液晶表示装置
【課題】 粘着材または接着材を用いて液晶表示パネルの偏光板に貼り付けた樹脂板(保護カバー)をはがれにくくする。
【解決手段】 第1の基板と、前記第1の基板よりも観察者側に配置され、かつ、前記第1の基板の前記観察者側を向いた面に対向する第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に挟まれた液晶と、前記第2の基板よりも観察者側に配置され、かつ、前記第2の基板の前記観察者側を向いた面に対向する上偏光板と、前記上偏光板よりも観察者側に配置され、かつ、前記上偏光板の前記観察者側を向いた面に、粘着材または接着材で前記上偏光板に貼り付けられた透明な樹脂板とを有する液晶表示装置であって、前記樹脂板は、前記上偏光板と対向する面に透明な酸化膜を有し、前記樹脂板は、前記酸化膜を介して前記粘着材または前記接着材と密着している液晶表示装置。
【解決手段】 第1の基板と、前記第1の基板よりも観察者側に配置され、かつ、前記第1の基板の前記観察者側を向いた面に対向する第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に挟まれた液晶と、前記第2の基板よりも観察者側に配置され、かつ、前記第2の基板の前記観察者側を向いた面に対向する上偏光板と、前記上偏光板よりも観察者側に配置され、かつ、前記上偏光板の前記観察者側を向いた面に、粘着材または接着材で前記上偏光板に貼り付けられた透明な樹脂板とを有する液晶表示装置であって、前記樹脂板は、前記上偏光板と対向する面に透明な酸化膜を有し、前記樹脂板は、前記酸化膜を介して前記粘着材または前記接着材と密着している液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関し、特に、携帯型電子装置のディスプレイに用いられる液晶表示装置に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話端末やPDA(Personal Digital Assistant)などの携帯型電子装置のディスプレイには、たとえば、液晶表示装置が用いられている。
【0003】
前記液晶表示装置は、第1の基板と第2の基板との間に液晶を封入した液晶表示パネルを有する表示装置であり、前記液晶表示パネルは、前記第1の基板よりも観察者側に前記液晶および前記第2の基板が配置されている。
【0004】
一般的な液晶表示装置の場合、前記第1の基板は、たとえば、ガラス基板などの絶縁基板の表面に走査信号線、映像信号線、TFT素子、画素電極、配向膜などが形成された基板であり、TFT基板と呼ばれることが多い。また、前記第2の基板は、たとえば、ガラス基板などの絶縁基板の表面に、表示領域を画素毎に分割する遮光層、カラーフィルタ、配向膜などが形成された基板であり、対向基板と呼ばれることが多い。なお、前記画素電極とともに前記液晶を駆動させるために設けられる対向電極は、前記対向基板側に形成されていることもあるし、前記TFT基板側に形成されていることもある。
【0005】
前記携帯型電子装置は、近年、薄型化や軽量化などが進んでおり、それにともない、たとえば、液晶表示装置(液晶表示パネル)の薄型化が進んでいる。前記液晶表示パネルを薄型化する方法の1つとして、たとえば、前記TFT基板および前記対向基板のいずれか一方または両方の前記絶縁基板(ガラス基板)を薄型化する方法がある。
【0006】
また、近年は、前記液晶表示パネルを薄型化する別の方法として、たとえば、前記TFT基板および前記対向基板のいずれか一方または両方の前記絶縁基板に、プラスチック基板(樹脂基板)を用いる方法も提案されている(たとえば、特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開平8−006039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記携帯電話端末などに用いられる液晶表示装置は、従来、液晶表示パネルの表示領域部分が開口した前記携帯型電子装置の筐体(外装部品)に内蔵されていることが多い。またこのとき、前記筐体の前記開口部分は、前記液晶表示パネルを保護するためのアクリル樹脂などの保護カバーで覆われていることが多い。そのため、たとえば、前記携帯電話端末のディスプレイ部のさらなる薄型化が困難になりつつあり、液晶表示パネルと保護カバーとの間にある空気の層により表示された映像や画像の視認性が低下しやすいといった問題があった。
【0008】
このような問題を解決し、携帯電話端末向けなどの液晶表示装置のさらなる薄型化を可能にしたり、映像などの視認性の低下を防いだりする方法として、たとえば、液晶表示パネルの観察者側を向いた面に、前記保護カバーとして機能する樹脂板を貼り付ける方法が提案されている。前記樹脂板を前記液晶表示パネルに貼り付けるときには、たとえば、粘着材または接着材を用いて、前記対向基板(第2の基板)よりも観察者側に配置された偏光板に、前記樹脂板を貼り付けて密着させる。
【0009】
しかしながら、前記粘着材または接着材として、たとえば、前記上偏光板を前記対向基板の絶縁基板(ガラス基板)に貼り付けるときに用いるアクリル樹脂系の粘着材または接着材と同じものを用いた場合、前記樹脂板と前記粘着材または接着材との密着力が弱く、前記樹脂板がはがれやすいという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、粘着材または接着材を用いて液晶表示パネルの偏光板に貼り付けた樹脂板(保護カバー)をはがれにくくすることが可能な技術を提供することにある。
【0011】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面によって明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概略を説明すれば、以下の通りである。
【0013】
(1)第1の基板と、前記第1の基板よりも観察者側に配置され、かつ、前記第1の基板の前記観察者側を向いた面に対向する第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に挟まれた液晶と、前記第2の基板よりも観察者側に配置され、かつ、前記第2の基板の前記観察者側を向いた面に対向する上偏光板と、前記上偏光板よりも観察者側に配置され、かつ、前記上偏光板の前記観察者側を向いた面に、粘着材または接着材で前記上偏光板に貼り付けられた透明な樹脂板とを有する液晶表示装置であって、前記樹脂板は、前記上偏光板と対向する面に透明な酸化膜を有し、前記樹脂板は、前記酸化膜を介して前記粘着材または前記接着材と密着している液晶表示装置。
【0014】
(2)前記(1)の液晶表示装置において、前記樹脂板の材質は、アクリル樹脂であり、前記粘着材または前記接着材の材質は、前記樹脂板と同じもしくは異なるアクリル樹脂である液晶表示装置。
【0015】
(3)前記(1)または(2)の液晶表示装置において、前記酸化膜は、導電性を有する液晶表示装置。
【0016】
(4)前記(3)の液晶表示装置において、前記導電性を有する前記酸化膜は、固定電位の導電層に接続されている液晶表示装置。
【0017】
(5)前記(1)乃至(4)のいずれかの液晶表示装置において、前記第1の基板は、前記液晶を駆動させる画素電極および対向電極のうちの前記画素電極を有し、前記第2の基板は、前記液晶を駆動させる前記画素電極および前記対向電極のうちの前記対向電極を有する液晶表示装置。
【0018】
(6)前記(1)乃至(4)のいずれかの液晶表示装置において、前記第1の基板は、前記液晶を駆動させる画素電極および対向電極の両方を有する液晶表示装置。
【0019】
(7)前記(6)の液晶表示装置において、前記第2の基板は、前記観察者側を向いた面に、前記画素電極および前記対向電極とは電気的に絶縁された導電層を有する液晶表示装置。
【0020】
(8)前記(1)乃至(7)のいずれかの液晶表示装置において、前記樹脂板および前記酸化膜は、前記上偏光板と対向する面の外周が、前記上偏光板の前記酸化膜と対向する面の外周よりも外側にある液晶表示装置。
【0021】
(9)前記(1)乃至(8)のいずれかの液晶表示装置において、前記樹脂板は、前記観察者側を向いた面の表面鉛筆硬度が3H以上である液晶表示装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明の液晶表示装置によれば、前記粘着材または接着材を用いて前記上偏光板に貼り付けた前記樹脂板(保護カバー)をはがれにくくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明について、図面を参照して実施の形態(実施例)とともに詳細に説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは、同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0024】
図1(a)および図1(b)、図2(a)および図2(b)はそれぞれ、従来および本発明に関わる液晶表示装置の概要を説明するための模式図である。
図1(a)は、従来の携帯電話端末におけるディスプレイ部の概略構成の一例を示す模式平面図である。図1(b)は、図1(a)のA−A’線における模式断面図である。
図2(a)は、本発明に関わる液晶表示装置を有する携帯電話端末におけるディスプレイ部の概略構成の一例を示す模式平面図である。図2(b)は、図2(a)のB−B’線における模式断面図である。
なお、図1(b)には、図1(a)のA−A’線における断面構成のうちの、液晶表示パネルおよび保護カバーならびに筐体のみの断面構成を示している。また、図2(b)には、図2(a)のB−B’線における断面構成のうちの、液晶表示パネルおよび保護カバーならびに筐体のみの断面構成を示している。また、図1(b)および図2(b)では、構成をわかりやすくするために、各構成要素の寸法(特に厚さ)の関係を、実際の液晶表示パネルにおける関係とは変えて示している。
【0025】
従来の一般的な携帯電話端末におけるディスプレイ部の構成は、たとえば、図1(a)および図1(b)に示したような構成になっており、液晶表示パネル1を有する液晶表示装置(液晶表示モジュールと呼ぶこともある)は、表示領域DAと重なる部分が開口した筐体(外装部品)2に内蔵されている。また、筐体2の開口部2aには、たとえば、アクリル樹脂などの透明な樹脂で形成された保護カバー3がはめ込まれている。
【0026】
液晶表示パネル1は、たとえば、第1の基板101と、第1の基板101よりも観察者側(観察者Pから見て手前)に配置された第2の基板102と、第1の基板101と第2の基板102との間に挟まれた液晶103と、第2の基板102よりも観察者側(観察者Pから見て手前)に配置された上偏光板104と、観察者Pから見て第1の基板101よりも後方に配置された下偏光板105とを有する。
【0027】
第1の基板101は、たとえば、ガラス基板などの絶縁基板101Aと、当該絶縁基板101Aの第2の基板102と対向する面に形成された薄膜積層体101Bとからなる。また、第1の基板101は、一般に、TFT基板と呼ばれている基板であり、第1の基板101の薄膜積層体101Bは、たとえば、導電層、絶縁層、および半導体層が積層しており、走査信号線、映像信号線、TFT、画素電極、および配向膜などが形成されている。以下、第1の基板101のことをTFT基板と呼ぶ。
【0028】
第2の基板102も、たとえば、ガラス基板などの絶縁基板102Aと、当該絶縁基板102Aの第1の基板101と対向する面に形成された薄膜積層体102Bとからなる。また、第2の基板102は、一般に、対向基板と呼ばれている基板であり、第2の基板102の薄膜積層体102Bは、たとえば、導電層および絶縁層が積層しており、遮光膜、カラーフィルタ、および配向膜などが形成されている。以下、第2の基板102のことを対向基板と呼ぶ。
【0029】
なお、前記画素電極とともに前記液晶を駆動させるために設けられる対向電極は、前記対向基板102の薄膜積層体102Bに形成されていることもあるし、前記TFT基板101の薄膜積層体101Bに形成されていることもある。
【0030】
TFT基板101と対向基板102は、たとえば、表示領域DAを囲む環状のシール材106で貼り合わせられており、液晶103は、TFT基板101、対向基板102、およびシール材106で囲まれた空間に密封されている。
【0031】
上偏光板104は、たとえば、第1の粘着材107で対向基板102の絶縁基板102Aに貼り付けられている。同様に、下偏光板105は、たとえば、第2の粘着材108でTFT基板101の絶縁基板101Aに貼り付けられている。このとき、第1の粘着材107および第2の粘着材108には、通常、各絶縁基板101A,102Aの材質および各偏光板104,105の材質にあわせて、十分な密着力が得られるものが用いられる。一般的な液晶表示パネル1では、各絶縁基板101A,102Aがガラス基板であり、各偏光板104,105がTACフィルムであり、第1の粘着材107および第2の粘着材108として、たとえば、アクリル樹脂系の粘着材が用いられる。
【0032】
なお、上偏光板104を対向基板102の絶縁基板102Aに貼り付けるときには、第1の粘着材107の代わりに、第1の接着材を用いることもある。また、下偏光板105をTFT基板101の絶縁基板101Aに貼り付けるときにも、第2の粘着材108の代わりに、第2の接着材を用いることもある。粘着材107,108の代わりに接着材を用いる場合も、各絶縁基板101A,102Aがガラス基板であり、各偏光板104,105がTACフィルムであれば、前記第1の接着材および前記第2の接着材として、たとえば、光硬化型(たとえば、紫外線硬化型)または熱硬化型のアクリル樹脂系接着材が用いられる。
【0033】
また、図1(b)に示したように、観察者Pから見てTFT基板101の後方に下偏光板105が配置されている液晶表示パネル1(液晶表示装置)は、透過型または半透過型のものであり、たとえば、観察者Pから見て液晶表示パネル1の後方にバックライトユニット(光源)や光拡散板などが配置されている。また、液晶表示パネル1(液晶表示装置)が反射型の場合は、通常、下偏光板105が不要である。
【0034】
携帯電話端末のディスプレイ部の構成が、図1(a)および図1(b)に示したような構成である場合、液晶表示パネル1の上偏光板104と保護カバー3との間に空気層4が介在している。そのため、たとえば、当該空気層4により、表示された映像や画像の視認性が低下することがある。また、液晶表示パネル1のたわみや筐体2に収容するまでの過程での破損を防ぐためには、たとえば、TFT基板101の絶縁基板101Aおよび対向基板102の絶縁基板102Aの厚みにより十分な強度を得る必要があり、さらなる薄型化が困難になりつつある。
【0035】
このような問題を解決し、携帯電話端末向けなどの液晶表示装置のさらなる薄型化を可能にしたり、映像などの視認性の低下を防いだりする方法として、たとえば、図2(a)および図2(b)に示すように、第3の粘着材5を用いて、液晶表示パネル1の上偏光板104に樹脂板6を貼り付ける方法が提案されている。樹脂板6は、たとえば、アクリル樹脂(たとえば、PMMA)のように光透過率が高い透明な樹脂で形成されており、特に、観察者側を向いた面の表面鉛筆硬度が3H以上であるような樹脂で形成されていることが望ましい。なお、表面鉛筆硬度とは、鉛筆硬度試験(JIS規格G0202)の結果に基づく表面硬度であり、表面鉛筆硬度が3H以上といった場合、3Hまたは3Hよりもやわらかい鉛筆で樹脂板6の表面に線引きしたときに、樹脂板6の表面に傷が付かないことを意味する。またこのとき、樹脂板6自身が、表面鉛筆硬度が3H以上の樹脂材料で形成されていてもよいし、たとえば、樹脂板6の表面にハードコート処理を施して、表面鉛筆硬度が3H以上になるようにしてもよい。
【0036】
このようにすることで、樹脂板6に保護カバー3としての機能を持たせることができ、たとえば、図1(b)に示したような構成で見られる、液晶表示パネル1の上偏光板104と保護カバー3との間の空気層4による視認性の低下を防げる。
【0037】
また、樹脂板6を液晶表示パネル1に貼り付けることにより、液晶表示パネル1の強度が増すので、たとえば、TFT基板101の絶縁基板101Aのさらなる薄型化、すなわち液晶表示パネル1のさらなる薄型化が可能になる。また、空気層4がなくなるので、たとえば、前記携帯電話端末のディスプレイ部のさらなる薄型化が可能になる。
【0038】
ところで、第3の粘着材5(または第3の接着材)は、既存の材料を応用して製造コストの上昇を抑えるという視点から、第1の粘着材107および第2の粘着材108(または第1の接着材および第2の接着材)と同じ材質の粘着材(または接着材)を用いることが望ましい。しかしながら、第3の粘着材5として、たとえば、一般的な液晶表示パネル1における第1の粘着材107および第2の粘着材108と同じアクリル樹脂系の粘着材を用いた場合、樹脂板6と第3の粘着材5との密着力は、上偏光板104と第3の粘着材5との密着力、対向基板102の絶縁基板102A(ガラス基板)と第1の粘着材107との密着力などに比べて弱いので、樹脂板6がはがれやすい。また、粘着材の代わりに接着材を用いる場合にも同様である。
【0039】
そこで、以下の実施例では、図2(b)に示した構成のように、第3の粘着材5(または第3の接着材)を用いて液晶表示パネル1の上偏光板104に貼り付けた樹脂板6をはがれにくくする構成の一例について説明する。
【実施例】
【0040】
図3(a)および図3(b)は、本発明による一実施例の液晶表示装置の概略構成を示す模式図である。
図3(a)は、本実施例の液晶表示装置の概略構成の一例を示す模式平面図である。図3(b)は、図3(a)のC−C’線における模式断面図である。
なお、図3(a)および図3(b)には、液晶表示装置のうちの液晶表示パネルおよび液晶表示パネルに貼り付けられた樹脂板のみを示している。また、図3(b)は、液晶表示パネル1の上側が観察者側である。また、図3(b)では、構成をわかりやすくするために、各構成要素の寸法(特に厚さ)の関係を、実際の液晶表示パネルにおける関係とは変えて示している。
【0041】
本実施例の液晶表示装置は、たとえば、図3(a)および図3(b)に示すように、液晶表示パネル1の上偏光板104の観察者側を向いた面に、第3の粘着材5を用いて樹脂板6(たとえば、PMMA)を貼り付けている。このとき、樹脂板6は、上偏光板104と対向する面に、酸化膜7を有し、酸化膜7と第3の粘着材5とが密着している。すなわち、樹脂板6は、酸化膜7を介して第3の粘着材5と密着している。
【0042】
酸化膜7は、光透過率が高い透明なものであればよく、たとえば、シリコン酸化膜(SiO2)などの絶縁性酸化膜でもよいし、画素電極および対向電極の形成に用いられるITO膜またはIZO膜などの透明な導電性酸化膜でもよい。
【0043】
ところで、前記液晶表示パネル1が横電界駆動方式の場合、言い換えると液晶103を駆動させる画素電極および対向電極がTFT基板101の薄膜積層体101Bに形成されている場合、たとえば、対向基板102の絶縁基板102Aの、上偏光板104と対向する面に、静電気シールド層としてITO膜を形成していることが多い。このとき、第1の粘着材107として、たとえば、アクリル樹脂系の粘着材を用いて上偏光板104を対向基板102に貼り付けても、上偏光板104がはがれることは少ない。これは、ITO膜などの酸化膜7とアクリル樹脂系の粘着材(または接着材)との密着力がよく、樹脂板6(アクリル樹脂板)とアクリル樹脂系の粘着材(または接着材)との密着力よりも強いことを示している。
【0044】
そのため、樹脂板6の表面に酸化膜7を形成し、酸化膜7と第3の粘着材5(または第3の接着材)を密着させることで、樹脂板6がはがれにくくなる。
【0045】
また、前記シリコン酸化膜は、たとえば、TFT基板101の薄膜積層体101Bにおいて、TFTのゲート絶縁膜としての機能を有する絶縁層などに使用される酸化膜である。また、前記ITO膜や前記IZO膜は、TFT基板101の薄膜積層体101Bや対向基板102の薄膜積層体102Bにおいて、画素電極および対向電極に使用される導電性酸化膜である。そのため、これらの酸化膜7であれば光透過率が高いので、表示された映像や画像の視認性の低下を抑えることができる。
【0046】
図4(a)乃至図4(c)は、本実施例の液晶表示パネルおよび樹脂板についての具体的な構成例を説明するための模式図である。
図4(a)は、図3(b)の領域ARの第1の構成例を示す模式断面図である。図4(b)は、図3(b)の領域ARの第2の構成例を示す模式断面図である。図4(c)は、図3(b)の領域ARの第3の構成例を示す模式断面図である。
また、図4(a)乃至図4(c)の各図では、構成をわかりやすくするために、各構成要素の寸法(特に厚さ)の関係を、実際の液晶表示パネルにおける関係とは変えて示している。
【0047】
本実施例の液晶表示装置において、液晶表示パネル1は、液晶103を駆動させる画素電極および対向電極のうちの対向電極が、対向基板102の薄膜積層体102Bに形成されていても、TFT基板101の薄膜積層体101Bに形成されていてもよい。以下、前記対向電極が対向基板102の薄膜積層体102Bに形成されている場合の対向基板102の構成および酸化膜7の材質についての具体的な構成例と、前記対向電極がTFT基板101の薄膜積層体101Bに形成されている場合の対向基板102の構成および酸化膜7の材質についての具体的な構成例について説明する。
【0048】
まず、前記対向電極が対向基板102の薄膜積層体102Bに形成されている場合の対向基板102の構成および酸化膜7の材質についての具体的な構成例について説明する。このとき、対向基板102の薄膜積層体102Bは、たとえば、図4(a)に示すような構成になっており、絶縁基板(ガラス基板)102Aの、液晶103(TFT基板101)と対向する面には、まず、遮光膜、カラーフィルタ、および平坦化膜を有する薄膜積層部102B1が形成されている。そして、絶縁基板102Aから見て、薄膜積層部102B1の上には、対向電極102B2および配向膜102B3が積層している。
【0049】
また、絶縁基板102Aの、液晶103(TFT基板101)と対向する面の裏面、すなわち観察者側を向いた面には、第1の粘着材107により上偏光板104が貼り付けられている。なお、図4(a)に示した例では、絶縁基板102Aに上偏光板104が直接貼り付けられているが、絶縁基板102Aと上偏光板104との間に、1層または複数層の位相差板が介在していてもよい。
【0050】
また、上偏光板104の、観察者側を向いた面には、第3の粘着材5により、酸化膜7を有する樹脂板6が貼り付けられている。
【0051】
対向基板102の薄膜積層体102Bに形成された対向電極102B2は、たとえば、ITO膜などの導電膜で形成されており、一般に、薄膜積層部102B1の全面に形成されている。そのため、このような液晶表示パネル1では、対向電極102B2が静電気シールドとしての機能を有する。したがって、樹脂板6に形成された酸化膜7は、絶縁性酸化膜(たとえば、シリコン酸化膜)であってもよいし、導電性酸化膜(たとえば、ITO膜)であってもよいが、導電性酸化膜にすると、酸化膜7にも静電気のシールド効果が現れるので、静電気のシールド効果が高くなる。
【0052】
次に、前記対向電極がTFT基板101の薄膜積層体101Bに形成されている場合の対向基板102の構成および酸化膜7の材質についての具体的な構成例について説明する。このとき、対向基板102の薄膜積層体102Bは、たとえば、図4(b)に示すような構成になっており、絶縁基板(ガラス基板)102Aの、液晶103(TFT基板101)と対向する面には、まず、遮光膜、カラーフィルタ、および平坦化膜を有する薄膜積層部102B1が形成されている。そして、絶縁基板102Aから見て、薄膜積層部102B1の上には、配向膜102B3が積層している。
【0053】
また、絶縁基板102Aの、液晶103(TFT基板101)と対向する面の裏面、すなわち観察者側を向いた面には、たとえば、ITO膜などの透明な導電膜からなる静電気シールド層102Cが形成されており、絶縁基板102Aから見て、静電気シールド層102Cの上に、第1の粘着材107により上偏光板104が貼り付けられている。なお、図4(b)に示した例では、静電気シールド層102Cに上偏光板104が直接貼り付けられているが、静電気シールド層102Cと上偏光板104との間に、1層または複数層の位相差板が介在していてもよい。
【0054】
また、上偏光板104の、観察者側を向いた面には、第3の粘着材5により、酸化膜7を有する樹脂板6が貼り付けられている。
【0055】
対向基板102の静電気シールド層102Cは、たとえば、ITO膜などの導電膜で形成されており、一般に、絶縁基板102Aの観察者側を向いた面の全面に形成されている。したがって、樹脂板6に形成された酸化膜7は、絶縁性酸化膜(たとえば、シリコン酸化膜)であってもよいし、導電性酸化膜(たとえば、ITO膜)であってもよいが、導電性酸化膜にすると、酸化膜7にも静電気のシールド効果が現れるので、静電気のシールド効果が高くなる。
【0056】
また、樹脂板6に形成された酸化膜7が導電性酸化膜の場合、酸化膜7に静電気のシールド効果が現れるので、たとえば、図4(c)に示すように、対向基板102に静電気シールド層102Cを設けなくてもよくなる。そのため、対向基板102の構造が簡略化され、製造コストを低減できる。
【0057】
またさらに、静電気シールド層102Cを設けない場合、絶縁基板102Aの一表面に薄膜積層部102B1および配向膜102B3を形成した後、たとえば、絶縁基板102Aの薄膜積層部102B1などを形成した面の裏面を研磨して、絶縁基板102Aを薄くすることができる。そのため、対向基板102の薄型化が可能になる。
【0058】
図5(a)乃至図5(c)は、本実施例の液晶表示装置において、樹脂板に形成された導電性酸化膜のシールド効果を高める方法を説明するための模式図である。
図5(a)は、樹脂板に形成された導電性酸化膜のシールド効果を高める方法の一例を説明するための模式断面図である。図5(b)は、樹脂板に形成された導電性酸化膜のシールド効果を高める方法の別の例を説明するための模式断面図である。図5(c)は、図5(b)に示した例の変形例を説明するための模式断面図である。
なお、図5(a)乃至図5(c)には、液晶表示装置のうちの、液晶表示パネル、液晶表示パネルに貼り付けられた樹脂板、固定電位の導電層、および樹脂板に形成された導電性酸化膜と固定電位の導電層とを接続する導電性部材と、筐体(必要に応じて)を示している。また、図5(a)は、図3(a)のC−C’線における断面図に相当し、図5(b)および図5(c)は、図3(a)のC−C’線における断面のうちのC’に近い部分のみを抽出した断面図に相当する。また、図5(a)乃至図5(c)の各図では、構成をわかりやすくするために、各構成要素の寸法(特に厚さ)の関係を、実際の液晶表示パネルにおける関係とは変えて示している。
【0059】
樹脂板6に形成された酸化膜7が導電性酸化膜の場合、前述のように、酸化膜7に静電気のシールド効果が現れる。このとき、酸化膜7が、たとえば、電気的に独立、すなわち、液晶表示パネル1にある導電層や筐体2の内部にある導電層などと絶縁されていても、静電気のシールド効果は得られる。しかしながら、酸化膜7を導電性酸化膜にした場合、たとえば、酸化膜7を固定電位の導電層に接続することで、酸化膜7による静電気のシールド効果をいっそう高めることができる。
【0060】
導電性の酸化膜7を固定電位の導電層に接続する方法の1つとして、たとえば、図5(a)に示すように、液晶表示パネル1のTFT基板101に形成された導電層101B1と酸化膜7とを、導電性部材8で接続する方法がある。このとき、導電層101B1が、たとえば、液晶表示パネル1(TFT基板101)に接続されたフレキシブルプリント配線板などを介して接地電位になっていれば、酸化膜7も接地電位になり、静電気シールド効果がいっそう高まる。なお、導電性部材8は、たとえば、導電性樹脂または導電性ゴムであってもよいし、導電性テープであってもよい。また、導電性部材8は、たとえば、はんだやワイヤー状の導体であってもよい。
【0061】
また、たとえば、液晶表示装置を収容する筐体(外装部品)2が導電性の材料で形成されている場合は、たとえば、図5(b)に示すように、導電性部材8を用いて樹脂板6に形成された導電性の酸化膜7と筐体2とを接続してもよい。
【0062】
またさらに、図示は省略するが、TFT基板101の導電層101B1や導電性の筐体2に限らず、液晶表示パネル1などとともに筐体2に収容される導電性の部品と樹脂板6に形成された導電性の酸化膜7とを電気的に接続させることで、酸化膜7の静電気シールド効果を高めることができる。
【0063】
また、図5(b)に示した例では、樹脂板6および液晶表示パネル1のうちの、表示領域DAの外側の部分が筐体2で覆われているが、これに限らず、たとえば、図5(c)に示すように、樹脂板6および液晶表示パネル1のうちの、表示領域DAの外側の部分が露出していてもよいことはもちろんである。ただし、図5(b)のような構成にすると、たとえば、樹脂板6と筐体2との間に生じる隙間から筐体2の内部に水分や異物が侵入しにくくなる、表示領域DAの外側の領域からの光漏れなどによる視認性の低下を防げるといった別の効果も得られる。
【0064】
図6(a)および図6(b)、図7(a)および図7(b)はそれぞれ、本実施例の液晶表示装置の変形例を説明するための模式図である。
図6(a)は、本実施例の液晶表示装置の第1の変形例の概略構成を示す模式平面図である。図6(b)は、図6(a)のD−D’線における模式断面図である。
図7(a)は、本実施例の液晶表示装置の第2の変形例の概略構成を示す模式平面図である。図7(b)は、図7(a)のE−E’線における模式断面図である。
なお、図6(a)および図6(b)、図7(a)および図7(b)には、液晶表示装置のうちの液晶表示パネル1および液晶表示パネル1に貼り付けられた樹脂板6の構成のみを示している。また、図6(b)および図7(b)では、構成をわかりやすくするために、各構成要素の寸法(厚さ)の関係を、実際の液晶表示パネルにおける関係とは変えて示している。
【0065】
本実施例の液晶表示装置において特徴となる点は、たとえば、液晶表示パネル1の上偏光板104に樹脂板6を貼り付けるために使用する第3の粘着材5(または第3の接着材)として、アクリル樹脂系の粘着材(または接着材)を用いる場合、樹脂板6の表面に酸化膜7を形成しておき、酸化膜7と第3の粘着材5とを密着させて樹脂板6を貼り付ける点である。すなわち、本実施例の液晶表示装置において重要な点は、樹脂板6の上偏光板104と対向する面に酸化膜7が形成されている点である。
【0066】
そのため、本実施例の液晶表示装置の第1の変形例としては、たとえば、図6(a)および図6(b)に示すように、観察者Pから見た樹脂板6および酸化膜7の上偏光板104と対向する面の外周が、上偏光板104の観察者側の面の外周とほぼ一致しているものが挙げられる。またこのとき、図6(b)の領域ARの具体的な断面構成は、たとえば、図4(a)乃至図4(c)に示した構成のうちのいずれかであればよいことはもちろんである。
【0067】
また、本実施例の液晶表示装置の第2の変形例としては、たとえば、図7(a)および図7(b)に示すように、観察者Pから見た樹脂板6および酸化膜7の上偏光板104と対向する面の外周が、上偏光板104の観察者側の面の外周と、表示領域DAの外周の間にあるものが挙げられる。またこのときも、図7(b)の領域ARの具体的な断面構成は、たとえば、図4(a)乃至図4(c)に示した構成のうちのいずれかであればよいことはもちろんである。
【0068】
以上、本発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることはもちろんである。
【0069】
たとえば、前記実施例では、液晶表示装置を例に挙げ、第3の粘着材5(または接着材)を用いて液晶表示パネル1の上偏光板104に、酸化膜7が形成された樹脂板6を貼り付ける構成について説明した。しかしながら、本発明は、液晶表示装置に限らず、保護カバー3としての機能を併せ持つ樹脂板6を貼り付ける表示パネルが液晶表示パネル1ではない表示装置(たとえば、有機EL表示装置など)にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1(a)】従来の携帯電話端末におけるディスプレイ部の概略構成の一例を示す模式平面図である。
【図1(b)】図1(a)のA−A’線における模式断面図である。
【図2(a)】本発明に関わる液晶表示装置を有する携帯電話端末におけるディスプレイ部の概略構成の一例を示す模式平面図である。
【図2(b)】図2(a)のB−B’線における模式断面図である。
【図3(a)】本実施例の液晶表示装置の概略構成の一例を示す模式平面図である。
【図3(b)】図3(a)のC−C’線における模式断面図である。
【図4(a)】図3(b)の領域ARの第1の構成例を示す模式断面図である。
【図4(b)】図3(b)の領域ARの第2の構成例を示す模式断面図である。
【図4(c)】図3(b)の領域ARの第3の構成例を示す模式断面図である。
【図5(a)】樹脂板に形成された導電性酸化膜のシールド効果を高める方法の一例を説明するための模式断面図である。
【図5(b)】樹脂板に形成された導電性酸化膜のシールド効果を高める方法の別の例を説明するための模式断面図である。
【図5(c)】図5(b)に示した例の変形例を説明するための模式断面図である。
【図6(a)】本実施例の液晶表示装置の第1の変形例の概略構成を示す模式平面図である。
【図6(b)】図6(a)のD−D’線における模式断面図である。
【図7(a)】本実施例の液晶表示装置の第2の変形例の概略構成を示す模式平面図である。
【図7(b)】図7(a)のE−E’線における模式断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1…液晶表示パネル
101…TFT基板(第1の基板)
102…対向基板(第2の基板)
101A,102A…絶縁基板
101B,102B…薄膜積層体
101B1…導電層
102B1…薄膜積層部
102B2…対向電極
102B3…配向膜
102C…静電気シールド層
103…液晶
104…上偏光板
105…下偏光板
106…シール材
107…第1の粘着材
108…第2の粘着材
2…筐体(外装部品)
3…保護カバー
4…空気層
5…第3の粘着材
6…樹脂板
7…酸化膜
8…導電性部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関し、特に、携帯型電子装置のディスプレイに用いられる液晶表示装置に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話端末やPDA(Personal Digital Assistant)などの携帯型電子装置のディスプレイには、たとえば、液晶表示装置が用いられている。
【0003】
前記液晶表示装置は、第1の基板と第2の基板との間に液晶を封入した液晶表示パネルを有する表示装置であり、前記液晶表示パネルは、前記第1の基板よりも観察者側に前記液晶および前記第2の基板が配置されている。
【0004】
一般的な液晶表示装置の場合、前記第1の基板は、たとえば、ガラス基板などの絶縁基板の表面に走査信号線、映像信号線、TFT素子、画素電極、配向膜などが形成された基板であり、TFT基板と呼ばれることが多い。また、前記第2の基板は、たとえば、ガラス基板などの絶縁基板の表面に、表示領域を画素毎に分割する遮光層、カラーフィルタ、配向膜などが形成された基板であり、対向基板と呼ばれることが多い。なお、前記画素電極とともに前記液晶を駆動させるために設けられる対向電極は、前記対向基板側に形成されていることもあるし、前記TFT基板側に形成されていることもある。
【0005】
前記携帯型電子装置は、近年、薄型化や軽量化などが進んでおり、それにともない、たとえば、液晶表示装置(液晶表示パネル)の薄型化が進んでいる。前記液晶表示パネルを薄型化する方法の1つとして、たとえば、前記TFT基板および前記対向基板のいずれか一方または両方の前記絶縁基板(ガラス基板)を薄型化する方法がある。
【0006】
また、近年は、前記液晶表示パネルを薄型化する別の方法として、たとえば、前記TFT基板および前記対向基板のいずれか一方または両方の前記絶縁基板に、プラスチック基板(樹脂基板)を用いる方法も提案されている(たとえば、特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開平8−006039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記携帯電話端末などに用いられる液晶表示装置は、従来、液晶表示パネルの表示領域部分が開口した前記携帯型電子装置の筐体(外装部品)に内蔵されていることが多い。またこのとき、前記筐体の前記開口部分は、前記液晶表示パネルを保護するためのアクリル樹脂などの保護カバーで覆われていることが多い。そのため、たとえば、前記携帯電話端末のディスプレイ部のさらなる薄型化が困難になりつつあり、液晶表示パネルと保護カバーとの間にある空気の層により表示された映像や画像の視認性が低下しやすいといった問題があった。
【0008】
このような問題を解決し、携帯電話端末向けなどの液晶表示装置のさらなる薄型化を可能にしたり、映像などの視認性の低下を防いだりする方法として、たとえば、液晶表示パネルの観察者側を向いた面に、前記保護カバーとして機能する樹脂板を貼り付ける方法が提案されている。前記樹脂板を前記液晶表示パネルに貼り付けるときには、たとえば、粘着材または接着材を用いて、前記対向基板(第2の基板)よりも観察者側に配置された偏光板に、前記樹脂板を貼り付けて密着させる。
【0009】
しかしながら、前記粘着材または接着材として、たとえば、前記上偏光板を前記対向基板の絶縁基板(ガラス基板)に貼り付けるときに用いるアクリル樹脂系の粘着材または接着材と同じものを用いた場合、前記樹脂板と前記粘着材または接着材との密着力が弱く、前記樹脂板がはがれやすいという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、粘着材または接着材を用いて液晶表示パネルの偏光板に貼り付けた樹脂板(保護カバー)をはがれにくくすることが可能な技術を提供することにある。
【0011】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面によって明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概略を説明すれば、以下の通りである。
【0013】
(1)第1の基板と、前記第1の基板よりも観察者側に配置され、かつ、前記第1の基板の前記観察者側を向いた面に対向する第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に挟まれた液晶と、前記第2の基板よりも観察者側に配置され、かつ、前記第2の基板の前記観察者側を向いた面に対向する上偏光板と、前記上偏光板よりも観察者側に配置され、かつ、前記上偏光板の前記観察者側を向いた面に、粘着材または接着材で前記上偏光板に貼り付けられた透明な樹脂板とを有する液晶表示装置であって、前記樹脂板は、前記上偏光板と対向する面に透明な酸化膜を有し、前記樹脂板は、前記酸化膜を介して前記粘着材または前記接着材と密着している液晶表示装置。
【0014】
(2)前記(1)の液晶表示装置において、前記樹脂板の材質は、アクリル樹脂であり、前記粘着材または前記接着材の材質は、前記樹脂板と同じもしくは異なるアクリル樹脂である液晶表示装置。
【0015】
(3)前記(1)または(2)の液晶表示装置において、前記酸化膜は、導電性を有する液晶表示装置。
【0016】
(4)前記(3)の液晶表示装置において、前記導電性を有する前記酸化膜は、固定電位の導電層に接続されている液晶表示装置。
【0017】
(5)前記(1)乃至(4)のいずれかの液晶表示装置において、前記第1の基板は、前記液晶を駆動させる画素電極および対向電極のうちの前記画素電極を有し、前記第2の基板は、前記液晶を駆動させる前記画素電極および前記対向電極のうちの前記対向電極を有する液晶表示装置。
【0018】
(6)前記(1)乃至(4)のいずれかの液晶表示装置において、前記第1の基板は、前記液晶を駆動させる画素電極および対向電極の両方を有する液晶表示装置。
【0019】
(7)前記(6)の液晶表示装置において、前記第2の基板は、前記観察者側を向いた面に、前記画素電極および前記対向電極とは電気的に絶縁された導電層を有する液晶表示装置。
【0020】
(8)前記(1)乃至(7)のいずれかの液晶表示装置において、前記樹脂板および前記酸化膜は、前記上偏光板と対向する面の外周が、前記上偏光板の前記酸化膜と対向する面の外周よりも外側にある液晶表示装置。
【0021】
(9)前記(1)乃至(8)のいずれかの液晶表示装置において、前記樹脂板は、前記観察者側を向いた面の表面鉛筆硬度が3H以上である液晶表示装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明の液晶表示装置によれば、前記粘着材または接着材を用いて前記上偏光板に貼り付けた前記樹脂板(保護カバー)をはがれにくくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明について、図面を参照して実施の形態(実施例)とともに詳細に説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは、同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0024】
図1(a)および図1(b)、図2(a)および図2(b)はそれぞれ、従来および本発明に関わる液晶表示装置の概要を説明するための模式図である。
図1(a)は、従来の携帯電話端末におけるディスプレイ部の概略構成の一例を示す模式平面図である。図1(b)は、図1(a)のA−A’線における模式断面図である。
図2(a)は、本発明に関わる液晶表示装置を有する携帯電話端末におけるディスプレイ部の概略構成の一例を示す模式平面図である。図2(b)は、図2(a)のB−B’線における模式断面図である。
なお、図1(b)には、図1(a)のA−A’線における断面構成のうちの、液晶表示パネルおよび保護カバーならびに筐体のみの断面構成を示している。また、図2(b)には、図2(a)のB−B’線における断面構成のうちの、液晶表示パネルおよび保護カバーならびに筐体のみの断面構成を示している。また、図1(b)および図2(b)では、構成をわかりやすくするために、各構成要素の寸法(特に厚さ)の関係を、実際の液晶表示パネルにおける関係とは変えて示している。
【0025】
従来の一般的な携帯電話端末におけるディスプレイ部の構成は、たとえば、図1(a)および図1(b)に示したような構成になっており、液晶表示パネル1を有する液晶表示装置(液晶表示モジュールと呼ぶこともある)は、表示領域DAと重なる部分が開口した筐体(外装部品)2に内蔵されている。また、筐体2の開口部2aには、たとえば、アクリル樹脂などの透明な樹脂で形成された保護カバー3がはめ込まれている。
【0026】
液晶表示パネル1は、たとえば、第1の基板101と、第1の基板101よりも観察者側(観察者Pから見て手前)に配置された第2の基板102と、第1の基板101と第2の基板102との間に挟まれた液晶103と、第2の基板102よりも観察者側(観察者Pから見て手前)に配置された上偏光板104と、観察者Pから見て第1の基板101よりも後方に配置された下偏光板105とを有する。
【0027】
第1の基板101は、たとえば、ガラス基板などの絶縁基板101Aと、当該絶縁基板101Aの第2の基板102と対向する面に形成された薄膜積層体101Bとからなる。また、第1の基板101は、一般に、TFT基板と呼ばれている基板であり、第1の基板101の薄膜積層体101Bは、たとえば、導電層、絶縁層、および半導体層が積層しており、走査信号線、映像信号線、TFT、画素電極、および配向膜などが形成されている。以下、第1の基板101のことをTFT基板と呼ぶ。
【0028】
第2の基板102も、たとえば、ガラス基板などの絶縁基板102Aと、当該絶縁基板102Aの第1の基板101と対向する面に形成された薄膜積層体102Bとからなる。また、第2の基板102は、一般に、対向基板と呼ばれている基板であり、第2の基板102の薄膜積層体102Bは、たとえば、導電層および絶縁層が積層しており、遮光膜、カラーフィルタ、および配向膜などが形成されている。以下、第2の基板102のことを対向基板と呼ぶ。
【0029】
なお、前記画素電極とともに前記液晶を駆動させるために設けられる対向電極は、前記対向基板102の薄膜積層体102Bに形成されていることもあるし、前記TFT基板101の薄膜積層体101Bに形成されていることもある。
【0030】
TFT基板101と対向基板102は、たとえば、表示領域DAを囲む環状のシール材106で貼り合わせられており、液晶103は、TFT基板101、対向基板102、およびシール材106で囲まれた空間に密封されている。
【0031】
上偏光板104は、たとえば、第1の粘着材107で対向基板102の絶縁基板102Aに貼り付けられている。同様に、下偏光板105は、たとえば、第2の粘着材108でTFT基板101の絶縁基板101Aに貼り付けられている。このとき、第1の粘着材107および第2の粘着材108には、通常、各絶縁基板101A,102Aの材質および各偏光板104,105の材質にあわせて、十分な密着力が得られるものが用いられる。一般的な液晶表示パネル1では、各絶縁基板101A,102Aがガラス基板であり、各偏光板104,105がTACフィルムであり、第1の粘着材107および第2の粘着材108として、たとえば、アクリル樹脂系の粘着材が用いられる。
【0032】
なお、上偏光板104を対向基板102の絶縁基板102Aに貼り付けるときには、第1の粘着材107の代わりに、第1の接着材を用いることもある。また、下偏光板105をTFT基板101の絶縁基板101Aに貼り付けるときにも、第2の粘着材108の代わりに、第2の接着材を用いることもある。粘着材107,108の代わりに接着材を用いる場合も、各絶縁基板101A,102Aがガラス基板であり、各偏光板104,105がTACフィルムであれば、前記第1の接着材および前記第2の接着材として、たとえば、光硬化型(たとえば、紫外線硬化型)または熱硬化型のアクリル樹脂系接着材が用いられる。
【0033】
また、図1(b)に示したように、観察者Pから見てTFT基板101の後方に下偏光板105が配置されている液晶表示パネル1(液晶表示装置)は、透過型または半透過型のものであり、たとえば、観察者Pから見て液晶表示パネル1の後方にバックライトユニット(光源)や光拡散板などが配置されている。また、液晶表示パネル1(液晶表示装置)が反射型の場合は、通常、下偏光板105が不要である。
【0034】
携帯電話端末のディスプレイ部の構成が、図1(a)および図1(b)に示したような構成である場合、液晶表示パネル1の上偏光板104と保護カバー3との間に空気層4が介在している。そのため、たとえば、当該空気層4により、表示された映像や画像の視認性が低下することがある。また、液晶表示パネル1のたわみや筐体2に収容するまでの過程での破損を防ぐためには、たとえば、TFT基板101の絶縁基板101Aおよび対向基板102の絶縁基板102Aの厚みにより十分な強度を得る必要があり、さらなる薄型化が困難になりつつある。
【0035】
このような問題を解決し、携帯電話端末向けなどの液晶表示装置のさらなる薄型化を可能にしたり、映像などの視認性の低下を防いだりする方法として、たとえば、図2(a)および図2(b)に示すように、第3の粘着材5を用いて、液晶表示パネル1の上偏光板104に樹脂板6を貼り付ける方法が提案されている。樹脂板6は、たとえば、アクリル樹脂(たとえば、PMMA)のように光透過率が高い透明な樹脂で形成されており、特に、観察者側を向いた面の表面鉛筆硬度が3H以上であるような樹脂で形成されていることが望ましい。なお、表面鉛筆硬度とは、鉛筆硬度試験(JIS規格G0202)の結果に基づく表面硬度であり、表面鉛筆硬度が3H以上といった場合、3Hまたは3Hよりもやわらかい鉛筆で樹脂板6の表面に線引きしたときに、樹脂板6の表面に傷が付かないことを意味する。またこのとき、樹脂板6自身が、表面鉛筆硬度が3H以上の樹脂材料で形成されていてもよいし、たとえば、樹脂板6の表面にハードコート処理を施して、表面鉛筆硬度が3H以上になるようにしてもよい。
【0036】
このようにすることで、樹脂板6に保護カバー3としての機能を持たせることができ、たとえば、図1(b)に示したような構成で見られる、液晶表示パネル1の上偏光板104と保護カバー3との間の空気層4による視認性の低下を防げる。
【0037】
また、樹脂板6を液晶表示パネル1に貼り付けることにより、液晶表示パネル1の強度が増すので、たとえば、TFT基板101の絶縁基板101Aのさらなる薄型化、すなわち液晶表示パネル1のさらなる薄型化が可能になる。また、空気層4がなくなるので、たとえば、前記携帯電話端末のディスプレイ部のさらなる薄型化が可能になる。
【0038】
ところで、第3の粘着材5(または第3の接着材)は、既存の材料を応用して製造コストの上昇を抑えるという視点から、第1の粘着材107および第2の粘着材108(または第1の接着材および第2の接着材)と同じ材質の粘着材(または接着材)を用いることが望ましい。しかしながら、第3の粘着材5として、たとえば、一般的な液晶表示パネル1における第1の粘着材107および第2の粘着材108と同じアクリル樹脂系の粘着材を用いた場合、樹脂板6と第3の粘着材5との密着力は、上偏光板104と第3の粘着材5との密着力、対向基板102の絶縁基板102A(ガラス基板)と第1の粘着材107との密着力などに比べて弱いので、樹脂板6がはがれやすい。また、粘着材の代わりに接着材を用いる場合にも同様である。
【0039】
そこで、以下の実施例では、図2(b)に示した構成のように、第3の粘着材5(または第3の接着材)を用いて液晶表示パネル1の上偏光板104に貼り付けた樹脂板6をはがれにくくする構成の一例について説明する。
【実施例】
【0040】
図3(a)および図3(b)は、本発明による一実施例の液晶表示装置の概略構成を示す模式図である。
図3(a)は、本実施例の液晶表示装置の概略構成の一例を示す模式平面図である。図3(b)は、図3(a)のC−C’線における模式断面図である。
なお、図3(a)および図3(b)には、液晶表示装置のうちの液晶表示パネルおよび液晶表示パネルに貼り付けられた樹脂板のみを示している。また、図3(b)は、液晶表示パネル1の上側が観察者側である。また、図3(b)では、構成をわかりやすくするために、各構成要素の寸法(特に厚さ)の関係を、実際の液晶表示パネルにおける関係とは変えて示している。
【0041】
本実施例の液晶表示装置は、たとえば、図3(a)および図3(b)に示すように、液晶表示パネル1の上偏光板104の観察者側を向いた面に、第3の粘着材5を用いて樹脂板6(たとえば、PMMA)を貼り付けている。このとき、樹脂板6は、上偏光板104と対向する面に、酸化膜7を有し、酸化膜7と第3の粘着材5とが密着している。すなわち、樹脂板6は、酸化膜7を介して第3の粘着材5と密着している。
【0042】
酸化膜7は、光透過率が高い透明なものであればよく、たとえば、シリコン酸化膜(SiO2)などの絶縁性酸化膜でもよいし、画素電極および対向電極の形成に用いられるITO膜またはIZO膜などの透明な導電性酸化膜でもよい。
【0043】
ところで、前記液晶表示パネル1が横電界駆動方式の場合、言い換えると液晶103を駆動させる画素電極および対向電極がTFT基板101の薄膜積層体101Bに形成されている場合、たとえば、対向基板102の絶縁基板102Aの、上偏光板104と対向する面に、静電気シールド層としてITO膜を形成していることが多い。このとき、第1の粘着材107として、たとえば、アクリル樹脂系の粘着材を用いて上偏光板104を対向基板102に貼り付けても、上偏光板104がはがれることは少ない。これは、ITO膜などの酸化膜7とアクリル樹脂系の粘着材(または接着材)との密着力がよく、樹脂板6(アクリル樹脂板)とアクリル樹脂系の粘着材(または接着材)との密着力よりも強いことを示している。
【0044】
そのため、樹脂板6の表面に酸化膜7を形成し、酸化膜7と第3の粘着材5(または第3の接着材)を密着させることで、樹脂板6がはがれにくくなる。
【0045】
また、前記シリコン酸化膜は、たとえば、TFT基板101の薄膜積層体101Bにおいて、TFTのゲート絶縁膜としての機能を有する絶縁層などに使用される酸化膜である。また、前記ITO膜や前記IZO膜は、TFT基板101の薄膜積層体101Bや対向基板102の薄膜積層体102Bにおいて、画素電極および対向電極に使用される導電性酸化膜である。そのため、これらの酸化膜7であれば光透過率が高いので、表示された映像や画像の視認性の低下を抑えることができる。
【0046】
図4(a)乃至図4(c)は、本実施例の液晶表示パネルおよび樹脂板についての具体的な構成例を説明するための模式図である。
図4(a)は、図3(b)の領域ARの第1の構成例を示す模式断面図である。図4(b)は、図3(b)の領域ARの第2の構成例を示す模式断面図である。図4(c)は、図3(b)の領域ARの第3の構成例を示す模式断面図である。
また、図4(a)乃至図4(c)の各図では、構成をわかりやすくするために、各構成要素の寸法(特に厚さ)の関係を、実際の液晶表示パネルにおける関係とは変えて示している。
【0047】
本実施例の液晶表示装置において、液晶表示パネル1は、液晶103を駆動させる画素電極および対向電極のうちの対向電極が、対向基板102の薄膜積層体102Bに形成されていても、TFT基板101の薄膜積層体101Bに形成されていてもよい。以下、前記対向電極が対向基板102の薄膜積層体102Bに形成されている場合の対向基板102の構成および酸化膜7の材質についての具体的な構成例と、前記対向電極がTFT基板101の薄膜積層体101Bに形成されている場合の対向基板102の構成および酸化膜7の材質についての具体的な構成例について説明する。
【0048】
まず、前記対向電極が対向基板102の薄膜積層体102Bに形成されている場合の対向基板102の構成および酸化膜7の材質についての具体的な構成例について説明する。このとき、対向基板102の薄膜積層体102Bは、たとえば、図4(a)に示すような構成になっており、絶縁基板(ガラス基板)102Aの、液晶103(TFT基板101)と対向する面には、まず、遮光膜、カラーフィルタ、および平坦化膜を有する薄膜積層部102B1が形成されている。そして、絶縁基板102Aから見て、薄膜積層部102B1の上には、対向電極102B2および配向膜102B3が積層している。
【0049】
また、絶縁基板102Aの、液晶103(TFT基板101)と対向する面の裏面、すなわち観察者側を向いた面には、第1の粘着材107により上偏光板104が貼り付けられている。なお、図4(a)に示した例では、絶縁基板102Aに上偏光板104が直接貼り付けられているが、絶縁基板102Aと上偏光板104との間に、1層または複数層の位相差板が介在していてもよい。
【0050】
また、上偏光板104の、観察者側を向いた面には、第3の粘着材5により、酸化膜7を有する樹脂板6が貼り付けられている。
【0051】
対向基板102の薄膜積層体102Bに形成された対向電極102B2は、たとえば、ITO膜などの導電膜で形成されており、一般に、薄膜積層部102B1の全面に形成されている。そのため、このような液晶表示パネル1では、対向電極102B2が静電気シールドとしての機能を有する。したがって、樹脂板6に形成された酸化膜7は、絶縁性酸化膜(たとえば、シリコン酸化膜)であってもよいし、導電性酸化膜(たとえば、ITO膜)であってもよいが、導電性酸化膜にすると、酸化膜7にも静電気のシールド効果が現れるので、静電気のシールド効果が高くなる。
【0052】
次に、前記対向電極がTFT基板101の薄膜積層体101Bに形成されている場合の対向基板102の構成および酸化膜7の材質についての具体的な構成例について説明する。このとき、対向基板102の薄膜積層体102Bは、たとえば、図4(b)に示すような構成になっており、絶縁基板(ガラス基板)102Aの、液晶103(TFT基板101)と対向する面には、まず、遮光膜、カラーフィルタ、および平坦化膜を有する薄膜積層部102B1が形成されている。そして、絶縁基板102Aから見て、薄膜積層部102B1の上には、配向膜102B3が積層している。
【0053】
また、絶縁基板102Aの、液晶103(TFT基板101)と対向する面の裏面、すなわち観察者側を向いた面には、たとえば、ITO膜などの透明な導電膜からなる静電気シールド層102Cが形成されており、絶縁基板102Aから見て、静電気シールド層102Cの上に、第1の粘着材107により上偏光板104が貼り付けられている。なお、図4(b)に示した例では、静電気シールド層102Cに上偏光板104が直接貼り付けられているが、静電気シールド層102Cと上偏光板104との間に、1層または複数層の位相差板が介在していてもよい。
【0054】
また、上偏光板104の、観察者側を向いた面には、第3の粘着材5により、酸化膜7を有する樹脂板6が貼り付けられている。
【0055】
対向基板102の静電気シールド層102Cは、たとえば、ITO膜などの導電膜で形成されており、一般に、絶縁基板102Aの観察者側を向いた面の全面に形成されている。したがって、樹脂板6に形成された酸化膜7は、絶縁性酸化膜(たとえば、シリコン酸化膜)であってもよいし、導電性酸化膜(たとえば、ITO膜)であってもよいが、導電性酸化膜にすると、酸化膜7にも静電気のシールド効果が現れるので、静電気のシールド効果が高くなる。
【0056】
また、樹脂板6に形成された酸化膜7が導電性酸化膜の場合、酸化膜7に静電気のシールド効果が現れるので、たとえば、図4(c)に示すように、対向基板102に静電気シールド層102Cを設けなくてもよくなる。そのため、対向基板102の構造が簡略化され、製造コストを低減できる。
【0057】
またさらに、静電気シールド層102Cを設けない場合、絶縁基板102Aの一表面に薄膜積層部102B1および配向膜102B3を形成した後、たとえば、絶縁基板102Aの薄膜積層部102B1などを形成した面の裏面を研磨して、絶縁基板102Aを薄くすることができる。そのため、対向基板102の薄型化が可能になる。
【0058】
図5(a)乃至図5(c)は、本実施例の液晶表示装置において、樹脂板に形成された導電性酸化膜のシールド効果を高める方法を説明するための模式図である。
図5(a)は、樹脂板に形成された導電性酸化膜のシールド効果を高める方法の一例を説明するための模式断面図である。図5(b)は、樹脂板に形成された導電性酸化膜のシールド効果を高める方法の別の例を説明するための模式断面図である。図5(c)は、図5(b)に示した例の変形例を説明するための模式断面図である。
なお、図5(a)乃至図5(c)には、液晶表示装置のうちの、液晶表示パネル、液晶表示パネルに貼り付けられた樹脂板、固定電位の導電層、および樹脂板に形成された導電性酸化膜と固定電位の導電層とを接続する導電性部材と、筐体(必要に応じて)を示している。また、図5(a)は、図3(a)のC−C’線における断面図に相当し、図5(b)および図5(c)は、図3(a)のC−C’線における断面のうちのC’に近い部分のみを抽出した断面図に相当する。また、図5(a)乃至図5(c)の各図では、構成をわかりやすくするために、各構成要素の寸法(特に厚さ)の関係を、実際の液晶表示パネルにおける関係とは変えて示している。
【0059】
樹脂板6に形成された酸化膜7が導電性酸化膜の場合、前述のように、酸化膜7に静電気のシールド効果が現れる。このとき、酸化膜7が、たとえば、電気的に独立、すなわち、液晶表示パネル1にある導電層や筐体2の内部にある導電層などと絶縁されていても、静電気のシールド効果は得られる。しかしながら、酸化膜7を導電性酸化膜にした場合、たとえば、酸化膜7を固定電位の導電層に接続することで、酸化膜7による静電気のシールド効果をいっそう高めることができる。
【0060】
導電性の酸化膜7を固定電位の導電層に接続する方法の1つとして、たとえば、図5(a)に示すように、液晶表示パネル1のTFT基板101に形成された導電層101B1と酸化膜7とを、導電性部材8で接続する方法がある。このとき、導電層101B1が、たとえば、液晶表示パネル1(TFT基板101)に接続されたフレキシブルプリント配線板などを介して接地電位になっていれば、酸化膜7も接地電位になり、静電気シールド効果がいっそう高まる。なお、導電性部材8は、たとえば、導電性樹脂または導電性ゴムであってもよいし、導電性テープであってもよい。また、導電性部材8は、たとえば、はんだやワイヤー状の導体であってもよい。
【0061】
また、たとえば、液晶表示装置を収容する筐体(外装部品)2が導電性の材料で形成されている場合は、たとえば、図5(b)に示すように、導電性部材8を用いて樹脂板6に形成された導電性の酸化膜7と筐体2とを接続してもよい。
【0062】
またさらに、図示は省略するが、TFT基板101の導電層101B1や導電性の筐体2に限らず、液晶表示パネル1などとともに筐体2に収容される導電性の部品と樹脂板6に形成された導電性の酸化膜7とを電気的に接続させることで、酸化膜7の静電気シールド効果を高めることができる。
【0063】
また、図5(b)に示した例では、樹脂板6および液晶表示パネル1のうちの、表示領域DAの外側の部分が筐体2で覆われているが、これに限らず、たとえば、図5(c)に示すように、樹脂板6および液晶表示パネル1のうちの、表示領域DAの外側の部分が露出していてもよいことはもちろんである。ただし、図5(b)のような構成にすると、たとえば、樹脂板6と筐体2との間に生じる隙間から筐体2の内部に水分や異物が侵入しにくくなる、表示領域DAの外側の領域からの光漏れなどによる視認性の低下を防げるといった別の効果も得られる。
【0064】
図6(a)および図6(b)、図7(a)および図7(b)はそれぞれ、本実施例の液晶表示装置の変形例を説明するための模式図である。
図6(a)は、本実施例の液晶表示装置の第1の変形例の概略構成を示す模式平面図である。図6(b)は、図6(a)のD−D’線における模式断面図である。
図7(a)は、本実施例の液晶表示装置の第2の変形例の概略構成を示す模式平面図である。図7(b)は、図7(a)のE−E’線における模式断面図である。
なお、図6(a)および図6(b)、図7(a)および図7(b)には、液晶表示装置のうちの液晶表示パネル1および液晶表示パネル1に貼り付けられた樹脂板6の構成のみを示している。また、図6(b)および図7(b)では、構成をわかりやすくするために、各構成要素の寸法(厚さ)の関係を、実際の液晶表示パネルにおける関係とは変えて示している。
【0065】
本実施例の液晶表示装置において特徴となる点は、たとえば、液晶表示パネル1の上偏光板104に樹脂板6を貼り付けるために使用する第3の粘着材5(または第3の接着材)として、アクリル樹脂系の粘着材(または接着材)を用いる場合、樹脂板6の表面に酸化膜7を形成しておき、酸化膜7と第3の粘着材5とを密着させて樹脂板6を貼り付ける点である。すなわち、本実施例の液晶表示装置において重要な点は、樹脂板6の上偏光板104と対向する面に酸化膜7が形成されている点である。
【0066】
そのため、本実施例の液晶表示装置の第1の変形例としては、たとえば、図6(a)および図6(b)に示すように、観察者Pから見た樹脂板6および酸化膜7の上偏光板104と対向する面の外周が、上偏光板104の観察者側の面の外周とほぼ一致しているものが挙げられる。またこのとき、図6(b)の領域ARの具体的な断面構成は、たとえば、図4(a)乃至図4(c)に示した構成のうちのいずれかであればよいことはもちろんである。
【0067】
また、本実施例の液晶表示装置の第2の変形例としては、たとえば、図7(a)および図7(b)に示すように、観察者Pから見た樹脂板6および酸化膜7の上偏光板104と対向する面の外周が、上偏光板104の観察者側の面の外周と、表示領域DAの外周の間にあるものが挙げられる。またこのときも、図7(b)の領域ARの具体的な断面構成は、たとえば、図4(a)乃至図4(c)に示した構成のうちのいずれかであればよいことはもちろんである。
【0068】
以上、本発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることはもちろんである。
【0069】
たとえば、前記実施例では、液晶表示装置を例に挙げ、第3の粘着材5(または接着材)を用いて液晶表示パネル1の上偏光板104に、酸化膜7が形成された樹脂板6を貼り付ける構成について説明した。しかしながら、本発明は、液晶表示装置に限らず、保護カバー3としての機能を併せ持つ樹脂板6を貼り付ける表示パネルが液晶表示パネル1ではない表示装置(たとえば、有機EL表示装置など)にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1(a)】従来の携帯電話端末におけるディスプレイ部の概略構成の一例を示す模式平面図である。
【図1(b)】図1(a)のA−A’線における模式断面図である。
【図2(a)】本発明に関わる液晶表示装置を有する携帯電話端末におけるディスプレイ部の概略構成の一例を示す模式平面図である。
【図2(b)】図2(a)のB−B’線における模式断面図である。
【図3(a)】本実施例の液晶表示装置の概略構成の一例を示す模式平面図である。
【図3(b)】図3(a)のC−C’線における模式断面図である。
【図4(a)】図3(b)の領域ARの第1の構成例を示す模式断面図である。
【図4(b)】図3(b)の領域ARの第2の構成例を示す模式断面図である。
【図4(c)】図3(b)の領域ARの第3の構成例を示す模式断面図である。
【図5(a)】樹脂板に形成された導電性酸化膜のシールド効果を高める方法の一例を説明するための模式断面図である。
【図5(b)】樹脂板に形成された導電性酸化膜のシールド効果を高める方法の別の例を説明するための模式断面図である。
【図5(c)】図5(b)に示した例の変形例を説明するための模式断面図である。
【図6(a)】本実施例の液晶表示装置の第1の変形例の概略構成を示す模式平面図である。
【図6(b)】図6(a)のD−D’線における模式断面図である。
【図7(a)】本実施例の液晶表示装置の第2の変形例の概略構成を示す模式平面図である。
【図7(b)】図7(a)のE−E’線における模式断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1…液晶表示パネル
101…TFT基板(第1の基板)
102…対向基板(第2の基板)
101A,102A…絶縁基板
101B,102B…薄膜積層体
101B1…導電層
102B1…薄膜積層部
102B2…対向電極
102B3…配向膜
102C…静電気シールド層
103…液晶
104…上偏光板
105…下偏光板
106…シール材
107…第1の粘着材
108…第2の粘着材
2…筐体(外装部品)
3…保護カバー
4…空気層
5…第3の粘着材
6…樹脂板
7…酸化膜
8…導電性部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板よりも観察者側に配置され、かつ、前記第1の基板の前記観察者側を向いた面に対向する第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に挟まれた液晶と、
前記第2の基板よりも観察者側に配置され、かつ、前記第2の基板の前記観察者側を向いた面に対向する上偏光板と、
前記上偏光板よりも観察者側に配置され、かつ、前記上偏光板の前記観察者側を向いた面に、粘着材または接着材で前記上偏光板に貼り付けられた透明な樹脂板とを有する液晶表示装置であって、
前記樹脂板は、前記上偏光板と対向する面に透明な酸化膜を有し、
前記樹脂板は、前記酸化膜を介して前記粘着材または前記接着材と密着していることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記樹脂板の材質は、アクリル樹脂であり、
前記粘着材または前記接着材の材質は、前記樹脂板と同じもしくは異なるアクリル樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記酸化膜は、導電性を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記導電性を有する前記酸化膜は、固定電位の導電層に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第1の基板は、前記液晶を駆動させる画素電極および対向電極のうちの前記画素電極を有し、
前記第2の基板は、前記液晶を駆動させる前記画素電極および前記対向電極のうちの前記対向電極を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第1の基板は、前記液晶を駆動させる画素電極および対向電極の両方を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第2の基板は、前記観察者側を向いた面に、前記画素電極および前記対向電極とは電気的に絶縁された導電層を有することを特徴とする請求項6に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記樹脂板および前記酸化膜は、前記上偏光板と対向する面の外周が、前記上偏光板の前記酸化膜と対向する面の外周よりも外側にあることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記樹脂板は、前記観察者側を向いた面の表面鉛筆硬度が3H以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板よりも観察者側に配置され、かつ、前記第1の基板の前記観察者側を向いた面に対向する第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に挟まれた液晶と、
前記第2の基板よりも観察者側に配置され、かつ、前記第2の基板の前記観察者側を向いた面に対向する上偏光板と、
前記上偏光板よりも観察者側に配置され、かつ、前記上偏光板の前記観察者側を向いた面に、粘着材または接着材で前記上偏光板に貼り付けられた透明な樹脂板とを有する液晶表示装置であって、
前記樹脂板は、前記上偏光板と対向する面に透明な酸化膜を有し、
前記樹脂板は、前記酸化膜を介して前記粘着材または前記接着材と密着していることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記樹脂板の材質は、アクリル樹脂であり、
前記粘着材または前記接着材の材質は、前記樹脂板と同じもしくは異なるアクリル樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記酸化膜は、導電性を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記導電性を有する前記酸化膜は、固定電位の導電層に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第1の基板は、前記液晶を駆動させる画素電極および対向電極のうちの前記画素電極を有し、
前記第2の基板は、前記液晶を駆動させる前記画素電極および前記対向電極のうちの前記対向電極を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第1の基板は、前記液晶を駆動させる画素電極および対向電極の両方を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第2の基板は、前記観察者側を向いた面に、前記画素電極および前記対向電極とは電気的に絶縁された導電層を有することを特徴とする請求項6に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記樹脂板および前記酸化膜は、前記上偏光板と対向する面の外周が、前記上偏光板の前記酸化膜と対向する面の外周よりも外側にあることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記樹脂板は、前記観察者側を向いた面の表面鉛筆硬度が3H以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【図1(a)】
【図1(b)】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図1(b)】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【公開番号】特開2009−37033(P2009−37033A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201707(P2007−201707)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】
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