説明

液晶配向剤、液晶表示素子及びこの製造方法

【課題】高速応答性等の諸特性に優れたPSA方式の液晶表示素子を形成することができる液晶配向剤、この液晶配向剤から形成された液晶配向膜を備えるPSA方式の液晶表示素子及びこのような液晶表示素子の製造方法を提供する。
【解決手段】PSA方式の液晶表示素子における液晶配向膜形成用の液晶配向剤であって、[A]下記式(1)で表される基を有する化合物(以下、「[A]化合物」ともいう。)を含有する。


(式(1)中、Rは少なくとも2個の単環構造を有する基である。Rは二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合又は酸素原子を含む連結基である。aは0〜1の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶表示素子及び液晶表示素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子は消費電力が小さいことや、小型化及びフラット化が容易であること等の利点を有しているため、携帯電話等の小型の液晶表示装置から液晶テレビ等の大画面液晶表示装置まで幅広い用途で適用されている。
【0003】
液晶表示装置の駆動モードとしては現在、液晶分子の配向(配列)状態の変化に応じ、TN(Twisted Nematic)、STN(Super Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、VA(Vertical Alignment)等が知られている。また、VAモードでは配向分割により視野角を高めるため、MVA(Multi domain Vertical Alignment)方式やPVA(Patterned Vertical Alignment)方式が採用されており、さらに高速応答性やパネル開口率を向上させるべく、PSA(Polymer Sustained Alignment;ポリマー配向支持)方式の採用が検討されている。
【0004】
このPSA方式とは、光又は熱により重合可能なモノマーを液晶に混入しておき、電圧を印加して液晶分子が傾斜した状態でモノマーを重合させることによって液晶分子の傾斜方向を記憶させる手法である(特開2002−357830号公報、特開2003−307720号公報、特開2003−177418号公報参照)。PSA方式を用いた液晶表示素子では、例えば液晶分子が基板界面に対してごく僅かに傾斜した状態で支持されているため、電圧の印加の際、液晶分子を確実にその傾斜方向に倒すことができ、その結果応答速度が速いとされている。
【0005】
このような液晶表示素子中の液晶分子の配向状態は液晶配向膜で制御されており、液晶配向膜は液晶表示素子の機能特性の発現や制御をかなりのウェイトで担っている。PSA方式においても、応答速度などの機能向上のため、この液晶配向膜の形成に用いられる液晶配向剤の組成を規定した液晶表示装置が開発されているが(特開2006−215326号公報)、応答速度などの高性能化のためには、更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−357830号公報
【特許文献2】特開2003−307720号公報
【特許文献3】特開2003−177418号公報
【特許文献4】特開2006−215326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、高速応答性等の諸特性に優れたPSA方式の液晶表示素子を形成することができる液晶配向剤、この液晶配向剤から形成された液晶配向膜を備えるPSA方式の液晶表示素子及びこのような液晶表示素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
PSA方式の液晶表示素子における液晶配向膜形成用の液晶配向剤であって、
[A]下記式(1)で表される基を有する化合物(以下、「[A]化合物」ともいう。)
を含有することを特徴とする。
【化1】

(式(1)中、Rは少なくとも2個の単環構造を有する基である。Rは二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合又は酸素原子を含む連結基である。aは0〜1の整数である。)
【0009】
当該液晶配向剤は、誘電異方性を有する上記基を備える[A]化合物を含有し、液晶分子の配向制御性に優れる。このため、当該液晶配向剤を用いて形成した液晶配向膜を備えるPSA方式の液晶表示素子は液晶分子の配向性が良好で、応答時間を短縮することができる。
【0010】
[A]化合物が、
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに由来する部分と、
下記式(2)で表される化合物(以下、「特定カルボン酸」ともいう。)に由来する部分と
を有するとよい。
【化2】

(式(2)中、R、R及びaは、上記式(1)と同義である。Rはメチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基であり、これらの基はさらに置換基を有していてもよい。)
【0011】
当該液晶配向剤によれば、エポキシ基とカルボキシル基との反応性を利用することで、[A]化合物として、主鎖としてのポリオルガノシロキサンに側鎖としての上記式(1)で表される誘電異方性を有する構造を容易に導入することができる。従って、当該液晶配向剤は、得られる液晶表示素子に効果的に高速応答性を付与することができる。
【0012】
上記Rが、下記式(3)で表される基であるとよい。
【化3】

(式(3)中、Rは水素原子、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基又はアルキルカルボニルオキシ基である。Rはベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、シクロヘキサン、ビシクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン又は複素環化合物から(b−1)個の水素原子を除いた(b−1)価の基であり、これらの基はさらに置換基を有していてもよい。Rはメチレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び複素環のいずれかを含む連結基であり、これらの基はさらに置換基を有していてもよい。Rはそれぞれ独立してフェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレン基、シクロヘキシレン基、ビシクロヘキシレン基、シクロへキシレンフェニレン基又は複素環であり、これらの基はさらに置換基を有していてもよい。bは1〜9の整数である。bが2以上の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。cは0〜1の整数である。dは1〜2の整数である。dが2の場合、複数のR、R及びcは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0013】
当該液晶配向剤の[A]化合物に上記式(3)で表される構造を導入することにより、得られる液晶表示素子の応答性をより高速化させることができる。
【0014】
上記エポキシ基が、下記式(X−1)又は(X−2)で表される基であるとよい。
【化4】

(式(X−1)中、Aは酸素原子又は単結合である。hは1〜3の整数である。iは0〜6の整数である。但し、iが0の場合、Aは単結合である。
式(X−2)中、jは0〜6の整数である。)
【0015】
上記ポリオルガノシロキサンに上記式(X−1)又は(X−2)で表される基を含ませることにより、当該液晶配向剤の[A]化合物に、上記式(1)で表される基を導入しやすくなる。
【0016】
当該液晶配向剤は、[B]ポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体(以下、「[B]重合体」ともいう。)をさらに含有するとよい。[B]重合体を含有する液晶配向剤を用いて液晶配向膜を形成すると、高速応答性がより改善された液晶表示素子を得ることができる。
【0017】
本発明の液晶表示素子は、当該液晶配向剤から形成される液晶配向膜を備えるPSA方式の液晶表示素子である。当該液晶表示素子によれば、液晶配向膜を上記液晶配向剤から形成していることで、液晶配向性が高く、優れた高速応答性を発揮することができる。
【0018】
本発明の液晶表示素子の製造方法は、
透明電極を有する一対の基板の各内面に当該液晶配向剤により液晶配向膜を形成する工程、
上記一対の基板を内面同士が向かい合うように対向配置し、この基板間に重合性液晶組成物を充填する工程、及び
電圧を印加した状態で上記重合性液晶組成物を硬化させる工程
を有するPSA方式の液晶表示素子の製造方法である。
【0019】
当該製造方法によれば、液晶配向膜を上記液晶配向剤から形成していることで、液晶配向性が高く、優れた高速応答性を有するPSA方式の液晶表示素子を製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の液晶配向剤によれば、高速応答性等の諸特性に優れたPSA方式の液晶表示素子を形成することができる。また、本発明の液晶表示素子は、PSA方式の素子として、高い応答性等を発揮することができる。本発明の製造方法によれば、高い応答性等を備えるPSA方式の液晶表示素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る液晶表示素子を示す模式的断面図である。
【図2】図1の液晶表示素子とは異なる実施形態に係る液晶表示素子を示す模式的断面図である。
【図3】実施例で製造した液晶表示素子の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の液晶配向剤、液晶表示素子及び液晶表示素子の製造方法の実施の形態を詳説する。
【0023】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、PSA方式の液晶表示素子における液晶配向膜形成用の液晶配向剤であって、[A]化合物を含有することを特徴とする。また、当該液晶配向剤は、[B]重合体等の後述する「他の重合体」を含有できる。さらに、当該液晶配向剤は、本発明の効果を損なわない範囲でその他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
【0024】
<[A]化合物>
[A]化合物は、上記式(1)で表される基を有する化合物である。上記式(1)で表される基は誘電異方性を有し、[A]化合物を含む液晶配向剤は、液晶分子の配向制御性に優れている。このため、当該液晶配向剤を用いて形成した液晶配向膜を備えるPSA方式の液晶表示素子は液晶分子の配向性が良好で、応答時間を短縮することができる。
【0025】
上記式(1)中、Rは少なくとも2個の単環構造を有する基であり、好ましくは、正又は負の誘電異方性を示す。単環構造とは、一の環構造が他の環構造から独立して存在しており、一の環構造の結合が他の環構造と共有されている、いわゆる縮合環構造を有しない構造である。また、単環構造としては、脂環式構造、芳香環式構造、複素環式構造のいずれでもよく、これらを組み合わせて有していてもよい。
【0026】
は少なくとも2個の単環構造を有する基である限り特に限定されないが、代表的にはRは上記式(3)で表される基が好ましい。当該液晶配向剤の[A]化合物の側鎖に、上記式(3)で表される構造を導入することにより、得られる液晶配向素子の電気光学応答性をさらに高速化させることができる。
【0027】
上記式(3)中、Rは水素原子、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基及びアルキルカルボニルオキシ基のいずれかである。アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等の炭素数が1〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基等、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等、アルキルカルボニルオキシ基としては、例えばメチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基等がそれぞれ挙げられる。
【0028】
上記式(3)において、Rが複数ある場合は、それぞれ異なるものを組み合わせて用いても良い。複数のRを有する場合の組み合わせとしては、所望の誘電異方性を安定して発現させるために、フッ素原子とシアノ基との組み合わせ、フッ素原子とアルキル基との組み合わせ、シアノ基とアルキル基との組み合わせが好ましい。なお、bは0〜9の整数である。
【0029】
上記式(3)において、Rは、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、シクロヘキサン、ビシクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン又は複素環化合物から(b−1)個の水素原子を除いた(b−1)価の基であり、これらの基はさらに置換基を有していてもよい。上記複素環化合物としては、例えばピリジン、ピリダジン、ピリミジン等を挙げることができる。
【0030】
上記式(3)において、Rは、メチレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び複素環のいずれかを含む、RとRとを連結する連結基であり、これらの基(アルキレン基や複素環)はさらに置換基を有していてもよい。Rとしては、メタンジイル基、エタンジイル基、プロパンジイル基、エテンジイル基、エチンジイル基、エーテル基、エステル基、メタンジイルオキシ基、エタンジイルオキシ基、フルオロメタンジイルオキシ基、ジフルオロメタンジイルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、エタンジイル基、エチンジイル基、エステル基、メタンジイルオキシ基、ジフルオロメタンジイルオキシ基が好ましい。[A]化合物に必要とされる配向性や誘導異方性に応じて適宜選択することができる。なお、cは0又は1の整数であるので、Rは含まれていても含まれていなくてもよい。
【0031】
上記式(3)において、Rはそれぞれ独立して、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレン基、シクロヘキシレン基、ビシクロヘキシレン基、シクロへキシレンフェニレン基又は複素環である。複素環としては、例えばピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環等が挙げられる。
【0032】
上記式(3)中、dは1〜2の整数である。dが2の場合、複数のR、R及びcは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0033】
上記式(3)で表される基としては、例えば下記式(D−1)〜(D−123)で
表される基が挙げられる。
【0034】
【化5】

【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
【化8】

【0038】
【化9】

【0039】
【化10】

【0040】
【化11】

【0041】
式(D−1)〜(D−123)中、Rは炭素数1から20のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等)又は炭素数1〜20のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等)である。Xはそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子である。
【0042】
上記式(1)中、Rは、二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び酸素原子のいずれかを含む連結基である。Rは上記結合のいずれかを含んでいればよいが、各結合を組み合わせて含んでいてもよい。Rとしては、例えば、エテンジイル基、エチンジイル基、エステル基、メタンジイルオキシ基、フルオロメタンジイルオキシ基、ジフルオロメタンジイルオキシ基等が挙げられる。なお、後述するRがフェニレン基又はシクロヘキシレン基である場合は、形成される配向膜の配向性や溶媒への溶解性の観点から、Rは炭素数が1〜30のアルキレン基を含んでいることが好ましい。なお、aは0〜1の整数である。
【0043】
[A]化合物としては、上記式(1)で表される基を有する限り特に限定されないが、側鎖に式(1)で表される基を有する重合体が好ましく、ポリオルガノシロキサン、ポリイミド、ポリアミック酸、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリ(スチレン‐フェニルマレイミド)誘導体、セルロース誘導体、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン誘導体、ポリアミック酸エステルを主鎖構造とするものが電気特性の面からより好ましく、耐光性の面からポリオルガノシロキサンを主鎖構造とするものがさらに好ましい。
【0044】
ポリオルガノシロキサンを主鎖構造とする[A]化合物としては、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに由来する部分と、上記式(2)で表される特定カルボン酸に由来する部分とを有する化合物であることが好ましい。当該液晶配向剤中の[A]化合物が特定の構造単位を有することで、側鎖に誘電異方性を有する構造が導入され、この液晶配向剤を用いて形成した液晶配向膜を備える液晶表示素子は、より応答時間が短縮される。また、エポキシ基とカルボキシル基との間の反応性を利用することで、主鎖としてのポリオルガノシロキサンに側鎖としての上記式(1)で表される誘電異方性を有する構造を容易に導入できる。
【0045】
[A]化合物が、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに由来する部分と、上記特定カルボン酸に由来する部分とを有する場合、主としてポリオルガノシロキサンのエポキシ基と特定カルボン酸のカルボキシル基との反応物として得られることになると考えられるが、以降の説明を容易にするために、便宜的にエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(とその誘導体)に由来する部分と、特定カルボン酸に由来する部分とに分けて[A]化合物を説明する。
【0046】
[エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに由来する部分]
この部分は、[A]化合物の構造のうち、ポリマー主鎖としてのポリオルガノシロキサン骨格と、このポリオルガノシロキサン主鎖から延びている側鎖としてのエポキシ基含有骨格とを含む概念である。上述のように[A]化合物では、大部分のエポキシ基は特定カルボン酸と反応してその初期の構造を有していないと考えられるが、特定カルボン酸がエポキシ基以外の部分と結合している場合もあり得る。そこで、本発明では両者の態様を含めて「エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに由来する部分」ということとする。
【0047】
[A]化合物が、グリシジル基、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基を含む基等のエポキシ基を有することで当該液晶配向剤はより配向性や高速応答性といった電気特性が向上する。エポキシ基としては上記式(X−1)又は(X−2)で表される基であることが好ましい。ポリオルガノシロキサンに上記式(X−1)又は(X−2)で表される基を含ませることにより、[A]化合物に、特定カルボン酸を用いて上記式(1)で表される基を側鎖に導入しやすくなる。
【0048】
上記式(X−1)又は(X−2)のうち、下記式で表される基が好ましい。
【0049】
【化12】

【0050】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、500〜100,000が好ましく、1,000〜50,000がより好ましく、1,000〜20,000が特に好ましい。
【0051】
[エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの合成方法]
このようなエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンは、好ましくはエポキシ基を有するシラン化合物、又はエポキシ基を有するシラン化合物と、他のシラン化合物の混合物を、好ましくは適当な有機溶媒、水及び触媒の存在下において加水分解又は加水分解・縮合することにより合成することができる。
【0052】
上記エポキシ基を有するシラン化合物としては、例えば3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−グリシジロキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシジロキシエチルトリエトキシシラン、2−グリシジロキシエチルメチルジメトキシシラン、2−グリシジロキシエチルメチルジエトキシシラン、2−グリシジロキシエチルジメチルメトキシシラン、2−グリシジロキシエチルジメチルエトキシシラン、4−グリシジロキシブチルトリメトキシシラン、4−グリシジロキシブチルトリエトキシシラン、4−グリシジロキシブチルメチルジメトキシシラン、4−グリシジロキシブチルメチルジエトキシシラン、4−グリシジロキシブチルジメチルメトキシシラン、4−グリシジロキシブチルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0053】
上記他のシラン化合物としては、例えば、
1個のケイ素原子を有する化合物で、
4つの加水分解性基を有するものとして、
テトラクロロシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシランなど、
3つの加水分解性基を有するものとして、
トリクロロシラン等のトリハロシラン;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン;フルオロトリクロロシラン;フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン等のフルオロトリアルコキシシラン;メチルトリクロロシラン等のアルキルトリクロロシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;2−(トリフルオロメチル)エチルトリクロロシシラン等のフッ素化アルキルトリクロロシラン;2−(トリフルオロメチル)エチルトリメトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリエトキシシラン等のフッ素化アルキルトリアルコキシシラン;ヒドロキシメチルトリクロロシラン等のヒドロキシアルキルトリクロロシラン;ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、ヒドロキシエチルトリメトキシシラン等のヒドロキシアルキルトリアルコキシシラン;3−(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルトリクロロシラン;3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン;メルカプトメチルトリクロロシラン、3−メルカプトプロピルトリクロロシラン等のメルカプトアルキルトリクロロシラン;メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトアルキルトリアルコキシシラン;ビニルトリクロロシラン、アリルトリクロロシラン等のアルケニルトリクロロシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン等のアルケニルトリアルコキシシラン;フェニルトリクロロシラン等のアリールトリクロロシラン;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアリールトリアルコキシシランなど、
2つの加水分解性基を有するものとして、
メチルジクロロシラン等のアルキルジクロロシラン;メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン等のアルキルジアルコキシシラン;ジメチルジクロロシラン等のジアルキルジクロロシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン;(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジクロロシラン等のジフッ素化アルキルジクロロシラン;(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジメトキシシラン等のジフッ素化アルキルジアルコキシシラン;(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジクロロシラン等のアルキル・メルカプトアルキルジクロロシラン;(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジメトキシシラン等のアルキル・メルカプトアルキルジアルコキシシラン;(メチル)(ビニル)ジクロロシラン等のアルキルアルケニルジクロロシラン;ジビニルジクロロシラン等のジアルケニルジクロロシラン;ジビニルジメトキシシラン等の時アルケニルジアルコキシシラン;ジフェニルジクロロシラン等のジアリールジクロロシラン;ジフェニルジメトキシシラン等のジアリールジアルコキシシラン;
1つの加水分解性基を有するものとして、
クロロジメチルシラン等のジアルキルクロロシラン;メトキシジメチルシラン等のジアルキルアルコキシシラン;クロロトリメチルシラン、ブロモトリメチルシラン、ヨードトリメチルシラン等のトリアルキルハロシラン;メトキシトリメチルシラン等のトリアルキルアルコキシシラン;(クロロ)(ビニル)ジメチルシラン等のジアルキルアルケニルクロロシラン;、(メトキシ)(ビニル)ジメチルシラン等のジアルキルアルケニルアルコキシシラン;(クロロ)(メチル)ジフェニルシラン等のジアリールアルキルクロロシラン;(メトキシ)(メチル)ジフェニルシラン等のジアリールアルキルアルコキシシラン等が挙げられる。
【0054】
市販品としては、例えば
KC−89、KC−89S、X−21−3153、X−21−5841、X−21−5842、X−21−5843、X−21−5844、X−21−5845、X−21−5846、X−21−5847、X−21−5848、X−22−160AS、X−22−170B、X−22−170BX、X−22−170D、X−22−170DX、X−22−176B、X−22−176D、X−22−176DX、X−22−176F、X−40−2308、X−40−2651、X−40−2655A、X−40−2671、X−40−2672、X−40−9220、X−40−9225、X−40−9227、X−40−9246、X−40−9247、X−40−9250、X−40−9323、X−41−1053、X−41−1056、X−41−1805、X−41−1810、KF6001、KF6002、KF6003、KR212、KR−213、KR−217、KR220L、KR242A、KR271、KR282、KR300、KR311、KR401N、KR500、KR510、KR5206、KR5230、KR5235、KR9218、KR9706(以上、信越化学工業社);
グラスレジン(昭和電工社);
SH804、SH805、SH806A、SH840、SR2400、SR2402、SR2405、SR2406、SR2410、SR2411、SR2416、SR2420(以上、東レ・ダウコーニング社);
FZ3711、FZ3722(以上、日本ユニカー社);
DMS−S12、DMS−S15、DMS−S21、DMS−S27、DMS−S31、DMS−S32、DMS−S33、DMS−S35、DMS−S38、DMS−S42、DMS−S45、DMS−S51、DMS−227、PSD−0332、PDS−1615、PDS−9931、XMS−5025(以上、チッソ社);
メチルシリケートMS51、メチルシリケートMS56(以上、三菱化学社);
エチルシリケート28、エチルシリケート40、エチルシリケート48(以上、コルコート社);
GR100、GR650、GR908、GR950(以上、昭和電工社)等の部分縮合物が挙げられる。
【0055】
これらの他のシラン化合物のうち、得られる液晶配向剤の配向性及び保存安定性の観点から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランが好ましい。
【0056】
本発明に好ましく用いられるエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンは誘電異方性を有する側鎖を充分な量で導入するため、そのエポキシ当量が100〜10,000g/モルであることが好ましく、150〜1,000g/モルであることがより好ましく、150〜300g/モルであることが特に好ましい。従って、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの前駆体を合成するに際し、シラン化合物と他のシラン化合物との使用割合を、得られるエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンのエポキシ当量が上記の範囲となるように調製して設定することが好ましい。本発明で用いられるエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成するに際しては、シラン化合物のみを用い、他のシラン化合物を使用しないことがより好ましい。
【0057】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成するにあたって使用できる有機溶媒としては、例えば炭化水素化合物、ケトン化合物、エステル化合物、エーテル化合物、アルコール化合物等が挙げられる。
【0058】
上記炭化水素としては、例えばトルエン、キシレン等;上記ケトンとしては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等;上記エステルとしては、例えば酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチル等;上記エーテルとしては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等;上記アルコールとしては、例えば1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエー
テル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等が挙げられる。これらのうち非水溶性のものが好ましい。これらの有機溶媒は単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0059】
有機溶媒の使用量は、全シラン化合物100質量部に対して、好ましくは10〜10,000質量部、より好ましくは50〜1,000質量部である。エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを製造する際の水の使用量は、全シラン化合物に対して、好ましくは0.5〜100倍モルであり、より好ましくは1〜30倍モルである。
【0060】
上記触媒としては例えば酸、アルカリ金属化合物、有機塩基、チタン化合物、ジルコニウム化合物等を用いることができる。
【0061】
上記アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等が挙げられる。
【0062】
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロール等の1〜2級有機アミン;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン等の3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級の有機アミン等を、それぞれ挙げることができる。これらの有機塩基のうち、反応が穏やかに進行する点を考慮して、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級の有機アミンが好ましい。
【0063】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを製造する際の触媒としては、アルカリ金属化合物又は有機塩基が好ましい。アルカリ金属化合物又は有機塩基を触媒として用いることにより、エポキシ基の開環等の副反応を生じることなく、高い加水分解・縮合速度で目的とするポリオルガノシロキサンを得ることができるため、生産安定性に優れることとなり好ましい。また、触媒としてアルカリ金属化合物又は有機塩基を用いて合成されたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと特定カルボン酸との反応物を含有する当該液晶配向剤は、保存安定性が極めて優れるため好都合である。その理由は、Chemical Reviews、95巻、p1409(1995年)に指摘されているように、加水分解、縮合反応において触媒としてアルカリ金属化合物又は有機塩基を用いると、ランダム構造、はしご型構造又はかご型構造が形成され、シラノール基の含有割合が少ないポリオルガノシロキサンが得られるためではないかと推察される。シラノール基の含有割合が少ないため、シラノール基同士の縮合反応が抑えられ、さらに、当該液晶配向剤が後述の他の重合体を含有するものである場合には、シラノール基と他の重合体との縮合反応が抑えられるため、保存安定性に優れる結果になるものと推察される。
【0064】
触媒としては、特に有機塩基が好ましい。有機塩基の使用量は、有機塩基の種類、温度等の反応条件等により異なり、適宜に設定されるべきであるが、例えば、全シラン化合物に対して好ましくは0.01〜3倍モルであり、より好ましくは0.05〜1倍モルである。
【0065】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを製造する際の加水分解又は加水分解・縮合反応は、エポキシ基を有するシラン化合物と必要に応じて他のシラン化合物とを有機溶媒に溶解し、この溶液を有機塩基及び水と混合して、例えば油浴等により加熱することにより実施することが好ましい。
【0066】
加水分解・縮合反応時には、油浴の加熱温度を好ましくは130℃以下、より好ましくは40〜100℃として、好ましくは0.5〜12時間、より好ましくは1〜8時間加熱するのが望ましい。加熱中は、混合液を撹拌してもよいし、還流下に置いてもよい。
【0067】
反応終了後、反応液から分取した有機溶媒層を水で洗浄することが好ましい。この洗浄に際しては、少量の塩を含む水、例えば0.2質量%程度の硝酸アンモニウム水溶液等で洗浄することにより、洗浄操作が容易になる点で好ましい。洗浄は洗浄後の水層が中性になるまで行い、その後有機溶媒層を、必要に応じて無水硫酸カルシウム、モレキュラーシーブス等の乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的とするエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを得ることができる。
【0068】
本発明においては、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンとして市販されているものを用いてもよい。このような市販品としては、例えばDMS−E01,DMS−E12、DMS−E21,EMS−32(以上、チッソ社)等が挙げられる。
【0069】
[A]化合物は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンそのものが加水分解されて生じる加水分解物に由来する部分や、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン同士が加水分解縮合した加水分解縮合物に由来する部分を含んでいてもよい。当該部分の構成材料であるこれらの加水分解物や加水分解縮合物もエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの加水分解、縮合条件と同様に調製することができる。
【0070】
[特定カルボン酸に由来する部分]
上記式(2)で表される特定カルボン酸に由来するこの部分は、当該液晶配向剤に含有される[A]化合物の構造のうち、主としてポリオルガノシロキサン主鎖から延びているエポキシ基に由来する構造と結合しているカルボシキル基に由来する構造を始点とする側鎖構造に相当する。但し、本発明では、特定カルボン酸がエポキシ基以外の部分と結合している場合も含めて「特定カルボン酸に由来する部分」ということとする。
【0071】
上記式(2)における、R及びRは、上述した式(1)におけるR及びRと同様である。
【0072】
上記式(2)のRはメチレン基若しくは炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。
【0073】
炭素数2〜30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基、ヘンイコシレン基、ドコシレン基、トリコシレン基、テトラコシレン基、ペンタコシレン基、ヘキサコシレン基、ヘプタコシレン基、オクタコシレン基、ノナコシレン基、及びトリアコンチレン基等が挙げられる。これらのうち、液晶配向を安定に発現させるためにペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基等の炭素数が5以上20以下のアルキレン基が好ましい。
【0074】
上記式(2)で表されるカルボキシル基を有する化合物としては例えば、下記式(E−1)〜(E−25)で表される化合物が挙げられる。
【0075】
【化13】

【0076】
式(E−1)〜(E−25)中、Rは上記式(2)と同義である。mは1〜30の整数である。
【0077】
[特定カルボン酸の合成方法]
特定カルボン酸の合成手順は特に限定されず、従来公知の方法を組み合わせて行うことができる。代表的な合成手順としては、例えば(1)フェノール骨格を有する化合物と、高級脂肪酸エステルのアルキル鎖部分をハロゲンで置換した化合物とを塩基性条件下で反応させ、フェノール骨格の水酸基とハロゲンで置換された炭素との結合を形成し、その後エステルを還元して特定カルボン酸とする方法、(2)フェノール骨格を有する化合物とエチレンカーボネートとを反応させて末端アルコール化合物を生成させ、その水酸基とハロゲン化ベンゼンスルホニルクロリドとを反応させて活性化し、その後活性化部分に水酸基を含む安息香酸メチルを反応させて、スルホニル部分の脱離とともに末端アルコール化合物の水酸基と置換基として水酸基を含む安息香酸メチルの水酸基との結合を生成させ、
次いでエステルを還元して特定カルボン酸とする方法等が例示される。但し、特定カルボン酸の合成手順はこれらに限定されるものではない。
【0078】
<[A]化合物の合成方法>
[A]化合物の合成方法としては、特に限定されず一般的な公知の方法で合成するこができる。[A]化合物が、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに由来する部分と特定カルボン酸に由来する部分とを有する場合は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと特定カルボン酸とを、好ましくは触媒の存在下に反応させることにより合成することができる。
【0079】
ここで特定カルボン酸は、ポリオルガノシロキサンの有するエポキシ基1モルに対して好ましくは0.001〜10モル、より好ましくは0.01〜5モル、さらに好ましくは0.05〜2モル使用される。
【0080】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で特定カルボン酸の一部を下記式(4)で表される化合物で置き換えて使用してもよい。この場合、[A]化合物の合成は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、特定カルボン酸及び下記式(4)で表される化合物の混合物とを反応させることにより行われる。
【0081】
【化14】

【0082】
上記式(4)中、
は炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数1〜20のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されていてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の炭化水素基である。但し、上記アルキル基及びアルコキシ基の水素原子の一部又は全部がシアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基等の置換基で置換されていてもよい。
【0083】
は単結合、*−O−、*−COO−又は*−OCO−である。「*」を付した結合手がAと結合する。
【0084】
は単結合、炭素数1〜20のアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、シクロへキシレン基、ビシクロへキシレン基又は下記式(L−1)若しくは(L−2)で表される基である。
【0085】
Zは[A]ポリオルガノシロキサン化合物中のエポキシ基と反応して結合基を形成しうる1価の有機基である。
【0086】
但し、Lが単結合であるときにはLは単結合である。
【0087】
【化15】

【0088】
上記式(L−1)及び(L−2)において「*」を付した結合手がそれぞれZと結合する。
【0089】
Zはカルボキシル基であることが好ましい。
【0090】
上記式(4)においてAが示す炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、3−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、5−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、1−メチルヘキシル基、4,4−ジメチルペンチル基、3,4−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、1,3−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、1,2−ジメチルペンチル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,3,3−トリメチルブチル基、1,3,3−トリメチルブチル基、1,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、6−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノナニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘプタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基等が挙げられる。
【0091】
炭素数1〜20のアルキル基又はアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノナニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等が挙げられる。
【0092】
ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の炭化水素基としては、例えば下記式(A−1)〜(A−3)で表される基が挙げられる。
【0093】
【化16】

【0094】
上記式(4)におけるAとしては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基及び上記式(A−1)又は(A−3)から選ばれる基が好ましい。
【0095】
上記式(4)で表される化合物としては、下記式(4−1)〜(4〜6)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0096】
【化17】

【0097】
上記式(4−1)〜(4−6)中、uは1〜5の整数である。vは1〜18の整数である。wは1〜20の整数である。kは1〜5の整数である。pは0又は1である。qは0〜18の整数である。rは0〜18の整数である。s及びtはそれぞれ独立して0〜2の整数である。
【0098】
これらの化合物の中でも、下記式(4−7)〜(4−13)で表される化合物がより好ましい。
【0099】
【化18】

【0100】
上記式(4)で表される化合物は、特定カルボン酸とともにエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと反応し、得られる液晶配向膜に所定の傾斜(プレチルト角)発現性を付与する部位となる化合物である。本明細書においては上記式(4)で表される化合物を、以下、「他のプレチルト角発現性化合物」ということがある。
【0101】
本発明において、特定カルボン酸とともに他のプレチルト角発現性化合物を使用する場合、特定カルボン酸及び他のプレチルト角発現性化合物の合計の使用割合は、ポリオルガノシロキサンの有するエポキシ基1モルに対して好ましくは0.001〜1.5モル、より好ましくは0.01〜1モル、さらに好ましくは0.05〜0.9モルである。この場合、他のプレチルト角発現性化合物は、特定カルボン酸との合計に対して好ましくは75モル%以下、より好ましくは50モル%以下の範囲で使用される。他のプレチルト角発現性化合物の使用割合が75モル%を超えると、液晶の高速応答性に悪影響が出る場合がある。
【0102】
ポリオルガノシロキサン中のエポキシ基と他のプレチルト角発現性化合物との反応に使用される触媒としては、有機塩基、又はエポキシ化合物と酸無水物との反応を促進する、いわゆる硬化促進剤として公知の化合物を用いることができる。
【0103】
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロール等の1〜2級有機アミン;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン等の3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級の有機アミン等が挙げられる。これらの有機塩基のうち、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
【0104】
上記硬化促進剤としては、例えば
ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、シクロヘキシルジメチルアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン;
2−メチルイミダゾール、2−n−ヘプチルイミダゾール、2−n−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニル−4,5−ジ〔(2’−シアノエトキシ)メチル〕イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−n−ウンデシルイミダゾリル)エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物等のイミダゾール化合物;
ジフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン、亜リン酸トリフェニル等の有機リン化合物;ベンジルトリフェニルフォスフォニウムクロライド、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムブロマイド、メチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、テトラフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムヨーダイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムアセテート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムo,o−ジエチルフォスフォロジチオネート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルフォスフォニウムテトラフェニルボレート等の4級フォスフォニウム塩;
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン;
オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体等の有機金属化
合物;
テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩;
三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニル等のホウ素化合物;
塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化合物;
ジシアンジアミドやアミンとエポキシ樹脂との付加物等のアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性硬化促進剤;
上記イミダゾール化合物、有機リン化合物や4級フォスフォニウム塩等の硬化促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;
アミン塩型潜在性硬化促進剤;
ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等の潜在性硬化促進剤等が挙げられる。
【0105】
これらの触媒の中でも、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩が好ましい。
【0106】
触媒は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン100質量部に対して好ましくは100質量部以下、より好ましくは0.01〜100質量部、さらに好ましくは0.1〜20質量部の量で使用される。
【0107】
反応温度は、好ましくは0〜200℃、より好ましくは50〜150℃である。反応時間は、好ましくは0.1〜50時間、より好ましくは0.5〜20時間である。
【0108】
[A]化合物の合成反応は、必要に応じて有機溶媒の存在下に行うことができる。かかる有機溶媒としては、例えば炭化水素化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物、アミド化合物、アルコール化合物等が挙げられる。これらのうち、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物が、原料及び生成物の溶解性並びに生成物の精製のし易さの観点から好ましい。溶媒は、固形分濃度(反応溶液中の溶媒以外の成分の質量が溶液の全質量に占める割合)が、好ましくは0.1質量%以上70質量%以下、より好ましくは5質量%以上50質量%以下となる量で使用される。
【0109】
こうして得られた[A]化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるスチレン換算での重量平均分子量は特に限定されないが、1,000〜200,000であることが好ましく、2,000〜20,000であることがより好ましい。このような分子量範囲にあることで、液晶表示素子の良好な配向性及び安定性を確保することができる。
【0110】
上記[A]化合物は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに、特定カルボン酸のカルボキシレート部分のエポキシ基への開環付加により特定カルボン酸に由来する構造を導入している。この製造方法は簡便であり、しかも特定カルボン酸に由来する構造の導入率を高くすることができる点で極めて好適な方法である。
【0111】
<任意成分>
当該液晶配向剤は、上記[A]化合物のほかに、本発明の効果を損なわない限り、例えば[A]化合物以外の重合体(以下、「他の重合体」と称することがある)、硬化剤、硬化触媒、硬化促進剤、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」と称することがある)、官能性シラン化合物、界面活性剤等のその他の任意成分を含有してもよい。
【0112】
[他の重合体]
他の重合体は、当該液晶配向剤の溶液特性及び得られる液晶表示素子の電気特性をより改善するために使用できる。他の重合体としては、例えば
ポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体([B]重合体);
下記式(5)で表されるポリオルガノシロキサン、その加水分解物及びその加水分解物の縮合物よりなる群から選択される少なくとも1種(以下、「他のポリオルガノシロキサン」ということがある);
ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0113】
【化19】

【0114】
式(5)中、Xは水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜20のアリール基である。Yは水酸基又は炭素数1〜10のアルコキシ基である。
【0115】
<[B]重合体>
[B]重合体はポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体である。以下、ポリアミック酸及びポリイミドについて詳述する。
【0116】
[ポリアミック酸]
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させることにより得られる。
【0117】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0118】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0119】
脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン等が挙げられる。
【0120】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物等が挙げられるほか特願2010−97188号に記載のテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0121】
これらのテトラカルボン酸二無水物のうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物が好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物又は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物がより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物が特に好ましい。
【0122】
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物又は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物の使用量としては、全テトラカルボン酸二無水物に対して、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物又は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物のみからなることが、特に好ましい。
【0123】
ジアミン化合物としては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、ジアミノオルガノシロキサン、芳香族ジアミン等が挙げられる。これらジアミン化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0124】
脂肪族ジアミンとしては、例えばメタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0125】
脂環式ジアミンとしては、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0126】
ジアミノオルガノシロキサンとしては、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン等が挙げられるほか、特願2009−97188号に記載のジアミンが挙げられる。
【0127】
芳香族ジアミンとしては、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノーN,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン及び下記式(A−1)で表されるジアミン化合物等が挙げられる。
【0128】
【化20】

【0129】
上記式(A−1)中、Xはメチレン基又は炭素数2若しくは3のアルキレン基、−O−、−COO−又は−OCO−である。rは0又は1である。sは0〜2の整数である。tは1〜20の整数である。
【0130】
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の使用割合としては、ジアミン化合物に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2当量〜2当量が好ましく、0.3当量〜1.2当量がより好ましい。
【0131】
合成反応は、有機溶媒中において行うことが好ましい。反応温度としては、−20℃〜150℃が好ましく、0℃〜100℃がより好ましい。反応時間としては、0.5時間〜24時間が好ましく、2時間〜12時間がより好ましい。
【0132】
有機溶媒としては、合成されるポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド等の非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノール等のフェノール系溶媒が挙げられる。
【0133】
有機溶媒の使用量(a)としては、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の総量(b)と有機溶媒の使用量(a)の合計(a+b)に対して、0.1質量%〜50質量%が好ましく、5質量%〜30質量%がより好ましい。
【0134】
反応後に得られるポリアミック酸溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離した上で液晶配向剤の調製に供してもよく、単離したポリアミック酸を精製した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸の単離方法としては、例えば反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで得られる析出物を減圧下乾燥する方法、反応溶液をエバポレーターで減圧留去する方法等が挙げられる。ポリアミック酸の精製方法としては、単離したポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解し、貧溶媒で析出させる方法、エバポレーターで有機溶媒等を減圧留去する工程を1回若しくは複数回行う方法が挙げられる。
【0135】
[ポリイミド]
ポリイミドは、上記ポリアミック酸の有するアミック酸構造を脱水閉環してイミド化することにより製造できる。ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有しているアミック酸構造の全てを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存している部分イミド化物であってもよい。
【0136】
ポリイミドの合成方法としては、例えば(i)ポリアミック酸を加熱する方法(以下、「方法(i)」と称することがある)、(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し、必要に応じて加熱する方法(以下、「方法(ii)」と称することがある)等のポリアミック酸の脱水閉環反応による方法が挙げられる。
【0137】
方法(i)における反応温度としては、50℃〜200℃が好ましく、60℃〜170℃がより好ましい。反応温度が50℃未満では、脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるポリイミドの分子量が低下することがある。反応時間としては、0.5時間〜48時間が好ましく、2時間〜20時間がより好ましい。
【0138】
方法(i)において得られるポリイミドはそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離した上で液晶配向剤の調製に供してもよく又は単離したポリイミドを精製した上で又は得られるポリイミドを精製した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0139】
方法(ii)における脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物が挙げられる。
【0140】
脱水剤の使用量としては、所望のイミド化率により適宜選択されるが、ポリアミック酸のアミック酸構造1モルに対して0.01モル〜20モルが好ましい。
【0141】
方法(ii)における脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0142】
脱水閉環触媒の使用量としては、含有する脱水剤1モルに対して0.01モル〜10モルが好ましい。なお、イミド化率は上記脱水剤及び脱水閉環剤の含有量が多いほど高くできる。
【0143】
方法(ii)に用いられる有機溶媒としては、例えばポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒と同様の有機溶媒等が挙げられる。
【0144】
方法(ii)における反応温度としては、0℃〜180℃が好ましく、10℃〜150℃がより好ましい。反応時間としては、0.5時間〜20時間が好ましく、1時間〜8時間がより好ましい。反応条件を上記範囲とすることで、脱水閉環反応が十分に進行し、また、得られるポリイミドの分子量を適切なものとできる。
【0145】
方法(ii)においてはポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液をそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離した上で液晶配向剤の調製に供してもよく又は単離したポリイミドを精製した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除く方法としては、例えば溶媒置換の方法等が挙げられる。ポリイミドの単離方法及び精製方法としては、例えばポリアミック酸の単離方法及び精製方法として例示したものと同様の方法等が挙げられる。
【0146】
[他のポリオルガノシロキサン]
当該液晶配向剤は、ポリオルガノシロキサンに由来する部分を含む[A]化合物以外にも他のポリオルガノシロキサンを含んでいてもよい。他のポリオルガノシロキサンは、上記式(5)で表されるポリオルガノシロキサン、その加水分解物及びその加水分解物の縮合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、当該液晶配向剤が他のポリオルガノシロキサンを含む場合、他のポリオルガノシロキサンの大部分は、[A]化合物とは独立して存在しているもの、その一部は[A]化合物との縮合物として存在していても良い。
【0147】
上記式(5)中のX及びYにおいて、
炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ラウリル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等;
炭素数1〜16のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等;
炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基等が挙げられる。
【0148】
他のポリオルガノシロキサンは、例えばアルコキシシラン化合物及びハロゲン化シラン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物(以下、「原料シラン化合物」と称することがある)を、好ましくは適当な有機溶媒中で、水及び触媒の存在下において加水分解又は加水分解・縮合することにより合成することができる。
【0149】
ここで使用できる原料シラン化合物としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラクロロシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−
sec−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン等が挙げられる。これらのうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシランが好ましい。
【0150】
他のポリオルガノシロキサンを合成する際に、任意的に使用することのできる有機溶媒としては、例えばアルコール化合物、ケトン化合物、アミド化合物もしくはエステル化合物又はその他の非プロトン性化合物が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0151】
アルコール化合物としては、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、ヘプタノール−3、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチルヘプタノール−4、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキ
サノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール化合物;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタンジオール−2,4、2−メチルペンタンジオール−2,4、ヘキサンジオール−2,5、ヘプタンジオール−2,4、2−エチルヘキサンジオール−1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール化合物;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ
エチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール化合物の部分エーテル等が挙げられる。これらのアルコール化合物は、単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0152】
ケトン化合物としては、例えば
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン、フェンチョン等のモノケトン化合物;
アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、3,5−オクタンジオン、2,4−ノナンジオン、3,5−ノナンジオン、5−メチル−2,4−ヘキサンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ヘプタンジオン等のβ−ジケトン化合物等が挙げられる。これらのケトン化合物は、単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0153】
上記アミド化合物としては、例えばホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルモルホリン、N−アセチルピペリジン、N−アセチルピロリジン等が挙げられる。これらアミド化合物は、単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0154】
エステル化合物としては、例えばジエチルカーボネート、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢
酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。これらエステル化合物は、単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0155】
その他の非プロトン性化合物としては、例えばアセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N,N’,N’−テトラエチルスルファミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチルモルホロン、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−メチル−Δ3−ピロリン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、N−メチルイミダゾール、N−メチル−4−ピペリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチルテトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン等が挙げられる。これら溶媒のうち、多価アルコール化合物、多価アルコール化合物の部分エーテル、又はエステル化合物が特に好ましい。
【0156】
他のポリオルガノシロキサンの合成に際して使用する水の量としては、原料シラン化合物の有するアルコキシ基及びハロゲン原子の総量の1モルに対して、好ましくは0.01〜100モルであり、より好ましくは0.1〜30モルであり、さらに1〜1.5モルであることが好ましい。
【0157】
他のポリオルガノシロキサンの合成に際して使用できる触媒としては、例えば金属キレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、アンモニア、アルカリ金属化合物等が挙げられる。
【0158】
上記金属キレート化合物としては、例えばトリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン等のトリアルコキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン;ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン等のジアルコキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン;モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン等のモノアルコキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン;テトラキス(アセチルアセトナート)チタン;トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン等のトリアルコキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン;ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン等のジアルコキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン;モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン等のモノアルコキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン;テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン;モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等の2種以上のキレート配位子を含むチタン化合物などのチタンキレート化合物;
トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム等のトリアルコキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム;ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム等のジアルコキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム;モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム等のモノアルコキシ・トリル(アセチルアセトナート)ジルコニウム;テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム;トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のトリアルコキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム;ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジアルコキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム;モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のモノアルコキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム;テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム;モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等の2種以上のキレート配位子を含むジルコニウム化合物などのジルコニウムキレート化合物;
トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等が挙げられる。
【0159】
上記有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪族飽和カルボン酸;マロン酸、フマル酸等の脂肪族不飽和カルボン酸;サリチル酸、安息香酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸;p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の芳香族スルホン酸;モノクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等のハロゲン含有カルボン酸;クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0160】
上記無機酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等が挙げられる。
【0161】
上記有機塩基としては、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等が挙げられる。
【0162】
上記アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これら触媒は、単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0163】
これら触媒のうち、金属キレート化合物、有機酸、無機酸が好ましい。金属キレート化合物としては、チタンキレート化合物がより好ましい。
【0164】
触媒の使用量は、原料シラン化合物100質量部に対して好ましくは0.001〜10質量部であり、より好ましくは0.001〜1質量部である。
【0165】
触媒は、原料であるシラン化合物中又はシラン化合物を有機溶媒に溶解した溶液中に予め添加しておいてもよく、又は添加される水中に溶解又は分散させておいてもよい。
【0166】
他のポリオルガノシロキサンの合成に際して添加される水は、原料であるシラン化合物中又はシラン化合物を有機溶媒に溶解した溶液中に、断続的又は連続的に添加することが
できる。
【0167】
他のポリオルガノシロキサンの合成の際の反応温度としては、好ましくは0〜100℃であり、より好ましくは15〜80℃である。反応時間は好ましくは0.5〜24時間であり、より好ましくは1〜8時間である。
【0168】
当該液晶配向剤が、[A]化合物とともに他の重合体を含有するものである場合、他の重合体の含有量としては、[A]化合物100質量部に対して10,000質量部以下であることが好ましい。他の重合体のより好ましい含有量は、他の重合体の種類により異なる。
【0169】
当該液晶配向剤が、[A]化合物及び[B]重合体を含有する場合における両者の好ましい使用割合としては、[A]化合物100質量部に対して[B]重合体の合計量100〜5,000質量部が好ましく、200〜3,000質量部がより好ましい。
【0170】
一方、当該液晶配向剤が、[A]化合物及び他のポリオルガノシロキサンを含有するものである場合における両者の好ましい使用割合は、[A]化合物100質量部に対する他のポリオルガノシロキサンの量として100〜2,000質量部である。
【0171】
当該液晶配向剤が、[A]化合物とともに他の重合体を含有するものである場合、他の重合体としては、[B]重合体、又は他のポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0172】
[硬化剤、硬化触媒及び硬化促進剤]
硬化剤及び硬化触媒は、[A]化合物の架橋反応をより強固にする目的で当該液晶配向剤に含ませることができる。硬化促進剤は、硬化剤の司る硬化反応を促進する目的で当該液晶配向剤に含ませることができる。
【0173】
硬化剤としては、エポキシ基を有する硬化性化合物、又はエポキシ基を有する化合物を含有する硬化性組成物の硬化に一般に用いられている硬化剤を用いることができる。このような硬化剤としては、例えば多価アミン、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸が挙げられる。
【0174】
多価カルボン酸無水物としては、例えばシクロヘキサントリカルボン酸の無水物及びその他の多価カルボン酸無水物が挙げられる。
【0175】
シクロヘキサントリカルボン酸無水物としては、例えばシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸−3,5−無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−2,3−酸無水物等が挙げられる。その他の多価カルボン酸無水物としては、例えば4−メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水こはく酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、下記式(6)で表される化合物、ポリアミック酸の合成に一般に用いられるテトラカルボン酸二無水物の他、α−テルピネン、アロオシメン等の共役二重結合を有する脂環式化合物と無水マレイン酸とのディールス・アルダー反応生成物及びこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0176】
【化21】

【0177】
式(6)中、xは1〜20の整数である。
【0178】
硬化触媒としては、例えば6フッ化アンチモン化合物、6フッ化リン化合物、アルミニウムトリスアセチルアセトナート等を用いることができる。これらの触媒は、加熱によりエポキシ基のカチオン重合を触媒することができる。
【0179】
上記硬化促進剤としては、例えばイミダゾール化合物;4級リン化合物;4級アミン化合物;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン;オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物;三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニル等のホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化合物;ジシアンジアミド、アミンとエポキシ樹脂との付加物等のアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性硬化促進剤;4級フォスフォニウム塩等の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;アミン塩型潜在性硬化促進剤;ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等が挙げられる。
【0180】
[エポキシ化合物]
上記エポキシ化合物は、形成される液晶配向膜の基板表面に対する接着性を向上させる観点から、当該液晶配向剤に含ませることができる。
【0181】
エポキシ化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサンが好ましい。
【0182】
当該液晶配向剤がエポキシ化合物を含有する場合、その含有割合としては、上記の[A]ポリオルガノシロキサン化合物と任意的に使用される他の重合体との合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜40質量部以下、より好ましくは0.1〜30質量部である。
【0183】
なお、当該液晶配向剤がエポキシ化合物を含有する場合、その架橋反応を効率良く起こす目的で、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等の塩基触媒を併用してもよい。
【0184】
[官能性シラン化合物]
官能性シラン化合物は、得られる液晶配向膜の基板との接着性を向上する目的で使用することができる。官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレント
リアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられ、さらに特開昭63−291922号公報に記載されているテトラカルボン酸二無水物とアミノ基を有するシラン化合物との反応物等が挙げられる。
【0185】
当該液晶配向剤が官能性シラン化合物を含有する場合、その含有割合としては、上記[A]化合物と任意的に使用される他の重合体との合計100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0186】
[界面活性剤]
界面活性剤としては、例えばノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン界面活性剤、ポリアルキレンオキシド界面活性剤、含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
【0187】
当該液晶配向剤が界面活性剤を含有する場合、その含有割合としては、液晶配向剤の全体100質量部に対して、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは1質量部以下である。
【0188】
<液晶配向剤の調製方法>
当該液晶配向剤は、上述の通り、[A]化合物を必須成分として含有し、必要に応じてその他の任意成分を含有できるが、好ましくは各成分が有機溶媒に溶解された溶液状の組成物として調製される。
【0189】
当該液晶配向剤を調製するために使用することのできる有機溶媒としては、[A]化合物及び任意的に使用される他の成分を溶解し、これらと反応しないものが好ましい。当該液晶配向剤に好ましく使用することのできる有機溶媒は、任意的に添加される他の重合体の種類により異なる。
【0190】
当該液晶配向剤が、[A]化合物及び[B]重合体を含有する場合における好ましい有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして上記に例示した有機溶媒が挙げられる。このとき、本発明のポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した貧溶媒を併用してもよい。これら有機溶媒は、単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0191】
一方、当該液晶配向剤が、重合体として[A]化合物のみを含有する場合、又は[A]化合物及び他のポリオルガノシロキサンを含有する場合における好ましい有機溶媒としては、例えば1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレンブリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコール、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸n−ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸オクチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル等が挙げられる。これらのうち、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチルが好ましい。
【0192】
当該液晶配向剤の調製に用いられる好ましい溶媒は、他の重合体の使用の有無及びその種類に従って、上記した有機溶媒の1種以上を組み合わせて得ることができる。このような溶媒は、下記の好ましい固形分濃度において液晶配向剤に含有される各成分が析出せず、かつ液晶配向剤の表面張力が25〜40mN/mの範囲となるものである。
【0193】
当該液晶配向剤の固形分濃度、すなわち液晶配向剤中の溶媒以外の全成分の重量が液晶配向剤の全重量に占める割合は、粘性、揮発性等を考慮して選択されるが、好ましくは1〜10質量%の範囲である。当該液晶配向剤は、基板表面に塗布され、液晶配向膜となる塗膜を形成するが、固形分濃度が1質量%以上である場合には、この塗膜の膜厚が過小となりにくくなって良好な液晶配向膜を得ることができる。一方、固形分濃度が10質量%以下の場合には、塗膜の膜厚が過大となることを抑制して良好な液晶配向膜を得ることができ、また、液晶配向剤の粘性が増大することを防止して塗布特性を良好なものとすることができる。特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に採用する方法によって異なる。例えば、スピンナー法による場合には1.5〜4.5質量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9質量%の範囲とし、それによって溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とするのが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5質量%の範囲とし、それによって溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とするのが特に好ましい。当該液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは、0℃〜200℃、より好ましくは0℃〜40℃である。
【0194】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、当該液晶配向剤から形成される液晶配向膜を備えるPSA方式の液晶表示素子である。当該液晶表示素子によれば、液晶配向膜を上記液晶配向剤から形成していることで、液晶配向性が高く、優れた高速応答性を発揮することができる。以下、図1及び図2を参照し、液晶表示素子の実施の形態を説明する。
【0195】
[第一実施形態]
図1の液晶表示素子1は、対向配置された一対の基板2と、この一対の基板2の内面側にそれぞれ積層された一対の液晶配向膜3と、上記液晶配向膜3間に充填され、重合性液晶組成物から形成される液晶層4とを備えるPSA方式の液晶表示素子である。
【0196】
一対の基板2としては、例えばフロートガラス、ソーダガラス等のガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン等のプラスチックからなる透明基板を用いることができる。
【0197】
上記一対の基板2の内面には、透明電極5a及び5bが設けられている。透明電極5aがコモン電極、透明電極5bが画素電極となる。この透明電極5としては、例えば酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜等を用いることができる。なお、この透明電極は、公知の液晶表示素子と同様、図示しないTFT、バスライン等と接続される。
【0198】
両透明電極5a及び5bの表面(対向する面側)には、線状突起(土手状配向規制用構造物)6が形成されている。この線状突起のサイズとしては、例えば高さ1.5μm、幅10μmであり、間隔としては例えば25μmである。この線状突起6により液晶分子が配向分割される。
【0199】
一対の基板2の内面側には、透明電極5a、5b及び線状突起6を介して、液晶配向膜3が形成されている。この液晶配向膜3は、垂直配向膜であり、上述の当該液晶配向剤により形成されている。この液晶配向膜3の表面は、ラビング処理や光配向処理等の処理を施してもよく、施さなくてもよい。当該液晶表示素子によれば、液晶配向膜を上記液晶配向剤から形成していることで、液晶配向性に優れ、優れた高速応答性を発揮することができる。
【0200】
この液晶配向膜3間には重合性液晶組成物から形成される液晶層4が充填されている。この液晶層4は負の誘電率異方性を備えている。このような液晶としては、例えばジシアノベンゼン系液晶、ピリダジン系液晶、シッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶等が用いられる。また、上記重合性液層組成物としては、特に限定されず公知のものを用いることができ、例えばアクリロイル基と液晶骨格とを持つモノマーを重合開始剤と共にネガ(負の誘電率異方性)型液晶に添加したものを用いることができる。上記モノマーの添加量としては、例えば0.1質量%以上1質量%以下である。液晶層4の厚さとしては、例えば約4μm程度である。
【0201】
当該液晶表示素子1においては、重合性液晶組成物から液晶層4が形成されることで、液晶層4中、液晶配向膜3との界面には、ポリマー層7が形成されている。このポリマー層7は、所定の角度θpで液晶層4中の液晶分子4aにプレチルト角を付与する。
【0202】
当該液晶表示素子1には、公知の液晶表示素子と同様、基板2の両外面に図示しない偏光板が積層される。この偏光板としては、特に限定されないが、ポリビニルアルコールフィルムを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、又はH膜そのものからなる偏光板等が挙げられる。
【0203】
当該液晶表示素子1によれば、液晶配向膜3を上記液晶配向剤から形成していることで、液晶配向性が高く、優れた高速応答性を発揮することができる。
【0204】
[第二実施形態]
図2(a)の液晶表示素子11は、対向配置された一対の基板2と、この一対の基板2の内面側にそれぞれ積層された一対の液晶配向膜3と、上記液晶配向膜3間に充填され、重合性液晶組成物から形成される液晶層4とを備えるPSA方式の液晶表示素子である。この液晶表示素子11にも、液晶表示素子1と同様、基板2の両外面に図示しない偏光板が積層される。
【0205】
液晶表示素子11は、液晶表示素子1の線状突起6に代えて、パターニングされた透明電極15によって液晶分子の配向分割を行うものである。液晶表示素子11における基板2、液晶配向膜3、液晶層4及び一方の透明電極5a(コモン電極)は、図1の液晶表示素子1と同様のものであるので説明を省略する。
【0206】
上記基板2の一方の内面には、魚骨状にパターニングされた透明電極15(画素電極)が配設されている。このようなパターニングされた透明電極15を用いることで、液晶層4中の液晶分子4aをこの透明電極15に沿って配向させることができ、配向分割が可能となる(図2(b)参照)。なお、この透明電極は、公知の液晶表示素子と同様、図示しないTFT、バスライン等と接続される。
【0207】
この液晶表示素子11においても、電圧を印加した状態で液晶層を硬化させることで、液晶層中の液晶分子の傾斜方向を記憶させることができ、PSA方式の液晶表示素子として機能する。
【0208】
当該液晶表示素子11によっても、液晶配向膜を上記液晶配向剤から形成していることで、液晶配向性に優れ、優れた高速応答性を発揮することができる。
【0209】
[その他の実施形態]
なお、当該液晶表示素子においては、液晶層中において、PSAを発現する硬化部分が図1の液晶表示素子1のようにポリマー層4として形成されてもよいし、液晶層中に部分的又は全体的に形成されていてもよい。また、上記線状突起やパターニングされた電極の代わりに、スリットや隔壁等により配向分割を行ってもよい。何れの形態においても、当該液晶表示素子によれば、例えば液晶分子が基板界面に対してごく僅かに傾斜した状態で支持されており、液晶配向膜を当該液晶配向剤から形成しているため、電圧の印加の際、液晶分子を確実にその傾斜方向に倒すことができ、かつこの際の応答性を高めることができる。
【0210】
<液晶表示素子の製造方法>
当該液晶表示素子の製造方法の一例を、図1の液晶表示素子1の場合を例に説明する。
【0211】
液晶表示素子1の製造方法としては、
透明電極5a又は5b及び線状突起6を有する一対の基板2の各内面に上記液晶配向剤により液晶配向膜3を形成する工程、
上記一対の基板2を内面同士が向かい合うように対向配置し、この基板間に重合性液晶組成物を充填する工程、及び
電圧を印加した状態で上記重合性液晶組成物を硬化させる工程
を有する方法を挙げることができる。
【0212】
上記液晶配向膜の形成は、液晶配向剤の塗布後、加熱により硬化させることで形成することができる。
【0213】
上記重合性液晶組成物の硬化方法としては、紫外線等を用いた光硬化や、熱付与による熱硬化を挙げることができる。光硬化の場合の照射量としては特に限定されないが、紫外線照射量として例えば1,000〜5,000mJ/cm程度である。また、重合の際の印加電圧も特に限定されないが、0〜20V程度である。
【0214】
このように電圧を印加しながら硬化(重合)させ、液晶層を形成することで、液晶分子を傾斜した状態で支持させ、液晶分子の配向性を効果的に制御できる。また、当該製造方法によれば、液晶配向膜を上記液晶配向剤から形成していることで、液晶配向性が高く、優れた高速応答性を有するPSA方式の液晶表示素子を製造することができる。
【実施例】
【0215】
以下、合成例及び実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0216】
以下の実施例において得られたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン及び[A]化合物の重量平均分子量(Mw)は、下記仕様のGPCにより測定したポリスチレン換算値である。
【0217】
カラム:東ソー社、TSKgelGRCXLII
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm
なお、以下の実施例において用いた原料化合物及び重合体の必要量は、下記の合成例に示す合成スケールでの原料化合物及び重合体の合成を必要に応じて繰り返すことにより確保した。
【0218】
<エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの合成>
[合成例1]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECETS)100.0g、メチルイソブチルケトン500g及びトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応させた。反応終了後、有機層を取り出し、0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄したのち、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを粘調な透明液体として得た。
【0219】
このエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンについて、H−NMR分析を行なったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。
【0220】
[合成例2〜3]
仕込み原料を下記表1に示すとおりとした以外は、合成例1と同様に操作してエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンをそれぞれ粘稠な透明液体として得た。合成例1〜3で得られたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンのMw及びエポキシ当量を表1にあわせて示す。なお、表1における原料シラン化合物の略称は以下の意味である。
ECETS:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
MTMS:メチルトリメトキシシラン
PTMS:フェニルトリメトキシシラン
【0221】
【表1】

【0222】
<特定カルボン酸の合成>
[特定カルボン酸1の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸1を合成した。
【0223】
【化22】

【0224】
[合成例4]
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル6.3g、11−ブロモウンデカン酸メチル10g、炭酸カリウム14.2g、N,N−ジメチルホルムアミド200mLを加え、160℃で5時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を水500mLに投入し、混合撹拌した。析出した白色固体をろ別し、水で更に洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、化合物1を11g得た。
【0225】
[合成例5]
次に、冷却管を備えた200mLの三口フラスコに、化合物1を10g、水酸化リチウム・1水和物1.6g、メタノール30mL、水15mLを加え、80℃で4時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を撹拌した状態で、希塩酸を反応溶液にゆっくり滴下した。析出固体をろ過し、水、エタノールの順で洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、特定カルボン酸1を8g得た。
【0226】
[特定カルボン酸2の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸2を合成した。
【0227】
【化23】

【0228】
[合成例6]
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル15g、エチレンカーボネート13.5g、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)2.5g、N,N−ジメチルホルムアミド300mLを加え、150℃で9時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を酢酸エチル300mL、1N−水酸化ナトリウム水溶液100mLの混合溶液で分液洗浄した。有機層を抽出した後、更に1N−水酸化ナトリウム水溶液100mL、水100mLの順で分液洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、有機溶媒を留去した。得られた固体を真空乾燥後、エタノール100mL/ヘキサン250mLで再結晶することにより、化合物2を13.1g得た。
【0229】
[合成例7]
冷却管、滴下漏斗を備えた200mLの三口フラスコに化合物2を12g、4−クロロベンゼンスルホニルクロリド12.7g、脱水塩化メチレン60mLを加え混合した。氷浴で反応溶液を冷却した状態で、トリエチルアミン6.6gの脱水塩化メチレン10mL溶液を10分かけて滴下した。氷浴状態のまま、30分撹拌し、室温に戻して更に6時間撹拌した。反応溶液にクロロホルム150mLを加え、水100mLで4回分液洗浄を行った。抽出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、有機溶媒を留去した。得られた固体をエタノールで洗浄することで化合物3を16.1g得た。
【0230】
[合成例8]
冷却管を備えた300mLの三口フラスコに化合物3を15g、4−ヒドロキシ安息香酸メチル11g、炭酸カリウム12.5g、N,N−ジメチルホルムアミド180mLを加え、80℃で9時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。応溶液を水500mLに投入し、混合撹拌した。析出した白色固体をろ別し、エタノールで更に洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、化合物4を10g得た。
【0231】
[合成例9]
冷却管を備えた100mLの三口フラスコに、化合物4を9.5g、水酸化リチウム・1水和物1.6g、メタノール30mL、テトラヒドロフラン15mL、水15mLを加え、80℃で4時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を撹拌した状態で、希塩酸を反応溶液にゆっくり滴下した。析出固体をろ過し、水、エタノールの順で洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、特定カルボン酸2を9g得た。
【0232】
[特定カルボン酸3の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸3を合成した。
【0233】
【化24】

【0234】
[合成例10]
合成例4において、4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニルの代わりに2、3、5、6−テトラフルオロ−4−(ペンタフルオロフェニル)フェノールを10.7g用いることで化合物5を13.7g得た。
【0235】
[合成例11]
合成例5において、化合物1の代わりに化合物5を13.5g用いることで、特定カルボン酸3を11.2g得た。
【0236】
[特定カルボン酸4の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸4を合成した。
【0237】
【化25】

【0238】
[合成例12]
合成例6において、4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニルの代わりに2、3、5、6−テトラフルオロ−4−(ペンタフルオロフェニル)フェノールを25.5g用いることで、化合物6を23.1g得た。
【0239】
[合成例13]
合成例7において化合物2の代わりに化合物6を18.9g用いることで、化合物7を24.1g得た。
【0240】
[合成例14]
合成例8において化合物3の代わりに化合物7を20g用いることで、化合物8を15.4g得た。
【0241】
[合成例15]
合成例9において化合物4の代わりに化合物8を13g用いることで、特定カルボン酸4を11.4g得た。
【0242】
[特定カルボン酸5の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸5を合成した。
【0243】
【化26】

【0244】
[合成例16]
特定カルボン酸1の合成と同様にしてメチレン基の数を10から5へ変更した特定カルボン酸5を15g得た。
【0245】
[特定カルボン酸6の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸6を合成した。
【0246】
【化27】

【0247】
[合成例17]
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル10.1g、11−ブロモウンデカン酸メチル10g、炭酸カリウム14.2g、N,N−ジメチルホルムアミド200mLを加え、160℃で5時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を水500mLに投入し、混合撹拌した。析出した白色固体をろ別し、水で更に洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、化合物9を10.8g得た。
【0248】
[合成例18]
次に、冷却管を備えた200mLの三口フラスコに、化合物9を10g、水酸化リチウム・1水和物1.6g、メタノール30mL、水15mLを加え、80℃で4時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を撹拌した状態で、希塩酸を反応溶液にゆっくり滴下した。析出固体をろ過し、水、エタノールの順で洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、特定カルボン酸6を6g得た。
【0249】
[特定カルボン酸7の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸7を合成した。
【0250】
【化28】

【0251】
[合成例19]
出発化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル)10.1gを上記反応スキームに記載の化合物(2,3−ジフルオロ−4−(4−プロピル−シクロヘキシル)フェノール)9.1gに変えたこと以外は、上記特定カルボン酸6の合成と同様にして特定カルボン酸7を5.9g得た。
【0252】
[特定カルボン酸8の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸8を合成した。
【0253】
【化29】

【0254】
[合成例20]
出発化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル)10.1gを上記反応スキームに記載の化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4−プロピル−4”−ヒドロキシターフェニル)12.9gに変えたこと以外は、上記特定カルボン酸6の合成と同様にして特定カルボン酸8を7.1g得た。
【0255】
[特定カルボン酸9の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸9を合成した。
【0256】
【化30】

[合成例21]
出発化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル)10.1gを上記反応スキームに記載の化合物(2,3−ジフルオロ−4−(4−プロピルシクロヘキシルメトキシ)フェノール)10.2gに変えたこと以外は、上記特定カルボン酸6の合成と同様にして特定カルボン酸9を6.5g得た。
【0257】
[特定カルボン酸10の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸10を合成した。
【0258】
【化31】

[合成例22]
出発化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル)10.1gを上記反応スキームに記載の化合物(2,3−ジフルオロ−4’−(4−プロピルフェニルエチル)ビフェニル)12.6gに変えたこと以外は、上記特定カルボン酸6の合成と同様にして特定カルボン酸10を7.2g得た。
【0259】
[特定カルボン酸11の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸11を合成した。
【0260】
【化32】

【0261】
[合成例23]
出発化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル)10.1gを上記反応スキームに記載の化合物14.2gに変えたこと以外は、上記特定カルボン酸6の合成と同様にして特定カルボン酸11を7.6g得た。
【0262】
[特定カルボン酸12の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸12を合成した。
【0263】
【化33】

【0264】
[合成例24]
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに、4−[ジフルオロ(4−ペンチルシクロヘキシル)メトキシ]−2,3−ジフルオロフェノール12.5g、11−ブロモウンデカン酸メチル10g、炭酸カリウム14.2g、N,N−ジメチルホルムアミド200mLを加え、160℃で5時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を水500mLに投入し、混合撹拌した。析出した白色固体をろ別し、水でさらに洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、化合物10を14.8g得た。
【0265】
[合成例25]
次に、冷却管を備えた200mLの三口フラスコに、化合物10を10g、水酸化リチウム・1水和物1.6g、メタノール30mL、水15mLを加え、80℃で4時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を撹拌した状態で、希塩酸を反応溶液にゆっくり滴下した。析出固体をろ過し、水、エタノールの順で洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、特定カルボン酸12を6g得た。
【0266】
<[A]化合物の合成>
[合成例26]
100mLの三口フラスコに、上記合成例1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン9.8g、メチルイソブチルケトン28g、上記合成例5で得た特定カルボン酸1を5.0g、上記式(4)で表される化合物の一つとして例示した式(4−11)で表される4−オクチルオキシ安息香酸3.3g及びUCAT 18X(サンアプロ社の4級アミン塩)0.20gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して溶液を得、該溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、[A]化合物A−1を白色粉末として14.5g得た。[A]化合物A−1のMwは6,500であった。
【0267】
[合成例27]
特定カルボン酸1の代わりに合成例9で得た特定カルボン酸2を4g用いたこと以外は合成例26と同様に操作して、[A]化合物A−2の白色粉末を12.8g得た。[A]化合物A−2のMwは、6,000であった。
【0268】
[合成例28]
特定カルボン酸1の代わりに合成例11で得た特定カルボン酸3を6.8g用いたこと以外は合成例26と同様に操作して、[A]化合物A−3の白色粉末を14.7g得た。[A]化合物A−3のMwは8,100であった。
【0269】
[合成例29]
特定カルボン酸1の代わりに合成例15で得た特定カルボン酸4を5.6g用いたこと以外は合成例26と同様に[A]化合物の合成を行った。その結果、[A]化合物A−4の白色粉末を15.0g得た。[A]化合物A−4のMwは7,500であった。
【0270】
[合成例30]
100mLの三口フラスコに、上記合成例1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン9.8g、メチルイソブチルケトン28g、上記合成例5で得た特定カルボン酸1を10g及びUCAT 18X(サンアプロ社の4級アミン塩)0.20gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して、この溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、[A]化合物A−5を白色粉末として16.0g得た。[A]化合物A−5のMwは、8,500であった。
【0271】
[合成例31]
特定カルボン酸1の代わりに合成例16で得た特定カルボン酸5を4.1g用いたこと以外は合成例26と同様に操作して[A]化合物A−6の白色粉末を12.4g得た。[A]化合物A−6のMwは6,200であった。
【0272】
[合成例32]
4−オクチルオキシ安息香酸の代わりに上記式(4)で表される化合物の一つとして例示した式(4−13)で表される4−(4−ペンチルシクロヘキシル)安息香酸を3.6g用いたこと以外は合成例26と同様に操作して、[A]化合物A−7の白色粉末を13.4g得た。[A]化合物A−7のMwは7,900であった。
【0273】
[合成例33]
100mLの三口フラスコに、上記合成例1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン9.8g、メチルイソブチルケトン28g、上記合成例5で得た特定カルボン酸1を8.0g、上記式(4−13)で表される4−(4−ペンチルシクロヘキシル)安息香酸1.4g及びUCAT 18X(サンアプロ社の4級アミン塩)0.20gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して、この溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、[A]化合物A−8を白色粉末として13.9g得た。[A]化合物A−8のMwは8,900であった。
【0274】
[合成例34]
100mLの三口フラスコに、上記合成例1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン9.8g、メチルイソブチルケトン28g、上記合成例5で得た特定カルボン酸1を2.0g、上記式(4−13)で表される4−(4−ペンチルシクロヘキシル)安息香酸5.8g及びUCAT 18X(サンアプロ社の4級アミン塩)0.20gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して溶液を得、該溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、[A]化合物A−9を白色粉末として13.4g得た。[A]化合物A−9のMwは7,600であった。
【0275】
[合成例35]
100mLの三口フラスコに、上記合成例1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン9.8g、メチルイソブチルケトン28g、上記合成例5で得た特定カルボン酸1を8.0g、上記式(4−12)で表されるカルボン酸誘導体2.6g及びUCAT 18X(サンアプロ社の4級アミン塩)0.20gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して、この溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、[A]化合物A−10を白色粉末として15.5g得た。[A]化合物A−10のMwは9,200であった。
【0276】
[合成例36]
特定カルボン酸1の代わりに合成例18で得た特定カルボン酸6を6.1g用いたこと以外は合成例26と同様に操作して[A]化合物A−11の白色粉末を18.4g得た。[A]化合物A−11のMwは7,300であった。
【0277】
[合成例37]
特定カルボン酸1の代わりに合成例19で得た特定カルボン酸7を5.7g用いたこと以外は合成例26と同様に操作して[A]化合物A−12の白色粉末を17.5g得た。[A]化合物A−12のMwは7,600であった。
【0278】
[合成例38]
特定カルボン酸1の代わりに合成例20で得た特定カルボン酸8を7.2g用いたこと以外は合成例26と同様に操作して[A]化合物A−13の白色粉末を19.1g得た。[A]化合物A−13のMwは7,000であった。
【0279】
[合成例39]
特定カルボン酸1の代わりに合成例21で得た特定カルボン酸9を6.2g用いたこと以外は合成例26と同様に操作して[A]化合物A−14の白色粉末を18.1g得た。[A]化合物A−14のMwは6,900であった。
【0280】
[合成例40]
特定カルボン酸1の代わりに合成例22で得た特定カルボン酸10を7.0g用いたこと以外は合成例26と同様に操作して[A]化合物A−15の白色粉末を19.4g得た。[A]化合物A−15のMwは7,500であった。
【0281】
[合成例41]
特定カルボン酸1の代わりに合成例23で得た特定カルボン酸11を8.4g用いたこと以外は合成例26と同様に操作して[A]化合物A−16の白色粉末を20.1g得た。[A]化合物A−16のMwは7,300であった。
【0282】
[合成例42]
特定カルボン酸1の代わりに合成例25で得た特定カルボン酸12を7.2g用いたこと以外は合成例26と同様に操作して[A]化合物A−17の白色粉末を19.5g得た。[A]化合物A−17のMwは7,300であった。
【0283】
[比較合成例1]
100mLの三口フラスコに、上記合成例1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン9.8g、メチルイソブチルケトン28g、4−オクチルオキシ安息香酸3.3g及びUCAT 18X(サンアプロ社の4級アミン塩)0.10gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して、この溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、[A]化合物CA−1を白色粉末として9.6g得た。化合物CA−1のMwは6,000であった。
【0284】
<ポリアミック酸の合成>
[合成例43]
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物19.61g(0.1モル)と4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル21.23g(0.1モル)とをN−メチル−2−ピロリドン367.6gに溶解し、室温で6時間反応させた。次いで、反応混合物を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥することにより、ポリアミック酸PA−1を35g得た。
【0285】
[合成例44]
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物22.4g(0.1モル)とシクロヘキサンビス(メチルアミン)14.23g(0.1モル)とをN−メチル−2−ピロリドン329.3gに溶解させ、60℃で6時間反応させた。次いで、反応物を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥することにより、ポリアミック酸PA−2を32g得た。
【0286】
<ポリイミドの合成>
[合成例45]
上記合成例44で得たポリアミック酸PA−2を17.5gとり、これにN−メチル−2−ピロリドン232.5g、ピリジン3.8g及び無水酢酸4.9gを添加し、120℃において4時間反応させてイミド化を行った。次いで、反応混合液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下で15時間乾燥することにより、ポリイミドPI−1を15g得た。
【0287】
[合成例46]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物19.88g、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン6.83g、ジアミノジフェニルメタン3.58gと上記式(G−4)で表されるジアミン4.72gをN−メチル−2−ピロリドン140gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。次いで、反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で24時間乾燥させることによりポリアミック酸32.8gを得た。得られたポリアミック30gをN−メチル−2−ピロリドン400gに溶解させ、ピリジン12.0g及び無水酢酸15.5gを添加し110℃で4時間脱水閉環させ、上記と同様にして沈殿、洗浄、減圧乾燥を行い、Mw=92,000、Mw/Mn=4.19、イミド化率79%のポリイミドPI−2を25g得た。
【0288】
<液晶配向剤の調製>
[実施例1]
合成例43で得たポリアミック酸PA−1を含有する溶液を、これに含有されるポリアミック酸PA−1に換算して1,000質量部に相当する量をとり、[A]化合物A−1(100質量部)を加え、さらにN−メチル−2−ピロリドン及びブチルセロソルブを加えて、溶媒組成がN−メチル−2−ピロリドン:ブチルセロソルブ=50:50(質量比)、固形分濃度が3.0質量%の溶液とした。この溶液を孔径10.2μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤S−1を調製した。
【0289】
[実施例2〜21及び比較例1]
[B]重合体としてのポリアミック酸又はポリイミド、[A]成分としてのポリオルガノシロキサン化合物の組み合わせを表2に記載のとおりとしたこと以外は実施例1と同様に操作して、液晶配向剤S−2〜S−21及びCS−1を調製した。
【0290】
[比較例2]
上記合成例46で得たポリイミドPI−2に、溶媒組成がN−メチル−2−ピロリドン:ブチルセロソルブ=70:30(質量比)となるようにN−メチル−2−ピロリドン及びブチルセロソルブをそれぞれ加えて、固形分濃度が3.0質量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤CS−2を調製した。なお、表中の「−」は該当する成分を使用しなかったことを示す。
【0291】
<液晶表示素子の製造>
実施例1の液晶配向剤S−1を用いた液晶表示素子として、15型XGAパネル(画素ピッチ:297μm、画素数:1024×768)を作製した。図3はこのパネル(液晶表示素子)の一画素を示した模式図である。一方の基板上にパターニングされた透明電極21を形成した。更にこの基板上には、透明電極21が画素電極として機能するよう、TFT22及びバスライン23を設けた。パターニングされた透明電極21は、図3に示すように画素中央部から4方位(右上、右下、左上、左下)に延びるようにした。ここで、境界部(背骨)近傍のパターニングされた透明電極21の電極幅を2μm、スペースの幅を4μmとし、境界部から離れた領域の電極幅を4μm、スペース幅を2μmとした。境界部端からパターン幅変化部までの距離xは、5μmとした。他方の基板には、透明電極(コモン電極)を形成した。基板材料には板厚0.7mmのガラス基板OA−2(日本電気硝子社製)を用いた。
【0292】
これらの基板上に、印刷法により、液晶配向剤S−1を用いて液晶配向膜を形成し、180℃で60分の熱処理を行った。さらに、これらの基板を径4μmのスペーサ(積水ファインケミカル社製)を介して貼り合せ、液晶未注入の空セルを作製した。このセルに、光重合性モノマー(大日本インキ社製)を微量添加した誘電率異方性が負の液晶(メルク社製)を注入した。光重合性モノマーの添加量は、2.4質量%とした。次に、このセルに電圧を印加して紫外線を照射し、モノマーを重合してポリマー化した。さらに、基板の外側両面に、偏光板を2枚の偏光板の偏光方向が互いに直交するように貼り合わせることにより、実施例1の液晶表示素子を作製した。重合時の印加電圧は10V、UV照射量は2,000mJ/cm(λ=365nm)とした。
【0293】
液晶配向剤S−1の代わりに表2で示す液晶配向剤を用いたこと以外は上記と同様の操作をして、実施例2〜20並びに比較例1及び2の液晶配向剤を用いた液晶表示素子を作成した。
【0294】
<評価>
製造した液晶表示素子について以下の評価を行った。結果を表2にあわせて示す。
【0295】
[配向性]
上記で製造した液晶表示素子につき、電圧無印加状態における光漏れ・配向乱れの有無をバックライト照射下、目視により観察し、光漏れ・配向乱れのない場合を「○」とし、一部に光漏れ・配向乱れが存在する場合を「△」とし、全く垂直配向状態が得られていないものを「×」とした。
【0296】
[応答速度(立ち上がり時の電気光学応答性)]
偏光顕微鏡、光検出器、及びパルス発生機を含む装置で液晶応答の立ち上がりの時間を測定した。ここで液晶応答速度とは、作製した液晶表示素子に電圧無印加状態から5Vの電圧を最大1秒間印加した際に、透過率10%から透過率90%に変化するのに要した時間(msec.)とした。
【0297】
【表2】

【0298】
表2の結果から明らかなように、実施例1〜21の液晶配向剤を用いて作製した液晶配向膜を備える液晶表示素子は、配向性に優れるとともに、液晶の応答速度については、比較例の液晶表示素子と比べて約2/3程度以上に高速化されていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0299】
本発明の液晶配向剤は、高速応答性に優れるPSA方式の液晶表示素子の製造に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0300】
1、11 液晶表示素子
2 基板
3 液晶配向膜
4 液晶層
4a 液晶分子
5、5a、5b 透明電極
6 線状突起
15 パターニングされた透明電極
21 透明電極
22 TFT
23 バスライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PSA方式の液晶表示素子における液晶配向膜形成用の液晶配向剤であって、
[A]下記式(1)で表される基を有する化合物
を含有することを特徴とする液晶配向剤。
【化1】

(式(1)中、Rは少なくとも2個の単環構造を有する基である。Rは二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合又は酸素原子を含む連結基である。aは0〜1の整数である。)
【請求項2】
[A]化合物が、
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに由来する部分と、
下記式(2)で表される化合物に由来する部分と
を有する請求項1に記載の液晶配向剤。
【化2】

(式(2)中、R、R及びaは、上記式(1)と同義である。Rはメチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基であり、これらの基はさらに置換基を有していてもよい。)
【請求項3】
上記Rが、下記式(3)で表される基である請求項1又は請求項2に記載の液晶配向剤。
【化3】

(式(3)中、Rは水素原子、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基又はアルキルカルボニルオキシ基である。Rはベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、シクロヘキサン、ビシクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン又は複素環化合物から(b−1)個の水素原子を除いた(b−1)価の基であり、これらの基はさらに置換基を有していてもよい。Rはメチレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び複素環のいずれかを含む連結基であり、これらの基はさらに置換基を有していてもよい。Rはそれぞれ独立してフェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレン基、シクロヘキシレン基、ビシクロヘキシレン基、シクロへキシレンフェニレン基又は複素環であり、これらの基はさらに置換基を有していてもよい。bは1〜9の整数である。bが2以上の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。cは0〜1の整数である。dは1〜2の整数である。dが2の場合、複数のR、R及びcは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項4】
上記エポキシ基が、下記式(X−1)又は(X−2)で表される基である請求項2又は請求項3に記載の液晶配向剤。
【化4】

(式(X−1)中、Aは酸素原子又は単結合である。hは1〜3の整数である。iは0〜6の整数である。但し、iが0の場合、Aは単結合である。
式(X−2)中、jは0〜6の整数である。)
【請求項5】
[B]ポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体
をさらに含有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の液晶配向剤から形成される液晶配向膜を備えるPSA方式の液晶表示素子。
【請求項7】
透明電極を有する一対の基板の各内面に請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の液晶配向剤により液晶配向膜を形成する工程、
上記一対の基板を内面同士が向かい合うように対向配置し、この基板間に重合性液晶組成物を充填する工程、及び
電圧を印加した状態で上記重合性液晶組成物を硬化させる工程
を有するPSA方式の液晶表示素子の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−64968(P2013−64968A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258239(P2011−258239)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】