説明

液晶配向剤及びそれを用いた液晶表示素子

液晶配向性、配向規制力、ラビング耐性に優れ、電圧保持特性が高く、なおかつ電荷蓄積を低減した、液晶配向膜を得るための液晶配向剤、及び表示不良、コントラストの低下、表示の焼き付きなどの起こり難い液晶表示素子を提供する。膜とした時の体積抵抗率が1×1010〜1×1014Ωcmである低抵抗のポリイミド前駆体と、特定構造を有する高配向のポリイミド前駆体またはポリイミドとを含有することを特徴とする液晶配向剤、及び、この液晶配向剤を用いた液晶表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、液晶配向膜を形成する際に用いる液晶配向剤、及びそれを用いた液晶表示素子に関するものである。
【背景技術】
液晶表示素子は、薄型・軽量を実現する表示デバイスとして、現在広く使用されている。液晶表示素子の表示特性は液晶の配向性、液晶のプレチルト角の大きさ、プレチルト角の安定性、電気特性などによって大きく影響される。この様な液晶表示素子の表示特性を向上する上では、用いる液晶材料はもとより、その液晶を均一に配向させるための液晶配向膜が重要となる。液晶配向膜の液晶配向性が低い場合、表示不良が発生したり、液晶の配向規制力が弱い場合、液晶を駆動させ続けた際に、液晶が初期状態に戻らないことによって表示画面が焼き付くという現象が生じる。さらに、液晶を駆動させた際の、電圧保持特性や電荷蓄積特性も液晶配向膜の影響をうけ、電圧保持率が低い場合は表示画面のコントラストが低下したり、直流電圧に対する電荷の蓄積が大きい場合は表示画面が焼き付くという現象が生じる。また、現在、液晶配向膜の形成において、ラビング処理を行うことが一般的であるが、液晶配向膜のラビング耐性が低いと、ラビングにより膜が剥離したり、膜表面が削れることがあり、このことが原因で表示不良が発生することもある。
このような、問題点に対し、ラビングによる膜の剥離、液晶配向性、電圧保持特性を解決するものとして、ジアミン部にアルキレン構造を有するポリアミック酸と、テトラカルボン酸部に脂肪族構造を有するポリアミック酸を混合した液晶配向膜が提案されている(例えば、特開平11−264984号公報、特開平11−335461号公報参照。)。しかしながら、液晶表示素子の高性能化に伴い、液晶配向膜に要求される特性も厳しくなってきており、従来の技術のみでは、全ての要求特性を満足する事はできなくなってきている。
【発明の開示】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであって、液晶配向性、配向規制力、ラビング耐性に優れ、電圧保持特性が高く、なおかつ電荷蓄積を低減した、液晶配向膜を得るための液晶配向剤、及び表示不良、コントラストの低下、表示の焼き付きなどの起こり難い液晶表示素子を提供することにある。
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、本発明を見出した。即ち、上記課題は、一般式(1)で表される構造単位を有し、膜とした時の体積抵抗率が1×1010〜1×1014Ωcmであるポリイミド前駆体と、一般式(2−1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体または一般式(2−2)で表される構造単位を有するポリイミドと、を含有することを特徴とする液晶配向剤、及び、この液晶配向剤を用いた液晶表示素子によって解決されることが見出された。

一般式(1)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Xは4価の有機基を表し、Aは2価の有機基を表す。


一般式(2−1)または(2−2)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Yは4価の有機基を表し、Bは2価の有機基を表し、かつBの10〜100モル%は下記(3)〜(5)のいずれかを構造中に有する2価の有機基、もしくはパラフェニレン基である。

式(3)中、mは1〜18の整数である。

式(4)中、ベンゼン環上の任意の水素原子の1個又は複数個は、一級アミノ基以外の1価の有機基で置換されていてもよく、mは0〜8の整数である。

式(5)中、ベンゼン環上の任意の水素原子の1個又は複数個は、一級アミノ基以外の1価の有機基で置換されていてもよく、mは1〜4の整数である。
【図面の簡単な説明】
図1:実施例で用いた2画素の横電界駆動用櫛歯電極の模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の液晶配向剤は、液晶配向膜を形成するのに用いる組成物であり、一般式(1)で表される構造単位を有し体積抵抗率が1×1010〜1×1014Ωcmである低抵抗成分のポリイミド前駆体(以下、特定重合体aとする)と、一般式(2−1)で表される構造単位を有する高配向成分のポリイミド前駆体または一般式(2−2)で表される構造単位を有する高配向成分のポリイミド(以下、特定重合体bとする)とを含有することを特徴とする。
特定重合体aと特定重合体bの含有量は、特定重合体aと特定重合体bの合計量に対して、特定重合体aが10〜95重量%であり、より好ましくは60〜90重量%である。即ち、特定重合体aと特定重合体bの合計量に対して、特定重合体bは90〜5重量%であり、より好ましくは40〜10重量%である。特定重合体aが少なすぎると、液晶配向膜の電荷蓄積特性やラビング耐性が悪化し、特定重合体bが少なすぎると、液晶の配向性や配向規制力が悪化する。本発明の液晶配向剤に含有される特定重合体aと特定重合体bは、それぞれ1種類であっても、2種類以上であっても良い。また、液晶配向膜のラビング耐性をより向上させる為には、一般式(1)のX、一般式(2−1)もしくは(2−2)のYのうち、XまたはYのどちらか一方に、脂環構造または脂肪族構造を有することが好ましい。
特定重合体a
特定重合体aは低抵抗成分のポリイミド前駆体であり、その体積抵抗率は1×1010〜1×1014Ωcmであるが、好ましくは1×1012〜1×1014Ωcmであり、より好ましくは1×1012〜5×1013Ωcmである。この体積抵抗率は、ポリイミド前駆体を膜とした時に示す値である。この抵抗率が高すぎると、電荷蓄積由来の表示焼き付き・ムラが発生し、低すぎると電圧保持特性が悪くなる場合がある。本発明の液晶配向剤は、通常、基板に塗布した後、焼成して用いられるので、特定重合体aの体積抵抗率も、焼成後に上記値を示すものが好ましい。その焼成の温度としては100〜350℃、好ましくは150〜300℃、さらに好ましくは200〜250℃、特に好ましくは220℃である。
特定重合体aの体積抵抗率は以下のようにして確認することができる。
ITO透明電極付きガラス基板上に、特定重合体aの溶液をスピンコートなどの方法で塗布し、80℃程度のホットプレート上で溶媒を蒸発させた後、目的とする温度で焼成し、膜厚約1μmの塗膜を形成させる。この塗膜表面にマスクを介してアルミ蒸着させ、0.05〜0.1cm程度の上部電極を形成し体積抵抗率測定用の試料とする。この試料のITO電極とアルミ電極との間に10Vの電圧を印加し、電圧印加から60秒後の電流値を測定する。この電流値と電極面積、膜厚の測定値とから体積抵抗率を算出する。
一般式(1)のAは2価の有機基であり、1種類であっても、2種類以上が混在していても構わない。また、その構造は特に限定されないが、少なくとも1種類は窒素原子を有する2価の有機基であることが好ましい。窒素原子を有する2価の有機基としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピペリジン環、ピペラジン環などの窒素原子を含む環構造を有する2価の有機基や、2級以上のアミノ基、アミド基、ウレア基などの含窒素基を有する2価の有機基が挙げられる。これら、窒素原子を有する2価の有機基の中でも、特に、下記(6)又は(7)のいずれかの構造を含む2価の有機基であることがより好ましい。

式(6)中、pは1〜5の整数であり、液晶の配向性の観点から、好ましくはpが1であり、更に好ましくは4,4’結合のジフェニルアミン基である。

式(7)は、液晶の配向性の観点から、好ましくは3,6結合のカルバゾール基である。
上記(6)又は(7)において、ベンゼン環上の任意の水素原子の1個又は複数個は、一級アミノ基以外の1価の有機基で置換されていてもよい。この1価の有機基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20の含フッ素アルキル基、炭素数2〜20の含フッ素アルケニル基、炭素数1〜20の含フッ素アルコキシ基、シクロヘキシル基、フェニル基、フッ素原子またはこれらの組み合わせからなる基などが挙げられる。液晶の配向性の観点からは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4の含フッ素アルキル基、炭素数2〜4の含フッ素アルケニル基、および炭素数1〜4の含フッ素アルコキシ基からなる群から選ばれる1価の有機基が好ましい。より好ましい(6)及び(7)の構造としては、ベンゼン環上の水素原子が無置換のものである。
一般式(1)のAにおける、窒素原子を有するAの比率は10〜100モル%が好ましく、より好ましくは60〜100モル%である。窒素原子を有するAを10モル%以上とすることにより、体積抵抗率を効果的に下げることができ、目的とする体積抵抗率のポリイミド前駆体を得ることが容易になる。特に(6)又は(7)の構造の場合は、ポリイミド前駆体が適度な体積抵抗率を有する上に、電圧保持特性が良く、かつ液晶配向膜に優れた電荷蓄積特性やラビング耐性を付与することができる。
また、一般式(1)のAは、液晶のプレチルト角を高める目的で、長鎖アルキル基、パーフルオロアルキル基、ステロイド骨格基など、チルト角を高める効果が知られている置換基を有する2価の有機基を混在させても良い。
一般式(1)のXは4価の有機基であり、1種類であっても、2種類以上が混在していても構わない。その構造は特に限定されないが、高い電圧保持特性とラビング耐性が得やすいという観点から、少なくとも1種類は脂環構造を有する4価の有機基、または脂肪族構造の4価の有機基であることが好ましい。この場合、脂環構造を有する4価の有機基、又は脂肪族構造の4価の有機基の、Xにおける好ましい比率は20〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%である。脂環構造を有する4価の有機基としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸などのテトラカルボン酸から4つのカルボン酸を除いた構造が好ましい。脂肪族構造の4価の有機基としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸から4つのカルボン酸を除いた構造が好ましい。
また、一般式(1)のXが、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸などから4つのカルボン酸を除いた構造である場合は、電圧保持特性を低下させる傾向はあるものの、液晶の配向性に優れ、電荷の蓄積をさらに少なくする効果があるので、液晶の配向性の向上と電荷の蓄積をより少なくすることを重視する場合は、Xをこれらの4価の有機基としたり、Xにこれらの4価の有機基を混在させても良い。
一般式(1)のRは水素原子またはアルキル基であり特に限定されない。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基などを挙げることができる。
一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体を得る方法は特に限定されない。通常は、一般式(1)のXを構成する為のテトラカルボン酸二無水物と、一般式(1)のAを構成する為のジアミンとの反応により、一般式中のRが水素原子であるポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を得ることができ、この方法は、特定重合体aを得る場合にも好ましく用いられる。また、一般式中のRがアルキル基であるポリイミド前駆体(ポリアミック酸アルキルエステル)を得る場合には、上記のポリアミック酸とメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコールとを脱水縮合させるか、一般式(1)のXを構成する為のテトラカルボン酸二無水物とメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコールとを反応させてテトラカルボン酸ジエステルとした後、一般式(1)のAを構成する為のジアミンと脱水縮合させて得ることができる。
複数種のXが特定の比率で混在するポリイミド前駆体を得る場合や、複数種のAが特定の比率で混在するポリイミド前駆体を得る場合には、Xを構成する為のテトラカルボン酸二無水物や、Aを構成する為のジアミンを、それぞれ目的とする混在比率で用いて反応させれば良い。例えば、ポリイミド前駆体中で窒素原子を有するAの比率を10モル%とする為には、ポリイミド前駆体の合成に用いるジアミン全量における、窒素原子を有するAを構成する為のジアミンの比率を10モル%とすれば良い。同様に、ポリイミド前駆体中で脂環構造を有するXの比率を20モル%とする為には、ポリイミド前駆体の合成に用いるテトラカルボン酸二無水物全量における、脂環構造を有するXを構成する為のテトラカルボン酸二無水物の比率を20モル%とすれば良い。
一般式(1)のAを構成する為のジアミンの具体例を以下に示すがこれらに限定されるものではない。
窒素原子を有するAを構成する為のジアミンとして、2、3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジン、2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−イソプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,6−ジアミノプリン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、2,4−ジアミノ−5−フェニルチアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、3,6−ジアミアクリジン、アクリノール、2,5−ビス(4−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、3,3’−ジアミノ−ジプロピルアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、2,6−ジアミノ−4−ニトロトルエン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル尿素等が挙げられる。
(6)又は(7)のいずれかの構造を含むAを構成する為のジアミンとして、下記(8)又は(9)の構造を有するジアミンを挙げることができる。

(式中、qは1〜5の整数である。)

上記(8)または(9)において、ベンゼン環上の任意の水素原子の1個又は複数個は、一級アミノ基以外の1価の有機基で置換されていてもよい。この1価の有機基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20の含フッ素アルキル基、炭素数2〜20の含フッ素アルケニル基、炭素数1〜20の含フッ素アルコキシ基、シクロヘキシル基、フェニル基、フッ素原子またはこれらの組み合わせからなる基などが挙げられる。液晶の配向性の観点からは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4の含フッ素アルキル基、炭素数2〜4の含フッ素アルケニル基、炭素数1〜4の含フッ素アルコキシ基から選ばれる1価の有機基が好ましい。より好ましい(8)及び(9)の構造としては、ベンゼン環上の水素原子が無置換のものである。
(8)又は(9)の構造を有するジアミンのうち、テトラカルボン酸二無水物との反応性及び配向膜としたときの液晶配向性の観点から4,4’−ジアミノジフェニルアミン、3,6−ジアミノカルバゾールが特に好ましい。
上記の具体例に挙げたジアミンは、特定重合体aを合成する為の原料として好ましいものであり、テトラカルボン酸二無水物との反応に用いるジアミンのうち、これらのジアミンを好ましくは10〜100モル%、より好ましくは60〜100モル%使用し合成された一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体は、特定重合体aとして好ましい。
その他、Aを構成する為のジアミンの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
脂肪族ジアミンの例として、ジアミノメタン、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,3−ジアミノ−2,2−ジメチルプロパン、1,4−ジアミノ−2,2−ジメチルブタン、1,6−ジアミノ−2,5−ジメチルヘキサン、1,7−ジアミノ−2,5−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−4,4−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−3−メチルヘプタン、1,9−ジアミノ−5−メチルノナン、2,11−ジアミノドデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン等が挙げられる。
脂環式ジアミンの例として、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、およびイソホロンジアミン等が挙げられる。
炭素環式芳香族ジアミンの例として、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ジアミノトルエン類(例えば、2,4−ジアミノトルエン)、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、2,5−ジアミノキシレン類、1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジアミノ−4−イソプロピルベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニル−2,2’−プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノスチルベン、4,4’−ジアミノスチルベン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ安息香酸フェニルエステル、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンジル、ビス(4−アミノフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(3−アミノフェニル)メチルスルフィンオキシド、ビス(4−アミノフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキシルホスフィンオキシド、1,8−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノアントラキノン、ジアミノフルオレン、ビス(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)テトラメチルジシロキサン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等が挙げられる。
液晶のプレチルト角を高めるAを構成する為のジアミンとして、1−ドデシルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−ヘキサデシルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−オクタデシルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]オクタン、4,4’−ジアミノ−3−ドデシルジフェニルエーテル、4−(4−トランス−n−ヘプチルシクロヘキシルフェノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(4−トランス−n−ペンチルシクロヘキシルフェノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−トランス−n−ペンチルビシクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート等が挙げられる。
一般式(1)のXを構成する為のテトラカルボン酸二無水物の具体例を以下に示すがこれらに限定されるものではない。
脂環構造を有するXを構成する為のテトラカルボン酸二無水物として、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。脂肪族構造のXを構成する為の、テトラカルボン酸二無水物として、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのうち、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、および1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる少なくとも一種類のテトラカルボン酸二無水物を用いることが特に好ましい。
その他、Xを構成する為のテトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物挙げられる。液晶の配向性の向上と電荷の蓄積をより少なくすることを重視する場合は、これら、芳香族テトラカルボン酸二無水物のうち、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、および1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる少なくとも一種類のテトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましい。
特定重合体b
特定重合体bは高配向成分のポリイミド前駆体(ポリアミック酸、ポリアミック酸アルキルエステル)、または高配向成分のポリイミドであり、一般式(2−1)または(2−2)で表される構造単位を有することを特徴とするものであり、これらの構造を含む液晶配向膜は液晶配向性、配向規制力に優れる。
一般式(2−1)または(2−2)中、Bは2価の有機基であり、1種類であっても、2種類以上が混在していても構わなが、少なくとも1種類は(3)〜(5)のいずれかを構造中に有する2価の有機基、又はパラフェニレン基である必要がある。一般式(2−1)または(2−2)のBにおける、これら特定構造を有するBの比率は、10〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは50〜100モル%である。この比率が少なすぎると、液晶配向性や配向規制力が悪化する場合がある。上記の特定構造を有するBと混在させる、その他のBの構造は特に限定されない。また、Bは液晶のプレチルト角を高める目的で、長鎖アルキル基、パーフルオロアルキル基、ステロイド骨格基など、チルト角を高める効果が知られている置換基を有する2価の有機基を混在させても良い。
式(3)中、mは1〜18の整数であるが、液晶の配向性および耐熱性の観点から、好ましくは1〜12であり、より好ましくは2〜8でる。また、式(3)を構造中に有する2価の有機基は、さらに芳香環を含むものであることが好ましい。その具体例としては、下記に示す構造を挙げられるがこれらに限定されるものではない。

式(10)〜(13)において、mは1〜18の整数であり、好ましくは1〜12であり、より好ましくは2〜8である。
式(4)中、mは0〜8の整数であるが、電圧保持特性の観点から、0〜3が好ましく、より好ましくは0〜2である。
式(5)中、mは1〜4の整数であるが、ポリイミド前駆体溶液またはポリイミド溶液の安定性の観点から、好ましくは1または2である。
式(4)、(5)、(10)〜(13)及びパラフェニレン基において、ベンゼン環上の任意の水素原子の1個又は複数個は、一級アミノ基以外の1価の有機基で置換されていてもよい。この1価の有機基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20の含フッ素アルキル基、炭素数2〜20の含フッ素アルケニル基、炭素数1〜20の含フッ素アルコキシ基、シクロヘキシル基、フェニル基、フッ素原子またはこれらの組み合わせからなる基などが挙げられる。液晶の配向性の観点からは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4の含フッ素アルキル基、炭素数2〜4の含フッ素アルケニル基、および炭素数1〜4の含フッ素アルコキシ基からなる群から選ばれる1価の有機基が好ましい。より好ましい構造としては、ベンゼン環上の水素原子が無置換のものである。
一般式(2−1)または(2−2)のYは4価の有機基であり、1種類であっても、2種類以上が混在していても構わない。その構造は特に限定されないが、液晶の配向性をより高めるという観点からは、少なくとも1種類は、芳香族構造を有する4価の有機基であることが好ましい。この場合、芳香族構造を有する4価の有機基の、Yにおける好ましい比率は20〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%である。芳香族構造を有する4価の有機基としては、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸などのテトラカルボン酸から4つのカルボン酸を除いた構造が好ましい。
また、一般式(2−1)または(2−2)のYが、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸などのテトラカルボン酸から4つのカルボン酸を除いた構造ある場合は、液晶の配向性を低下させる傾向はあるものの、電圧保持特性を向上させる効果があるので、電圧保持率を重視する場合は、Yをこれらの4価の有機基としたり、Yにこれらの4価の有機基を混在させても良い。
一般式(2−1)のRは水素原子またはアルキル基であり特に限定されない。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基などを挙げることができる。
一般式(2−1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体を得る方法は特に限定されない。通常は、一般式(2−1)のYを構成する為のテトラカルボン酸二無水物と、一般式(2−1)のBを構成する為のジアミンとの反応により一般式中のRが水素原子であるポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を得ることができ、この方法は、特定重合体bを得る場合にも好ましく用いられる。また、一般式中のRがアルキル基であるポリイミド前駆体(ポリアミック酸アルキルエステル)を得る場合には、上記のポリアミック酸とメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコールとを脱水縮合させるか、一般式(2−1)のYを構成する為のテトラカルボン酸二無水物とメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコールとを反応させてテトラカルボン酸ジエステルとした後、一般式(2−1)のBを構成する為のジアミンと脱水縮合させて得ることができる。
一般式(2−2)で表される構造単位を有するポリイミドは、一般式(2−1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体を閉環イミド化させて得ることができる。また、一般式(2−2)で表される構造単位を有するポリイミドとは、ポリマー構造中に一部でも一般式(2−2)で表される構造単位を有していればよく、必ずしもポリマー構造中に含まれる全てのポリイミド前駆体構造が閉環イミド化している必要はない。即ち、ポリマー中にポリイミド前駆体構造とポリイミド構造が混在するものであってもその範疇に含まれる。
複数種のYが特定の比率で混在するポリイミド前駆体を得る場合や、複数種のBが特定の比率で混在するポリイミド前駆体を得る場合には、Yを構成する為のテトラカルボン酸二無水物や、Bを構成する為のジアミンを、それぞれ目的とする混在比率で用いて反応させれば良い。例えば、ポリイミド前駆体中で特定構造を有するBの比率を10モル%とする為には、ポリイミド前駆体の合成に用いるジアミン全量における、特定構造を有するBを構成する為のジアミンの比率を10モル%とすれば良い。同様に、ポリイミド前駆体中で芳香族構造を有するYの比率を20モル%とする為には、ポリイミド前駆体の合成に用いるテトラカルボン酸二無水物全量における、芳香族構造を有するYを構成する為のテトラカルボン酸二無水物の比率を20モル%とすれば良い。また、複数種のYが特定の比率で混在するポリイミドを得る場合や、複数種のBが特定の比率で混在するポリイミドを得る場合は、上記のポリイミド前駆体を用いて閉環イミド化させればよい。
一般式(2−1)または(2−2)のBを構成する為のジアミンの具体例を以下に示すがこれらに限定されるものではない。
式(3)を構造中に有するBを構成する為のジアミンとして、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカンなど。さらに芳香族環も含むものとして、式(10)に対応する、1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェニル)ペンタン、1,6−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサン、1,7−ビス(4−アミノフェニル)ヘプタン、1,8−ビス(4−アミノフェニル)オクタン、1,9−ビス(4−アミノフェニル)ノナン、1,10−ビス(4−アミノフェニル)デカンなど。同様に、式(11)に対応する、1,2−ビス(4−アミノフェノキシ)エタン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,6−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘキサン、1,7−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8−ビス(4−アミノフェノキシ)オクタン、1,9−ビス(4−アミノフェノキシ)ノナン、1,10−ビス(4−アミノフェノキシ)デカンなど。同様に式(12)に対応する、ジ(4−アミノフェニル)エタン−1,2−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)プロパン−1,3−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ブタン−1,4−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ペンタン−1,5−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ヘキサン−1,6−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ヘプタン−1,7−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)オクタン−1,8−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ノナン−1,9−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)デカン−1,10−ジオエートなど。同様に式(13)に対応する、1,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕エタン、1,3−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕プロパン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ブタン、1,5−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ペンタン、1,6−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ヘキサン、1,7−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ヘプタン、1,8−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕オクタン、1,9−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ノナン、1,10−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕デカンなど。
式(4)を構造中に有するBを構成する為のジアミンとして、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ベンゼン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ベンゼンなど。
式(5)を構造中に有するBを構成する為のジアミンとして、4,4’−ジアミノベンジジン、4,4’−ジアミノ−p−ターフェニルなど。
BがパラフェニレンであるBを構成する為のジアミンとして、1,4−ジアミノベンゼン。
上記の具体例に挙げたジアミンは、特定重合体bを合成する為の原料として好ましいものであり、テトラカルボン酸二無水物との反応に用いるジアミンのうち、これらのジアミンを好ましくは10〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%使用し合成された一般式(2−1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体、または同様にして合成された一般式(2−2)で表される構造単位を有するポリイミドは、特定重合体bとして好ましい。
その他、特定構造以外のBを構成する為のジアミンの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
脂環式ジアミンの例として、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルアミン、およびイソホロンジアミン等が挙げられる。
炭素環式芳香族ジアミンの例として、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニル−2,2’−プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノスチルベン、4,4’−ジアミノスチルベン、4,4’−ジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ安息香酸フェニルエステル、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンジル、ビス(4−アミノフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(3−アミノフェニル)メチルスルフィンオキシド、ビス(4−アミノフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキシルホスフィンオキシド、1,8−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノアントラキノン、ジアミノフルオレン、ビス(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)テトラメチルジシロキサン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフエノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等が挙げられる。
2つのアミノ基以外に窒素原子を含むジアミンの例として、2,4−ジアミノジフェニルアミン、2,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−s−トリアジン、2,7−ジアミノジベンゾフラン、3,7−ジアミノフェノチアジン、2,5−ジアミノ−1,3,4−チアジアゾール、2,4−ジアミノ−6−フェニル−s−トリアジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン、N,N’−ビス(4−アミンフェニル)−N−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル尿素等が挙げられる。
液晶のプレチルト角を高めるBを構成する為のジアミンとして、1−ドデシルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−ヘキサデシルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−オクタデシルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]オクタン、4,4’−ジアミノ−3−ドデシルジフェニルエーテル、4−(4−トランス−n−ヘプチルシクロヘキシルフェノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(4−トランス−n−ペンチルシクロヘキシルフェノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−トランス−n−ペンチルビシクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート等が挙げられる。
ポリアミック酸の合成
特定重合体aまたは特定重合体bに用いるポリアミック酸を、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応により得る場合には、有機溶媒中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを混合して反応させる方法が簡便である。
上記反応の際に用いられる有機溶媒は、生成したポリアミック酸が溶解するものであれば特に限定されない。あえてその具体例を挙げるならば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。これらは単独でも、また混合して使用してもよい。さらに、ポリアミック酸を溶解させない溶媒であっても、生成したポリアミック酸が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、さらには生成したポリアミック酸を加水分解させる原因となるので、有機溶媒はなるべく脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを有機溶媒中で混合させる方法としては、ジアミン成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液を攪拌させ、テトラカルボン酸二無水物成分をそのまま、または有機溶媒に分散あるいは溶解させて添加する方法、逆にテトラカルボン酸二無水物成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液にジアミン成分を添加する方法、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを交互に添加する方法などが挙げられ、本発明においてはこれらのいずれの方法であっても良い。また、テトラカルボン酸二無水物成分またはジアミン成分が複数種の化合物からなる場合は、これら複数種の成分をあらかじめ混合した状態で反応させても良く、個別に順次反応させても良い。
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を有機溶剤中で反応させる際の温度は、通常0〜150℃、好ましくは5〜100℃、より好ましくは10〜80℃である。温度が高い方が重合反応は早く終了するが、高すぎると高分子量の重合体が得られない場合がある。また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となるので、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加しても構わない。
ポリアミック酸の重合反応に用いるテトラカルボン酸二無水物成分:ジアミン成分の比率は、モル比で1:0.8〜1.2であることが好ましい。また、ジアミン成分を過剰にして得られたポリアミック酸は、溶液の着色が大きくなる場合があるので、溶液の着色が気になる場合、上記の比率は1:0.8〜1とすれば良い。通常の重縮合反応と同様に、このモル比が1:1に近いほど得られるポリアミック酸の分子量は大きくなる。ポリアミック酸の分子量は、小さすぎるとそこから得られる塗膜の強度が不十分となる場合があり、逆にポリアミック酸の分子量が大きすぎると、液晶配向剤を塗布溶液としたときの溶液粘度が高くなり過ぎて、塗膜形成時の作業性、塗膜の均一性が悪くなる場合がある。従って、本発明の液晶配向剤に用いるポリアミック酸は還元粘度(濃度0.5dl/g、NMP中30℃)で0.1〜2.0が好ましく、より好ましくは0.2〜1.5である。同様の理由で、本発明の液晶配向剤に用いるポリイミド前駆体またはポリイミドの還元粘度は0.1〜2.0(濃度0.5dl/g、NMP中30℃)が好ましく、より好ましくは0.2〜1.5である。
ポリアミック酸の重合に用いた溶媒を本発明の液晶配向剤中に含有させたくない場合や、反応溶液中に未反応のモノマー成分や不純物が存在し、これを除去したい場合には、ポリアミック酸の沈殿回収および精製を行う。その方法は、ポリアミック酸溶液を攪拌している貧溶媒に投入し、沈殿回収する方法が簡便である。ポリアミック酸の沈殿回収に用いる貧溶媒としては特に限定されないが、メタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが例示できる。貧溶媒に投入することにより沈殿したポリアミック酸は濾過・洗浄して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱乾燥してパウダーとすることが出来る。このパウダーを更に良溶媒に溶解して、再沈殿する操作を2〜10回繰り返すと、ポリアミック酸を精製することもできる。一度の沈殿回収操作では不純物が除ききれないときは、この精製工程を行うことが好ましい。この際の貧溶媒として例えばアルコール類、ケトン類、炭化水素など3種類以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。上記の沈殿回収および精製操作は、後述するポリアミック酸アルキルエステルやポリイミドの合成に際しても同様に行うことができる。
ポリアミック酸アルキルエステルの合成
特定重合体aまたは特定重合体bに用いるポリアミック酸アルキルエステルを得る場合には、前記で得たポリアミック酸を塩化チオニルなどで酸クロライド化し、これとメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコールと縮合させる方法が簡便である。その他の方法としては、ジシクロカルボジイミドなどの脱水剤を用い、前記で得たポリアミック酸からポリイソイミドを合成し、これと上記アルコールと反応させる方法などが挙げられる。またテトラカルボン酸二無水物とメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコールとを反応させてテトラカルボン酸ジエステルとした後、リン系縮合剤やカルボニルジイミダゾール等の縮合剤を用い、ジアミンと脱水縮合させて得ることもできる。
ポリイミドの合成
特定重合体bに用いるポリイミドを得る場合は、一般式(2−1)で表される構造単位を有するポリアミック酸を、脱水閉環させる方法が簡便である。このイミド化反応は、ポリアミック酸の溶液をそのまま加熱する熱イミド化、ポリアミック酸の溶液に触媒を添加する化学的イミド化が一般的であるが、比較的低温でイミド化反応が進行する化学的イミド化の方が、得られるポリイミドの分子量低下が起こりにくく好ましい。
化学的イミド化は、ポリアミック酸を有機溶媒中において、塩基性触媒と酸無水物の存在下で攪拌することにより行うことができる。このときの反応温度は通常、−20〜250℃、好ましくは0〜180℃であり、反応時間は通常、1〜100時間で行うことができる。塩基性触媒の量はアミック酸基の0.5〜30モル倍、好ましくは2〜20モル倍であり、酸無水物の量はアミック酸基の1〜50モル倍、好ましくは3〜30モル倍である。塩基性触媒や酸無水物の量が少ないと反応が十分に進行せず、また多すぎると反応終了後に完全に除去することが困難となる。この時に用いる塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができ、中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。また、酸無水物としては無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などを挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。有機溶媒としては前述したポリアミック酸合成時に用いた溶媒を使用することができる。化学的イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
このようにして得られたポリイミド溶液は、添加した触媒が溶液内に残存しているので、本発明の液晶配向剤に用いるためには、ポリアミック酸の合成で述べたポリマーの沈殿回収をすることが好ましい。ポリイミドの沈殿回収に用いる貧溶媒やその操作は前述したとおりである。
液晶配向剤
以下に説明する本発明の液晶配向剤の形態は、特定重合体a及び特定重合体bを含有する塗布液であるが、基板上に均一な薄膜を形成することができるのであれば、他の形態であっても良い。
特定重合体a及び特定重合体bを含有する塗布液とするには、それぞれの特定重合体の反応溶液をそのまま混合してもよく、固形物の特定重合体を有機溶媒に溶解させたのち混合してもよく、また固形物の特定重合体を有機溶媒に溶解させながら混合してもよい。
この有機溶媒としては、含有される樹脂成分を溶解させるものであれば特に限定されないが、あえてその具体例を挙げるならば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン等を挙げることができ、これらは1種類でも複数種類を混合して用いても良い。
また、単独では樹脂成分を溶解させない溶媒であっても、樹脂成分が析出しない範囲であれば、本発明の液晶配向剤に混合することができる。特に、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステルなどの低表面張力を有する溶媒を適度に混在させることにより、基板への塗布時に塗膜均一性が向上することが知られており、本発明の液晶配向剤においても好適に用いられる。
本発明の液晶配向剤である塗布液は、形成させようとする液晶配向膜の厚みの設定によって固形分濃度を適宜変更することができるが、1〜10重量%とすることが好ましい。1重量%未満では均一で欠陥のない塗膜を形成させることが困難となり、10重量%よりも多いと溶液の保存安定性が悪くなる場合がある。
その他、本発明の液晶配向剤には、基板に対する塗膜の密着性を向上させるために、シランカップリング剤などの添加剤を加えてもよく、また、他の樹脂成分を添加してもよい。
以上のようにして得られた本発明の液晶配向剤は、必要に応じて濾過した後、基板に塗布し、乾燥、焼成して塗膜とすることができ、この塗膜面をラビングや光照射などの配向処理をすることにより、液晶配向膜として使用することができる。
この際、用いる基板としては透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、アクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板などを用いることができ、液晶駆動のためのITO電極などが形成された基板を用いることがプロセスの簡素化の観点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極はアルミ等の光を反射する材料も使用できる。
液晶配向剤の塗布方法としては、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などが挙げられるが、生産性の面から工業的には転写印刷法が広く用いられており、本発明の液晶配向剤においても好適に用いられる。
液晶配向剤を塗布した後の乾燥の工程は、必ずしも必要とされないが、塗布後〜焼成までの時間が基板ごとに一定していない場合や、塗布後ただちに焼成されない場合には、乾燥工程を含める方が好ましい。この乾燥は、基板の搬送等により塗膜形状が変形しない程度に溶媒が蒸発していれば良く、その乾燥手段については特に限定されない。具体例を挙げるならば、50〜150℃、好ましくは80〜120℃のホットプレート上で、0.5〜30分、好ましくは1〜5分乾燥させる方法がとられる。
液晶配向剤の焼成は、100〜350℃の任意の温度で行うことができるが、好ましくは150℃〜300℃であり、さらに好ましくは200℃〜250℃である。液晶配向剤中にポリイミド前駆体を含有する場合は、この焼成温度によってポリイミド前駆体からポリイミドへの転化率が変化するが、本発明の液晶配向剤は、必ずしも100%イミド化させる必要は無い。ただし、液晶セル製造行程で必要とされる、シール剤硬化などの熱処理温度より、10℃以上高い温度で焼成することが好ましい。
焼成後の塗膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5〜300nm、好ましくは10〜100nmである。
上記のようにして本発明の液晶配向剤から得られた液晶配向膜は、優れた特性を有しているので、TN、STN、TFT、VA、横電界型等の液晶表示素子、更には、強誘電性および反強誘電性の液晶表示素子用の液晶配向膜として用いることができる。特に、配向規制力由来の焼き付きが起こりやすい横電界型の液晶表示素子用の液晶配向膜として好適に用いることができる。
液晶表示素子
本発明の液晶表示素子は、上記した手法により本発明の液晶配向剤から液晶配向膜付き基板を得た後、公知の方法で液晶セルを作製し、液晶表示素子としたものである。液晶セル作成の一例を挙げるならば、液晶配向膜の形成された1対の基板を、通常、1〜30μm、好ましくは2〜10μmのスペーサーを挟んで、ラビング方向が好ましくは、0〜270°の任意の角度となるように設置して周囲をシール剤で固定し、液晶を注入して封止する方法が一般的である。液晶封入の方法については特に制限されず、作製した液晶セル内を減圧にした後液晶を注入する真空法、液晶を滴下した後封止を行う滴下法などが例示できる。
このようにして、本発明の液晶配向剤を用いて作製した液晶表示素子は、液晶の配向性、配向規制力に優れ、かつ優れた電気特性を有しているため、コントラストの低下や焼き付きの起こり難い液晶表示デバイスとすることができ、TN、STN、TFT、VA、横電界型等の液晶表示素子などネマティック液晶を用いた種々の方式による表示素子に好適に用いられる。また、使用する液晶を選択することで、強誘電性および反強誘電性の液晶表示素子にも使用することができる。これらの液晶表示素子のなかでも、配向規制力由来の焼き付きが起こりやすい横電界型の液晶表示素子に特に好ましく用いられる。
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
本実施例で使用する略号の説明
(テトラカルボン酸二無水物)
TC−1: 1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
TC−2: 3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物
TC−3: 1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物
TC−4: ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物
TC−5: ピロメリット酸二無水物
(ジアミン)
DA−1: 4,4’−ジアミノジフェニルアミン
DA−2: 3,6−ジアミノカルバゾール
DA−3: 4,4’−ジアミノジフェニルメタン
DA−4: 1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン
DA−5: ジ(4−アミノフェニル)ブタン−1,4−ジオエート
DA−6: 1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン
DA−7: 1,8−ビス(4−アミノフェノキシ)オクタン
DA−8: 1,5−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ペンタン
DA−9: 1,6−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ヘキサン
DA−10: 4,4’−ジアミノ−p−ターフェニル
DA−11: パラフェニレンジアミン
DA−12: 4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
DA−13: 1,3−ジアミノ−4−オクタデシルオキシベンゼン
(有機溶媒)
NMP: N−メチル−2−ピロリドン
GBL: γ−ブチロラクトン
BCS: ブチルセロソルブ
(合成例)
特定重合体aの合成
(合成例1)
TC−1を18.73g(0.094mol)と、DA−1を19.61g(0.1mol)とをNMP345.1g中で混合し、室温で5時間反応させて、TC−1/DA−1からなるポリアミック酸溶液を得た。重合反応は容易かつ均一に進行し、得られたポリアミック酸の還元粘度は1.18dl/g(濃度0.5g/dl,NMP中30℃)であった。さらにこの溶液をポリアミック酸5重量%、NMP75重量%、BCS20重量%となるように希釈し、ポリアミック酸溶液(PA−a1)を得た。
このポリアミック酸溶液(PA−a1)をITO透明電極付きガラス基板にスピンコートし、80℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、220℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚1μmの塗膜を形成させた。その後、塗膜表面にアルミを蒸着させ、上部電極を形成させた(電極面積0.0707cm)。ITOとアルミ電極間に10Vの電圧を印加し、60秒後の電流値より体積抵抗率を算出した。その結果、3×1012Ωcmであった。
(合成例2〜11)
合成例1と同様にテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、NMP中で混合し、室温で5〜24時間反応させてた後、NMPとBCSで希釈して、ポリアミック酸5重量%、NMP75重量%、BCS20重量%となるように希釈し、ポリアミック酸溶液(PA−a2〜PA−a11)を得た。合成例1を含め、用いた原料、及び得られたポリアミック酸の還元粘度、体積抵抗率を下記に示す。なお括弧内の数字は共重合の比率を表す。
PA−a1:1.18dl/g、3×1012Ωcm、TC−1/DA−1
PA−a2:1.08dl/g、3×1012Ωcm、TC−2/DA−1
PA−a3:0.62dl/g、3×1012Ωcm、TC−3/DA−1
PA−a4:0.68dl/g、2×1012Ωcm、TC−4/DA−1
PA−a5:1.31dl/g、2×1012Ωcm、TC−5/DA−1
PA−a6:1.28dl/g、3×1012Ωcm、TC−1/DA−2
PA−a7:1.08dl/g、4×1013Ωcm、TC−1/DA−1(60),DA−3(40)
PA−a8:0.95dl/g、3×1012Ωcm、TC−1(50),TC−5(50)/DA−1
PA−a9:1.31dl/g、7×1012Ωcm、TC−1(80),TC−2(20)/DA−1(80),DA−3(20)
PA−a10:1.25dl/g、4×1013Ωcm、TC−1(80),TC−2(20)/DA−1(60),DA−3(40)
PA−a11:1.05dl/g、2×1013Ωcm、TC−1/DA−1(50)、DA−4(50)
特定重合体bの合成
(合成例12)
TC−5を20.07g(0.092mol)と、DA−4を29.23g(0.1mol)とをNMP443.7g中で混合し、室温で5時間反応させてTC−5/DA−4からなるポリアミック酸溶液を得た。重合反応は容易かつ均一に進行し、得られたポリアミック酸の還元粘度は0.92dl/g(濃度0.5g/dl,NMP中30℃)であった。さらにこの溶液をポリアミック酸5重量%、NMP75重量%、BCS20重量%となるように希釈し、ポリアミック酸溶液(PA−b1)を得た。
(合成例13〜24)
合成例12と同様にテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、NMP中で混合し、室温で5〜24時間反応させてた後、NMPとBCSで希釈して、ポリアミック酸5重量%、NMP75重量%、BCS20重量%となるように希釈し、ポリアミック酸溶液(PA−b2〜PA−b12)を得た。合成例12を含め、用いた原料、及び得られたポリアミック酸の還元粘度を下記に示す。なお括弧内の数宇は共重合の比率を表す。
PA−b1:0.92dl/g、TC−5/DA−4
PA−b2:1.02dl/g、TC−5/DA−5
PA−b3:1.15dl/g、TC−5/DA−6
PA−b4:1.07dl/g、TC−1/DA−6
PA−b5:0.87dl/g、TC−1/DA−7
PA−b6:1.02dl/g、TC−1/DA−8
PA−b7:1.00dl/g、TC−1/DA−9
PA−b8:1.20dl/g、TC−1/DA−10
PA−b9:0.70dl/g、TC−1/DA−11
PA−b10:0.69dl/g、TC−1/DA−6(10),DA−3(90)
PA−b11:1.04dl/g、TC−5/DA−6(50),DA−12(50)
PA−b12:1.05dl/g、TC−1(50),TC−5(50)/DA−6
(合成例25)
TC−2を29.77(0.099mol)と、DA−6を28.64g(0.1mol)とをNMP330.7g中で混合し、室温で5時間反応させてポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液100gをNMPにより5重量%に希釈し、さらにイミド化触媒として無水酢酸26.1g、ピリジン12.1gを加え、40℃で3時間反応させた。この反応溶液を1.2Lのメタノール中に投入し、得られた沈殿物を濾別し、メタノールで充分洗浄した後、100℃で減圧乾燥し、白色のポリイミド粉末を得た。得られたポリイミドの還元粘度は0.9dl/gであった。この粉末5gをGBL80g、BCS15gに溶解させ、ポリイミド溶液(PI−b13)とした。
(合成例26)
TC−2を29.77(0.099mol)と、DA−11を8.65g(0.08mol)、DA−13を7.53g(0.02mol)とをNMP260.2g中で混合し、室温で10時間反応させてポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液100gをNMPにより5重量%に希釈し、さらにイミド化触媒として無水酢酸24.6g、ピリジン11.4gを加え、40℃で3時間反応させた。この反応溶液を1.2Lのメタノール中に投入し、得られた沈殿物を濾別し、メタノールで充分洗浄した後、100℃で減圧乾燥し、白色のポリイミド粉末を得た。得られたポリイミドの還元粘度は0.7dl/gであった。この粉末5gをGBL80g、BCS15gに溶解させ、ポリイミド溶液(PI−b14)とした。
(合成例27)
TC−1を18.63g(0.095mol)と、DA−3を19.83g(0.1mol)とをNMP217.9g中で混合し、室温で8時間反応させてポリアミック酸溶液を得た。重合反応は容易かつ均一に進行し、得られたポリアミック酸の還元粘度は1.00dl/g(濃度0.5g/dl,NMP中30℃)であった。さらにこの溶液をポリアミック酸5重量%、NMP75重量%、BCS20重量%となるように希釈し、ポリアミック酸溶液(PA−1)を得た。ポリアミック酸の体積抵抗率を合成例1と同様に測定したところ2×1014Ωcmであった。
【実施例1】
合成例で得られたポリアミック酸溶液(PA−a1)と(PA−b1)を重量比で80/20になるように混合して本発明の液晶配向剤を得た。
この液晶配向剤を用い、ラビング耐性、電圧保持特性、電荷蓄積特性、液晶配向性、配向規制力の評価を行った。
<ラビング耐性の評価>(ラビング傷、ラビング削れ)
液晶配向剤をITO電極付きガラス基板にスピンコートし、80℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、220℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させた。この塗膜面をロール径120mmのラビング装置でレーヨン布を用いて、ロール回転数300rpm、ロール進行速度20mm/sec、押し込み量0.5mmの条件でラビングし、液晶配向膜付き基板を得た。
この液晶配向膜付き基板のラビング表面を、共焦点レーザー顕微鏡で観察し、膜表面の傷、及び削れカスの付着の有無を確認した。なお、共焦点レーザー顕微鏡の観察は10倍の拡大率で行った。
<電圧保持特性の評価>(電圧保持率)
液晶配向剤をITO電極付きガラス基板にスピンコートし、80℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、220℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させた。この塗膜面をロール径120mmのラビング装置でレーヨン布を用いて、ロール回転数300rpm、ロール進行速度20mm/sec、押し込み量0.5mmの条件でラビングし、液晶配向膜付き基板を得た。
この液晶配向膜付き基板を2枚用意し、その1枚の液晶配向膜面上に6μmのスペーサーを散布した後、その上からシール剤を印刷し、もう1枚の基板を液晶配向膜面が向き合いラビング方向が直行するようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC−2003(メルク・ジャパン製)を注入し、注入口を封止して、ツイストネマティック液晶セルを得た。
このツイストネマティック液晶セルに、23℃の温度下で4Vの電圧を60μs間印加し、16.67ms後の電圧を測定して、電圧がどのくらい保持できているかを電圧保持率として計算した。また、90℃の温度下でも同様の測定をした。
<電荷蓄積特性の評価>(直流電圧印可後の残留電圧)
電圧保持特性を測定したツイストネマティック液晶セルに、23℃の温度下で直流3Vの電圧を重畳した±3V/30Hzの矩形波を60分間印加し、直流3Vを切った直後の液晶セル内に残る残留電圧を光学的フリッカー消去法で測定した。
<液晶配向性評価>(アンチパラレル液晶セルの初期配向)
液晶配向剤をITO電極付きガラス基板にスピンコートし、80℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、220℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させた。この塗膜面をロール径120mmのラビング装置でレーヨン布を用いて、ロール回転数800rpm、ロール進行速度10mm/sec、押し込み量0.8mmの条件でラビングし、液晶配向膜付き基板を得た。
この液晶配向膜付き基板を2枚用意し、その1枚の液晶配向膜面上に6μmのスペーサーを散布した後、その上からシール剤を印刷し、もう1枚の基板を液晶配向膜面が向き合いラビング方向が180°になるようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC−2003(メルク・ジャパン製)を注入し、注入口を封止して、アンチパラレル液晶セルを得た。
このアンチパラレル液晶セルを、2枚の偏光板の偏光方向を交差させて重ね合わせた間に挿入し、液晶の配向状態を目視で観察した。
<配向規制力評価>(横電界駆動セルの交流駆動焼き付き)
図1に示すような2画素(1画素が約1cm)の横電界駆動用櫛歯電極(Cr電極:電極幅20μm,電極間隔20μm,電極高さ120nm)が形成されているガラス基板に、液晶配向剤をスピンコートした。80℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、220℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させた。この塗膜面をロール径120mmのラビング装置でレーヨン布を用いて、ロール回転数300rpm、ロール進行速度20mm/sec、押し込み量0.5mmの条件でラビングした。ラビング方向は櫛歯の方向に対して15°となるようにした。また、対向基板として電極が形成されていないガラス基板にも、同様に塗膜を形成させ、ラビングした。だたし、電極の無いガラス基板のラビング方向は、櫛歯電極付き基板と張り合わせた後、それぞれのラビング方向が0°になるようにした。
上記、2枚の基板を一組とし、その1枚の液晶配向膜面上に6μmのスペーサーを散布した後、その上からシール剤を印刷し、もう1枚の基板を、液晶配向膜面が向き合いラビング方向が0°になるようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC−2042(メルク・ジャパン製)を注入し、注入口を封止して、横電界駆動液晶セルを得た。
この横電界駆動液晶セルを、60℃の温度下で、1画素にのみ±30V/30Hzの矩形波を3時間印加した。電圧を切った後の液晶セルは、23℃の室温にて送風機で風を当てながら冷却した。約10分後、ほぼ室温まで冷却された液晶セルを、2枚の偏光板の偏光方向を交差させて重ね合わせた間に挿入し、電圧を印可した画素と電圧を印可しなかった画素とのコントラストを目視で確認した。このとき、両画素の明暗に差がないものを配向規制力良好とした。
<評価結果>
上記評価の結果を以下に示す。
ラビング耐性:ラビング後の配向膜表面に傷や削れカスは見られなかった。
電圧保持特性:23℃における電圧保持率は99.0%、90℃では85.9%であった。
電荷蓄積特性:残留電圧は0Vであった。
液晶配向性:良好。液晶は欠陥なく均一に配向していた。
配向規制力:良好。電圧を印可した画素と電圧を印可しなかった画素とに違いは見られなかった。
【実施例2〜19】
合成例で得られたポリアミック酸溶液およびポリイミド溶液を用い、下記に示す割合で混合して本発明の液晶配向剤を得た。この液晶配向剤を用いて実施例1と同様に評価を行った。その結果は後述する表1に示す。
実施例2:(PA−a1)/(PA−b5)=70/30
実施例3:(PA−a1)/(PA−b6)=70/30
実施例4:(PA−a1)/(PA−b9)=80/20
実施例5:(PA−a1)/(PA−b11)=80/20
実施例6:(PA−a1)/(PA−b12)=70/30
実施例7:(PA−a2)/(PA−b7)=70/30
実施例8:(PA−a3)/(PA−b8)=70/30
実施例9:(PA−a4)/(PA−b4)=80/20
実施例10:(PA−a5)/(PA−b10)=90/10
実施例11:(PA−a6)/(PA−b3)=80/20
実施例12:(PA−a6)/(PA−b4)=80/20
実施例13:(PA−a7)/(PA−b4)=80/20
実施例14:(PA−a8)/(PA−b2)=90/10
実施例15:(PA−a9)/(PA−b3)=80/20
実施例16:(PA−a10)/(PA−b4)=60/40
実施例17:(PA−a11)/(PA−b9)=70/30
実施例18:(PA−a9)/(PI−b13)=80/20
実施例19:(PA−a9)/(PI−b14)=80/20

(比較例1)
合成例で得られたポリアミック酸溶液(PA−a1)と(PA−1)を重量比で80/20になるように混合して比較の為の液晶配向剤を得た。
この液晶配向剤を用い、実施例1と同様にラビング耐性、電圧保持特性、電荷蓄積特性、液晶配向性、配向規制力の評価を行った。その結果を以下に示す。
ラビング耐性:ラビング後の配向膜表面に傷や削れカスは見られなかった。
電圧保持特性:23℃における電圧保持率は99.2%、90℃では91.0%であった。
電荷蓄積特性:残留電圧は0Vであった。
液晶配向性:液晶の注入方向に沿って扇状に流動配向が見られ、均一に配向していなかった。
配向規制力:電圧を印可した画素と電圧を印可しなかった画素との間に、はっきりとしたコントラストが見られ、電圧を印可した画素の液晶が元の配向状態に戻っていないことが確認された。
(比較例2)
合成例で得られたポリアミック酸溶液(PA−1)と(PA−b4)を重量比で80/20になるように混合して比較の為の液晶配向剤を得た。
この液晶配向剤を用い、実施例1と同様にラビング耐性、電圧保持特性、電荷蓄積特性、液晶配向性、配向規制力の評価を行った。その結果を以下に示す。
ラビング耐性:ラビング後の配向膜表面に、大きな傷、及び削れカスが観察された。
電圧保持特性:23℃における電圧保持率は98.9%、90℃では88.2%であった。
電荷蓄積特性:残留電圧は1.7Vと非常に大きな値であった。
液晶配向性:液晶は欠陥なく均一に配向していた。
配向規制力:電圧を印可した画素と電圧を印可しなかった画素とに違いは見られなかった。
【産業上の利用可能性】
本発明の液晶配向剤を用いることにより、液晶配向性、配向規制力、ラビング耐性に優れ、電圧保持特性が高く、なおかつ電荷蓄積を低減した、液晶配向膜を得ることができる。また、本発明の液晶配向剤から得られた液晶配向膜を有する液晶表示素子は、液晶の配向性、配向規制力に優れ、かつ優れた電気特性を有しているため、表示不良、コントラストの低下や焼き付きの起こり難い液晶表示デバイスとすることができる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される構造単位を有し膜とした時の体積抵抗率が1×1010〜1×1014Ωcmであるポリイミド前駆体と、一般式(2−1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体または一般式(2−2)で表される構造単位を有するポリイミドと、を含有することを特徴とする液晶配向剤。

一般式(1)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Xは4価の有機基を表し、Aは2価の有機基を表す。

一般式(2−1)または(2−2)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Yは4価の有機基を表し、Bは2価の有機基を表し、かつBの10〜100モル%は下記(3)〜(5)のいずれかを構造中に有する2価の有機基、もしくはパラフェニレン基である。

式(3)中、mは2〜18の整数である。

式(4)中、ベンゼン環上の任意の水素原子の1個又は複数個は、一級アミノ基以外の1価の有機基で置換されていてもよく、mは1〜8の整数である。

式(5)中、ベンゼン環上の任意の水素原子の1個又は複数個は、一級アミノ基以外の1価の有機基で置換されていてもよく、mは1〜4の整数である。
【請求項2】
一般式(1)のAにおいて、その10〜100モル%が窒素原子を有する2価の有機基である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
一般式(1)のAにおいて、その10〜100モル%が下記(6)又は(7)の構造を有する2価の有機基である、請求項1に記載の液晶配向剤。

式(6)中、pは1〜5の整数である。

【請求項4】
一般式(1)のXにおいて、その20〜100モル%が脂環構造を有する4価の有機基、又は脂肪族構造の4価の有機基である、請求項1〜3のいずれかに記載の液晶配向剤。
【請求項5】
一般式(2−1)または(2−2)のYにおいて、その20〜100モル%が芳香族構造を有する4価の有機基である、請求項1〜4のいずれかに記載の液晶配向剤。
【請求項6】
一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体が、該ポリアミド前駆体と一般式(2−1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体または一般式(2−2)で表される構造単位を有するポリイミドとの合計量に対して、10〜95重量%含有する請求項1〜5のいずれかに記載の液晶配向剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の液晶配向剤を用いて得られる液晶表示素子。

【国際公開番号】WO2004/053583
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【発行日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558461(P2004−558461)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015803
【国際出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】