説明

液晶配向剤、液晶配向膜および液晶表示素子

【課題】本発明は、液晶配向性が高く、黒レベルのよい液晶配向膜を得るための液晶配向剤を提供することを目的とする。
【解決手段】式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物とその他のテトラカルボン酸二無水物との混合物をジアミンと反応させて得られるポリアミック酸およびその誘導体から選択される少なくとも1つのポリマーを含有する組成物であって、このテトラカルボン酸二無水物の混合物の全量を基準として式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物の割合が5〜95モル%であり、その他のテトラカルボン酸二無水物の割合が5〜95モル%である液晶配向剤。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアミック酸またはその誘導体を含有する液晶配向剤とその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、ノートパソコンやデスクトップパソコンのモニターをはじめ、ビデオカメラのビューファインダー、投写型のディスプレイ等の様々な液晶表示装置に使われており、最近ではテレビとしても用いられるようになってきた。さらに、光プリンターヘッド、光フーリエ変換素子、ライトバルブ等のオプトエレクトロニクス関連素子としても利用されている。
【0003】
液晶表示素子は、通常、1)対向配置されている一対の基板、2)この一対の基板のそれぞれの対向している面の一方または両方に形成されている電極、3)前記一対の基板それぞれの対向している面に形成された液晶配向膜、および4)前記一対の基板間に形成された液晶層、を有する。
従来の液晶表示素子としてはネマチック液晶を用いた表示素子が主流であり、1)90度ツイストしたTN(Twisted Nematic)型液晶表示素子、2)通常180度以上ツイストしたSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子、3)液晶を駆動する電圧のスイッチング素子に薄膜トランジスタを使用したいわゆるTFT(Thin Film Transistor)型液晶表示素子などが実用化されている。これらの液晶表示素子は、画像が適正に視認できる視野角が狭く、斜め方向から見たときに、輝度やコントラストの低下および中間調での輝度反転を生じるという欠点を有している。
【0004】
近年、この視野角の問題については、1)光学補償フィルムを用いたTN−TFTモード液晶表示素子、2)垂直配向と光学補償フィルムを用いたVA(Vertical Alignment)モード液晶表示素子、3)垂直配向と突起構造物の技術を併用したMVA(Multi Domain Vertical Alignment)モード液晶表示素子、または4)横電界方式のIPS(In-Plane Switching)モード液晶表示素子等の技術により改良され、それぞれの素子が実用化されている。
【0005】
液晶表示素子の技術の発展は、単にこれらの駆動方式や素子構造の改良のみならず、素子に使用される構成部材の改良によっても達成されている。液晶表示素子に使用される構成部材のなかでも、特に液晶配向膜は表示品位に係わる重要な材料の1つであり、液晶表示素子の高品質化に伴い、配向膜の性能を向上させる事が重要になってきている。
【0006】
液晶配向膜は、液晶配向剤より調製される。現在、主として用いられている液晶配向剤は、ポリアミック酸または可溶性のポリイミドを有機溶剤に溶解させた溶液である。このような溶液を基板に塗布した後、加熱等の手段により成膜して配向膜を形成させる。ポリアミック酸以外のポリマーを用いる液晶配向剤も検討されているが、耐熱性、耐薬品性(耐液晶性)、塗布性、液晶配向性、電気特性、光学特性、表示特性等の点から、ほとんど実用化されていない。
【0007】
このような配向膜には下記のような液晶表示素子にもたらす効果が要求される。
(1)液晶分子に適切なプレチルト角を付与すること。しかも、該プレチルト角が、ラビング時の押込み強度や、加熱時の温度条件による影響を受けにくいこと。
(2)ラビングムラ、キズ、または配向膜の削れ等による、液晶分子の配向の欠陥が発生しないこと。
(3)液晶表示素子に適切な電圧保持率(Voltage Holding Ratio:VHR)を与えること。
(4)液晶表示素子に任意の画像を長時間表示させた後、別の画像に変えた時に前の画像が残像として残る「焼き付き」と呼ばれる現象が起きにくいこと。
【0008】
VAモードまたはIPSモードを用いた液晶表示素子は、既述したように視野角特性が良好であることから、近年発展している液晶TVの殆どに用いられている。この両モードの性能を比較した場合、駆動原理に起因した一長一短がそれぞれ存在する。例えば、IPSモードの場合、視野角特性が特に良好である、中間調での応答速度が比較的早いなどの長所を持つ。しかしながら、コントラストがVAモードに比べ悪い。IPSモードは電圧未印加時に黒が表示されるが、この状態がラビングに伴う液晶の初期配向状態に依存することが、コントラストを悪化させている原因の一つである。つまり、IPS配向膜においては、液晶配向性が高く、黒表示がより黒く表示できる(黒のレベルが良い)配向膜が強く求められている。このような課題の解決を目的とした先行技術の例として特許文献1が挙げられるが、この文献の技術は末端に三重結合を有するジアミンを用いることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−300940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、液晶配向性が高く、黒レベルのよい液晶配向膜を得るための液晶配向剤を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、特定の構造を有するポリアミック酸またはその誘導体を含有する液晶配向剤を使用することにより、上記の特性が改善された液晶表示素子が得られることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明の液晶配向剤は次の[1]項に示される。
[1] 式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物とその他のテトラカルボン酸二無水物との混合物をジアミンと反応させて得られるポリアミック酸およびその誘導体から選択される少なくとも1つのポリマーを含有する組成物であって、このテトラカルボン酸二無水物の混合物の全量を基準として式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物の割合が5〜95モル%であり、その他のテトラカルボン酸二無水物の割合が5〜95モル%である液晶配向剤:


式(I)において、ベンゼン環との結合位置が固定されていない無水フタル酸基の結合位置は、もう一つの無水フタル酸基の結合位置に対してパラ位またはメタ位である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に拠れば、配向性の良い液晶配向剤を得ることが出来る。特にIPSモードに関する黒レベルの改善に効果的である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず最初に、本発明で用いる用語について説明する。テトラカルボン酸二無水物を酸無水物と略記することがあり、従って、式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物を酸無水物(I)と略記することがある。他の式で表されるテトラカルボン酸二無水物も同様の略記法で示すことがある。式(2)で表されるジアミンをジアミン(2)と称することがある。他の式で表されるジアミンも同様の略記法で示すことがある。
化学式の定義において用いる用語「任意の」は、「位置だけでなく数においても自由に選択できること」を意味する。例えば、「任意のAがB、C、DまたはEで置き換えられてもよい」という表現は、1つのAがB、C、DまたはEで置き換えられてもよいという意味と、複数のAのどれもがB、C、DおよびEのいずれか1つで置き換えられてもよいという意味とに加えて、Bで置き換えられるA、Cで置き換えられるA、Dで置き換えられるA、およびEで置き換えられるAの少なくとも2つが混在してもよいという意味をも有する。但し、任意の−CH−が他の基で置き換えられてもよいとするとき、連続する複数の−CH−が同じ基で置き換えられることは含まれない。
環を構成する炭素の何れか1つと明確に結合していない置換基は、その結合位置が化学的に問題のない範囲内で自由であることを意味する。
複数の式において同じ記号が用いられている場合は、その基が同じ定義範囲を有することを意味するが、すべての式において同時に同じ基でなければならないことを意味しない。そのような場合は、複数の式において同じ基が選択されてもよいし、式ごとに異なる基が選択されてもよい。このとき、1つの式に複数の同じ記号が用いられている場合には、この複数の基のすべてが他の式における基と異なってもよいし、一部だけが異なってもよい。
化学式におけるMeはメチルを意味する。
【0014】
本発明は上記の[1]項と下記の[2]〜[12]項とで構成される。
[2] その他のテトラカルボン酸二無水物が式(A−1)〜式(A−46)で表されるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つであり、ジアミンが式(1−1)〜式(1−3)、式(2)、式(3)および式(4)で表されるジアミンの群から選ばれる少なくとも1つのジアミンである、[1]項に記載の液晶配向剤:











式(1−1)において、bは0または1であり;シクロヘキシレンにおける任意の水素はメチルで置き換えられてもよく;
式(1−2)において、Wは−CH−または−NH−であり:


ここに、Xは単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり;このアルキレンの任意の−CH−は−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−CO−、−SO−、1、3−フェニレン、1、4−フェニレンまたはピペラジン−1,4−ジイルで置き換えられてもよく;


式(3)において、Xは単結合、−O−、−COO−、−OCO−または炭素数1〜6のアルキレンであり;Rは炭素数3〜30のアルキル、または式(a)で表される基であり;
式(a)において、XおよびXは独立して単結合または炭素数1〜4のアルキレンであり;環Bおよび環Cは独立して1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;RおよびRは独立してフッ素またはメチルであって、fおよびgは独立して0、1または2であり;c、dおよびeは独立して0または1であって、これらの合計は1〜3であり;Rは炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、炭素数2〜30のアルコキシアルキルまたはコレステリル基であり、これらのアルキル、アルコキシおよびアルコキシアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく:


ここに、Xは独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンであり;jは0または1であり;Rは水素、炭素数2〜12のアルキルまたは炭素数2〜12のアルコキシであり;環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;Xは単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり;hは0または1である。
【0015】
[3] その他のテトラカルボン酸二無水物が式(A−1)〜式(A−4)、式(A−11)、式(A−12)、式(A−14)、式(A−18)〜式(A−21)、式(A−28)〜式(A−30)、式(A−32)、式(A−37)、式(A−39)〜式(A−41)、および式(A−43)〜式(A−46)で表されるテトラカルボン酸無水物の少なくとも1つであり、ジアミンが式(1−2−1)、式(1−3)、式(2−1)〜式(2−3)、式(2−7)、式(2−10)〜式(2−27)、式(2−29)、式(2−37)〜式(2−39)、式(2−41)、式(2−43)〜式(2−47)、式(2−51)、式(3−1)〜式(3−12)、および式(4−1)〜式(4−12)で表されるジアミンの少なくとも1つである、[2]項に記載の液晶配向剤:











ここに、R20は炭素数5〜16のアルキルであり、R21は炭素数3〜10のアルキルであり、R22は炭素数6〜16のアルキルまたはコレステリル基であり;


ここに、R26は炭素数4〜7のアルキルである。
【0016】
[4] その他のテトラカルボン酸二無水物が式(A−1)、式(A−2)、式(A−12)、式(A−14)、式(A−18)、式(A−20)、式(A−21)、式(A−28)、式(A−30)、式(A−37)、式(A−40)および式(A−45)で表されるテトラカルボン酸無水物の少なくとも1つであり、ジアミンが式(1−2−1)、式(1−3)、式(2−7)、式(2−10)〜式(2−12)、式(2−16)〜式(2−19)、式(2−21)〜式(2−27)、式(2−37)〜式(2−39)、式(2−41)、式(2−43)〜式(2−47)、式(2−51)、式(3−1)〜式(3−12)および式(4−1)〜式(4−12)で表されるジアミンの少なくとも1つである、[3]項に記載の液晶配向剤。
【0017】
[5] その他のテトラカルボン酸二無水物が式(A−1)、式(A−12)、式(A−14)、式(A−18)および式(A−45)で表されるテトラカルボン酸無水物の少なくとも1つであり、ジアミンが式(1−2−1)、式(1−3)、式(2−7)、式(2−10)〜式(2−12)、式(2−26)、式(2−44)、式(2−45)および式(3−1)〜式(3−6)で表されるジアミンの少なくとも1つである、[4]項に記載の液晶配向剤。
【0018】
[6] その他のテトラカルボン酸二無水物が式(A−14)、式(A−18)、式(A−19)、式(A−20)、式(A−21)、式(A−28)、式(A−29)、式(A−30)、式(A−32)、式(A−39)、式(A−40)、式(A−41)、式(A−43)、式(A−44)および式(A−46)で表されるテトラカルボン酸無水物の少なくとも1つであり、ジアミンが式(1−2−1)、式(1−3)、式(2−1)〜式(2−3)、式(2−26)、式(2−29)、式(2−37)、式(2−43)〜式(2−47)、式(3−1)〜式(3−12)および式(4−1)〜式(4−12)で表されるジアミンの少なくとも1つである、[3]項に記載の液晶配向剤:
【0019】
[7] その他のテトラカルボン酸二無水物が式(A−14)、式(A−20)、式(A−21)、式(A−39)、式(A−44)および式(A−46)で表されるテトラカルボン酸無水物の少なくとも1つであり、ジアミンが式(1−2−1)、式(1−3)、式(2−1)〜式(2−3)、式(2−26)、式(2−29)、式(2−44)および式(3−1)〜式(3−6)で表されるジアミンの少なくとも1つである、[6]項に記載の液晶配向剤。
【0020】
[8] その他のテトラカルボン酸二無水物が式(A−1)、式(A−2)、式(A−3)、式(A−4)、式(A−11)、式(A−12)および式(A−45)で表されるテトラカルボン酸無水物の少なくとも1つであり、ジアミンが式(1−2−1)、式(1−3)、式(2−1)〜式(2−3)、式(2−13)〜式(2−15)、式(2−20)〜式(2−26)、式(2−29)、式(2−39)および式(2−41)で表されるジアミンの少なくとも1つである、[3]項に記載の液晶配向剤。
【0021】
[9] その他のテトラカルボン酸二無水物が式(A−1)、式(A−2)、式(A−4)、式(A−12)および式(A−45)で表されるテトラカルボン酸無水物の少なくとも1つであり、ジアミンが式(1−2−1)、式(1−3)、式(2−1)〜式(2−3)、式(2−13)〜式(2−15)、式(2−26)および式(2−29)で表されるジアミンの少なくとも1つである、[8]項に記載の液晶配向剤。
【0022】
[10] 式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物を用いずに製造されるその他のポリアミック酸およびその誘導体から選択される少なくとも1つのポリマーをさらに含有する、[1]〜[9]のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【0023】
[11] [1]〜[10]のいずれか1項に記載の液晶配向剤の塗膜を加熱することによって形成される液晶配向膜。
【0024】
[12] 1対の基板とこの基板の間に形成される液晶層と、液晶層に電圧を印加する電極と、[11]項に記載の液晶配向膜とを有する液晶表示素子。
【0025】
本発明の液晶配向剤は、ポリアミック酸およびその誘導体から選択される少なくとも1つのポリマーと溶剤を含有する組成物である。ポリアミック酸の誘導体としては、ポリアミック酸を完全に脱水閉環反応させて得られるポリイミド、ポリアミック酸を部分的に脱水閉環反応させて得られる部分イミド化ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、テトラカルボン酸二無水物の一部をジカルボン酸に置き換えることによって得られるポリアミック酸−ポリアミド共重合体、このポリアミック酸−ポリアミド共重合体の一部もしくは全部を脱水閉環反応させて得られるポリアミドイミドが挙げられる。これらのうちポリイミドおよび部分イミド化ポリアミック酸が好ましく、ポリイミドがより好ましい。
【0026】
本発明では、酸無水物(I)とその他の酸無水物との混合物をジアミンと反応させて得られるポリアミック酸とその誘導体とからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを用いる。


式(I)において、ベンゼン環との結合位置が固定されていない無水フタル酸基の結合位置は、もう一つの無水フタル酸基の結合位置に対してパラ位またはメタ位である。
【0027】
即ち、酸無水物(I)は下記の酸無水物(I−1)または酸無水物(I−2)であり、液晶に対する高い配向能を配向膜に付与することができるため、酸無水物(I−1)が好ましい。


【0028】
このポリマーは前記ポリアミック酸またはその誘導体の1つを単独で用いてもよいし、原料の異なる少なくとも2つの前記ポリアミック酸を組み合わせて用いてもよいし、前記ポリアミック酸とその誘導体を組み合わせて用いてもよい。また、後述のように、前記ポリアミック酸とその誘導体とから選択される少なくとも1つのポリマーと、酸無水物(I)を用いないで得られるその他のポリアミック酸とその誘導体とから選択される少なくとも1つのポリマーとを組み合わせて用いてもよい。なお、実施例を除く以下の説明においては、注釈なしで用いられる「ポリアミック酸」は、酸無水物(I)とその他の酸無水物との混合物をジアミンと反応させて得られるポリアミック酸とその誘導体の総称としての意味を有する。
【0029】
酸無水物(I)と組み合わせて用いるその他の酸無水物は、公知の酸無水物から制限されることなく選択することができるが、好ましい例として次に示す酸無水物(A−1)〜酸無水物(A−46)が挙げられる。これらの酸無水物の少なくとも1つを用いることが好ましい。


【0030】


【0031】


【0032】
その他の酸無水物としては、上記の酸無水物のうち、次に示す酸無水物(A−1)〜酸無水物(A−4)、酸無水物(A−11)、酸無水物(A−12)、酸無水物(A−14)、酸無水物(A−18)〜酸無水物(A−21)、酸無水物(A−28)〜酸無水物(A−30)、酸無水物(A−32)、酸無水物(A−37)、酸無水物(A−39)〜酸無水物(A−41)、および酸無水物(A−43)〜酸無水物(A−46)がより好ましい。


【0033】
酸無水物(I)とその他の酸無水物との混合物におけるこれらの混合割合は、この混合物の全量を基準とする割合で、酸無水物(I)が5〜95モル%であり、その他の酸無水物が5〜95モル%である。この混合割合は、酸無水物(I)が15〜85モル%であり、その他の酸無水物が15〜85モル%であることが好ましい。
【0034】
液晶の配向性をさらに向上させることを重視する場合には、上記のその他の酸無水物のうち、酸無水物(A−1)、酸無水物(A−2)、酸無水物(A−12)、酸無水物(A−14)、酸無水物(A−18)、酸無水物(A−20)、酸無水物(A−21)、酸無水物(A−28)、酸無水物(A−30)、酸無水物(A−37)酸無水物(A−40)および(A−45)がより好ましく、酸無水物(A−1)、酸無水物(A−12)、酸無水物(A−14)、酸無水物(A−18)および(A−45)が特に好ましい。
【0035】
液晶表示素子のVHRを向上させることを重視する場合には、前記のその他の酸無水物のうち、酸無水物(A−14)、酸無水物(A−18)、酸無水物(A−19)、酸無水物(A−20)、酸無水物(A−21)、酸無水物(A−28)、酸無水物(A−29)、酸無水物(A−30)、酸無水物(A−32)、酸無水物(A−39)、酸無水物(A−40)、酸無水物(A−41)、酸無水物(A−43)、酸無水物(A−44)および酸無水物(A−46)の脂環式化合物がより好ましく、酸無水物(A−14)、酸無水物(A−20)、酸無水物(A−21)、酸無水物(A−39)、酸無水物(A−44)および酸無水物(A−46)が特に好ましい。
【0036】
液晶配向膜の体積抵抗値を低下させることにより、配向膜中の残留電荷(残留DC)の緩和速度を向上させることが、焼付を防ぐ方法の一つとして有効である。この目的を重視する場合には、前記のその他の酸無水物のうち、酸無水物(A−1)、酸無水物(A−2)、酸無水物(A−3)、酸無水物(A−4)、酸無水物(A−11)、酸無水物(A−12)および酸無水物(A−45)がより好ましく、酸無水物(A−1)、酸無水物(A−2)、酸無水物(A−4)、酸無水物(A−12)および酸無水物(A−45)が特に好ましい。酸無水物はこれらに限定されることなく、本発明の目的が達成される範囲内で他の公知の化合物を用いてもよい。
【0037】
本発明で用いるジアミンは公知のジアミンから制限されることなく選択されるが、好ましいジアミンとして、次に示すジアミン(1−1)〜ジアミン(1−3)、ジアミン(2)、ジアミン(3)およびジアミン(4)を挙げることができる。これらのジアミンの群から選ばれる少なくとも1つのジアミンを用いることが好ましい。


式(1−1)において、bは0または1であり、シクロヘキシレンにおける任意の水素はメチルで置き換えられてもよい。
式(1−2)において、Wは−CH−または−NH−である。
【0038】
これらのジアミンの具体例を次に示す。以下の具体例のうち、液晶の配向性をさらに向上させる観点、液晶表示素子のVHRを向上させる観点および配向膜中の残留DCの緩和速度を向上させる観点のいずれからも、ジアミン(1−2−1)およびジアミン(1−3)が特に好ましい。


【0039】


式(2)において、Xは単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり、このアルキレンの任意の−CH−は−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−CO−、−SO−、1、3−フェニレン、1、4−フェニレンまたはピペラジン−1,4−ジイルで置き換えられてもよい。Xの好ましい例は炭素数1〜10のアルキレンであり、このときアルキレンの任意の−CH−は−O−、−S−、−NH−、−C(CH−、1、4−フェニレンまたはピペラジン−1,4−ジイルで置き換えられてもよい。そして、アミノ基が結合するベンゼン環の任意の水素はメチルで置き換えられてもよいが、メチルで置き換えられない方が好ましい。
【0040】
ジアミン(2)の具体例を次に示す。


【0041】


【0042】


【0043】


【0044】


【0045】
式(3)において、Xは単結合、−O−、−COO−、−OCO−または炭素数1〜6のアルキレンであり、好ましくは単結合、−O−、−COO−または炭素数1〜3のアルキレンである。Rは炭素数3〜30のアルキル、または式(a)で表される基であり、好ましくは炭素数4〜20のアルキルまたは式(a)で表される基である。
【0046】
式(a)において、XおよびXは独立して単結合または炭素数1〜4のアルキレンであり、好ましくは単結合、−CH−または−CHCH−である。環Bおよび環Cは独立して1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンである。RおよびRは独立してフッ素またはメチルであって、fおよびgは独立して0、1または2であるが、fおよびgが共に0であることが好ましい。c、dおよびeは独立して0または1であって、これらの合計は1〜3である。Rは炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、炭素数2〜30のアルコキシアルキルまたはコレステリル基であり、これらのアルキル、アルコキシおよびアルコキシアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい。Rの好ましい例は、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルコキシ、炭素数2〜20のアルコキシアルキルおよびコレステリル基であり、これらのアルキル、アルコキシおよびアルコキシアルキルにおける水素がフッ素で置き換えられることはない。
【0047】
ジアミン(3)の好ましい例を次に示す。


【0048】


【0049】
式(3−1)〜式(3−25)において、R20は炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数1〜20のアルコキシであり、好ましくは炭素数5〜16のアルキルである。R21は炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数1〜20のアルコキシであり、好ましくは炭素数3〜10のアルキルである。R22は炭素数4〜20のアルキルまたはコレステリル基であり、好ましくは炭素数6〜16のアルキルまたはコレステリル基である。R23は炭素数4〜20のアルキルであり、好ましくは炭素数6〜16のアルキルである。R24は炭素数3〜20のアルキルまたは炭素数3〜20のアルコキシであり、好ましくは炭素数5〜12のアルキルである。
【0050】


【0051】
式(4)において、Xは独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンであり,好ましくは共に−O−、−CH−または−CHCH−である。jは0または1である。Rは水素、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数1〜20のアルコキシであり、好ましくは水素、炭素数1〜12のアルキルまたは炭素数1〜12のアルコキシであり、さらに好ましくは炭素数4〜7のアルキルである。環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンである。Xは単結合または炭素数1〜3のアルキレンである。そして、hは0または1である。なお、ベンゼン環に対するアミノ基の結合位置は、Xに対してパラ位であることが好ましい。
【0052】
ジアミン(4)の好ましい例を次に示す。


【0053】


【0054】
式(4−1)〜式(4−16)において、R26は水素、炭素数1〜12のアルキルまたは炭素数1〜12のアルコキシであり、好ましくは炭素数4〜7のアルキルである。
【0055】
上記のジアミンの具体例のうち、次に示すジアミン(1−2−1)、ジアミン(1−3)、ジアミン(2−1)〜ジアミン(2−3)、ジアミン(2−7)、ジアミン(2−10)〜ジアミン(2−27)、ジアミン(2−29)、ジアミン(2−37)〜ジアミン(2−39)、ジアミン(2−41)、ジアミン(2−43)〜ジアミン(2−47)、ジアミン(2−51)、ジアミン(3−1)〜ジアミン(3−12)、およびジアミン(4−1)〜ジアミン(4−12)がより好ましい。








ここに、R20は炭素数5〜16のアルキルであり、R21は炭素数3〜10のアルキルであり、R22は炭素数6〜16のアルキルまたはコレステリル基である。


ここに、R26は炭素数4〜7のアルキルである。
【0056】
上記のより好ましいジアミンの具体例のうち、液晶の配向性をさらに向上させることを重視する場合には、ジアミン(1−2−1)、ジアミン(1−3)、ジアミン(2−7)、ジアミン(2−10)〜ジアミン(2−12)、ジアミン(2−16)〜ジアミン(2−19)、ジアミン(2−21)〜ジアミン(2−27)、ジアミン(2−37)〜ジアミン(2−39)、ジアミン(2−41)、ジアミン(2−43)〜ジアミン(2−47)、ジアミン(2−51)、ジアミン(3−1)〜ジアミン(3−12)、およびジアミン(4−1)〜ジアミン(4−12)がさらに好ましく、ジアミン(1−2−1)、ジアミン(1−3)、ジアミン(2−7)、ジアミン(2−10)〜ジアミン(2−12)、ジアミン(2−26)、ジアミン(2−44)、ジアミン(2−45)、およびジアミン(3−1)〜ジアミン(3−6)が特に好ましい。
【0057】
上記のより好ましいジアミンの具体例のうち、高いVHRを液晶配向膜に付与することを重視する場合には、ジアミン(1−2−1)、ジアミン(1−3)、ジアミン(2−1)〜ジアミン(2−3)、ジアミン(2−26)、ジアミン(2−29)、ジアミン(2−37)、ジアミン(2−43)〜ジアミン(2−47)、ジアミン(3−1)〜ジアミン(3−12)、およびジアミン(4−1)〜ジアミン(4−12)がさらに好ましく、ジアミン(2−1)〜ジアミン(2−3)、ジアミン(2−26)、ジアミン(2−29)、ジアミン(2−44)、およびジアミン(3−1)〜ジアミン(3−6)が特に好ましい。
【0058】
上記のより好ましいジアミンの具体例のうち、液晶配向膜の体積抵抗値を低下させることを重視する場合には、ジアミン(1−2−1)、ジアミン(1−3)、ジアミン(2−1)〜ジアミン(2−3)、ジアミン(2−13)〜ジアミン(2−15)、ジアミン(2−20)〜ジアミン(2−26)、ジアミン(2−29)、ジアミン(2−39)およびジアミン(2−41)がさらに好ましく、ジアミン(2−1)〜ジアミン(2−3)、ジアミン(2−13)〜ジアミン(2−15)、ジアミン(2−26)およびジアミン(2−29)が特に好ましい。
【0059】
ところで、ジアミンはその構造の違いによって2種類に分けることができる。即ち、2つのアミノ基を結ぶ骨格を主鎖として見たときに、主鎖から分岐する基、即ち側鎖基を有するジアミンと側鎖基を持たないジアミンである。側鎖基を有するジアミンをテトラカルボン酸二無水物と反応させることによって、ポリマーの主鎖に対して多数の側鎖基を有するポリアミック酸が得られる。このようなポリマー主鎖に対して側鎖基を有するポリアミック酸を使用するとき、このポリマーを含有する液晶配向剤から形成される液晶配向膜は、液晶表示素子におけるプレチルト角を大きくすることができる。即ち、この側鎖基はプレチルト角を大きくする効果を有する基である。このような効果を有する側鎖基は炭素数3以上の基である必要があり、具体的な例として炭素数3以上のアルキル、炭素数3以上のアルコキシ、および炭素数3以上のアルコキシアルキルを有する基を挙げることができる。1つ以上の環を有する基であって、その末端の環が置換基として炭素数1以上のアルキル、炭素数1以上のアルコキシおよび炭素数2以上のアルコキシアルキルのいずれか1つを有する基も側鎖基としての効果を有する。このような側鎖基を有するジアミンを側鎖型ジアミンとし、このような側鎖基を持たないジアミンを非側鎖型ジアミンとするとき、前記のジアミン(3)およびジアミン(4)は側鎖型ジアミンであり、ジアミン(1−1)〜ジアミン(1−3)およびジアミン(2)は非側鎖型ジアミンである。
【0060】
そして、側鎖型ジアミンと非側鎖型ジアミンを適宜使い分けることにより、種々の表示素子のそれぞれに必要なプレチルト角に対応することができる。即ち、TN方式やVA方式に代表される縦電界方式では比較的大きなプレチルト角が必要となるため、側鎖型ジアミンが主に用いられる。このとき、さらにプレチルト角をコントロールするためには非側鎖型ジアミンを併用すればよい。非側鎖型ジアミンと側鎖型ジアミンの配合比率は、目的とするプレチルト角の大きさに応じて決めればよい。もちろん、側鎖基を適当に選ぶことにより、側鎖型ジアミンのみを用いて対応することも可能である。横電界方式ではプレチルト角が小さく、高い液晶配向性が必要となるため、非側鎖型ジアミンの少なくとも1つを用いればよい。
【0061】
本発明において、特に2度以上のプレチルト角を発現させるためには、側鎖型ジアミンの使用割合を、ジアミン全量中の5〜70モル%とすることが好ましく、10〜50モル%とすることがより好ましい。
【0062】
本発明の液晶配向剤に用いるポリアミック酸は、上記の酸無水物の混合物とジアミンを溶剤中で反応させることによって得られる。この合成反応においては、原料の選択以外に特別な条件は必要でなく、通常のポリアミック酸合成における条件をそのまま適用することができる。使用する溶剤については後述する。
【0063】
本発明液晶配向剤には、ラビングによる削れを防ぐためにシロキサン系ジアミンの少なくとも1つを併用してもよい。このシロキサン系ジアミンの好ましい例として、式(15)で表されるジアミンを挙げることができる。


ここに、R30およびR31は独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり、R32は炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンであり、yは1〜10の整数である。
【0064】
ジアミン(15)の具体例として、下記の化合物またはポリマーが挙げられる。


(式(15−2)のポリマーの分子量は850〜3000である。)
【0065】
これらのシロキサン系ジアミンを用いるとき、その添加量は原料として使用するジアミンの全量に対し0.5〜30モル%であることが好ましく、1〜10モル%であることがより好ましい。
【0066】
本発明の配向剤は、配向膜のガラス基板への密着性を調節する観点から、有機ケイ素化合物をさらに含有していてもよい。有機ケイ素化合物の例は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、およびジメチルポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等のシリコーンオイルである。
【0067】
この有機ケイ素化合物の配向剤への添加割合は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限はないが、強いて言えば、その濃度は配向剤に含有されるポリマーの重量に対し、0.01〜5重量%の範囲であることが好ましい。5重量%以下であれば、有機ケイ素化合物の添加に起因する液晶の配向不良が生ずる可能性を考慮しなくてよい。この添加割合は、特に好ましくは0.1〜3重量%の範囲である。
【0068】
本発明の配向剤は、特性の経時劣化や環境による劣化を防ぐ観点から、ポリアミック酸またはその誘導体のカルボキシル基と反応する官能基を2つ以上有する化合物、いわゆる架橋剤をさらに含有していてもよい。このような架橋剤の例としては、特許第3049699号公報、特開2005−275360号公報、特開平10−212484号公報等に記載されているような多官能エポキシ、イソシアネート材料等が挙げられる。
【0069】
また、架橋剤自身が反応して網目構造のポリマーとなり、ポリアミック酸またはポリイミドの膜強度を向上するような架橋剤も上記と同様な目的に使用することができる。このような架橋剤としては、特開平10−310608号公報、特開2004−341030号公報等に記載されているような多官能ビニルエーテル、マレイミド、またはビスアリルナジイミド誘導体等が挙げられる。これらの架橋剤を使用するとき、その好ましい割合は、ポリマー成分の合計量に対し5〜100重量%であり、より好ましくは10〜50重量%である。
【0070】
本発明の液晶配向剤には、ポリアミック酸の少なくとも1つを用いることが好ましいが、ポリアミック酸と酸無水物(I)を用いないで製造されるその他のポリアミック酸を組み合わせて用いてもよい。その他のポリアミック酸を組み合わせる場合の混合割合は、ポリマー全量を基準としてポリアミック酸が10〜95重量%、その他のポリアミック酸が5〜90重量%であり、ポリアミック酸の割合が少なくても十分な効果を得ることができる。本発明の液晶配向剤では、酸無水物とジアミンとの反応により得られるポリアミック酸以外のポリマー、例えばポリエステルやエポキシ樹脂などを併用することができる。しかしながら、このようなその他のポリマーを併用するときのその割合は、ポリマーの全重量を基準として30重量%以下であることが好ましい。
【0071】
本発明の配向剤は、ポリアミック酸を溶剤に溶解した溶液である。この溶剤は公知のポリアミック酸の製造や使用において用いられている溶剤から、使用目的に応じて適宜選択することができる。これらの溶剤を例示すれば以下のとおりである。
非プロトン性極性有機溶剤の例としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド(DMAc)、およびγ−ブチロラクトン(GBL)等のラクトンが挙げられる。
【0072】
上記以外の溶剤であって、塗布性改善等を目的とした溶剤の好ましい例としては、乳酸アルキル、3−メチル−3−メトキシブタノール、テトラリン、イソホロン、エチレングリコールモノアルキルエーテル(例:エチレングリコールモノブチルエーテル(BCS))、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル(例:ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(例:プロピレングリコールモノブチルエーテル)、マロン酸ジアルキル(例:マロン酸ジエチル)、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル(例:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)、およびこれらグリコールモノエーテル類のエステル化合物が挙げられる。これらの内、NMP、ジメチルイミダゾリジノン、GBL、BCS、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノメチルエーテルが特に好ましい。
【0073】
本発明の配向剤は、必要に応じて各種の添加剤をさらに含有することができる。例えば、塗布性のさらなる向上を望むときにはその目的に沿った界面活性剤を、帯電防止のさらなる向上を必要とするときには帯電防止剤を適量含有していてもよい。
【0074】
本発明の配向剤中のポリマーの濃度は、0.1〜40重量%であることが好ましく、1〜10重量%であることがより好ましい。この配向剤を基板に塗布するに当たって膜厚の調整が必要とされる場合には、予め溶剤により希釈して含有ポリマーの濃度を調整することができる。
【0075】
本発明の配向膜は、上記の配向剤を以下に述べる方法によって基板に塗布し、必要に応じて溶剤を比較的低温で加熱除去(予備焼成)し;次いで、溶剤除去をさらに促進し、ポリアミック酸のイミド化率を上げて配向膜本来の特性を発現させるため、比較的高温で加熱(本焼成)することによって得られる。このようにして得た膜には、必要に応じてラビング処理を施してもよい。
【0076】
本発明の液晶表示素子は、対向配置されている一対の基板と、前記一対の基板それぞれの対向している面の一方または両方に形成されている電極と、前記一対の基板それぞれの対向している面に形成された本発明の液晶配向膜と、前記一対の基板間に形成された液晶層とを有する液晶表示素子である。
【0077】
前記電極は、基板の一面に形成される電極であれば特に限定されない。このような電極には、例えばITOや金属の蒸着膜等が挙げられる。また電極は、基板の一方の面の全面に形成されていてもよいし、例えばパターン化されている所望の形状に形成されていてもよい。電極の前記所望の形状には、例えば櫛型またはジグザグ構造等が挙げられる。電極は、一対の基板のうちの一方の基板に形成されていてもよいし、両方の基板に形成されていてもよい。電極の形成の形態は液晶表示素子の種類に応じて異なり、例えばIPS型液晶表示素子の場合は前記一対の基板の一方に電極が配置され、その他の液晶表示素子の場合は前記一対の基板の双方に電極が配置される。前記基板または電極の上に前記液晶配向膜が形成される。
【0078】
前記液晶層は、液晶配向膜が形成された面が対向している前記一対の基板によって液晶組成物が挟持される形で形成される。液晶層の形成では、微粒子や樹脂シート等の、前記一対の基板の間に介在して適当な間隔を形成するスペーサを必要に応じて用いることができる。前記液晶組成物には、特に限定されず公知の液晶組成物を用いることができる。
【0079】
本発明の配向膜は、液晶配向膜として液晶表示素子を形成したときに、公知の全ての液晶組成物に対してその特性を改善できる。前記の方法によって製造された本発明の配向膜は、特に、ラビング処理の行いにくい大画面ディスプレイの配向欠陥改善に効果が大きい。このような大画面ディスプレイはTFTにより駆動制御されている。またこのようなTFT型液晶表示素子に使用される液晶組成物は、特許第3086228号公報、特許2635435号公報、特表平5−501735号公報、および特開平9−255956号公報に記載されている。従って、本発明の配向膜は、これらに記載された液晶組成物と組み合わせて用いるのが好ましい。
【0080】
本発明の液晶表示素子は、例えばIPS用とした時高い黒レベル値を示すなど、配向性に優れている。この黒レベルの値は以下のように測定することが出来る。すなわち、ラビング方向を逆平行にして組み立てたセルを、顕微鏡のステージに配置し、最小輝度になるよう偏光子および検光子を回転させる。光電子倍増管を用い、この最小輝度の測定を行う(偏光顕微鏡の倍率100倍;接眼10倍x対物10倍)。輝度の値が小さければ小さいほど、黒レベルが良好である。本願において実際には1500μV以下であることが好適で、900μV以下がさらに好適である。
【0081】
本発明の液晶表示素子は、液晶表示素子の信頼性に係る電気特性においても優れている。このような電気特性としては、電圧保持率およびイオン密度が挙げられる。電圧保持率(VHR)は、フレーム周期間に液晶表示素子に印加された電圧が液晶表示素子に保持される割合であり、液晶表示素子の表示特性を示す。本発明の液晶表示素子は、5Vおよび周波数30Hzの矩形波を用い、60℃の温度条件で測定される電圧保持率が97.0%以上であり、5Vおよび周波数0.3Hzの矩形波を用い、60℃の温度の条件で測定される電圧保持率が85.0%以上であることが、表示不良を防ぐ観点から好ましい。
【0082】
イオン密度は、液晶表示素子に電圧を掛けたときに生ずる液晶の駆動に起因する以外の過渡電流であり、液晶表示素子中の液晶に含まれるイオン性不純物の濃度の大小を示す。本発明の液晶表示素子は、イオン密度が300pC以下であることが、液晶表示素子の焼き付きを防ぐ観点から好ましい。
【0083】
本発明の液晶表示素子におけるプレチルト角は、例えば中央精機製液晶特性評価装置OMS−CA3型を用いて、Journal of Applied Physics, Vol.48, No.5, p.1783-1792 (1977)に記載されているクリスタルローテーション法によって測定することができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例および比較例により説明する。
実施例における液晶表示素子の評価法は次の通りである。
<配向膜のリタデーション、膜厚、およびプレチルト角測定>
分光エリプソメータM−2000U(J.A.Woollam Co. Inc.製)を使用して求めた。本実施例の場合、膜のリタデーション値はポリマー主鎖の配向度に比例して大きくなる。すなわち大きなリタデーション値を持つものは、大きな配向度を持つ。
<電圧保持率>
「水嶋他、第14回液晶討論会予稿集 p78(1988)」に記載の方法で行った。測定は、波高±5Vの矩形波をセルに印加して行った。測定は60℃で行った。この値は、印加した電圧がフレーム周期後どの程度保持されているかを示す指標であり、この値が100%ならば全ての電荷が保持されていることを示す。
<液晶中のイオン量測定(イオン密度)>
応用物理、第65巻、第10号、1065(1996)に記載の方法に従い、東陽テクニカ社製、液晶物性測定システム6254型を用いて測定した。周波数0.01Hzの三角波を用い、±10Vの電圧範囲、温度60℃で測定した(電極の面積は1cm)。イオン密度が大きいとイオン性不純物による焼き付き等の不具合が発生しやすい。即ち、イオン密度は焼き付き発生を予測する指標となる物性値である。
<重量平均分子量(Mw)>
液晶配向剤におけるポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC、Shodex社製、GF7MHQ)を用いて、溶出液として0.6重量%リン酸含有DMFを用い、カラム温度50℃、ポリスチレンを標準溶液として測定した。
<粘度>
粘度計(東機産業社製、TV−22)を用いて、25℃で測定した。
【0085】
実施例および比較例で用いた化合物を以下に示す。
酸無水物(A−1):ピロメリット酸二無水物(PMDA)
酸無水物(A−2):3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)
酸無水物(A−12):2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NPDA)
酸無水物(A−14):1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)
酸無水物(A−18):1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物(BDA)
酸無水物(A−20):1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(CHDA)
酸無水物(A−30):リカシッドTDA−100(新日本理化(株))
酸無水物(A−45):エチレンジアミン四酢酸二無水物(EDTA)
上記の酸無水物は、市販の化合物を無水酢酸処理し、その後真空乾燥して用いた。無水酢酸処理は以下のように行った。まず、各化合物に対し、10倍量の無水酢酸および必要に応じて同量のトルエンを加えて80℃で2時間加熱した。その後室温まで冷却して、沈殿をろ過した。
【0086】
酸無水物(A−21):2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCMP)
酸無水物(A−44):2,4,6,8−テトラカルボキシ−ビシクロ[3.3.0]オクタン二無水物(BODA)
これらの酸無水物は、それぞれ特開昭58−109479号公報およびJ. Am. Chem. Soc., Vol. 82, 6342 (1960)に記載の方法に従って合成した。
【0087】
ジアミン(2−1):4,4’−ジアミノジフェニルメタン(DDM)
ジアミン(2−7):1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン(DD2)
これらのジアミンは市販の化合物をそのまま用いた。
【0088】
ジアミン(2−11):1,4−ビス(4−アミノフェニル)ブタン(DD4)
ジアミン(2−26):N,N’−ジメチル−N,N’−ビス(4−アミノフェニル)エチレンジアミン(MPED)
ジアミン(2−29):1,4−ビス(4−アミノフェニル)ピペラジン(APPD)
ジアミン(2−44):1,3−ビス(4−(4−アミノフェニルメチル)フェニル)プロパン(APMPP)
これらのジアミンは、それぞれJ. Appl. Polym. Sci., Vol. 8, No.1, 533 (1964)、J. Polym. Sci., Part A, Polym. Chem., Vol. 30, No.6, 1099 (1992)、特開昭51−136917号公報、特開平11−193346号公報に記載の方法に従って合成した。
【0089】
ジアミン(3−5−1):R21=ペンチル
ジアミン(4−6−1):R26=ヘプチル
ジアミン(4−9−1):R26=プロピル
以上のジアミンは、それぞれ特開2004−341030号公報、EP601813号公報、特開平02−210328号公報に記載の方法を参考にして合成し、式(N)で表される化合物(以降では、化合物(N)と略称する。)は特開2002−162630号公報に記載の方法で合成した。
なお、ポリマーの調製は全て窒素気流中で行った。




【0090】
[合成例1]
<ポリアミック酸ワニスAの調製>
DDM(2.0411g、10.408mmol)をNMP(22.5g)に溶解し、酸無水物(I−1)(1.9271g、5.2040mmol)、およびCBDA(1.0317g、5.2040mmol)を室温以下に保ちながら加えた。2時間攪拌後、NMP(10.0g)およびBC(12.5g)を加えた。この溶液の粘度は108mPa・sであった。この溶液を70℃で約7時間攪拌して、粘度35mPa・sのワニスAを得た。このワニス中のポリアミック酸の重量平均分子量は54,000であった。
【0091】
[合成例2〜22]
<ポリアミック酸ワニスB〜Xの調製>
表1および2に示す原料組成で、合成例1と同様な方法によって、ワニスB〜Xを調製し、合成例1と同様に物性を測定した。なお、カッコ内はモル%を示す。
<表1>

【0092】
<表2>

【0093】
[実施例1]
<黒レベル測定用セル作成>
サンプル瓶にワニスAを1.0g計り取り、NMP/BC=1/1(重量%)を加え1.67gとした。透明ガラス基板上に、このポリアミック酸濃度約3重量%の溶液を滴下し、スピンナー法により塗布した(2,000rpm、15秒)。塗布後、基板を80℃で3分間加熱し、溶剤を蒸発させた後、オーブン中で230℃、20分間加熱処理した。この加熱処理により形成された膜厚約70nmのポリイミド膜をラビング処理した(押し込み;0.3mm、ステージ送り速度;60m/s、回転数;1000rpm、ラビング布;YA−18−R(レーヨン))。この配向膜を超純水中で5分間超音波洗浄してからオーブン中120℃で30分間乾燥した。配向膜を形成した面を内側にしてラビング方向が逆平行になるように2枚のガラス基板を対向配置させた後、25μmのギャップ剤を含んだエポキシ硬化剤でシールし、ギャップ25μmのアンチパラレルセルを作製した。このセルに、下記の液晶組成物Aを注入し、注入口を光硬化剤で封止した。次いで、110℃で30分間加熱処理を行い、液晶表示素子を作製した。このセルの黒レベルを測定したところ、1,380μVであった。
【0094】
<液晶組成物A>


【0095】
<プレチルト角および電気特性測定用セルの作成>
上記と同様にして製作した配向膜を形成したガラス基板を用い、7μmのギャップ剤を一方の配向膜上に散布した。これともう1枚の基板を配向膜面を内側にしてラビング方向が逆平行になるように対向配置させた後、エポキシ硬化剤でシールし、ギャップ7μmのアンチパラレルセルを作製した。このセルに、上記と同様に液晶組成物Aを注入し、注入口を光硬化剤で封止した。次いで、110℃で30分間加熱処理を行い、液晶表示素子を作製した。このセルのVHR(30Hzおよび0.3Hz)とイオン密度を測定した結果、98.7%、90.2%、および88pCであった。
【0096】
[実施例2〜13]
表1に示すワニスB〜ワニスLおよびワニスSを用い、実施例1と同様にして液晶表示素子を得た。このときの黒レベル、VHR、およびイオン密度の値を表3に示す。
<表3>

【0097】
[比較例1]
ワニスAの代わりにワニスUを用いた以外は実施例1と同様にして、液晶表示素子を作製した。このセルの黒レベル、VHR(30Hzおよび0.3Hz)、およびイオン密度を測定した結果、2,810μV、99.0%、91.5%、および46pCであった。
【0098】
[比較例2]
ワニスAの代わりにワニスVを用いた以外は実施例1と同様にして、液晶表示素子を作製した。このセルの黒レベル、VHR(30Hzおよび0.3Hz)、およびイオン密度を測定した結果、2130μV、95.0%、79.8%、および421pCであった。
【0099】
[実施例14]
ワニスAの代わりにワニスQを用いた以外は実施例1と同様にして、液晶表示素子を作製した。このセルのプレチルト角、VHR(30Hzおよび0.3Hz)、およびイオン密度を測定した結果、6.2度、99.0%、91.7%および83pCであった。また、セル組立前の配向膜付ガラス基板のリタデーションを測定した結果、0.22nmであった。
【0100】
[実施例15〜17]
表2に示すワニスRおよびワニスSを用い、実施例1と同様にして液晶表示素子を得た。このときのプレチルト角、VHR(30Hzおよび0.3Hz)、およびイオン密度値を表4に示す。また、セル組立前の配向膜付ガラス基板のリタデーション値も記載する。なお、カッコ内はモル%を示す。
【0101】
<表4>

【0102】
[実施例18]
ワニスQにポリマー成分に対し20重量%の化合物(N)を加えた以外は実施例14と同様にして、液晶表示素子を作製した。このセルのプレチルト角、VHR(30Hzおよび0.3Hz)、およびイオン密度を測定した結果、6.0度、99.3%、93.5%および31pCであった。またセル組立前の配向膜付ガラス基板のリタデーションを測定した結果、0.20nmであった。
【0103】
[実施例19]
ワニスQにポリマー成分に対し3重量%の3−アミノプロピルトリメトキシシランを加えた以外は実施例14と同様にして、液晶表示素子を作製した。このセルのプレチルト角、VHR(30Hzおよび0.3Hz)、およびイオン密度を測定した結果、6.2度、99.2%、92.1%および77pCであった。またセル組立前の配向膜付ガラス基板のリタデーションを測定した結果、0.20nmであった。
【0104】
[比較例3]
ワニスQの代わりにワニスWを用いた以外は実施例14と同様にして、液晶表示素子を作製した。このセルのプレチルト角、VHR(30Hzおよび0.3Hz)、およびイオン密度を測定した結果、6.0度、97.5%、84.8%、および248pCであった。またセル組立前の配向膜付ガラス基板のリタデーション値は0.13nmであった。
【0105】
[実施例20]
ワニスAの代わりにワニスMを用いた以外は実施例1と同様にして、液晶表示素子を作製した。このとき液晶組成物Aの代わりに、以下の液晶組成物Bをセル中に封入した。このセルのプレチルト角、VHR(30Hzおよび0.3Hz)、およびイオン密度を測定した結果、98.0度、97.9%、87.8%および179pCであった。このセルをクロスニコル下で偏光顕微鏡観察を行ったところ、ラビングに起因する光抜けの筋が若干観察されたが、良好な配向状態であった。
【0106】
<液晶組成物B>


【0107】
[実施例21〜23]
ワニスMの代わりにワニスN、ワニスO、およびワニスTを用いた以外は実施例20と同様にして、液晶表示素子を作製した。このセルのプレチルト角、VHR(30Hzおよび0.3Hz)、イオン密度、および光抜け程度の顕微鏡観察を行なった結果を表5にまとめる。
<表5>

【0108】
[比較例4]
ワニスMの代わりにワニスXを用いた以外は実施例20と同様にして、液晶表示素子を作製した。このセルのプレチルト角、VHR(30Hzおよび0.3Hz)、およびイオン密度を測定した結果、98.3度、98.5%、87.3%および186pCであった。このセルをクロスニコル下で偏光顕微鏡観察を行ったところ、実施例20〜23に比べてラビングに起因する光抜けの筋が多く、悪い状態であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物とその他のテトラカルボン酸二無水物との混合物をジアミンと反応させて得られるポリアミック酸およびその誘導体から選択される少なくとも1つのポリマーを含有する組成物であって、このテトラカルボン酸二無水物の混合物の全量を基準として式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物の割合が5〜95モル%であり、その他のテトラカルボン酸二無水物の割合が5〜95モル%である液晶配向剤:


式(I)において、ベンゼン環との結合位置が固定されていない無水フタル酸基の結合位置は、もう一つの無水フタル酸基の結合位置に対してパラ位またはメタ位である。
【請求項2】
その他のテトラカルボン酸二無水物が式(A−1)〜式(A−46)で表されるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つであり、ジアミンが式(1−1)〜式(1−3)、式(2)、式(3)および式(4)で表されるジアミンの群から選ばれる少なくとも1つのジアミンである、請求項1に記載の液晶配向剤:











式(1−1)において、bは0または1であり;シクロヘキシレンにおける任意の水素はメチルで置き換えられてもよく;
式(1−2)において、Wは−CH−または−NH−であり:


ここに、Xは単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり;このアルキレンの任意の−CH−は−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−CO−、−SO−、1、3−フェニレン、1、4−フェニレンまたはピペラジン−1,4−ジイルで置き換えられてもよく;


式(3)において、Xは単結合、−O−、−COO−、−OCO−または炭素数1〜6のアルキレンであり;Rは炭素数3〜30のアルキル、または式(a)で表される基であり;
式(a)において、XおよびXは独立して単結合または炭素数1〜4のアルキレンであり;環Bおよび環Cは独立して1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;RおよびRは独立してフッ素またはメチルであって、fおよびgは独立して0、1または2であり;c、dおよびeは独立して0または1であって、これらの合計は1〜3であり;Rは炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、炭素数2〜30のアルコキシアルキルまたはコレステリル基であり、これらのアルキル、アルコキシおよびアルコキシアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく:


ここに、Xは独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンであり;jは0または1であり;Rは水素、炭素数2〜12のアルキルまたは炭素数2〜12のアルコキシであり;環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;Xは単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり;hは0または1である。
【請求項3】
その他のテトラカルボン酸二無水物が式(A−1)〜式(A−4)、式(A−11)、式(A−12)、式(A−14)、式(A−18)〜式(A−21)、式(A−28)〜式(A−30)、式(A−32)、式(A−37)、式(A−39)〜式(A−41)および式(A−43)〜式(A−46)で表されるテトラカルボン酸無水物の少なくとも1つであり、ジアミンが式(1−2−1)、式(1−3)、式(2−1)〜式(2−3)、式(2−7)、式(2−10)〜式(2−27)、式(2−29)、式(2−37)〜式(2−39)、式(2−41)、式(2−43)〜式(2−47)、式(2−51)、式(3−1)〜式(3−12)および式(4−1)〜式(4−12)で表されるジアミンの少なくとも1つである、請求項2に記載の液晶配向剤:











ここに、R20は炭素数5〜16のアルキルであり、R21は炭素数3〜10のアルキルであり、R22は炭素数6〜16のアルキルまたはコレステリル基であり;


ここに、R26は炭素数4〜7のアルキルである。
【請求項4】
その他のテトラカルボン酸二無水物が式(A−1)、式(A−2)、式(A−12)、式(A−14)、式(A−18)、式(A−20)、式(A−21)、式(A−28)、式(A−30)、式(A−37)、式(A−40)および(A−45)で表されるテトラカルボン酸無水物の少なくとも1つであり、ジアミンが式(1−2−1)、式(1−3)、式(2−7)、式(2−10)〜式(2−12)、式(2−16)〜式(2−19)、式(2−21)〜式(2−27)、式(2−37)〜式(2−39)、式(2−41)、式(2−43)〜式(2−47)、式(2−51)、式(3−1)〜式(3−12)および式(4−1)〜式(4−12)で表されるジアミンの少なくとも1つである、請求項3に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
その他のテトラカルボン酸二無水物が式(A−1)、式(A−12)、式(A−14)、式(A−18)および式(A−45)で表されるテトラカルボン酸無水物の少なくとも1つであり、ジアミンが式(1−2−1)、式(1−3)、式(2−7)、式(2−10)〜式(2−12)、式(2−26)、式(2−44)、式(2−45)および式(3−1)〜式(3−6)で表されるジアミンの少なくとも1つである、請求項4に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
その他のテトラカルボン酸二無水物が式(A−14)、式(A−18)、式(A−19)、式(A−20)、式(A−21)、式(A−28)、式(A−29)、式(A−30)、式(A−32)、式(A−39)、式(A−40)、式(A−41)、式(A−43)、式(A−44)および式(A−46)で表されるテトラカルボン酸無水物の少なくとも1つであり、ジアミンが式(1−2−1)、式(1−3)、式(2−1)〜式(2−3)、式(2−26)、式(2−29)、式(2−37)、式(2−43)〜式(2−47)、式(3−1)〜式(3−12)および式(4−1)〜式(4−12)で表されるジアミンの少なくとも1つである、請求項3に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
その他のテトラカルボン酸二無水物が式(A−14)、式(A−20)、式(A−21)、式(A−39)、式(A−44)および式(A−46)で表されるテトラカルボン酸無水物の少なくとも1つであり、ジアミンが式(1−2−1)、式(1−3)、式(2−1)〜式(2−3)、式(2−26)、式(2−29)、式(2−44)および式(3−1)〜式(3−6)で表されるジアミンの少なくとも1つである、請求項6に記載の液晶配向剤。
【請求項8】
その他のテトラカルボン酸二無水物が式(A−1)、式(A−2)、式(A−3)、式(A−4)、式(A−11)、式(A−12)および式(A−45)で表されるテトラカルボン酸無水物の少なくとも1つであり、ジアミンが式(1−2−1)、式(1−3)、式(2−1)〜式(2−3)、式(2−13)〜式(2−15)、式(2−20)〜式(2−26)、式(2−29)、式(2−39)および式(2−41)で表されるジアミンの少なくとも1つである、請求項3に記載の液晶配向剤。
【請求項9】
その他のテトラカルボン酸二無水物が式(A−1)、式(A−2)、式(A−4)、式(A−12)および式(A−45)で表されるテトラカルボン酸無水物の少なくとも1つであり、ジアミンが式(1−2−1)、式(1−3)、式(2−1)〜式(2−3)、式(2−13)〜式(2−15)、式(2−26)および式(2−29)で表されるジアミンの少なくとも1つである、請求項8に記載の液晶配向剤。
【請求項10】
式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物を用いずに製造されるその他のポリアミック酸およびその誘導体から選択される少なくとも1つのポリマーをさらに含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の液晶配向剤の塗膜を加熱することによって形成される液晶配向膜。
【請求項12】
1対の基板とこの基板の間に形成される液晶層と、液晶層に電圧を印加する電極と、請求項11に記載の液晶配向膜とを有する液晶表示素子。

【公開番号】特開2011−175122(P2011−175122A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39624(P2010−39624)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】