説明

液晶表示装置

【課題】液晶表示装置のコントラストを低下させることなく、且つ、斜めから見たときの輝度低下改善効果と正面輝度低下の抑制を高度なレベルで両立させた視野角向上フィルムを提供する。
【解決手段】少なくとも二種の非相溶性の樹脂からなる混合物を溶融押し出し成型してなる光拡散フィルムにおいて、裾広がり拡散度比率、即ち、主拡散方向の波長550nmの光の出射角0度における透過度(I)と出射角60度における透過度(I60)の割合(I60/I×100)が0.06〜1.0%となる値に設定した光拡散フィルムを視野角向上フィルムとする。該視野角向上フィルムの液晶表示装置における配置は、光源と液晶セルの間とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントラストの低下を抑制しつつ、斜め方向から観察したときの輝度低下と正面輝度低下の抑制を高度なレベルで両立させた、液晶表示装置の液晶層より光源側に設置される視野角向上フィルム及び該視野角向上フィルムを用いた斜め方向から観察したときの輝度低下の抑制と正面輝度低下の抑制を高度なレベルで両立させた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、薄型、軽量、低消費電力等の特徴を活かしてフラットパネルディスプレイとして多用され、その用途は携帯電話、携帯情報端末(PDA)、パーソナルコンピュータ、テレビなどの情報用表示デバイスとして年々拡大している。
【0003】
しかしながら、液晶表示装置は、CRTに比べて視野角が狭いという問題がある。
視野角とは、液晶表示装置の画面を観察する角度を変化させた場合に、画面の垂線に対する角度を大きくして行く、すなわちより斜めの方向になるに従い正面より観察した場合よりも画面の画像の画質が低下する現象を指している。該画質としては、カラー画像の色合い、画像のコントラスト、白表示画像の輝度及び黒表示画像の光の漏れによる白ボケ、ガンマ曲線の歪みによる高角度での観察における画質の不自然さ等の現象が上げられる。該画質の低下の中で、観察方向による輝度の変化は特に重要である。
【0004】
上記輝度の変化は、例えば、白表示の画像を、角度を変えて観察した場合の、正面輝度に対しての輝度低下の度合いで判定される。以下、斜め方向からの輝度低下の度合いを斜め輝度低下と、また、該斜め輝度低下を抑制する効果を斜め輝度低下改善効果と称する。
【0005】
上記の視野角改善効果を発現する方法として、液晶表示装置の液晶セルの視認側に光拡散フィルムを設置する方法が知られている。(特許文献1,2,3,4参照)該方法は液晶層内部の液晶配向や電極構造等の変更なしで改善効果がだせるので、液晶表示装置の製造工程においては工程の増加等がなく簡便ではあり有用である。しかし、画面より出光する光が拡散フィルムを通過する事により透過する光が散乱されるために正面から見た場合の画面の明るさ、すなわち輝度が低下して画像が黒っぽくなるという課題を有する。以下、正面輝度低下と称する。即ち、視野角改善効果と正面輝度低下の抑制は二律背反事象となり両立が困難である。そのために、正面輝度低下をできるだけ小さくした形で大きな視野角改善効果が発現できる視野角向上フィルムが嘱望されている。
【0006】
例えば、特許文献1において、入射光を散乱透過させる機能を有する光拡散性フィルムを液晶表示画面上に設けることが提案されている。このフィルムは、屈折率の異なる透明樹脂を海島構造とした組成物を溶融押出してシート状にし、さらに延伸することによって得られるが、正面輝度低下が大きいことが示唆される。
【0007】
さらに、特許文献2では、単一の熱可塑性樹脂からなり、内部に微細な多数の空孔を含有する部分を有する透過光散乱制御フィルムが提案されている。このフィルムは、溶融製膜したポリカーボネートを延伸処理し、溝状の亀裂による光の散乱を利用したものであるが、斜め輝度低下改善効果が非常に小さいことが示唆される。
【0008】
さらに、特許文献3では、レンズフィルムを用いた方法が提案されている。これは正面輝度の低下大きいことが示唆される。
【0009】
さらに、特許文献4では、基材フィルムの表面に透光性粒子と透光性樹脂からなる光拡散層が形成されてなる透過光散乱制御フィルムが提案されているが、斜め輝度低下改善効果が十分でないことが示唆される。
【0010】
さらに、特許文献5では、偏光板がセルの上にあるのに加えて、基材フィルムの表面に透光性粒子と透光性樹脂からなる光拡散層が形成されてなる透過光散乱制御フィルムが提案されているが、全光線透過率が高いため、拡散効果が小さく斜め輝度低下改善効果が十分でないことが示唆される。
【0011】
また、特許文献6では、偏光フィルムがセルの上下にあるのに加えて、拡散フィルムは波長により異なる散乱角度分布を有し、かつフィルム面に対し方位角が90度異なる2方向で拡散光分布が異なる分光異方性散乱フィルムが提案されている。このフィルムは、正面輝度低下が大きいことが示唆される。
【0012】
上記のように、従来の光拡散フィルムにより視野角向上を図る方法においては、ガンマシフト改善効果と正面輝度低下の抑制のいずれか一方の特性を満足したものはあるが、両特性をともに高度なレベルで両立できたものは未だ存在しないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平7−114013号公報
【特許文献2】特開平10−206836号公報
【特許文献3】特開平09−179113号公報
【特許文献4】特開2003−270409号公報
【特許文献5】特開2010−164931号公報
【特許文献6】特開2004−341309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、斜め輝度低下改善効果と正面輝度低下の抑制を高度なレベルで両立させた、液晶表示装置の液晶層と光源の間に設置される視野角向上フィルム及び該視野角向上フィルムを用いた斜め輝度低下改善効果と正面輝度低下の抑制を高度なレベルで両立させるとともに、従来の液晶表示装置の工程で製造できる液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の組成の樹脂混合物を溶融成形することにより得られた光拡散フィルムの光学特性を特定の範囲に制御することにより、二律背反事象であると思われていた斜め輝度低下改善効果と正面輝度低下の抑制を高度なレベルで両立できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0016】
即ち、本願発明は、少なくとも二種の非相溶性の樹脂からなる混合物を溶融押し出し成型してなる光拡散フィルムにおいて、明細書中で記載した方法で測定される主拡散方向の波長550nmの光の出射角0度における透過度(I)と出射角60度における透過度(I60)の割合(I60/I×100)が0.06〜1.0%であることを特徴とする光拡散フィルムを液晶セルと光源の間に配した液晶表示装置である。
【0017】
また、この場合において、光拡散フィルムのヘイズが30%〜80%であることが好適である。
【0018】
また、この場合において、光拡散フィルムの島相の短径の平均粒径が0.2μm〜0.45μmであることが好適である。
【0019】
また、この場合において、非相溶性の樹脂の少なくとも一種がポリオレフィン系樹脂であることが好適である。
【0020】
さらにまた、この場合において、非相溶性の樹脂の二種がポリオレフィン系樹脂であることが好適である。
【0021】
さらにまた、この場合において、ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及び環状ポリオレフィン系樹脂より選ばれてなることが好適である。
【0022】
さらにまた、この場合において、偏光板保護用のフィルムとして用いる偏光板が好適である。
【0023】
さらにまた、この場合において、下偏光板保護用のフィルムとして用いる偏光板が好適である。
【0024】
さらにまた、視野角向上フィルムの主拡散方向を、液晶表示装置の水平方向に設置してなる液晶表示装置が好適である。
【0025】
さらにまた、視野角向上フィルムの主拡散方向を、液晶表示装置の垂直方向に設置してなる液晶表示装置が好適である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の視野角向上フィルムは、直進透過性と拡散透過性の両方の特徴のある特性を兼備した配光分布パターンを有しているので、液晶セルと光源の間に設置することにより、コントラストの低下を抑制しつつ、視野角改善効果と正面輝度低下の抑制という二律背反事象を高度なレベルで両立させることができ、斜め輝度低下改善効果と正面輝度低下抑制とが両立した液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(視野角向上フィルムの基本特性)
本発明の視野角向上フィルムは、少なくとも二種の非相溶性の樹脂からなる混合物を溶融押し出し成型してなる光拡散フィルムにおいて、明細書中で記載した方法で測定される主拡散方向の波長550nmの光の出射角0度における透過度(I)と出射角60度における透過度(I60)の割合(I60/I×100)が0.06〜1.0%であることを特徴とする視野角向上フィルムである。ここで、ディスプレイを見る際、ディスプレイの法線方向に対して±60度以内で観察しているという報告があり、60度以上の視野角は日常的に必要な特性ではないと考えられていたが、近年更なる広角度視野角が要求されている、本発明者らは鋭意検討の結果、60度の透過度の割合ではなく、斜め輝度低下改善効果及び正面輝度低下抑制に大きな関係があることを見出した。さらに、前述のごとく斜め輝度の低下という現象は斜め方向から観察した時に明るく感じないということである。そのため、このような斜め輝度の低下には人の目に対して分光視感効率が最も高い550nmの波長が重要であると考え、注目した。また、二種の樹脂が非相溶でなければ海島構造を形成することができないため、フィルム内部に屈折率界面が形成されず、光が拡散しないため、視野角向上効果を得られない。
本発明者等は、上記の二律背反であると思われていた課題を解決する方法について鋭意検討をして、斜め輝度低下改善効果は、配光分布パターンの裾の広がりで評価される拡散性を高めることで発現でき、かつ該拡散性が出射角0度の透過率と出射角60度の透過率の比で評価できることを見出した。
【0028】
前述のごとく、光拡散フィルムで視野角改善効果を発現できることは公知である。実際に図1に示すごとく、半値幅が57度である高拡散性フィルムを本発明方法で用いた場合は、斜め方向(高角度)から観察した時の輝度を向上させることができ、いわゆる視野角向上効果が発現できるが、同時に正面の輝度が大幅に低下する。従って、視野角改善効果と正面輝度低下とは、二律背反事象となる。
図1の輝度の角度依存性は、以下の方法で測定した。
【0029】
〔輝度の角度依存性の測定方法〕
RISA−COLOR/ONE−II(ハイランド社製)を用いて測定を行った。市販のVA型液晶表示装置試を料台上に水平に設置し、このパネルの中央部に131×131mmの大きさで白の画像(Nokia monitor test for windows V 1.0(Nokia 社製)のFarbeモード)を表示し、その白画像の上にスポイトにて水を3滴落とし、さらにその上に光拡散フィルムを置き、パネルとフィルムの間の水を均一に広げて密着させ、CCDカメラとディスプレイ間の距離を垂直状態で1mとして、CCDカメラを液晶表示装置のパネル表面に対して−70°から+70°までの間の赤道上を移動させて以下の条件で輝度を測定し、輝度の角度依存性のプロファイルを求めた。
ブランク測定は視野角向上フィルムを貼り付ける事なしに同様測定を行った。
輝度は上記の白の画像を5×5の25個の部分に分割し、その中心部の3×3の9個の部分の全ピクセルの輝度を測定してその平均値で表示した。
【0030】
上記の光学特性を満たすのに好ましい配光分布パターンの一例を図2に示す。即ち、直進透過性と拡散透過性の両方の透過性を兼ね備えた特徴のある特性の配光分布パターンである。
本配光分布パターンは以下の方法で測定して得たものである。
〔配光分布パターンの測定方法〕
自動変角光度計(GP−200:株式会社村上色彩研究所製)を用いて測定を行った。透過測定モード、光線入射角:0°(試料面に対して上下、左右共に直角になる角度)、受光角度:−90°〜90°(赤道線面上の角度)、フィルタ:ND10使用、光束絞り:10.5mm(VS−1 3.0)、受光絞り:9.1mm(VS−3 4.0)の条件で、主拡散方向が水平方向になるように試料台に固定し、透過光の変角光度曲線のピークトップの値がフルスケールに対して約80%の範囲になるようにSENSITIVITY及びHIGH VOLTONの設定を調整し、透過光の変角光度曲線を求めた。
【0031】
(裾広がり拡散度比率)
実施例において記載される方法で測定される主拡散方向の波長550nmの光の出射角0度における透過度(I)と出射角60度における透過度(I60)の割合(I60/I×100)が0.06〜1.0%であることが重要である。
該裾広がり拡散度比率は、0.07〜0.9%がより好ましく、0.08〜0.8%が
さらに好ましい。
以下上記特性を裾広がり拡散度比率と称する。
該裾広がり拡散度比率を上記範囲で満たすことにより初めて二律背反事象の上記の両特性を高度なレベルで両立させるができる。即ち、裾広がり拡散度比率が0.06%未満では正面輝度低下抑制は良好であるが、視野角改善効果が不足するので好ましくない。逆に、裾広がり拡散度比率が1.0%を超えた場合は、正面輝度低下が大きくなるので好ましくない。
前記裾広がり拡散度比率は、0.07〜0.9%がより好ましく、0.08〜0.8%がさらに好ましい。
例えば、前述の特許文献に記載された図より、主拡散方向の本裾広がり拡散度比率を求めると、特許文献1の図3、特許文献2の図3の(b)及び,特許文献3の図8より裾広がり拡散度比率はそれぞれ20%、13%、5%となり、上記の好ましい裾広がり拡散度比率はこれらの特許文献で開示されているフィルムに比べて著しく低い範囲にあると言える。
逆に、特許文献2の図13および特許文献4の表2より、裾広がり拡散度比率は0%以上、0.02%以下となり、上記の好ましい裾広がり拡散度比率はこれらの特許文献で開示されているフィルムに比べて高い範囲にある。
【0032】
異方性度の高いフィルムの場合は、拡散度が高い方向である主拡散方向の視野角改善効果が大きくなる。従って、視野角の改善を必要とする方向により、視野角向上フィルムの設置方向を変える必要がある。即ち、液晶表示装置の左右方向の視野角向上を図る時は、主拡散方向がパネルの左右方向に平行になるように、逆に、上下方向の視野角向上を図る時は、主拡散方向が上下方向に平行になるように設置するのが好ましい。
該対応により、必要な方向のみの視野角改善効果を発現させることが可能であるという
メリットもある。
【0033】
(好ましい正面輝度低下の範囲)
本発明の正面輝度低下の度合いは限定されないが、バックライト装置の輝度向上等の液晶表示装置全体のシステムの構成を変えることなく正面輝度低下の許容範囲で視野角改善効果を図れる点よりして、視野角向上フィルムを設置しない場合の輝度を100%とした時の視野角向上フィルムを設置した時の輝度の低下率を%で表示した輝度の低下率(以下、該正面輝度低下率を含めて正面輝度低下の語句を統一する)が実施例において記載するTN方式のデジタルフォトフレームでは20%以下である事が好ましい。18%以下がより好ましく、15%以下がさらに好ましい。
【0034】
(好ましい斜め輝度低下改善効果の範囲)
本発明においては、斜め輝度低下改善効果は、実施例において記載する方法で評価する受光角0°でのディスプレイの輝度に対する受光角70°でのディスプレイの輝度の割合(L70/L×100)が8%以上であることが好ましい。9%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましい。
上記下限未満では斜めから見た際の輝度低下が大きく、十分な効果が得られないので好ましくない。
【0035】
(好ましい正面コントラスト低下の範囲)
本発明においては、視野角向上フィルムを設置しない場合のコントラスト比を100%とした時の視野角向上フィルムを設置した時の輝度の低下率を%で表示した輝度の低下率(以下、該正面コントラスト低下率を含めて正面コントラスト低下の語句を統一する)が実施例において記載するTN方式のデジタルフォトフレームでは15%以下である事が好ましい。10%以下がより好ましく、6%以下がさらに好ましい。
【0036】
(作用機構)
光拡散フィルムで視野角改善効果をある程度発現できることは公知である。確かに、前述のごとく、従来公知の半値幅法拡散度で評価される高拡散性フィルムの使用で斜め方向(高角度)から観察した時の輝度を向上させることができるが、同時に正面の輝度が大幅に低下する。従って、視野角改善効果と正面輝度低下とは、二律背反事象であった。
この視野角改善効果と正面輝度低下抑制の二律背反事象を打破するためには、即ち上述のように、裾広がり拡散度比率を特定範囲にすることで、正面に出射される光量を大きく低下させることなく、高視野角側へ光を拡散させることが重要である。
さらに、視認性側に光拡散フィルムを貼ると、液晶セルを通った後の配光分布が変化する。液晶ディスプレイは正面のコントラスト比を最大にするため、白表示時は正面の輝度が最大となり、黒表示時は正面の輝度が最小となるように設計されており、コントラスト比は液晶セルによって決定される特性である。そのため、視認性側に貼ると白表示時の場合、正面の光を斜めに拡散するため、正面の輝度は低下し、黒表示時の場合、斜めに漏れている光を正面に拡散させるため、正面の輝度が向上する。このため、視認側に光拡散フィルムを貼ると正面コントラストの低下が大きくなる。一方、光源側に貼ると、バックライトの配光分布が変化するため、液晶セルを通った後の配光分布も変化するが、その変化は視認側に貼った時よりも小さく、その結果、白表示時と黒表示時の輝度の比であるコントラストの変化も小さくなる。
上記全要因を同時に満たすことによる作用機構により、コントラスト低下を抑制しつつ、視野角改善効果と正面輝度低下の二律背反事象を打破した異方性光拡散フィルムは本発明において初めて成し得たものである。
【0037】
(視野角向上フィルムの構成)
本発明の光拡散フィルムは、少なくとも二種の非相溶性の熱可塑性樹脂の混合物を溶融押し出し成型することによって得られることができる。少なくとも二種の非相溶性の熱可塑性樹脂の混合物の存在形態は、上述の光学特性を満たせば特に限定されず、連続相及び分散相としてそれぞれの樹脂が独立して存在するいわゆる海/島構造であってもよいし、両樹脂が共連続相を形成した構造であってもよい。両樹脂の界面における光の屈折や散乱により上述の特性を制御することができる。
【0038】
使用する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂及びポリメチルペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。
上記の少なくとも二種の非相溶性の熱可塑性樹脂は、それぞれの樹脂を製膜工程で配合してもよいし、予め混練法等で事前に配合した形で用いてもよい。
【0039】
本発明においては、三種以上の熱可塑性樹脂を配合してもよいし、それぞれの樹脂の馴染み性向上のための相溶化剤や分散径調整剤等の添加剤を併用しても構わない。また、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤や帯電防止剤等の添加剤を配合してもよい。また、上記の光学特性を阻害しない範囲であれば、無機粒子やポリマービーズ等の微粒子を添加してもよい。
【0040】
これらの熱可塑性樹脂より非相溶性(互いに溶け合わない)の樹脂の少なくとも二種類を選択すればよい。上記の少なくとも二種の非相溶性の熱可塑性樹脂の配合割合は、それぞれ質量比で5/95〜95/5であることが好ましく、10/90〜90/10がより好ましく、20/80〜80/20の割合が更に好ましいと言える。樹脂成分の種類及び後述の層構成、光拡散層の厚み及び製造方法の影響が大きい。
なお、二種の非相溶性の熱可塑性樹脂の配合割合が多い方が連続相となる傾向がある。特にメルトフローレートが近い場合、比率により海島構造の成分が逆転する。
【0041】
上記樹脂は、一般に市販されている汎用性の高い樹脂より選択すれば良いが、より安定した生産ができる等の対応のために特注品を使用しても良い。
ポリエステル系樹脂は、上記光学特性が達成し易く、かつ光学特性以外の機械的特性や熱的特性に優れている点より、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートの単一重合体及び/または共重合体の使用が好ましい。また、経済的にも優位である。
ポリエステルと組み合わせる樹脂としては後述するポリオレフィン系樹脂が好ましい。
また、フッ素系樹脂も、上記特性を満たせば限定されないが、上記光学特性が達成し易く、かつ経済的にも優位である点より、フッ化ビニリデン系樹脂及びパーフルオロエチレン等のフッ素含有モノマーとエチレンやプロピレン等のオレフィン系モノマーとの共重合体の使用が好ましい。
該フッ素樹脂は、耐光性に優れており、例えば、ポリオレフィン系樹脂と組み合わせることにより、耐光性の優れた異方性光拡散フィルムを得ることができる。
フッ素系樹脂と組み合わせる樹脂としては後述するポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0042】
前述の特性を安定して発現させることができる点より、少なくとも1種がポリオレフィン系樹脂よりなることが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポチペンテン、ポリヘキセン、ポリメチルペンテン等やこれらの共重合体、環状ポリオレフィン等が挙げられる。
【0043】
耐光性や経済性の点より二種類ともにポリオレフィン系樹脂を使用することが好ましい。二種類ともにポリオレフィン系樹脂を使用する場合は、その組み合わせは特に限定されないが、二種類のポリオレフィン系樹脂の屈折率差を0.003〜0.07の範囲にするのが好ましい。0.005〜0.06の範囲がより好ましく、0.01〜0.05がさらに好ましい。この屈折率差を範囲にすることで、前述した光学特性の視野角向上をより安定して得ることができる。例えば、屈折率差が0.07を超えた場合は、裾広がり拡散度比率が大きくなり、正面輝度低下率が大きくなるため、上記特性を満たすことができなくなる。
即ち、屈折率差が大きいほど、二種の非相溶性の熱可塑性樹脂の界面での角度変化が大きくなり、拡散には有利に働くが、一方界面での反射は指数関数的に増加するためと考えられる。
【0044】
環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネンやテトラシクロドデセン等の環状のポリオレフィン構造を有したものが挙げられる。例えば、(1)ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を、必要に応じてマレイン酸付加、シクロペンタジエン付加のごときポリマー変性を行なった後に、水素添加した樹脂、(2)ノルボルネン系モノマーを付加型重合させた樹脂、(3)ノルボルネン系モノマーとエチレンやα−オレフィンなどのオレフィン系モノマーと付加型共重合させた樹脂などを挙げることができる。重合方法及び水素添加方法は、常法により行なうことができる。
【0045】
これらのものはガラス転移温度を高くすることができ、ダイ内でのシェアやドラフトにより細くなった島成分が冷却中に速やかに固化され、安定した裾広がり拡散度比率を出しやすくなると考えられる。
ガラス転移温度は好ましくは100℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上である。上限はモノマー種により自ずと決まるが(環状モノマー100%のTg)、好ましくは230℃以下さらに好ましくは200℃以下、特に好ましくは190℃以下である。上限を超えると溶融押し出し時に高温が必要となり、着色することがあったり、未溶解物が発生することがある。なお値はISO11357−1,−2,−3に準拠して10℃/minの昇温速度で測定した値である。
【0046】
環状ポリオレフィン系樹脂の環状成分の含有量としては、好ましくは70−90質量%、さらに好ましくは73−85質量%である。特にノルボルネン系の場合はこの範囲が好ましい。特にエチレンを共重合させている環状ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂との親和性が高く、均一に分散しやすく、安定した裾広がり拡散度比率を達成するためには好ましい。
エチレンの含有量としては好ましくは30−10質量%、さらに好ましくは27−15質量%である。
【0047】
ポリエチレン系樹脂としては、単一重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。共重合体の場合は50モル%以上がエチレン成分であるのが好ましい。該ポリエチレン樹脂の密度や重合方法等も限定されないが、密度が0.909以下の共重合体の使用が好ましい。例えば、オクテンとの共重合体が挙げられる。重合方法はメタロセン触媒法及び非メタロセン触媒法のいずれでも構わない。
特に、高拡散性が安定に付与できる点で、エチレンとオクテンのブロック共重合体の使用が好ましい。例えば、該樹脂としては、ダウ・ケミカル社製のINFUSE(TM)が挙げられる。該樹脂は、ブロック構造のために、結晶性の部分を有するので、低密度でありながら高融点であるという特徴があり、得られる視野角向上フィルムの耐熱性等を向上させることができるので好ましい。
【0048】
ポリプロピレン系樹脂としては、単一重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。共重合体の場合は、50モル%以上がプロピレン成分であるのが好ましい。該樹脂の製造方法、分子量等は、特に限定されないが、耐熱性等の点から結晶性の高いものが好ましい。具体的には、結晶性は、示差走査熱量計(DSC)による融解熱で判断され、融解熱が65J/g以上のものが好ましい。
【0049】
エチレン及び/又はブテンが含まれたポリオレフィン系樹脂としては、ホモポリエチレン樹脂、ホモポリブテン樹脂、及びこれらの樹脂の他のオレフィン系モノマーとの共重合体、アクリル酸やメタクリル酸及びこれらのエステル誘導体との共重合体等が挙げられる。他のオレフィン系モノマーとの共重合体の場合は、ランダム、ブロック及びグラフト共重合体のいずれでもよい。また、EPラバー等の分散体でも構わない。該樹脂の製造方法や分子量等も特に限定されない。例えば、上記したポリエチレン系樹脂やエチレンとブテンの共重合体の使用が好ましい。
【0050】
ナノ結晶構造制御型ポリオレフィン系エラストマー樹脂は、ポリマーの結晶/非晶構造がナノオーダーで制御され、該結晶がナノオーダーで網目構造を有する熱可塑性のポリオレフィン系エラストマーであり、例えば、三井化学社製のノティオ(商標登録)が挙げられる。従来のポリオレフィン系エラストマー樹脂は結晶サイズがミクロンオーダーであるのに対して、ナノ結晶構造制御型ポリオレフィン系エラストマー樹脂は、結晶サイズがナノオーダーで制御されているという特徴を有する。このため、従来のポリオレフィン系エラストマー樹脂に比べて、透明性、耐熱性、柔軟性、ゴム弾性などに優れている場合が多い。従って、該ナノ結晶構造制御型ポリオレフィン系エラストマー樹脂を配合することによって、得られるフィルムの外観を向上できる場合がある。
【0051】
上記の少なくとも二種の非相溶性の熱可塑性樹脂のメルトフローレートは、上記の光学特性を満たせば特に限定されない。それぞれの熱可塑性樹脂は、230℃で測定したメルトフローレートが0.1〜100、好ましくは0.2〜50の範囲で適宜選択される。
【0052】
上記樹脂のメルトフローレートは、樹脂の組成、組成比、どちらの樹脂を海にするか及び所望する光学特性等を考慮して適宜選択される。
その指針は組成割合の方が多くて、かつメルトフローレートが低い方が海になる。同量の場合は、メルトフローレートが高い方が海になり易い。組成割合の高い方のメルトフローレートが高い場合は、単純な海/島構造ではなく、例えば共連続相といった構造が形成される場合もある。
【0053】
二種の樹脂が共にポリオレフィン系樹脂の場合は、環状ポリオレフィン系樹脂とポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂との組み合わせや、該三種の組み合わせが前述の特性のフィルムが得られ易い点や経済性の点で好ましい。
【0054】
環状ポリオレフィン系樹脂とポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂との組み合わせの場合は、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂を海相として、かつ該海相のポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートを島相の環状ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートよりも高くするが好ましい。
【0055】
環状ポリオレフィン系樹脂とポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂の組み合わせの場合は、全樹脂量中に環状ポリオレフィン系樹脂が10〜60質量%配合されているのが好ましく、さらに好ましくは10〜50質量%である。
例えば、10質量%未満の場合、裾広がり拡散度比率が小さくなり、ガンマシフト改善効果が小さくなり、逆に、60質量%を超えると、裾広がり拡散度比率が大きくなり、正面輝度低下が大きくなり、上記特性を満たすことができなくなる。
上記範囲が、後述のポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂を海相とする好ましい実施態様の実現に対して好ましい。
【0056】
二種共にポリオレフィン系樹脂よりなる場合の島相の短径の平均サイズは実施例で記載の評価方法で、0.2〜0.5μmが好ましい。0.2μm未満では裾広がり拡散度比率が不足するので好ましくない。逆に、0.5μmと超えた場合は、裾広がり拡散度比率が増加して、正面輝度が低下するので好ましくない。
【0057】
(視野角向上フィルムの製造方法)
本発明の視野角向上フィルムの製造方法も前述の光学特性を満たせば特に限定されないが、経済性の点で溶融押し出し成型により製膜する方法が好ましい。
本発明においては、光拡散性を付与するために、非溶融性微粒子を含有させる必要がないので、溶融押し出し成型法で実施しても、製膜工程における溶融樹脂の濾過フィルタの目詰まりが低減でき、生産性が優れるとともに得られるフィルムの清澄度も高いという特長を有する。
【0058】
上記溶融押し出し成型法による製膜方法としては、特に制限されず、例えば、Tダイ法及びインフレーション法のいずれでもよい。また、未延伸のままのフィルムでもよく、延伸処理を行ってもよい。
【0059】
上記溶融押し出し成型法は、一般に、押し出し機で溶融した樹脂をダイからシート状に押し出してし、該シートを冷却ロールに密着させ冷却固化させて製膜される。冷却ロールへの密着は、一般に広く用いられている押し圧ロールで押さえ付けて行っても良いが、異方性を付与するという点においては、上記の冷却ロールへの密着時に、該密着部の入り口部分に液溜りゾーン(バンクと称されることもある)が形成されないことが好ましい。該液溜りゾーンの形成は、冷却ロールへの密着時に圧接された場合、即ち、強い圧力で押さえられた時に発生するので、該密着時の密着圧力を低くするのが好ましい。例えば、一般に広く用いられている押し圧ロールで圧接して密着させるという方法は避けた方がよい。
弱い圧力で密着させる方法であれば限定されないが、例えば、押し出し機で溶融した樹脂をダイからシート状に押し出して、該シートをガス圧による押さえ方法及び/又は吸引法及び/又は静電気密着法で密着させ冷却固化させて製膜されてなることが好ましい。該方法により、異方性を有した視野角向上フィルムを安定して得ることができる。
【0060】
上記のガス圧による押さえ方法及び/又は吸引法及び/又は静電気密着法で密着させ冷却固化させる方法は限定されない。例えば、ガス圧による押さえ方法としては、例えば、空気等のガス圧で押さえ付ける、いわゆるエアーナイフ法等の方法、減圧ノズルで吸引して密着させるバキュームチャンバー法、静電気力で密着させる静電気密着法等が挙げられる。該方法は単独で用いてもよいし、複数の方法を併用しても良い。得られるフィルムの厚み精度を高めることができる点で、後者で実施するのが好ましい実施態様である。
【0061】
本発明の視野角向上フィルムは、無延伸法及び延伸法のいずれで製造しても良い。例えば、光拡散層にポリエステル系樹脂を用いた場合は、一軸延伸をするのが好ましい。延伸倍率は2倍以上が好ましい。上限は限定されないが、10倍未満が好ましい。該対応により、島相が延伸方向に引き伸ばされ細長い構造になり、該島相の配向方向と直行した方向の光拡散性が著しく向上し、裾広がり拡散度比率と正面輝度のバランスがとれる。
【0062】
無延伸法で製造する場合に、溶融押し出しされたシートを冷却固化する前に伸長する方法、即ち、ドラフト率を高める方法で製造しても良い。
【0063】
また、本発明の視野角向上フィルムは単層であってもよいし、2層以上の多層構成であっても構わない。多層構成の場合は、少なくとも一層が上記の構成よりなる光拡散フィルムからなる層であれば、他の層は、光拡散性を有しない単なる透明層であってもよい。また、全層が光拡散層の構成であってもよい。
上記多層構成の場合は、多層共押出し法で製造してもよいし、押出しラミネート法やドライラミネート法で実施してもよい。
【0064】
上記の少なくとも二種の非相溶性の熱可塑性樹脂の混合物は、それぞれの熱可塑性樹脂を製膜工程の押出し機などで配合してもよいし、予め混練法等で事前に混合物とした形で用いてもよい。
【0065】
本発明の視野角向上フィルムの厚みは10〜500μmが好ましく、20〜500μmがより好ましく、20〜200μmがさらに好ましいと言えるが、光拡散層の樹脂成分の種類、配合比、層構成及び製造方法等により裾広がり拡散度比率が上記範囲内となるようにする必要がある。
なお、厚みを調整する場合、ドラフト比、押し出し流量、リップ幅等の変更により海島構造が大きく変化した場合には、上記の傾向が逆転したり極端に大きくなったりすることもある。
【0066】
本発明の視野角向上フィルムのJIS K 7361に基づくヘイズは30〜90%が好ましく、35〜80%がより好ましく、40〜70%がさらに好ましい。ヘイズが30%以下だと斜め輝度の低下が抑制できず、90%以上では正面輝度の低下が大きくなる。
【0067】
(好ましいレタデーションの範囲)
本発明においては、拡散フィルムのレタデーションは実施例で記載の評価方法で100nm以下が好ましい。100nmを超えると虹斑が見え始めるなどの画質が低下するので好ましくない。
【0068】
(液晶表示装置)
本発明が適用できる液晶表示装置は、バックライト光源と液晶セルと、液層セルの視認側に配した偏光子とを少なくとも有する液晶表示装置であれば限定されない。例えば、TN、VA、OCB、IPS及びECBモードの液晶表示装置が挙げられる。
【0069】
(液晶表示装置への設置方法)
本発明においては、視野角向上フィルムや上記の機能性層複合体の液晶表示装置への設置方法としては、例えば反射損失の少ない接着剤や粘着剤等によって液晶セルと光源の間に貼着することが好ましい(図3)。
接着剤や粘着剤は視野角向上フィルムと対象物とが固定できれば限定されないが、光学用の製品を用いるのが好ましい。
【0070】
偏光子と積層して用いる場合は、例えば、PVAなどにヨウ素を染着させた偏光子に直接積層しても良いし(図4)、偏光子保護フィルムを介して積層して用いても良い(図3)。
【0071】
上記の偏光子や偏光子と偏光子保護フィルムを貼り合せた構成のものと積層して液晶表示装置に組み込む場合は、液晶表示装置のモードの違いを配慮して対応するのが好ましい。
【0072】
また、本発明においては、上記視野角向上フィルムの片面に自己粘着層を積層し、液晶表示装置の表示画面に着脱自在の形で貼着して用いても良い。
【0073】
(視野角向上フィルムの貼り付け方向)
本発明の視野角向上フィルムは、前記の異方性度を高めることにより液晶表示装置の視野角改善効果が発現される方向を変えることができる。
例えば、TVにおいては水平方向の視野角改善効果が求められるが、パソコンや各種装置用のモニターやデジタルサイネージ用の表示装置においては、垂直方向の視野角改善効果も求められることもある。
該要求に答えるには、視野角向上フィルムの設置方向を変更することで達成することができる。
すなわち、視野角向上フィルムの主拡散方向の視野角が改善されるので、例えば、水平方向の視野角改善を図りたい時は、視野角向上フィルムの主拡散方向が液晶表示装置の略横方向に設置するのが好ましい。一方、垂直方向の視野角改善を図りたい時は、視野角向上フィルムの主拡散方向が液晶表示装置の略縦方向に設置するのが好ましい。
なお、上記設置方向は液晶表示装置を縦方向に立てて設置した場合の方向で表示している。従って、水平方向は左右方向と、また、垂直方向は上下方向と表現することもできる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、実施例で採用した測定・評価方法は次の通りである。また、実施例中で「部」とあるのは断りのない限り「質量部」を意味し、「%」とあるのは断りのない限り「質量%」を意味する。
なお、本実施例においては、本発明の特性を満たさない比較例のフィルムも便宜上、視野角向上フィルムと称する。
【0075】
1.裾広がり拡散度比率(主拡散方向の波長550nmの光の出射角0度における透過度(I)と出射角60度における透過度(I60)の割合(I60/I×100)) 変角分光測色システムGCMS−4型(GSP−2型:株式会社村上色彩研究所製、変角分光光度計GPS−2型)を用いて測定を行った。透過測定モード、光線入射角:0°(フィルム法線方向)、受光角度:0°〜80°(フィルム法線からの極角。方位角は水平)、光源:D65、視野:2°の条件で、試料の主拡散方向が水平方向になるように試料台に固定(試料台の軸と主拡散方向の軸とのずれは20度程度までは許容される)し、透過光の変角分光光度曲線を求めた。あおり角は0°とした。
受光角0°から10°までは、1°ピッチで、10°から80°までは5°ピッチで測定した。
測定に先立ち株式会社村上色彩研究所製のGCMS−4用の透過拡散標準板(オパールガラス)を用いて装置の校正を行い、該透過拡散標準板の受光角度0度における透過光強度を基準(1.000)として、相対透過度を測定した。なお、前記透過拡散標準板は、積分球式分光計測で空気層を1.000とした時の440nmの透過率が0.3069であった。
本測定は波長550nmの出射角0°及び60°の透過度を測定して、出射角0度における透過度(I)と出射角60度における透過度(I60)の割合(I60/I×100)を求めて%表示した。
試料の両面で表面粗度が異なる場合は、実際に使用する場合の光の透過方向が一致する向きで試料を固定して測定する。本発明においては、表面粗度が低い方から入光する向きで固定して測定した。
なお、主拡散方向とは最大の光拡散性が得られるフィルム面内の方向であり、レーザーポインター等を用いて簡単に決定することが出来る。
【0076】
2.正面輝度低下
RISA−COLOR/ONE−II(ハイランド社製)を用いて測定を行った。TN方式のパネル(FlexScanS1901−B、ナナオ社製)を料台上に水平に設置し、このパネルの中央部に131×131mmの大きさで白の画像(Nokia monitor test for windows V 1.0(Nokia 社製)のFarbeモード)を表示し、その白画像の上にスポイトにて水を3滴落とし、さらにその上に試料フィルムを置き、パネルとフィルムの間の水を均一に広げて密着させ、CCDカメラはディスプレイ表面から垂直方向1mの位置に固定し、以下の条件で輝度測定をした。求められた輝度をIsとした。一方、試料フィルムを密着させないパネル自体の輝度を同様な方法で輝度測定をした。
求められた輝度をIbとし、下記(1)式で正面輝度低下を算出し、正面輝度低下を%で表示した。
輝度の低下=(I−I/I)×100(%) (1)
輝度は上記の白の画像を5×5の25個の部分に分割し、その中心部の3×3の9個の部分の全ピクセルの輝度を測定してその平均値で表示した。
また、試料フィルムは主拡散方向がパネルの横方向と略平行になるように設置して測定した。
【0077】
3.斜め輝度低下改善効果
RISA−COLOR/ONE−II(ハイランド社製)を用いて測定を行った。TN方式のデジタルフォトフレーム(DMF104W43:Dream Maker製)を水平に設置し、該フォトフレームに白の画像を表示し、CCDカメラを該画像の赤道上0°(正面)および70°の位置に固定し、画像を撮影し、その画像の中心50ピクセル角の平均値を求める。0°の位置に固定して測定したときの輝度をLとし、70°の位置に固定して測定したときの輝度をL70とし、その比を求め(L70/L)、斜め輝度を求めた。
また、試料フィルムは主拡散方向がパネルの横方向と略平行になるように設置して測定した。
【0078】
4.コントラスト低下
RISA−COLOR/ONE−II(ハイランド社製)を用いて測定を行った。TN方式のデジタルフォトフレーム(DMF104W43:Dream Maker製)を試料台上に水平に設置し、該フォトフレームに白の画像を表示し、CCDカメラを該画像の赤道上0°(正面)に固定し、画像を撮影し、その画像の中心50ピクセル角の平均値を求め、その値をLとし、黒の画面を表示した際に同様にして求めた値をLとし、その比(L/L=CR)よりコントラストを求めた。
【0079】
5.平均短径
試料をフィルム流れ方向に対して垂直な方向の断面が観察できるように切り出し、エポキシ樹脂に包埋し、包埋後の試料を、四酸化ルテニウムで染色し、ミクロトームを用いて超薄切片を作製し、日本電子製JEM−2100透過電子顕微鏡を加速電圧200kVで使用し、直接倍率600倍で観察を行った。該画像を印刷し、トレーシングペーパーに写したものをデータ化し、Scion imageで2値化した後、粒子解析を行い、平均短径を求めた。測定範囲は「25μm×コア層の厚み」で解析を行った。このような範囲で平均短径を求めたのは、ポリマーブレンドを溶融押出するとせん断により厚み方向に粒径の分布が生じてしまうためである。
【0080】
6.レタデーション
RETS100(大塚電子社製)を用いて測定を行った。試料の大きさは10cm×10cmとし、入射光に対して垂直になるように設置し、400nm〜800nmで測定し、測定スポット径は2mmで、光源は100Wハロゲンランプを用いた。
【0081】
7.接着性
視野角向上フィルムの表面に、固形分濃度5質量%に調整したけん化度が74モル%であるポリビニルアルコールポリマー水溶液に下記方法で重合処理をしたブロックポリイソシアネート架橋剤及び有機スズ系化合物よりなる触媒をポリビニルアルコールポリマーに対してそれぞれ固形分比で0.04及び0.02になるように添加した配合溶液を、乾燥後のポリビニルアルコールポリマー層の厚みが、2μmになるようにワイヤーバーで塗布し、70℃で5分間乾燥した。ポリビニルアルコールポリマー水溶液には、判定が容易となるよう赤青色染料を加えたものを使用した。作成した評価用試料を、両面テープを貼り付けた厚さ5mmのガラス板に、評価用試料のポリビニルアルコールポリマー層が形成された面の反対面を上記両面テープに貼り付けた。次いで、ポリビニルアルコールポリマー層を貫通して、基材フィルムに達する100個の升目状の切り傷を、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて付けた。次いで、粘着テープ(ニチバン社製セロテープ(登録商標)CT−24;24mm幅)を升目状の切り傷面に貼り付けた。貼り付け時に界面に残った空気を消しゴムで押して、完全に密着させた後、粘着テープを勢いよく垂直に引き剥がす作業を1回、5回、10回実施した。ポリビニルアルコールポリマー層が剥がれていない升目の個数を数え接着性を評価した。ポリビニルアルコールポリマー層が剥がれなかった升目の数が20個を超える場合を良、20個以下の場合を不良とした。
【0082】
8.ヘイズ
日本電色工業株式会社製ヘーズ測定器「NDH−5000」を用いて、JIS K 7136に準拠して測定した。
【0083】
(実施例1)
環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)6013S−04 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:2.0(230℃))20質量部とポリプロピレン樹脂2011D(住友化学社製、住友ノーブレン メルトフローレート:2.5(230℃))80質量部とを、池貝鉄工社製PCM45押出機を用いて樹脂温度250℃にて溶融混合してTダイで押出し、鏡面の冷却ロールで冷却することにより厚み90μmの視野角向上フィルムを得た。上記冷却時の冷却ロールへのフィルムの密着は静電気密着法で行った。冷却ロールの表面温度は20℃に設定した。フィルムは3m/分の速度で巻き取った。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
【0084】
(実施例2)
2台の溶融押し出し機を用い、基層として第1の押し出し機にて、環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)6013S−04 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:2.0(230℃))35質量部とエチレンとオクテンよりなるブロック共重合樹脂(ダウ・ケミカル社製 INFUSE(TM) D9817.15 メルトフローレート:26(230℃))65質量部を事前に混練をして供給し、表層として第2の押し出し機にて、ポリプロピレン系の接着性樹脂(アドマー(TM)QF551 三井化学社製 メルトフローレート:5.7(190℃))を供給して、Tダイ方式にて溶融共押出し後、梨地の冷却ロールで冷却することにより厚み56μmの視野角向上フィルムを得た。上記冷却時の冷却ロールへのフィルムの密着はバキュームチャンバーを用いて行った。第1押し出し機および第2押し出し機共に一軸方式であり、出口温度はそれぞれ230及び250℃とした。また、冷却ロールの表面温度は50℃に設定した。フィルムは21m/分の速度で巻き取った。層厚み構成は8/40/8(μm)であった。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、実施例1で得られた視野角向上フィルムよりもさらに正面輝度低下が少なく高品質であった。
【0085】
(実施例3)
実施例2の方法において、第1の押し出し機に供給する樹脂組成を環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)6013S−04 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:2.0(230℃))20質量部とエチレンとオクテンよりなるブロック共重合樹脂(ダウ・ケミカル社製 INFUSE(TM) D9817.15 メルトフローレート:26(230℃))80質量部に、厚みを84μm、層厚み構成を24/60/24(μm)に変更する以外は、実施例2と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
【0086】
なお、実施例2及び3の視野角向上フィルムは、以下に示す方法による接着性評価により評価した結果、良好な貼着性を有していた。
一方、実施例1及び比較例2の表層に極性基を含有したポリオレフィン樹脂よりなる接着改良層が積層されていない視野角向上フィルムは該接着性が劣っていた。
【0087】
(比較例1)
実施例2の方法で、厚みを175μmに、層厚み構成を25/125/25(μm)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
【0088】
(比較例2)
実施例1の方法において、環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)6013S−04 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:2.0(230℃))とポリプロピレン樹脂2011D(住友化学社製、住友ノーブレン メルトフローレート:2.5(230℃))の配合割合をそれぞれ10質量部及び90質量部に変更する以外は、実施例1と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
【0089】
(比較例3)
ライトアップGM2(きもと製:基材厚み100μm、総厚み133μm、全光線透過率99.0%、ヘイズ89.0%)を用いた。正面輝度低下率が非常に大きく、低品質であった。
【0090】
(比較例4)
実施例1で得られたフィルムを視認側に貼り、評価を行った。正面輝度低下率と斜め輝度低下抑制効果のバランスは良いが、正面コントラストの低下が大きくなっていた。
【0091】
(比較例5)
実施例1で得られたフィルムを視認側と光源側に貼り、評価を行った。正面輝度および、正面コントラストの低下が非常に大きく、低品質であった。
【0092】
上記結果を表1に示す。
【0093】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の視野角向上フィルムは、直進透過性と拡散透過性の両方の特性兼備した配光分布パターンを有し、かつ斜め輝度低下改善効果や正面輝度低下抑制に有効に働くように制御されており、液晶表示装置の液晶セルと光源の間に設置することにより、斜め輝度低下改善効果と正面輝度低下の抑制という二律背反事象を高度なレベルで満足させることができ、斜め輝度低下改善効果と正面輝度低下抑制とが両立した液晶表示装置を提供することができるので、液晶表示装置の機能向上に極めて有用である。
また、液晶表示装置は、斜め輝度低下改善効果と正面輝度低下抑制とが両立しており商品価値が高い。従って、産業界への寄与は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】高拡散性の光拡散フィルムで斜め輝度低下改善を図った場合の、観察角度による輝度変化の一例を示す図である。
【図2】好ましい配光分布パターンの一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックライトを有する液晶表示装置であって明細書中で記載した方法で測定される主拡散方向の波長550nmの光の出射角0度における透過度(I)と出射角60度における透過度(I60)の割合(I60/I×100)が0.06〜1.0%である、少なくとも二種の非相溶性の樹脂からなる混合物を溶融押し出し成型してなることを特徴とする光拡散フィルムを光源と液晶セルの間に有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記光拡散フィルムのヘイズが30%〜80%であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記光拡散フィルムの島相の短径の平均粒径が0.2μm〜0.45μmであることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記光拡散フィルムの非相溶性の樹脂の少なくとも一種がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
非相溶性の樹脂の二種がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項4に記載
の視野角向上フィルム。
【請求項6】
ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及び環状ポリオレ
フィン系樹脂のいずれかより選ばれてなることを特徴とする請求項4に記載の視野角向上
フィルム。
【請求項7】
偏光子に請求項1〜6のいずれかに記載のフィルムが積層されていることを特徴とする偏光板。
【請求項8】
偏光子に請求項1〜6のいずれかに記載のフィルムが光源側に積層されていることを特徴とする偏光板。
【請求項9】
視野角向上フィルムの主拡散方向を、液晶表示装置の水平方向に設置してなることを特
徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項10】
視野角向上フィルムの主拡散方向を、液晶表示装置の垂直方向に設置してなることを特
徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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