説明

液晶表示装置を用いた紙葉類識別方法

【課題】携帯電話機を利用して紙幣などの紙葉類の識別を行うこと。
【解決手段】携帯電話機1の操作面3には受光素子8の受光面8aが配置され、紙幣Pを挟み、バックライト付きの液晶表示装置6が内蔵されている表示部5を折り畳み、紙幣識別キー9を操作すると、液晶表示パネル7の表示ドットが左側から右側に向けて順次にオンし、紙幣Pを照射する照明光が左から右に向けてライン状に紙幣Pを走査する。紙幣Pの透過光パターンが受光素子8を介してメモリ13に読み込まれ、メモリ13に保持されている紙幣識別基準15を参照して紙幣Pの識別が行われる。紙幣搬送機構を必要とせず、受光部を配置するのみで、携帯電話機1に紙幣識別機能を搭載できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣、チケットなどの紙葉類の種類、真偽を識別するための紙葉類識別方法に関し、バックライト付きのドットマトリックス式液晶表示装置を用いて紙葉類の識別を行う紙葉類識別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙葉類の識別装置、例えば、紙幣識別装置では、特許文献1に開示されているように、挿入口から挿入された識別対象の紙幣を、識別用のセンサの設置位置を通過する搬送経路に沿って搬送して、紙幣に担持されている情報を読み取り、これに基づき識別を行うように構成されている。
【特許文献1】特開2005−208907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような紙幣識別装置では、紙幣を搬送するためのモータ、ギヤ、搬送ベルトなどを含む搬送機構が必要である。このため、搬送機構を設置するためのスペースを確保する必要があるので、装置の小型化に限界がある。また、搬送機構の搬送ムラに起因して識別精度が低下する。さらに、搬送機構を省略できれば、騒音、振動を無くすことができ、また、モータなどによる消費電力を節約できる。
【0004】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、搬送機構を必要とすることなく、紙幣などの紙葉類の識別を行うことのできる紙葉類識別方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の紙葉類識別方法では、バックライト付きのドットマトリックス式の液晶表示装置に着目し、当該液晶表示装置をライトバルブとして用いて、一つあるいは複数の表示ドットを単位として、所定の方向に向けて順次に点灯させ、点灯した表示ドットにより、識別対象の紙葉類の表面部分を順次に照明し、これにより、順次に移動する前記紙葉類の照明領域から得られる透過光を受光し、受光結果に基づき、前記紙葉類を識別することを特徴としている。
【0006】
本発明では、液晶表示装置によって、識別対象の紙葉類の表面部分を所定の方向に順次に照明光により走査できる。したがって、搬送機構によって紙葉類をセンサ位置を経由させて搬送する場合と同様な透過光パターンを得ることができる。よって、搬送機構を用いることなく、紙葉類の識別を行うことができる。
【0007】
一般的には、前記表示ドットをライン状に順次に点灯することにより、各照明用ドットによる照明光によって前記紙葉類の表面部分をライン状に走査すればよい。
【0008】
また、本発明の紙葉類識別方法は、紙幣の識別(種類および真偽の識別)に用いることができる。
【0009】
次に、本発明は、携帯電話機などの携帯用通信端末を用いた紙葉類識別方法に関するものであり、バックライト付きのドットマトリックス式の液晶表示装置を備えた携帯用通信端末に、前記液晶表示装置の液晶表示画面に対峙可能な受光部を配置し、識別対象の紙葉類を、前記液晶表示画面および前記受光部の間に挟み、この状態で、上記のようにして液晶表示装置の表示ドットを駆動制御して、前記紙葉類の識別動作を行わせることを特徴としている。
【0010】
携帯電話機などの既存の携帯用通信端末に備わっている機能を利用しているので、受光部を配置するだけで、紙幣などの紙葉類の識別機能を、簡単かつコスト増を伴うことなく、携帯用通信端末に付与できる。
【0011】
また、携帯用通信端末を利用する場合には、その通信機能を利用して、紙葉類の識別基準となる情報を受信して、既に設定されている識別基準を更新することが望ましい。通信機能を利用して識別基準を更新すれば、新札などの識別、識別基準のレベル変更などに簡単に対応できる。
【0012】
一方、本発明は携帯用通信端末に関するものであり、上記のような紙葉類の識別機能を備えていることを特徴としている。このような携帯用通信端末を用いることにより、時間および場所を選ばずに、紙幣などの紙葉類の識別を行うことができるので便利である。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、バックライトを備えたドットマトリックス式の液晶表示装置を利用して、紙幣などの紙葉類を照明光によって所定方向に走査し、これによって得られる透過光を受光して紙葉類の識別を行うようにしている。したがって、紙葉類の搬送機構が不要となるので、小型・コンパクトで、騒音および電力消費の少ない識別方法を実現できる。
【0014】
また、本発明では、携帯電話機などの携帯用通信端末を利用し当該識別方法を実施しているので、受光部のみを搭載するだけで、コスト高を招くことなく、既存の携帯用通信端末に紙葉類識別機能を付与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、本発明による実施の形態を説明する。
【0016】
図1は本発明による紙幣識別機能が搭載された携帯電話機を示す概略構成図であり、図2はその制御系を示す概略ブロック図である。携帯電話機1は、テンキー2、各種のファンクションキーなどが配列された操作面3を備えた操作部4と、この操作部4に折り畳み可能な状態で連結されている表示部5とを備えている。表示部5には液晶表示装置6が内蔵されており、その液晶表示パネル7の液晶表示画面7aが表示部表面に配置されている。操作面3には、その幅方向に沿って横長の面状あるいはライン状の受光素子8の受光面8aが配置されており、表示部5の背面には、紙幣識別動作を起動させるための紙幣識別キー9が配置されている。
【0017】
携帯電話機1には、マイクロコンピュータを中心に構成された駆動制御システム10が内蔵されており、駆動制御システム10には、通信制御回路11、送受信回路12、メモリ13と共に、紙幣識別処理部14が備わっている。駆動制御システム10には、操作面3のテンキー2、紙幣識別キー9から操作入力が供給され、受光素子8からは受光量に対応する検出信号が供給される。受光素子8から得られる検出信号は、駆動制御システム10の紙幣識別処理部14に供給される。紙幣識別処理部14では、検出信号によって表される紙幣情報を、メモリ13に予め保持されている紙幣識別基準15と照合することにより、紙幣の種類、真偽の識別を行うようになっている。
【0018】
駆動制御システム10の出力側は、液晶ドライバ16を介して、液晶の表示ドット(画素)がマトリックス状に配列された構成の液晶表示パネル7に接続されている。液晶表示装置6は液晶表示パネル7の背面に配置された面光源からなるバックライト17を備えている。液晶の各表示ドットをオン(透明状態)およびオフ(不透明状態)に切り替えることにより、液晶表示装置6はライトバルブとして機能し、各表示ドットを点光源として用いることができる。
【0019】
図3(a)は、本例の携帯電話機1を用いて紙幣Pの識別を行っている状態を示す説明図である。この図に示すように、識別対象の紙幣Pを挟み、操作部4に表示部5を折り畳み、この状態で表示部5の背面側の紙幣識別キー9を操作する。
【0020】
図3(b)は液晶表示パネル7の一部を取り出して示す説明図である。この図に示すパネル領域7Aは、携帯電話機1を折り畳んだ状態において、その操作面3に配置されている受光面8aに対峙する領域である。このパネル領域7Aに含まれているマトリックス状に配列されているm行n列(m、nは正の整数)の液晶の各表示ドットD(m,n)は、紙幣識別キー9が操作された時には、次のように駆動される。
【0021】
各列のm個の表示ドットを単位として照明光源が形成され、当該照明光源が順次に左側から右側に移動する。換言すると、最初に、一列目の4個の表示ドットD(1,1)〜D(m,1)が同時にオン状態に切り替わり、当該部分から照明光が照射され、順次に、次の列の4個の表示ドットD(1,2)〜D(m,2)が代わりにオン状態に切り替わり、当該部分から照明光が照射される。このようにして、順次に表示ドットの切り替えが行われるので、照明光源が図面に向かって左側から右側に移動する。この結果、紙幣Pの表面に沿って照明光を横方向に直線状に走査した場合と同様になる。紙幣Pを走査することにより得られる照明光の透過光が、反対側の受光素子8によって受光される。受光素子8から得られる所定長さの一ライン分の紙幣情報(光透過パターン)が、紙幣識別処理部14において、紙幣識別基準15に照合され、紙幣Pの種類、真偽が判別される。判別結果は、例えば、液晶表示画面7a上に表示される。
【0022】
ここで、新しい紙幣が発行された場合などにおいては、メモリ13に保持されている紙幣識別基準15を新たにインストールする必要がある。この場合には、携帯電話機1の通信機能を利用して、紙幣識別基準の配信元にアクセスして、新しい紙幣に対応する紙幣識別基準をダウンロードしてメモリ13にインストールすればよい。また、識別基準のレベルを変更する場合、例えば、偽札が出回って、識別精度を高める必要がある場合にも、そのような識別基準をダウンロードして更新することができる。
【0023】
なお、以上の説明は、携帯電話機に本発明の紙幣識別方法による識別機能を搭載した例に関するものであるが、携帯電話機以外の携帯用通信端末に識別機能を搭載することも勿論可能である。また、通信機能が備わっていない携帯用電子機器、例えば、電卓、電子手帳などに本発明による識別機能を搭載することも可能である。いずれにせよ、バックライト付きのドットマトリックス式の液晶表示装置が備わっている電子機器であれば、本発明の方法を適用できる。
【0024】
また、上記の例は紙幣の識別に関するものであるが、本発明の識別方法は、紙幣以外の紙葉類、例えば、有価証券、入場券などのチケットなどの識別にも適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を適用した携帯電話機を示す概略構成図である。
【図2】図1の携帯電話機の概略ブロック図である。
【図3】(a)は図1の携帯電話機による紙幣識別時の状態を示す説明図であり、(b)は紙幣識別時の液晶表示パネルの表示ドットの駆動形態を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 携帯電話機
2 テンキー
3 操作面
4 操作部
5 表示部
6 液晶表示装置
7 液晶表示パネル
7A パネル領域
7a 液晶表示画面
8 受光素子
8a 受光面
9 紙幣識別キー
10 駆動制御システム
11 通信制御回路
12 送受信回路
13 メモリ
14 紙幣識別処理部
15 紙幣識別基準
16 液晶ドライバ
17 バックライト
D(m,n) 表示ドット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックライトを備えたドットマトリックス式の液晶表示装置をライトバルブとして用いて、一つあるいは複数の表示ドットを単位として、所定の方向に向けて順次に点灯させ、
点灯した表示ドットにより、識別対象の紙葉類の表面部分を順次に照明し、
順次に移動する前記紙葉類の照明領域から得られる透過光を受光し、
受光結果に基づき、前記紙葉類を識別することを特徴とする液晶表示装置を用いた紙葉類識別方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記表示ドットをライン状に順次に点灯することにより、各表示ドットによる照明光によって前記紙葉類の表面部分をライン状に走査することを特徴とする液晶表示装置を用いた紙葉類識別方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記紙葉類は紙幣であり、
前記受光結果に基づき、紙幣の種類および真偽を識別することを特徴とする液晶表示装置を用いた紙葉類識別方法。
【請求項4】
バックライト付きのドットマトリックス式の液晶表示装置を備えた携帯用通信端末に、前記液晶表示装置の液晶表示画面に対峙可能な受光部を配置し、
識別対象の紙葉類を、前記液晶表示画面および前記受光部の間に挟み、
この状態で、請求項1ないし3のうちのいずれかの項に記載の方法により、前記携帯用通信端末によって、前記紙葉類の識別動作を行わせることを特徴とする携帯用通信端末を用いた紙葉類識別方法。
【請求項5】
請求項4において、
携帯用通信端末の通信機能を利用して、紙葉類の識別基準となる情報を受信して、既に設定されている識別基準を更新することを特徴とする携帯用通信端末を用いた紙葉類識別方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の方法により紙葉類の識別を行うことを特徴とする携帯用通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−172218(P2007−172218A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367852(P2005−367852)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000128946)マミヤ・オーピー株式会社 (122)
【Fターム(参考)】