説明

液晶表示素子及びその製造方法

【課題】基板とシール材との界面付近で剥がれ等がなく、特に基板面に対して平行方向にかかる応力に対して界面剥がれ等の生じることのない液晶表示素子を提供する。
【解決手段】二つの基板間に設けられたシール材301と、前記シール材に囲まれた封止領域に封入された液晶303とを備え、前記シール材が接する基板面には突起304が設けられている液晶表示素子、及び、フォトリソグラフィによる方法又は液滴吐出法により、カラーフィルタ203を設けた前面基板上の封止領域となる面に設けるカラムスペーサ302とシール材が接する面に設ける突起物304とを同時に設ける工程と、前記全面基板のシール材が接する突起物304を設けた面にシール材301を塗布する工程と、前記全面基板の封止領域に液晶303を滴下する工程と、前記前面基板とTFTを設けた背面基板とをシール材を介して貼り合わせる工程とを有する液晶表示素子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示素子に関し、更に詳しくは、薄膜基板やフレキシブル基板を使用した場合においてもシール箇所における界面剥がれ等が生じにくい液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に液晶パネル(LCD)は、薄膜トランジスタ(TFT)、画素電極、配向膜等を備える背面基板と、カラーフィルタ、電極、配向膜等を備える前面基板とを対向させ、両基板間に液晶を封入して構成されており、2枚の基板を接着させる目的でシール材が使用されている。最近では軽量化の目的でガラス基板の薄膜化が進んでおり、そのためガラスの変形による応力が増大する傾向にあることから、シール部にはこのような力に耐えうる柔軟性が要求される。
一方、軽量化あるいはフレキシブル化を目的として従来のガラス基板からポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムを基板として使用する試みが検討されており、特に最近では製造効率向上を目的としてロールツウロール(Roll to Roll)法によるLCDの製造方法の研究が進んでいる。このようなフレキシブル基板を使用する場合、シール部には、基板の屈曲に追随可能な高い接着性と柔軟性とが要求される。
【0003】
従来、液晶パネル用シール材としては、エポキシ系の熱硬化型樹脂を主成分とした熱硬化型シール材が主に使用されているが、これは基板を貼り合わせてシール材料を硬化するときに長時間を要するので、大量連続生産に適さないということや、予め位置合わせした2枚の基板に横方向のずれが生じたりすることがあるという問題点があった。また、一対の基板の材質が互いに異なる場合には、加熱工程において、各基板の熱膨張係数の違いにより位置合わせが不正確になり易い。更には、セルの厚さも不均一になり易い。これらの不都合により、得られた液晶表示パネルの表示品位が低下するという欠点があった。
一方、紫外線硬化型樹脂をシール材として使用した液晶パネルが、特許文献1、特許文献2、特許文献3などに報告されている。しかしながらいずれのシール材も、基板となるガラス面あるいはプラスチック面との界面での接着強度が不十分であり、特に、基板面に対して平行方向にかかる応力に対して界面剥がれ等が生じることがあった。
一般に接着剤分野において、組成を検討することで界面剥がれに対する接着力を高める方法はいくつかあるが、LCDを液晶滴下工法(ODF法)にて製造する場合、未硬化のシール材と液晶とが直接触れることから、液晶を汚染させないためにシール材原料には制限がある。
このように、シール材のみで前記要求特性を満たしたものは未だ得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−330717号公報
【特許文献2】特開2004−004612号公報
【特許文献3】特開2005−171135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、基板とシール材との界面付近で剥がれ等がなく、特に基板面に対して平行方向にかかる応力に対して界面剥がれ等の生じることのない液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記シール材が接する基板面に突起を設けることで、上記課題を解決した。
【0007】
即ち、本発明は、互いに対向する二つの基板と、前記基板間に設けられたシール材と、前記シール材に囲まれた封止領域に封入された液晶とを備え、前記シール材が接する基板面には突起が設けられている液晶表示素子を提供する。
【0008】
また本発明は、前記記載の液晶表示素子の製造方法であって、
フォトリソグラフィによる方法又は液滴吐出法により、カラーフィルタを設けた前面基板上の封止領域となる面に設けるカラムスペーサとシール材とが接する面に設ける突起物とを同時に設ける工程と、
前記カラーフィルタを設けた前面基板上のシール材が接する突起物を設けた面にシール材を塗布する工程と、
前記カラーフィルタを設けた前面基板の封止領域に液晶を滴下する工程と、
前記カラーフィルタを設けた前面基板とTFTを設けた背面基板とをシール材を介して貼り合わせる工程とを有する液晶表示素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、基板とシール材との界面付近で剥がれ等がなく、特に基板面に対して平行方向にかかる応力に対して界面剥がれ等の生じることのない液晶表示素子を提供することができる。
該突起は、フォトリソグラフィによる方法又は液滴吐出法により、カラーフィルタを設けた前面基板上の封止領域となる面に設けるカラムスペーサとシール材が接する面に設ける突起物とを同時に設けることで簡便に取り付けることが可能である。
また、本発明の液晶表示素子は、シール幅のばらつきの少ないシール領域を形成できるため、液晶を封入する封止領域の面積を安定に形成でき、ODF法による液晶注入に適していることや、シール幅細線化に優れるなどの特長も有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の液晶表示素子の断面図である。100〜105を備えた基板を「背面基板」、200〜205を備えた基板を「前面基板」と称している。
【図2】本発明の突起パターンを示す図である。
【図3】フォトマスクパターンとしてブラックマトリックス上に形成するスペーサ作成パターンと、シール材塗布部分に形成する突起作成パターンとを有するパターンAを使用した露光処理工程の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る液晶表示装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1及び図2は、互いに対向する二つの基板と、前記基板間に設けられたシール材と、前記シール材に囲まれた封止領域に封入された液晶とを備え、前記シール材が接する基板面には突起が設けられている液晶表示素子を示す断面図である。
具体的には、バリア膜101を設けた基板a100上に、TFT層102、画素電極103を設け、その上からパッシベーション膜104及び配向膜a105を設けた背面基板と、バリア膜201を設けた基板b200上に、ブラックマトリックス202、カラーフィルタ203、透明電極204を設け、その上から配向膜b205を設け、前記背面基板と対向させた前面基板と、前記基板間に設けられたシール材301と、前記シール材に囲まれた封止領域に封入された液晶層303とを備え、前記シール材301が接する基板面には突起304が設けられている液晶表示素子の具体的態様を示している。図1は、突起304が前面基板に設けられた断面図であり、図2は、突起304が前面基板及び背面基板の両方に設けられた断面図である。
【0012】
前記基板a又は前記基板bは、実質的に透明であれば材質に特に限定はなく、ガラス、セラミックス、プラスチック等を使用することができる。プラスチック基板としてはセルロ−ス、トリアセチルセルロ−ス、ジアセチルセルロ−ス等のセルロ−ス誘導体、ポリシクロオレフィン誘導体、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコ−ル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレ−ト、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、さらにガラス繊維−エポキシ樹脂、ガラス繊維−アクリル樹脂などの無機−有機複合材料などを用いることができる。
なおプラスチック基板を使用する際には、バリア膜(図1における101、201)を設けることが好ましい。バリア膜の機能は、プラスチック基板が有する透湿性を低下させ、液晶表示素子の電気特性の信頼性を向上することにある。バリア膜101、201としては、それぞれ、透明性が高く水蒸気透過性が小さいものであれば特に限定されず、一般的には酸化ケイ素などの無機材料を用いて蒸着やスパッタリング、ケミカルベーパーデポジション法(CVD法)によって形成した薄膜を使用する。
本発明においては、前記基板a又は前記基板bとして同素材を使用しても異素材を使用してもよく特に限定はないが、プラスチック基板が、ロールツウロール法による製造方法に適し且つ軽量化あるいはフレキシブル化に適しており好ましい。また、平坦性及び耐熱性付与を目的として、プラスチック基板とガラス基板とを組み合わせる場合がある。
なお後述の実施例においては、基板a100又は基板b200の材質としてガラス布と硬化性樹脂との複合材料を、バリア膜101及び201の材質として酸化ケイ素を使用している。
【0013】
背面基板には、バリア膜101を設けた基板a100上に、TFT層102及び画素電極103を設けている。これらは通常のアレイ工程にて製造される。この上にパッシベーション膜104及び配向膜a105を設けて背面基板が得られる。
パッシベーション膜104(無機保護膜ともいう)はTFT層を保護するための膜で、通常は窒化膜(SiNx)、酸化膜(SiOx)等を化学的気相成長(CVD)技術等により形成する。
また、配向膜a105は、液晶を配向させる機能を有する膜であり、通常ポリイミドのような高分子材料が用いられることが多い。塗布液には、高分子材料と溶剤からなる配向剤溶液が使われる。配向膜はシール材との接着力を阻害する可能性があるため、封止領域内にパターン塗布する。塗布にはフレキソ印刷法のような印刷法、インクジェットのような液滴吐出法が用いられる。塗布された配向剤溶液は仮乾燥により溶剤が蒸発した後、ベーキングにより架橋硬化される。この後、配向機能を出すために、配向処理を行う。
配向処理には通常ラビング法が用いられる。前述のように形成された高分子膜上を、レーヨンのような繊維から成るラビング布を用いて一方向にこすることにより液晶配向能が生じる。
また、光配向法を用いることもある。光配向法は、光感受性を有する有機材料を含む配向膜上に偏光を照射することにより配向能を発生させる方法であり、ラビング法による基板の傷や埃の発生が生じない。光配向法における有機材料の例としては二色性染料を含有する材料がある。二色性染料としては、光二色性に起因するワイゲルト効果による分子の配向誘起もしくは異性化反応(例:アゾベンゼン基)、二量化反応(例:シンナモイル基)、光架橋反応(例:ベンゾフェノン基)、あるいは光分解反応(例:ポリイミド基)のような、液晶配向能の起源となる光反応を生じる基(以下、光配向性基と略す)を有するものを用いることができる。塗布された配向剤溶液は仮乾燥により溶剤が蒸発した後、任意の偏向を有する光(偏光)を照射することで、任意の方向に配向能を有する配向膜を得ることができる。
【0014】
一方の前面基板は、バリア膜201を設けた基板b200上に、ブラックマトリックス202、カラーフィルタ203、透明電極204、配向膜b205を設けている。
ブラックマトリックス202は、例えば、顔料分散法にて作製する。具体的にはバリア膜201を設けた基板b200上に、ブラックマトリックス形成用に黒色の着色剤を均一分散させたカラーレジン液を塗布し、着色層を形成する。続いて、着色層をベーキングして硬化する。この上にフォトレジストを塗布し、これをプリベークする。フォトレジストにマスクパターンを通して露光した後に、現像を行って着色層をパターニングする。この後、フォトレジスト層を剥離し、着色層をベーキングしてブラックマトリックス202が完成する。
あるいは、フォトレジスト型の顔料分散液を使用してもよい。この場合は、フォトレジスト型の顔料分散液を塗布し、プリベークしたのち、マスクパターンを通して露光した後に、現像を行って着色層をパターニングする。この後、フォトレジスト層を剥離し、着色層をベーキングしてブラックマトリックス202が完成する。
【0015】
カラーフィルタ203は、顔料分散法、電着法、印刷法あるいは染色法等にて作成する。顔料分散法を例にとると、(例えば赤色の)顔料を均一分散させたカラーレジン液をバリア膜201を設けた基板b200上に塗布し、ベーキング硬化後、該上にフォトレジストを塗布しプリベークする。フォトレジストにマスクパターンを通して露光した後に現像を行い、パターニングする。この後フォトレジスト層を剥離し、再度ベーキングすることで、(赤色の)カラーフィルタ203が完成する。作成する色順序に特に限定はない。同様にして、緑カラーフィルタ203、青カラーフィルタ203を形成する。
【0016】
透明電極204は、前記カラーフィルタ203上に(必要に応じて前記カラーフィルタ203上に表面平坦化のためにオーバーコート層(不図示)を設け)を設ける。透明電極204は透過率が高い方が好ましく、電気抵抗が小さいほうが好ましい。透明電極204はITOなどの酸化膜をスパッタリング法などによって形成する。
また、前記透明電極204を保護する目的で、透明電極204の上にパッシベーション膜を設ける場合もある。
配向膜b205は、前述の配向膜a105と同じものである。
【0017】
以上本発明で使用する前記背面基板及び前記前面基板についての具体的態様を述べたが、本願においては該具体的態様に限定されることはなく、所望される液晶表示素子に応じた態様の変更は自由である。例えば基板a及びbにガラスを使用した場合には、バリア膜101及び201は使用する必要がない。
【0018】
本発明においては、前記互いに対向する背面基板と前面基板と、前記基板間に設けられたシール材と、前記シール材に囲まれた封止領域に封入された液晶とを備え、前記シール材が接する基板面には突起が設けられていることを特徴とする。
前記シール材が接する基板面は通常基板の端に位置する。該基板面の位置は特に限定されるものではないが、通常は基板の端から0.5mm〜5mmの範囲の幅間に設けることが多い。この基板面に設ける突起は、シール材が接する基板面の面積に対し、0.1%〜16%の割合で設けられていることが好ましい。0.1%未満であると剥離防止作用が弱いおそれがあり、また16%を超えるとシール材塗布量が少なくなりすぎるおそれがある。
具体的には、シール材が接する基板面の面積1mmに対して、突起1つあたりの設置面積が100μm〜1600μmである突起が、おおよそ10〜100個設けられていると、基板面に対して平行方向にかかる応力に対してより強度が増し好ましい。ここで突起の設置面積とは、突起が設置された基板面における、突起設置面の面積である。
突起が設けられる基板面は、背面基板、前面基板のどちら側でもよいが、背面基板の場合、TFT等を設ける製造工程に組み込むことが工程複雑化の原因になるため、比較的製造工程が単純化可能な前面基板に設けることが多い。
また、突起が直接設けられる面は、図1の具体的態様においては、前面基板の透明電極204上になる。あるいは透明電極204にパッシベーション膜を設ける場合(不図示)には、突起304が直接触れる面はパッシベーション膜104となる。
また突起の高さは、セルギャップを超えない高さであることが好ましい。
【0019】
前記突起の形状は特に限定されず、その水平断面を円形、四角形などの多角形など様々な形状にすることができるが、工程時のミスアラインマージンを考慮して、水平断面を円形または正多角形にすることが特に好ましい。また該突起形状は、円錐台または角錐台であることが好ましい。
【0020】
前記突起の材質は、シール材もしくはシール材に使用する有機溶剤、あるいは液晶に溶解しない材質であれば特に限定されないが、加工及び軽量化の面から合成樹脂(硬化性樹脂)であることが好ましい。一方、前記突起は、フォトリソグラフィによる方法や液滴吐出法により、第一の基板上のシール材が接する面に設けることが可能である。このような理由から、フォトリソグラフィによる方法や液滴吐出法に適した、光硬化性樹脂を使用することが好ましい。
【0021】
前述の通り、前記突起の高さはセルギャップを超えない高さであることが好ましいことから、突起が、スペーサと同等の高さであればよく好ましい。このような理由から、突起は、スペーサを設ける際に一緒に基板上に作成することが好ましい。
【0022】
例えば、前面基板上にスペーサをフォトリソグラフィ法によって得る場合、同時に該前面基板のシール材が接する面に前記突起を設けることができる。
具体的には、前記前面基板の透明電極204上に、スペーサ形成の(着色剤を含まない)レジン液を塗布する。続いて、このレジン層をベーキングして硬化する。この上にフォトレジストを塗布し、これをプリベークする。フォトレジストにマスクパターンを通して露光した後に、現像を行ってレジン層をパターニングする。この後、フォトレジスト層を剥離し、レジン層をベーキングしてスペーサが完成する。
スペーサの形成位置はマスクパターンによって所望の位置に決めることができる。従って、液晶表示素子の封止領域内と封止領域外(シール材塗布部分)との両方を同時に作成することができる。またスペーサは封止領域の品質が低下することがないように、ブラックマトリックスの上に位置するように形成させることが好ましい。このようにフォトリソグラフィ法によって作製されたスペーサのことを、カラムスペーサ又はフォトスペーサと呼ぶことがある。
【0023】
また、例えば、前記前面基板上にスペーサを液滴吐出法によって得る場合においても、同時に該前面基板のシール材が接する面に前記突起を設けることができる。
具体的には、図1の具体的態様においては、前記前面基板の透明電極204上に、所望の大きさを有するギャップ材とバインダー樹脂と溶剤からなる液滴吐出用スペーサ分散液を吐出し、ギャップ材を定点配置する。溶剤を乾燥後、バインダー樹脂の硬化温度以上に加熱して樹脂を硬化すると、スペーサが完成する。
スペーサの形成位置は液滴吐出位置によって所望に決めることができる。従って、液晶表示素子の封止領域内と封止領域外(シール材塗布部分)との両方を同時に作成することができる。またスペーサは封止領域の品質が低下することがないように、ブラックマトリックスの上に位置するように形成させることが好ましい。
【0024】
前記スペーサの材質は、PVA−スチルバゾ感光性樹脂などのネガ型水溶性樹脂や多官能アクリル系モノマー、アクリル酸共重合体、トリアゾール系開始剤などの混合物が使用される。あるいはポリイミド樹脂に着色剤を分散させたカラーレジンを使う方法もある。本発明においては特に限定はなく、使用する液晶やシール材との相性に従い公知の材質でスペーサを得ることができる。
従って、前記突起をスペーサと一緒に基板上に設ける場合は、前記突起も前記スペーサと同等の材質となる。
【0025】
このようにして、前面基板上の封止領域となる面に突起物(スペーサ)を設けた後、該前面基板のシール材が接する突起物を設けた面にシール材(図1における301)を塗布する。
シール材の材質は特に限定はなく、エポキシ系やアクリル系の光硬化性、熱硬化性、光熱併用硬化性の樹脂に重合開始剤を添加した硬化性樹脂組成物が使用される。また、透湿性や弾性率、粘度などを制御するために、無機物や有機物よりなるフィラー類を添加することがある。これらフィラー類の形状は特に限定されず、球形、繊維状、無定形などがある。さらに、セルギャップを良好に制御するために単分散径を有する球形や繊維状のギャップ材を混合したり、基板との接着力をより強化するために、基板上突起と絡まりやすい繊維状物質を混合しても良い。このとき使用する繊維状物質の直径はセルギャップの1/5〜1/10以下程度が望ましく、繊維状物質の長さはシール塗布幅よりも短いことが望ましい。
また、繊維状物質の材質は所定の形状が得られるものであれば特に限定されず、セルロース、ポリアミド、ポリエステルなどの合成繊維やガラス、炭素などの無機材料を適宜選ぶことが可能である。
シール材を塗布する方法としては、印刷法やディスペンス法があるが、シール材の使用量が少ないディスペンス法が望ましい。シール材の塗布位置は封止領域に悪影響を及ぼさないように通常ブラックマトリックス上とする。次工程の液晶滴下領域を形成するため(液晶が漏れないように)、シール材塗布形状は閉ループ形状とする。
【0026】
前記シール材を塗布した前面基板の閉ループ形状(封止領域)に液晶を滴下する。通常はディスペンサーを使用する。滴下する液晶量は液晶セル容積と一致させるため、カラムスペーサの高さとシール塗布面積とを掛け合わせた体積と同量を基本とする。しかし、セル貼り合わせ工程における液晶漏れや表示特性の最適化のために、滴下する液晶量を適宜調整したり、液晶滴下位置を分散させることもある。
【0027】
次に、前記シール材を塗布し液晶を滴下した前面基板に、背面基板を貼り合わせる。具体的には、静電チャックのような基板を吸着させる機構を有するステージに前記前面基板と前記背面基板とを吸着させ、前面基板の配向膜bと背面基板の配向膜aとが向きあい、シール材ともう一方の基板が接しない位置(距離)に配置する。この状態で系内を減圧する。減圧終了後、前面基板と背面基板との貼り合せ位置を確認しながら両基板位置を調整する(アライメント操作)。貼り合せ位置の調整が終了したら、前面基板上のシール材と背面基板とが接する位置まで基板を接近させる。この状態で系内に不活性ガスを充填させ、徐々に減圧を開放しながら常圧に戻す。このとき、大気圧により前面基板と背面基板が貼り合わされ、カラムスペーサの高さ位置でセルギャップが形成される。この状態でシール材に紫外線を照射してシール材を硬化することによって液晶セルを形成する。この後、場合によって加熱工程を加え、シール材硬化を促進する。シール材の接着力強化や電気特性信頼性の向上のために、加熱工程を加えることが多い。
【実施例】
【0028】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
(基板(1)の形成)
多官能アクリレート樹脂をガラス繊維に含浸した後に紫外線硬化装置により連続的に硬化し、樹脂60重量%、ガラス繊維40重量%、幅30cm、長さ100m、厚さ100μmの樹脂製基材を得た。この樹脂製基材の30℃から150℃における線膨張係数は、14ppmであった。この樹脂製基材のガラス転移温度をtanδmaxで評価したところ300℃以上であった。またこの樹脂製基材の全光線透過率は90%であった。なお、線膨張係数はTMA(Thermal Mechanical Analyzer)を用いて30〜150℃の範囲を測定することにより得られた値である。ガラス転移温度はDMA(Dynamic Mechanical Analyzer)を用いて測定した。また全光線透過率はJIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)に従って測定した。
【0030】
この樹脂製基材を、スパッタロールコート装置に装填し、DCマグネトロンスパッタにより、酸素を反応性ガスに用いた反応性スパッタでSiをターゲットとして用いて、樹脂製基材上に膜厚60nmのSiOx(x=1.8,XPSによる)の成膜を行ってバリア層を形成し、基板(1)とした。
【0031】
(前面基板A、Bの作成)
(ブラックマトリックスの形成)
上記基板(1)のバリア層上に、下記の組成のブラックマトリックス形成用組成物を、ウェット状態で厚み;10μmになるようダイコーターを用いて塗布し、乾燥後、温度;90℃の条件で2分間プリベークして2μmの厚みのブラックマトリックス層を形成した。
【0032】
(ブラックマトリックス形成用塗料組成物)
・ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(モル比=73/27) 300部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160部
・カーボンブラック分散液 300部
・光重合開始剤(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1) 5部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 1200部
※部数はいずれも質量基準
【0033】
その後、上流側に巻き出し装置、下流側に巻き取り装置を備えた露光装置に、上記で得られたブラックマトリックス層付きの基板(1)を通し、露光装置の入口側および出口側に設置されたニップローラ対を駆動して、連続状の前記ブラックマトリックス層付きの基板(1)を搬送した。この搬送状態において、ブラックマトリックス層付きの基板(1)にかかるテンションは、2kg/300mm幅であった。
露光装置の本体の温度は23℃±0.1℃になるよう、また、相対湿度は60%±1%になるよう、それぞれ調整した。
【0034】
上記ブラックマトリックス層付きの基板(1)を露光台上に吸着固定した後、基板(1)の塗膜表面とパターン(フォトマスク)との間隔(ギャップ)が100μmになるよう自動調整した。また基板(1)の露光位置は、基板(1)の端面からの距離を自動検出して、基板(1)からフォトマスクパターン位置までが一定距離になるよう自動調整後に露光を行った。光源としては、高圧水銀ランプを用いて、露光エリアを200mm×200mmとして、I線(波長;365nm)を用い、15mW/cmの照度で20秒間露光し、300mJ/cmの露光量とした。
【0035】
現像処理は、露光機の下流側に現像装置を設置して行った。露光処理後の樹脂製基材を400mm/minの一定速度で搬送し、所定のパターンのブラックマトリックスが積層されたブラックマトリックス層付きの基板(1)を得た。
【0036】
ブラックマトリックスで形成されたアライメントマークを寸法測定機(ニコン製NEXIV VMR−6555)で温度;23℃±0.1℃、相対湿度;60%±1%の条件で搬送方向(MD)、搬送方向に垂直な方向(TD)での寸法変化を測定した結果、フォトマスクの寸法値MD:100.000mm、TD:100.000mmに対して、実際に樹脂製基材上に形成されたパターンの寸法は、MD:99.998mm、TD:100.001mmであった。
その後、ベーク炉にて200℃、30分のポストベークを行いブラックマトリックスを熱キュアした。得られたブラックマトリックスを、前記同条件(温度;23℃±0.1℃、相対湿度;60%±1%)で測定したところ、基板(1)上に形成されたパターンの寸法は、MD:99.998mm、TD:100.001mmであった。
【0037】
[RGB着色層の形成]
前記ブラックマトリックス層付きの基板(1)の上に、下記の組成の着色パターン形成用組成物を、ウェット状態で厚み;10μmになるようダイコーターを用いて塗布し、乾燥後、温度;90℃の条件で2分間プリベークして2μmの厚みのブラックマトリックス層・着色パターン形成用組成物付きの基板(1)を得た。
【0038】
以下に、赤色の着色パターン形成用組成物の組成を示すが、赤色顔料を任意の緑色顔料にするとGREENの着色パターン形成用組成物が得られ、青色顔料にするとBLUEの着色パターン形成用組成物が得られる。
【0039】
(着色パターン形成用組成物)
・ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(モル比=73/27) 50部
・トリメチロールプロパントリアクリレート 40部
・赤色顔料(C.I.Pigment Red 177) 90部
・光重合開始剤(2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパノン−1) 1.5部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 600部
※部数はいずれも質量基準
【0040】
上流側に巻き出し装置、下流側に巻き取り装置を備えた露光装置に、上記で得られたブラックマトリックス層・着色パターン形成用組成物付きの基板(1)を通し、露光装置の入口側および出口側に設置されたニップローラ対を駆動して、連続状のブラックマトリックス層・着色パターン形成用組成物付きの基板(1)を搬送した。この搬送状態において、ブラックマトリックス層・着色パターン形成用組成物付きの基板(1)にかかるテンションは、2kg/300mm幅であった。
露光装置の本体の温度は23℃±0.1℃になるよう、また、相対湿度は60%±1%になるよう、それぞれ調整した。
ブラックマトリックス層・着色パターン形成用組成物付きの基板(1)を露光台上に吸着固定した後、ブラックマトリックス層・着色パターン形成用組成物付きの基板(1)の塗膜表面とパターン(フォトマスク)との間隔(ギャップ)が100μmになるよう自動調整した。またブラックマトリックス層・着色パターン形成用組成物付きの基板(1)の露光位置は、ブラックマトリックス層・着色パターン形成用組成物付きの基板(1)の端面からの距離を自動検出して、ブラックマトリックス層・着色パターン形成用組成物付きの基板(1)からフォトマスクパターン位置が一定距離になるよう自動調整後、前記ブラックマトリックス形成時に同時形成したアライメントマークを用いてRED用フォトマスクとアライメントを行った後、露光を行った。光源としては、高圧水銀ランプを用いて、露光エリアを200mm×200mmとして、I線(波長;365nm)を用い、15mW/cmの照度で20秒間露光し、100mJ/cmの露光量とした。
【0041】
現像は、露光機の下流側に現像装置を設置して行った。露光処理後のブラックマトリックス層・着色パターン形成用組成物付きの基板(1)を400mm/minの一定速度で搬送し、樹脂製基材上のブラックマトリックスの開口部の所定位置にRED着色層が積層された基板(1)を得た。その後、ベーク炉にて200℃、30分のポストベークを行いRED着色層を熱キュアした。
【0042】
上記REDと同様の方法で繰り返しGREEN、BLUEの着色層形成を行い、基板(1)上にブラックマトリックスおよびRGBの着色層が形成されたカラーフィルタが得られた。
【0043】
なお、BLUE着色層のポストベーク処理後に、ブラックマトリックスを、前記と同じ条件(温度;23℃±0.1℃、相対湿度;60%±1%)で測定したところ、プラスチックフィルム上に形成されたパターンの寸法は、MD:99.999mm、TD:100.002mmであった。
【0044】
ブラックマトリックスの寸法変化は1層目(ブラックマトリックス層)の現像後から4層目(BLUE層)のポストベーク後までの製造工程において10ppmであり、これにより樹脂製基材上に4インチサイズで解像度が200ppi(BM線幅7μm、ピッチ42μm)にて、画素ズレを生じさせずにカラーフィルタを形成することができた。
【0045】
(ITO電極層の形成)
続いて、このカラーフィルタをスパッタロールコート装置に装填し、DCスパッタにより酸素を反応ガスに用いた反応性スパッタでITO(indium tin oxide)をターゲットとして用い、ブラックマトリックスおよびRGBの着色層上に膜厚150nmのITOの成膜を行い、これをITO電極層とした。
【0046】
(スペーサ及び突起の形成)
(ドライフィルムの準備)
パターンスペーサ形成用のドライフィルムとして、厚み;25μmのPETベースフィルム上に、ネガ型感光性樹脂からなるパターンスペーサ形成用組成物を、ウェット状態で厚み;20μmになるようダイコーターを用いて塗布し、乾燥後、温度;90℃の条件で2分間プリベークして5μmの厚みとした。その後、その上に、厚み25μmのPETカバーフィルムをラミネートし、パターンスペーサ形成用ドライフィルムとした。
【0047】
(積層原反の作成)
上記で得られたブラックマトリックス、RGB着色層、およびITO電極層が形成された基板(1)上に、カバーフィルムを予め剥離したパターンスペーサ形成用ドライフィルムをパターンスペーサ形成用組成物がITO電極層と向かい合うように積層して、パターンスペーサ形成用組成物層を、ローラ圧;5kg/cm、ローラ表面温度;120℃、および速度;800mm/minの条件にて、連続的に転写した。この際、ベースフィルムは剥離せず、パターンスペーサ形成用組成物上に付いた状態で次の露光工程へと進めた。
【0048】
(露光処理工程)
上流側に巻き出し装置、下流側に巻き取り装置を備えた露光装置に、上記で得られた積層原反を通し、露光装置の入口側および出口側に設置されたニップローラ対を駆動して、連続状の積層原反を搬送した。この搬送状態において、積層原反にかかるテンションは、2kg/300mm幅であった。
露光装置の本体の温度は23℃±0.1℃になるよう、また、相対湿度は60%±1%になるよう、それぞれ調整した。
積層原反を露光台上に吸着固定した後、積層原反のベースフィルムとフォトマスクパターン(フォトマスク)との間隔(ギャップ)を30μmになるよう自動調整した。このとき使用したフォトマスクパターンは、ブラックマトリックス上に形成するスペーサ作成パターンと、シール材塗布部分に形成する突起作成パターンとを有するパターンA(図3参照)及び、ブラックマトリックス上に形成するスペーサ作成パターンのみを有するパターンBを用意した。
また積層原反のパターンの露光位置は、積層原反の端面からの距離を自動検出して、この検出結果にしたがって積層原反からフォトマスクパターン位置が一定距離になるよう自動調整後、前記ブラックマトリックス形成時に同時形成したアライメントマークを用いてパターンスペーサ用フォトマスクとアライメントを行った後、露光を行った。光源としては、高圧水銀ランプを用いて、露光エリアを200mm×200mmとして、I線(波長;365nm)を用い、15mW/cmの照度で20秒間露光し、300mJ/cmの露光量とした。
【0049】
(現像処理・ポストベーク処理工程)
現像処理は、露光機の下流側に現像装置を設置し、この現像装置内で露光後の積層原反のベースフィルムを剥離しながら、400mm/minの一定速度で搬送しながら行って、前記ブラックマトリックス、RGB着色層、およびITO電極層が形成された基板(1)のブラックマトリックスの格子パターン部の所定位置にパターンスペーサが形成されたカラーフィルタを得た。その後、ベーク炉にて200℃、30分のポストベーク処理を行って、パターンスペーサを熱キュアした。
【0050】
このようにして、前記パターンAを使用した、基板(1)上にブラックマトリックス、RGB着色層、ITO電極層、パターンスペーサ、及び突起が形成された前面基板A、前記パターンBを使用した、基板(1)上にブラックマトリックス、RGB着色層、ITO電極層、パターンスペーサが形成された前面基板Bを得た。
【0051】
(背面基板の作成)
(TFT電極層の形成)
透明基板として、石英ガラス基板を用い、特開2004−140381号公報に記載された方法にしたがって、透明基板上にTFT電極層を形成した。
すなわち、石英ガラス基板上にアモルファスSi層を100nm厚で形成した後、酸化Si層(SiOx)を真空成膜法により形成した。その後、上記酸化Si層上に、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いてTFT層および画素電極を形成した。
次に、上記TFT層および画素電極上に水溶性粘着剤を塗布し、ガラス基板を貼り付けた。その後、石英ガラス基板側よりXeClエキシマレーザーを照射して上記アモルファスSi層と酸化Si層界面で剥離させた。
このような方法により、厚み0.1μmのSiOx層上にTFT層および画素電極が形成されたTFTアレイ層を形成した。
【0052】
(TFT付樹脂製基板の作製)
上記TFTアレイ層が形成された透明基板の、上記TFTアレイ層が形成された側とは反対面上に、前記基板(1)を貼り合わせた。
こでは東亞合成(株)社製ラックストラックLCR0629B 低硬化収縮タイプ硬化型接着剤を用いて、SiOx側に接着剤を塗布して、その後あらかじめそれぞれの基板に形成しておいたアライメントマークを用いて、貼り合せ装置上でTFTアレイ層と基板(1)との間隔を100μm離した状態で位置合わせを行った後、貼り合せをした。その後、TFTアレイ層上に形成されたガラスおよび水溶性粘着剤を剥離して、背面基板としてTFTアレイ付樹脂製基板を得た。
【0053】
(実施例用の液晶セルA作成)
(配向膜形成)
上記のように作製された前面基板A、及び背面基板に液晶配向膜を形成した。両基板ともに純水にて洗浄後、液晶配向剤を、液晶配向膜塗布用印刷機を用いて塗布し、180℃のオーブン内で20分間乾燥し、前面基板AのITOを形成した面上、及び背面基板のTFT電極層を形成した面上に乾燥平均膜厚600Åの塗膜を形成した。この塗膜にレーヨン製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロールの回転数400rpm、ステージの移動速度30mm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmでラビング処理を行い、水洗を行った後、120℃のオーブン上で10分間乾燥した。
【0054】
前面基板Aのシール材塗布部分に、ディスペンサーを用いてシール材の閉ループを描くように塗布した。
シール材としては光硬化型シール材を使用し、シール材の中にカラムスペーサとほぼ同じサイズの球状スペーサを1重量%混合した。シール材の塗布量は、後述の評価試験に適したシール幅とした(1.2mm、2mm、3mm)。
【0055】
続いて、シール材閉ループ内の所定の位置にディスペンサーを用いて適当量の液晶を滴下した。
液晶滴下後の前面基板Aと背面基板とを静電チャックに吸着させた。前面基板Aと背面基板とが互いに向き合うように配置し、背面基板をゆっくり降下させて前面基板Aとの距離が300μmとなる距離で静止させた。この状態で真空チャンバー内を100Paまで減圧した。あらかじめ形成しておいたアライメントマークを用いて、前面基板Aと背面基板との貼り合わせ位置を調整した。アライメント完了後、前面基板Aと背面基板とをさらに接近させ、シール材とTFT電極層とが接する高さに両基材を保持した。この状態で真空チャンバー内に不活性ガスを導入し、系内を大気圧までもどした。大気圧により前面基板Aと背面基板が圧迫され、カラムスペーサの高さでセルギャップが形成された。続いてシール材塗布部分に紫外線を照射して(365nm、30kJ/m)シール材を硬化させ、液晶セルAを得た。
【0056】
【表1】

【0057】
(実施例用の液晶セルC作成)
前記液晶セルAにおいて、使用するシール材に繊維状物質を添加したものを使用した以外は前記方法と同様にして、液晶セルCを得た。添加量はシール材100質量部に対し1重量部添加した。なお繊維状物質はセルロース極細繊維を用い、繊維自体は特開2008−266828号公報に記載された方法に従い作製した。得られたセルロース極細繊維の平均繊維径1μm程度、平均繊維長さ0.2mm程度であった。
【0058】
【表2】

【0059】
(比較例の液晶セルB作成)
前記前面基板Aの代わりに前面基板Bを使用した以外は液晶セルAと同様にして、液晶セルBを得た。また、液晶セルBではシール形成領域にカラムスペーサが形成されていないことを考慮して、液晶充填領域と同等のセルギャップを保持できるよう、シール材の中にカラムスペーサとほぼ同じサイズの球状スペーサを1重量%混合した。
【0060】
【表3】

【0061】
<シール幅評価>
(シール幅の計測方法)
デジタルマイクロスコープ(ハイロックス KH−7700)を用いて、液晶セルのシール幅を測定した。シール幅の測定間隔を2mmとし、64箇所測定して平均値と標準偏差を求めた。シール幅のバラツキを3σ/平均値×100(%)で評価した(σ=標準偏差)。
【0062】
(シール幅ばらつき及び制御性評価)
前記液晶セル作成方法においてシール幅が1.2mmまたは2mmとなるように設定した液晶セルA1および液晶セルA2及び比較用の液晶セルB1および液晶セルB2を使用した。
液晶セルAおよび液晶セルBのシール幅計測結果を表4に示す。
【0063】
【表4】

【0064】
シール幅1.2mmのときは液晶セルAのシール幅バラツキが液晶セルBのばらつきと比べて約3分の1と小さく、シール幅2mmのときは液晶セルAがほぼ目標シール幅を達成できたのに対し、液晶セルBでは目標シール幅を大幅に超過した。
この結果より、シール塗布部に突起を設けることにより、シール幅のバラツキを低く抑え、かつ、シール幅の制御性を向上することが可能となることが判る
【0065】
また、液晶セルのシール部観察の結果より、シール材中に分散させた球状スペーサが、シール幅より狭い範囲に偏在していることが確認された。特に液晶セルBでは、シール材が球状スペーサの無いシール幅方向へ延びていきやすく、シール幅が広く、そのバラツキも大きくなっており、このことより、シール材塗布部分より幅広い領域にカラムスペーサを形成することによって、シール幅制御性が向上し、液晶パネルの狭額縁化に有効であることが示された。
【0066】
(接着性評価1)
JIS−K−6854による方法に従って、引っ張り試験機(テンシロン、A&D社製)を用いて、液晶セルの90°剥離試験を行い、基板が剥れるときの応力を測定した。
具体的には、作製したセルの端(ミミ)をテンシロンのエアチャックに固定し、もう一方の基板を90°剥離試験用専用治具に固定した。
引っ張り速度100mm/minの速度でエアチャック側を上方に引き上げた。このとき、もう一方の基板は専用治具の上を水平に移動した。
セルの基板を剥がしながら50mmほどエアチャックを引き上げたところで装置を停止させた。
セル基板が剥れ始めたときの応力から装置を停止したときの応力までを連続に測定し、その平均値を求めた。
応力はシール幅で規格化し、シール幅1mあたりの応力を剥離強度と定義した。
【0067】
(剥離強度1)
液晶セルAの剥離強度は、平均で約5×10N/mであった。剥離時、セル基板界面でシールの剥離は起こらず、基板内部化から破壊された。これに対し、液晶セルBの剥離強度は平均で約1×10N/mであり、剥離時、セル基板界面でシールが剥離した。
この結果より、シール材塗布部分に突起を設けることにより、セルの破壊強度を大幅に強くすることが可能となる。
【0068】
(剥離強度2)
液晶セルCでの剥離強度は平均で約7×10N/mであり、シール材中に繊維状物質を混合することにより、セルの破壊強度をより強くすることが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
100:基板a
101:バリア膜
102:TFT層
103:画素電極
104:パッシベーション膜
105:配向膜a
200:基板b
201:バリア膜
202:ブラックマトリックス
203:カラーフィルタ
204:透明電極
205:配向膜b
301:シール材
302:カラムスペーサ
303:液晶層
304:突起
401:パターンA
402:パターンスペーサ形成用組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する二つの基板と、前記基板間に設けられたシール材と、前記シール材に囲まれた封止領域に封入された液晶とを備え、前記シール材が接する基板面には突起が設けられていることを特徴とする液晶表示素子。
【請求項2】
互いに対向する二つの基板と、前記基板間に設けられたシール材と、前記シール材に囲まれた封止領域に配置されたカラムスペーサとを備え、前記シール材が接する基板面には突起が設けられており、前記突起は前記カラムスペーサと同じ材質で得られる請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項3】
前記突起1つあたりの設置面積が100μm〜1600μmの範囲である請求項1または2に記載の液晶表示素子。
【請求項4】
前記突起が、シール材が接する基板面の単位面積当たり0.1%〜16%の割合で設けられている請求項1〜3のいずれかに記載の液晶表示素子。
【請求項5】
前記突起の形状が円錐台または角錐台である、請求項1〜4のいずれかに記載の液晶表示素子。
【請求項6】
前記シール材が繊維状の物質を含む請求項1〜5のいずれかに記載の液晶表示素子。
【請求項7】
前記シール材が光硬化性である請求項1〜6のいずれかに記載の液晶表示素子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の液晶表示素子の製造方法であって、
フォトリソグラフィによる方法又は液滴吐出法により、カラーフィルタを設けた前面基板上の封止領域となる面に設けるカラムスペーサとシール材が接する面に設ける突起物とを同時に設ける工程と、前記カラーフィルタを設けた前面基板上のシール材が接する突起物を設けた面にシール材を塗布する工程と、前記カラーフィルタを設けた前面基板の封止領域に液晶を滴下する工程と、前記カラーフィルタを設けた前面基板とTFTを設けた背面基板とをシール材を介して貼り合わせる工程とを有することを特徴とする液晶表示素子の製造方法。
【請求項9】
前記シール材が光硬化型であり、前記カラーフィルタを設けた前面基板とTFTを設けた背面基板とをシール材を介して貼り合わせた後光照射を行う請求項8に記載の液晶表示素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−101163(P2013−101163A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48268(P2010−48268)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】