説明

液晶配向剤

高く、かつ熱的に安定な配向性とプレチルト角を、ラビングや有機溶媒による洗浄などのプロセス工程に依存せず、発現させることのできる液晶配向膜を得るための液晶配向剤を提供する。 液晶配向膜を形成する為のポリマーを1種類以上含有する液晶配向剤であって、このポリマーの少なくとも1種類が、主鎖に炭素数4〜16のアルキレン基を有し、かつ、液晶のプレチルト角を高める側鎖を有するポリマーであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は液晶配向膜を得るための液晶配向剤に関するものであり、さらに詳しくは、高いプレチルト角を有し、かつ液晶の配向性に優れた液晶配向膜が得られる液晶配向剤に関するものである。
【背景技術】
近年、液晶表示素子は、その優れた表示特性から活発な開発が成されており、表示性能の一層の向上が成されてきている。これに伴い液晶配向膜に対する要求も種々の特性を同時に向上させることが必要となってきている。液晶配向膜に必要とされる一般的な特性としては、液晶分子のプレチルト角制御、電圧保持率、直流電圧による電荷蓄積特性などが挙げられるが、これらの特性のうち、プレチルト角の制御は、液晶表示素子の駆動を均一に行うために非常に重要な特性である。
現在、一般的な液晶配向膜にはポリイミドやポリイミド前駆体などのポリマーが用いられており、液晶配向膜の特性は、このポリマーの構造に大きく影響される。このようなポリマー系の液晶配向膜によって得られる液晶のプレチルト角は、一般的には1〜2度程度であるが、ポリマーに適当な側鎖を導入すると、より高いプレチルト角が得られることが知られている。
液晶のプレチルト角を高める効果がある側鎖としては、炭素数4〜20のアルキル基やフルオロアルキル基(例えば、特開平2−282726号公報参照。)、ベンゼン環やシクロヘキサン環などの環状基およびアルキル基等を有する環状基(例えば、特開平3−179323号公報参照。)、ステロイド骨格を有する基(例えば、特開平4−281427号公報参照。)などが知られている。
上記の方法は、側鎖によるプレチルト角の制御とポリマー主鎖から得られるその他の特性とを分離して設計することができ、また、側鎖の構造やその導入量を変更することにより、プレチルト角の値を任意に変更することができるという利点がある。しかしながら、このような側鎖の導入は、ポリマー主鎖による液晶の配向規制を少なからず乱すものであり、場合によっては、作成した液晶表示素子の液晶配向性が低下してしまうという問題が生じる。液晶配向性が低い液晶表示素子は、熱による液晶配向の乱れも起こりやすくなり、加熱により容易にプレチルト角が低下してしまう。加熱によるプレチルト角の低下は、液晶表示素子の信頼性を大きく低下させる。
このような液晶配向性の低下は、ラビング処理条件が弱いときに顕著に表れる。液晶配向膜のラビング処理は、液晶の配向方向を規定するための重要な工程であるが、その際発生する粉塵によって表示欠陥が生じるという問題がある。この粉塵の発生を抑えるために、ラビング処理条件は近年益々弱くなる傾向にある。また、通常、ラビング処理された液晶配向膜は、付着している粉塵を除去するために超純水などで洗浄されるが、洗浄効率を高めるためにイソプロパノール等の有機溶媒が使用される場合がある。液晶配向性が弱い液晶配向膜では、このような有機溶媒によっても、液晶配向の乱れやプレチルト角の低下が生じる。
以上に述べたように、プレチルト発現基をポリマー側鎖に導入した液晶配向膜は、プレチルト角の制御が容易であるという反面、液晶の配向性を低下させるという問題がある。特に弱ラビングや有機溶媒による洗浄に対して、良好な液晶の配向性と安定なプレチルト角を付与することが困難であった。
【発明の開示】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであって、本発明の目的は、高く、かつ熱的に安定なプレチルト角を発現させることのできる液晶配向膜を得るための液晶配向剤を提供することである。また、本発明の更なる目的は、弱いラビング、有機溶媒による洗浄などのプロセス工程に依存せず、安定な配向性とプレチルト角を発現させることのできる液晶配向膜を得るための液晶配向剤を提供することである。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下のものに関する。
1. 液晶配向膜を形成する為のポリマーを1種類以上含有する液晶配向剤であって、このポリマーの少なくとも1種類が、主鎖に炭素数4〜16のアルキレン基を有し、かつ、液晶のプレチルト角を高める側鎖を有するポリマーであることを特徴とする液晶配向剤。
2. 液晶のプレチルト角を高める側鎖が、炭素数4〜20のアルキル基またはフルオロアルキル基を有する、1価の有機基である、上記1に記載の液晶配向剤。
3. 液晶のプレチルト角を高める側鎖が、下記(1)に示す構造である、上記1に記載の液晶配向剤。

(式中、Xは単結合または2価の結合基を表し、Rは炭素数4〜20のアルキル基、炭素数4〜20のフルオロアルキル基、ベンゼン環またはシクロヘキサン環を1〜3個有する基、及びステロイド骨格を有する基からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機基を表す。)
4. 主鎖に炭素数4〜16のアルキレン基を有し、かつ、液晶のプレチルト角を高める側鎖を有するポリマーが、下記一般式(5)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸、またはこのアミック酸を脱水閉環させたポリイミドである、上記1に記載の液晶配向剤。

(式中、Aは4価の有機基、Bは2価の有機基を表わす。)
5. 一般式(5)で表される繰り返し単位において、この繰り返しの構造の一つが、下記式(6)で表される構造を有する、上記4に記載の液晶配向剤。

(式中、Y1は4価の有機基を表し、kは4から16の整数を表す)
6.一般式(5)で表される繰り返し単位において、この繰り返しの構造の一つが、下記式(7)で表される構造を有する、上記4または5に記載の液晶配向剤。

(式中、Y2は4価の有機基を表し、Y3は3価の有機基を表し、Xは単結合または2価の結合基を表し、Rは炭素数4〜20のアルキル基、炭素数4〜20のフルオロアルキル基、ベンゼン環またはシクロヘキサン環を1〜3個有する基、およびステロイド骨格を有する基、からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機基を表す。)
7. 一般式(5)で表される繰り返し単位において、この繰り返しの構造のうち、式(6)で表される構造が20〜95%であり、式(7)で表される構造が5〜30%である上記4又は6に記載の液晶配向剤。
8. 式(6)のY1または、式(7)のY2が、下記(8)または(9)に示す構造である、上記5〜7のいずれかに記載の液晶配向剤。

【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の液晶配向剤は、液晶配向膜を形成する為の少なくとも一種類のポリマーを含有する溶液であって、そのポリマーが、主鎖に炭素数4〜16のアルキレン基を有し、かつ、液晶のプレチルト角を高める側鎖を有するポリマーであることにより、高く安定なプレチルト角を発現させる液晶配向膜を得ることが出来るものである。
ここで、ポリマーが主鎖に炭素数4〜16のアルキレン基を有するとは、ポリマー主鎖中に4〜16の連続したメチレン基を有していることを表す。この連続したメチレン基上の水素は、メチル基やエチル基で置換されていても良い。また、液晶のプレチルト角を高める側鎖とは、その側鎖を導入することにより、液晶のプレチルト角が高くなる効果があるものを示す。ポリマー中の側鎖は1種類であっても、複数種からなるものであっても良い。
液晶のプレチルト角を高める側鎖としては、炭素数4〜20のアルキル基、炭素数4〜20のフルオロアルキル基、ベンゼン環またはシクロヘキサン環を1〜3個有する基、ステロイド骨格を有する基、などを挙げることができる。このうち、アルキル基およびフルオロアルキル基は、炭素数8〜20のものが好ましく、炭素数12〜20のものが更に好ましく、炭素数16〜18のものが特に好ましい。
ベンゼン環またはシクロヘキサン環を1〜3個有する基、またはステロイド骨格を有する基は、これらの環構造に加えて、炭素数1〜16アルキル基を持つものが好ましく、より好ましくは炭素数4〜8のアルキル基を持つものである。
これら、側鎖を形成する有機基は、ポリマー主鎖に直接結合していても良く、2価の結合基を介して結合していても良い。結合基としてはエーテル、エステル、アミド、イミノ、これらの基と炭素数1〜3のアルキレンが複合された基、または炭素数1〜3のアルキレン等が挙げられる。このような結合基を含めた側鎖は下記式(1)で表される。

(式中、Xは単結合または2価の結合基を表し、Rは炭素数4〜20のアルキル基、炭素数4〜20のフルオロアルキル基、ベンゼン環またはシクロヘキサン環を1〜3個有する基、およびステロイド骨格を有する基からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機基を表す。)
上記式(1)で表される側鎖のうち、好ましい具体例を挙げるならば、下記式(2)又は(3)で表されるものである。

(式中、X1は、単結合,−O−,−COO−のいずれかを表し、R1は炭素数8〜20のアルキル基を表す。)

(式中、X2は、単結合,−O−,−COO−,−CH−,−CHO−,のいずれかを表し、R2は、下記式(4)のいずれかを表し、X3は、単結合,−O−,−COO−のいずれかを表し、R3は、炭素数1〜16のアルキル基を表す。)

上記式(2)において特に好ましい例としては、上記式(2)のX1が−O−、R1が炭素数12〜18アルキル基である。また、上記式(3)において特に好ましい例としては、X2が−O−,−CHO−のいずれか、R2が上記4b、X3が単結合、R3が炭素数4〜12のアルキル基である。
本発明において、液晶配向膜を形成するためのポリマーとしては、ポリアミド、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルフィド、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリエステルイミド、アラミドなどが挙げられる。なかでも液晶配向膜としたときの信頼性に優れるので、ポリアミック酸またはポリイミドを用いることが特に好ましい。
主鎖に炭素数4〜16のアルキレン基を有し、かつ、液晶のプレチルト角を高める側鎖を有するポリアミック酸は、ジアミン成分とテトラカルボン酸酸二無水物成分の反応により得ることが出来る。具体的には、(a)前記ジアミン成分の一つとして、主骨格に炭素数4〜16のアルキレンを有するジアミンを用い、前記テトラカルボン酸二無水物成分の一つとして、液晶のプレチルト角を高める側鎖を有するテトラカルボン酸二無水物を用いる方法、(b)前記ジアミン成分の一つとして、液晶のプレチルト角を高める側鎖を有するジアミンを用い、前記テトラカルボン酸二無水物成分の一つとして、主骨格に炭素数4〜16のアルキレンを有するテトラカルボン酸二無水物を用いる方法、(c)前記ジアミン成分の中で、主骨格に炭素数4〜16のアルキレンを有するジアミンと、液晶のプレチルト角を高める側鎖を有するジアミンとを併用する方法、(d)前記テトラカルボン酸二無水物成分の中で、主骨格に炭素数4〜16のアルキレンを有するテトラカルボン酸二無水物と、液晶のプレチルト角を高める側鎖を有するテトラカルボン酸二無水物とを併用する方法、などが挙げられる。このポリアミック酸は下記一般式(5)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸として表すことができる。

(式中、Aは4価の有機基、Bは2価の有機基を表わす。)
上記のようなポリアミック酸のなかでも、主骨格に炭素数4〜16のアルキレンを有するジアミン化合物を用いたものが好ましく、特に液晶のプレチルト角を高める側鎖を有するジアミン化合物と併用して得られるものが好ましい。また、主鎖に炭素数4〜16のアルキレン基を有し、かつ、液晶のプレチルト角を高める側鎖を有するポリイミドは、上記ポリアミック酸を脱水閉環させることにより得ることが出来る。
主骨格に炭素数4〜16のアルキレンを有するジアミン化合物の例としては、芳香族ジアミン化合物の例として、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,6−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘキサン、1,7−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8−ビス(4−アミノフェノキシ)オクタン、1,9−ビス(4−アミノフェノキシ)ノナン、1,10−ビス(4−アミノフェノキシ)デカン、1,11−ビス(4−アミノフェノキシ)ウンデカン、1,12−ビス(4−アミノフェノキシ)ドデカン、1,13−ビス(4−アミノフェノキシ)トリデカン、1,14−ビス(4−アミノフェノキシ)テトラデカン、1,15−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタデカン、1,16−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘキサデカン等が挙げられる。また、脂肪族ジアミンの例として、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,6−ジアミノ−2,5−ジメチルヘキサン、1,7−ジアミノ−2,5−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−4,4−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−3−メチルヘプタン、1,9−ジアミノ−5−メチルノナン、2,11−ジアミノドデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン等が挙げられる。これらのジアミン化合物を原料として得られるポリアミック酸の中でも、下記式(6)で表される構造を主鎖中に有するポリアミック酸が好ましい。このようなポリアミック酸は上記の芳香族ジアミン化合物を用いることで得られる。

(式中、Y1は4価の有機基を表し、kは4から16の整数を表す)
即ち、一般式(5)で表される繰り返し単位において、この繰り返しの構造の一つとして、上記式(6)で表される構造を含有するポリアミック酸または、このポリアミック酸を脱水閉環させたポリイミドは好ましい。
この中でもとりわけ、液晶配向膜としたときの液晶の配向性とプレチルト角の熱耐性に優れるので、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタンを用いたポリマー、即ち式(6)のkは5が特に好ましい。
液晶のプレチルト角を高める側鎖を有するジアミン化合物は、2つの1級アミノ基を有するジアミン主骨格に、前述した液晶のプレチルト角を高める側鎖が結合したジアミンである。
このジアミンの側鎖としては、前述した式(1)の構造を例示でき、好ましい側鎖としては、前述した式(2)又は(3)で表されるものが挙げられる。式(2)においては、X1が−O−、R1が炭素数12〜18アルキル基が特に好ましい。また、式(3)においては、X2が−O−,−CHO−のいずれか、R2が前記4b、X3が単結合、R3が炭素数4〜12のアルキル基が特に好ましい。
ジアミン主骨格の構造は特に限定されないが、プレチルト角を高める効率の観点から、ジアミノベンゼン、ジアミノビフェニル、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルアミンなどが好ましく、中でも、ジアミノベンゼン骨格が特に好ましい。
上記の様な、ジアミン化合物の好ましい具体例としては、4−(ドデシルオキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(ヘキサデシルオキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(オクタデシルオキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−[4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)フェノキシ]−1,3−ジアミノベンゼン、および、5−{[4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)フェノキシ]メチル}−1,3−ジアミノベンゼンなどを挙げることができる。これらのプレチルト角発現成分としてのジアミン化合物は、それぞれ単独で、あるいは組み合わせて用いることが出来ることは言うまでもない。
これら、液晶のプレチルト角を高める側鎖を有するジアミン化合物を原料として得られるポリアミック酸は、下記式(7)で表される構造を主鎖中に有するポリアミック酸である。即ち、一般式(5)で表される繰り返し単位において、この繰り返しの構造の一つとして、下記式(7)で表される構造を含有するポリアミック酸または、このポリアミック酸を脱水閉環させたポリイミドは好ましい。

上記式(7)において、Y2は4価の有機基を表し、Y3は3価の有機基を表し、XおよびRは前記式(1)の定義と同じである。
また、Y3は、ベンゼン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルエタン、ジフェニルメタン、ジフェニルアミンから選ばれる骨格が好ましく、ベンゼン骨格がより好ましい。
本発明に用いるポリアミック酸を重合する際のジアミン成分としては、主骨格に炭素数4〜16のアルキレンを有するジアミン化合物と、液晶のプレチルト角を高める側鎖を有するジアミン化合物とに、さらに追加的なジアミン化合物とを組み合わせても良い。追加的なジアミン化合物の具体例を以下に示す。
脂環式ジアミンの例として、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルアミン、およびイソホロンジアミンが挙げられる。また炭素環式芳香族ジアミン類の例として、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ジアミノトルエン類(例えば、2,4−ジアミノトルエン)、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、2,5−ジアミノキシレン類、1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジアミノ−3−イソプロピルベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノスチルベン、4,4’−ジアミノスチルベン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ安息香酸フェニルエステル、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンジル、ビス(4−アミノフェニル)メチルホスフィンオキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(4−アミノフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキシルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニル尿素、1,8−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノアントラキノン、ジアミノフルオレン類、ビス(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)テトラメチルジシロキサン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、さらに複素環式ジアミン類としては、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−s−トリアジン、2,7−ジアミノジベンゾフラン、2,7−ジアミノカルバゾール、3,7−ジアミノフェノチアジン、2,5−ジアミノ−1,3,4−チアジアゾール、2,4−ジアミノ−6−フェニル−s−トリアジンなどが挙げられる。
以上のようなジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物とを反応させることにより、前記一般式(5)で表される構造単位を有するポリアミック酸とすることができる。
本発明において、前記式(6)で表される構造は、一般式(5)で表される構造単位のうちの20〜95%が好ましく、50〜95モル%がより好ましく、70〜95%が特に好ましい。また、前記式(7)で表される構造は、一般式(5)で表される構造単位のうちの5〜30%であることが好ましく、目的とするプレチルト角に応じて、5〜20%や5〜10%であっても良い。このような構成のポリアミック酸を得るためには、テトラカルボン酸二無水物とを反応させる、全ジアミン成分のなかで、前述した主骨格に炭素数4〜16のアルキレンを有するジアミン化合物、液晶のプレチルト角を高める側鎖を有するジアミン化合物、および、必要に応じて追加的なジアミン化合物とを、それぞれ所定の割合で使用すればよい。
以上のようなジアミン成分と反応させるテトラカルボン酸二無水物は、特に限定されない。その具体例をあえて挙げるならば、芳香族酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。また脂環式酸二無水物としては1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、などが例示される。これらの酸二無水物は単独でも組み合わせても用いることが出来るのは当然である。
また、前記式(6)のY1または、式(7)のY2が、下記式(8)

の構造である場合、プレチルト角発現基を多く導入したときの液晶配向性が優れるので好ましい。このようなポリアミック酸は、酸二無水物としてピロメリット酸二無水物を用いることで得ることが出来る。また、前記式(6)のY1または、式(7)のY2が、下記式(9)

である場合、ラビング条件によらす、安定したチルト角が得られるので好ましい。このようなポリアミック酸は、酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を用いることで得ることが出来る。
本発明に用いるポリアミック酸は、前述のジアミンと酸二無水物とを有機溶剤の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0〜80℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜10時間反応させることによって合成する事が出来る。反応の際に用いるジアミンと酸二無水物のモル比は、ジアミンが多くなりすぎると分子量が上がらず、また少なすぎると酸無水物が残存して保存安定性が悪くなるので、ジアミン/酸二無水物=0.5〜3.0/1.0(モル比)であると好ましく、ジアミン/酸二無水物=0.8〜2.0/1.0(モル比)であるとより好ましく、中でもジアミン/酸二無水物=1.0〜1.2/1.0がとりわけ好ましい。
重合反応の際に用いる溶媒については特に限定されないが、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジンおよびブチロラクトン類を用いると、生成したポリアミック酸の溶解性が高いので好ましい。
重合反応時の溶液濃度は、高すぎると得られたポリアミック酸溶液の取扱い性が悪くなり、低すぎると分子量が上がらないので、好ましくは1〜50重量%が、より好ましくは5〜30重量%が、とりわけ好ましくは8〜20重量%がよい。また、ポリマーが溶解する範囲内でブチルセルソルブやトルエン、メタノールなどの貧溶媒を加えても構わないことは言うまでもない。重合反応時は、反応系内を窒素雰囲気下としたり、反応系中の溶媒に窒素をバブリングしながら反応を行うと、ポリアミック酸の分子量が上がり易いので好ましい。
ポリアミック酸からポリイミドを得るには、加熱によってイミド化を進行させる方法や、触媒を用いて化学的にイミド化を行う方法などが例示できる。なかでも、容易に反応が進行し副反応が起こりにくいため触媒によって化学的にイミド化して得られるポリイミドを用いることが好ましい。化学的イミド化は、ポリアミック酸の溶液に、アミック酸の2〜20モル倍の塩基触媒とアミック酸の3〜30モル倍の酸無水物を添加し、−20〜300℃、好ましくは0〜250℃の温度において、1〜100時間反応させると好ましい。この際、塩基触媒や酸無水物の量が少ないと反応が十分に進行せず、また多すぎると反応終了後に塩基触媒や酸無水物を完全に除去することが困難となる。塩基触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等が例示でき、中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つために好ましい。また、酸無水物としては無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などが例示でき、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。
ポリアミック酸またはポリイミドの溶液は、貧溶媒に注入することにより、ポリマー成分を沈殿回収することができる。特に、ポリマー合成の際に触媒を用いる場合、溶液中に未反応のモノマーが残存する場合、およびポリマー合成に用いた溶媒が液晶配向剤の成分として適さない場合は、ポリマーを回収してから液晶配向剤に用いることが好ましい。ポリマーの沈殿回収に用いる貧溶媒としては特に限定されないが、メタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが例示できる。沈殿によって得られたポリマーは濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱乾燥してパウダーとすることが出来る。このパウダーを更に良溶媒に溶解して、再沈殿する操作を2〜10回繰り返すと、ポリマー中の不純物が少なくなり、液晶配向膜とした際の電気特性が優れるために好ましい。また、貧溶媒として例えばアルコール類、ケトン類、炭化水素など3種類以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
ポリアミック酸、ポリイミド以外のポリマーについても、主鎖に炭素数4〜16のアルキレン基を有するモノマーと、液晶のプレチルト角を高める側鎖を有するモノマーとを共重合させる方法や、主鎖に炭素数4〜16のアルキレン基を有するポリマーに、液晶のプレチルト角を高める側鎖を付加させるなどの一般的な手法により得ることが出来る。
本発明において、液晶配向膜を形成する為のポリマーの還元粘度は、均一な塗膜を形成することができる範囲であれば特に限定されないが、0.05〜3.0dl/gが好ましく、0.1〜2.5dl/gがより好ましく、0.3〜1.5dl/gがとりわけ好ましい。ポリマーの還元粘度が高すぎると液晶配向剤の取り扱いが難しくなり、低くすぎると液晶配向膜とした際に特性が安定しない場合がある。
以上のようにして得られた、主鎖に炭素数4〜16のアルキレン基を有し、かつ、液晶のプレチルト角を高める側鎖を有するポリマーは、基板に塗布するのに適した濃度の溶液とすることによって本発明の液晶配向剤となる。この際、液晶配向剤に含有されるポリマー成分は、1種類であっても良く、2種類以上が混合されていても良い。また、液晶配向剤に2種類以上のポリマーが含有されている場合は、その少なくとも1種類が主鎖に炭素数4〜16のアルキレン基を有し、かつ、液晶のプレチルト角を高める側鎖を有するポリマーであればよい。
本発明の液晶配向剤に用いる溶媒としては、含有する成分を均一に溶解させるものであれば特に限定されない。その一例としてはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、およびブチロラクトン類などの良溶媒が挙げられる。中でも、アミド系溶媒を含むとポリマーの溶解性が高いので好ましく、とりわけ、N−メチル−2−ピロリドンやN,N−ジメチルアセトアミドを含むと、液晶配向剤の印刷性が向上するので好ましい。また、ブチルセロソルブやプロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、エチルカルビトールやジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のジアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、ジグライムやジエチレングリコールジエチルエーテル等のジアルキレングリコールジアルキルエーテル類、乳酸ブチルのようなアルキルラクテート類、メタノールやエタノール等のアルコール類などは、ポリマーの溶解性は低いものの、液晶配向剤に含有させることにより印刷時の塗膜均一性や平滑性を改善する効果があるので、ポリマー成分が析出しない範囲でこれらの貧溶媒を混合することが好ましい。具体的には、良溶媒30〜99.9重量%と上記貧溶媒0.1〜70重量%とを含む溶媒を用いることが好ましい。
本発明の液晶配向剤の溶液濃度は、低過ぎると液晶配向膜が薄くなって液晶表示素子とした際の信頼性が悪くなることがあり、高すぎると基板に塗布する際の膜厚均一性が損なわれるため、樹脂分濃度が0.1〜30重量%が好ましく、より好ましくは1〜10重量%である。
このようにして得られた本発明の液晶配向剤に、さらにカップリング剤、架橋剤などの各種添加剤を加えて使用してもかまわないことは言うまでもない。カップリング剤を添加すると液晶配向膜と基板との密着性が向上する。ここでカップリング剤とは、ケイ素および1〜3族に属するすべての典型金属元素ならびにすべての遷移金属元素から選ばれる少なくとも1つ以上の元素と酸素原子との共有結合を有する化合物を示す。なかでも、アルコキシシラン、アルコキシアルミニウム、アルコキシジルコニウム、アルコキシチタン構造を有するカップリング剤は入手が容易でコスト的にも優れているために好ましい。特に、3−アミノプロピルトリメトキシシランは液晶表示素子とした際の電気特性が向上するためにとりわけ好ましい。またカップリング剤の添加量は多いと配向膜の強度が弱くなり、少ないと密着性向上の効果が少なくなるため、液晶配向剤中の固形分の0.01〜30重量%、より好ましくは0.1〜20重量%、とりわけ好ましくは0.5〜10重量%である。
上記のカップリング剤を配合するにあたって、あらかじめカップリング剤を溶媒で希釈した後、それらを−5〜80℃の温度で液晶配向剤中に少しずつ注入すると、増粘や樹脂の不溶化が起こりにくく均一な液晶配向剤となるために好ましい。また、カップリング剤を希釈する溶媒と濃度は特に制限されない。例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トルエン、ヘキサン、γ−ブチロラクトンなど、ポリマー溶液に使用されている溶媒を用いて、1〜50重量%、好ましくは3〜30重量%の濃度に希釈してから用いることが好ましい。
本発明の液晶配向剤は、濾過した後、基板上に塗膜を形成させ、ラビングすることにより液晶配向膜とすることができる。この際、用いる基板としては特に限定されず、ガラス基板、アクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板などを用いることが出来る。また、液晶駆動のためのITO電極などが形成された基板を用いることがプロセスの簡素化の観点から好ましいことは言うまでもない。
液晶配向剤の塗布は、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などの手法を用いることができる。また、塗膜の形成は、液晶配向剤を塗布した後、50〜300℃、好ましくは80〜250℃の温度において、1〜1000分間乾燥することによってなされる。形成する膜の厚みは、厚すぎるとコスト面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下するので、5〜300nm、より好ましくは7〜100nm、とりわけ好ましくは10〜80nmが好ましい。
塗膜のラビング処理は、ナイロン、レーヨン、コットンなどの布を用いて、膜表面を一方向に擦ることによりなされる。このときのラビング布の押し込み量は0.01〜1mm、より好ましくは0.1〜0.7mmであるが、粉塵の発生が抑えられるので、ラビング布の押し込み量は小さいほうが好ましい。
ラビング後の液晶配向膜付き基板は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどによって洗浄し、ラビング時に発生した粉塵を取り除くことが好ましい。洗浄方法としては、上記液体に基板を浸漬し、超音波をかけると粉塵が効率よく取り除かれるの好ましく、洗浄液としては、水、イソプロパノール、または水/イソプロパノール混合液が好ましい。特に、イソプロパノールを含有する洗浄液で、1分以上超音波洗浄することが好ましい。このようにして得られた液晶配向膜付き基板は、洗浄液を乾燥させた後、液晶表示素子の製造に用いることが出来る。
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の5−{[4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)フェノキシ]メチル}−1,3−ジアミノベンゼンは以下の反応経路により合成したものを用いた。

mp:153−157℃、1H−NMR(CDCl3,δppm):7.09(2H,d),6.88(2H,d),5.84(2H,s),5.74(1H,s),4.74(4H,s),3.33(2H,S),2.36(1H,t),1.77(4H,m),1.17−1.41(16H,m),1.01(2H,m),0.88(3H,t).
【実施例1】
1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン7.47g(26.09mmol)、4−(オクタデシルオキシ)−1,3−ジアミノベンゼン1.09g(2.89mmol)を、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略す。)80gに溶解した。これにピロメリット酸二無水物5.70g(26.13mmol)を添加し、室温で4時間反応させ、還元粘度が約0.8dl/g(濃度0.5g/dl、NMP中30℃で測定)のポリアミック酸(a−1)を得た。
ポリアミック酸(a−1)の溶液を、NMPとブチルセロソルブ(以下、BCSと略す)で希釈して、ポリアミック酸濃度5重量%、BCS濃度20重量%とし、本発明の液晶配向剤を得た。
[プレチルト角の評価]
上記の液晶配向剤を0.5μmのフィルターで濾過した後、透明電極付きガラス基板にスピンコートし、200℃/30分焼成して膜厚70nmの塗膜とした。更にこの塗膜を、毛足の長さが2mmのレーヨン布で、押し込み量0.5mm、ローラー回転数300rpm、ローラー送り速度20mm/sの条件でラビングして液晶配向膜とした。
ラビング後の液晶配向膜付き基板は、水中において超音波をかけて1分間洗浄を行った後、水滴をエアーガンで飛ばし、更に80℃で10分乾燥させた。この基板を2枚一組とし、50μmのスペーサーを挟んで、配向膜面が内側で且つラビング方向が反平行になるようにして組み立て、液晶(メルク社製 MLC−2003)を注入して液晶セルを作成した。この液晶セルの配向状態を偏光顕微鏡で観察したところ欠陥のない均一な配向をしていることが確認された。
上記の液晶セルについて、結晶回転法により液晶のプレチルト角を測定した。プレチルト角の測定は、まず液晶注入後の熱処理を行わずに測定し、その後、105℃/5分、120℃/60分の順に熱エージング処理を行い、各熱処理後におけるプレチルト角を室温にて測定した。その結果、熱処理前、105℃/5分後、120℃/60分後の順に、4.8度、4.6度、4.7度であり、各条件とも高いプレチルト角を有しており、かつ熱処理に対してプレチルト角の変化がほとんど見られなかった。
【実施例2】
1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン7.47g(26.09mmol)、4−[4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)フェノキシ]−1,3−ジアミノベンゼン1.10g(2.89mmol)を、NMP80gに溶解した。これにピロメリット酸二無水物5.70g(26.13mmol)を添加し、室温で4時間反応させ、還元粘度が約0.9dl/g(濃度0.5g/dl、NMP中30℃で測定)のポリアミック酸(a−2)を得た。
ポリアミック酸(a−2)の溶液を、NMPとBCSで希釈して、ポリアミック酸濃度5重量%、BCS濃度20重量%とし、本発明の液晶配向剤を得た。
上記の液晶配向剤を用い、実施例1の液晶配向剤と同様にプレチルト角の評価を行った。その結果、液晶のプレチルト角は、熱処理前、105℃/5分後、120℃/60分後の順に、3.8度、3.9度、4.2度であり、各条件とも高いプレチルト角を有しており、かつ熱処理に対してプレチルト角の変化がほとんど見られなかった。
<比較例1>
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル3.06g(15.28mmol)、4−(オクタデシルオキシ)−1,3−ジアミノベンゼン0.64g(1.70mmol)を、NMP47gに溶解した。これにピロメリット酸二無水物3.40g(15.59mmol)を添加し、室温で4時間反応させ、還元粘度が約0.7dl/g(濃度0.5g/dl、NMP中30℃で測定)のポリアミック酸(a−3)を得た。
ポリアミック酸(a−3)の溶液を、NMPとBCSで希釈して、ポリアミック酸濃度5重量%、BCS濃度20重量%とし、比較のための液晶配向剤を得た。
上記の液晶配向剤を用い、実施例1の液晶配向剤と同様にプレチルト角の評価を行った。その結果、液晶のプレチルト角は、熱処理前、105℃/5分後、120℃/60分後の順に、6.3度、6.0度、5.6度であり、各条件とも高いプレチルト角を示したが、熱処理に対してプレチルト角の低下が見られた。
<比較例2>
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル3.06g(15.28mmol)、4−[4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)フェノキシ]−1,3−ジアミノベンゼン0.65g(1.71mmol)を、NMP47gに溶解した。これにピロメリット酸二無水物3.40g(15.59mmol)を添加し、室温で4時間反応させ、還元粘度が約0.8dl/g(濃度0.5g/dl、NMP中30℃で測定)のポリアミック酸(a−4)を得た。
ポリアミック酸(a−4)の溶液を、NMPとBCSで希釈して、ポリアミック酸濃度5重量%、BCS濃度20重量%とし、比較のための液晶配向剤を得た。
上記の液晶配向剤を用い、実施例1の液晶配向剤と同様にプレチルト角の評価を行った。その結果、液晶のプレチルト角は、熱処理前、105℃/5分後、120℃/60分後の順に、5.6度、5.4度、5.0度であり、各条件とも高いプレチルト角を示したが、熱処理に対してプレチルト角の低下が見られた。
【実施例3】
1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン6.80g(23.75mmol)、4−(オクタデシルオキシ)−1,3−ジアミノベンゼン0.47g(1.25mmol)を、NMP68gに溶解した。これに1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物4.66g(23.76mmol)を添加し、室温で4時間反応させ、還元粘度が約0.7dl/g(濃度0.5g/dl、NMP中30℃で測定)のポリアミック酸(a−5)を得た。
ポリアミック酸(a−5)の溶液を、NMPとBCSで希釈して、ポリアミック酸濃度5重量%、BCS濃度20重量%とし、本発明の液晶配向剤を得た。
上記の液晶配向剤を用い、実施例1の液晶配向剤と同様にプレチルト角の評価を行った。その結果、液晶のプレチルト角は、熱処理前、105℃/5分後、120℃/60分後の順に、8.9度、8.8度、8.9度であり、各条件とも高いプレチルト角を有しており、かつ熱処理に対してプレチルト角の変化がほとんど見られなかった。
【実施例4】
1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン6.80g(23.75mmol)、4−[4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)フェノキシ]−1,3−ジアミノベンゼン0.48g(1.26mmol)を、NMP80gに溶解した。これに1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物4.66g(23.76mmol)を添加し、室温で4時間反応させ、還元粘度が約0.8dl/g(濃度0.5g/dl、NMP中30℃で測定)のポリアミック酸(a−6)を得た。
ポリアミック酸(a−6)の溶液を、NMPとBCSで希釈して、ポリアミック酸濃度5重量%、BCS濃度20重量%とし、本発明の液晶配向剤を得た。
上記の液晶配向剤を用い、実施例1の液晶配向剤と同様にプレチルト角の評価を行った。その結果、液晶のプレチルト角は、熱処理前、105℃/5分後、120℃/60分後の順に、6.9度、6.8度、7.2度であり、各条件とも高いプレチルト角を有しており、かつ熱処理に対してプレチルト角の変化がほとんど見られなかった。
【実施例5】
1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン7.47g(26.09mmol)、5−{[4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)フェノキシ]メチル}−1,3−ジアミノベンゼン1.14g(2.89mmol)を、NMP98gに溶解した。これにピロメリット酸二無水物6.14g(28.15mmol)を添加し、室温で4時間反応させ、還元粘度が約1.1dl/g(濃度0.5g/dl、NMP中30℃で測定)のポリアミック酸(a−7)を得た。
ポリアミック酸(a−7)の溶液を、NMPとBCSで希釈して、ポリアミック酸濃度5重量%、BCS濃度20重量%とし、本発明の液晶配向剤を得た。
上記の液晶配向剤を用い、実施例1の液晶配向剤と同様にプレチルト角の評価を行った。その結果、液晶のプレチルト角は、熱処理前、105℃/5分後、120℃/60分後の順に、8.3度、8.0度、8.2度であり、各条件とも高いプレチルト角を有しており、かつ熱処理に対してプレチルト角の変化がほとんど見られなかった。
【実施例6】
4,4’−ジアミノジフェニルメタン20.02g(100mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド115g、γ−ブチロラクトン115gに溶解した。これに1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物9.60g(49mmol)、ピロメリット酸二無水物10.90g(50mmol)を添加し、室温で4時間反応させ、還元粘度が約1.2dl/g(濃度0.5g/dl、NMP中30℃で測定)のポリアミック酸(a−8)を得た。
ポリアミック酸(a−8)の溶液に、N,N−ジメチルアセトアミドで2%に希釈した3−アミノプロピルトリメトキシシラン(LS−3150:信越化学工業株式会社製)を、3−アミノプロピルトリメトキシシランがポリアミック酸に対して1重量%になるように添加し、更にγ−ブチロラクトンで希釈して、ポリアミック酸濃度5重量%の溶液とした。
上記で調製したポリアミック酸(a−8)の5%溶液と、実施例1で調製したポリアミック酸(a−1)の5%溶液とを、重量比で(a−8)/(a−1)=4/1となるように混合し、充分攪拌して本発明の液晶配向剤を得た。
上記の液晶配向剤を用い、実施例1の液晶配向剤と同様にプレチルト角の評価を行った。その結果、液晶のプレチルト角は、熱処理前、105℃/5分後、120℃/60分後の順に、4.0度、4.1度、4.3度であり、各条件とも高いプレチルト角を有しており、かつ熱処理に対してプレチルト角の変化がほとんど見られなかった。
【実施例7】
実施例1で得られた液晶配向剤を、0.5μmのフィルターで濾過した後、透明電極付きガラス基板にスピンコートし、200℃/30分焼成して膜厚70nmの塗膜とした。更にこの塗膜を、毛足の長さが2mmのレーヨン布で、押し込み量0.3mm、ローラー回転数300rpm、ローラー送り速度40mm/sの条件でラビングして液晶配向膜とした。
ラビング後の液晶配向膜付き基板は、イソプロパノール中において超音波をかけて1分間洗浄を行った後、液滴をエアーガンで飛ばし、更に80℃で10分乾燥させた。この基板を2枚一組とし、50μmのスペーサーを挟んで、配向膜面が内側で且つラビング方向が反平行になるようにして組み立て、液晶(メルク社製 MLC−2003)を注入して液晶セルを作成した。
上記の液晶セルについて、結晶回転法により液晶のプレチルト角を測定したところ、9.9度であった。この液晶セルの配向状態を偏光顕微鏡で観察したところ欠陥のない均一な配向をしていることが確認され、弱いラビング条件、有機溶剤による洗浄にも関わらず、良好な配向性と高いプレチルト角を有していた。
【実施例8】
実施例2で得られた液晶配向剤を用い、実施例7と同様の評価を行った。その結果、液晶のプレチルト角は8.7度であり、液晶は欠陥のない均一な配向をしていることが確認され、弱いラビング条件、有機溶剤による洗浄にも関わらず、良好な配向性と高いプレチルト角を有していた。
【実施例9】
実施例3で得られた液晶配向剤を用い、実施例7と同様の評価を行った。その結果、液晶のプレチルト角は8.7度であり、液晶は欠陥のない均一な配向をしていることが確認され、弱いラビング条件、有機溶剤による洗浄にも関わらず、良好な配向性と高いプレチルト角を有していた。
【実施例10】
実施例4で得られた液晶配向剤を用い、実施例7と同様の評価を行った。その結果、液晶のプレチルト角は7.3度であり、液晶は欠陥のない均一な配向をしていることが確認され、弱いラビング条件、有機溶剤による洗浄にも関わらず、良好な配向性と高いプレチルト角を有していた。
【産業上の利用可能性】
本発明の液晶配向剤を用いて作製した液晶表示素子は高いプレチルト角を発現し、表示素子に対して熱エージングを行ったときのプレチルト角の低下も起こらず、信頼性の高い液晶表示デバイスとすることが出来る。また、本発明の液晶配向剤を用いて作製した液晶配向膜は、弱いラビング条件、イソプロパノールなどの有機溶剤による洗浄にも関わらず、良好な配向性と高いプレチルト角を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶配向膜を形成する為のポリマーを1種類以上含有する液晶配向剤であって、このポリマーの少なくとも1種類が、主鎖に炭素数4〜16のアルキレン基を有し、かつ、液晶のプレチルト角を高める側鎖を有するポリマーであることを特徴とする液晶配向剤。
【請求項2】
液晶のプレチルト角を高める側鎖が、炭素数4〜20の、アルキル基またはフルオロアルキル基を有する、1価の有機基である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
液晶のプレチルト角を高める側鎖が、下記(1)に示す構造である、請求項1に記載の液晶配向剤。

(式中、Xは単結合または2価の結合基を表し、Rは炭素数4〜20のアルキル基、炭素数4〜20のフルオロアルキル基、ベンゼン環またはシクロヘキサン環を1〜3個有する基、およびステロイド骨格を有する基からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機基を表す。)
【請求項4】
主鎖に炭素数4〜16のアルキレン基を有し、かつ、液晶のプレチルト角を高める側鎖を有するポリマーが、下記一般式(5)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸、またはこのアミック酸を脱水閉環させたポリイミドである、請求項1に記載の液晶配向剤。

(式中、Aは4価の有機基、Bは2価の有機基を表す。)
【請求項5】
一般式(5)で表される繰り返し単位において、この繰り返しの構造の一つが、下記式(6)で表される構造を有する、請求項4に記載の液晶配向剤。

(式中、Y1は4価の有機基を表し、kは4から16の整数を表す)
【請求項6】
一般式(5)で表される繰り返し単位において、この繰り返しの構造の一つが、下記式(7)で表される構造を有する、請求項4または請求項5に記載の液晶配向剤。

(式中、Y2は4価の有機基を表し、Y3は3価の有機基を表し、Xは単結合または2価の結合基を表し、Rは炭素数4〜20のアルキル基、炭素数4〜20のフルオロアルキル基、ベンゼン環またはシクロヘキサン環を1〜3個有する基、およびステロイド骨格を有する基からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機基を表す。)
【請求項7】
一般式(5)で表される繰り返し単位において、この繰り返しの構造のうち、式(6)で表される構造が20〜95%であり、式(7)で表される構造が5〜30%である請求項4又は請求項6に記載の液晶配向剤。
【請求項8】
式(6)のY1または、式(7)のY2が、下記(8)または(9)に示す構造である、請求項5〜7のいずれかに記載の液晶配向剤。


【国際公開番号】WO2004/099289
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506012(P2005−506012)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006275
【国際出願日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】