説明

液晶表示素子

【目的】 液晶プロジェクタに使用した場合に、照明光の利用効率を大きく保ちつつ投影レンズの口径を小さくでき、装置の小型化と低コスト化に寄与する液晶表示素子を提供する。
【構成】 液晶素子5の両ガラス基板11、12のうち照明光入射側の基板11の両面に、液晶層15の各画素開口部15A単位に1対1に対応させて、微小レンズ13及び14をそれぞれ配列形成する。これにより、照明光が液晶層の各画素開口部15Aに集光されるようにする。このようにガラス基板11の両面に微小レンズのアレイを形成すると、角度θだけ傾いた光束も微小レンズ13で屈折して、液晶層の画素開口部15Aの近傍に集光する時点で、さらに他面側の微小レンズ14で屈折して、主光線の方向が光軸に平行に曲げられる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、テレビ画面、コンピュータ出力画面等を拡大表示するための液晶投影装置、いわゆる液晶プロジェクタあるいは液晶プロジェクションテレビに有用な液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】液晶プロジェクタ光学系の代表例を図3に示す。メタルハライドランプ1から射出した光束を凹面鏡2で反射させた後又は直接にコンデンサレンズ3でコリメートし、リレーレンズ4を介して液晶表示素子5(以下LCDと略記する)を照明する。LCD5には、テレビ映像やパソコン画面等が表示されており、この表示画面が投影レンズ6によってスクリーン7上に拡大投影される。
【0003】リレーレンズ4は、LCD5を照明した光を投影レンズ6の位置に絞り込むようにすることにより、投影レンズ6の口径が大きくなくても、光のケラレがそれほど大きくならないようになっている。実際のランプ1は点光源ではなく有限の大きさを持っているため、図中点線で示されるような光線は投影レンズ6上で光軸から離れた位置に到達する。従って、投影レンズ6の口径をこの分だけ大きくする必要がある。
【0004】例えば、照明光の平行度を±θ=±6°程度とし、リレーレンズ4と投影レンズ6との間隔をL=200mmとすると、 投影レンズ6上での光束の広がりはおよそ、
【数1】
2Ltanθ=42mm (1)
程度となり、従って投影レンズ6の口径は42mm以上必要となる。
【0005】一方、LCD5は、配線領域、画素毎のTFT(画素トランジスタ)領域など、光を透過できない部分いわゆるブラックマトリクスを持ち、一般に開口率は全液晶パネル面積の30%ないし40%程度と低く、これ以外の部分に入射する光は上記ブラックマトリクスによりカットされて利用できないといった問題がある。
【0006】これを解決する一方法として、図4に示すように、LCDを構成する2枚のガラス基板11、12のうち光の入射する側のガラス基板11に、各画素に対向して微小レンズ13を設け、入射光を微小レンズ13により画素開口部15に集光させることにより、LCDを透過する光量を増加させる方法が従来から提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の素子構造ではLCD透過後の光束は、照明光の広がり角±θに加え、微小レンズ13のNA(開口数)に相当する角度±αが足されて±(θ+α)だけ広がることになる。αは微小レンズ13の各レンズ径をd、ガラス基板11の厚みをt、屈折率をnとすれば、
【数2】α=tan-1[dn/2t] (2)
と表され、例えば、d=140μm、n=1.53、t=1.1mmとすれば、α=5.6°と、θとほぼ同程度の大きさになる。従って、明るさを向上させるために微小レンズ13を挿入する場合、投影レンズ6の口径を
【数3】2ltan(θ+α)=82mm (3)
と大きくする必要があり、装置の小型化が難しい、投影レンズのコスト高になる等の問題が生じる。
【0008】
【課題を解決するための手段】上述のような従来技術の問題点を解決するため、本発明ではLCDを構成する2枚のガラス基板の少なくとも一方のガラス基板の両面にそれぞれ、液晶層の各画素開口部と対応させて微小レンズを配列形成した。
【0009】
【作用】本発明によれば、LCDガラス基板の片面のみに微小レンズのアレイを設ける場合に比べて、LCD透過後の光束の広がりを小さく抑えることができ、投影レンズの口径を従来より大幅に小さくすることができる。
【0010】
【実施例】以下本発明を図面に示した実施例に基づき詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示すLCDの拡大断面図であり、液晶プロジェクタにおけるLCD5の配置は図3と同様でよい。図1においてLCD5は、2枚の透明ガラス基板11、12間に液晶層15を挟み周辺を封止して構成され、両ガラス基板11、12のうち照明光入射側の基板11の両面に微小レンズ13、14が配列形成されている。
【0011】微小レンズ13、14は、例えばソーダライムガラスからなる基板11の両面に、公知のイオン交換法を用いて屈折率分布型レンズとして作製できる。すなわち、基板ガラスの両面をイオン透過防止の機能を有する金属膜等のマスク膜で被覆し、このマスク膜にフォトリソグラフィにより所定のレンズ配列パターンで開口を設け、この開口を通してガラスの屈折率を高めるイオンをガラス中のアルカリイオンとの交換で拡散させる方法で作製することができる。この方法で得られるレンズ13、14は、屈折率が基板表面で最大で、基板肉厚内に向け放射方向に次第に減少する屈折率分布を有する。
【0012】基板両面の微小レンズ13、14は共に、液晶層15の各画素開口部15A単位に1対1に対応させて配列形成する。これにより、照明光が液晶層の各画素開口部15Aに集光されるようにする。即ち、微小レンズ13の焦点距離は、ガラス基板内において基板11の厚みに略等しくなるように作製する。また同様に基板他面側の微小レンズ14の焦点距離も、レンズ13と略等しく作製する。
【0013】このようにガラス基板11の両面に微小レンズのアレイを形成すると、角度θだけ傾いた光束も微小レンズ13で屈折して、液晶層の画素開口部15Aの近傍に集光する時点で、さらに他面側の微小レンズ14で屈折して、主光線の方向が光軸に平行に曲げられる。従ってLCD5から射出する光束の広がり角は、従来図4R>4の構成において±(θ+α)であったのが±αと大幅に小さくでき、よって投影レンズ6の口径は
【数4】2ltanθ=39mm (4)
と大幅に小口径化できる。
【0014】なお微小レンズ13、14のそれぞれの配列ピッチは、図3のようにLCD5の前にリレーレンズ4を挿入する場合、その収束角度に合わせてLCDの画素ピッチに対し僅かにずらせて、リレーレンズ4を透過後収束して伝搬する光を微小レンズ13、14で液晶層の各画素開口部15Aに入射させるようにする。
【0015】また図1では省略していたが、両面に微小レンズ13、14の各アレイを備えたガラス基板11を用いてLCD5を構成する場合、図2に示すような具体的構成がその代表例として挙げられる。図2で、ガラス基板11の液晶層25と対向する側の面には、ガラス中からのアルカリ成分の溶出を防止する被膜20がコーティングされており、その上にブラックマトリクス21、カラーフィルタ22、レベルコート材23、透明導電膜24が設けられる。
【0016】また他方のガラス基板12の液晶層25に対向する側の面には、配線部28、TFT部26、画素電極27が設けられ、これと前記ガラス基板11との間に液晶を封入してLCDとする。アルカリ溶出防止膜20は、例えばSiO2を液相でディッピングした後、焼成して膜とすることによって得られ、透明導電膜24、画素電極27は例えばITO膜等が用いられる。
【0017】なお、図1、2では2枚のガラス基板11、12のうちの一方のみに微小レンズ13、14を形成したが、例えば図1の微小レンズ付ガラス基板11と同じものを反対側のガラス基板12に用いて、微小レンズアレイの4層構造としてもよい。この場合、LCD射出後の光束の広がり角は、微小レンズのNAに対応する±αではなく、照明光の平行度±θとなる。
【0018】
【発明の効果】従来は、LCDの光利用効率を上げるために微小レンズのアレイをLCD直前に配置すると、投影レンズ上での光束の広がりが大きくなり、従って投影レンズの口径を大きくする必要があったが、本発明により、LCDの光利用効率を大きく保ちつつ、投影レンズの口径を小さくでき、装置の小型化と低コスト化に極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図
【図2】本発明の他の実施例を示す断面図
【図3】液晶プロジェクタの概略断面図
【図4】従来のレンズ付き液晶表示素子を示す断面図
【符号の説明】
1 光源ランプ
2 凹面鏡
3 コンデンサレンズ
4 リレーレンズ
5 液晶表示素子(LCD)
6 投影レンズ
11 ガラス基板
12 ガラス基板
13 微小レンズ
14 微小レンズ
15 液晶層
15A 画素開口部
20 アルカリ溶出防止膜
21 ブラックマトリクス
22 カラーフィルタ
23 レベルコート層
24 透明導電膜
25 液晶層
26 TFT(画素トランジスタ)
27 画素透明電極
28 配線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一対のガラス基板と、これら基板間に設けられた液晶層とを有する液晶表示素子において、前記ガラス基板のうち少なくとも一方のガラス基板の両面にそれぞれ、前記液晶層の各画素開口部に対応させて微小レンズを配列形成したことを特徴とする液晶表示素子。
【請求項2】 前記基板両面の微小レンズはいずれも、平行光を入射させたとき基板の反対面近傍に集光するような光学特性を有している請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項3】 前記微小レンズは、基板表面を屈折率最大として基板肉厚内に向けて放射方向に次第に減少する屈折率分布を有している請求項1、2のいずれかに記載の液晶表示素子。
【請求項4】 前記微小レンズは、光源に対向する側のガラス基板のみに備えられている請求項1、2、3のいずれかに記載の液晶表示素子。
【請求項5】 前記微小レンズを形成したガラス基板の少なくとも一方の面に、ガラス中のアルカリイオン溶出を防止する透明被膜をコーティングした請求項1、2、3、4のいずれかに記載の液晶表示素子。
【請求項6】 前記微小レンズを形成したガラス基板の少なくとも一方の面に、透明導電膜をコーティングした請求項1、2、3、4、5のいずれかに記載の液晶表示素子。
【請求項7】 前記微小レンズを形成したガラス基板の少なくとも一方の面に、ブラックマトリクスを設けた請求項1、2、3、4、5、6のいずれかに記載の液晶表示素子。
【請求項8】 前記微小レンズを形成したガラス基板の少なくとも一方の面に、各画素に対応した複数色のカラーフィルタを設けた請求項1、2、3、4、5、6、7のいずれかに記載の液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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