説明

液晶表示装置及び配向膜材料

【課題】IPS方式の液晶表示装置において、アンカリング強度の大きい光配向膜を形成し、液晶表示装置のAC残像を抑制する。
【解決手段】光配向処理を施す配向膜材料において、剛直な高分子となるポリイミドと、柔軟な高分子となるポリイミドを混合して用いる。本発明にかかるこの材料は、偏光紫外線照射後におけるオリゴマの回転を生じやすく、配向膜のUV吸収二色比を向上させることが出来る。したがって、配向膜による液晶に対するアンカリング強度が強く、AC残像を抑制することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に係り、特に配向膜に光の照射で配向制御能を付与した液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では画素電極および薄膜トランジスタ(TFT)等がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して、TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタ等が形成された対向基板が設置され、TFT基板と対向基板の間に液晶が挟持されている。そして液晶分子による光の透過率を画素毎に制御することによって画像を形成している。
【0003】
液晶表示装置はフラットで軽量であることから、TV等の大型表示装置から、携帯電話やDSC(Digital Still Camera)等、色々な分野で用途が広がっている。一方、液晶表示装置では視野角特性が問題である。視野角特性は、画面を正面から見た場合と、斜め方向から見た場合に、輝度が変化したり、色度が変化したりする現象である。視野角特性は、液晶分子を水平方向の電界によって動作させるIPS(In Plane Switching)方式が優れた特性を有している。
【0004】
液晶表示装置に使用する配向膜を配向処理すなわち配向制御能を付与する方法として、従来技術としてラビングで処理する方法がある。このラビングによる配向処理は、配向膜を布で擦ることで配向処理を行うものであるが、一方、配向膜に非接触で配向制御能を付与する光配向法という手法がある。IPS方式はプレティルト角が必要無いために、光配向法を適用することが出来る。「特許文献1」〜「特許文献7」は光配向膜に関する公知例であり、直線偏光された紫外線を照射することにより、分子の架橋反応や開裂反応、二量化反応を薄膜内で誘起し、薄膜における分子の並びに異方性を付与することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−249357号公報
【特許文献2】特願2002−172111号公報
【特許文献3】特開2002−329197号公報
【特許文献4】特開2003−134412号公報
【特許文献5】特願2004−129908号公報
【特許文献6】特開2004−18257号公報
【特許文献7】特開2004−193753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の光配向処理は、ラビング処理に比べてAC残像と称する焼付きが生じやすい。AC残像は、液晶表示装置を長時間動作させた場合、初期配向の方向が液晶表示装置の製造当初からの方向と、ずれてきてしまい、この原因によって生ずる残像である。AC残像は非可逆的であり、回復はできない。
【0007】
このようなAC残像は、(1)配向膜の配向秩序性の向上、(2)配向膜の弾性率、硬度等をパラメータとする機械的強度の向上、(3)配向膜と液晶との親和力の向上によって改善することが出来る。中でも配向膜の配向秩序性の向上がAC残像の低減には特に有効である。
【0008】
しかし、光配向法においては、配向秩序性を向上する有効な方法は見出されていなかった。本発明の課題は、光配向処理において、配向膜の配向秩序性を向上し、AC残像の発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記問題を克服するものであり、具体的な手段は次のとおりである。すなわち、画素電極とTFTを有する画素の上に配向膜が形成されたTFT基板と、前記TFT基板に対向し、カラーフィルタの上に配向膜が形成された対向基板と、前記TFT基板の配向膜と前記対向基板の配向膜の間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、前記配向膜は光配向処理を受けており、前記配向膜は、(化1)で示すパラフェニルジアミンと(化3)で示す1,3−ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物の脱水縮合物をエステル化した配向材料(柔構造)と、(化2)で示す1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタンと(化3)で示す1,3−ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物の脱水縮合物をエステル化した配向材料(剛構造)を用いていることを特徴とする液晶表示装置である。
【0010】
前記柔構造の全体に対するwt%は0wt%よりも大きく80wt%以下であり、より好ましくは、60wt%以上、80wt%以下である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光配向膜において、オーダーパラメータ(OP)を大きくすることが出来、アンカリング強度を上げることが出来るので、AC残像を抑制した光配向膜を有する液晶表示装置を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】IPS方式の液晶表示装置の断面図である。
【図2】図1の画素電極の平面図である。
【図3】配向膜の液性プロセスを示す工程図である。
【図4】従来例と本発明による光配向処理において、各工程毎の膜構造を示す模式図である。
【図5】柔構造のwt%と配向膜のオーダーパラメータ(OP)の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例を説明する前に、本発明が適用されるIPS方式の液晶表示装置の構造について説明する。図1はIPS方式の液晶表示装置の表示領域における構造を示す断面図である。IPS方式の液晶表示装置の電極構造は種々のものが提案され、実用化されている。図1の構造は、現在広く使用されている構造であって、簡単に言えば、平面ベタで形成された対向電極108の上に絶縁膜を挟んで櫛歯状の画素電極110が形成されている。そして、画素電極110と対向電極108の間の電圧によって液晶分子301を回転させることによって画素毎に液晶層300の光の透過率を制御することにより画像を形成するものである。以下に図1の構造を詳しく説明する。なお、本発明は、図1の構成を例にとって説明するが、図1以外のIPSタイプの液晶表示装置にも適用することが出来る。
【0014】
図1において、ガラスで形成されるTFT基板100の上に、ゲート電極101が形成されている。ゲート電極101は走査線と同層で形成されている。ゲート電極101はAlNd合金の上にMoCr合金が積層されている。
【0015】
ゲート電極101を覆ってゲート絶縁膜102がSiNによって形成されている。ゲート絶縁膜102の上に、ゲート電極101と対向する位置に半導体層103がa−Si膜によって形成されている。a−Si膜はプラズマCVDによって形成される。a−Si膜はTFTのチャネル部を形成するが、チャネル部を挟んでa−Si膜上にソース電極104とドレイン電極105が形成される。なお、a−Si膜とソース電極104あるいはドレイン電極105との間には図示しないn+Si層が形成される。半導体層とソース電極104あるいはドレイン電極105とのオーミックコンタクトを取るためである。
【0016】
ソース電極104は映像信号線が兼用し、ドレイン電極105は画素電極110と接続される。ソース電極104もドレイン電極105も同層で同時に形成される。本実施例では、ソース電極104あるいはドレイン電極105はMoCr合金で形成される。ソース電極104あるいはドレイン電極105の電気抵抗を下げたい場合は、例えば、AlNd合金をMoCr合金でサンドイッチした電極構造が用いられる。
【0017】
TFTを覆って無機パッシベーション膜106がSiNによって形成される。無機パッシベーション膜106はTFTの、特にチャネル部を不純物401から保護する。無機パッシベーション膜106の上には有機パッシベーション膜107が形成される。有機パッシベーション膜107はTFTの保護と同時に表面を平坦化する役割も有するので、厚く形成される。厚さは1μmから4μmである。
【0018】
有機パッシベーション膜107には感光性のアクリル樹脂、シリコン樹脂、あるいはポリイミド樹脂等が使用される。有機パッシベーション膜107には、画素電極110とドレイン電極105が接続する部分にスルーホール111を形成する必要があるが、有機パッシベーション膜107は感光性なので、フォトレジストを用いずに、有機パッシベーション膜107自体を露光、現像して、スルーホール111を形成することが出来る。
【0019】
有機パッシベーション膜107の上には対向電極108が形成される。対向電極108は透明導電膜であるITO(Indium Tin Oxide)を表示領域全体にスパッタリングすることによって形成される。すなわち、対向電極108は面状に形成される。対向電極108を全面にスパッタリングによって形成した後、画素電極110とドレイン電極105を導通するためのスルーホール111部だけは対向電極108をエッチングによって除去する。
【0020】
対向電極108を覆って上部絶縁膜109がSiNによって形成される。上部絶縁膜109が形成された後、エッチングによってスルーホール111を形成する。この上部絶縁膜109をレジストにして無機パッシベーション膜106をエッチングしてスルーホール111を形成する。その後、上部絶縁膜109およびスルーホール111を覆って画素電極110となるITOをスパッタリングによって形成する。スパッタリングしたITOをパターニングして画素電極110を形成する。画素電極110となるITOはスルーホール111にも被着される。スルーホール111において、TFTから延在してきたドレイン電極105と画素電極110が導通し、映像信号が画素電極110に供給されることになる。
【0021】
図2に画素電極110の1例を示す。画素電極110は、櫛歯状の電極である。櫛歯と櫛歯の間にスリット112が形成されている。画素電極110の下方には、平面状の対向電極108が形成されている。画素電極110に映像信号が印加されると、スリット112を通して対向電極108との間に生ずる電気力線によって液晶分子301が回転する。これによって液晶層300を通過する光を制御して画像を形成する。
【0022】
図1はこの様子を断面図として説明したものである。櫛歯状の電極と櫛歯状の電極の間は図1に示すスリット112となっている。対向電極108には一定電圧が印加され、画素電極110には映像信号による電圧が印加される。画素電極110に電圧が印加されると図1に示すように、電気力線が発生して液晶分子301を電気力線の方向に回転させてバックライトからの光の透過を制御する。画素毎にバックライトからの透過が制御されるので、画像が形成されることになる。
【0023】
図1の例では、有機パッシベーション膜107の上に、面状に形成された対向電極108が配置され、上部絶縁膜109の上に櫛歯電極110が配置されている。しかしこれとは逆に、有機パッシベーション膜107の上に面状に形成された画素電極110を配置し、上部絶縁膜109の上に櫛歯状の対向電極108が配置される場合もある。画素電極110の上には液晶分子301を配向させるための配向膜113が形成されている。配向膜113は光配向処理が施されている。
【0024】
図1において、液晶層300を挟んで対向基板200が設置されている。対向基板200の内側には、カラーフィルタ201が形成されている。カラーフィルタ201は画素毎に、赤、緑、青のカラーフィルタ201が形成されており、カラー画像が形成される。カラーフィルタ201とカラーフィルタ201の間にはブラックマトリクス202が形成され、画像のコントラストを向上させている。なお、ブラックマトリクス202はTFTの遮光膜としての役割も有し、TFTに光電流が流れることを防止している。
【0025】
カラーフィルタ201およびブラックマトリクス202を覆ってオーバーコート膜203が形成されている。カラーフィルタ201およびブラックマトリクス202の表面は凹凸となっているために、オーバーコート膜203によって表面を平らにしている。オーバーコート膜203の上には、液晶の初期配向を決めるための配向膜113が形成されている。この配向膜113にも光配向処理が施されている。
【0026】
本発明は、図1における光配向膜の配向秩序性を向上してAC残像を低減することである。発明者は、配向膜材料における分子吸光係数、光分解の量子収率等の物性値、並びに、プロセスパラ(加熱温度、加熱時間、露光時間等)と配向秩序性との関係を理論的に解析し、その結果、配向膜材料の分子長軸方向と短軸方向との分子吸光係数比と、偏光露光によるポリイミドの光分解で生成するオリゴマの分子方向変化が、配向秩序性の向上に重要な役割を果たしていることを明らかにした。ここで、分子吸光係数比はεp/εvのことであり、εpはポリイミドの分子長軸方向の分子吸光比であり、εvはポリイミドの分子短軸方向の分子吸光比である。
【0027】
分子長軸方向と分子短軸方向との分子吸光係数比が大きいほど、偏光露光による電界ベクトルと平行方向と、直交方法のポリイミドの濃度差は大きくなるので、配向秩序性の高い配向膜の形成が可能になる。一般に分子長軸方向と短軸方向との分子吸光係数比の大きいポリイミドは分子の直線性が高く、剛直な高分子である。
【0028】
一方、オリゴマの方向変化量は、柔軟性の高いポリイミド(主鎖にアルキル鎖を有し、偏光露光後の加熱で分子軸回転が誘起されるポリイミド)程大きくなる。このため、光分解での配向秩序性向上と偏光露光での配向秩序性向上を両立させるには、相反するポリイミドの特性を解消する必要があった。
【0029】
発明者は、光配向膜に要求される剛直性と柔軟性との相反関係は、分子吸光係数比の高いポリイミド(剛直)と、柔軟性の高いポリイミドを混合すれば解消することが出来、高配向秩序性を有する配向膜を実現できることを見出した。以下に実施例を用いて本発明の内容を詳細に説明する。
【実施例1】
【0030】
図3は、光配向処理を用いた配向膜の形成工程を示す図である。図3の工程は、TFT基板、対向基板共通である。図1における画素電極が形成されたTFT基板、あるいは、オーバーコート膜が形成された対向基板に配向膜を塗布する。配向膜の塗布は、スピンコーティング、インクジェット、スプレーコートあるいはロッドコーテティング等が用いられる。
【0031】
配向膜材料としては、(化1)で示すパラフェニルジアミンと(化3)で示す1,3−ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物の脱水縮合物をエステル化した配向材料、並びに、(化2)で示す1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタンと(化3)で示す1,3−ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物の脱水縮合物をエステル化した配向材料を重量比で1:1の割合で含むものである。
【0032】
【化1】

【0033】
【化2】

【0034】
【化3】

【0035】
塗布された配向膜を230℃で焼成して配向膜のイミド化を行う。このとき、(化2)で示すパラフェニルジアミンと(化3)で示す1,3−ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物の脱水縮合物をエステル化した配向材料は剛構造となり(以後剛構造の配向膜)、(化1)で示す1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタンと(化3)で示す1,3−ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物の脱水縮合物をエステル化した配向材料は柔構造となる(以後柔構造の配向膜)。
【0036】
その後、基板の温度を室温近くにまで低下させる。なお、基板は薄いので、焼成炉から出すと短時間で温度は低下する。この状態で、配向膜に対して光配向のために、直線偏光された紫外線を照射する。直線偏光された紫外線によって、高分子の配向膜が当該偏光方向で主鎖が切断されることによって一軸性が付与される。このとき、ポリマーが切断されることによって揮発性の低分子物質、あるいは、オリゴマが生成される。紫外線は、ウシオ製Deep−UVランプ(超高圧He−Xe)と偏光子を組み合わせた偏光露光装置を用いて、配向膜に3J/cm照射した。
【0037】
紫外線照射後、基板を230℃に加熱して、揮発性の低分子物質を揮発させる。このとき、剛構造の配向膜における不揮発性のオリゴマは配向膜中で不動である。一方、柔構造の配向膜における不揮発性のオリゴマは配向膜中で回転することが出来、配向秩序性を向上させることが出来る。
【0038】
図4は、従来例における配向膜構造と本発明における配向膜構造を対比して示した模式図である。上側が従来構造であり、下側が本発明による構造である。従来例における材料は、剛構造の配向膜のみで形成され、本発明における材料は、剛構造と柔構造の混在である。図4では、このような配向膜材料を重量比1:1で混合し、石英基板上に塗布したものである。
【0039】
図4において、左側の欄は、配向膜を塗布後、230℃で10分間加熱した状態における配向膜の構造の模式図である。従来例は、ポリイミドが格子状に規則正しく形成され、剛構造となっている。これに対して、本発明では、ポリイミドが格子状に形成された剛構造と、フレキシブルなポリイミドがフレキシブルに交差する柔構造とが混在している。
【0040】
その後、基板を常温付近にまで冷却し、偏光紫外線を用いて露光した状態を、図4の中欄に示す。図4の中欄において、偏光紫外線によって、紫外線の偏光の電界ベクトル方向において、ポリイミドの主鎖が切断され、配向膜の配向秩序性が現出している。これは、従来構造、本発明の構造とも同様である。
【0041】
その後、230℃で10分間ほど焼成した状態を図4の右欄に示す。従来例は、剛構造のポリイミドのみで形成されているので、オリゴマが不動である。一方、本発明においては、剛構造と柔構造とが混在している状態であり、剛構造におけるオリゴマ、柔構造におけるオリゴマのいずれも回転して、配向秩序性が向上している。
【0042】
以上の説明をまとめると次の通りである。すなわち、図4の上部に示した従来構造においては、分子長軸方向と短軸方向とで分子吸光係数差が大きい、剛直なポリイミドを配向膜材料として用いることで、配向秩序性をできるだけ大きくすることが行われていた。これは、ポリイミドの光分解速度がポリイミドの分子吸光係数に比例するので、分子吸光係数の差が大きいほど、偏光紫外線照射後のE‖方向とE⊥方向のポリイミドの濃度差が大きくなることを利用して配向秩序性を大きくするという考えに基づいている。ここで、E‖は偏光の電界ベクトルと平行な成分であり、E⊥は偏光の電界ベクトルと垂直な成分である。
【0043】
しかし、分子吸光係数の差が大きいポリイミドは、一般に、分子の直線性が高く、剛直な高分子である。このため、偏光露光後に加熱しても光分解生成物の分子方向は、光分解で生成したままの方向で固定されているため、配向秩序性は大きくならない。
【0044】
一方、図4の下部に示した本発明においては、偏光紫外線によって主鎖が切断される柔軟なポリイミドを混合した配向膜材料を用いる。これにより、図5に示すように、それぞれの配向膜材料を単独で用いた配向膜よりもE‖方向とE⊥方向との配向分子の濃度差が大きくなり、配向秩序性を高くできる。
【0045】
図5は、剛直なポリイミドと柔軟なポリイミドとを混合した場合の、混合比率と配向秩序性との関係を示している。図5からわかるように、混合した配向膜材料を用いたほうが、個々の配向膜材料を単独で用いた場合よりも配向秩序性が高い。
【0046】
図5は、図4に示したサンプルに対して、次のような測定を行ったものである。加熱して得られた配向膜の偏光紫外線スペクトルを測定し、吸光度から配向秩序性の指標である、UV吸収二色比すなわち、(A⊥―A‖)/(A⊥+A‖)を求めた。ここで、A‖はE‖方向の配向膜の吸光度であり、A⊥はE⊥方向の配向膜の吸光度である。なお、Aを吸光度とした場合、A=εCtの関係がある。εは分子吸光係数であり、Cはポリイミドの特定の方向の分子の濃度であり、tはポリイミドの厚さである。
【0047】
図5において、縦軸は、波長245nmの紫外線におけるOP(オーダーパラメータ)であり、横軸は、配向膜における柔構造の配向膜のwt%である。なお、OP(オーダーパラメータ)はUV吸収二色比と同義とする。図5からわかるように、柔構造の割合が50wt%のときのOPの値は0.51である。このときの配向膜による液晶のアンカリング強度を測定したところ、4.1mJ/mであることがわかった。
【0048】
比較例として、配向膜材料に(化2)で示す1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタンと(化3)で示す1,3−ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物の脱水縮合物をエステル化した、剛構造となる配向材料のみを用いた場合の配向膜を形成してOPを測定した結果は、0.48であった。また、配向膜材料に(化1)で示すパラフェニルジアミンと(化3)で示す1,3−ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物の脱水縮合物をエステル化した柔構造の配向材料のみを用いた場合の配向膜を形成してOPを測定した結果は、0.44であった。すなわち、本発明のように、柔構造と剛構造の配向膜材料を混合して用いることによって、OPすなわち、UV吸収二色比を向上させることが出来る。
【0049】
図5において、柔構造の配向膜材料を20wt%〜60wt%用いることによって、OPすなわち、UV吸収二色比は0.5以上とすることが出来る。また、柔構造の配向膜材料を80%以下とすることによって、柔構造がゼロの場合におけるOPである0.48を上回ることが出来る。この場合は、柔構造の材料は0wt%よりも大きく、80wt%以下である。
【0050】
以上のように、本発明によれば、OP(オーダーパラメータ)すなわち、UV吸収二色比を向上させることが出来、配向膜による液晶のアンカリング強度を向上させ、AC残像を抑制することが出来る。
【0051】
以上の実施例では、柔構造を与える配向膜材料として、(化1)で示すパラフェニルジアミンと(化3)で示す1,3−ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物の脱水縮合物をエステル化した配向材料を用いたが、この他に、(化4)で示す4,4‘−ジアミノジフェニルエーテルおよびその誘導体と、(化3)で示す1,3−ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物の脱水縮合物をエステル化した配向材料を用いて柔構造の配向膜材料を構成することが出来る。
【0052】
【化4】

【0053】
また、以上の実施例では剛構造を与える配向膜材料として、(化2)で示す1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタンと(化3)で示す1,3−ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物の脱水縮合物をエステル化した配向材料を用いたが、この他に、(化5)で示すパラフェニレンジアミン誘導体と(化3)で示す1,3−ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物の脱水縮合物をエステル化した配向材料を用いて剛構造の配向膜材料を構成することが出来る。またエステル化物だけでなく1,3−ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの縮合物も本発明の配向材として好適に用いることもできる。
【0054】
【化5】

【符号の説明】
【0055】
100…TFT基板、 101…ゲート電極、 102…ゲート絶縁膜、 103…半導体層、 104…ソース電極、 105…ドレイン電極、 106…無機パッシベーション膜、 107…有機パッシベーション膜、 108…対向電極、 109…上部絶縁膜、 110…画素電極、 111…スルーホール、 112…スリット、 113…配向膜、 200…対向基板、 201…カラーフィルタ、 202…ブラックマトリクス、 203…オーバーコート膜、 210…表面導電膜、 300…液晶層、 301…液晶分子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素電極とTFTを有する画素の上に配向膜が形成されたTFT基板と、前記TFT基板に対向し、カラーフィルタの上に配向膜が形成された対向基板と、前記TFT基板の配向膜と前記対向基板の配向膜の間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、
前記配向膜は光配向処理を受けており、
前記配向膜は、(化1)で示す1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタンと(化3)で示す1,3−ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物の脱水縮合物または脱水縮合物をエステル化した配向膜材料と、
(化2)で示すパラフェニルジアミンと(化3)で示す1,3−ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物の脱水縮合物または脱水縮合物をエステル化した配向膜材料とを用いていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
(化1)で示す1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタンと(化3)で示す1,3−ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物の脱水縮合物をまたは脱水縮合物をエステル化した配向膜材料は配向膜材料全体の重量に対して0wt%よりも大きく、かつ80wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
(化1)で示す1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタンと(化3)で示す1,3−ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物の脱水縮合物または脱水縮合物をエステル化した配向膜材料は配向膜材料全体の重量に対して20wt%以上、かつ60wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
(化1)で示す1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタンと(化3)で示す1,3−ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物の脱水縮合物または脱水縮合物をエステル化した配向膜材料と、
(化2)で示すパラフェニルジアミンと(化3)で示す1,3−ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物の脱水縮合物または脱水縮合物をエステル化した配向膜材料との混合物であることを特徴とする配向膜材料。
【請求項5】
(化1)で示す1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタンと(化3)で示す1,3−ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物の脱水縮合物をまたは脱水縮合物をエステル化した配向膜材料は配向膜材料全体の重量に対して0wt%よりも大きく、かつ80wt%以下であることを特徴とする請求項4に記載の配向膜材料。
【請求項6】
(化1)で示す1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタンと(化3)で示す1,3−ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物の脱水縮合物または脱水縮合物をエステル化した配向膜材料は配向膜材料全体の重量に対して20wt%以上、かつ60wt%以下であることを特徴とする請求項4に記載の配向膜材料。
【請求項7】
前記配向膜材料は、光配向膜材料であることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の配向膜材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−242720(P2012−242720A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114470(P2011−114470)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(502356528)株式会社ジャパンディスプレイイースト (2,552)
【Fターム(参考)】