説明

液晶表示装置

【課題】 耐熱性、可撓性、透明性、耐湿性、耐溶剤性に優れ、ガスバリア性の湿度依存性の極めて小さいガスバリア層をプラスチック基板に設けて、気泡の発生のない高性能な液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 液晶組成物が封入された液晶セルを挟持する基板としてプラスチックフィルムを用いた液晶表示装置において、分子内に1級および/または2級アミノ基を有する有機化合物と有機金属化合物および溶媒を含有するガスバリア用組成物が、前記プラスチックフィルムの少なくとも片面に塗布されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラスチックフィルム基板を用いた液晶表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】液晶を用いた表示装置は、時計、電卓、自動車のパネル、ページャ等を始めとして様々な分野に用いられている。図1には単純な構造の液晶表示装置(パネル)の概略図を示した。液晶パネル1は、対向する2枚の基板2,2と配向膜3,3と透明電極4,4がそれぞれ積層されて形成されたセルの中に液晶組成物5が封入されて構成されている。液晶表示装置(パネル)の適用範囲の拡大に伴って、パネルの薄膜化、軽量化、低コスト化の要求が高まり、最近では、基板2として従来のガラスに代わってプラスチックフィルムが利用されることが多くなってきた。
【0003】基板に要求される特性としては、耐熱性、可撓性、透明性、耐湿性、耐溶剤性等であり、これらを満足する樹脂フィルムが基板に用いられている。しかしここで問題となってくるのは、プラスチックフィルムの気体透過性である。すなわち、液晶組成物は一般的にセル内に減圧で封入されるが、基板のプラスチックフィルムの気体透過性が大きい場合、酸素や窒素等の気体がプラスチックフィルムを通過してセル内に気泡が生じてしまうのである。
【0004】そこで、プラスチックフィルムにガスバリア性を付与することが提案されている。しかし従来のガスバリア性フィルム、例えばエチレン−ビニルアルコール共重合体や芳香族系ナイロン等の気体不透過性素材は、耐湿性が悪く、ガスバリア性に湿度依存性があるため不適である。またガスバリア層を別素材で設けた金属箔ラミネートフィルムは透明性がないため液晶パネルには使用できず、金属蒸着フィルムは可撓性が悪いという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記諸問題を考慮して、耐熱性、可撓性、透明性、耐湿性、耐溶剤性に優れ、ガスバリア性の湿度依存性の極めて小さいガスバリア層をプラスチック基板に設けて、気泡の発生のない高性能な液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、液晶組成物が封入された液晶セルを挟持する基板としてプラスチックフィルムを用いた液晶表示装置において、分子内に1級および/または2級アミノ基を有する有機化合物(A)、下記一般式(I)で示される有機金属化合物(B)および/またはその加水分解縮合物、R1mM(OR2n …(I)
(式中Mは金属元素、R1 は同一または異なっていてもよく、水素原子、低級アルキル基、アリール基、ビニル基または炭素鎖に直結したメルカプト基、または(メタ)アクリロイル基を表し、R2 は同一または異なっていてもよく、水素原子、低級アルキル基またはアシル基を表し、mは0または正の整数、nは1以上の整数でかつm+nは金属元素Mの原子価と一致する)および溶媒(D)を含有するガスバリア用組成物が、前記プラスチックフィルムの少なくとも片面に塗布されている液晶表示装置であるところに要旨を有する。ガスバリア用組成物が、さらに、アミノ基と反応し得る官能基を分子内に有する化合物(C)を含有することが好ましい。本発明では、上記分子内に1級および/または2級アミノ基を有する有機化合物(A)が、下記一般式(II)
【0007】
【化4】


[式中A1 はアルキレン基、R3 は水素原子、低級アルキル基、または
【0008】
【化5】


【0009】(式中A2 は直接結合またはアルキレン基を、R7,R8 は水素原子または低級アルキル基を示す)で表わされる基、R4 は水素原子または低級アルキル基、R5は同一または異なる低級アルキル基、アリール基または不飽和脂肪族残基、R6は水素原子、低級アルキル基またはアシル基を意味し(ただしR3,R4,R7,R8のうち少なくとも1つが水素原子である)、wは0、1、2のいずれか、zは1、2、3のいずれかの整数を表わす(ただしw+z=3である)]で示される有機シラン化合物(A’)および/またはその加水分解縮合物である場合と、Si(OR6 )基(ただしR6 の意味は上記と同じ)を持たない有機化合物(A”)である場合の両方の実施態様を有する。特に、有機化合物(A)が上記有機化合物(A”)である場合、該化合物(A”)がポリエチレンイミン類であることが好ましい。また、ガスバリア用組成物中の化合物(C)が、アミノ基と反応し得る官能基としてエポキシ基を有する化合物であること、あるいは化合物(C)がさらに
【0010】
【化6】


【0011】(ただしR5,R6,w,zの意味は上記と同じ)を有する化合物(C’)である構成も、好ましい実施態様である。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明は、液晶パネル用のプラスチックフィルム基板にガスバリア性を付与することを目的としてなされるものであるが、使用されるガスバリア用組成物は、ガスバリア性と共に、液晶表示装置用途として必要な特性、すなわち耐熱性、可撓性、透明性、耐湿性、耐溶剤性にも優れた塗膜を形成できなければならず、この点について本発明者等が鋭意検討した結果、本発明の構成を見出したものである。以下詳細に説明する。
【0013】本発明は、分子内に1級および/または2級アミノ基を有する有機化合物(A)、下記一般式(I)で示される有機金属化合物(B)および/またはその加水分解縮合物、R1mM(OR2n …(I)
(ただし、M、R1 、R2 、m、nの意味は前記した通り)および溶媒(D)を必須構成成分とするガスバリア用組成物が、液晶組成物が封入された液晶セルを挟持する基板であるプラスチックフィルムの少なくとも片面に塗布されている液晶表示装置を開示する。
【0014】本発明で用いられる分子内に1級および/または2級アミノ基を有する有機化合物(A)とは、1級および/または2級アミノ基をその分子内に少なくとも1個有する化合物であればよく、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。本発明では、有機化合物(A)が、上記アミノ基と共に加水分解性基を有する有機シラン化合物(A’)である場合と、加水分解性基であるSi(OR6)基(ただしR6 の意味は前記した通り)を持たない有機化合物(A”)である場合に大別されるが、もちろん有機シラン化合物(A’)と有機化合物(A”)を混合して用いてもよい。有機シラン化合物(A’)は、下記一般式(II)で示される。
【0015】
【化7】


(式中A1 、R3 、R4 、R5 、R6 、w、zの意味は前記の通り)
【0016】上記(A’)の具体例としては、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリブトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジイソプロポキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジブトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルエチルジイソプロポキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルエチルジブトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリブトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジイソプロポキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジブトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルエチルジイソプロポキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルエチルジブトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリブトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジブトキシシラン、γ−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルエチルジイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルエチルジブトキシシラン、γ−アミノプロピルトリアセトキシシラン等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0017】また有機化合物(A”)は、加水分解性基であるSi(OR6)基(ただしR6の意味は前記した通り)を持たず、1級および/または2級アミノ基を有する有機化合物である。具体的には、アリルアミン、ジアリルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−エトキシプロピルアミン、ジイソブチルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、エチレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン等の低分子有機化合物、ポリエチレンイミン類、例えば日本触媒社製エポミンシリーズ(エポミンSP−003、エポミンSP−006、エポミンSP−012、エポミンSP−018、エポミンSP−103、エポミンSP−110、エポミンSP−200、エポミンSP−300、エポミンSP−1000、エポミンSP−1020等)、ポリアリルアミン類(例えば日東紡績社製PAA−L、PAA−H等)、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレートのホモポリマーや、これらのアミノ基含有(メタ)アクリレートと他の(メタ)アクリレート類や(メタ)アクリル酸とのコポリマー、ポリオキシエチレンアルキルアミン類等の高分子有機化合物が挙げられる。
【0018】特にガスバリア性に優れているのは、上記有機シラン化合物(A’)として例示した化合物、有機化合物(A”)の中のエタノールアミン、高分子有機化合物である。また成膜性を良好にするためには、加水分解性基を有する有機化合物(A’)として例示した化合物を後述の様に予め(共)加水分解縮合させて高分子量化して用いるか、有機化合物(A”)の中の高分子有機化合物を用いる方が有利である。高分子有機化合物の中では、得られる塗膜のガスバリア性やその他の特性が良好であるポリエチレンイミン類の使用が特に好ましい。有機化合物(A”)として高分子有機化合物を用いる場合の好ましい分子量は250〜20万である。より好ましくは250〜10万の範囲である。分子量が250より小さいと形成された塗膜の可撓性に劣り、逆に20万より大きいと透明性が劣り、液晶表示パネルとして好ましくないためである。
【0019】本発明でガスバリア用組成物として上記有機化合物(A)と共に必須成分として用いられる有機金属化合物(B)は、下記一般式(I)で表されるものである。
1mM(OR2n …(I)
(ただし、M、R1 、R2 、m、nの意味は前記した通り)
【0020】具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラブトキシド等のチタニウムアルコキシド類、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド等のジルコニウムアルコキシド類、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド等のアルミニウムアルコキシド類、テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等のアシロキシシラン類、トリメチルシラノール等のシラノール類等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。中でも、塗膜のガスバリア性の湿度依存性を小さくする点から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
【0021】有機金属化合物(B)の使用量は、有機化合物(A)[以下特に限定しない限り、有機化合物(A’)および(A”)が含まれる。]に対して50〜2000重量%であることが好ましい。有機金属化合物(B)の使用量が50重量%より少ないと、ガスバリア層の耐湿性が劣ったものとなるが、2000重量%を超えて使用すると、塗膜の可撓性が悪化する。より好ましい有機金属化合物(B)の使用量は有機化合物(A)に対して50〜1500重量%であり、最も好ましい範囲は80〜1500重量%である。
【0022】塗膜形成時の乾燥の際に有機金属化合物(B)の蒸発を防ぐため、有機金属化合物(B)は予め加水分解縮合を行うことが好ましい。前記した有機化合物(A’)と、あるいは後述の化合物(C’)と共加水分解縮合を行ってもよい。この(共)加水分解縮合反応は公知の触媒を用いることができ、また後述の溶媒(D)中で反応させるのが有利である。
【0023】本発明では、ガスバリア用組成物中に、有機化合物(A)のアミノ基と反応し得る官能基を有する化合物(C)を存在させることが好ましい。化合物(C)は架橋剤として働き、より緻密でガスバリア性に優れた塗膜を得ることができる。化合物(C)中のアミノ基と反応し得る官能基とは、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、オキサゾリニル基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等である。この官能基は、化合物(C)中複数である方が好ましく、その場合の官能基は同一であっても異なっていてもよい。上記官能基中最も反応性の良いのはエポキシ基である。塗膜の耐水性をより向上させるためには、化合物(C)が芳香環またはその水素添加環を有していることが好ましい。なお、有機化合物(A)として有機化合物(A”)を用いる場合には、化合物(C)が、アミノ基と反応し得る上記官能基と共に、加水分解性基
【0024】
【化8】


【0025】(ただしR5,R6,w,zの意味は前記した通り)を有する化合物(C’)であることが好ましい。化合物(C’)は、有機化合物(A”)中のアミノ基と反応すると共に、単独であるいは有機金属化合物(B)との(共)加水分解縮重合反応も起こすため、(A”)と(C’)と(B)が結合した緻密でかつ可撓性等に優れたガスバリア層を形成し得るためである。有機化合物(A)が、有機シラン化合物(A’)である場合には、有機化合物(A’)が上記加水分解性基を有しているので、化合物(C)が化合物(C’)である必要はなく、有機化合物(A’)単独または有機金属化合物(B)との(共)加水分解縮合反応と、(A’)と化合物(C)の架橋剤的反応によって高性能なガスバリア層を形成し得る。もちろん化合物(C’)を併用しても構わない。
【0026】本発明で利用できる化合物(C)の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル等の脂肪族ジグリシジルエーテル類;グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル類;アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル等の脂肪族および芳香族ジグリシジルエステル類;ビスフェノールAジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、および次式で表される化合物類
【0027】
【化9】


【0028】等の芳香環またはその水素添加環(核置換誘導体も含む)を有するグリシジル類;あるいはグリシジル基を官能基として有するオリゴマー類(例えばビスフェノールAジグリシジルエーテルオリゴマーの場合は下式の様に表せる);
【0029】
【化10】


【0030】ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等のイソシアネート類;酒石酸、アジピン酸等のジカルボン酸類;ポリアクリル酸等の含カルボキシル基重合体;オキサゾリニル基含有重合体等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。なお、上記例示した化合物(C)の中でも芳香環またはその水素添加環(核置換誘導体も含む)を有する化合物は、ガスバリア層の耐水性を一層向上させる作用がある。
【0031】化合物(C’)の具体例としては、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等(以下エポキシ基含有シランカップリング剤と省略することがある);γ−イソシアノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアノプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアノプロピルメチルジエトキシシラン等(以下イソシアネート基含有シランカップリング剤と省略することがある)が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0032】化合物(C)[以下特に限定しない場合、化合物(C’)も含まれる]を用いる場合には、有機化合物(A)中のアミノ基の官能基当量(X)に対して、化合物(C)中の官能基当量(Y)が、Y/Xとして0.01〜1.0となる様に使用することが推奨される。好ましくはY/Xが0.05〜0.7の範囲、より好ましくは0.05〜0.3である。Y/Xが0.01より小さいと塗膜の可撓性が不充分となりやすく、Y/Xが1.0を超えると、ガスバリア性や耐熱性が低下することがある。
【0033】本発明で用いられる溶媒(D)としては特に限定されないが、ガスバリア用組成物の構成成分を溶解する、もしくは分散させ得る溶媒が好ましい。例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、その他、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル、水等があげられ、これらの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0034】本発明の液晶表示装置にガスバリア性を付与するためのガスバリア用組成物は、以上説明した様に、有機化合物(A)と有機金属化合物(B)、溶媒(D)を必須成分とし、好ましくは化合物(C)を含むものである。有機化合物(A)が有機シラン化合物(A’)である場合、また化合物(C)が化合物(C’)である場合、有機金属化合物(B)と共に、これらはいずれも加水分解性基を有しているので、それぞれ単独で、もしくはこれらの2種以上を用いて、予め(共)加水分解縮合反応を進行させておくことが推奨される。これらの化合物を加水分解縮合によって高分子量化しておけば、ガスバリア層の成膜性が良好になり、得られる塗膜の均一性、平滑性がより一層向上するためである。
【0035】(共)加水分解縮合反応は、空気中の水分でも進行するが、前記溶媒(D)中で行うことが、これをそのままガスバリア用組成物として塗工工程に利用できるため好ましい。また反応触媒として公知の酸や塩基を添加して行っても良い。
【0036】ガスバリア用組成物の調製方法は特に限定されないが、化合物(C)を用いる場合には、有機化合物(A)のアミノ基と化合物(C)中の官能基を反応させてから、有機金属化合物(B)またはその加水分解縮合物を添加すると、組成物の安定性が良好となる。有機化合物(A)が(A’)であるか、化合物(C)が(C’)であるときは、アミノ基の架橋反応の後、有機金属化合物(B)を加える前か、加えてから加水分解縮合反応を行うと良い。
【0037】上記ガスバリア用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、硬化触媒、濡れ性改良剤、可塑剤、消泡剤、増粘剤等の無機・有機系各種添加剤を必要に応じて添加してもよい。
【0038】本発明の液晶表示装置は、以上の構成のガスバリア用組成物が塗布されたプラスチックフィルムを基板として用いるものである。プラスチックフィルムを構成する樹脂素材は、特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートやこれらの共重合体等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン、ポリイミド、ポリアリレート等の耐熱性に優れた透明の樹脂が好ましく使用できる。
【0039】ガスバリア用組成物を上記基板に塗布する方法は特に限定されず、例えばロールコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、ダイコーティング法等やこれらを組み合わせた方法を採用できる。中でも、ダイコーティング法は、ガスバリア用組成物の安定性を増す理由で好ましい。なお、ガスバリア用組成物の塗工前にウレタン樹脂等の公知のアンカーコート層を設けてもよく、また塗工後に、例えば耐溶剤性を向上させるための保護層を設けてもよい。
【0040】ガスバリア層の厚みは、乾燥後で0.1〜10μmの範囲が適している。好ましくは0.3〜5μm、さらに好ましくは0.5〜3μmである。ガスバリア層が0.1μmより薄いと基板のガスバリア性が不充分となって本発明の目的を達成できない。逆に10μmより厚いとガスバリア層にクラックが生じ、やはり優れたガスバリア性を基板に付与することができない。
【0041】本発明の液晶表示装置は、ガスバリア層を設けたプラスチック基板が液晶セルを挟持しているものであるが、以下に一例を示す。もちろん、この図例以外の使用例も存在する。
【0042】図2の液晶表示装置Lにおいて、プラスチック基板21は、両面にガスバリア層6,6、保護コート層7,7が形成されており、片面に透明電極4と配向膜3が設けられた構成となっている。一方プラスチック基板22は、その両面にアンカーコート層8,8、透明電極4,4が形成された後、片面に保護コート層7、さらにガスバリア層6が形成された構成である。両方の基板21,22によって作られる液晶セル中に液晶組成物5を封入し、補償板9と偏光板10および対向基板11で全体を挟持すれば、液晶表示装置Lとなる。
【0043】
【実施例】以下実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術範囲に包含される。なお酸素透過度は、温度25℃、湿度80%Rhの条件で、MOCON社製の酸素透過率測定装置により測定した結果である。
【0044】参考例1撹拌器、温度計、および冷却器を備えたフラスコに、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン100g、メタノール80gを仕込み、70℃に昇温した後、レゾルシノールジグリシジルエーテル11.4gを30分かけて滴下した。さらに70℃で3時間熟成してから室温まで冷却し、水2.5gとメタノール30gの混合液を加えて、室温で1時間撹拌した後熟成し加水分解反応を進行させた。次にテトラメトキシシラン84.9gとメタノール20gの混合液を加え、ガスバリア用組成物1を得た。
【0045】実施例1厚み100μmのポリアリレートフィルム2枚の両面に参考例1で得られたガスバリア用組成物1を乾燥後の厚みが3μmになる様に塗布し、100℃で3分間乾燥した。得られた処理フィルムの酸素透過度は0.5cc/m2 ・24hrs・atmであった。
【0046】次に、ポリウレタン変性アクリル樹脂を上記ガスバリア層の上に厚さ10μmとなる様に塗布し150℃で3分間乾燥させ、表面保護層とした。得られたフィルムの片面に1000Å厚のITO透明導電膜をスパッタリングによって形成させた後、透明電極のパターニングを行った。その後1000Åの可溶性ポリアミド膜を塗布して120℃で3分乾燥した後、2枚のフィルムをエポキシ接着剤で貼り合わせ、セルギャップ6μm、ツイスト角230°の液晶セルを得た。
【0047】真空封入方式で液晶組成物を封入し、プラスチック補償板および偏光板を貼り、液晶表示装置を完成させた。得られた液晶表示装置には、気泡等の発生は認められなかった。
【0048】比較例1ガスバリア用組成物1を塗布しない以外は実施例1と同様にして、液晶表示装置を作製したが、液晶封入後に気泡の発生が認められた。
【0049】参考例2参考例1のテトラメトキシシランの代わりに、テトラメトキシシランの加水分解縮合物であるシリケートM51(多摩化学製)65.9gを用いた以外は参考例1と同様にして、ガスバリア用組成物2を得た。
【0050】実施例2ガスバリア用組成物2を用いて実施例1と同様の操作を行った。得られた処理フィルムの酸素透過度は0.4cc/m2 ・24hrs・atmであり、液晶表示装置を作製したときも気泡等の発生は認められなかった。
【0051】参考例3撹拌器、温度計、および冷却器を備えたフラスコに、エポミンSP−018(日本触媒製のポリエチレンイミン)7.18g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3.25g、メタノール21.1gを仕込み、65℃で窒素雰囲気化3時間撹拌した。室温まで冷却し、水0.1gとメタノール5gの混合液を15分かけて滴下し、室温で1時間撹拌した。さらにその反応液に、テトラメトキシシラン52.0gとメタノール15.4gの混合液を加えて室温で3時間撹拌し、ガスバリア用組成物3を得た。
【0052】実施例3ガスバリア用組成物3を用いて実施例1と同様の操作を行った。得られた処理フィルムの酸素透過度は0.2cc/m2 ・24hrs・atmであり、液晶表示装置を作製したときも気泡等の発生は認められなかった。
【0053】参考例4参考例3のテトラメトキシシランの代わりに、テトラメトキシシランの加水分解縮合物であるシリケートM51(多摩化学製)40.4gを用いた以外は参考例3と同様にして、ガスバリア用組成物4を得た。
【0054】実施例4ガスバリア用組成物4を用いて実施例1と同様の操作を行った。得られた処理フィルムの酸素透過度は0.5cc/m2 ・24hrs・atmであり、液晶表示装置を作製したときも気泡等の発生は認められなかった。
【0055】参考例5γ−アミノプロピルトリメトキシシラン100g、水2.5g、メタノール110gの混合液を室温で1時間撹拌し、次にテトラメトキシシラン84.9gとメタノール20gの混合液を加え、室温で6時間撹拌し、ガスバリア用組成物5を得た。
【0056】実施例5ガスバリア用組成物5を用いて実施例1と同様の操作を行った。得られた処理フィルムの酸素透過度は1.0cc/m2 ・24hrs・atmであり、液晶表示装置を作製したときも気泡等の発生は認められなかった。
【0057】
【発明の効果】本発明の液晶表示装置は、優れたガスバリア性と可撓性を有するガスバリア層をコーティングしたプラスチック基板を用いているので、真空状態で液晶組成物を封入しても気泡等の発生がない。また本発明で用いられるガスバリア層は、耐熱性、可撓性、透明性、耐湿性等の特性にも優れているので、従来用いられていたガラス基板と比較しても遜色なく、液晶パネルの軽量化や小型化に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】液晶表示装置の概略図である。
【図2】本発明の液晶表示装置の説明図である。
【符号の説明】
1 液晶パネル
L 液晶表示装置
2 基板
21,22 プラスチック基板
3 配向膜
4 透明電極
5 液晶組成物
6 ガスバリア層
7 保護コート層
8 アンカーコート層
9 補償板
10 偏光板
11 対向基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 液晶組成物が封入された液晶セルを挟持する基板としてプラスチックフィルムを用いた液晶表示装置において、分子内に1級および/または2級アミノ基を有する有機化合物(A)、下記一般式(I)で示される有機金属化合物(B)および/またはその加水分解縮合物、R1mM(OR2n …(I)
(式中Mは金属元素、R1 は同一または異なっていてもよく、水素原子、低級アルキル基、アリール基、ビニル基または炭素鎖に直結したメルカプト基、または(メタ)アクリロイル基を表し、R2 は同一または異なっていてもよく、水素原子、低級アルキル基またはアシル基を表し、mは0または正の整数、nは1以上の整数でかつm+nは金属元素Mの原子価と一致する)および溶媒(D)を含有するガスバリア用組成物が、前記プラスチックフィルムの少なくとも片面に塗布されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】 ガスバリア用組成物が、さらに、アミノ基と反応し得る官能基を分子内に有する化合物(C)を含有する請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】 ガスバリア用組成物中の、分子内に1級および/または2級アミノ基を有する有機化合物(A)が、下記一般式(II)で示される有機シラン化合物(A’)および/またはその加水分解縮合物である請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【化1】


[式中A1 はアルキレン基、R3 は水素原子、低級アルキル基、または
【化2】


(式中A2 は直接結合またはアルキレン基を、R7,R8 は水素原子または低級アルキル基を示す)で表わされる基、R4 は水素原子または低級アルキル基、R5は同一または異なる低級アルキル基、アリール基または不飽和脂肪族残基、R6は水素原子、低級アルキル基またはアシル基を意味し(ただしR3,R4,R7,R8のうち少なくとも1つが水素原子である)、wは0、1、2のいずれか、zは1、2、3のいずれかの整数を表わす(ただしw+z=3である)]。
【請求項4】 ガスバリア用組成物中の、分子内に1級および/または2級アミノ基を有する有機化合物(A)が、Si(OR6 )基(ただしR6 の意味は上記と同じ)を持たない有機化合物(A”)である請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項5】 上記有機化合物(A”)がポリエチレンイミン類である請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】 ガスバリア用組成物中の化合物(C)が、アミノ基と反応し得る官能基としてエポキシ基を有する化合物である請求項2〜5のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項7】 ガスバリア用組成物中の化合物(C)が、さらに
【化3】


(ただしR5,R6,w,zの意味は上記と同じ)を有する化合物(C’)である請求項2〜6のいずれかに記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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