と液晶注入口封止剤との反応部分を最低限に留めることを目的とした、前記液晶注入口封止剤の第1の熱硬化工程と、前記液晶注入口封止剤を完全に硬化させることにより、前記液晶表示素子の高温動作時に前記液晶注入口封止剤の未硬化部分の影響による配向不良を発生させないことを目的とした第2の熱硬化工程との2段階の熱硬化工程を行うことにより、前記液晶と液晶注入口封止剤との反応部分を最低限に抑えることにより前記液晶表示素子の輝度ムラを生じさせること無く、且つ、前記液晶注入口封止剤の完全硬化を行うことにより、前記液晶表示素子の高温動作時の配向不良を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の熱硬化工程を示した図で(A)は第1の熱硬化工程を示した図、(B)は第2の熱硬化工程を示した図
【図2】本発明により、液晶注入口封止剤を硬化させた後の液晶表示素子の輝度分布を示す図
【図3】先行技術により、液晶注入口封止剤を硬化させた後の液晶表示素子の輝度分布を示す図
【図4】図2、図3の液晶表示素子を示した上面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明の熱硬化工程を示した図であり、(A)は第1の熱硬化工程を示した図、(B)は第2の熱硬化工程を示した図である。縦軸が温度、横軸が時間を示している。第1の熱硬化工程では液晶と液晶注入口封止剤との反応部分を最低限に抑え、且つ前記液晶注入口封止剤の硬化を実施するために高温時3の保持時間をゼロにしている。また、短時間での熱負荷を生じさせないため温度上昇・温度下降時に所定の時間を設けている。本実施例では例えば液晶注入口封止剤にエポキシ系樹脂(例えばThreeBond社、TB3026)を用い、高温時3を130℃とし、温度上昇部分4を30分として、温度下降部分5を3時間とする。前記温度上昇、温度下降部分に所定の時間を設けることにより、前記液晶と前記液晶注入口封止剤との反応を遅延させている。
【0019】
第2の熱硬化工程では前記液晶注入口封止剤を完全に熱硬化させることで、前記液晶表示素子の高温動作時に、前記液晶注入口封止剤未硬化部分からの放出物による配向不良の発生を抑えることを目的としており、高温時3の保持時間を長時間に設定している。また、短時間での熱負荷を生じさせないため温度上昇・温度下降時に所定の時間を設けている。本実施例では例えば液晶注入口封止剤に前記エポキシ系樹脂を用い、高温時3を130℃とし、保持時間を30時間としている。さらに、温度上昇部分4を30分として、温度下降部分5を3時間とする。前記高温時3部分での長時間保持を行うことにより、前記液晶注入口封止剤を完全硬化させ液晶表示素子の高温動作時に未硬化部分からの放出物、例えば放出ガス等の発生を抑止することで、液晶表示素子の配向不良の発生するのを抑止している。
【0020】
前記のように熱硬化工程を2段階で行うことにより、下記の効果が得られる。
図1(A)の第1段階目の熱硬化工程は液晶の配向安定のためのアニール工程を兼ねており、また、液晶が液体相に転移する温度を熱硬化工程時高温部分としている、本実施例で130℃を用いていることは前記液晶(例えばメルク株式会社、MJ03869)の液体相転移温度が130℃以下であることを意味しており、確実にアニール処理が行えることを意味している。さらに前記高温部温度は前記液晶注入口封止剤の硬化温度以上である。第1段階目の熱硬化工程は前記液晶注入口封止剤の硬化範囲を最小限に抑えるための工程も兼ねており、本工程で前記液晶注入口封止剤の前記液晶との反応範囲が決定する。前記目的のため、第1段階目の熱硬化工程は前記液晶注入口封止剤硬化温度以上であり、且つ前記液晶の液体相に転移する温度以上である必要がある。また、熱負荷を温度上昇・温度下降に所定の時間を有することで、熱負荷を低減し前記液晶と前記液晶注入口封止剤の反応を抑える必要がある。
【0021】
図1(B)の第2段階目の熱硬化工程は前記液晶注入口封止剤の完全硬化および、硬化温度以下での配向不良発生防止を目的とした工程であり、前記高温部の保持時間を長時間有している。本実施例では130℃を使用しているが、これは130℃以下での動作時に配向不良を発生させないことを目的としている。本工程では高温時の保持時間を長時間とすることにより各材料(例えば、周辺シール剤、液晶注入口封止剤)の未硬化部分を無くしている。また、前記第1段階目の熱硬化工程で前記液晶注入口封止剤の硬化範囲を最小限に抑えているが、本工程での急激な熱負荷により硬化範囲が拡大することを防止するため、前記第1段階目の熱硬化工程と同様に温度上昇、温度下降に所定の時間を有している。
【0022】
本実施例で、熱硬化工程に2段階を用いていることは前記内容を踏まえてのことであり、前記液晶表示素子の高温動作時の配向不良防止を行う際には、前記液晶のアニール工程及び各材料の完全熱硬化に長時間保持が必須であるが、前記工程を1段階で行う際には前記液晶注入口封止剤硬化時に硬化温度以上での長時間保持が必要となり、結果前記液晶と前記液晶注入口封止剤反応部分の拡大に伴う輝度ムラを発生させてしまう。以上のことより、本発明では液晶アニール及び前記液晶注入口封止剤硬化を行う第1段階目と、前記液晶表示素子の高温動作時での配向不良対策熱硬化の第2段階目との2段階での熱硬化工程を用いている。本工程を用いることで、高温動作時の配向不良対策の高温長時間保持以前に、前記液晶注入口封止剤の硬化及び液晶アニール処理を行っているため、前記液晶及び前記液晶注入口封止剤の反応部分を拡大することなく未硬化部分の削減のみを行うことが可能である。
【0023】
図2は本発明により、封止剤を硬化させた後の液晶表示素子の輝度分布を示す図であり、液晶表示素子輝度50%時の印加電圧をプロットした図である。また、図2に用いた液晶表示素子はVAN(Vertical Alignment Nematic)液晶を用いた液晶表示素子であり、ノーマリーブラックである。図4は図2の液晶表示素子を示した上面図であり、図2のプロットデータと位置的に相関を取った状態である。図4の注入口部分1にあたる図2のA部分での輝度ムラが改善されていることが分かる。
【符号の説明】
【0024】
1 注入口部分
2 液晶注入口封止剤
3 熱硬化工程時高温部分
4 温度上昇部分
5 温度下降部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素電極を有する第一電極基板と該第一電極基板に相対する対向電極を有する第二電極基板を備え、前記第一電極基板と前記第二電極基板を所定の位置及び間隔で貼りあわせた後に、前記所定の間隔に液晶を封入し、液晶注入口封止剤にて封止を行ってなる液晶表示素子の製造方法であって、前記液晶封止剤硬化時に、前記液晶と液晶注入口封止剤との反応部分を最低限に留めることを目的とした、前記液晶注入口封止剤の第1の熱硬化工程と、前記液晶注入口封止剤を完全に硬化させることにより、前記液晶表示素子の高温動作時に前記液晶注入口封止剤の未硬化部分の影響による配向不良を発生させないことを目的とした第2の熱硬化工程を有したことを特徴とした液晶表示素子の製造方法。
【請求項2】
複数の画素電極を有する第一電極基板と該第一電極基板に相対する対向電極を有する第二電極基板を備え、前記第一電極基板と前記第二電極基板を所定の位置及び間隔で貼りあわせた後に、前記所定の間隔に液晶を封入し、液晶注入口封止剤にて封止を行ってなる液晶表示素子の製造方法であって、前記液晶の液体相転移温度及び前記液晶注入口封止剤硬化温度以上で保持時間をなくし、温度上昇、温度下降時に所定の時間を有する第1の熱硬化工程と、 前記液晶の液体相転移温度及び前記液晶注入口封止剤硬化温度以上で且つ、前記液晶表示素子の高温動作時の補償温度以上で長時間の保持時間及び温度上昇、温度下降時に所定の時間とを有する第2の熱硬化工程を有したことを特徴とした液晶表示素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−7899(P2011−7899A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149390(P2009−149390)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000166948)シチズンファインテックミヨタ株式会社 (438)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】