説明

液晶表示装置

【課題】視野角依存性を低減した液晶表示装置において、視野角の拡大を図るとともに、外光の入射によるコントラストの低下を抑制する。
【解決手段】液晶表示装置は、液晶表示装置の表示面側の面から指向性の高い光を表示面の方向に射出するバックライトと、バックライトの表示面側に配置された液晶パネルと、液晶パネルの表示面側に配置された散光部200とを備えている。散光部200は、液晶パネル側の面に複数のレンズ212からなるレンズ群が形成されたレンズシート210と、レンズシート210の表示面側に配置され、複数のレンズ212により集光された光が通過する領域を含む位置に開口部222が設けられた光吸収層220とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示装置に関し、特に、指向性の高い光を射出するバックライトを光源とする液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像の表示装置として、液晶表示装置が広範に使用されるようになってきている。液晶表示装置において、バックライトから射出された光を変調する液晶パネルには、種々の形式のものが使用されている。図9は、種々の形式の液晶パネルのうちの代表的なツイステッドネマチック(TN)型の液晶パネル920の動作の様子を示す説明図である。液晶パネル920は、偏光軸が直交する2枚の偏光板922,928と、2枚の基板GSと、基板GS間に充填されたネマチック液晶とを有している。2枚の基板GSには、配向方向が直交するように形成された配向膜(図示しない)が設けられている。
【0003】
液晶に電圧を印加しない状態(電圧オフ状態)では、図9(a)に示すように、基板GS間に充填されたネマチック液晶(以下、単に「液晶」とも呼ぶ)の分子LCMは、基板GSに水平な方向に配向するとともに、配向方向が基板GSに垂直な方向に沿って90°回転する。液晶に印加する電圧を上げていくと(中間状態)、基板GSの近傍以外の液晶分子LCMの大部分は、基板GSに垂直な方向に立ち上がる(図9(b))。そして、液晶に印加する電圧が十分に高い状態(電圧オン状態)では、大部分の液晶分子LCMが基板GSに垂直な方向に配列する(図9(c))。
【0004】
ここで、液晶パネル920に光を照射すると、入射光は偏光板922において直線偏光となる。電圧オフ状態(図9(a))では、液晶を透過する光線は、その偏向面が90°回転するので、入射側の偏光板922と偏光軸が直交する偏光板928を透過して射出される。そのため、電圧オフ状態では、出射光の光量は最大となる(明状態)。中間状態(図9(b))では、液晶分子LCMが斜めに配向する。この場合、基板GSに垂直な方向(A−A方向)では、偏光面が90°より小さい角度で回転するために、一部の光線が偏光板928を透過する。そのため、中間状態では、出射光の光量は電圧オフ状態よりも低下する。一方、電圧オン状態(図9(c))では、偏光面の回転が起こらないため、液晶を透過した光線は、偏光板928で遮蔽される(暗状態)。このように、液晶パネル920に入射した光線は、液晶パネル920において光量が調整(変調)され、液晶パネル920から射出される。
【0005】
しかしながら、例えば、図9(b)に示す中間状態においては、液晶分子LCMが斜めに配向することにより、液晶を透過する際の光線の方向(液晶パネル920を見込む方向)によって出射光の光量が変化する。具体的には、液晶分子の配向方向に沿った方向(B−B方向)では、偏光面の回転量が基板GSに垂直な方向(A−A方向)よりも小さくなるため、偏光板928を透過する光量が減少する。一方、液晶分子の配列方向から離れた方向(C−C方向)では、偏光面の回転量が基板GSに垂直な方向(A−A方向)よりも大きくなるため、偏光板928を透過する光量が増加する。このように、TN型の液晶パネル920では、液晶を透過する光線の方向により、変調された出射光の光量が変化する場合がある。
【0006】
このような現象(「視野角依存性」と呼ばれる)を解消する一方法として、液晶パネルを照明する光源として指向性のバックライトが使用される。この場合、液晶パネルを透過した光線は、指向性のバックライトと略同等の配光特性を有しているため、液晶表示装置としての視野角が狭くなる。そこで、透光性樹脂に散乱粒子として透光性微粒子を分散させた光拡散層を液晶パネルの視認側に配置することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−164955号公報
【特許文献2】特開2010−79117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、液晶パネルの視認側に散乱粒子を分散させた光拡散層を配置すると、明るい室内等の照度が高い環境下や、周囲光が強い環境下等、強い外光が液晶表示装置に入射する場合、光拡散層や液晶パネルの表面において外光が反射することにより、表示画面のコントラストが低下する虞がある。なお、この問題は、TN型の液晶パネルを使用した液晶表示装置に限らず、種々の形式の液晶パネルを使用した液晶表示装置一般に共通する。
【0009】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、視野角依存性を低減した液晶表示装置において、視野角の拡大を図るとともに、外光の入射によるコントラストの低下を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的の少なくとも一部を達成するために、本発明は、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0011】
[適用例1]
液晶表示装置であって、前記液晶表示装置の表示面側の面から指向性の高い光を前記表示面の方向に射出するバックライトと、前記バックライトの前記表示面側に配置された液晶パネルと、前記液晶パネルの前記表示面側に配置された散光部とを備え、前記散光部は、前記液晶パネル側の面に複数のレンズからなるレンズ群が形成されたレンズシートと、前記レンズシートの前記表示面側に配置され、前記複数のレンズにより集光された光が通過する領域を含む位置に開口部が設けられた光吸収層とを有する液晶表示装置。この適用例によれば、指向性の高い光を射出するバックライトの表示面側に液晶パネルを配置することにより、液晶パネルの視野角依存性が低減される。液晶表示装置の視野角は、液晶パネルからの出射光がレンズシートに形成されたレンズにより一旦集光された後、発散されることにより拡大される。そして、レンズシートの表示面側に光吸収層を配置することにより、液晶表示装置に入射した外光の一部が吸収されるので、外光の入射によるコントラストの低下が抑制される。
【0012】
[適用例2]
前記レンズ群は、複数のシリンドリカルレンズを並列に配列してなる、適用例1に記載の液晶表示装置。この適用例によれば、シリンドリカルレンズの配列方向と直交する方向への光の発散が抑制されるので、液晶表示装置の輝度をより高くすることが可能となる。
【0013】
[適用例3]
前記散光部は、さらに、前記レンズシートの前記表示面側において前記複数のレンズにより集光された光が通過する領域を含む位置に配置され、光を等方的に拡散させる光拡散層を有する、適用例2に記載の液晶表示装置。この適用例によれば、光拡散層により拡散されることによりシリンドリカルレンズの配列方向と直交する方向へも光が射出されるので、該方向の視野角を拡大することができる。
【0014】
[適用例4]
適用例3に記載の液晶表示装置であって、前記光拡散層は、前記レンズシートの前記表示面側の全面に形成され、前記光吸収層は、前記光拡散層の前記表示面側の表面に形成されている液晶表示装置。この適用例では、光吸収層をレンズシートの表示面側の全面に形成された光拡散層の表示面側の表面に形成するので、光拡散層および光吸収層の形成がより容易となる。
【0015】
[適用例5]
前記レンズ群は、複数のレンズをマトリックス状に配列してなる、適用例1に記載の液晶表示装置。この適用例によれば、直交する2方向への双方について視野角を拡大することができる。
【0016】
[適用例6]
適用例1ないし5のいずれかに記載の液晶表示装置であって、前記レンズシートは、前記複数のレンズにより集光された光が通過する領域を含む位置に開口部が設けられ、前記表示面側に延長された突起部を有し、前記光吸収層は、前記突起部の前記表示面側の表面に形成されている液晶表示装置。この適用例では、表示面側に延長された突起部の表示面側の表面に光吸収層を形成するので、光吸収層の形成がより容易となる。
【0017】
[適用例7]
前記レンズシートは、さらに、前記複数のレンズにより集光された光が通過する領域を含む位置に形成された第2のレンズ群を有する、適用例1ないし6のいずれかに記載の液晶表示装置。この適用例によれば、第2のレンズ群により光軸から傾いてレンズシートに入射した光線の射出方向を、光軸に沿って入射した光線の射出方向に矯正することができるので、バックライトの射出光の広がりの影響を低減することができる。
【0018】
[適用例8]
前記バックライトは、輝度の半値全幅が20度以下の配光特性を有する、適用例1ないし7のいずれかに記載の液晶表示装置。この適用例によれば、実用上十分な程度まで液晶パネルの視野角依存性の影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態における液晶表示装置の構成を示す断面模式図。
【図2】第1実施形態における散光部の構成を示す斜視図。
【図3】第1実施形態における散光部の部分断面図。
【図4】第2実施形態における散光部の構成を示す斜視図。
【図5】第2実施形態の変形例における散光部の部分断面図。
【図6】第3実施形態における散光部の構成を示す斜視図。
【図7】第4実施形態における散光部の構成を示す斜視図。
【図8】第4実施形態における散光部の部分断面図。
【図9】液晶セルの動作の様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための形態を以下の順序で説明する。
A.第1実施形態:
A1.液晶表示装置の構成:
A2.散光部の構成:
B.第2実施形態:
B1.散光部の構成:
B2.第2実施形態の変形例:
C.第3実施形態:
D.第4実施形態:
E.変形例:
【0021】
A.第1実施形態:
A1.液晶表示装置の構成:
図1は、第1実施形態における液晶表示装置100の構成を示す断面模式図である。液晶表示装置100は、バックライト110と、液晶パネル120と、散光部200とをこの順に積層することにより構成されている。液晶パネル120は、偏向軸が直交するように配置された2つの偏光板122,128と、光学補償層124と、液晶セル126とを有している。
【0022】
液晶セル126は、ツイステッドネマチック(TN:Twisted Nematic)型の液晶セルであり、2枚の基板および基板間に充填された液晶(いずれも図示しない)を有している。一方の基板には、カラーフィルタ、対向電極および配向膜が形成されており、他方の基板には、薄膜トランジスタ、画素電極および配向膜が形成されている。2枚の基板に設けられた配向膜は、配向方向が直交するように形成されている。
【0023】
光学補償層124は、液晶が有する複屈折性の影響を低減するための部材である。光学補償層124としては、例えば、ディスコチック液晶を傾斜配向させた位相差フィルムや、透明な樹脂フィルムを延伸した延伸フィルム等を用いることができる。
【0024】
バックライト110は、面光源であり、液晶パネル120に対向する+z側の面から液晶パネル120に向けて光を射出する。液晶パネル120に入射した光線は、画素電極に印加された電圧に応じて、画素ごとに光量が調整(変調)される。変調された光線(「画像光」とも呼ばれる)は、散光部200を通って、液晶表示装置100の+z側に射出される。このように射出された画像光により画像が表示されるので、本明細書においては、液晶表示装置100において画像光の射出される+z側の面を「表示面」ともよぶ。
【0025】
一般に、TN型の液晶パネル120では、液晶パネル120を透過する光線の光量は、光線の進行方向によって変化する。そのため、液晶パネル120を見込む角度によって、液晶パネル120から射出される画像光の変調の度合いが変化し、表示される画像においてコントラストの低下や階調の反転等の問題が発生する可能性がある。このような液晶パネル120の表示特性の問題は、視野角依存性と呼ばれる。
【0026】
第1実施形態では、液晶パネル120の視野角依存性を低減するため、バックライト110として、指向性が高い光線を射出する狭指向性の面光源を使用している。具体的には、バックライト110は、表示面方向(+z方向)の輝度が最大となり、表示面方向から斜めになるに従って速やかに輝度が低下するように構成されている。なお、バックライト110としては、輝度が最大輝度の1/2となる角度幅(半値全幅)が20°以下のものを用いるのが好ましく、半値全幅が10°以下のものを用いるのがより好ましい。このような配光特性を有するバックライト110は、例えば、LED等の光源素子や複数の導光板等を組み合わせることにより実現することが可能である(例えば、特開2004−186024号公報参照)。
【0027】
狭指向性のバックライト110を用いて、液晶パネル120に略平行な光を照射すると、液晶パネル120に入射した光線の大部分は、その進行方向が表示面方向(+z方向)となる。そのため、液晶パネル120の視野角依存性の影響が低減される。液晶パネル120を透過した光線は、液晶パネル120への入射光線と略同方向に進行するので、液晶パネル120からは、画像光として、略平行な光線が射出される。散光部200は、液晶パネル120から略平行な光線として射出される画像光を斜め方向からも視認可能とし、液晶表示装置100の視野角を拡大する機能を有している。
【0028】
A2.散光部の構成:
図2は、散光部200の構成を示す斜視図である。図2(a)は、液晶パネル120側(−z側)から散光部200を見た様子を示し、図2(b)は、表示面側(+z側)から散光部200を見た様子を示している。散光部200は、レンズシート210と、レンズシート210の表示面側に設けられた光吸収層220とを有している。
【0029】
レンズシート210は、液晶パネル120側にマトリックス状に配列された複数のレンズ212が形成され、表示面側が平坦な透明部材である。第1実施形態のレンズ212は、液晶パネル120側に凸な球面を有する球面レンズである。このレンズ212により、液晶パネル120側から入射した光線は集光され、集光された光線はレンズシート210の表示面側の平坦面から射出される。レンズシート210は、例えば、ポリメタルメタクリレート樹脂やポリカーボネート樹脂を用いて形成することができる。なお、図2では、図示の便宜上、小数のレンズ212を描いているが、実際の散光部200では、液晶パネル120の画素数に相当する数のレンズ212が設けられている。
【0030】
光吸収層220は、光を吸収する黒色の層である。光吸収層220には、レンズ212により集光された光線が通過する領域(以下、「集光光通過領域」とも呼ぶ)を含む位置に開口部222が設けられている。開口部222は、具体的には、中心がレンズ212の光軸と一致する所定の大きさの領域として形成される。このような光吸収層220は、例えば、フォトリソグラフィ等のパターニング技術を用いて形成することができる。光吸収層220を設けることにより、表示面側から液晶表示装置100に入射した外光は、その一部が光吸収層220により吸収される。そのため、外光が入射することにより画面が白くなり、コントラストが低下することを抑制することができる。なお、図2では、開口部222の形状を正方形としているが、開口部222の形状は円形等の他の形状とすることも可能である。
【0031】
図3は、レンズ212の頂点を通りz−x平面に沿った面における散光部200の部分断面図である。図3において、矢印をつけた実線は、液晶パネル120から射出された光線の光路を示している。図3に示すように、液晶パネル120から射出された平行光線は、レンズ212の液晶パネル120側(−z側)の球面において光軸O−O方向に屈折し、さらに、レンズシート210の表示面側(+z側)の平坦面で光軸O−O方向に屈折する。これにより、レンズシート210に入射した光線は、焦点F付近で集束した後、発散する。また、レンズシート210に入射した光線は、レンズ212により集光されることにより、光吸収層220に設けられた開口部222を通過して表示面側(+z側)に射出される。
【0032】
なお、図3の例では、焦点Fがレンズシート210よりも表示面側に位置しているが、レンズ212の曲率やレンズシート210の厚さを調整して焦点Fがレンズシート210の表示面側の表面やレンズシート210内に位置するようにしても良い。焦点Fの位置は、開口部222の面積をより小さくして外光によるコントラストの低下をより良好に抑制するため、集光光通過領域を最小にするように適宜設定される。より好ましい焦点Fの位置は、例えば、光線追跡法等の解析を行うことにより決定することが可能である。
【0033】
第1実施形態では、狭指向性のバックライト110を光源とすることで、液晶パネル120に入射する光線を略平行としている。そして、液晶パネル120の表示面側に、液晶パネル120側に凸な複数のレンズ212を有するレンズシート210を配置することにより、液晶パネル120から射出される略平行な光線を発散させている。そのため、第1実施形態によれば、液晶パネル120の視野角依存性の影響を低減しつつ、液晶表示装置100の視野角を広くすることが可能となる。
【0034】
また、レンズ212に入射した光線は、光吸収層220により遮られることなく表示面側に射出されるので、入射した光線をより有効に活用でき、拡散板を用いて光線を散乱させた場合よりも、液晶表示装置100の輝度を高くすることができる。
【0035】
さらに、レンズ212に入射した光線は、レンズ212の曲率等の光学的構成によって決定される集光角に応じた範囲に発散するので、液晶表示装置100の視野角をより容易に調整することが可能となる。
【0036】
B.第2実施形態:
B1.散光部の構成:
図4は、第2実施形態における散光部200aの構成を示す斜視図である。図4(a)は、液晶パネル120側(−z側)から散光部200aを見た様子を示し、図4(b)は、表示面側(+z側)から散光部200aを見た様子を示している。第2実施形態は、マトリックス状に配列された複数のレンズ212に換えて、並列配列された複数のシリンドリカルレンズ212aを用いている点と、シリンドリカルレンズ212aを用いることに対応して光吸収層220aの形状を変更している点とで、第1実施形態と異なっている。他の点は、第1実施形態と同様である。
【0037】
図4に示すように、レンズシート210aには、y方向に延びる複数のシリンドリカルレンズ212aが、x方向に配列(並列配列)されている。第2実施形態のシリンドリカルレンズ212aは、液晶パネル120側に凸な円筒面を有する円筒シリンドリカルレンズである。光吸収層220aには、y方向に延びたシリンドリカルレンズ212aの集光光通過領域に合わせて、y方向に延びた開口部222aが形成されている。なお、図4では、図示の便宜上、小数のシリンドリカルレンズ212aを描いているが、実際の散光部200では、液晶パネル120のx方向の画素数に相当する数のシリンドリカルレンズ212aが設けられている。
【0038】
レンズシート210aに入射した略平行な光線は、x方向については、図3に示す第1実施形態の場合と同様に、焦点F付近で集束した後、発散する。そのため、液晶表示装置100(図1)の視野角は、x方向に拡大される。一方、y方向については、シリンドリカルレンズ212aにより光線の進行方向が変えられることがないので、液晶表示装置100の視野角は、バックライト110(図1)の配光特性によって決定される。
【0039】
また、レンズシート210aに入射した光線は、シリンドリカルレンズ212aにより集光されることにより光吸収層220aに設けられた開口部222aを通過するので、光吸収層220aに遮られることなく表示面側(+z側)に射出される。
【0040】
このように、第2実施形態では、複数のシリンドリカルレンズ212aを並列配列したレンズシート210a(レンチキュラーレンズ)を用いることにより、直交する2方向のうちの一方の方向(シリンドリカルレンズ212aの配列方向)についてのみ視野角を拡大することができる。一般に、液晶表示装置100の視野角は、画面の垂直方向よりも水平方向に対して広い視野角が要求されるので、シリンドリカルレンズ212aを水平方向に配列したレンズシート210aを用いることにより、実用上十分な視野角を得ることができる。また、第2実施形態では、y方向への画像光の発散が抑制されるため、第1実施形態よりも液晶表示装置100の輝度を高くすることが可能となる。さらに、第2実施形態では、レンズシート210aおよび遮光部220aの形状が第1実施形態よりも単純であるので、より容易に散光部200aを作成することができる。
【0041】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、集光光通過領域に開口部222aが設けられた光吸収層220aをレンズシート210aの表示面側に設けることにより、外光の入射によるコントラストの低下を抑制することができる。また、シリンドリカルレンズ212aの円筒面の曲率を変更することにより、x方向の視野角を調整することもできる。
【0042】
なお、第2実施形態において散光部200aで拡大されないy方向への視野角を拡大するために、バックライト110の配向特性を調整するものとしても良い。具体的には、バックライト110の輝度半値全幅をy方向のみについて大きくすることにより、y方向への視野角を拡大することも可能である。但し、この場合、バックライト110の輝度半値全幅の拡大量は、液晶パネル120の視野角依存性が顕著にならない程度とするのが好ましい。なお、この場合においても、x方向については、液晶パネル120の視野角依存性の影響は低減された状態に維持される。
【0043】
B2.第2実施形態の変形例:
図5は、第2実施形態の変形例における散光部200b,200cの部分断面図である。これらの変形例では、第2に実施形態と同様のレンズシート210aの表示面側(+z側)に光拡散層230b,230cを形成している。光拡散層230b,230cとしては、例えば、透光性微粒子を分散させた透光性樹脂を使用することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0044】
図5(a)に示す第2実施形態の変形例1では、第2実施形態と同様の光吸収層220aが形成されており、その開口部222aの内側に光拡散層230bを形成している。このような光拡散層230bは、光吸収層220aと同様に、フォトリソグラフィ等のパターニング技術を用いて形成することができる。フォトリソグラフィ等で光吸収層220aおよび光拡散層230bを形成する場合、これらのいずれを先に形成しても構わない。なお、図5(a)では、光吸収層220aと光拡散層230bとがx方向に隣接しているが、光拡散層230bは、集光光通過領域の位置に形成されていればよく、光吸収層220aと光拡散層230bとの間に間隙があっても良い。
【0045】
図5(b)に示す第2実施形態の変形例2では、レンズシート210aの表示面側の全面に光拡散層230cが形成されている。そして、光拡散層230cの表示面側に、開口部222cが設けられた光吸収層220cが形成されている。第2実施形態の変形例2では、レンズシート210aの表示面側の全面に設けられた光拡散層230cに光吸収層220cを設けることにより、第2実施形態の変形例1よりもより容易に散光部200cを形成することができる。なお、変形例2の場合においても、集光光通過領域の位置には光拡散層230cが形成されているので、光拡散層230cは、集光光通過領域の位置に形成されていると言える。
【0046】
第2実施形態の変形例1,2に示す散光部200b,200cでは、レンズシート210aの表示面側に光拡散層230b,230cを設けることにより、y方向の視野角を拡大することができる。また、x方向の視野角も、光拡散層230b,230cを設けることにより、第2実施形態で得られる視野角よりも広くすることができる。さらに、レンズシート210aや光拡散層230cの表示面側に光吸収層220a、220cを設けることにより、外光の入射によるコントラストの低下を抑制することができる。
【0047】
なお、y方向の視野角は、例えば、光拡散層230b,230c中に分散される透光性微粒子の量や粒径等を調整することにより調整することができる。一方、x方向の視野角は、光拡散層230b,230cによる視野角の拡大量を考慮して、シリンドリカルレンズ212aの曲率等の光学的構成を適宜設定することにより調整することができる。このように、第2実施形態の変形例1,2によれば、x方向とy方向との視野角を別個に調整することができる。
【0048】
C.第3実施形態:
図6は、第3実施形態における散光部200dの構成を示す斜視図である。図6(a)は、液晶パネル120側(−z側)から散光部200dを見た様子を示し、図6(b)は、表示面側(+z側)から散光部200dを見た様子を示している。第3実施形態は、レンズシート210dの表示面側に突起部240dが設けられている点と、突起部240dの表示面側に光吸収層220dが形成されている点とで第1実施形態と異なっている。他の点は、第1実施形態と同様である。なお、第2実施形態と同様に、マトリックス状に配列された複数のレンズ212に換えて並列配列された複数のシリンドリカルレンズ212aを用いるとともに、シリンドリカルレンズ212aを用いることに対応して突起部および光吸収層の形状を変更してもよい。
【0049】
突起部240dは、具体的には、レンズシート210dにおいて光線が射出される平坦面(第1実施例のレンズシート210(図2)における表示面側の平坦面に相当する)から表示面側に延びるように形成されている。突起部240dは、レンズ212により集光された光線が通過する領域(集光光通過領域)を含む位置に開口部242dが形成されている。これにより、レンズシート210dから射出された光線は、突起部240dおよび光吸収層220dに遮られることなく発散する。
【0050】
光吸収層220dは、図6に示すように、突起部240dの表示面側に形成されている。そのため、突起部240dに設けられた開口部242dに対応する位置に、光吸収層220dの開口部222dは形成される。このように、レンズシート210dに突起部240dを設け、突起部240dの表示面側に光吸収層220dを形成することにより、第3実施形態では、フォトリソグラフィ等のパターニングを行うことなく、開口部222dが設けられた光吸収層220dを形成することができる。光吸収層220dは、例えば、ローラ等を用いて黒インクを印刷することにより形成することもでき、また、転写等の加飾技術を用いて形成することもできる。後者の場合、具体的には、以下のような工程により形成することができる。
1.ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルムに、熱可塑性樹脂をバインダとする黒インクを塗布する。
2.レンズシート210dの突起部240dと、黒インクを塗布したフィルムのインク塗布面とを対向して配置する。
3.レンズシート210dと黒インクを塗布したフィルムとに圧力を加え、加熱する(ホットスタンピング)。
【0051】
第3実施形態では、レンズシート210dに突起部240dを設け、その表示面側に光吸収層220dを形成することにより、第1実施形態や第2実施形態よりも、より容易に開口部222dが設けられた光吸収層220dを形成することができる。一方、第1実施形態および第2実施形態は、レンズシート210,210aの形状が第3実施形態よりも単純であるため、より容易にレンズシート210,210aを形成することができる。
【0052】
なお、第3実施形態においても、散光部200dのレンズシート210dには、液晶パネル120側にマトリックス状に配列された複数のレンズ212が形成されているので、液晶パネル120の視野角依存性の影響を低減しつつ、液晶表示装置100の視野角を広くすることが可能となる。またレンズシート210dの表示面側に光吸収層220dを設けているので、外光の入射によるコントラストの低下を抑制することができる。
【0053】
D.第4実施形態:
図7は、第4実施形態における散光部200eの構成を示す斜視図である。図7(a)は、液晶パネル120側(−z側)から散光部200eを見た様子を示し、図7(b)は、表示面側(+z側)から散光部200eを見た様子を示している。第4実施形態は、レンズシート210eの表示面側に突起部240eが設けられている点と、突起部240eの表示面側に光吸収層220eが形成されている点と、レンズシート210eの表示面側にシリンドリカルレンズ250eが設けられている点とで、第2実施形態と異なっている。他の点は、第2実施形態と同様である。
【0054】
図7に示すように、レンズシート210eには、液晶パネル120側に配列された複数のシリンドリカルレンズ212aに対応して、シリンドリカルレンズ212aにより集光された光線が通過する領域(集光光通過領域)を含む位置にy方向に延びる複数のシリンドリカルレンズ250eが形成されている。第4実施例のシリンドリカルレンズ250eは、表示面側に凸な円筒面を有する円筒シリンドリカルレンズである。液晶パネル120側と表示面側とに形成された2つのシリンドリカルレンズ212a,250eは、それぞれの頂点が同一のy−z平面に配置されている。
【0055】
隣接するシリンドリカルレンズ250eの間には、y方向に延びる突起部240eが設けられており、突起部240eの表示面側には光吸収層220eが形成されている。なお、突起部240eを設け、突起部240eの表示面側に光吸収層220eを形成する点は、第3実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。なお、突起部240eを設けずに、隣接するシリンドリカルレンズ250eの間に光吸収層を形成するものとしても良い。但し、シリンドリカルレンズ250eの形成された面においてパターニングを行うことは必ずしも容易ではないので、突起部240eを設け、突起部240eの表示面側に光吸収層220eを形成するのが好ましい。
【0056】
図8は、z−x平面に沿った面における散光部200eの部分断面図である。図8において、矢印をつけた実線は、光軸O−Oから傾いて散光部200eに入射した光線の光路を示している。図8の破線は、点線で示すように、表示面側にシリンドリカルレンズ250eを設けなかった場合における光路を示している。
【0057】
図8に示すように、シリンドリカルレンズ250eを設けなかった場合には、光軸O−Oから傾いて入射した光線は、傾いたままの状態で表示面側から射出される。一方、シリンドリカルレンズ250eを設けた場合には、光軸O−Oから傾いて入射した光線は、光軸O−O方向に射出方向が矯正される。なお、図8では、光軸O−Oから傾いた光線が光軸O−O上でシリンドリカルレンズ212aに入射した状態を示しているが、光軸O−Oから外れた位置でシリンドリカルレンズ212aに入射した場合においても、光軸O−Oから傾いて入射した光線の射出方向は、光軸O−O方向に入射した光線の射出方向に矯正される。
【0058】
このように、第4実施形態では、表示面側にシリンドリカルレンズ250eを設けることにより、光軸O−Oから傾いて入射した光線の射出方向は、光軸O−O方向に入射した光線の射出方向に矯正される。そのため、バックライト110(図1)が射出する光線の広がりの影響を抑制することが可能となる。
【0059】
第4実施形態においても、散光部200eのレンズシート210eには、液晶パネル120側に並列配列された複数のシリンドリカルレンズ212aが形成されているので、液晶パネル120の視野角依存性の影響を低減しつつ、液晶表示装置100の視野角をシリンドリカルレンズ212aの配列方向に広くすることが可能となる。また、レンズシート210eの表示面側に光吸収層220eを設けているので、外光の入射によるコントラストの低下を抑制することができる。
【0060】
なお、第4実施形態では、第1あるいは第3実施形態と同様に、並列配列された複数のシリンドリカルレンズ212aに換えてマトリックス状に配列された複数のレンズ212を用いることも可能である。この場合、レンズ212の形状に対応して、突起部および光吸収層とともに、表示面側に設けられるレンズの形状が適宜変更される。
【0061】
E.変形例:
なお、この発明は上記各実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0062】
E1.変形例1:
上記各実施形態では、球面レンズや円筒面シリンドリカルレンズを用いているが、非球面レンズや非円筒面シリンドリカルレンズを用いることも可能である。この場合、球面収差等の発生を抑制することにより、焦点Fに光線を集束させることができる。そのため、集光光通過領域をより小さくして光吸収層に設けられる開口部をより小さくし、より良好に外光によるコントラストの低下を抑制することができる。また、非球面レンズとして、x方向とy方向との曲率が異なるレンズを用いることも可能である。この場合、液晶表示装置100の視野角をx方向とy方向とで別個に調整することが可能となる。
【0063】
E2.変形例2:
上記各実施形態では、本発明をTN型の液晶パネル120を使用した液晶表示装置100に適用しているが、本発明は、TN型の液晶パネル120のほか、垂直配向(VA:Vertical Alignment)型やインプレイン・スイッチング(IPS:In-Plane Switching)型等の種々の液晶パネルを使用した液晶表示装置に適用することもできる。VA型やIPS型の液晶パネルは、TN型の液晶パネルよりも視野角依存性が少ないが、これらの液晶パネルを使用した液晶表示装置に本発明を適用することにより、視野角による表示品質の変化をさらに低減することができる。
【符号の説明】
【0064】
100…液晶表示装置
110…バックライト
120…液晶パネル
122…偏光板
124…光学補償層
126…液晶セル
128…偏光板
200,200a,200b,200c,200d,200e…散光部
210,210a,210d,210e…レンズシート
212…レンズ
212a…シリンドリカルレンズ
220,220a,220c,220d,220e…光吸収層
222,222a,222c,222d…開口部
230b,230c…光拡散層
240d,240e…突起部
242d…開口部
250e…シリンドリカルレンズ
920…液晶パネル
922,928…偏光板
GS…基板
LCM…液晶分子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示装置であって、
前記液晶表示装置の表示面側の面から指向性の高い光を前記表示面の方向に射出するバックライトと、
前記バックライトの前記表示面側に配置された液晶パネルと、
前記液晶パネルの前記表示面側に配置された散光部と
を備え、
前記散光部は、
前記液晶パネル側の面に複数のレンズからなるレンズ群が形成されたレンズシートと、
前記レンズシートの前記表示面側に配置され、前記複数のレンズにより集光された光が通過する領域を含む位置に開口部が設けられた光吸収層と
を有する
液晶表示装置。
【請求項2】
前記レンズ群は、複数のシリンドリカルレンズを並列配列してなる、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記散光部は、さらに、前記レンズシートの前記表示面側において前記複数のレンズにより集光された光が通過する領域を含む位置に配置され、光を等方的に拡散させる光拡散層を有する、請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液晶表示装置であって、
前記光拡散層は、前記レンズシートの前記表示面側の全面に形成され、
前記光吸収層は、前記光拡散層の前記表示面側の表面に形成されている
液晶表示装置。
【請求項5】
前記レンズ群は、複数のレンズをマトリックス状に配列してなる、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の液晶表示装置であって、
前記レンズシートは、前記複数のレンズにより集光された光が通過する領域を含む位置に開口部が設けられ、前記表示面側に延長された突起部を有し、
前記光吸収層は、前記突起部の前記表示面側の表面に形成されている
液晶表示装置。
【請求項7】
前記レンズシートは、さらに、前記複数のレンズにより集光された光が通過する領域を含む位置に形成された第2のレンズ群を有する、請求項1ないし6のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記バックライトは、輝度の半値全幅が20度以下の配光特性を有する、請求項1ないし7のいずれかに記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−83842(P2013−83842A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224450(P2011−224450)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】