説明

液晶表示装置

【課題】端子金属が保護用ITOのピンホールまたは亀裂から侵入した水分による水和反応によって侵され、接続不良が生ずることを防止する。
【解決手段】端子部は、表示領域から延在する引き出し線30と、端子金属10と、端子金属10から外側に延在する検査用配線40を有している。端子部は保護用絶縁膜によって覆われ、端子金属10の部分は、保護用絶縁膜にスルーホール20が形成され、端子金属10はスリット15を介して複数に分割され、スリット15は、表示領域側において、保護用絶縁膜によって覆われている。ITO60は分割された端子金属10とスリット15を覆っている。これによって、ITO50のピンホール等から水分が浸入しても、水分はスリット15において進行を阻止される。したがって、端子金属10全体が腐食して導通不良を引き起こすことは無い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,液晶表示装置に係り,特に端子部の水和反応による金属の腐食を防止し、信頼性を向上させた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では画素電極および薄膜トランジスタ(TFT)等がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して、TFT基板の画素電極と対応する場所にブラックマトリクスあるいはオーバーコート膜等が形成された対向基板が設置され、TFT基板と対向基板の間に液晶が挟持されている。そして液晶分子による光の透過率を画素毎に制御することによって画像を形成している。
【0003】
液晶表示装置はフラットで軽量であることから、TV等の大型表示装置から、携帯電話やDSC(Digital Still Camera)等、色々な分野で用途が広がっている。一方、液晶表示装置では視野角特性が問題である。視野角特性は、画面を正面から見た場合と、斜め方向から見た場合に、輝度が変化したり、色度が変化したりする現象である。視野角特性は、液晶分子を水平方向の電界によって動作させるIPS(In Plane Switching)方式が優れた特性を有している。
【0004】
TFT基板と対向基板で形成される液晶表示パネルには、TFT基板に形成された端子部から走査信号、映像信号、コモン電圧等が供給される。端子部は、外部に露出しているので、外部環境、特に水分による端子金属の腐食が問題となる。
【0005】
一方、液晶表示パネルの製造工程において、静電気が発生すると、これによって、TFTが破壊される場合がある。TFTの破壊を防止するために、製造工程において、端子部と接続し、端子部よりも外側に配線層を設けることによって、TFTの静電気による破壊を防止している。「特許文献1」には、静電気が生じた場合に、端子部が破壊されて、静電気がTFTに飛び込むことによってTFTが破壊されることを防止する構成が記載されている。
【0006】
すなわち、「特許文献1」には、端子引出し線の延在方向と直角方向に端子部を3分割し、仮に大きな静電気が発生した場合に、1個の端子が破壊された場合でも、残りの端子によって、静電気を外側の配線層に逃がす構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−333673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
端子部は映像信号線あるいは走査線をTFT基板と一体となった引出し線をTFT基板の端部付近まで延在させることによって表示領域に映像信号、走査信号等を供給する。引出し線は金属あるいは合金で形成されているので、一般には、大気中の水分によって腐食される。これを防止するために、液晶表示パネルのシール部外においては、端子金属等をゲート絶縁膜、あるいは、無機パッシベーション膜等によって覆い、実際に信号等を供給する端子にスルーホールを形成し、このスルーホールを、画素電極等に使用されるITO(Indium Tin Oxide)によって覆うことで、端子部の金属の腐食を防止している。
【0009】
ITOは金属酸化物の導電膜なので、安定であり、腐食しない。ITOは、表示領域における画素電極に使用され、画素電極と同時に形成される。IPS方式液晶表示装置では、櫛歯電極が形成されるので、配向膜がラビングされない部分が生ずることを防止するために、画素電極の厚さを50nm程度と、薄くする必要がある。したがって、画素電極と同時に形成される端子部のITOも厚さが50nmと薄くなり、ITOの一部に亀裂が入ったり、ピンホールが発生したりする。
【0010】
ITOに亀裂やピンホールが存在すると、その部分から大気中の水分が侵入し、端子部の金属を腐食させる。端子部金属は、従来は、連続した膜なので、時間とともに腐食箇所が拡大し、ついには、端子部の導通不良を引き起こす。
【0011】
本発明の課題は、端子部において、ITOに亀裂が生じたり、ピンホールが発生したりしても、端子部の金属全体が腐食されて導通不良を引き起こすことを防止することである。
【0012】
なお、「特許文献1」には、引出し線の方向と直角方向に端子部の金属を3分割する構成が記載されているが、「特許文献1」の構成は、端子部の金属を大気中の水分等の腐食から保護する構成については、記載も示唆も無い。すなわち、「特許文献1」では、図3(c)に示すように、端子部を分割した部分において、端子部をITO等によって覆う構成ではなく、端子部金属の側面がむき出しの状態となっている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題を克服するものであり、具体的な手段の主なものは次のとおりである。すなわち、画素電極とTFTがマトリクス状に形成された表示領域と端子部を有するTFT基板と、前記TFT基板に対向し、カラーフィルタが形成された対向基板と、前記TFT基板と前記対向基板の間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、前記端子部は、前記表示領域から延在する引き出し線と、長辺と短辺を有する端子金属と、前記端子金属から外側に延在する検査用配線を有し、前記端子部は保護用絶縁膜によって覆われ、前記端子金属の部分は、前記保護用絶縁膜にスルーホールが形成され、前記スルーホールを覆ってITOが形成され、前記端子金属は前記長辺方向に延在するスリットを介して前記短辺方向に複数に分割され、前記スリットは、前記表示領域側において、保護用絶縁膜によって覆われており、前記ITOは前記分割された端子金属と前記スリットを覆っていることを特徴とする液晶表示装置である。
【0014】
また、他の実施形態では、前記スリットが前記表示領域側において前記保護用絶縁膜によって覆われている前記長辺方向の長さは2μm以上であることを特徴とする液晶表示装置である。
【0015】
さらに、他の実施形態では、前記スリットが前記表示領域側において前記保護用絶縁膜によって覆われている前記長辺方向の長さは3μm以上であることを特徴とする液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、端子を覆うITOにピンホールが存在していたり、亀裂が生じていたりする場合があっても、進入した水分による、端子金属との水和反応は、スリットによって進行を阻止される。したがって、水和反応による端子金属の腐食は1部にとどまり、端子金属全体が腐食して導通不良となることは無い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】IPS方式の液晶表示装置の断面図である。
【図2】図1の画素の平面図である。
【図3】端子構造の例を示す平面図である。
【図4】本発明の端子の詳細を示す平面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】図4のB−B断面図である。
【図7】図4のC−C断面図である。
【図8】図4のA−A断面図の他の例である。
【図9】図4のB−B断面図の他の例である。
【図10】図4のC−C断面図の他の例である。
【図11】本発明の端子の他の例の詳細を示す平面図である。
【図12】本発明の端子のさらに他の例の詳細を示す平面図である。
【図13】端子構造の他の例を示す平面図である。
【図14】図13の端子の詳細平面図である。
【図15】端子構造のさらに他の例を示す平面図である。
【図16】図15の端子の詳細平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施例を説明する前に、本発明が適用される液晶表示装置の代表例として、IPS方式の液晶表示装置の画素部の断面構造について説明する。画素部と端子部とでは、共通に、同時形成される場合が多いからである。
【0019】
図1の構造は、現在広く使用されている構造であって、簡単に言えば、平面ベタで形成された対向電極108の上に絶縁膜109を挟んで櫛歯状の画素電極110が形成されている。そして、画素電極110と対向電極108の間の電圧によって液晶分子301を回転させることによって画素毎に液晶層300の光の透過率を制御することにより画像を形成するものである。
【0020】
配向膜113に対してラビングによって配向性能を付与する場合、櫛歯状の画素電極110の膜厚が大きいと、櫛歯の影において、ラビングされない部分が生じ、液晶の配向が出来ず、光漏れが生じ、コントラストを劣化させる。これを防止するために、画素電極110の厚さを30〜50nm程度と、薄くしている。櫛歯状の画素電極110の膜厚が小さければ、ラビング時に影となる部分も小さく、光漏れも軽減できるからである。
【0021】
端子部の端子金属は、ITOによって保護されているが、このITOは画素電極110の形成と同時に形成される。したがって、画素電極の厚さが小さくなると、端子部の保護ITOの厚さも小さくなる。保護ITOの膜厚が小さくなれば、ITOに亀裂が入りやすくなり、また、ITOにピンホールが発生し易くなる。
【0022】
以上で説明したのとは逆に、IPSでは、平面ベタで形成された画素電極110の上に絶縁膜109を挟んで櫛歯状の対向電極108が形成されている構成の場合もある。この場合は、櫛歯状の対向電極108の厚さを30〜50nm程度と小さくする必要がある。
【0023】
この場合、対向電極108を形成したときのITOが端子部の保護ITOとなるので、対向電極108が薄くなることによる、ITOの亀裂、ITOのピンホール等の問題は、画素電極110が上部の櫛歯電極の場合と同様である。
【0024】
図1において、ガラスで形成されるTFT基板100の上に、ゲート電極101が形成されている。ゲート電極101は走査線(以後ゲート線ともいう)と同層で形成されている。ゲート電極101はAl合金層の上にキャップ層であるMo合金が積層されている。Al合金層としては、AlNd合金あるいはAlCu合金等が使用され、Mo合金としては、MoCrあるいはMoW等が使用される。ゲート電極101は、TFT基板100の端部付近にまで延在し、引き出し線あるいは端子部金属を形成する場合がある。この場合の端子はゲート端子という。
【0025】
ゲート電極101を覆ってゲート絶縁膜102がSiNによって形成されている。ゲート絶縁膜102は端子部を保護するために、シール部の外側にまで形成されている。ゲート絶縁膜102の上に、ゲート電極101と対向する位置に半導体層103がa−Si膜によって形成されている。a−Si膜はTFTのチャネル部を形成するが、チャネル部を挟んでa−Si膜上にドレイン電極104とソース電極105が形成される。なお、a−Si膜とドレイン電極104あるいはソース電極105との間には図示しないn+Si層が形成される。半導体層とドレイン電極104あるいはソース電極105とのオーミックコンタクトを取るためである。
【0026】
ドレイン電極104は映像信号線(以後ドレイン線とも言う)が兼用し、ソース電極105は画素電極110と接続される。ドレイン電極104もソース電極105も同層で同時に形成される。図1において、ドレイン電極104あるいはソース電極105は単層で描かれているが、本実施例では、Al合金層を挟んで、上層にキャップ層、下層にベース層を有する3層構造である。なお、ドレイン電極104、ソース電極105あるいは映像信号線等(以後ドレイン線等という)はAl合金層とキャップ層の2層構造の場合がある。あるいは、ドレイン線等は1層の場合もあり、この場合は、例えば、MoCr合金、MoW合金等が使用される。
【0027】
ドレイン線等は、シール部を経てTFT基板の端部付近まで延在して端子部金属を形成する場合がある。すなわち、この場合、ドレイン線等と引出し線および端子金属は同時に形成される。この場合の端子はドレイン端子という。
【0028】
TFTを覆って無機パッシベーション膜106がSiNによって形成される。無機パッシベーション膜106はTFTの、特にチャネル部を不純物から保護する。無機パッシベーション膜は端子部を保護するために、シール部の外側にまで延在し、引出し線および端子部を保護する。
【0029】
無機パッシベーション膜106の上には有機パッシベーション膜107が形成される。有機パッシベーション膜107はTFTの保護と同時に表面を平坦化する役割も有するので、厚く形成される。厚さは1μmから4μmである。有機パッシベーション膜は感光性樹脂で形成され、レジストを用いずに、パターニングすることが出来る。
【0030】
有機パッシベーション膜107の上には対向電極108が形成される。対向電極108は透明導電膜であるITOを表示領域全体にスパッタリングすることによって形成される。すなわち、対向電極108は面状に形成される。対向電極108を全面にスパッタリングによって形成した後、画素電極110とソース電極105を導通するためのコンタクトホール111部だけは対向電極108をエッチングによって除去する。
【0031】
対向電極108を覆って層間絶縁膜109がSiNによって形成される。層間絶縁膜109が形成された後、エッチングによってコンタクトホール111を形成する。この層間絶縁膜109と無機パッシベーション膜106を同じマスクによってエッチングしてコンタクトホール111を形成する。その後、層間絶縁膜109およびコンタクトホール111を覆って画素電極110となるITOをスパッタリングによって形成する。スパッタリングしたITOをパターニングして画素電極110を形成する。画素電極110となるITOはスルーホール111にも被着される。スルーホール111において、TFTから延在してきたソース電極105と画素電極110が導通し、映像信号が画素電極110に供給されることになる。
【0032】
図2に画素電極110の1例を示す。画素電極110は、櫛歯状の電極である。櫛歯と櫛歯の間にスリット112が形成されている。画素電極110の下方には、平面状の対向電極108が形成されている。画素電極110に映像信号が印加されると、スリット112を通して対向電極108との間に生ずる電気力線によって液晶分子301が回転する。これによって液晶層300を通過する光を制御して画像を形成する。
【0033】
図1に戻り、画素電極110の上には液晶分子301を初期配向させるための配向膜113が形成されている。図1において、液晶層300を挟んで対向基板200が設置されている。対向基板の内側には、カラー表示するためのカラーフィルタが形成され、カラーフィルタとカラーフィルタの間にはブラックマトリクスが形成されている。ブラックマトリクスはコントラストを向上させるためであるが、TFTに対する遮光膜としての役割も有している。カラーフィルタおよびブラックマトリクスを覆ってオーバーコート膜が形成されている。オーバーコート膜は表面の凹凸を緩和させるためである。オーバーコート膜203の上には、液晶の初期配向を決めるための配向膜113が形成されている。
【実施例1】
【0034】
図3は、本発明による液晶表示装置における端子部の平面図の例である。図3において、端子部はいわゆる千鳥配置となっている。表示領域から延在してきた引き出し線30が幅広くなった部分が端子金属10であり、端子金属10から再び幅が小さくなって検査用配線40となる。引き出し線30、端子部金属10、検査用配線40は、ドレイン端子の場合は、映像信号線(ドレイン線)と同じ金属あるいは合金で形成され、ゲート端子の場合は、ゲート線と同じ金属あるいは合金で形成される。
【0035】
引き出し線30、端子金属10、検査用配線40は、ゲート絶縁膜102あるいは無機パッシベーション膜106によって覆われて、外部の水分等から保護されている。端子部においては、フレキシブル配線基板等と接続するために、ゲート端子の場合はゲート絶縁膜102よび無機パッシベーション膜106にスルーホール20を形成し、ドレイン端子の場合は、無機パッシベーション膜106にスルーホール20を形成する。スルーホール20内は端子金属10が露出するので、これを保護するために、ITO60によって端子金属10を覆っている。
【0036】
図4は、本発明による端子部の詳細を示す平面図である。まず、図4はゲート端子であるとして説明する。図5は図4のA−A断面図であり、図6は図4のB−B断面図であり、端子金属10の中央部が表示領域から検査用配線40まで、延在している状態を示している。図7は図4のC−C断面図であり、スリット部分に該当する断面図である。
【0037】
図4および図5に示すように、端子金属10は、スリット15を介して3つの部分に分割している。中央の端子金属10は延在して検査用配線40となっている。図5に示すように、端子金属40は例えば、AlNd合金にMoCr合金が積層された構成となっている。AlNd合金の厚さは例えば、100nm〜220nm、MoCr合金の厚さは例えば、20nm〜80nmである。
【0038】
図4および図5に示すように、ゲート絶縁膜102および無機パッシベーション膜106にスルーホール20が形成され、このスルーホール20を覆って、ITO60が形成されている。ITO60は金属酸化物なので、化学的に安定であり、端子金属10を保護する。ITO60は画素電極110と同時に形成され、画素電極110と同じ厚さで、例えばIPSでは30〜50nm程度である。このようにITO60の膜厚が薄いと、ITO60にピンホールが生じたり、ITOに亀裂が入ったりする。ITO60のピンホール等から水分が浸入すると、水和反応によって端子金属10は徐々に腐食し、ついには、端子部の導通が取れなくなる。
【0039】
本発明は、端子金属10を3個に分割することによって、仮に、端子金属10のいずれかの部分にピンホール等が生じたりしてその部分の端子金属10が水和反応によって腐食しても、腐食が金属を介して進まないようにしている。
【0040】
図4において、中央部の電極10の幅w1は1.5〜4μm、スリット15の幅w2は1.5〜4μm、外側の電極10の幅w4は1.5〜4μmである。水和反応の進行を止めるためには、スリット15の幅は1.5μm以上とすることがのぞましい。
【0041】
図4において、端子部と外部との導通をとるためにスルーホール20が形成されているが、両側の端子電極10とスルーホール20とは、一部がオーバーラップしている。他の部分はゲート絶縁膜102および無機パッシベーション膜106によって保護されている。スルーホール20と外側の端子電極10がオーバーラップする幅w3は0.7〜2μmである。
【0042】
端子電極10は、分割された各端子電極10と導通をとるために、表示領域側が一体となったフォーク状の形状となっている。図4および図7に示すように、スリット15は端子電極10の表示領域側において、スルーホール20が形成されていない部分にまで延在している。すなわち、端子電極10の表示領域側において、スリット15がゲート絶縁膜102および無機パッシベーション膜106によって覆われていることによって、水和反応が端子電極10の分割されていない部分にまで、進行することを防止することが出来る。
【0043】
スリット15がゲート絶縁膜102等に覆われている長さdは2μm以上であることが望ましく、3μm以上であることがさらに望ましい。長さdはマスク合わせの精度に依存する。長さdの上限は、端子金属10が表示領域側において、一体となっている構成が維持できる長さであればよい。
【0044】
図8〜図10はドレイン端子を用いた場合に、本発明を適用した場合の端子部の断面図である。平面図は図4と同じである。図8はドレイン端子を用いた場合の図4のA−A断面図である。図8において、ドレイン端子である端子金属10は3個に分割され、ゲート絶縁膜102の上に形成されている。したがって、端子金属10等の保護層は無機パッシベーション膜106の一層である。端子部スルーホール20は中央部の端子電極10と両脇の端子電極10の一部とオーバーラップして形成されていることはゲート端子の場合と同じである。
【0045】
図8において、ドレイン端子は、ベース層52、Al合金層50、キャップ層51の3層で形成されている。ベース層52は例えば、MoCrあるいはMoW等のMo合金で形成され、厚さは20nm程度である。Al合金層50は、AlNd、AlCu等で形成され、厚さは100nm〜220nm程度である。また、キャップ層51はMoCr、MoW等のMo合金で形成され、厚さは20〜80μmである。
【0046】
図9はドレイン端子の場合の図4のB−B断面に対応する断面図である。端子金属10はゲート絶縁膜102上に3層で形成され、表示領域側から検査用配線40側まで連続して形成されている。図10はドレイン端子の場合の図4のC−C断面に対応するスリット15部の断面図である。図10において、スリット15は、表示領域側において、長さdだけ無機パッシベーション膜106に覆われている。無機パッシベーション膜106によって、水和反応が表示領域側に進行することを防止している。
【0047】
図5〜図10は、端子金属10を3分割した場合の例である。しかし、図5〜図10の説明で述べた内容は、端子金属10を3分割した場合のみでなく、複数に分割した場合にも適用することが出来る。図11は端子金属10を2個に分割した場合の例である。2個の端子金属10はスリット15によって分割され、スルーホール20は2個の端子金属10とオーバーラップしている。
【0048】
端子金属10は表示領域側が一体となったフォーク状となっており、スリット15はゲート絶縁膜102、無機パッシベーション膜106等の保護膜の下まで延在していることは図5〜図10で述べた3分割の場合と同様である。スリット15と保護膜とが重なる長さdは、2μm以上、好ましくは3μm以上である。また、また、スリット15の幅は1.5μm以上あることが望ましいことも同様である。図11において、分割された端子金属10の一方から検査用配線40が延在している。
【0049】
図12は、端子金属10を5分割した例である。スリット15は4個形成され、スリット15が表示領域側において、ゲート絶縁膜102、無機パッシベーション膜106等によって覆われている長さdは2μm以上、好ましくは3μm以上であることは、端子金属10を3分割した例と同様である。また、スリット15の幅は1.5μm以上あることが望ましいことも同様である。図12において、中央の端子金属10が検査用配線40として延在している。
【0050】
端子金属10の分割数は、端子の幅をどの程度とれるかによって決めればよい。端子金属10の分割数を大きくすれば、水和反応が進行する領域を小さく限定することができるが、分割された端子金属10の幅が小さいと、分割された端子金属10自体の導通が問題となる。したがって、端子の幅を考慮して分割数を決めることになるが、いずれにせよ、分割のためのスリット15の幅は1.5μm以上であることが望ましい。
【0051】
図13は端子構造の他の例である。図3〜図11は、引き出し線30の幅よりも端子金属10の幅のほうが大きい場合である。このような構成の場合、端子部をいわゆる千鳥配置とすることが出来る。しかし、端子部はこのような構成に限らず、引き出し線30の幅と端子金属10の幅が同じ場合もある。このような端子構造であっても、本発明を適用することが出来る。
【0052】
図14は、図13の端子部の詳細図である。図14は、引き出し線30が端子金属10と同じ幅であるほかは図4と同様である。すなわち、図14のA−A断面は図5と同じであり、B−B断面は図6と同じであり、C−C断面は図7と同様である。したがって、これらの断面の説明は省略する。
【0053】
図15は端子構造のさらに他の例である。図3〜図14は、検査用配線40の幅よりも端子金属10の幅のほうが大きい場合である。しかし、検査用配線40の抵抗を小さくする必要がある場合は、検査用配線40の幅を大きくする必要があるが、本発明はこのような構成であっても問題なく適用することができる。
【0054】
図16において、検査用配線40は分割された端子金属10のうちの、中央の端子金属10から延在している。ただし、検査用配線40は、分割された外側の端子金属10から延在させてもよい。図16において、A−A断面は図5に相当し、B−B断面は図6に相当し、C−C断面は図7に相当する。したがって、これらの断面構造の説明は省略する。
【0055】
図14および図16は、端子金属10を3分割した例である。しかし、これらの例は、3分割に限らず、図11および図12に示すように、2分割を含む複数の分割の場合にも適用できる。
【0056】
以上の説明は、IPS方式の液晶表示装置を例にとって説明したが、本発明はIPS方式の液晶表示装置に限らず、他の液晶表示装置についても適用することが出来る。
【0057】
また、以上の説明は、図1に示すボトムゲートのTFTを使用した場合を例にとって説明したが、本発明は、これに限らず、トップゲート型のTFTを使用した場合の構造をもつ液晶表示装置に対しても適用することが出来る。
【0058】
以上の説明では、液晶表示装置を例にとって説明したが、本願発明は、有機EL表示装置についても適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
10…端子金属、 15…スリット、 20…スルーホール、 30…引き出し線、 40…検査用配線、 50…Al合金層、 51…キャップ層、 52…ベース層、 60…ITO 100…TFT基板、 101…ゲート電極、 102…ゲート絶縁膜、 103…半導体層、 104…ドレイン電極、 105…ソース電極、 106…無機パッシベーション膜、 107…有機パッシベーション膜、 108…対向電極、 109…層間絶縁膜、 110…画素電極、 111…スルーホール、 112…スリット、 113…配向膜、 120…TFT回路、 130…柱状スペーサ、 150…シール材、 200…対向基板、 201…カラーフィルタ、 202…ブラックマトリクス、 203…オーバーコート膜、 300…液晶層、 301…液晶分子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素電極とTFTがマトリクス状に形成された表示領域と端子部を有するTFT基板と、前記TFT基板に対向し、カラーフィルタが形成された対向基板と、前記TFT基板と前記対向基板の間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、
前記端子部は、前記表示領域から延在する引き出し線と、長辺と短辺を有する端子金属と、前記端子金属から外側に延在する検査用配線を有し、
前記端子部は保護用絶縁膜によって覆われ、
前記端子金属の部分は、前記保護用絶縁膜にスルーホールが形成され、前記スルーホールを覆ってITOが形成され、
前記端子金属は前記長辺方向に延在するスリットを介して前記短辺方向に複数に分割され、
前記スリットは、前記表示領域側において、保護用絶縁膜によって覆われており、
前記ITOは前記分割された端子金属と前記スリットを覆っていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記スリットが前記表示領域側において前記保護用絶縁膜によって覆われている前記長辺方向の長さは2μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記スリットが前記表示領域側において前記保護用絶縁膜によって覆われている前記長辺方向の長さは3μm以上であることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記端子金属は、表示領域における走査線と同じ金属または合金で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記端子金属は、表示領域における映像信号線と同じ金属または合金で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記液晶表示装置は前記画素電極の厚さが30〜50nmであるIPS方式の液晶表示装置であることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記液晶表示装置は前記対向電極の厚さが30〜50nmであるIPS方式の液晶表示装置であることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−109122(P2013−109122A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253586(P2011−253586)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(502356528)株式会社ジャパンディスプレイイースト (2,552)
【Fターム(参考)】