説明

液晶表示装置および電子機器

【課題】 所望の透過表示品位を実現することができる半透過反射型の液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 本発明の液晶表示装置は、透過表示領域Tと反射表示領域Rとを有し、反射表示領域Rにおける液晶層50の層厚drが透過表示領域Tにおける液晶層50の層厚dtよりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置および電子機器に関し、特に透過表示と反射表示の双方で表示を行う半透過反射型液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
反射表示と透過表示の2つの表示方式を兼ね備えた、いわゆる半透過反射型の液晶表示装置は、周囲の明るさに応じて反射モードまたは透過モードのいずれかの表示方式に切り替えることにより、消費電力を低減しつつ周囲が暗い場合でも明瞭な表示を行うことができるものである。この種の半透過反射型液晶表示装置としては、光透過部を有する反射膜を下基板の内面に備え、この反射膜を半透過反射膜として機能させる液晶表示装置が提案されている。この場合、反射モードでは上基板側から入射した外光が、液晶層透過後に下基板内面の反射膜により反射され、再び液晶層透過後に上基板側から射出され、表示に寄与する。一方、透過モードでは下基板側から入射したバックライトからの光が、反射膜の光透過部から液晶層を透過した後に上基板側から外部に出射され、表示に寄与する。この場合、反射膜の光透過部が形成された領域が透過表示領域となり、それ以外の領域が反射表示領域となる。
【0003】
半透過反射型液晶表示装置において、偏光状態の変化は、液晶の屈折率異方性Δnと液晶層の層厚dとの積(リタデーションΔn・d)の関数となるため、この値を最適化すれば視認性の良い表示が得られる。しかしながら、透過表示光は液晶層を一度だけ通過するのに対して反射表示光は往復で液晶層を2回通過することになるので、透過表示光、反射表示光の双方に対してリタデーションΔn・dを最適化するのは困難である。そのため、反射表示の視認性が良くなるように液晶層厚を設定すると透過表示が犠牲となる。逆に、透過表示の視認性が良くなるように液晶層厚を設定すると反射表示が犠牲となる。
【0004】
そこで、下記の特許文献1には、反射表示領域における液晶層厚を透過表示領域における液晶層厚よりも小さくする構成が開示されている。このような構成はマルチギャップ方式と称せられ、例えば、下基板の透明電極の下層側かつ反射膜の上層側に、透過表示領域に相当する部分が開口部となった液晶層厚調整層を設けることによって実現できる。すなわち、透過表示領域では反射表示領域と比較して液晶層厚調整層の膜厚分だけ液晶層の層厚が大きくなるので、透過表示光、反射表示光の双方に対してリタデーションΔn・dを最適化することができる。例えば具体的には、透過表示領域の液晶層厚を反射表示領域の液晶層厚の略2倍とすれば、透過表示領域と反射表示領域のリタデーションを一致させることができる。その結果、透過表示、反射表示ともにコントラストの高い表示を得ることができる。
【特許文献1】特開平11−242226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今の半透過反射型液晶表示装置の市場においては、反射時の表示品位よりも透過時の表示品位の方が重視される傾向がある。ところが、上記マルチギャップ方式を採用した従来の液晶表示装置においては、反射表示領域の液晶層厚が透過表示領域の液晶層厚よりも薄いため、設計上必要な液晶層厚が反射表示領域側で制約されてしまい、透過表示領域の液晶層厚をあまり薄くすることができない。そのため、透過時の表示品位を重視したいにもかかわらず、所望の透過表示品位を得ることが困難であった。例えば、装置設計上で透過表示領域の液晶層厚を2μmにするのが好ましいことが判っても、その場合には反射表示領域の液晶層厚を1μmにしなければならず、1μmの液晶層厚を液晶セル内に実際に形成することが困難なため、透過表示領域の液晶層厚2μmを実現することができない、というような問題があった。
【0006】
また、上記従来の特許文献1に記載のように、液晶層厚調整層を用いて液晶層の層厚を調整するには、液晶層厚調整層をかなり厚く形成する必要があり、このような厚い層の形成には例えば感光性樹脂などが好適に用いられる。しかしながら、このような構成を液晶セル内で実現しようとすると、階段状の段差を形成するのが難しく、透過表示領域と反射表示領域との境界部分に感光性樹脂のスロープ部(傾斜部)ができてしまうのが避けられない。そのため、垂直配向モードでありながら、スロープ部では液晶が基板面に対して斜めに配向してしまい、この部分が表示のコントラストを低下させる原因になる、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、所望の透過表示品位を実現することができる半透過反射型の液晶表示装置、およびそれを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の液晶表示装置は、一対の基板間に液晶層が挟持されてなる液晶表示装置であって、前記一対の基板のうちの一方の基板の外面から入射される光を透過して透過表示を行う透過表示領域と、他方の基板の外面から入射される光を反射して反射表示を行う反射表示領域とを有し、前記反射表示領域における前記液晶層の層厚が前記透過表示領域における前記液晶層の層厚よりも大きいことを特徴とする。
【0009】
本発明の構成においては、従来のマルチギャップ方式の液晶表示装置とは逆に、反射表示領域での液晶層厚が透過表示領域での液晶層厚よりも大きいので、設計上の液晶層厚が反射表示領域側で制約されることがなく、透過表示領域の液晶層厚を適切に設定することができる。その結果、反射表示を維持したままで所望の透過表示品位を得ることができ、特に透過表示を重視した液晶表示装置に好適な技術を提供することができる。
【0010】
上記本発明の液晶表示装置において、一対の基板のうちの少なくとも一方の基板の内面に、反射表示領域における液晶層の層厚を透過表示領域における液晶層の層厚よりも大きくする液晶層厚調整層を設けることが望ましい。
この構成によれば、基板上に例えば感光性樹脂等を用いて液晶層厚調整層を形成することにより、上記のような反射表示領域と透過表示領域とで液晶層厚の差異を有する液晶表示装置を容易に実現することができる。
【0011】
また、反射表示領域における液晶層の層厚を透過表示領域における液晶層の層厚の略1.5倍とすることが望ましい。
一般に、反射表示領域と透過表示領域とでは透過率−電圧特性(T−V特性)が異なる。ところが上記のような層厚の関係に設定した場合には、反射表示と透過表示のT−V曲線のピークの位置が一致する箇所が生じるので、反射表示領域と透過表示領域とで液晶層に同一の電圧を印加して反射表示と透過表示の双方で明暗表示が可能となる。反射表示領域の液晶層厚を透過表示領域の液晶層厚の1.5倍としたときの反射表示と透過表示のT−V曲線については、[発明を実施するための最良の形態]の項で具体的に示す。また、従来のマルチギャップ構造は透過表示領域の液晶層厚が反射表示領域の液晶層厚の2倍であったのに対し、本発明のマルチギャップ構造は反射表示領域の液晶層厚が透過表示領域の液晶層厚の1.5倍であるため、感光性樹脂等を用いて形成する液晶層厚調整層の層厚が薄くて済む。そのため、液晶層厚調整層のスロープ部(傾斜部)に起因するコントラストの低下を抑えることができる。また、液晶層厚調整層の層厚が薄くなることで製造も容易になる。
【0012】
あるいは、反射表示領域と透過表示領域とで液晶層への印加電圧を異ならせることが望ましい。
上述したように、反射表示領域と透過表示領域とでT−V特性が異なるため、反射表示領域の液晶層厚を透過表示領域の液晶層厚の1.5倍としなかった場合には、反射表示と透過表示のT−V曲線のピークの位置が一致しない。その場合、反射表示領域と透過表示領域とで液晶層への印加電圧を異ならせれば、すなわち、反射表示、透過表示それぞれのT−V曲線のピーク位置に対応した異なる電圧を印加すれば、反射表示と透過表示の双方で明暗表示が可能となる。
【0013】
また、カラー表示を考えた場合、すなわち赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の異なる色表示を行う複数のサブ画素領域を有する場合、反射表示領域における液晶層の層厚を、青色サブ画素領域、緑色サブ画素領域、赤色サブ画素領域の順に大きくなるように設定することが望ましい。あるいは、反射表示領域における前記液晶層への印加電圧を、青色サブ画素領域、緑色サブ画素領域、赤色サブ画素領域の順に大きくなるように設定することが望ましい。
【0014】
異なる色(波長)の色光のことを考慮すると、屈折率の波長分散があるために色(波長)毎にリタデーションが異なり、T−V特性が異なる。具体的には、リタデーションが青色光、緑色光、赤色光の順に大きくなり、反射表示のT−V曲線が青色光、緑色光、赤色光の順に電圧の高い側にシフトする。したがって、青色サブ画素領域、緑色サブ画素領域、赤色サブ画素領域において液晶層厚、または印加電圧を上記のような大小関係に設定すれば、各色毎に反射表示のコントラストを最適化することができる。
【0015】
また、前記液晶層は、初期配向状態が基板面に対して略垂直であり、誘電率異方性が負の液晶からなることが望ましい。
本発明は垂直配向モードの液晶表示装置に好適なものであり、この構成によれば、高コントラスト、広視野角の液晶表示装置を実現することができる。
【0016】
本発明の電子機器は、上記本発明の液晶表示装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、特に透過表示の品位に優れた半透過反射型の液晶表示部を備えた電子機器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態を図1〜図6を参照して説明する。
本実施の形態では、アクティブマトリクス方式の半透過反射型の液晶表示装置の例を挙げて説明する。図1は本実施の形態の液晶表示装置を各構成要素とともに対向基板の側から見た平面図であり、図2は図1のH−H’線に沿う断面図である。図3は、電気光学装置(液晶表示装置)の画像表示領域においてマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。なお、以下の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0018】
[液晶表示装置の全体構成]
図1および図2に示すように、本実施の形態の液晶表示装置100は、TFTアレイ基板10と対向基板20とがシール材52によって貼り合わされ、このシール材52によって区画された領域内に液晶層50が封入されている。シール材52の形成領域の内側の領域には、遮光性材料からなる遮光膜(周辺見切り)53が形成されている。シール材52の外側の領域には、データ線駆動回路201および外部回路実装端子202がTFTアレイ基板10の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査線駆動回路204が形成されている。TFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路204の間を接続するための複数の配線205が設けられている。また、対向基板20の角部においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通材206が配設されている。
【0019】
なお、データ線駆動回路201および走査線駆動回路204をTFTアレイ基板10の上に形成する代わりに、例えば、駆動用LSIが実装されたTAB(Tape Automated Bonding)基板とTFTアレイ基板10上の端子群とを異方性導電膜を介して接続するようにしてもよい。液晶表示装置100においては、使用する液晶の種類、すなわち、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード等の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、位相差板、偏光板等が所定の向きに配置されるが、ここでは図示を省略する。
【0020】
このような構造を有する液晶表示装置100の画像表示領域においては、図3に示すように、複数のドット(サブ画素)100aがマトリクス状に構成されているとともに、これらのドット100aの各々には、画素スイッチング用のTFT30が形成されており、画素信号S1、S2、…、Snを供給するデータ線6aがTFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画素信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。また、TFT30のゲートには走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmをこの順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9は、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線6aから供給される画素信号S1、S2、…、Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極9を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、…、Snは、図2に示す対向基板20の対向電極21との間で一定期間保持される。また、保持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、画素電極9と対向電極21との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量60が付加されている。符号3bは蓄積容量60を構成する容量線である。
【0021】
[1サブ画素の詳細構成]
図4は、本実施の形態の液晶表示装置100の画像を構成する1つのサブ画素100aの概略構成を示す平面図である。図5は、図4のA−A’線に沿う断面図である。なお、TFTアレイ基板10上には、実際にはデータ線6a、走査線3a等の配線やTFT30等が形成されているが、図4においてはこれら配線やTFT等の図示は省略する。本実施の形態の液晶表示装置100はカラー表示を行うものであって、R(赤)、G(緑)、B(青)の隣り合う3つのサブ画素で1つの画素が構成されている。
【0022】
図4に示すように、後述する対向基板上に格子状に設けられた遮光膜40(ブラックマトリクス)によって区画された領域が1つのサブ画素100aを構成している。また、対向基板上には反射膜42が設けられている。反射膜42の中央部には開口部42aが設けられている。この構成により、反射膜42の開口部42aが、後述するバックライトからの射出光を用いて透過表示を行う透過表示領域T、反射膜42の存在する部分が上基板側から入射する外光を用いて反射表示を行う反射表示領域Rとなっている。そして、反射表示領域Rは、後述するように反射光が散乱して射出される構成となっている。
【0023】
本実施の形態の液晶表示装置100は、図5に示すように、上下に対向配置された透明のガラス等からなるTFTアレイ基板10、対向基板20の間に液晶層50が挟持された基本構造を具備している。液晶層50は、初期配向状態が垂直配向を呈する誘電異方性が負の液晶から構成されている。液晶は、屈折率異方性Δnが0.1、誘電率(垂直)εvが9、誘電率(平行)εpが4、弾性係数がK11=10,K22=5,K33=15のものを用いる。
【0024】
対向基板20は透明のガラス、石英等からなる基板本体1aから構成されている。対向基板20の外面側には、光源61および導光板62等を備えたバックライト60が備えられている。TFTアレイ基板10の外面側(観察者側)には、位相差板12と偏光板13とが配置され、対向基板20の外面側(バックライト60側)にも、位相差板14と偏光板15とが配置されている。偏光板13,15は、上側から入射する外光、および下側から入射するバックライト光に対し一方向の直線偏光のみを透過させるものである。また、位相差板12,14は、偏光板13,15を透過した直線偏光を略円偏光(楕円偏光を含む)に変換するものである。したがって、偏光板13,15と位相差板12,14とで円偏光入射手段として機能する。2枚の偏光板13,15の透過軸は直交(クロスニコル)配置されている。
【0025】
対向基板20の内面側には、アルミニウム、銀等の光反射率の高い金属材料からなる反射膜42が形成されている。上述したように、反射膜42の中央部には、透過表示領域Tを構成する開口部42aが設けられている。反射膜42の表面には、例えばアクリル樹脂等からなる下地絶縁層25の表面形状を反映した凹凸が形成されている。この凹凸により反射光が散乱し、反射表示の視認性が向上する。対向基板20の内面側における開口部42a内を含む反射膜42上には、R、G、Bの各着色層を有するカラーフィルター45が設けられている。
【0026】
なお、本実施形態では、透過表示領域Tと反射表示領域Rとで一様のカラーフィルター45を設けているが、この構成に代えて、透過表示領域Tと反射表示領域Rとでカラーフィルターを作り分け、透過表示用カラーフィルターと反射表示用カラーフィルターとで分光特性が異なり、透過表示用カラーフィルターの色純度を反射表示用カラーフィルターよりも高くしたものを設けるようにしてもよい。この構成とすれば、透過表示領域Tと反射表示領域Rにおける色の濃淡のバランスを調整することができる。
【0027】
カラーフィルター45上には、液晶層50において層厚の大きな領域と層厚の小さな領域とを形成するための液晶層厚調整層(絶縁層)46が透過表示領域Tに対応して形成されている。具体的には、液晶層厚調整層46を形成したことで反射表示領域Rにおける液晶層50の層厚が透過表示領域Tにおける液晶層50の層厚よりも大きくなっている。本実施形態の場合、反射表示領域Rの液晶層厚drが7.2μm、透過表示領域Tの液晶層厚dtが4.8μmであり、反射表示領域Rの液晶層厚drが透過表示領域Tの液晶層厚dtの1.5倍となっている。また、図示はしないが、液晶層厚調整層46の縁部の反射表示領域Rと透過表示領域Tとの境界領域は、実際には基板面から所定の角度で傾斜した傾斜面となっている。液晶層厚調整層46には、例えば感光性アクリル樹脂等の透光性を有する絶縁材料が用いられる。
【0028】
また、対向基板20の内面には、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide, 以下、ITOと略記する)等の透明導電膜からなる対向電極21がカラーフィルター45および液晶層厚調整層46を覆うように全面に形成され、さらに対向電極21上には例えばポリイミド等の高分子材料膜からなる垂直配向膜22が形成されている。
【0029】
一方、TFTアレイ基板10は透明のガラス、石英等からなる基板本体2aから構成されている。TFTアレイ基板10の内面側には、ITO等の透明導電膜からなる画素電極9が設けられている。画素電極9上には、対向基板20側と同様、例えばポリイミド等の高分子材料膜からなる垂直配向膜23が形成されている。TFTアレイ基板10、対向基板20の双方の配向膜には、ともに垂直配向処理が施されているが、さらにラビング処理などにより液晶分子にプレチルトを付与しても良い。
【0030】
本実施形態の液晶表示装置100によれば、従来のマルチギャップ方式の液晶表示装置とは逆に反射表示領域Rの液晶層厚drが透過表示領域Tの液晶層厚dtよりも大きいので、設計上の液晶層厚が反射表示領域側で制約されることがなく、透過表示領域の液晶層厚を適切に設定することができる。その結果、反射表示を維持したままで所望の透過表示品位を得ることができ、特に透過表示を重視した液晶表示装置に好適な技術を提供することができる。また、反射表示領域Rの液晶層厚drを透過表示領域Tの液晶層厚dtの1.5倍に設定しているので、反射表示領域Rと透過表示領域Tで液晶層に同一の電圧を印加して反射表示と透過表示の双方で明暗表示が可能となる。以下にその根拠を説明する。
【0031】
図6は、本発明者が行ったシミュレーション結果を示しており、本実施形態の液晶表示装置100における反射表示と透過表示での透過率−電圧特性(T−V曲線)を示したものである。本実施形態において、液晶層50のΔnが0.1、反射表示領域Rの液晶層厚drが7.2μm、透過表示領域Tの液晶層厚dtが4.8μmであるから、反射表示領域Rのリタデーションは0.72、透過表示領域Tのリタデーションは0.48となる。リタデーション0.72の反射表示のT−V曲線を実線、リタデーション0.48の透過表示のT−V曲線を1点鎖線で示した。一方、反射表示の比較例として、従来のマルチギャップ構造、すなわち反射表示領域の液晶層厚を透過表示領域の1/2とした場合(反射表示領域の液晶層厚が2.4μm、リタデーションが0.24)のT−V曲線を破線で示した。
【0032】
図6から判るように、リタデーション0.48の透過表示のT−V曲線(1点鎖線)とリタデーション0.24の反射表示のT−V曲線(破線)がほぼ一致していることから、従来のマルチギャップ構造で透過表示、反射表示ともに良好なコントラストが得られることがわかる。ただし、従来のマルチギャップ構造では液晶層厚が反射表示領域側で制約されてしまうので、透過表示の設計には不利になる、という欠点がある。これに対して、リタデーション0.48の透過表示のT−V曲線(1点鎖線)とリタデーション0.72の反射表示のT−V曲線(実線)を比較すると、曲線の形は全く異なるものの、曲線のピーク位置が電圧V=3.1Vのところで一致している。したがって、例えば電圧V=0V(電圧無印加状態)と電圧V=3.1Vとで液晶の駆動を行えば、反射表示、透過表示ともに電圧V=0Vで暗表示(2枚の偏光板の直交状態と同じ暗さ)、電圧V=3.1Vで明表示(透過表示の透過率:48%、反射表示の透過率:42%)を行うことができる。
【0033】
さらに本実施の形態の場合、反射表示領域Rの液晶層厚drを透過表示領域Tの液晶層厚dtの1.5倍に設定しているので、感光性アクリル樹脂等を用いて形成する液晶層厚調整層46の層厚が従来のマルチギャップ構造(2倍)の場合に比べて薄くて済む。そのため、液晶層厚調整層46のスロープ部(傾斜部)の面積が小さくなり、スロープ部に起因するコントラストの低下を抑えることができる。また、液晶層厚調整層46の層厚が薄くなることで製造も容易になる。
【0034】
なお、本実施形態では、反射表示領域Rの液晶層厚drを透過表示領域Tの液晶層厚dtの1.5倍に設定し、反射表示と透過表示を同一の印加電圧で駆動する例を示したが、反射表示領域Rの液晶層厚を透過表示領域Tの液晶層厚の1.5倍とせずに、反射表示領域Rと透過表示領域Tとで液晶層50への印加電圧を異ならせる構成としても良い。
【0035】
図6の場合と異なり、反射表示領域Rの液晶層厚を透過表示領域Tの液晶層厚の1.5倍としない場合には、反射表示と透過表示のT−V曲線のピーク位置が一致しない。したがって、その場合には反射表示領域Rと透過表示領域Tで異なる電圧、すなわち反射表示領域RでT−V曲線がピークを示す電圧、透過表示領域TでT−V曲線がピークを示す電圧をそれぞれの領域に印加すれば、反射表示と透過表示の双方で明暗表示が可能となる。反射表示領域Rと透過表示領域Tとで液晶層50への印加電圧を異ならせるための具体的な手段としては、(1)反射表示領域Rと透過表示領域Tを別々のTFT(スイッチング素子)、別々の画素電極で駆動する、(2)同一のTFT(スイッチング素子)、画素電極で駆動した場合でも画素電極9上に反射表示領域Rと透過表示領域Tとで異なる膜厚の誘電体膜を配置することで液晶層50に実効的に印加される電圧を変える、等の方法が考えられる。
【0036】
[第2の実施の形態]
以下、本発明の第2の実施の形態について図7に基づいて説明する。
本実施形態の液晶表示装置の基本構成は第1実施形態と全く同様であり、異なる色のサブ画素毎に構成を変えている点のみが第1実施形態と異なっている。よって、液晶表示装置の基本構成部分の説明は省略する。
【0037】
本実施形態の液晶表示装置は、第1実施形態と同様、反射表示領域Rの液晶層厚drが透過表示領域Tの液晶層厚dtの1.5倍となっている。しかしながら、異なる色のサブ画素間で見ると、透過表示領域Tにおける液晶層50への印加電圧は一致しているが、反射表示領域Rにおける液晶層50への印加電圧が、青色サブ画素領域、緑色サブ画素領域、赤色サブ画素領域の順に大きくなるように設定されている。例えば、青色サブ画素領域が2.7V、緑色サブ画素領域が3.1V、赤色サブ画素領域が3.9Vに設定されている。透過表示領域Tにおける液晶層50への印加電圧は3.1Vである。
【0038】
第1実施形態において示した図6のT−V特性は色(波長)の違いを考慮しておらず、透過光、反射光のY値(明度)で示したものであった。ここで、異なる色(波長)の色光毎に考えると、屈折率の波長分散があるために色(波長)毎にリタデーションが異なり、T−V曲線が異なる。
【0039】
図7は、本発明者が行ったシミュレーション結果を示しており、色毎の反射表示の透過率−電圧特性(T−V曲線)を示している。液晶層50のΔn、液晶層厚dr等の諸条件は、第1実施形態と同様である。反射表示領域のリタデーションは0.72である。図7では、青色光(波長:450nm)のT−V曲線を破線、緑色光(波長:550nm)のT−V曲線を実線、赤色光(波長:650nm)のT−V曲線を1点鎖線で示した。
【0040】
図7に示したように、リタデーションが青色光、緑色光、赤色光の順に大きくなり、T−V曲線が青色光、緑色光、赤色光の順に電圧の高い側にシフトしている。各T−V曲線のピーク位置(2つのピークのうちの電圧が高い側)の電圧は、青色光が2.7V、緑色サブ画素領域が3.1V、赤色サブ画素領域が3.9Vである。したがって、各色のサブ画素毎に反射表示領域Rにおける液晶層50への印加電圧を上記の値に設定すれば、各色毎の透過率が最も高くなるため、全体として明るく、高コントラストの表示が得られる。
【0041】
なお、本実施形態では反射表示領域Rにおける液晶層50への印加電圧を、青色サブ画素領域、緑色サブ画素領域、赤色サブ画素領域の順に大きくする例を示したが、これに代えて、反射表示領域Rにおける液晶層50の層厚を、青色サブ画素領域、緑色サブ画素領域、赤色サブ画素領域の順に大きくなるように設定しても良い。この構成でも上記と同様な効果が得られる。
【0042】
[電子機器]
上記実施の形態の液晶表示装置を備えた電子機器の例について説明する。
図8は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図8において、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は上記の液晶表示装置を用いた液晶表示部を示している。
図8に示す電子機器は、上記実施の形態の液晶表示装置を用いた液晶表示部を備えているので、特に透過表示品位に優れた表示部を有する電子機器を実現することができる。
【0043】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施形態では液晶層に垂直配向液晶を用いた例を示したが、ツイストしていないホモジニアス配向液晶を用いることもできる。反射表示領域の液晶層厚を透過表示領域の液晶層厚よりも大きくする手段としては、透過表示領域に液晶層厚調整層を設ける以外の他の手段を用いても良い。また、スイッチング素子に薄膜ダイオード(TFD)を用いたアクティブマトリクス型液晶表示装置に本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態の液晶表示装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1のH−H’線に沿う断面図である。
【図3】同、液晶表示装置の表示部の等価回路図である。
【図4】同、液晶表示装置の1つのサブ画素を示す平面図である。
【図5】図4のA−A’線に沿う断面図である。
【図6】同、液晶表示装置のT−V曲線を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態の液晶表示装置のT−V曲線を示す図である。
【図8】本発明の電子機器の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
9…画素電極、10…TFTアレイ基板、20…対向基板、21…対向電極、46…液晶層厚調整層、50…液晶層、100…液晶表示装置、R…反射表示領域、T…透過表示領域、dr…反射表示領域の液晶層厚、dt…透過表示領域の液晶層厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板間に液晶層が挟持されてなる液晶表示装置であって、
前記一対の基板のうちの一方の基板の外面から入射される光を透過して透過表示を行う透過表示領域と、他方の基板の外面から入射される光を反射して反射表示を行う反射表示領域とを有し、前記反射表示領域における前記液晶層の層厚が前記透過表示領域における前記液晶層の層厚よりも大きいことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板の内面には、前記反射表示領域における前記液晶層の層厚を前記透過表示領域における前記液晶層の層厚よりも大きくする液晶層厚調整層が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記反射表示領域における前記液晶層の層厚が前記透過表示領域における前記液晶層の層厚の略1.5倍であることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記反射表示領域と前記透過表示領域とで前記液晶層への印加電圧が異なることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
赤色、緑色、青色の異なる色表示を行う複数のサブ画素領域を有し、前記反射表示領域における前記液晶層の層厚が、青色サブ画素領域、緑色サブ画素領域、赤色サブ画素領域の順に大きくなっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
赤色、緑色、青色の異なる色表示を行う複数のサブ画素領域を有し、前記反射表示領域における前記液晶層への印加電圧が、青色サブ画素領域、緑色サブ画素領域、赤色サブ画素領域の順に大きくなっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記液晶層が、初期配向状態が基板面に対して略垂直であり、誘電率異方性が負の液晶からなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の液晶表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−78541(P2006−78541A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259464(P2004−259464)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】