説明

液晶表示装置

【課題】液晶表示装置の基板間隔の均一性を向上して表示品位を向上させる。
【解決手段】液晶表示装置は、対向配置された第1基板11及び第2基板12と、第1基板に設けられた第1電極13と、第2基板に設けられた第2電極14と、第1基板と第2基板の液晶層17と、第1基板と第2基板の間の複数の柱状スペーサー23を備える。第1基板と第2基板の重なる有効表示領域は、第1電極と第2電極がいずれも配置された表示部1、第1電極と第2電極のいずれかのみ配置された引き回し線部2、及び第1電極と第2電極のいずれも配置されない非表示部3を含む。複数の柱状スペーサー23の平面視での単位面積当たりのスペーサー配置面積は、表示部1におけるスペーサー配置面積よりも引き回し線部2におけるスペーサー配置面積が相対的に小さく、引き回し線部2におけるスペーサー配置面積よりも非表示部3におけるスペーサー配置面積が相対的に小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂等で形成される柱状スペーサーを用いてセル厚を制御する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶層と基板の界面において液晶分子を水平配向に設定し、かつ液層分子の方位角方向における配向方向を上下基板間で180°〜240°程度回転させた超ねじれネマティック(STN)型液晶表示装置は、所定構造の補償セルを組み合わせることにより光学的な補償を実現することが可能であり、これをクロスニコル配置した偏光板間に配置することにより良好な暗表示が得られる。ここでいう補償セルとは、補償対象であるSTN型液晶表示装置との関係で、互いに液晶分子の方位角方向における回転方向が逆であり、かつ液晶層の中央における液晶分子の配向方向が互いに略直交するようにして配置されるSTN型液晶セルである。この補償セルの機能は、同様な光学特性を有する液晶性高分子フィルムなどの光学素子で代替することもできる。また、STN型液晶表示装置と上下の各偏光板との間に正の一軸異方性を有する位相差板を1つ又は複数配置する光学補償STN型液晶表示装置も知られている。これらいずれのタイプのSTN型液晶表示装置においてもノーマリーブラック表示が実現される。
【0003】
また、上下基板間に配置された液晶層内の液晶分子が電圧無印加時において各基板に対してほぼ垂直に配向する垂直配向型の液晶表示装置(液晶表示素子)は、正面観察時における液晶層のリタデーションがゼロまたはほぼゼロであるため、上下基板を挟んで配置される各偏光板をクロスニコル配置とした場合には非常に良好な暗表示が得られる。さらに、液晶層と上下の各偏光板間の少なくとも一方に視角補償板を配置することにより、電圧無印加時における視角特性が良好なノーマリーブラック表示が実現される。
【0004】
上記に例示したような各タイプの液晶表示装置では、一般に、上下基板の間隔(以下、単に「基板間隔」という。)を維持するために上下基板間にスペーサーを分散して配置する。スペーサーとしては、例えば有機材料等からなる球状スペーサーが広く用いられている。この球状スペーサーは、液晶表示装置の製造過程において、例えば特開2001−21899号公報(特許文献1)に開示されるような乾式散布法を用いて上下基板間に均等かつランダムに散布される。しかし、球状スペーサーをランダムに散布していることから表示領域(表示画素)内にも球状スペーサーが配置されるため、電圧無印加時あるいは電圧印加時において液晶層の配向不良を誘発し、これに伴う表示品位の低下を招く場合がある。
【0005】
これに対して、上下基板間の意図した場所に、感光性樹脂等からなる柱状スペーサーを設けることにより基板間隔を維持する構造の液晶表示装置が提案されている。このような液晶表示装置では、配向不良が発現しにくい位置を選んで柱状スペーサーを配置することができるため、液晶表示装置の表示品位の向上を図ることが可能となる。このような柱状スペーサーは、例えば、複数の画素がマトリクス状に配置されたドットマトリクス型の液晶表示装置に用いられる場合であれば、各画素の間に設けられた遮光膜(ブラックマトリクス)の下に配置し、画素内には配置されないようにすることができる。
【0006】
ところで、上記した垂直配向型やSTN型の液晶表示装置をノーマリーブラック型に構成し、マルチプレックス駆動により動作させモノクロ表示を実現する場合には、低コスト化などの観点からブラックマトリクスを用いない場合が多い。この場合、上記したように柱状スペーサーをブラックマトリクスの下に配置することができない。
【0007】
また、上記したマルチプレックス駆動により動作させる液晶表示装置には、規則的に配列された複数の画素からなるドットマトリクス表示部と、任意の文字や図案を表示するセグメント表示部を混在させたものがある。この場合、特にセグメント表示部においてはそれぞれの文字や図案の大きさが任意であることから、これらの文字等の領域外にのみ柱状スペーサーを配置した場合に基板間隔を均一にすることが困難である。一般的に、セグメント表示部においては、画像表示に関わる領域として利用者に視認される有効表示領域内に占める文字や図案を実際に表示するための領域(透過率変化を生じる領域)の割合、すなわち専有面積は0%より大きく50%以下であることが多い。これは、一般的にドットマトリクス表示部における有効表示領域内に占める複数の画素による専有面積が50%以上となるのに比較して低い値である。このため、特にセグメント表示部においては、文字等の領域外にのみ柱状スペーサーを配置することによる基板間隔の不均一が顕著になりやすい。このような基板間隔の不均一は液晶層の層厚の違いを生じさせるため、液晶表示装置の表示品位の低下を招く原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−21899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明に係る具体的態様は、液晶表示装置の液晶層の層厚の均一性を向上して表示品位を向上させることが可能な技術を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る一態様の液晶表示装置は、(a)対向配置された第1基板及び第2基板と、(b)第1基板の一面側に設けられた第1電極と、(c)第2基板の一面側に設けられた第2電極と、(d)第1基板と第2基板の間に設けられた液晶層と、(e)第1基板と第2基板の間に設けられた複数の柱状スペーサーを備える。第1基板と第2基板の重なる有効表示領域は、第1電極と第2電極がいずれも配置された表示部、第1電極と第2電極のいずれかのみ配置された引き回し線部、及び第1電極と第2電極のいずれも配置されない非表示部を含む。複数の柱状スペーサーの平面視での単位面積当たりのスペーサー配置面積は、表示部におけるスペーサー配置面積よりも引き回し線部におけるスペーサー配置面積が相対的に小さく、引き回し線部におけるスペーサー配置面積よりも非表示部におけるスペーサー配置面積が相対的に小さく設定されている。
【0011】
表示部、引き回し線部、非表示部の相互間でスペーサー配置面積に差を設けることにより、第1基板と第2基板の撓み具合を表示部、引き回し線部および非表示部でそれぞれ異ならせることができる。この撓み具合の違いを利用することにより、表示部、引き回し線部、非表示部のそれぞれにおける表面間距離をより近い大きさとして液晶層の層厚差を小さくすることができる。それにより、液晶層の層厚の均一性を向上して液晶表示装置の表示品位を向上することが可能となる。
【0012】
上記の液晶表示装置における表示部は、第1電極と第2電極の重なる部分が文字、数字又は図案を構成することが好ましい。すなわち、上記の液晶表示装置は、セグメント表示型であることが好ましい。この場合、有効表示領域の面積に対する表示部の面積の比率は、例えば0%より大きく50%以下である。
【0013】
上記のようなセグメント表示型の液晶表示装置では特に表示部、引き回し線部、非表示部の相互間における表面間距離の差が顕著となりやすく、これを抑制することが可能となる。
【0014】
上記の液晶表示装置において、複数の柱状スペーサーの各々の平面視における形状は、例えば正方形状、長方形状、円形状又は菱形状とすることができる。
【0015】
上記の液晶表示装置において、複数の柱状スペーサーの密度を変えることによって表示部、引き回し線部及び非表示部の相互間におけるスペーサー配置面積の差を生じさせることは好ましい態様の1つである。なお、複数の柱状スペーサーの個々の面積を変えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来例の液晶表示装置の基板間隔について説明するための模式的な断面図である。
【図2】所定のシミュレーション条件において、液晶層の層厚を変化させたときの正面観察時の透過率変化を計算した結果を示す図である。
【図3】所定のシミュレーション条件において、液晶層の層厚を変化させ、かつ、方位0°で法線を基準とした極角50°方向からの観察時における透過率変化を計算した結果を示す図である。
【図4】所定のシミュレーション条件において、液晶層の層厚を4.0μm〜4.5μmに変化させた場合の分光スペクトルの変化を示す図である。
【図5】ダミー電極を有する従来例の液晶表示装置について説明するための模式的な断面図である。
【図6】一実施形態の液晶表示装置を模式的に示す断面図である。
【図7】上側基板と下側基板の相互間距離のスペーサー配置面積依存性を示す図である。
【図8】各プロットの(1)式におけるパラメータa,b,c,dを示す図である。
【図9】セグメント表示部を有する液晶表示装置の一例を示す模式的な平面図である。
【図10】上側基板(セグメント基板)に設けられるセグメント電極の構造例を示す平面図である。
【図11】下側基板(コモン基板)に設けられるコモン電極の構造例を示す平面図である。
【図12】上側基板と下側基板を貼り合わせた状態におけるセグメント電極とコモン電極の構造を示す平面図である。
【図13】柱状スペーサーの配置面積の割合の違いを説明するための図である。
【図14】スペーサーの配置面積の割合の違いによる効果を説明するための模式的な断面図である。
【図15】柱状スペーサーの他の形状例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、従来例の液晶表示装置の基板間隔について説明するための模式的な断面図である。この図1では、それぞれが一面上に電極(導電膜)103、104を有しており、対向配置された2つの基板101、102が示されている。なお、各基板101、102の間に設けられるべき液晶層やその他の部材については説明の便宜上、図示を省略する。図1に示すように、液晶表示装置において利用者により視認されて画像表示に寄与する有効表示領域は、主に、各基板101、102のいずれにも電極が存在する表示部111と、各基板101、102のいずれか一方にのみ電極が存在する引き回し線部112と、各基板101、102のいずれにも電極が存在しない非表示部113の3つに区分することができる。
【0019】
例えば、液晶表示装置を透過型に構成する場合には、各基板101、102の各電極103、104としてはインジウム錫酸化物(ITO)膜などの透明導電膜が用いられる。透明導電膜はその膜厚によりシート抵抗が異なり、例えばスパッタ法によって成膜されたITO膜の場合、シート抵抗100Ω/sq.であれば膜厚は約0.06μm、シート抵抗30Ω/sq.であれば膜厚は約0.1μm、シート抵抗10Ω/sq.であれば膜厚は約0.25μmである。セグメント表示部において表示される文字や図案が比較的に簡単な形状の場合にはシート抵抗の高いITO膜を用いても不都合は生じない。しかし、文字や図案が複雑な形状の場合、引き回し線(配線)が長い場合あるいは引き回し線の線幅が部分的に狭い場合には、配線抵抗が上昇することによる電圧降下により、表示部111において電極間に印加される電圧にバラツキを生じる。このような電圧のバラツキは表示部111における輝度ムラを生じさせる。このため、ITO膜のシート抵抗はより低いことが望まれる。特に、ドットマトリクス表示部とセグメント表示部が混在する場合で、ドットマトリクス表示部における走査線本数が多い場合にはITOのシート抵抗を低くすることが重要となる。
【0020】
ここで、図1に示すように、表示部111における各基板の電極103、104の表面間距離をd1し、引き回し線部112における一方の基板に設けられた電極(103または104)と他方の基板の表面間距離をd2とし、非表示部113における各基板の表面間距離をd3とする。図1においては電極が設けられていない場合は基板101、102の表面を基準にし、電極が設けられている場合では電極103、104の表面を基準として表面間距離としている。例えば、各基板101、102の電極103、104のシート抵抗が30Ω/sq.であり、表示部111における表面間距離d1が6.0μmであると、引き回し線部112における表面間距離d2は6.1μmとなり、非表示部113における表面間距離d3は6.2μmとなる。また、各基板101、102の電極103、104のシート抵抗が10Ω/sq.であり、表示部111における表面間距離d1が6.0μmであると、引き回し線部112における表面間距離d2は6.25μmとなり、非表示部113における表面間距離d3は6.5μmとなる。このため、各基板101、102の間に液晶層を配置したときに、その層厚は、表示部111、引き回し線部112、非表示部113のそれぞれで著しく差を生じることになる。そこで、上記のように電極の有無によって液晶層の層厚が変化したときに、液晶表示装置の表示品位にどのような影響が現れるかをコンピュータシミュレーションにより解析した。この解析には市販のシミュレータを使用した。
【0021】
まず、上記した補償セルと組み合わせて用いるSTN型液晶表示装置の場合について検討した。なお、ここでは補償セルによる補償対象のSTN型液晶表示装置を「駆動セル」と称する。シミュレーションに用いた補償セルと駆動セルは、いずれも上下基板間に配置された液晶層の液晶分子が基板面に対して2°のプレティルト角を有して水平配向しており、かつ上下基板間で方位角方向に180°ねじれて配向している。このねじれの方向は、駆動セルの液晶層では右ねじれ、補償セルの液晶層では左ねじれに設定されている。また、駆動セルと補償セルとは、各々の液晶層の層厚方向の中央における液晶分子の配向方向が互いに直交するように配置されている。駆動セル、補償セルの各々の外側に配置される上下の各偏光板はクロスニコル配置されている。そして、補償セルに近い上側偏光板の吸収軸は補償セルの液晶層の層厚方向の中央における液晶分子の配向方向に対して45°方向に設定されている。また、駆動セルに近い下側偏光板の吸収軸は駆動セルの液晶層の層厚方向の中央における液晶分子の配向方向に対して45°方向に設定されている。補償セルおよび駆動セルのそれぞれの液晶層を構成する液晶材料のΔnは0.152に設定した。また、補償セルについては上下基板の各表面に電極が存在しないものとし、液晶層の層厚は上下基板間の全体で一様に6.0μmであるものとした。
【0022】
図2は、上記したシミュレーション条件において、液晶層の層厚を変化させたときの正面観察時の透過率変化を計算した結果を示す図である。駆動セルと補償セルの間で液晶層の層厚が一致している場合には透過率が約0.003%となる。これに対して、駆動セルの液晶層の層厚が6.1μmに変わるだけで透過率は約0.2%に上昇する。さらに、駆動セルの液晶層の層厚が6.5μmに変わった場合には透過率は約4.5%と大幅に上昇する。このような透過率の上昇は液晶表示装置のコントラスト特性へ強い影響を与えると考えられる。したがって、各基板の電極のシート抵抗が仮に100Ω/sq.であったとしても、表示部と非表示部では明らかに透過率が異なることが外観から観察され、表示ムラとして利用者に認識されることになる。
【0023】
次に、垂直配向型の液晶表示装置についても同様に検討した。具体的には、シミュレーションに用いた液晶表示装置は、上下基板間に配置された液晶層の液晶分子が基板面に対して89.9°のプレティルト角を有して垂直配向しており、かつ上下基板のそれぞれにおける配向方向が逆方向に設定されている(アンチパラレル配向)。上下基板の各々の外側にはクロスニコル配置された2つの偏光板が配置されており、各偏光板の吸収軸は、それぞれ液晶層の層厚方向の中央における液晶分子の配向方向に対して45°の角度をなすように設定されている。各偏光板は、TAC保護フィルムとPVA偏光層を有しており、TAC保護フィルムの厚さ方向の位相差が50nmである。上側偏光板と上側基板の間には視角補償板が配置されている。この視角補償板は、面内位相差55nmであり厚さ方向位相差220nmの二軸フィルムと、面内位相差0nmであり厚さ方向位相差220nmのCプレートを積層した構成となっている。そして、この視角補償板は、二軸フィルムが上側偏光板に近接し、その面内遅層軸が上側偏光板の吸収軸に直交するようにして配置されている。視角補償板の材質はいずれもノルボルネン系環状オレフィンポリマーと設定した。また、液晶層を構成する液晶材料のΔnは0.15に設定した。
【0024】
図3は、上記したシミュレーション条件において、液晶層の層厚を変化させ、かつ、方位0°で法線を基準とした極角50°方向からの観察時における透過率変化を計算した結果を示す図である。上記した図2に示した補償セルを用いるSTN型液晶表示装置の計算結果に比べれば液晶層の層厚への依存性は小さいが垂直配向型の液晶表示装置においても層厚の変化に伴って透過率が確実に変化していることが分かる。図4は、上記したシミュレーション条件において、液晶層の層厚を4.0μm〜4.5μmに変化させた場合の分光スペクトルの変化を示す図である。図4に示すように、スペクトルカーブが層厚に応じて変化しており、明らかに色調変化が外観観察から認識できるレベルにあることが分かった。すなわち、例えばシート抵抗10Ω/sq.の電極を用いた場合、表示部と引き回し線部と非表示部で透過率だけでなく色調の変化も観察され、電極パターンが外観から認識されることから表示ムラと認められる状態であることが分かった。
【0025】
上記したような液晶表示装置における表示部111、引き回し線部112、非表示部113の液晶層の層厚差を解消する方法として、引き回し線部112、非表示部113に外部回路とは接続されないダミー電極を配置することが考えられる。図5は、ダミー電極を有する従来例の液晶表示装置について説明するための模式的な断面図である。図5(A)に示す液晶表示装置は、基板101上に電極103とダミー電極105が設けられ、基板102上に電極104とダミー電極106が設けられている。なお、各基板101、102の間に設けられるべき液晶層やその他の部材については説明の便宜上、図示を省略する。図5に示すように、各基板101、102にダミー電極105、106を設けることで引き回し線部112と非表示部113のそれぞれにおける表面間距離が表示部111の表面間距離とほぼ等しくなるため、液晶層の層厚差が著しく改善される。
【0026】
しかし、画像表示に必要な電極に加えてダミー電極を設けるための設計は著しく煩雑であり、設計ミスを誘発しやすい。例えば図5(B)に示すように、ダミー電極の設計にミスを生じ、引き回し線部112の基板102側に設けられたダミー電極106が非表示部113の基板101側のダミー電極105と引き回し線部112の電極103のいずれとも対向するように配置された場合を考える。この場合、基板101側の電極103とダミー電極105の電位が等しければ基板102側のダミー電極106も同電位となり、異常動作(異常点灯)は生じない。ところが、例えば引き回し線部112の基板101側の2つの電極103の電位が著しく異なる場合は基板102側のダミー電極106がさらに異なる電位になる場合があり、この部分が全面で異常点灯する不具合が生じる時がある。これは設計ミスの一例を挙げたが、他にも、基板101と基板102を貼り合わせる際に位置ずれを生じることで、例えば基板101上の電極が対向する基板102のダミー電極106と重畳して異常点灯を誘発する不具合が生じる可能性もある。
【0027】
そこで以下に、ダミー電極を用いる方法における上記のような不都合を解消し、表示部、引き回し線部、非表示部の相互間で表面間距離の差異を生じることによる表示品位の低下を抑制し得る一実施形態の液晶表示装置を説明する。
【0028】
図6は、一実施形態の液晶表示装置を模式的に示す断面図である。図6に示す本実施形態の液晶表示装置は、対向配置された上側基板(第1基板)11および下側基板(第2基板)12と、両基板の間に配置された液晶層17を基本構成として備える。この液晶表示装置は、液晶層17の液晶分子が電圧無印加時において各基板に対してほぼ垂直に配向する垂直配向型の液晶表示装置であり、上側偏光板19および下側偏光板21をクロスニコル配置としたノーマリーブラックモードに構成されている。本実施形態の液晶表示装置において、利用者により視認されて画像表示に寄与する有効表示領域は、上側基板11と下側基板12のいずれにも電極が存在する表示部1と、上側基板11と下側基板12のいずれか一方にのみ電極が存在する引き回し線部2と、上側基板11と下側基板12のいずれにも電極が存在しない非表示部3の3つに区分される。
【0029】
上側基板11と下側基板12は、それぞれ、例えばガラス基板、プラスチック基板等の透明基板である。上側基板11と下側基板12は、所定の間隙(例えば数μm程度)を設けて貼り合わされている。上側基板11と下側基板12の間隙は、両基板間に配置された柱状スペーサー23によって保持される。
【0030】
上側電極13は、上側基板11の一面側に設けられている。同様に、下側電極14は、下側基板12の一面側に設けられている。上側電極13および下側電極14は、それぞれ例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電膜を適宜パターニングすることによって構成されている。これらの上側電極13および下側電極14を介して外部の駆動回路(図示省略)から液晶層17に駆動信号が供給される。例えば、上側電極13と下側電極14は、互いが重なった領域が所望の文字や図案を形作るように形成されている(セグメント表示型の場合)。
【0031】
配向膜15は、上側電極13を覆って上側基板11の一面側に設けられている。同様に、配向膜16は、下側電極14を覆って下側基板12の一面側に設けられている。これらの配向膜15、16は、液晶層17の液晶分子の配向を制御するものである。例えば、本実施形態では配向膜15、16として垂直配向膜を用いる。各配向膜15、16にはラビング処理等の一軸配向処理が施されており、かつその配向処理の方向が互い違い(アンチパラレル)となるように配置されている。
【0032】
液晶層17は、上側基板11と下側基板12の間に設けられている。本実施形態においては、誘電率異方性Δεが負の液晶材料を用いて液晶層17が構成される。液晶層17に図示された太線は、液晶層17における液晶分子の配向方向を模式的に示したものである。本実施形態の液晶層17は、電圧無印加時における液晶分子の配向方向が上側基板11および下側基板12の各基板面に対してわずかなプレティルト角を有して略垂直となる垂直配向モードに設定されている。
【0033】
柱状スペーサー23の各々は、上側基板11と下側基板12のいずれか一方(例えば、上側基板11)に固着して設けられており、上側基板11と下側基板12の間隙を保つ機能を果たす。各柱状スペーサー23は、例えば平面視において矩形状、ひし形状、円形状、楕円形状等に形成されている。柱状スペーサー23は、その単位面積当たりの配置面積が表示部1、引き回し線部2および非表示部3のそれぞれにおいて異なる。具体的には、配置面積の割合は、表示部1で最も大きく、次いで引き回し線部2で大きく、非表示部3で最も小さく設定されている。配置面積の割合については後ほどさらに詳述する。
【0034】
上側偏光板19は、上側基板11の外側に配置されている。同様に、下側偏光板21は、下側基板12の外側に配置されている。上側偏光板19と下側偏光板21は、各々の吸収軸が互いに略直交するように配置されている。また、上側偏光板19と下側偏光板21の各吸収軸は、配向処理の方向に対応して定義される液晶層17の層厚方向の略中央における液晶分子の配向方向に対して略45°の角度をなす位置に設定される。なお、各偏光板と各基板との間には適宜Cプレート等の光学補償板が配置されてもよい。例えば本実施形態では、上側基板11と上側偏光板19の間、下側基板12と下側偏光板22の間のそれぞれに光学補償板20、22が配置されている。光学補償板20、22としては、負の一軸光学異方性または負の二軸光学異方性を有する視角補償板が用いられる。
【0035】
次に、図6に示した構造を有する液晶表示装置の製造方法の一例を説明する。
【0036】
まず、上側電極13を有する上側基板11、下側電極14を有する下側基板12をそれぞれ作製する。具体的には、片面が研磨処理され、その表面にSiOアンダーコートが施された後、ITO(インジウム錫酸化物)からなる透明導電膜が成膜された一対のガラス基板を用意する。これらのガラス基板の透明導電膜に対してフォトリソグラフィー工程及びエッチング工程を行うことにより所望の形状にパターニングする。なお、必要に応じて、透明導電膜をパターニングして得られた上側電極13や下側電極14の各々の一部表面上にSiOなどによる絶縁層を形成してもよい。なお、ITOからなる透明導電膜は、例えば真空蒸着法またはスパッタリング法などの物理気相堆積法によって成膜され、その膜厚はシート抵抗100Ω/sq.において約0.05μm、30Ω/sq.において約0.1μm、10Ω/sq.において約0.25μmであり、透過率は80%以上である。
【0037】
次に、上側基板11(もしくは下側基板12)の一面上に、感光性樹脂を用いて柱状スペーサー23を形成する。例えば、透明ネガ型感光性樹脂材料を上側基板11の一面上に滴下し、この上側基板11をスピンナーにて30秒間ほど回転させることにより、透明ネガ型感光性樹脂材料を基板全面に塗布する。その後、これをホットプレート上で100℃、120秒間の条件で仮焼成する。なお、樹脂膜の膜厚はスピンナーの回転数を変えることにより略0.5μm〜5μm程度まで制御できる。仮焼成した樹脂膜に対して、所望の柱状スペーサー23に対応する遮光パターンを有するフォトマスクを介して、高圧水銀ランプを光源とする密着露光機にて紫外線を照射する。この露光は、フォトマスクと樹脂塗布面とを略密着させた状態で行う。その後、濃度1%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に上側基板11を浸漬することにより樹脂膜の現像を行い、ついで純水にてリンスする。基板乾燥後、クリーンオーブン内にて220℃、30分間の条件で本焼成することにより、上側基板11の一面上に各柱状スペーサー23が形成される。
【0038】
次に、上側基板11および下側基板12をそれぞれ弱アルカリ溶液および純水にてブラシ洗浄後、基板乾燥し、低圧水銀ランプまたは酸素キャリアを用いた大気圧プラズマ等によるドライ洗浄を行う。次に、各基板にフレキソ印刷法にて所望パターンの配向膜を塗布し、クリーンオーブン内にて90℃で約5分間の条件で仮焼成し、さらに160℃〜280℃で30〜60分間の条件で本焼成する。その後、配向膜に対して配向処理の1つであるラビング処理を行う。液晶層の動作モード等により、ラビング処理は上側基板11と下側基板12のいずれか一方、または双方に対して行われる。一方のみにラビング処理を行う場合には、柱状スペーサー23が存在しない下側基板12の配向膜に対して行うことが好ましい。なお、図6において電極14は配向膜16中に埋没しており、配向膜16の表面高さは表示部1、引き回し線部2、非表示部3で一様であるように図示しているが、実際は電極14の厚みが配向膜16の表面にも反映される。
【0039】
次いで、一方の基板(例えば上側基板11)に、例えばスクリーン印刷法によってシール材を形成する。シール材は、上側基板11と下側基板12が重なる領域の外形よりわずかに小さい枠状に形成される。このとき、シール材には柱状スペーサー23の高さよりも小さい径の球状スペーサーと、上側基板11と下側基板12の電極間を導通させるための導電性粒子が混入されていてもよい。シール材を形成した後、上側基板11と下側基板12を貼り合わせて熱圧着することによりシール材を固着させる。熱圧着の条件は、例えば120℃で1時間以上とする。
【0040】
次いで、真空注入法等の方法によって、上側基板11と下側基板12の間隙に液晶材料を注入し、上側基板11および下側基板12の各表面をプレスすることにより余分に注入された液晶材料を排出する。その後、紫外線硬化樹脂を液晶材料の注入口へ塗布し、プレス状態を開放することにより紫外線硬化樹脂を注入口から内部へわずかに浸透させる。その後、紫外線照射することによって紫外線硬化樹脂を硬化させて注入口を封止する。その後、オーブンにて例えば120℃、60分間の条件で熱処理を行う。これにより液晶層17が形成される。
【0041】
その後、上側基板11および下側基板12を貼り合わせて得られたセルを中性洗剤等で洗浄し、さらに純水でリンスし、乾燥させる。そして、上側基板11の外側に上側偏光板19および光学補償板20を貼り合わせ、かつ下側基板12の外側に下側偏光板21および光学補償板22を貼り合わせる。最後に、フレキシブル基板またはリードフレームを適宜に取り付けることにより液晶表示装置が完成する。
【0042】
次に、上側基板11と下側基板12の相互間距離と柱状スペーサーの配置面積との関係(面積依存性)について説明する。
【0043】
本実施形態の液晶表示装置では、上側基板11と下側基板12の間隙を保つために両基板間に柱状スペーサー23が設けられる。このとき、各柱状スペーサー23の配置方法により基板の相互間距離の大きさやその均一性が影響を受けると考えられる。そこで本願発明者らは、各柱状スペーサー23の高さを略4.5μmの設定値として液晶表示装置を作製した場合における、基板面全体面積に対するスペーサー配置面積の割合を変化させた場合のセル厚を評価した。なお、セル厚については基板面内の複数のポイントで測定し、その平均値、及びばらつきを評価した。
【0044】
各柱状スペーサー23を形成するためのフォトマスクは矩形状の開口部が周期的に配置されたパターンを有しており、周期間隔や矩形状の開口部の上下左右アスペクト比を変化させることによりスペーサー配置面積の割合を変化させた。液晶表示装置のサイズは、上側基板11と下側基板12の重なり合う領域が60mm×42mmであり、シール枠内は約58mm×40mmである。本測定においてはシール枠内に配置されたスペーサーの総面積をシール枠内の面積で割ったものをスペーサー配置面積の割合とした。配向膜としては垂直配向膜を用い、プレティルト角が略89.9°のアンチパラレル配向になるよう各基板に対してラビング処理を行った。液晶層17を構成する液晶材料としてはΔnが略0.22でΔεが負の値のものを用いた。シール枠内の面内の複数の個所を周期的間隔で測定スポットとし、法線を基準にして極角±30°の方向から観察した時のリタデーション測定によりセル厚を算出した。
【0045】
図7は、上側基板と下側基板の相互間距離(セル厚)のスペーサー配置面積依存性を示す図である。図7において、1つの面積比条件におけるセル厚ばらつきより分散σを算出し、その平均セル厚dと3σの半分を加算、減算したプロットの3種類が示されている。セル厚は面積比0.01以下(1%以下)では急激に変化しており、略0.03(3%)程度まで緩やかな変化が続き、それ以上ではさらに緩やかな変化が続き、やがてある値へ漸近する傾向がみられる。各プロットは以下の(1)式によって近似することが可能であり、3種類のプロットに対する近似曲線を図中に示した。
セル厚=d+alog(面積比)+blog(面積比)+clog(面積比) …(1)
【0046】
図8は、各プロットの(1)式におけるパラメータa,b,c,dを示す図である。ここで、dは面積比が増大した際に漸近する目安になる数値である。本検討においては、柱状スペーサー23の単体を触針式段差計で測定した場合は略4.5μm±0.1μmであったが、近似式からはこれよりも低い略4.29μm±0.06μm程度であることが分かった。
【0047】
次に、上記した評価結果に基づく各柱状スペーサー23の好適な配置方法について説明する。
【0048】
図9は、セグメント表示部を有する液晶表示装置の一例を示す模式的な平面図である。図9に示す液晶表示装置は、2桁の任意の数字を表示する部分、「TEMP」の文字を表示する部分、「AUTO」の文字を反転表示する部分を含んでいる。なお、液晶表示装置の内部構造については上記した図6等に示した通りである。便宜上、各数字や文字の部分以外の部分を白色で示しているが、実際にはこの部分は黒色となる。
【0049】
図10は、上側基板(セグメント基板)に設けられるセグメント電極の構造例を示す平面図である。図10に示すように、セグメント電極30は、画像表示に寄与する表示電極部31と、これらの表示電極部31に電圧を供給するための引き回し電極部32と、各引き回し電極部32を外部駆動回路に接続するためのセグメント端子部33と、後述するコモン電極を外部駆動回路に接続するためのコモン端子部34を含んで構成されている。
【0050】
図11は、下側基板(コモン基板)に設けられるコモン電極の構造例を示す平面図である。なお、この図11は下側基板の電極面とは逆の面、すなわち裏面から観察したコモン電極の構造を示している。図11に示す例は、コモン電極40の数を2つとし、1/2デューティのマルチプレックス駆動によって動作させることを想定したものである。これら2つのコモン電極40は、それぞれ一部で上記したコモン端子部34の1つと重なるように配置されている。両者間は、シール材に混入された導電性粒子によって電気的に接続される。
【0051】
図12は、上側基板と下側基板を貼り合わせた状態におけるセグメント電極とコモン電極の構造を示す平面図である。なお、セグメント電極を実線で示し、コモン電極を点線で示している。図12に示すように、有効表示領域であるシール枠6内の領域においてセグメント電極30とコモン電極40が重なっている部分が図6に示した表示部1に対応する。また、セグメント電極30とコモン電極40のいずれか一方が存在する部分が図6に示した引き回し線部2に対応し、セグメント電極30とコモン電極40のいずれも存在しない部分が図6に示した非表示部3に対応する。図中には、表示部1、引き回し線部2、非表示部3のそれぞれに該当するいくつかの箇所に対して例示的に符号を付して示している。ここで、例えばセグメント電極30とコモン電極40のそれぞれのシート抵抗を30Ω/sq.とすると各電極の膜厚は約0.1μmとなることから、液晶層の層厚は、非表示部3における層厚を基準とすると、引き回し線部2では約0.1μm、表示部1では約0.2μmの層厚差を生じることになる。このような層厚差は、特に液晶層のΔndが大きく設定された液晶表示装置を正面観察した際や法線より極角方向に傾いた方向から観察した際に、表示部1、引き回し線部2、非表示部3の相互間で電圧無印加時や暗表示時に透過率の相違として観察されやすく、液晶表示装置の表示品位を低下させる。
【0052】
そこで本実施形態では、上記のように柱状スペーサー23の単位面積当たりの配置面積の割合を表示部1で最も大きく、次いで引き回し線部2が大きく、非表示部3が最も小さく設定することで液晶層の層厚差を調整している。図13は、柱状スペーサーの配置面積の割合の違いを説明するための図である。具体的には、図13(A)は表示部1に配置された柱状スペーサー23を模式的に示した平面図である。図13(B)は引き回し線部2に配置された柱状スペーサー23を模式的に示した平面図である。図13(C)は非表示部3に配置された柱状スペーサー23を模式的に示した平面図である。ここでは、略正方形状の複数の柱状スペーサー23を上下左右の各方向に対して規則的に配置しており、柱状スペーサー23の単位面積当たりの配置面積を変化させている。
【0053】
具体的には、セグメント電極およびコモン電極の各々のシート抵抗が30Ω/sq.であるとし、表示部1における液晶層の層厚を約4.2μmに設定する場合を考える。各柱状スペーサー23の高さが4.5μmであるとすると、柱状スペーサー23の単位面積当たりの配置面積を表示部1においては略6%とし、引き回し線部2においては略4%とし、非表示部3においては略2.9%とすることにより、液晶層の層厚をほぼ一定にすることが可能である(図7参照)。より詳細には、略正方形状に形成された各柱状スペーサー23の平面視における1辺が0.01mmであり、等間隔で規則的に配置されるものとすると、表示部1には1mmあたり約580個の柱状スペーサー23を配置する必要がある。したがって、表示部1では、各柱状スペーサー23の重心を略0.029mm間隔で配置すればよい(図13(A)参照)。これに対し、引き回し線部2には1mmあたり約400個の柱状スペーサー23を配置する必要がある。したがって、引き回し線部2では、各柱状スペーサー23の重心を略0.035mm間隔で配置すればよい(図13(B)参照)。また、非表示部3には1mmあたり約280個の柱状スペーサー23を配置する必要がある。したがって、非表示部3では、各柱状スペーサー23の重心を略0.06mm間隔で配置すればよい(図13(C)参照)。
【0054】
他の具体例として、セグメント電極およびコモン電極の各々のシート抵抗が10Ω/sq.であるとし、表示部1における液晶層の層厚を約4.2μmに設定する場合を考える。各柱状スペーサー23の高さが4.5μmであるとすると、柱状スペーサー23の単位面積当たりの配置面積を表示部1においては略6%とし、引き回し線部2においても略2.5%とし、非表示部3においては略1.0%とすることにより、液晶層の層厚をほぼ一定にすることが可能である(図7参照)。より詳細には、略正方形状に形成された各柱状スペーサー23の平面視における1辺が0.01mmであり、等間隔で規則的に配置されるものとすると、表示部1には1mmあたり約580個の柱状スペーサー23を配置する必要がある。したがって、表示部1では、各柱状スペーサー23の重心を略0.029mm間隔で配置すればよい。また、引き回し線部2にも1mmあたり約250個の柱状スペーサー23を配置する必要がある。したがって、引き回し線部2でも各柱状スペーサー23の重心を略0.067mm間隔で配置すればよい。また、非表示部3には1mmあたり約97個の柱状スペーサー23を配置する必要がある。したがって、非表示部3では、各柱状スペーサー23の重心を略0.173mm間隔で配置すればよい。
【0055】
図14は、スペーサーの配置面積の割合の違いによる効果を説明するための模式的な断面図である。詳細には、図14(A)は表示部1における表面間距離d1を示す図であり、図14(B)は引き回し線部2における表面間距離d2を示す図であり、図14(C)は非表示部3における表面間距離d3を示す図である。表示部1には相対的に大きな配置面積で柱状スペーサー23が配置されることから、上側基板11と下側基板12のそれぞれに撓みが生じにくい。これに対して、柱状スペーサー23の配置面積の小さい引き回し線部2では上側基板11と下側基板12がある程度撓むことから表面間距離d2が小さくなる。同様に、柱状スペーサー23の配置面積がより小さい非表示部3では上側基板11と下側基板12がより撓むことから表面間距離d3がより小さくなる。したがって、引き回し線部2の表面間距離d2、非表示部3の表面間距離d3がともに表示部1の表面間距離d1に近づくことになるので、表示部1、引き回し線部2および非表示部3のそれぞれにおける液晶層の層厚差をより小さくすることが可能となる。
【0056】
なお、上記した実施形態では柱状スペーサーの単位面積当たりの密度を変化させることにより配置面積を制御していたが、柱状スペーサーの個々の面積を変化させてもよい。柱状スペーサーの個々の面積をより大きくすることで単位面積当たりの柱状スペーサーの数を減少させることができる。ただし、柱状スペーサーの個々の面積は表示部においては明表示時にも影響を与えるため、なるべく小さいほうが望ましい。また、柱状スペーサーの周辺では電圧無印加時においても配向不均一性による光りぬけが観察される場合もあるが、単位面積当たりの柱状スペーサーの数をより少なくすることにより光りぬけ箇所を減少し表示品位を改善できると考えられる。これらから、表示部1に配置される柱状スペーサーの個々の面積に比べて、非表示部3や引き回し線部2に配置される柱状スペーサーの個々の面積をより大きく設定することも好ましい。
【0057】
図15は、柱状スペーサー23の他の形状例を示す概略平面図である。各柱状スペーサー23は、例えば図15(A)に示すように各々が平面視において略長方形状に形成されていてもよい。また、各柱状スペーサー23は、図15(B)に示すように、平面視においてひし形状の輪郭を有していてもよく、図15(C)に示すように円形状の輪郭を有していてもよい。
【0058】
以上のような本実施形態によれば、表示部、引き回し線部、非表示部の相互間で表面間距離の差異を生じることによって液晶層の層厚差を生じることを回避し、液晶表示装置の表示品位を向上することが可能となる。
【0059】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上述した実施形態では垂直配向型の液晶表示装置を例示していたが、液晶層の動作モードはこれに限定されない。具体的には、例えば液晶層内において液晶分子の配向方向が上側基板と下側基板の間で方位角方向に180°〜240°程度のねじれを有するSTN(Super Twisted Nematic)型の液晶表示装置に対しても本発明を適用可能である。この場合には、光学補償板として正の一軸光学異方性または正の二軸光学異方性を示す位相差板を用いるか、基板界面における液晶分子の配向方向と基板に近接する側の遅相軸方向を略直交に配置したねじれ配向高分子液晶フィルム等を用いることができる。
【符号の説明】
【0060】
1:表示部
2:引き回し線部
3:非表示部
11:上側基板
12:下側基板
13:上側電極
14:下側電極
15、16:配向膜
17:液晶層
19:上側偏光板
20、22:光学補償板(視角補償板)
21:下側偏光板
23:柱状スペーサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された第1基板及び第2基板と、
前記第1基板の一面側に設けられた第1電極と、
前記第2基板の一面側に設けられた第2電極と、
前記第1基板と前記第2基板の間に設けられた液晶層と、
前記第1基板と前記第2基板の間に設けられた複数の柱状スペーサーと、
を備え、
前記第1基板と前記第2基板の重なる有効表示領域は、前記第1電極と前記第2電極がいずれも配置された表示部、前記第1電極と前記第2電極のいずれかのみ配置された引き回し線部、及び前記第1電極と前記第2電極のいずれも配置されない非表示部を含み、
前記複数の柱状スペーサーの平面視での単位面積当たりのスペーサー配置面積は、前記表示部におけるスペーサー配置面積よりも前記引き回し線部におけるスペーサー配置面積が相対的に小さく、前記引き回し線部におけるスペーサー配置面積よりも前記非表示部におけるスペーサー配置面積が相対的に小さい、
液晶表示装置。
【請求項2】
前記表示部は、前記第1電極と前記第2電極の重なる部分が文字、数字又は図案を構成する、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記有効表示領域の面積に対する前記表示部の面積の比率が0%より大きく50%以下である、請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記複数の柱状スペーサーの各々の平面視における形状が正方形状、長方形状、円形状又は菱形状である、請求項1〜3の何れか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記複数の柱状スペーサーの密度を変えることによって前記表示部、前記引き回し線部及び前記非表示部の相互間におけるスペーサー配置面積の差を生じさせる、請求項1〜4の何れか1項に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−97301(P2013−97301A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242223(P2011−242223)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】