説明

液晶装置、投射型表示装置および電子機器

【課題】イオン性不純物トラップ用の周辺電極を設けた場合でも、周辺電極に印加した電位が、周囲に電気的な影響を及ぼすことを防止することができる液晶装置、当該液晶装置を備えた投射型表示装置、および電子機器を提供すること。
【解決手段】液晶装置100の素子基板10において、画像表示領域10aとシール材107とにより挟まれた周辺領域10bには、第1駆動信号(共通電位Vcom)が印加される第1周辺電極81が設けられている。これに対して、対向基板20において第1周辺電極81に対向する領域には、第1駆動信号(共通電位Vcom)を基準にしたときの極性が反転する第2駆動信号Vtrap82が印加された第2周辺電極82と、第1駆動信号(共通電位Vcom)を基準にしたときに第2駆動信号Vtrap82に対して逆極性となる第3駆動信号Vtrap83が印加された第3周辺電極83とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の基板間に液晶層が保持された液晶装置、当該液晶装置をライトバルブとして用いた投射型表示装置、および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶装置は、一方面側に複数の画素電極が配列した画像表示領域が設けられた素子基板と、共通電位が印加される共通電極が設けられた対向基板とがシール材によって貼り合わされ、素子基板と対向基板との間においてシール材で囲まれた領域内には液晶層が保持されている。かかる液晶装置において、液晶注入時に混入したイオン性不純物やシール材から溶出したイオン性不純物が、液晶装置の駆動により、画像表示領域内で凝集すると、画像の焼き付き(シミ)等といった表示品位の低下を招く。そこで、画像表示領域の外側に周辺電極を設け、かかる周辺電極にイオン性不純物を引き寄せて滞留させることにより画像表示領域内でイオン性不純物が凝集することを防止する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、特許文献1に記載の技術では、画像表示領域と水平転送回路(周辺回路部)との間、および画像表示領域と垂直転送回路(周辺回路部)との間を通って画像表示領域の周りを囲むように第1周辺電極と第2周辺電極とが設けられている。従って、第1周辺電極および第2周辺電極に異なる電位を印加するとともに、フレーム毎に第1周辺電極および第2周辺電極に印加する電位の極性を反転させると、第1周辺電極と第2周辺電極との間の横電界が発生するので、第1周辺電極および第2周辺電極にイオン性不純物を引き寄せ、そこに滞留させることがでる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−58497号公報の図4等
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、周辺電極(第1周辺電極および第2周辺電極)をシール材に沿って延在させると、周辺電極にイオン性不純物トラップ用電位を供給する給電線は、周辺回路部(水平転送回路および垂直転送回路)に設けた信号線、あるいは駆動回路部に向けて延在する信号線と交差することになる。このため、周辺電極に交流を印加した際、周辺回路部に設けた信号線、あるいは周辺回路部に向けて延在する信号線との間の容量的なカップリングが原因で、信号線を流れる信号に波形歪み等が発生し、表示品位が低下するという問題点がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、イオン性不純物トラップ用の周辺電極を設けた場合でも、周辺電極に印加した電位が、周囲に電気的な影響を及ぼすことを防止することができる液晶装置、当該液晶装置を備えた投射型表示装置、および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る液晶装置は、画像表示領域に複数の画素電極が設けられた素子基板と、共通電位が印加される共通電極が設けられた対向基板と、前記素子基板と前記対向基板とを貼り合わせるシール材と、前記素子基板と前記対向基板との間において前記シール材で囲まれた領域内に保持された液晶層と、を有し、前記素子基板の前記画像表示領域と前記シール材とに挟まれた領域には第1駆動信号が供給される第1周辺電極が設けられ、前記対向基板の前記第1周辺電極に対向する領域には、所定電位よりも高い電位と低い電位とを交互に繰り返す第2駆動信号が供給される第2周辺電極と、前記第2駆動信号に対して電位差をもって変化する第3駆動信号が供給される第3周辺電極と、が設けられていることを特徴とする。なお、本発明における「第1駆動信号」における「信号」とは、高い電位と低い電位とを交互に繰り返す形態に限らず、定電位である場合も含む意味である。
【0008】
本発明では、素子基板には、周辺領域に、第1駆動信号が印加される第1周辺電極が設けられており、対向基板において第1周辺電極に対向する領域には、所定電位よりも高い電位と低い電位とを交互に繰り返す第2駆動信号が供給される第2周辺電極と、第2駆動信号に対して電位差をもって変化する第3駆動信号が供給される第3周辺電極が設けられている。このため、第1周辺電極と第2周辺電極との間、および第1周辺電極と第3周辺電極との間には、液晶層の層厚方向の電界が生成される。また、第2周辺電極と第3周辺電極との間には横方向の電界が生成される。従って、液晶注入時に混入したイオン性不純物や、シール材から溶出したイオン性不純物が液晶層中に存在し、かかるイオン性不純物が液晶駆動に伴って画像表示領域の端部に凝集しようとした場合でも、イオン性不純物は、周辺領域において、第1周辺電極、第2周辺電極、および第3周辺電極に引き寄せられ、引き寄せられたイオン性不純物は、そこで凝集した状態のまま周辺領域に滞留する。従って、画像表示領域でイオン性不純物が凝集することを防止することができるので、イオン性不純物の凝集に起因する表示品位の低下を防止することができる。ここで、第2周辺電極および第3周辺電極は対向基板の側に設けられている。このため、素子基板側に周辺回路部が設けられている場合でも、第2周辺電極および第3周辺電極に印加されたイオン性不純物トラップ用の電位(第2駆動信号および第3駆動信号)が、周辺回路部、周辺回路部に向けて延在する信号線、周辺回路部に設けた信号線、および周辺回路部から延在する信号線に影響を及ぼすことがない等、イオン性不純物トラップ用の電位が周囲に電気的な影響を及ぼすことを防止することができる。それ故、イオン性不純物トラップ用電位に起因する表示品位の低下を防止することができる。
【0009】
本発明において、前記第1駆動信号は、例えば、前記所定電位の信号である。すなわち、第2周辺電極には、第1周辺電極に印加される第1駆動信号よりも高い電位と低い電位とを交互に繰り返す第2駆動信号が供給される。
【0010】
本発明において、前記所定電位は、前記共通電位であり、前記第2駆動信号および前記第3駆動信号は、逆相のパルス信号である構成を採用することができる。
【0011】
本発明において、前記素子基板と前記対向基板との間には、前記素子基板側から前記共通電極に前記共通電位を供給する共通電位供給用基板間導通部と、前記素子基板側から前記第2周辺電極に前記第2駆動信号を供給する第2駆動信号供給用基板間導通部と、前記素子基板側から前記第3周辺電極に前記第3駆動信号を供給する第3駆動信号供給用基板間導通部と、が設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、対向基板に直接、フレキシブル配線基板等を接続しなくても、対向基板に共通電位、第2駆動信号、および第3駆動信号を供給することができる。
【0012】
本発明において、前記共通電極は、導電性および透光性を備えた金属酸化膜であり、前記共通電位供給用基板間導通部は複数個所に設けられていることが好ましい。素子基板と対向基板との間に共通電位供給用基板間導通部、第2駆動信号供給用基板間導通部、および第3駆動信号供給用基板間導通部を設けると、その分、共通電位供給用基板間導通部の数が制限されるが、それでも、共通電位供給用基板間導通部を複数個所に確保すれば、共通電極が、比較的シート抵抗が高い金属酸化膜からなる場合でも、共通電極全体に共通電位を確実に印加することができる。
【0013】
本発明において、前記第1周辺電極、前記第2周辺電極、および前記第3周辺電極は、前記画像表示領域の4つの辺部に沿って延在していることが好ましい。本発明では、第2周辺電極および第3周辺電極が対向基板側に設けられているので、第2周辺電極および第3周辺電極を配置する位置に対する制約が少ない。従って、第1周辺電極、第2周辺電極、および第3周辺電極を画像表示領域の4つの辺部に沿って延在させることができ、その結果、イオン性不純物に対するトラップ能力を高めることができる。
【0014】
本発明において、前記第2周辺電極と前記第3周辺電極とは、前記画像表示領域の側から前記シール材の側に向けて交互に複数列設けられていることが好ましい。本発明では、第2周辺電極および第3周辺電極が対向基板側に設けられているので、第2周辺電極および第3周辺電極を配置する位置に対する制約が少ない。従って、第2周辺電極と第3周辺電極とを交互に複数列設けることができ、その結果、イオン性不純物に対するトラップ能力を高めることができる。
【0015】
本発明は、前記画素電極の前記液晶層側および前記共通電極の前記液晶層側には無機配向膜が設けられ、前記液晶層には、誘電異方性が負のネマチック液晶化合物が用いられている場合に適用すると効果的である。無機配向膜は、イオン性不純物を吸着しやすい傾向にあるが、本発明によれば、無機配向膜を用いた場合でも、画像表示領域内でイオン性不純物が凝集することを確実に防止することができる。また、液晶層に、誘電異方性が負のネマチック液晶化合物が用いられている場合、液晶分子は、長さ方向の一箇所を中心に回転するので、イオン性不純物を特定箇所に集めやすい分、画像の劣化を発生させやすいが、本発明によれば、誘電異方性が負のネマチック液晶化合物を用いた場合でも、画像表示領域内でイオン性不純物が凝集することを確実に防止することができる。
【0016】
本発明を適用した液晶装置は、投射型表示装置に用いることができ、かかる投射型表示装置は、前記液晶装置に供給される光を出射する光源部と、前記液晶装置によって変調された光を投射する投射光学系と、を有している。
【0017】
本発明に係る投射型表示装置は、投射型表示装置以外にも各種電子機器に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した液晶装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】本発明を適用した液晶装置で採用したイオン性不純物トラップのための電気的構成を示す説明図である。
【図3】本発明を適用した液晶装置の液晶パネルの説明図である。
【図4】本発明を適用した液晶装置の画素の説明図である。
【図5】本発明を適用した液晶装置に形成されている電極等の説明図である。
【図6】本発明を適用した液晶装置の素子基板に形成されている電極等の説明図である。
【図7】本発明を適用した液晶装置の対向基板に形成されている電極等の説明図である。
【図8】本発明を適用した液晶装置の周辺領域の断面構成を模式的に示す説明図である。
【図9】本発明を適用した液晶装置で用いられる別のイオン性不純物トラップ用の電位の説明図である。
【図10】本発明を適用した液晶装置を用いた投射型表示装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。なお、電界効果型トランジスターを流れる電流の方向が反転する場合、ソースとドレインとが入れ替わるが、以下の説明では、便宜上、画素電極が接続されている側をドレインとし、データ線が接続されている側をソースとして説明する。また、素子基板に形成される層を説明する際、上層側あるいは表面側とは素子基板の基板本体が位置する側とは反対側(対向基板が位置する側)を意味し、下層側とは素子基板の基板本体が位置する側(対向基板が位置する側とは反対側)を意味する。
【0020】
[全体構成]
(画像表示領域等の電気的構成)
図1は、本発明を適用した液晶装置の電気的構成を示すブロック図である。なお、図1は、あくまで電気的な構成を示すブロック図であり、配線や電極の形状や延在方向、レイアウト等を示しているものではない。
【0021】
図1において、液晶装置100は、TN(Twisted Nematic)モードやVA(Vertical Alignment)モードの液晶パネル100pを有しており、液晶パネル100pは、その中央領域に複数の画素100aがマトリクス状に配列された画像表示領域10aを備えている。液晶パネル100pにおいて、後述する素子基板10(図2および図3等を参照)では、画像表示領域10aの内側で複数本のデータ線6aおよび複数本の走査線3aが縦横に延びており、それらの交差に対応する位置に画素100aが構成されている。複数の画素100aの各々には、電界効果型トランジスターからなる画素トランジスター30、および後述する画素電極9aが形成されている。画素トランジスター30のソースにはデータ線6aが電気的に接続され、画素トランジスター30のゲートには走査線3aが電気的に接続され、画素トランジスター30のドレインには、画素電極9aが電気的に接続されている。
【0022】
素子基板10において、画像表示領域10aより外周側には、走査線駆動回路部104、データ線駆動回路部101および各種配線を備えた周辺回路部106が設けられている。データ線駆動回路部101では、画像表示領域10a側に位置する内側端部から画像表示領域10aに向けて複数のデータ線6aが延在しており、データ線駆動回路部101はデータ信号を各データ線6aに順次供給する。走査線駆動回路部104では、画像表示領域10a側に位置する内側端部から画像表示領域10aに向けて複数の走査線3aが延在しており、走査線駆動回路部104は走査信号を各走査線3aに順次供給する。
【0023】
各画素100aにおいて、画素電極9aは、後述する対向基板20(図2および図3等を参照)に形成された共通電極と液晶層を介して対向し、液晶容量50aを構成している。また、各画素100aには、液晶容量50aで保持される画像信号の変動を防ぐために、液晶容量50aと並列に蓄積容量55が付加されている。本形態では、蓄積容量55を構成するために、複数の画素100aに跨って走査線3aと並行して延びた容量線5bが形成されている。
【0024】
かかる液晶装置100において、素子基板10には、共通電位Vcomが印加された共通電位線5cや、共通電位Vcomとは異なるイオン性不純物トラップ用の電位Vtrap(イオン性不純物トラップ用の第2駆動信号Vtrap82および第3駆動信号Vtrap83)を供給するトラップ用給電線5s(トラップ用給電線5s82、5s83)が設けられている。容量線5bは共通電位線5cに電気的に接続され、後述する周辺電極は、トラップ用給電線5sに電気的に接続されている。
【0025】
(イオン性不純物トラップのための電気的構成)
図2は、本発明を適用した液晶装置100で採用したイオン性不純物トラップのための電気的構成を示す説明図であり、図2(a)、(b)、(c)、(d)は、液晶装置100の断面構成を模式的に示す説明図、素子基板の電気的構成を示す説明図、対向基板の電気的構成を示す説明図、およびイオン性不純物トラップ用の電位Vtrap等の説明図である。
【0026】
図2(a)に示すように、本形態の液晶装置100は、素子基板10と対向基板20とシール材107で貼り合わされており、素子基板10と対向基板20との間においてシール材107で囲まれた領域内に液晶層50が保持されている。図2(a)、(b)に示すように、素子基板10の一方面10s側において、画像表示領域10aには複数の画素電極9aが設けられ、画像表示領域10aより外側の領域には、周辺回路部106(データ線駆動回路部101および走査線駆動回路部104)が設けられている。ここで、画像表示領域10aとシール材107とに挟まれた周辺領域10bには、第1駆動信号が印加された第1周辺電極81が設けられている。
【0027】
図2(a)、(c)に示すように、対向基板20の一方面20s側には、画像表示領域10aの全体にわたって、共通電位Vcomが印加された共通電極21が形成されている。また、対向基板20において、第1周辺電極81に対向する領域には、所定電位よりも高い電位と低い電位とを交互に繰り返す不純物イオントラップ用の第2駆動信号Vtrap82が印加された第2周辺電極82と、第2駆動信号Vtrap82に対して電位差をもって変化する不純物イオントラップ用の第3駆動信号Vtrap83が印加された第3周辺電極83とが並列して設けられている。本形態において、第1周辺電極81に印加される第1駆動信号は、前記の所定電位であり、第2駆動信号Vtrap82は、第1周辺電極81に印加される第1駆動信号よりも高い電位と低い電位とを交互に繰り返す。
【0028】
より具体的には、図2(d)に示すように、本形態において、第1周辺電極81に印加される第1駆動信号は、共通電位Vcomであり、0Vである。第2駆動信号Vtrap82および第3駆動信号Vtrap83は逆相の交流信号であり、共通電位Vcomを基準にしたときに極性が反転する矩形パルス信号である。例えば、第2駆動信号Vtrap82および第3駆動信号Vtrap83は、+5Vと−5Vとの間で変化するパルス信号である。
【0029】
再び図2(b)、(c)において、本形態では、第1周辺電極81、第2周辺電極82、および第3周辺電極83は各々、画像表示領域10aの4つの辺部に沿って延在している。ここで、第1周辺電極81は幅広の1本の帯状電極からなるのに対して、第2周辺電極82、および第3周辺電極83は、画像表示領域10aの側からシール材107の側に向けて交互に複数列設けられている。本形態において、第2周辺電極82、および第3周辺電極83は、画像表示領域10aの側からシール材107の側に向けて交互に2列ずつ設けられている。但し、2列の第2周辺電極82のうち、内側の第2周辺電極82は、第3周辺電極83の途切れ部分等を通って、外側の第2周辺電極82と導通している。また、2列の第3周辺電極83のうち、内側の第3周辺電極83は、第2周辺電極82の途切れ部分等を通って、外側の第3周辺電極83と導通している。また、周辺領域10bでは、最も外周側に第3周辺電極83が位置しているので、第3周辺電極83は、シール材107より外側の領域までそのまま延在している。これに対して、周辺領域10bでは、第2周辺電極82より外周側に第3周辺電極83が位置しているが、第2周辺電極82は、第3周辺電極83の途切れ部分を通ってシール材107より外側の領域まで延在している。
【0030】
ここで、素子基板10と対向基板20との間には、シール材107より外側の領域に、素子基板10側から共通電極21に共通電位Vcomを供給する共通電位供給用基板間導通部109aと、素子基板10側から第2周辺電極82に第2駆動信号Vtrap82を供給する第2駆動信号供給用基板間導通部109bと、素子基板10側から第3周辺電極83に第3駆動信号Vtrap83を供給する第3駆動信号供給用基板間導通部109cとが設けられている。従って、対向基板20に直接、フレキシブル配線基板等を接続しなくても、対向基板20に共通電位Vcom、第2駆動信号Vtrap82、および第3駆動信号Vtrap83を供給することができる。
【0031】
本形態では、共通電位供給用基板間導通部109aを構成するにあたって、素子基板10では、共通電位Vcomを供給する給電端子102aから共通電位線5cが延在しており、共通電位線5cは、基板間導通電極21sに導通している。対向基板20では、基板間導通電極21sと重なる位置に、共通電極21に電気的に接続する基板間導通電極21tが設けられており、基板間導通電極21sと基板間導通電極21tとは、導電粒子を含む基板間導通材109を介して導通している。
【0032】
第2駆動信号供給用基板間導通部109bを構成するにあたって、素子基板10では、第2駆動信号Vtrap82を供給する給電端子102bからトラップ用給電線5s(トラップ用給電線5s82)が延在しており、トラップ用給電線5s82は、基板間導通電極82sに導通している。対向基板20では、基板間導通電極82sと重なる位置に、第2周辺電極82に電気的に接続する基板間導通電極82tが設けられており、基板間導通電極82sと基板間導通電極82tとは、導電粒子を含む基板間導通材109を介して導通している。
【0033】
第3駆動信号供給用基板間導通部109cを構成するにあたって、素子基板10では、第3駆動信号Vtrap83を供給する給電端子102cからトラップ用給電線5s(トラップ用給電線5s83)が延在しており、トラップ用給電線5s83は、基板間導通電極83sに導通している。対向基板20では、基板間導通電極83sと重なる位置に、第3周辺電極83に電気的に接続する基板間導通電極83tが設けられており、基板間導通電極83sと基板間導通電極83tとは、導電粒子を含む基板間導通材109を介して導通している。
【0034】
ここで、共通電極21は、導電性および透光性を備えた金属酸化膜であり、シート抵抗が比較的大である。また、共通電極21は、画像表示領域10aの全体にわたって形成されており、共通電位供給用基板間導通部109aから大きく離間した位置にまで形成されている。そこで、本形態では、第2駆動信号供給用基板間導通部109bおよび第3駆動信号供給用基板間導通部109cについては1個所ずつ設けられているのに対して、共通電位供給用基板間導通部109aは2個所、設けられている。従って、共通電極21全体に共通電位Vcomを確実に印加することができる。
【0035】
(イオン性不純物トラップ等に対する主な効果)
このように本形態の液晶装置100の素子基板10では、周辺領域10bに、第1駆動信号(共通電位Vcom)が印加される第1周辺電極81が設けられている。これに対して、対向基板20において第1周辺電極81に対向する領域には、第2駆動信号Vtrap82が印加された第2周辺電極82と、第2駆動信号Vtrap82に対して電位差をもって変化する第3駆動信号Vtrap83が印加された第3周辺電極83とが設けられている。このため、第1周辺電極81と第2周辺電極82との間、および第1周辺電極81と第3周辺電極83との間には、液晶層50の層厚方向の電界が生成される。また、第2周辺電極82と第3周辺電極83との間には横方向の電界が生成される。従って、液晶注入時に混入したイオン性不純物や、シール材から溶出したイオン性不純物が液晶層50中に存在し、かかるイオン性不純物が液晶駆動に伴って画像表示領域10aの端部に凝集しようとした場合でも、イオン性不純物は、周辺領域10bにおいて、第1周辺電極81、第2周辺電極82、および第3周辺電極83に引き寄せられ、引き寄せられたイオン性不純物は、そこで凝集した状態のまま周辺領域10bに滞留する。従って、画像表示領域10aでイオン性不純物が凝集することを防止することができるので、イオン性不純物の凝集に起因する表示品位の低下を防止することができる。
【0036】
ここで、交流が印加される第2周辺電極82、および第3周辺電極83はいずれも、対向基板20の側に設けられている。このため、素子基板10側に周辺回路部106が設けられている場合でも、トラップ用給電線5sが、周辺回路部106に向けて延在する信号線、周辺回路部106に設けた信号線、および周辺回路部106から延在する信号線(データ線6aおよび走査線3a)と交差することがない。それ故、トラップ用給電線5sと信号線との間に容量的なカップリングが発生するという事態が発生しないので、周辺回路部106で用いられる信号に影響を及ぼすことがない。すなわち、本形態では、イオン性不純物トラップ用の第2駆動信号Vtrap82および第3駆動信号Vtrap83が周辺に電気的な悪影響を及ぼさないので、表示品位の低下を防止することができる等の効果を奏する。
【0037】
また、本形態では、第1周辺電極81、第2周辺電極82、および第3周辺電極83は各々、画像表示領域10aの4つの辺部に沿って延在している。また、第2周辺電極82、および第3周辺電極83は、画像表示領域10aの側からシール材107の側に向けて交互に複数列設けられている。このため、第1周辺電極81、第2周辺電極82、および第3周辺電極83の形成面積が広いので、イオン性不純物に対するトラップ能力が高い。
【0038】
[液晶装置100の具体的構成例]
(液晶パネル100pおよび素子基板10の構成)
図3は、本発明を適用した液晶装置100の液晶パネル100pの説明図であり、図3(a)、(b)は各々、本発明を適用した液晶装置100の液晶パネル100pを各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図、およびそのH−H′断面図である。
【0039】
図3(a)、(b)に示すように、液晶パネル100pでは、素子基板10と対向基板20とが所定の隙間を介してシール材107によって貼り合わされており、シール材107は対向基板20の外縁に沿うように枠状に設けられている。シール材107は、光硬化樹脂や熱硬化性樹脂等からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー、あるいはガラスビーズ等のギャップ材が配合されている。
【0040】
本形態において、シール材107には、液晶注入口として利用される途切れ部分107aが設けられており、かかる途切れ部分107aは、液晶材料を減圧注入する際の注入口として利用され、液晶材料の注入後、光硬化樹脂や熱硬化性樹脂等からなる封止材105によって封止されている。本形態では、素子基板10の4つ基板辺10d〜10gのうち、基板辺10dが位置する側に途切れ部分107aおよび封止材105が設けられている。本形態では、シール材107および封止材105として、アクリル系あるいはエポキシ系の光硬化樹脂が用いられている。
【0041】
かかる構成の液晶パネル100pにおいて、素子基板10および対向基板20はいずれも四角形であり、液晶パネル100pの略中央には、図1および図2を参照して説明した画像表示領域10aが四角形の領域として設けられている。かかる形状に対応して、シール材107も略四角形に設けられ、シール材107の内周縁と画像表示領域10aの外周縁との間には、略四角形の周辺領域10bが額縁状に設けられている。
【0042】
素子基板10の一方面10sおよび他方面10tのうち、一方面10sの側(対向基板20が位置する面側)において、画像表示領域10aより外側の領域では、素子基板10の一辺(基板辺10d)に沿ってデータ線駆動回路部101(周辺回路部106)および複数の端子102が形成されており、この一辺に隣接する他の辺(基板辺10e、10g)に沿って走査線駆動回路部104(周辺回路部106)が形成されている。従って、画像表示領域10aの4つの辺部分10a1〜10a4のうち、辺部分10a1(第1辺部分)に沿ってデータ線駆動回路部101が構成され、辺部分10a1(第1辺部分)に交差する2つの辺部分10a2、10a4(第2辺部分)に沿って走査線駆動回路部104が構成されている。また、データ線駆動回路部101に対して画像表示領域10aが位置する側とは反対側では、基板辺10dに沿って複数の端子102が設けられており、データ線駆動回路部101の外側端部と基板辺10dとの間に複数の端子102が設けられている。かかる複数の端子102からは、データ線駆動回路部101に向けて信号線106e等が延在しているとともに、走査線駆動回路部104に向けて信号線106f等が延在している。
【0043】
また、詳しくは後述するが、素子基板10の一方面10sにおいて、画像表示領域10aには、図1を参照して説明した画素トランジスター30、および画素トランジスター30に電気的に接続する矩形の画素電極9aがマトリクス状に形成されており、かかる画素電極9aの上層側には、後述する配向膜16が形成されている。
【0044】
また、図3(b)に示すように、素子基板10の一方面10sにおいて、周辺領域10bには、画素電極9aと同時形成されたダミー画素電極9bが形成されている。従って、配向膜16は、画素電極9aおよびダミー画素電極9bの上層側に形成されている。ダミー画素電極9bについては、電位が印加された構成、あるいは電位が印加されていないフロート状態にある構成が採用される。
【0045】
対向基板20の一方面20sおよび他方面20tのうち、素子基板10と対向する一方面20sには共通電極21が形成されており、共通電極21の上層には、後述する配向膜26が形成されている。共通電極21は、対向基板20の画像表示領域10aに相当する領域の全面に形成されており、複数の画素100aに跨って形成されている。また、対向基板20の一方面20sには、共通電極21の下層側に遮光層29が形成されている。本形態において、遮光層29は、画像表示領域10aの外周縁に沿って延在する額縁状に形成されている。ここで、遮光層29の外周縁は、シール材107の内周縁との間に隙間を隔てた位置にあり、遮光層29とシール材107とは重なっていない。なお、対向基板20において、遮光層29は、隣り合う画素電極9aにより挟まれた領域と重なる領域等にブラックマトリクス部として形成されることがある。本形態において、遮光層29は、金属、金属化合物、金属シリサイド等の導電性の遮光膜によって構成されており、後述するように、対向基板20において中継電極等として利用されている。
【0046】
このように構成した液晶パネル100pにおいて、素子基板10には、シール材107より外側において対向基板20の角部分と重なる領域に、素子基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通部が4個所に形成されており、対向基板20の4つの角部分のうち、素子基板10の端子102から離間した位置に配置された2つの基板間導通部が、図2を参照して説明した共通電位供給用基板間導通部109aである。また、対向基板20の4つの角部分のうち、素子基板10の端子102から近い位置に配置された2つの基板間導通部が、図2を参照して説明した第2駆動信号供給用基板間導通部109bおよび第3駆動信号供給用基板間導通部109cである。なお、シール材107は、略同一の幅寸法をもって対向基板20の外周縁に沿って設けられている。このため、シール材107は、略四角形である。但し、シール材107は、対向基板20の角部分と重なる領域では共通電位供給用基板間導通部109a、第2駆動信号供給用基板間導通部109bおよび第3駆動信号供給用基板間導通部109cを避けて内側を通るように設けられており、シール材107の角部分は略円弧状である。
【0047】
かかる構成の液晶装置100において、画素電極9aおよび共通電極21をITO(Indium Tin Oxide)膜やIZO(Indium Zinc Oxide)膜等の透光性導電膜により形成すると、透過型の液晶装置を構成することができる。これに対して、画素電極9aおよび共通電極21の一方を透光性導電膜により形成し、他方をアルミニウム膜等の反射性導電膜により形成すると、反射型の液晶装置を構成することができる。液晶装置100が反射型である場合、素子基板10および対向基板20のうち、一方側の基板から入射した光が他方側の基板で反射して出射される間に変調されて画像を表示する。液晶装置100が透過型である場合、素子基板10および対向基板20のうち、一方側の基板から入射した光が他方側の基板を透過して出射される間に変調されて画像を表示する。
【0048】
液晶装置100は、モバイルコンピューター、携帯電話機等といった電子機器のカラー表示装置として用いることができ、この場合、対向基板20には、カラーフィルター(図示せず)や保護膜が形成される。また、液晶装置100では、使用する液晶層50の種類や、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板等が液晶パネル100pに対して所定の向きに配置される。さらに、液晶装置100は、後述する投射型表示装置(液晶プロジェクター)において、RGB用のライトバルブとして用いることができる。この場合、RGB用の各液晶装置100の各々には、RGB色分解用のダイクロイックミラーを介して分解された各色の光が投射光として各々入射されることになるので、カラーフィルターは形成されない。
【0049】
本形態において、液晶装置100が、後述する投射型表示装置においてRGB用のライトバルブとして用いられる透過型の液晶装置であって、対向基板20から入射した光が素子基板10を透過して出射される場合を中心に説明する。また、本形態において、液晶装置100は、液晶層50として、誘電異方性(誘電率異方性)が負のネマチック液晶化合物を用いたVAモードの液晶パネル100pを備えている場合を中心に説明する。
【0050】
(画素の具体的構成)
図4は、本発明を適用した液晶装置100の画素の説明図であり、図4(a)、(b)は各々、本発明を適用した液晶装置100に用いた素子基板10において隣り合う画素の平面図、および図4(a)のF−F′線に相当する位置で液晶装置100を切断したときの断面図である。なお、図4(a)では、半導体層1aは細くて短い点線で示し、走査線3aは太い実線で示し、データ線6aおよびそれと同時形成された薄膜は一点鎖線で示し、容量線5bは二点鎖線で示し、画素電極9aは太くて長い点線で示し、ドレイン電極4aは細い実線で示してある。なお、走査線3aや容量線5b等と重なる領域には遮光層7aが形成されているが、図4(a)では遮光層7aの図示を省略してある。
【0051】
図4(a)に示すように、素子基板10の一方面10s側には、複数の画素100aの各々に四角形の画素電極9aが形成されており、各画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6aおよび走査線3aが形成されている。データ線6aおよび走査線3aは各々、直線的に延びており、データ線6aと走査線3aとの交差に対応して画素トランジスター30が形成されている。素子基板10上には、走査線3aと重なるように容量線5bが形成されている。本形態において、容量線5bは、走査線3aと重なるように直線的に延びた主線部分と、データ線6aと走査線3aとの交差部分でデータ線6aに重なるように延びた副線部分とを備えている。
【0052】
図4(a)、(b)に示すように、素子基板10は、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体10wの一方面10s側に形成された画素電極9a、画素スイッチング用の画素トランジスター30、および配向膜16を主体として構成されている。対向基板20は、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体20wの一方面側に形成された共通電極21、および配向膜26を主体として構成されている。
【0053】
素子基板10において、基板本体10wの一方面10s側には、金属シリサイド膜あるいは金属膜からなる遮光層7aが形成されており、かかる遮光層7aの表面側には下地絶縁膜12が形成されている。また、複数の画素100aの各々には、半導体層1aを備えた画素トランジスター30が形成されている。半導体層1aは、走査線3aの一部からなるゲート電極3cに対してゲート絶縁層2を介して対向するチャネル領域1gと、ソース領域1bと、ドレイン領域1cとを備えており、ソース領域1bおよびドレイン領域1cは各々、低濃度領域および高濃度領域を備えている。半導体層1aは、例えば、下地絶縁膜12の表面に形成された多結晶シリコン膜等によって構成され、ゲート絶縁層2は、CVD法等により形成されたシリコン酸化膜やシリコン窒化膜からなる。また、ゲート絶縁層2は、半導体層1aを熱酸化してなるシリコン酸化膜と、CVD法等により形成されたシリコン酸化膜やシリコン窒化膜との2層構造を有する場合もある。走査線3aには、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、あるいは金属膜が用いられる。なお、本形態では、液晶装置100を透過した後の光が他の部材で反射した際、かかる反射光が半導体層1aに入射して画素トランジスター30で光電流に起因する誤動作が発生することを防止することを目的に画素トランジスター30と重なる領域に遮光層7aが設けられている。但し、遮光層7aを走査線として形成し、ゲート電極3cと遮光層7aとをコンタクトホールを介して電気的に接続した構造を採用してもよい。
【0054】
走査線3aの上層側にはシリコン酸化膜等からなる第1層間絶縁膜41が形成されており、第1層間絶縁膜41の上層にはドレイン電極4aが形成されている。ドレイン電極4aは、走査線3aとデータ線6aとの交差する位置を基点として走査線3aおよびデータ線6aに沿って延出する略L字型に形成されている。ドレイン電極4aは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、あるいは金属膜等からなり、コンタクトホール41aを介してドレイン領域1cに電気的に接続されている。
【0055】
ドレイン電極4aの上層側には、シリコン窒化膜やシリコン酸化膜等からなる誘電体層42が形成されている。誘電体層42の上層側には、誘電体層42を介してドレイン電極4aと対向するように容量線5bが形成され、かかる容量線5b、誘電体層42およびドレイン電極4aによって、蓄積容量55が形成されている。容量線5bは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、あるいは金属膜等からなる。
【0056】
容量線5bの上層側には、シリコン酸化膜等からなる第2層間絶縁膜43が形成され、第2層間絶縁膜43の上層にはデータ線6aおよび中継電極6bが形成されている。データ線6aはコンタクトホール43aを介してソース領域1bに電気的に接続している。中継電極6bはコンタクトホール43bを介してドレイン電極4aに電気的に接続し、ドレイン電極4aを介してドレイン領域1cに電気的に接続している。データ線6aおよび中継電極6bは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、あるいは金属膜等からなる。
【0057】
データ線6aおよび中継電極6bの上層側には、シリコン酸化膜等からなる第3層間絶縁膜44が形成されている。第3層間絶縁膜44には、中継電極6bへ通じるコンタクトホール44aが形成されている。第3層間絶縁膜44の上層には、ITO膜等の透光性導電膜からなる画素電極9aが形成されており、画素電極9aは、コンタクトホール44aを介して中継電極6bに電気的に接続されている。本形態において、第3層間絶縁膜44の表面は平坦面になっている。
【0058】
ここで、第3層間絶縁膜44の表面には、図3(b)を参照して説明したダミー画素電極9b(図4には図示せず)が形成されており、かかるダミー画素電極9bは、画素電極9aと同時形成された透光性導電膜からなる。
【0059】
画素電極9aの表面には配向膜16が形成されている。配向膜16は、ポリイミド等の樹脂膜、あるいはシリコン酸化膜等の斜方蒸着膜からなる。本形態において、配向膜16は、SiOX(x<2)、SiO2、TiO2、MgO、Al23、In23、Sb23、Ta25等の斜方蒸着膜からなる無機配向膜(垂直配向膜)であり、配向膜16と画素電極9aとの層間にはシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の表面絶縁膜17が形成されている。
【0060】
表面絶縁膜17は、表面が平坦面になっており、画素電極9aの間に形成された凹部を埋めている。従って、配向膜16は、表面絶縁膜17の平坦な表面に形成されている。かかる構成は、画素電極9aの表面側に表面絶縁膜17を形成した後、表面絶縁膜17の表面を研磨することによって実現することができる。かかる研磨には化学機械研磨を利用でき、化学機械研磨では、研磨液に含まれる化学成分の作用と、研磨剤と素子基板10との相対移動によって、高速で平滑な研磨面を得ることができる。より具体的には、研磨装置において、不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂等からなる研磨布(パッド)を貼り付けた定盤と、素子基板10を保持するホルダーとを相対回転させながら、研磨を行なう。その際、例えば、平均粒径が0.01〜20μmの酸化セリウム粒子、分散剤としてのアクリル酸エステル誘導体、および水を含む研磨剤を研磨布と素子基板10との間に供給する。その際、画像表示領域10aと周辺領域10bとの間に大きな高低差が存在すると、研磨工程を行っても、画像表示領域10a内を平坦面とすることが困難であるが、本形態では、図3(b)を参照して説明したように、周辺領域10bにダミー画素電極9bが形成されている。従って、表面絶縁膜17を成膜した時点で画像表示領域10aと周辺領域10bとの間に大きな高低差が存在しないので、研磨工程を行うことにより、画像表示領域10a内において表面絶縁膜17の表面を平坦面とすることができる。
【0061】
対向基板20では、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体20wの一方面側に共通電極21が形成されており、かかる共通電極21を覆うように配向膜26が形成されている。本形態では、遮光層29と共通電極21との層間にシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の絶縁膜27が形成されている。
【0062】
本形態において、共通電極21は、対向基板20の一方面20sのうち、画像表示領域10aよりわずかに広めに形成されており、周辺領域10bのうち、外周側領域には形成されていない。配向膜26は、配向膜16と同様、ポリイミド等の樹脂膜、あるいはシリコン酸化膜等の斜方蒸着膜からなる。本形態において、配向膜26は、SiOX(x<2)、SiO2、TiO2、MgO、Al23、In23、Sb23、Ta25等の斜方蒸着膜からなる無機配向膜(垂直配向膜)である。かかる配向膜16、26は、液晶層50に用いた誘電異方性が負のネマチック液晶化合物を垂直配向させ、液晶パネル100pは、ノーマリブラックのVAモードとして動作する。
【0063】
(周辺領域10bの詳細構成)
図5は、本発明を適用した液晶装置100に形成されている電極等の説明図である。図6は、本発明を適用した液晶装置100の素子基板10に形成されている電極等の説明図であり、図6(a)、(b)は、素子基板10全体に形成されている電極等の説明図、およびダミー画素電極9bの説明図である。図7は、本発明を適用した液晶装置100の対向基板20に形成されている電極等の説明図である。図8は、本発明を適用した液晶装置100の周辺領域10bの断面構成を模式的に示す説明図である。なお、図5〜図7においては画素電極9aの数等について少なく示してある。
【0064】
図5および図6に示すように、素子基板10の一方面10s側において、画像表示領域10aには複数の画素電極9aが設けられ、画像表示領域10aより外側の領域には、周辺回路部106(データ線駆動回路部101および走査線駆動回路部104)が設けられている。ここで、画像表示領域10aとシール材107とに挟まれた周辺領域10bには、第1駆動信号が印加された第1周辺電極81が設けられている。
【0065】
かかる第1周辺電極81を構成するにあたって、本形態では、図6(b)に示すダミー画素電極9bが利用されている。より具体的には、図8に示すように、周辺領域10bには、第3層間絶縁膜44の表面にダミー画素電極9bが形成されており、かかるダミー画素電極9bは、周辺領域10bにおいて、周辺回路部106の空き領域等を利用して、共通電位線(図示せず)に電気的に接続されている。かかるダミー画素電極9bと共通電位線との電気的な接続には、第3層間絶縁膜44等に形成したコンタクトホール等(図示せず)が利用される。ここで、ダミー画素電極9bは、図6(b)に示すように、画素電極9aと同一形状および同一サイズをもって画素電極9aと同一ピッチで形成されている。また、複数のダミー画素電極9bのうち、隣り合うダミー画素電極9b同士は、ダミー画素電極9bより幅が狭い連結部9uを介して繋がっている。従って、一部のダミー画素電極9bに共通電位Vcomを印加すれば、全てのダミー画素電極9bに共通電位Vcomが印加されることになる。従って、ダミー画素電極9bを利用すれば、画像表示領域10aの4つの辺部分10a1〜10a4およびシール材107に沿って延在する第1周辺電極81を構成することができる。また、ダミー画素電極9bに共通電位Vcomを印加すれば、画像表示領域10aの外周側端部での液晶分子の配向の乱れを防止することができる。
【0066】
また、素子基板10には、シール材107より外側において対向基板20の角部分と重なる4つの領域のうち、素子基板10の端子102から離間した2個所に基板間導通電極21sが形成されている。また、端子102のうち、両端において端から2番目に設けられた2つの給電端子102aからは共通電位線5cが各々、延在しており、2本の共通電位線5cは各々、基板間導通電極21sに導通している。本形態において、給電端子102aには、共通電位Vcomが供給される。
【0067】
また、素子基板10には、端子102から近い位置で対向基板20の角部分と重なる領域には、基板間導通電極82s、83sが形成されている。また、複数の端子102のうち、一方の端部に設けられたる給電端子102bからは、トラップ用給電線5s82が延在しており、トラップ用給電線5s82は基板間導通電極82sに導通している。また、複数の端子102のうち、他方の端部に設けられたる給電端子102cからは、トラップ用給電線5s83が延在しており、トラップ用給電線5s83は基板間導通電極83sに導通している。本形態において、給電端子102bには、イオン性不純物トラップ用の第2駆動信号Vtrap82が供給され、給電端子102cには、イオン性不純物トラップ用の第3駆動信号Vtrap83が供給される。
【0068】
図5および図7に示すように、対向基板20の一方面20s側には、画像表示領域10aの全体にわたって、共通電位Vcomが印加された共通電極21が形成されている。また、周辺領域10bにおいて、第1周辺電極81に対向する領域には、不純物イオントラップ用の第2駆動信号Vtrap82が印加された第2周辺電極82と、不純物イオントラップ用の第3駆動信号Vtrap83が印加された第3周辺電極83とが並列して設けられている。本形態においては、図2(d)を参照して説明したように、第1周辺電極81に印加される第1駆動信号(共通電位Vcom)は0Vの定電位であり、第2駆動信号Vtrap82および第3駆動信号Vtrap83は、逆相の交流信号である。本形態では、第2駆動信号Vtrap82および第3駆動信号Vtrap83に印加される逆相の交流信号として、逆相の矩形パルス信号が用いられている。
【0069】
ここで、第2周辺電極82および第3周辺電極83は、画像表示領域10aの側からシール材107の側に向けて交互に複数列設けられている。より具体的には、第2周辺電極82、および第3周辺電極83は、画像表示領域10aの側からシール材107の側に向けて交互に2列ずつ設けられている。但し、2列の第2周辺電極82のうち、内側の第2周辺電極82は、第3周辺電極83の途切れ部分等を通って、外側の第2周辺電極82と導通している。また、2列の第3周辺電極83のうち、内側の第3周辺電極83は、第2周辺電極82の途切れ部分等を通って、外側の第3周辺電極83と導通している。また、周辺領域10bでは、最も外周側に第3周辺電極83が位置しているので、第3周辺電極83は、シール材107より外側の領域までそのまま延在している。これに対して、周辺領域10bでは、第2周辺電極82より外周側に第3周辺電極83が位置しているが、第2周辺電極82は、第3周辺電極83の途切れ部分を通ってシール材107より外側の領域まで延在している。
【0070】
また、対向基板20の角部分のうち、素子基板10の基板間導通電極82s、83sと重なる位置には基板間導通電極82t、83tが形成され、素子基板10の基板間導通電極21sと重なる位置には基板間導通電極21tが形成されている。また、第2周辺電極82は、第3周辺電極83の途切れ部分を通ってシール材107より外側の領域まで延在して基板間導通電極82tに導通している。第3周辺電極83も、第2周辺電極82と同様、シール材107より外側の領域まで延在して基板間導通電極83tに導通している。
【0071】
また、共通電極21は、周囲が第2周辺電極82および第3周辺電極83によって囲まれているが、本形態では、図8を参照して後述する構成を採用することにより、共通電極21と基板間導通電極21tとが導通している。従って、素子基板10と対向基板20とをシール材107で貼り合わせる際、素子基板10の基板間導通電極21s、82s、83sと対向基板20の基板間導通電極21t、82t、83tとの間に、導電粒子を含有する基板間導通材109を配置しておけば、基板間導通電極21s、82s、83sと基板間導通電極21t、82t、83tとが基板間導通材109を介して導通する。従って、共通電極21には、給電端子102a、共通電位線5c、および共通電位供給用基板間導通部109a(基板間導通電極21s、基板間導通材109および基板間導通電極21t)を介して素子基板10から共通電位Vcomが供給される。また、第2周辺電極82には、給電端子102b、トラップ用給電線5s82、第2駆動信号供給用基板間導通部109b(基板間導通電極82s、基板間導通材109および基板間導通電極82t)を介して素子基板10からイオン性不純物トラップ用の第2駆動信号Vtrap82が供給される。また、第3周辺電極83には、給電端子102c、トラップ用給電線5s83、第3駆動信号供給用基板間導通部109c(基板間導通電極83s、基板間導通材109および基板間導通電極83t)を介して素子基板10からイオン性不純物トラップ用の第3駆動信号Vtrap83が供給される。
【0072】
このような第2周辺電極82および第3周辺電極83を構成するにあたって、本形態では、図8に示すように、共通電極21を形成する際、第2周辺電極82および第3周辺電極83を同時形成する。従って、第2周辺電極82および第3周辺電極83は、共通電極21と同様、ITO膜等の透光性および導電性を備えた金属酸化膜からなる。
【0073】
また、本形態では、第2周辺電極82および第3周辺電極83が形成されている領域の下層側に、遮光層29と同一の導電膜からなる中継電極29aが形成されており、かかる中継電極29aは、第2周辺電極82および第3周辺電極83が形成されている領域の両端から張り出している。また、絶縁膜27には、中継電極29aの両端部と重なる位置に開口部27a、27bが形成されており、共通電極21は、中継電極29aの一方の端部と重なっている。このため、共通電極21は、開口部27aを介して中継電極29aに導通している。また、中継電極29aの他方の端部と重なる位置に共通電極21と同時形成された中継電極21aが形成されており、かかる中継電極21aの端部によって基板間導通電極21tが構成されている。従って、共通電極21は、周囲が第2周辺電極82および第3周辺電極83によって囲まれているが、中継電極29aを利用したブリッジ構造を利用すれば、共通電極21と共通電位供給用の基板間導通電極21tとを導通させることができる。
【0074】
(本形態の主な効果)
このように本形態の液晶装置100の素子基板10では、周辺領域10bに、第1駆動信号(共通電位Vcom)が印加される第1周辺電極81が設けられている。これに対して、対向基板20において第1周辺電極81に対向する領域には、第2駆動信号Vtrap82が印加された第2周辺電極82と、第3駆動信号Vtrap83が印加された第3周辺電極83とが設けられている。このため、第1周辺電極81と第2周辺電極82との間、および第1周辺電極81と第3周辺電極83との間には、液晶層50の層厚方向の電界が生成される。また、第2周辺電極82と第3周辺電極83との間には横方向の電界が生成される。従って、液晶注入時に混入したイオン性不純物、シール材から溶出したイオン性不純物、あるいは封止材105から溶出したイオン性不純物が液晶層50中に存在し、かかるイオン性不純物が液晶駆動に伴って画像表示領域10aの端部に凝集しようとした場合でも、イオン性不純物は、周辺領域10bにおいて、第1周辺電極81、第2周辺電極82、および第3周辺電極83に引き寄せられ、引き寄せられたイオン性不純物は、そこで凝集した状態のまま周辺領域10bに滞留する。従って、画像表示領域10aでイオン性不純物が凝集することを防止することができるので、イオン性不純物の凝集に起因する表示品位の低下を防止することができる等、図2を参照して説明した効果を奏する。
【0075】
特にVAモードの液晶装置100の場合、液晶分子が垂直姿勢と水平に平伏した姿勢とに切り換わる際の流動によって、プレチルトの方位に対応する対角の角領域イオン性不純物が偏在しやすいが、本形態では、第1周辺電極81、第2周辺電極82および第3周辺電極83によって、イオン性不純物を効果的にトラップすることができる。また、配向膜16、26として無機配向膜を用いた場合、無機配向膜は、イオン性不純物を吸着しやすい傾向にあるが、本形態では、第1周辺電極81、第2周辺電極82および第3周辺電極83によって、イオン性不純物を効果的にトラップすることができる。それ故、VAモードの液晶装置100において無機配向膜を用いた場合でも、画像表示領域10aでイオン性不純物が凝集することを確実に防止することができる。よって、画像表示領域10aでイオン性不純物が凝集することを防止することができるので、イオン性不純物の凝集に起因する表示品位の低下を防止することができる。
【0076】
また、素子基板10には、画像表示領域10aの辺部分10a1と基板辺10dとの間にデータ線駆動回路部101および端子102が設けられ、画像表示領域10aの辺部分10a2、10a4に沿うように走査線駆動回路部104が設けられている。しかるに本形態では、トラップ用給電線5sは、基板間導通電極82s、83sまで延在しているだけである。従って、トラップ用給電線5sは、走査線駆動回路部104やデータ線駆動回路部101に設けた信号線や、データ線駆動回路部101や走査線駆動回路部104に向けて延在する信号線106e、106f、データ線駆動回路部101や走査線駆動回路部104から延在する信号線(データ線6aおよび走査線3a)とは交差していない。従って、トラップ用給電線5sに交流を印加した際、トラップ用給電線5sと信号線106e、106f等との間にカップリングが発生しないので、周辺回路部106で用いられる信号に影響を及ぼすことがない。それ故、イオン性不純物トラップ用の電位Vtrapに起因する表示品位の低下を防止することができる。
【0077】
(イオン性不純物トラップ用の電位Vtrapの他の形態)
図9は、本発明を適用した液晶装置100で用いられる別のイオン性不純物トラップ用の電位の説明図である。上記実施の形態では、第2駆動信号Vtrap82および第3駆動信号Vtrap83として、共通電位Vcom(第1駆動信号)を基準にしたときに極性が反転する矩形パルス信号を用いたが、図9(a)に示すように、0Vと+5Vとの間で変化する第2駆動信号Vtrap82と、−5Vと0Vとの間で変化する第3駆動信号Vtrap83とが同相で変化する構成を採用してもよい。また、図9(b)に示すように、0Vと+5Vとの間で変化する第2駆動信号Vtrap82と、0Vと+5Vとの間で変化する第3駆動信号Vtrap83とが逆相で変化する構成を採用してもよい。
【0078】
また、上記実施の形態では、第1駆動信号が定電位(共通電位Vcom)であったが、周囲に電気的な悪影響を及ぼさない低い周波数で高電位と低電位とを交互に繰り返す信号を第1駆動信号として用いてもよい。
【0079】
[他の実施の形態]
上記実施の形態において、内側の第2周辺電極82は、第3周辺電極83の途切れ部分等を通って、外側の第2周辺電極82と導通し、内側の第3周辺電極83は、第2周辺電極82の途切れ部分等を通って、外側の第3周辺電極83と導通している構成を採用したが、図8を参照して説明したブリッジ構造を採用して導通を図ってもよい。また、上記実施の形態においては、ダミー画素電極9bを利用して第1周辺電極81を構成したが、ダミー画素電極9bとは別工程で形成した導電膜によって第1周辺電極81を構成してもよい。
【0080】
上記実施の形態では、透過型の液晶装置100に本発明を適用したが、反射型の液晶装置100に本発明を適用してもよい。
【0081】
[電子機器への搭載例]
上述した実施形態に係る液晶装置100を適用した電子機器について説明する。図10は、本発明を適用した液晶装置100を用いた投射型表示装置の概略構成図であり、図10(a)、(b)は各々、透過型の液晶装置100を用いた投射型表示装置の説明図、および反射型の液晶装置100を用いた投射型表示装置の説明図である。
【0082】
(投射型表示装置の第1例)
図10(a)に示す投射型表示装置110は、観察者側に設けられたスクリーン111に光を照射し、このスクリーン111で反射した光を観察する、いわゆる投影型の投射型表示装置である。投射型表示装置110は、光源112を備えた光源部130と、ダイクロイックミラー113、114と、液晶ライトバルブ115〜117(液晶装置100)と、投射光学系118と、クロスダイクロイックプリズム119と、リレー系120とを備えている。
【0083】
光源112は、赤色光、緑色光及び青色光を含む光を供給する超高圧水銀ランプで構成されている。ダイクロイックミラー113は、光源112からの赤色光を透過させると共に緑色光及び青色光を反射する構成となっている。また、ダイクロイックミラー114は、ダイクロイックミラー113で反射された緑色光及び青色光のうち青色光を透過させると共に緑色光を反射する構成となっている。このように、ダイクロイックミラー113、114は、光源112から出射した光を赤色光と緑色光と青色光とに分離する色分離光学系を構成する。
【0084】
ここで、ダイクロイックミラー113と光源112との間には、インテグレーター121及び偏光変換素子122が光源112から順に配置されている。インテグレーター121は、光源112から照射された光の照度分布を均一化する構成となっている。また、偏光変換素子122は、光源112からの光を例えばs偏光のような特定の振動方向を有する偏光にする構成となっている。
【0085】
液晶ライトバルブ115は、ダイクロイックミラー113を透過して反射ミラー123で反射した赤色光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置100である。液晶ライトバルブ115は、λ/2位相差板115a、第1偏光板115b、液晶パネル115c及び第2偏光板115dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ115に入射する赤色光は、ダイクロイックミラー113を透過しても光の偏光は変化しないことから、s偏光のままである。
【0086】
λ/2位相差板115aは、液晶ライトバルブ115に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。また、第1偏光板115bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。そして、液晶パネル115cは、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。さらに、第2偏光板115dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ115は、画像信号に応じて赤色光を変調し、変調した赤色光をクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する構成となっている。
【0087】
なお、λ/2位相差板115a及び第1偏光板115bは、偏光を変換させない透光性のガラス板115eに接した状態で配置されており、λ/2位相差板115a及び第1偏光板115bが発熱によって歪むのを回避することができる。
【0088】
液晶ライトバルブ116は、ダイクロイックミラー113で反射した後にダイクロイックミラー114で反射した緑色光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置100である。そして、液晶ライトバルブ116は、液晶ライトバルブ115と同様に、第1偏光板116b、液晶パネル116c及び第2偏光板116dを備えている。液晶ライトバルブ116に入射する緑色光は、ダイクロイックミラー113、114で反射されて入射するs偏光である。第1偏光板116bは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。また、液晶パネル116cは、s偏光を画像信号に応じた変調によってp偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。そして、第2偏光板116dは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ116は、画像信号に応じて緑色光を変調し、変調した緑色光をクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する構成となっている。
【0089】
液晶ライトバルブ117は、ダイクロイックミラー113で反射し、ダイクロイックミラー114を透過した後でリレー系120を経た青色光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置100である。そして、液晶ライトバルブ117は、液晶ライトバルブ115、116と同様に、λ/2位相差板117a、第1偏光板117b、液晶パネル117c及び第2偏光板117dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ117に入射する青色光は、ダイクロイックミラー113で反射してダイクロイックミラー114を透過した後にリレー系120の後述する2つの反射ミラー125a、125bで反射することから、s偏光となっている。
【0090】
λ/2位相差板117aは、液晶ライトバルブ117に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。また、第1偏光板117bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。そして、液晶パネル117cは、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。さらに、第2偏光板117dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ117は、画像信号に応じて青色光を変調し、変調した青色光をクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する構成となっている。なお、λ/2位相差板117a及び第1偏光板117bは、ガラス板117eに接した状態で配置されている。
【0091】
リレー系120は、リレーレンズ124a、124bと反射ミラー125a、125bとを備えている。リレーレンズ124a、124bは、青色光の光路が長いことによる光損失を防止するために設けられている。ここで、リレーレンズ124aは、ダイクロイックミラー114と反射ミラー125aとの間に配置されている。また、リレーレンズ124bは、反射ミラー125a、125bの間に配置されている。反射ミラー125aは、ダイクロイックミラー114を透過してリレーレンズ124aから出射した青色光をリレーレンズ124bに向けて反射するように配置されている。また、反射ミラー125bは、リレーレンズ124bから出射した青色光を液晶ライトバルブ117に向けて反射するように配置されている。
【0092】
クロスダイクロイックプリズム119は、2つのダイクロイック膜119a、119bをX字型に直交配置した色合成光学系である。ダイクロイック膜119aは青色光を反射して緑色光を透過する膜であり、ダイクロイック膜119bは赤色光を反射して緑色光を透過する膜である。したがって、クロスダイクロイックプリズム119は、液晶ライトバルブ115〜117のそれぞれで変調された赤色光と緑色光と青色光とを合成し、投射光学系118に向けて出射するように構成されている。
【0093】
なお、液晶ライトバルブ115、117からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はs偏光であり、液晶ライトバルブ116からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はp偏光である。このようにクロスダイクロイックプリズム119に入射する光を異なる種類の偏光としていることで、クロスダイクロイックプリズム119において各液晶ライトバルブ115〜117から入射する光を合成できる。ここで、一般に、ダイクロイック膜119a、119bはs偏光の反射トランジスター特性に優れている。このため、ダイクロイック膜119a、119bで反射される赤色光及び青色光をs偏光とし、ダイクロイック膜119a、119bを透過する緑色光をp偏光としている。投射光学系118は、投影レンズ(図示略)を有しており、クロスダイクロイックプリズム119で合成された光をスクリーン111に投射するように構成されている。
【0094】
(投射型表示装置の第2例)
図10(b)に示す投射型表示装置1000は、光源光を発生する光源部1021と、光源部1021から出射された光源光を赤、緑、青の3色に分離する色分離導光光学系1023と、色分離導光光学系1023から出射された各色の光源光によって照明される光変調部1025とを有している。また、投射型表示装置1000は、光変調部1025から出射された各色の像光を合成するクロスダイクロイックプリズム1027(合成光学系)と、クロスダイクロイックプリズム1027を経た像光をスクリーン(不図示)に投射するための投射光学系である投射光学系1029とを備えている。
【0095】
かかる投射型表示装置1000において、光源部1021は、光源1021aと、一対のフライアイ光学系1021d、1021eと、偏光変換部材1021gと、重畳レンズ1021iとを備えている。本形態においては、光源部1021は、放物面からなるリフレクタ1021fを備えており、平行光を出射する。フライアイ光学系1021d、1021eは、システム光軸と直交する面内にマトリクス状に配置された複数の要素レンズからなり、これらの要素レンズによって光源光を分割して個別に集光・発散させる。偏光変換部材1021gは、フライアイ光学系1021eから出射した光源光を、例えば図面に平行なp偏光成分のみに変換して光路下流側光学系に供給する。重畳レンズ1021iは、偏光変換部材1021gを経た光源光を全体として適宜収束させることにより、光変調部1025に設けた複数の液晶装置100を各々均一に重畳照明可能とする。
【0096】
色分離導光光学系1023は、クロスダイクロイックミラー1023aと、ダイクロイックミラー1023bと、反射ミラー1023j、1023kとを備える。色分離導光光学系1023において、光源部1021からの略白色の光源光は、クロスダイクロイックミラー1023aに入射する。クロスダイクロイックミラー1023aを構成する一方の第1ダイクロイックミラー1031aで反射された赤色(R)の光は、反射ミラー1023jで反射されダイクロイックミラー1023bを透過して、入射側偏光板1037r、p偏光を透過させ、s偏光を反射するワイヤーグリッド偏光板1032r、および光学補償板1039rを介して、p偏光のまま、赤色(R)用の液晶装置100に入射する。
【0097】
また、第1ダイクロイックミラー1031aで反射された緑色(G)の光は、反射ミラー1023jで反射され、その後、ダイクロイックミラー1023bでも反射されて、入射側偏光板1037g、p偏光を透過させ、s偏光を反射するワイヤーグリッド偏光板1032g、および光学補償板1039gを介して、p偏光のまま、緑色(G)用の液晶装置100に入射する。
【0098】
これに対して、クロスダイクロイックミラー1023aを構成する他方の第2ダイクロイックミラー1031bで反射された青色(B)の光は、反射ミラー1023kで反射されて、入射側偏光板1037b、p偏光を透過する一方でs偏光を反射するワイヤーグリッド偏光板1032b、および光学補償板1039bを介して、p偏光のまま、青色(B)用の液晶装置100に入射する。なお、光学補償板1039r、1039g、1039bは、液晶装置100への入射光および出射光の偏光状態を調整することで、液晶層の特性を光学的に補償している。
【0099】
このように構成した投射型表示装置1000では、光学補償板1039r、1039g、1039bを経て入射した3色の光は各々、各液晶装置100において変調される。その際、液晶装置100から出射された変調光のうち、s偏光の成分光は、ワイヤーグリッド偏光板1032r、1032g、1032bで反射し、出射側偏光板1038r、1038g、1038bを介してクロスダイクロイックプリズム1027に入射する。クロスダイクロイックプリズム1027には、X字状に交差する第1誘電体多層膜1027aおよび第2誘電体多層膜1027bが形成されており、一方の第1誘電体多層膜1027aはR光を反射し、他方の第2誘電体多層膜1027bはB光を反射する。従って、3色の光は、クロスダイクロイックプリズム1027において合成され、投射光学系1029に出射される。そして、投射光学系1029は、クロスダイクロイックプリズム1027で合成されたカラーの像光を、所望の倍率でスクリーン(図示せず。)投射する。
【0100】
(他の投射型表示装置)
なお、投射型表示装置については、光源部として、各色の光を出射するLED光源等を用い、かかるLED光源から出射された色光を各々、別の液晶装置に供給するように構成してもよい。
【0101】
(他の電子機器)
本発明を適用した液晶装置100については、上記の電子機器の他にも、携帯電話機、情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)、デジタルカメラ、液晶テレビ、カーナビゲーション装置、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等の電子機器において直視型表示装置として用いてもよい。
【符号の説明】
【0102】
9a・・画素電極、9b・・ダミー画素電極、10・・素子基板、10a・・画像表示領域、10b・・周辺領域、20・・対向基板、21・・共通電極、50・・液晶層、81・・第1周辺電極、82・・第2周辺電極、83・・第3周辺電極、107・・シール材、100・・液晶装置、106・・周辺回路部、110、1000・・投射型表示装置、Vcom・・共通電位、Vtrap・・イオン性不純物トラップ用の電位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示領域に複数の画素電極が設けられた素子基板と、
共通電位が印加される共通電極が設けられた対向基板と、
前記素子基板と前記対向基板とを貼り合わせるシール材と、
前記素子基板と前記対向基板との間において前記シール材で囲まれた領域内に保持された液晶層と、
を有し、
前記素子基板の前記画像表示領域と前記シール材とに挟まれた領域には第1駆動信号が供給される第1周辺電極が設けられ、
前記対向基板の前記第1周辺電極に対向する領域には、所定電位よりも高い電位と低い電位とを交互に繰り返す第2駆動信号が供給される第2周辺電極と、前記第2駆動信号に対して電位差をもって変化する第3駆動信号が供給される第3周辺電極と、が設けられていることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記第1駆動信号は、前記所定電位の信号であることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
【請求項3】
前記所定電位は、前記共通電位であり、
前記第2駆動信号および前記第3駆動信号は、逆相のパルス信号であることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記素子基板と前記対向基板との間には、前記素子基板側から前記共通電極に前記共通電位を供給する共通電位供給用基板間導通部と、前記素子基板側から前記第2周辺電極に前記第2駆動信号を供給する第2駆動信号供給用基板間導通部と、前記素子基板側から前記第3周辺電極に前記第3駆動信号を供給する第3駆動信号供給用基板間導通部と、が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の液晶装置。
【請求項5】
前記共通電極は、導電性および透光性を備えた金属酸化膜であり、
前記共通電位供給用基板間導通部は複数個所に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の液晶装置。
【請求項6】
前記第1周辺電極、前記第2周辺電極、および前記第3周辺電極は、前記画像表示領域の4つの辺部に沿って延在していることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の液晶装置。
【請求項7】
前記第2周辺電極と前記第3周辺電極とは、前記画像表示領域の側から前記シール材の側に向けて交互に複数列設けられていることを特徴とする請求項6に記載の液晶装置。
【請求項8】
前記画素電極の前記液晶層側および前記共通電極の前記液晶層側には無機配向膜が設けられ、
前記液晶層には、誘電異方性が負のネマチック液晶化合物が用いられていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の液晶装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の液晶装置を備えた投射型表示装置であって、
前記液晶装置に供給される光を出射する光源部と、
前記液晶装置によって変調された光を投射する投射光学系と、
を有していることを特徴とする投射型表示装置。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の液晶装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−220911(P2012−220911A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89827(P2011−89827)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】