説明

液晶配向剤

【課題】可溶性ポリイミドとポリアミック酸とを含有する液晶配向剤であって、なおかつ、吸湿性よる凝集や析出の起こりにくい液晶配向剤を提供すること。
【解決手段】可溶性ポリイミドと、ポリアミック酸とを含有し、該可溶性ポリイミドが、一般式(1)で表される化合物を含有するジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物とを反応させることによって得られる可溶性ポリイミドであることを特徴とする液晶配向剤。
【化1】


(式中R、Rはそれぞれ炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基であり、m、nは0〜4の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は液晶配向膜を作成するための液晶配向剤に関するものであり、更に詳しくは、可溶性ポリイミドとポリアミック酸を含有し、かつ吸湿による凝集や析出の起こりにくい液晶配向剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、液晶表示素子などに用いられている液晶配向膜は、主にポリアミック酸や溶媒可溶性ポリイミドなどのポリマーを有機溶媒に溶解させた液晶配向剤を、塗布・焼成することにより作成されている。液晶配向膜の特性は、用いるポリマーの構造に大きく影響を受けることが知られており、これまで、種々の検討がなされてきた。中でも、TFT(Thin Film Transistor)表示方式に用いられる液晶配向膜は、液晶分子のプレチルト角、電圧保持率、直流電圧による電荷蓄積特性などの特性を同時に満足するものが求められており、これを解決するため、長鎖アルキル基を有する可溶性ポリイミドと、ポリアミック酸を混合した液晶配向剤が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような、可溶性ポリイミド−ポリアミック酸混合系の液晶配向剤は、優れた液晶配向膜を得ることができ、従来以上に優れた特性の液晶素子を得ることができるものではあるが、液晶配向剤自体の耐吸湿性に関しては、必ずしも満足のゆくものではなかった。例えば、現在、液晶配向剤の塗布はフレキソ印刷で行うことが主流であるが、印刷機を長時間稼働させていると、印刷機上に滞留している液晶配向剤が吸湿し、場合によっては液晶配向剤中のポリマー成分が溶媒中に溶けきれなくなって、凝集や析出を起こしてしまうという問題がある。液晶配向剤の凝集や析出が印刷機上で発生すると、液晶配向剤を均一に印刷することが困難となり、液晶パネル製造工程における歩留まりを低下させる原因となる。詳細な原因は解明されていないが、ポリアミック酸のみ、または可溶性ポリイミドのみをポリマー成分する液晶配向剤に比べ、従来の可溶性ポリイミド−ポリアミック酸混合系の液晶配向剤は、開放系に放置した際に凝集や析出が発生するまでの時間が短かった。
【0004】
【特許文献1】
特開平08−220541号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであって、可溶性ポリイミドとポリアミック酸とを含有する液晶配向剤であって、なおかつ、吸湿性よる凝集や析出の起こりにくい液晶配向剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明の液晶配向剤は、可溶性ポリイミドと、ポリアミック酸とを含有し、該可溶性ポリイミドが、一般式(1)で表される化合物を含有するジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物を反応させることによって得られる可溶性ポリイミドであることを特徴とする液晶配向剤である。
【0007】
【化2】

(式中R、Rはそれぞれ炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基であり、m、nは0〜4の整数を表す。)
【0008】
[ 発明の詳細な説明 ]
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明の液晶配向剤に含有される可溶性ポリイミドは、一般式(1)で表される化合物を含有するジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物とを反応させることによって得られるものである。
【0010】
【化3】

【0011】
一般式(1)中、R、Rはそれぞれ炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基であり、互いに同じであっても異なってもよく、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、特にメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。式中、m、nは0〜4の整数を表し、互いに同じであっても異なっても良いが、0または1が好ましく、m、nともに1であることが特に好ましい。また、式中2つのアミノ基の結合位置は、ビフェニル構造の3,3’−または、4,4’−の位置が好ましいが、液晶の配向性の観点から4,4’−の位置が特に好ましい。
【0012】
これら一般式(1)で示される化合物の好ましい具体例としては、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメトキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエトキシビフェニルなどが例示される。中でも4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルビフェニルを用いると液晶の配向性が良く、吸湿時の液晶配向剤の安定性を改善する効果に優れるので、特に好ましい。
【0013】
本発明の液晶配向剤に含有される可溶性ポリイミドを得るためのジアミン成分は、一般式(1)で表される化合物のみであっても良いが、他のジアミンと併用することも可能である。特に、炭素数6以上の長鎖アルキル基又は含フッ素アルキル基を有するジアミンと併用することにより、本発明の液晶配向剤から得られる液晶配向膜に、高いプレチルト角特性を付与することは好ましい。「炭素数6以上の長鎖アルキル基又は含フッ素アルキル基を有するジアミンを1モル%以上用いた可溶性ポリイミドを、ポリアミック酸と混合した液晶配向剤によって、液晶のプレチルト角が高く、電圧保持率、蓄積電荷特性にも優れる液晶配向膜が得られる。」ということが、特開平8−220541号公報に記載されており、この可溶性ポリイミドに更に一般式(1)で表される化合物を導入することにより、液晶配向膜としたときの特性は維持し、液晶配向剤の吸湿時の安定性が向上される。
【0014】
一般式(1)で表される化合物と併用される、炭素数6以上の長鎖アルキル基又は含フッ素アルキル基を有するジアミンとしては、側鎖部に炭素数6〜20のアルキル基や、フルオロアルキル基を有しているジアミンが好ましく、特に、下記式(2)で表されるジアミノベンゼン誘導体が、液晶のプレチルト角を高める効率が高いので好ましい。
【化4】

【0015】
(Rは炭素数6〜20のアルキル基又はフルオロアルキル基を有する1価の有機基を表す。)
【0016】
式(2)で表されるジアミノベンゼン誘導体の好ましい具体例としては、1−ドデシルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−ヘキサデシルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−オクタデシルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノ−4−(trans-4−ヘプチルシクロヘキシル)フェノキシベンゼンおよび、これらのジアミンの長鎖アルキル基の一部がフッ素化された構造のジアミンを挙げることが出来る。
【0017】
これら、長鎖アルキル基やフルオロアルキル基を側鎖部に有するジアミンの使用割合は、目的とするプレチルト角に応じて任意に調整することができるが、高いプレチルト角を安定して発現させるためには、使用するジアミン成分全体の5モル%以上が好ましい。この使用割合が多くなるほど液晶のプレチルト角は高くなり、液晶を垂直配向させることも可能である。
【0018】
ジアミン成分としては、一般式(1)で表される化合物、および長鎖アルキル基やフルオロアルキル基を側鎖部に有するジアミン以外のジアミンを含んでいても良い。特にp−フェニレンジアミンを共重合したポリイミドは、液晶配向膜としたときの電気特性に優れ、液晶のプレチルト角を安定にする効果もあるので好ましい。その他、一般式(1)で表される化合物と併用可能なジアミンを以下に示すがこれらに限定されるものではない。
【0019】
脂環式ジアミンの例として、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルアミン、およびイソホロンジアミンが、また炭素環式芳香族ジアミン類の例として、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノトルエン類(例えば、2,4−ジアミノトルエン)、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、2,5−ジアミノキシレン類、1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジアミノ−3−イソプロピルベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニル−2,2’−プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノスチルベン、4,4’−ジアミノスチルベン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ安息香酸フェニルエステル、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンジル、ビス(4−アミノフェニル)メチルホスフィンオキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(4−アミノフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキシルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニル尿素、1,8−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノアントラキノン、ジアミノフルオレン類、ビス(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)テトラメチルジシロキサン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンなどが挙げられる。
【0020】
さらに複素環式ジアミン類としては、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−s−トリアジン、2,7−ジアミノジベンゾフラン、2,7−ジアミノカルバゾール、3,7−ジアミノフェノチアジン、2,5−ジアミノ−1,3,4−チアジアゾール、2,4−ジアミノ−6−フェニル−s−トリアジンなどが、脂肪族ジアミンの例として、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,3−ジアミノ−2,2−ジメチルプロパン、1,6−ジアミノー2,5−ジメチルヘキサン、1,7−ジアミノ−2,5−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−4,4−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−3−メチルヘプタン、1,9−ジアミノ−5−メチルノナン、2,11−ジアミノドデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン等が挙げられる。
【0021】
複数種のジアミンを併用し、本発明の液晶配向剤に含有される可溶性ポリイミドを得る場合は、一般式(1)で表される化合物が、ジアミン成分全体の5モル%以上であることが好ましく、より好ましくは15モル%以上である。一般式(1)で表される化合物が、ジアミン成分全体の5モル%未満であると、液晶配向剤が吸湿したときに析出や凝集の発生を抑制する効果が不十分となる。
【0022】
本発明の液晶配向剤に含有される可溶性ポリイミドを得るのに用いることができるテトラカルボン酸二無水物を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0023】
芳香族酸二無水物としてピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が、また脂環式酸二無水物としては1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物などが例示される。そのなかでも、得られた可溶性ポリイミドの溶解性に優れ、液晶配向膜としたときの液晶の配向性、電圧保持率などが高いことから、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物が好ましく、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物と、その他のテトラカルボン酸二無水物とを併用することも、もちろん好ましい。
【0024】
一般式(1)で表される化合物を含有するジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物との反応により、可溶性ポリイミドを得るには、一般的な手法を用いることができる。通常は、一般式(1)で表される化合物を含有するジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物とを有機溶媒中で反応させてポリアミック酸を合成し、このポリアミック酸をイミド化(脱水閉環)させて可溶性ポリイミドとするのが簡便である。
【0025】
ポリアミック酸はジアミンと酸二無水物とを有機溶剤の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0〜80℃において30分〜24時間、好ましくは1〜10時間反応させることによって合成する事が出来る。反応の際に用いるジアミンと酸二無水物のモル比は、ジアミンが多くなりすぎると分子量が上がらず、また少なすぎると酸無水物が残存して保存安定性が悪くなることのために、ジアミン/酸二無水物=0.5〜3.0/1.0(モル比)であると好ましく、ジアミン/酸二無水物=0.8〜2.0/1.0(モル比)であるとより好ましく、中でもジアミン/酸二無水物=1.0〜1.2/1.0であるととりわけ好ましい。
【0026】
ポリアミック酸の合成の際に用いる溶媒については特に限定されないが、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジンおよびブチロラクトン類を用いると生成したポリマーの溶解性が高いことのために好ましい。合成時の濃度は高すぎるとワニスの取扱い性が悪くなり、低すぎると分子量が上がらないので、好ましくは1〜50重量%が、より好ましくは5〜30重量%が、とりわけ好ましくは8〜20重量%がよい。また、ポリマーが溶解する範囲内でブチルセルソルブやトルエン、メタノールなどの貧溶媒を加えても構わないことは言うまでもない。さらにポリマーの分子量が上がり易いので、反応系内を窒素雰囲気下としておくと好ましく、反応系中の溶媒に窒素をバブリングしながら反応を行うと更に好ましい。最終的な溶液の還元粘度は高いとワニスの取扱いが難しく、低いと配向膜とした際に特性が安定しないので、0.05〜3.0dl/gが好ましく、0.1〜2.5dl/gがより好ましい(温度30℃のN−メチル−2−ピロリドン中、濃度0.5g/dl)。
【0027】
ポリアミック酸をイミド化させる方法については特に制限されず、加熱によってイミド化を進行させる方法や、触媒を用いて化学的にイミド化を行う方法などが例示できる。なかでも、容易に反応が進行し副反応が起こりにくいため触媒によって化学的にイミド化して得られる可溶性ポリイミドを用いることが好ましい。化学的イミド化は、ポリアミック酸の溶液に、アミック酸の2〜20モル倍の塩基触媒とアミック酸の3〜30モル倍の酸無水物を添加し、−20〜300℃、好ましくは0〜250℃の温度において、1〜100時間反応させると好ましい。この際、塩基触媒や酸無水物の量が少ないと反応が十分に進行せず、また多すぎると反応終了後に塩基触媒や酸無水物を完全に除去することが困難となる。塩基触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等が例示でき、中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つために好ましい。また、酸無水物としては無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などが例示でき、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。
【0028】
本発明における可溶性ポリイミドとは、全てのアミック酸基がイミド化している完全なポリイミドだけを指すものではなく、溶媒に対する溶解性が保てる程度に、部分的にイミド化されたポリアミック酸も、可溶性ポリイミドとする。ポリアミック酸からポリイミドへのイミド化率(閉環率)が低すぎると、液晶配向膜とした際の電圧保持特性が悪くなり、高すぎると溶媒に対する溶解性が低下し、場合によっては液晶配向剤中に含有させることも困難になるため、1〜99.9%が好ましく、50〜99.5%がより好ましく、70〜85%がとりわけ好ましい。
【0029】
このようにして得られた可溶性ポリイミドの溶液は、よく攪拌させながら貧溶媒に注入し、再沈殿させることによって精製することが出来る。この際に用いる貧溶媒としては特に限定されないが、メタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが例示できる。再沈殿によって得られたポリイミド樹脂は濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱乾燥してパウダーとすることが出来る。このパウダーを更に良溶媒に溶解して、再沈殿する操作を2〜10回繰り返すと、ポリマー中の不純物が少なくなり、液晶配向膜とした際の電気特性が優れるために好ましい。また、この際貧溶媒として例えばアルコール類、ケトン類、炭化水素など3種類以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0030】
本発明の液晶配向剤に含有されるポリアミック酸は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得ることが出来る。このジアミンの具体例としては以下のものが挙げられる。
【0031】
脂環式ジアミンの例として、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルアミン、およびイソホロンジアミンが、また炭素環式芳香族ジアミン類の例として、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ジアミノトルエン類(例えば、2,4−ジアミノトルエン)、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、2,5−ジアミノキシレン類、1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジアミノ−3−イソプロピルベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニル−2,2’−プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノスチルベン、4,4’−ジアミノスチルベン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ安息香酸フェニルエステル、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンジル、ビス(4−アミノフェニル)メチルホスフィンオキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(4−アミノフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキシルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニル尿素、1,8−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノアントラキノン、ジアミノフルオレン類、ビス(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)テトラメチルジシロキサン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンなどが挙げられる。
【0032】
さらに複素環式ジアミン類として、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−s−トリアジン、2,7−ジアミノジベンゾフラン、2,7−ジアミノカルバゾール、3,7−ジアミノフェノチアジン、2,5−ジアミノ−1,3,4−チアジアゾール、2,4−ジアミノ−6−フェニル−s−トリアジンなどが、脂肪族ジアミンの例として、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,3−ジアミノ−2,2−ジメチルプロパン、1,6−ジアミノー2,5−ジメチルヘキサン、1,7−ジアミノ−2,5−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−4,4−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−3−メチルヘプタン、1,9−ジアミノ−5−メチルノナン、2,11−ジアミノドデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン等が、さらには側鎖に長鎖アルキル基を有するジアミンとして、1−ドデシルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−ヘキサデシルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−オクタデシルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノ−4−(trans-4−ヘプチルシクロヘキシル)フェノキシベンゼン等が挙げられる。これらのジアミンはそれぞれ単独で、あるいは組み合わせて用いることが出来ることは当然である。
【0033】
本発明の液晶配向剤に含有されるポリアミック酸を得るためのテトラカルボン酸二無水物としては以下のものが挙げられる。
【0034】
芳香族酸二無水物としてピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が、また脂環式酸二無水物としては1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物などが例示される。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独でも組み合わせても用いることが出来るのは当然であるが、耐熱性向上の観点から、ピロメリット酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物であると好ましい。
【0035】
ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて、本発明の液晶配向剤に含有されるポリアミック酸を得るには、可溶性ポリイミドを得る方法で記載した、有機溶媒中で反応させてポリアミック酸を合成する方法を用いることができる。得られたポリアミック酸の溶液は、可溶性ポリイミドと同様に、貧溶媒に注入し、再沈殿させることによって精製することが出来る。
【0036】
本発明の液晶配向剤は、上記のようにして得られた可溶性ポリイミドとポリアミック酸とを含有するものであり、これらポリマー成分が有機溶媒に均一に溶解している、液晶配向膜形成用の塗布液である。この有機溶媒としては、含有する成分を均一に溶解させるものであれば特に限定されないが、その一例としてはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、およびブチロラクトン類などの良溶媒が挙げられる。中でも、アミド系溶媒を含むとポリマーの溶解性が高いので好ましく、とりわけ、N,N−ジメチルアセトアミドを含むと、液晶配向剤の印刷性が向上するので好ましい。また、ブチルセロソルブやプロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、エチルカルビトールやジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のジアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、ジグライムやジエチレングリコールジエチルエーテル等のジアルキレングリコールジアルキルエーテル類、乳酸ブチルのようなアルキルラクテート類、メタノールやエタノール等のアルコール類などは、ポリイミドやポリアミック酸の溶解性は低いものの、液晶配向剤に含有させることにより印刷時の塗膜均一性や平滑性を改善する効果があるので、ポリマー成分が析出しない範囲でこれらの貧溶媒を混合することが好ましい。具体的には、良溶媒30〜99.9重量%と貧溶媒0.1〜70重量%とを含む溶媒を用いることが好ましい。
【0037】
本発明の液晶配向剤におけるポリマー濃度は、低過ぎると液晶配向膜が薄くなって液晶表示素子とした際の信頼性が悪くなることがあり、高すぎると基板に塗布する際の膜厚均一性が損なわれるため、0.1〜30重量%が好ましく、より好ましくは1〜10重量%である。また、可溶性ポリイミドとポリアミック酸との含有割合は特に制限されないが、可溶性ポリイミド/ポリアミック酸=0.01〜99.0/1(重量部)、好ましくは0.1〜95.0/1(重量部)、とりわけ好ましくは0.2〜1/1(重量部)とすると、液晶表示素子とした際の電気特性に優れた配向膜が得られる。
【0038】
本発明の液晶配向剤を調製する際、各成分の配合順序や方法は特に制限されない。一例を示すならば、可溶性ポリイミドとポリアミック酸をそれぞれ同一濃度の溶液とし、任意の比率で混合する方法が挙げられる。また、可溶性ポリイミドの溶液とポリアミック酸の溶液を混合した後、良溶媒や貧溶媒を加えて濃度調節しても良い。
【0039】
本発明ではこのようにして得られた液晶配向剤をそのまま用いることも出来るが、更にカップリング剤を添加すると液晶配向膜と基板との密着性が向上するため好ましい。ここで本発明におけるカップリング剤とは、ケイ素および1〜3族に属するすべての典型金属元素ならびにすべての遷移金属元素から選ばれる少なくとも1つ以上の元素と、酸素原子との共有結合を有する化合物を示すが、アルコキシシラン、アルコキシアルミニウム、アルコキシジルコニウム、アルコキシチタン構造を有するカップリング剤は入手が容易でコスト的にも優れているために好ましく、なかでも3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノアルキルアルコキシシランは液晶表示素子とした際の電気特性が向上するためにとりわけ好ましい。カップリング剤の添加量は、多いと配向膜の強度が弱くなり、少ないと密着性向上の効果が少なくなるため、液晶配向剤中の固形分の0.01〜30重量%、より好ましくは0.1〜20重量%、とりわけ好ましくは0.5〜10重量%である。
【0040】
上記のカップリング剤を配合するにあたって、あらかじめカップリング剤を溶媒で希釈した後、それらを−5〜80℃の温度で液晶配向剤中に少しずつ注入すると、得られる液晶配向剤の増粘や樹脂の不溶化が起こりにくく、均一な液晶配向剤となるために好ましい。また、この時カップリング剤を希釈する溶媒と濃度は特に制限されないが、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トルエン、ヘキサン、γ―ブチロラクトンなどの溶媒を用いて1〜50重量%、より好ましくは3〜30重量%の濃度に希釈してから用いることが好ましい。
【0041】
本発明の液晶配向剤に、さらに架橋剤などの各種添加剤を加えて使用してもかまわないことは言うまでもない。
【0042】
このようにして得られた液晶配向剤は、吸湿による析出や凝集が起こりにくく、液晶パネル製造工程における歩留まりを向上させることが可能となる。
【0043】
本発明の液晶配向剤を用いて液晶配向膜を形成する方法は、ポリイミドワニスを用いて行われる通常の液晶配向膜の形成方法を用いることが出来る。即ち、スピンコート法やフレキソ印刷法、インクジェット法等により基板に塗布した後、乾燥・焼成工程を経て樹脂膜を形成させ、ラビングや紫外線照射などによって樹脂膜の配向処理をする方法である。本発明の液晶配向剤は、フレキソ印刷法のように工程中で吸湿の起こりやすい塗布方法に対して特に有用である。また、本発明の液晶配向剤から得られた樹脂膜が、液晶を垂直に配向させることができ、これを一部の垂直配向用途に用いるときは、樹脂膜の配向処理を行わない場合もある。
【0044】
本発明の液晶配向剤を塗布した後の、乾燥・焼成工程は、任意の温度と時間を選択することが出来る。通常は、液晶配向剤に含有される有機溶媒を十分に除去するために50〜120℃で1〜10分乾燥させ、その後150〜300℃で5〜120分焼成される。焼成温度は、その後の液晶素子製造工程で必要とされる温度よりも10℃以上高いことが好ましい。
【0045】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
<実施例1> 4,4’−ジアミノジフェニルメタン20.02g(0.1mol)をN,N−ジメチルアセトアミド(以下DMAcと略す)115g、γ−ブチロラクトン(以下、γ−BLと略す)115gに溶解し、これにシクロブタンテトラカルボン酸二無水物9.60g(0.05mol)、ピロメリット酸二無水物10.90g(0.05mol)を添加し、室温で4時間反応させ、ポリアミック酸溶液を得た。
【0047】
この溶液100gにDMAc93g、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(LS-3150:信越化学工業株式会社)の2%DMAc溶液7.5g(ポリアミック酸に対してLS-3150が1重量%)を加えて攪拌し、樹脂濃度6%のポリアミック酸溶液(A−1)とした。
【0048】
3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物(以下TDAと略す)30.03g(0.1mol)、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルビフェニル4.24g(0.02mol)、p−フェニレンジアミン7.03g(0.065mol)、1−オクタデシルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン5.65g(0.015mol)をNMP235g中、50℃で24時間反応させ、ポリアミック酸溶液を調製した。
【0049】
このポリアミック酸溶液50gに、イミド化触媒として無水酢酸10.8g、ピリジン5.0gを加え、35℃で3時間反応させ、ポリイミド樹脂溶液を調製した。この溶液を500mlのメタノール中に投入し、得られた白色沈澱をろ別し、乾燥し、白色のポリイミド樹脂粉末を得た。このポリイミドのイミド化率は84%であった。
【0050】
この粉末0.6gをγ−BL7.5gに溶解し、固形分濃度8%の溶媒可溶性ポリイミド樹脂溶液を得た。これに3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン(LS-2450:信越化学工業株式会社)の2%γ−BL溶液1.50g(ポリイミドに対し、LS-2450が5重量%)を混合し、さらにγ−BLで希釈して、樹脂濃度6%の溶媒可溶性ポリイミド溶液(B−1)とした。
【0051】
上記のようにして調製したポリアミック酸溶液(A−1)と可溶性ポリイミド溶液(B−1)を重量比で(A−1)/(B−1)=4/1となるように混合し、充分撹拌して、本発明の液晶配向剤である溶液(C−1)を得た。
【0052】
<比較例1> TDA30.03g(0.1mol)、p−フェニレンジアミン9.72g(0.09mol)、1−オクタデシルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン3.77g(0.01mol)をNMP246g中、室温で10時間反応させポリアミック酸溶液を調製した。
【0053】
このポリアミック酸溶液50gに、イミド化触媒として無水酢酸10.8g、ピリジン5.0gを加え、50℃で3時間反応させ、ポリイミド樹脂溶液を調製した。この溶液を500mlのメタノール中に投入し、得られた白色沈澱をろ別し、乾燥し、白色のポリイミド樹脂粉末を得た。このポリイミドのイミド化率は82%であった。
【0054】
この粉末0.6gをγ−BL7.5gに溶解し、固形分濃度8%の溶媒可溶性ポリイミド樹脂溶液を得た。これに3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン(LS-2450:信越化学工業株式会社)の2%γ−BL溶液1.50g(ポリイミドに対し、LS-2450が5重量%)を混合し、さらにγ−BLで希釈して、樹脂濃度6%の溶媒可溶性ポリイミド溶液(B−2)とした。
【0055】
次いでポリアミック酸溶液(A−1)と可溶性ポリイミド溶液(B−2)を重量比で(A−1)/(B−2)=4/1となるように混合し、充分撹拌して、比較のための液晶配向剤である溶液(C−2)を得た。
【0056】
<吸湿安定性評価> 本発明の液晶配向剤である溶液(C−1)と、比較のための液晶配向剤である溶液(C−2)をクロム蒸着したガラス基板上にそれぞれ約0.5ml滴下し、温度23℃、湿度50%の環境に放置した。この液滴を1時間ごとに顕微鏡(倍率50倍)で観察した。その結果、溶液C−2は、3時間後の観察で液滴の端に凝集物が認められた。一方、溶液C−1は、7時間後の観察においても液滴に凝集物は見られず、本発明の液晶配向剤は安定性に優れるものであった。
【0057】
<液晶配向膜の評価1> 本発明の液晶配向剤である溶液(C−1)を透明電極付きガラス基板にスピンコートし、200℃/30分焼成して膜厚70nmのポリイミド膜を得た。
【0058】
次にこの塗膜をレーヨン布でラビング(押し込み量0.5mm、ローラー回転数300rpm、ローラー送り速度20mm/s)したのち、超純水中において超音波をかけて1分間洗浄を行った。乾燥後の一対の基板に対し、6μmのスペーサーを膜面に散布した後ラビング方向をほぼ直行させ、液晶(メルク社製MLC-2003)を注入して90゜ツイスト液晶セルを作成した。この液晶セルの配向状態を偏光顕微鏡で観察したところ欠陥のない均一な配向をしていることが確認された。
【0059】
この液晶セルについて電圧保持率を測定したところ、23゜Cで99%、90℃で92%と高い値を示した。また、このセルに直流3Vを重畳した30Hz/±3Vの矩形波を23゜Cで60分印加し、60分後直流3Vを切った直後の液晶セル内に残る残留電圧を光学的フリッカー消去法で残留電圧を測定したところ、0Vであり、電荷蓄積が小さいものであった。
【0060】
<液晶配向膜の評価2> 本発明の液晶配向剤である溶液(C−1)を透明電極付きガラス基板にスピンコートし、200℃/30分焼成して膜厚70nmのポリイミド膜を得た。
【0061】
この塗膜をレーヨン布でラビング(押し込み量0.3mm、ローラー回転数300rpm、ローラー送り速度40mm/s)したのち、超純水中において超音波をかけて1分間洗浄を行った。乾燥後の一対の基板に対し、50μmのスペーサーを挟んでラビング方向を反平行にして組み立て、液晶(メルク社製MLC−2003)を注入して液晶セルを作成した。この液晶セルの配向状態を偏光顕微鏡で観察したところ欠陥のない均一な配向をしていることが確認された。更にこのセルについて、結晶回転法により液晶のプレチルト角を測定したところ6.5度であった。
【0062】
<参考例> 比較のための液晶配向剤である溶液(C−2)を用い、溶液(C−1)と同様に液晶配向膜としての評価を行った。その結果、液晶は欠陥のない均一な配向をしていることが確認され、電圧保持率は23゜Cで99%、90℃で92%であり、残留電圧は0Vであり、プレチルト角は5.7度であった。即ち、本発明の液晶配向剤である溶液(C−1)および、比較のための液晶配向剤である溶液(C−2)は、ともに優れた特性を持った液晶配向膜を得られる液晶配向剤であるが、本発明の液晶配向剤である溶液(C−1)は、さらに液晶配向剤として安定性に優れるものである。
【発明の効果】
本発明の液晶配向剤は、可溶性ポリイミドとポリアミック酸とを含有する液晶配向剤でありながら吸湿による析出や凝集が起こりにくく、品質の高い液晶パネルを歩留まりよく製造することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性ポリイミドと、ポリアミック酸とを含有し、該可溶性ポリイミドが、一般式(1)で表される化合物を含有するジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物とを反応させることによって得られる可溶性ポリイミドであることを特徴とする液晶配向剤。
【化1】

(式中R、Rはそれぞれ炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基であり、m、nは0〜4の整数を表す。)
【請求項2】
可溶性ポリイミドが、一般式(1)で表される化合物を含有するジアミン成分と3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物を含有するテトラカルボン酸二無水物成分とを反応させることによって得られる可溶性ポリイミドであることを特徴とする請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
可溶性ポリイミドが、一般式(1)で表される化合物と側鎖部に炭素数6〜20のアルキル基又はフルオロアルキル基を有しているジアミンとを含有するジアミン成分と、テトラカルボン酸二無水物とを反応させることによって得られる可溶性ポリイミドであることを特徴とする請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
一般式(1)で表される化合物が4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルビフェニルである請求項1〜請求項3に記載の液晶配向剤。

【公開番号】特開2006−176543(P2006−176543A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−105573(P2003−105573)
【出願日】平成15年4月9日(2003.4.9)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】