説明

液晶配向層用ハイブリッドポリマー材料

【課題】液晶媒体の配向を誘起するための新規なハイブリッドポリマー光学配向層を提供する。
【解決手段】ハイブリッドポリマーは、モノマーと、マクロモノマーと、ポリイミド、ポリアミック酸及びそのエステルから構成されるクラスに属するポリマーとから成る群から選択される少なくとも1成分と、付加性モノマーと官能基含有付加ポリマーとから成る群から選択される少なくとも1成分とから調製され、これら2成分は共有結合してコポリマーを形成している。更に、この新規な分岐ハイブリッドポリマー光学配向層3を含む液晶5ディスプレイ。

【発明の詳細な説明】
【関連出願との関係】
【0001】
本出願は、2002年5月31日出願の米国出願第10/160,819号の一部継続出願である、2002年6月17日出願の米国出願第10/174,132号の一部継続出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は液晶配向用材料及び液晶光学素子に関する。
【背景技術】
【0003】
現在の液晶ディスプレイ(LCD)素子としては、ねじれネマティックモードを用いた素子(即ち、一対の上下電極基板間でネマティック液晶分子の配向方向が90°ねじれている構造を有する素子)や、超ねじれネマティックモードを用いた素子、複屈折効果を用いた素子(即ち、ネマティック液晶分子の配向方向が180°〜300°ねじれている構造を有する素子)、液晶配向を制御する2個の電極が1個の基板上に存在し、基板面内での液晶配向方向が電場印加時に変化する面内スイッチングモードを用いた素子、強誘電性液晶物質或いは反強誘電性液晶物質を用いた素子等が挙げられる。これらの各素子に共通するのは、ポリマー配向層をコートした一対の基板間に配置された液晶層である。ポリマー配向層によって、電場の非存在下であっても液晶媒体の配向方向が制御される。通常、液晶媒体の配向方向は、ポリマー層を布或いは他の繊維材料で研磨する機械的研磨プロセスによって決定される。研磨面に接する液晶媒体は通常、機械的研磨方向と平行に配向する。或いは、米国特許第5,032,009号及び第4,974,941号「液晶媒体の配向/再配向プロセス」に開示されているように、異方性吸収分子を含む配向層に偏光を照射して液晶媒体を配向させることができる。
【0004】
偏光を利用して液晶媒体を配向させるプロセスは、配向層への埃や静電荷の蓄積を減らすことができる非接触配向法となり得る。この光学配向プロセスの他の利点としては、配向方向の高分解能制御や高い配向性が挙げられる。
【0005】
液晶ディスプレイ用光学配向層の要件としては、配向に対するエネルギー閾値が低いことや、可視光に対する透明性(無色)、良好な誘電特性と電圧保持率、長期熱安定性、長期光学安定性、そして多くの用途においては、プレチルト角が均一に制御されていることが挙げられる。
【0006】
光学配向層の形成に用いるポリマーもかなり広範な条件で処理できることが要求される。市販の液晶ディスプレイの配向層としては、一般にポリイミド系ポリマーが、その良好な熱的及び電気的特性ゆえに用いられている。
【0007】
光学配向層の形成にポリイミドを用いる際の不都合な点の1つとして、米国特許第5,958,292号に開示されているように、ポリイミドの場合、高い光学配向性を誘起するためには一般に大量の偏光(5〜30J/cm)が必要であるということが挙げられる。大量の偏光が必要であることの不都合な点としては、照射システムでの基板の滞留時間が増加することによるアセンブリラインでの処理量の減少や、現在のディスプレイシステムに必要なトランジスタやカラーフィルタへの損傷の可能性、デバイスの長期安定性や性能を低下させ得る配向層自身の光劣化等が挙げられる。
【0008】
少量の偏光(0.05〜5J/cm)で十分な配向性が得られる、ポリイミド以外の光活性ポリマー(例えば、ポリメタクリレートやポリシロキサン)については、米国特許第6,224,788号「液晶配向剤及び該配向剤を用いた液晶配向膜の製造プロセス」や米国特許第5,824,377号「液晶デバイスの配向用感光材料及びその液晶デバイス」に記載されている。これらの材料に偏光を照射すると、光架橋して光学配向層を形成する。これらのポリマーの有利な点としては、ポリマー骨格の移動性が高いため光架橋反応の効率が良いことや、ポリマーの繰り返し単位が小さいため光反応種の密度が高いことが挙げられる。光反応基の密度や移動性が高いと、良好な配向を得るために必要な偏光の量も少なくて済む。しかし、光学密度閾値における利点である上述の物性によって、デバイスの電気性能や光学安定性が低下する場合がある。例えば、薄膜トランジスタTNディスプレイにおいては、電圧保持率(VHR、即ち、印加電圧をオフにした後のディスプレイ内での電圧低下の尺度の一種)が不十分になる場合がある。
【0009】
光学配向層用材料に複数の所望の特性(例えば、VHRの改善)を導入するための方法については、国際公開WO99/49360号「液晶配向層」や国際公開WO01/72871A1号「液晶配向層調製用ポリマーブレンド」に記載されている。光反応性ポリマー(通常非ポリイミド)を含むポリマー化合物とポリイミドとのブレンドは、高いVHRを有する材料(通常ポリイミド)とブレンドすることによって非ポリイミドの不十分なVHRを改善する方法として提案されている。しかし、このブレンドの場合、混和性が制限されるという不都合な面があり、配向用に用いることのできる光反応性材料の量が制限されることになる。
【0010】
従来の液晶配向層用ポリイミドに複数の所望の特性を導入するための方法については、米国特許第5,773,559号「ポリイミドブロックコポリマー及び液晶配向層形成剤」に記載されている。このプロセスにおいては、あるポリイミド型ブロックが別のポリイミド型ブロックと共重合されたポリイミドブロックコポリマーが記載されており、このコポリマーは、従来のポリイミド合成では得ることの困難な複数の特性を示す。
【0011】
同類のモノマー同士の共重合については当該技術分野ではよく知られている。一方、同類ではないモノマーやポリマー同士を共重合してコポリマーを形成すること(特に、ポリイミド型ポリマーと付加型ポリマーとの共重合)についてはあまり知られていない。反応性二重結合を含むポリイミドと架橋試薬(例えば、テトラエチレングリコールジアクリレート)とから成る、電子部品或いは光学部品用硬化性組成物については、例えば、米国特許第4,778,859号に記載されている。この材料は硬化条件下で架橋マトリックスを形成するが、この形成されるマトリックスの構造については知られておらず、制御することができない。ヘドリック(Hedrick)ら(Polymer、Vol.36、No.25、4855〜4866、1995年)は、ポリイミドブロックの末端がポリスチレンオリゴマーとなっているトリブロックコポリマーの合成について記載している。この材料は、特にミクロ相分離を行うように設計されたものである。加熱の際に、熱的に不安定なポリスチレンブロックが分解し、ナノメートルサイズの孔が構造内に残る。米国特許第4,539,342号「アミノ末端ブタジエン−アクリロニトリル反応体から調製した発泡ポリイミド」には、アミノ末端ブタジエン−アクリロニトリルコポリマーが一成分である発泡ポリイミドについて記載されている。ここに記載の材料は、当該技術分野ではセグメント化ブロックコポリマーとして知られており、可撓性及び弾性を示す発泡体を形成し、高い蒸気バリア性を示す。同様に、米国特許第4,157,430号「アミン末端ポリマー及びブロックコポリマーの形成」には、熱硬化剛性発泡体としてのブロックコポリマー形成用のアミン末端ブタジエンポリマーの合成について記載されている。これらの文献の著者らは、ポリイミドを有するコポリマーの概念について記載しているものの、それについて何ら教示するところがない。しかし、上述の文献や特許に共通する特徴であるミクロ相分離や発泡ポリイミドの特性は、液晶配向層に用いる材料においては望ましい特性とはいえない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
光学配向層用の材料及びプロセスを更に開発する上で、本発明者らは、付加ポリマーとポリイミドとから得られるユニットを含む新規なコポリマーを発明し、本明細書に記載する。この光学配向層用の新規な材料は、上述の光学配向層における不都合を解消或いは低減するために発明された。本発明者らは、この新規なポリマーを「ハイブリッドポリマー」と称する。このハイブリッドポリマーは、モノマーと、マクロモノマーと、ポリイミド、ポリアミック酸及びそのエステルから構成されるクラスに属するポリマーとから成る群から選択される少なくとも1成分と、付加性モノマーと官能基含有付加ポリマーとから成る群から選択される少なくとも1成分とから調製され、これら2成分は共有結合してコポリマーを形成している。この新規なハイブリッドポリマーは、ポリイミドの良好な熱的及び電気的特性と、付加ポリマー(例えば、ポリメタクリレートやポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリスチレン)の高密度や高移動性とを併せて有する。このように、他の材料やプロセスでは得ることが困難な複数の所望の特性を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、特に液晶光学配向層として有用であり、複数の所望の特性を提供するハイブリッドポリマーの組成を開示する。本発明のハイブリッドポリマーは、モノマーと、マクロモノマーと、ポリイミド、ポリアミック酸及びそのエステルから構成されるクラスに属するポリマーとから成る群から選択される少なくとも1成分と、付加性モノマーと官能基含有付加ポリマーとから成る群から選択される少なくとも1成分とから調製され、これら2成分は共有結合してコポリマーを形成している。
【0014】
本発明の他の実施形態としては、モノマーと、マクロモノマーと、ポリイミド、ポリアミック酸及びそのエステルから構成されるクラスに属するポリマーとから成る群から選択される少なくとも1成分と、付加性モノマーと官能基含有付加ポリマーとから成る群から選択される少なくとも1成分とから調製され、これら2成分が共有結合してコポリマーを形成している、本発明のハイブリッドポリマーが挙げられる。
【0015】
本発明の第3の実施形態は、(a)少なくとも1個の付加重合性部分を側鎖として有するポリイミド、ポリアミック酸及びそのエステルから構成されるクラスに属するポリマーから成る群から選択される少なくとも1成分と、(b)付加性モノマーと官能基含有付加ポリマーとから成る群から選択される少なくとも1成分とから調製され、成分(a)と成分(b)が共有結合してコポリマーを形成している、分岐ハイブリッドポリマーである。
【0016】
本発明の第4の実施形態は、(a)モノマーと、マクロモノマーと、ポリイミド、ポリアミック酸及びそのエステルから構成されるクラスに属するポリマーとから成る群から選択される少なくとも1成分と、(b)官能基含有付加ポリマーである少なくとも1成分とから調製され、成分(a)と成分(b)が共有結合してコポリマーを形成している、分岐ハイブリッドポリマーである。
【0017】
本発明の更なる実施形態は、前記ハイブリッドポリマーから調製された光学配向層、及びこの光学配向層を含む液晶ディスプレイ素子である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】液晶ディスプレイ素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書において、「配向層」とは、基板表面上の材料層であって、外部場の非存在下で液晶層の配向を制御する層である。本明細書において、「従来の配向層」とは、光学的手段以外の処理によってのみ液晶層の配向を行う配向層を意味する。例えば、機械研磨されたポリイミドや、蒸着された二酸化ケイ素、Langmuir−Blodgett膜はいずれも液晶を配向させることが示されている。
【0020】
本明細書において、「光学配向層」とは、偏光照射後に液晶の配向を誘起する異方性吸収分子を含む配向層を意味する。光学配向層は、等方性媒体であり得るし、また、光学配向前に若干の異方度を有していてもよい。
【0021】
本明細書において、「活性化ポリイミド」とは、ポリイミド、ポリアミック酸及びそのエステルから構成されるクラスに属するポリマー或いはマクロモノマーを意味し、これらは、特定の官能基を有するジアミン、酸二無水物、モノアミン或いは酸一無水物を用いて、及び/又はジアミンと酸二無水物との化学量論ミスマッチによって、及び/又はポリイミド、ポリアミック酸或いはそのエステルを化学的に修飾し重合性官能基を導入することによって調製される。「活性化」という用語は、ポリイミドを特定の作用形態を示すものに限定することを意図するものではなく、むしろこのポリマーがどのようにその機能を果たし得るかを当業者に示唆することを意図したものである。本発明においては、所望のハイブリッドポリマーを合成するための作用機構は特に限定されない。
【0022】
本明細書において、「付加性モノマー」は、付加ポリマー或いはコポリマーの重合に用いる単官能基モノマーユニットとして定義される。本明細書において「官能基含有付加性モノマー」は、付加ポリマー或いはコポリマーの重合に用いる、他の官能化部分を少なくとも1個含有する付加性モノマーとして定義される。この官能化部分としては、アミンやジアミン、酸無水物、酸二無水物、イソシアネート、酸クロリド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書において、「官能基前駆体含有付加性モノマー」は、付加ポリマー或いはコポリマーの重合に用いる付加性モノマーであって、例えば、化学的修飾によって官能化部分を与え得る他の基を少なくとも1個含有する付加性モノマーとして定義される。例えば、アミンは、カルバメート基(例えば、t−ブチルカルバメート)やアミド基(例えば、N−ホルミル基やN−ベンジル基)として保護し得る。「有機化学における保護基」(テオドラ W.グリーン(Theodora W. Greene)、John Wiley and Sons、ニューヨーク、1981年)には多くのこのような保護基が記載されている。同様に、ニトロ基等の他の基を還元してアミノ基を得ることもできる。酸無水物は、例えば、ジエステルや二価酸、二価酸塩として保護し得る。「上級有機化学(Advanced Organic Chemistry)、第4版」(ジェリー マーチ(Jerry March)、John Wiley and Sons、ニューヨーク、1992年)には多くのこのような修飾について記載されている。このような基修飾は、光学的に、熱的に、或いは反応に試薬を添加することによって行うことができる。ここに記載された方法に限定されるものではなく、本発明のハイブリッドポリマーを得る上で多様の基修飾方法を行うことが可能なことは当業者であれば理解できるであろう。
【0024】
本明細書において、「官能基含有付加ポリマー」とは、1以上の官能化部分を含有する付加性マクロモノマー或いはポリマーを意味する。この官能化部分としては、アミンやジアミン、酸無水物、酸二無水物、イソシアネート、メタクリレート、アクリレート、メタクリルアミド、アクリルアミド、オレフィン、ビニル、スチレン、マレイミド、ノルボルネン、酸クロリドが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書において、「官能基前駆体含有付加ポリマー」は、修飾によって官能基含有付加ポリマーを与え得る少なくとも1個の基を含む付加性マクロモノマー或いはポリマーとして定義される。「官能化」という用語は、モノマー、マクロモノマー或いはポリマー上の官能部分を特定の作用形態を示すものに限定することを意図したものではなく、モノマー、マクロモノマー或いはポリマー上の官能部分がどのようにその機能を果たし得るかを当業者に示唆することを意図する。本発明においては、所望のハイブリッドポリマーを合成するための作用機構は特に限定されない。
【0025】
「付加重合性部分」とは、付加性モノマー或いは官能基含有付加ポリマーと付加重合し得る活性化ポリイミドと共有結合している1以上の反応基である。
【0026】
本明細書において、「分岐コポリマー」とは、骨格が1以上の分岐点を含むコポリマーを意味する。
【0027】
本明細書において、「ハイブリッドポリマー」とは、モノマーと、マクロモノマーと、ポリイミド、ポリアミック酸及びそのエステルから構成されるクラスに属するポリマーとから成る群から選択される少なくとも1成分と、付加性モノマーと官能基含有付加ポリマーとから成る群から選択される少なくとも1成分とから調製されたポリマーであって、これら2成分が共有結合してコポリマーを形成しているポリマーを意味する。
【0028】
「分岐ハイブリッドポリマー」とは、骨格が1以上の分岐点を含むハイブリッドポリマーのことである。
【0029】
光学配向層とは、偏光照射後に液晶の配向を誘起する異方性吸収分子を含む配向層のことである。本発明の光学配向層は、偏光の照射前或いは照射後に、機械的ラビング等の従来の手段によって処理することもできる。光学配向層の異方性吸収分子の吸収特性は、異なる方向で軸に沿って測定すると異なる値を示す。異方性吸収分子は150nm〜約2000nmに吸収バンドを示す。本発明における最も好ましい光学配向層は約150〜400nm、特に約250〜400nmに最大吸光度を示す。
【0030】
光学配向層として特に有用なポリマーはポリイミドである。ポリイミドはその優れた熱的及び電気的安定性で知られており、この特性は液晶ディスプレイ用光学配向層において有用である。ポリイミドの調製については、「ポリイミド」(D.ウィルソン(D. Wilson)、H.D.ステンゼンバーガー(H.D.Stenzenberger)及びP.M.ハーゲンロザー(P.M.Hergenrother)編、Chapman and Hall、ニューヨーク、1990年)に記載されている。通常、ポリイミドは、1当量のジアミンと1当量の酸二無水物を極性溶媒中で縮合しポリアミック酸プレポリマー中間体を得ることによって調製する。コポリマーポリイミドは、一種以上のジアミンと一種以上の酸二無水物を縮合しコポリアミック酸を得ることによって調製される材料である。
【0031】
ポリアミドの他の中間体は、ポリアミック酸をアルコールでエステル化することによって得られるポリアミック酸エステルである。ポリアミック酸エステルを熱イミド化してポリイミドを形成する。
【0032】
このように、ポリアミック酸とポリアミック酸エステルは、本発明で用いるポリイミドに非常に密接に関連する前駆体であると考えられる。従って、ポリアミック酸とポリアミック酸エステルは本発明において有用であると考えられる。更に、ポリアミック酸やポリアミック酸エステルの化学的或いは熱的イミド化によって得られるプレイミド化ポリイミドも本発明においては有用であると考えられる。本発明の新規なポリマーは、ポリイミド、ポリアミック酸及びそのエステルから構成されるクラスに属するポリマーを5〜95%、好ましくは25〜75%含むハイブリッドポリマーである。
【0033】
本発明において有用な活性化ポリイミドは、ポリイミド、ポリアミック酸及びそのエステルから構成されるクラスに属するポリマー或いはマクロモノマーであり、これは、特定の官能基を有するジアミン、酸二無水物、モノアミン或いは酸一無水物を用いて、及び/又はジアミンと酸二無水物の化学量論ミスマッチによって、及び/又はポリイミド、ポリアミック酸或いはそのエステルを化学的に修飾し重合性官能基を導入することによって調製される。通常ポリイミドは、ポリアミック酸プレポリマー中に同数の酸無水物とアミン末端基を含んでいる。化学量論ミスマッチで調製したポリイミドの場合、過剰の末端基を有するポリマー鎖が形成されるであろう。例えば、酸二無水物に対するジアミンの比率が1.1〜1.0の場合、両末端がアミンであるポリマー鎖が大部分となるであろう。単官能基ユニット(例えば、モノアミンや酸一無水物)をモノマーミックスに添加した場合にも同様の結果が得られる。得られたポリイミドの鎖の多くはその末端が単官能基ユニットとなっている。
【0034】
各種の酸二無水物が本発明の新規なハイブリッドポリマーの調製に有用となり得る。テトラカルボン酸二無水物成分の具体例としては、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物やピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルスルホン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン酸二無水物、2,3,4,5−ピリジンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物や1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物、及びこれらの酸及び酸クロリド誘導体が挙げられる。好ましい酸二無水物は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物及び1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物である。最も好ましい酸二無水物は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物である。
【0035】
本発明のハイブリッドポリマーの調製に用いることのできる酸一無水物の例としては、無水マレイン酸や無水ジメチルマレイン酸、無水シトラコン酸、cis−5−ノルボルネン−endo−2,3−ジカルボン酸無水物、cis−5−ノルボルネン−exo−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、endo−ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、1−メチル−5−シクロヘキセン−2,3−ジカルボン酸無水物、cis−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、cis−4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、exo−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物が挙げられる。
【0036】
各種のジアミンが本発明の新規なハイブリッドポリマーの調製に有用となり得る。これらジアミンの例としては、2,5−ジアミノベンゾニトリルや2−(トリフルオロメチル)−1,4−ベンゼンジアミン、p−フェニレンジアミン、2−クロロ−1,4−ベンゼンジアミン、2−フルオロ−1,4−ベンゼンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ジアミノジフェニルプロパン、ビス(3,5−ジエチル−4−アミノフェニル)メタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノナフタレン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレンジアミン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等の芳香族ジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の脂環式ジアミン、テトラメチレンジアミンやヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。更に、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン等のジアミノシロキサンを用いることもできる。このようなジアミンは単独で用いてもよく、2種以上の混合物として組み合わせて用いてもよい。ハイブリッドポリマー調製用に好ましいジアミンは、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、N,N−ジプロピル−ベンゼン−1,2,4−トリアミン、2−(N,N−ジアリルアミノ)1,4−ベンゼンジアミン、1−(N,N−ジアリルアミノ)−2,4−ベンゼンジアミン、1−[4−ビニルフェノキシ]−2,5−ベンゼンジアミン、1−[4−ビニルフェノキシ]−2,4−ベンゼンジアミン及び2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレンジアミンである。
【0037】
ハイブリッドポリマーの調製に用いることのできる最も好ましいジアミンを表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
ハイブリッドポリマーの調製に用いることのできる好ましいモノアミンとしては、3−ビニルアニリンや4−ビニルアニリン、アリルアミン等が挙げられる。最も好ましいモノアミンは4−ビニルアニリンである。
【0040】
本発明の新規なポリマーは、付加ポリマーのクラスに属するポリマーを5〜95%、好ましくは25〜75%含むハイブリッドポリマーである。付加ポリマーとしては、ポリメタクリレートやポリアクリレート、ポリスチレン、ポリノルボルネン、ポリオレフィン、ポリアクリルアミド等が挙げられるが、これらに限定されない。ハイブリッドポリマーの付加ポリマー部分は、ポリイミド部分に所望の特性(例えば、低レベル照射での安定したプレチルトや良好な光学配向)を付与し得る。
【0041】
各種付加性モノマー及び官能基含有付加ポリマーは、本発明の新規なハイブリッドポリマーの調製において有用となり得る。液晶ディスプレイの光学配向性の向上を導く好ましい付加性モノマー及び官能基含有付加ポリマーとは、光学配向の際に二量化が可能な光反応基を含有するものである。この光反応基としては、表2に示すように、3−アリールアクリル酸エステル(桂皮酸エステル)やカルコン、クマリン構造体等が挙げられるがこれらに限定されない。本発明において有用な好ましい付加性モノマーの例は、更に次の文献に記載されている(米国特許第6,335,409B1号(桂皮酸エステル)、米国特許第6,224,788号(カルコン)及びジャクソン(Jackson)ら、Chem.Mater.(2001年)13、694〜703頁(クマリン))。
【0042】
【表2】

【0043】
最も好ましい付加性モノマーを表3に示す。偏光を照射すると、これらのモノマーから調製されたハイブリッドポリマーは光架橋して光学配向層を形成し得る。未架橋部位と架橋部位とによって、光学配向層に接触する液晶分子内にプレチルトが形成され得る場合もある。
【0044】
【表3】

【0045】
ディスプレイ等の液晶デバイスの多くは、例えば、選択したポリマー配向層の機械的研磨によって制御される有限のプレチルト角を有する。このような層に接触する液晶分子は研磨方向と平行に配向するが、基板に対して正確に平行ではない。液晶分子は基板からわずかに(例えば、約2〜15°)チルトしている。多くのディスプレイ用途において性能を最適にするには、液晶のプレチルト角を有限且つ均一な値にすることが望ましい。液晶ディスプレイ用光学配向層にプレチルトを付与するために幾つかの方法が検討されている。第1の方法は、米国特許第5,858,274号に記載されているように、ポリイミド配向層に側鎖として長アルキル鎖を導入することである。第2の方法は、米国特許第5,731,405号に記載されている、側鎖としてフッ化或いは一部フッ化したC4〜C20アルキル鎖を有するポリイミド光学配向層である。本発明において所定のプレチルト角を有する光学配向層を生成する好ましい付加性モノマー或いは官能基含有付加ポリマーは、C4〜C24アルキル鎖(分岐鎖或いは直鎖)又はフッ化或いは一部フッ化したC4〜C20アルキル鎖を含む。本発明において所定のプレチルト角を有する光学配向層を生成する他の好ましい付加性モノマー或いは官能基含有付加ポリマーは、光学配向の際に二量化が可能な光反応基を含み、更にC4〜C24アルキル鎖(分岐鎖或いは直鎖)又はフッ化或いは一部フッ化したC4〜C20アルキル鎖を含む。本発明のハイブリッドポリマーの調製に用いることのできる最も好ましい付加性モノマーの例を表4に示す。当業者であれば、本発明にとって有用な上述及び他の特性を付与し得る付加性モノマー及び官能基含有付加ポリマーが各種存在することは理解できるであろう。
【0046】
【表4】

【0047】
本発明において有用な官能基含有付加ポリマーは、メタクリレートとその誘導体、アクリレートとその誘導体、メタクリルアミドとその誘導体、アクリルアミドとその誘導体、オレフィンとその誘導体、ビニル化合物とその誘導体、スチレンとその誘導体、マレイミドとその誘導体、ノルボルネンとその誘導体、及びこれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1種から調製されるポリマー或いはマクロモノマーである。本発明における官能基含有付加ポリマーは、最終ハイブリッドポリマーに所望の特性を付与し得る各種付加性モノマーから調製されるポリマー或いはマクロモノマーであってもよい。光学配向用ハイブリッドポリマーの調製に用いる好ましい官能基含有付加ポリマーは、光学配向の際に二量化が可能な光反応基と、光学配向層に接触する液晶に均一なプレチルト角を付与する基とを含んでいる。官能基含有付加ポリマーの調製に用い、光学配向の際に二量化が可能な好ましい付加性モノマーを表3に示す。均一なプレチルト角を生成する光学配向層を形成するハイブリッドポリマーの調製に用いる好ましい付加性モノマーを表4に示す。官能化部分としては、アミンやジアミン、酸無水物、酸二無水物、イソシアネート、メタクリレート、アクリレート、メタクリルアミド、アクリルアミド、オレフィン、ビニル、スチレン、マレイミド、ノルボルネン、酸クロリド等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明における官能基含有付加ポリマーの好ましい官能化部分はアミン、ジアミン、酸無水物及び酸二無水物である。官能化部分は、官能基含有付加性モノマーとして官能基含有付加ポリマーに導入することができる。或いは、付加性モノマー(官能基前駆体含有付加性モノマー)上の修飾可能基として官能基含有付加ポリマーに導入した後に修飾して官能化部分とすることができる。最も好ましい官能化部分はアミンである。本発明におけるアミン側鎖を含む官能基含有付加ポリマーは、官能基前駆体含有付加ポリマーに官能基前駆体含有付加性モノマーをランダムに導入し、次いで化学的修飾を行うことによって調製することができる。この目的のための好ましい官能基前駆体含有付加性モノマーを表5に示す。
【0048】
【表5】

【0049】
他の最も好ましい官能化部分は酸無水物である。本発明における酸無水物側鎖を含む官能基含有付加ポリマーは、適宜官能化した付加性モノマーを官能基含有付加ポリマーにランダムに導入することによって調製することができる。この目的のための好ましい官能基含有付加性モノマーとしては、無水マレイン酸や無水ジメチルマレイン酸、無水シトラコン酸、cis−5−ノルボルネン−endo−2,3−ジカルボン酸無水物、cis−5−ノルボルネン−exo−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、endo−ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、1−メチル−5−シクロヘキセン−2,3−ジカルボン酸無水物、cis−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、cis−4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、exo−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物等が挙げられる。
【0050】
本発明の新規なポリマーは幾つかの方法によって調製することができるが、各方法はそれぞれ特異なハイブリッドポリマー構造を導き得る。これらの方法は合成の仕方や順序において異なっており、各々独立して、組成全体は類似しているが詳細な分子構造が異なる有用な材料を提供し得る。これらの方法はハイブリッドポリマーを調製するための様々な方法を例示するものであって、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の材料はここで詳細に記載された幾つかの合成方法によって調製することができる。
【0051】
方法1:
一般式1及び2に示す付加重合性部分で官能化した両末端を有する活性化ポリイミドは、例えば、付加重合性部分を含む単官能アミン或いは酸無水物を導入するか、又はポリアミック酸プレポリマーを後処理することによって調製する。本発明における好ましい末端基付加重合性部分としては、メタクリレートとその誘導体、アクリレートとその誘導体、メタクリルアミドとその誘導体、アクリルアミドとその誘導体、アリル基とその誘導体、ビニル基とその誘導体、スチレンとその誘導体、マレイミド或いは無水マレイン酸とその誘導体、ノルボルネンとその誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。最も好ましい末端基付加重合性部分はアクリルアミド及びメタクリルアミドであるが、これらはアミノ末端基及びスチレン基を含む非化学量論的ポリアミック酸を後修飾することによって調製することができ、また、このポリアミック酸はモノアミン末端封止剤としての4−ビニルアニリンを用いてポリアミック酸を合成することによって調製することができる。
【0052】
次いで、活性化ポリイミド1及び/又は2を付加性モノマー3と付加共重合してハイブリッドポリマーを得る。本発明における付加性モノマーの好ましい付加重合性部分としては、それぞれメタクリレートとその誘導体、アクリレートとその誘導体、メタクリルアミドとその誘導体、アクリルアミドとその誘導体、アリル基とその誘導体、ビニル基とその誘導体、スチレンとその誘導体、マレイミド或いは無水マレイン酸とその誘導体、ノルボルネンとその誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明における付加性モノマーの最も好ましい付加重合性部分としては、メタクリレートとその誘導体及びアクリレートとその誘導体が挙げられる。
【0053】
【化1】

【0054】
式中、Mは4価の有機基であり、Qはフッ素、塩素、シアノ、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ或いはジアリルアミノで任意的に置換された2価の有機基であり、Rは1価或いは2価の有機基であり、Rは1価の有機基であって、R及びRの各々は付加重合性部分を含んでおり、R及びRは、メタクリレートとその誘導体、アクリレートとその誘導体、メタクリルアミドとその誘導体、アクリルアミドとその誘導体、アリル基とその誘導体、ビニル基とその誘導体、スチレンとその誘導体、マレイミド或いは無水マレイン酸とその誘導体、及びノルボルネンとその誘導体から成る群から独立して選択される少なくとも1種の有機基であり、Zは1価の有機基であり、nは3〜5000である。R、R、M、Q及びZは各々独立して単一の化学構造、或いは異なる化学構造の集合体を示し得る。
【0055】
当業者であれば、第2の重合の条件を制御して活性化ポリイミドの完全な架橋を回避することによって、可溶性ポリマーが得られ、液晶配向用の均一な薄膜が調製可能であることは理解できるであろう。形成されたポリマー構造は、分岐コポリマーであり、ここで付加性モノマーユニットとポリイミドの反応性末端基が結合して付加ポリマー部分の主鎖構造を有する直鎖ポリマーセグメントを形成し、ポリイミドセグメントは直鎖付加ポリマーセグメント間に内部架橋を形成するか、或いは直鎖ポリマーセグメント側から離れた箇所にダングリング分岐を形成する。この分岐コポリマーは種々の利点を有し、それらは本発明において有用であることがわかった。分岐コポリマーの場合、架橋によって分子量が増加するため、移動性は低下するが熱安定性は向上する。また、分岐コポリマーは相分離する可能性が低いと考えられるため、より均一な膜が形成され、熱安定性が向上するであろう。このような利点は潜在的なものではあるが、分岐ハイブリッドポリマーは本発明の一実施形態であることに注目すべきである。しかし、当業者であれば、ハイブリッドポリマーが分岐していることが本発明の要件ではないことは理解できるであろう。
【0056】
方法2:
ジアミンモノマー或いは酸二無水物モノマーの側鎖に付加重合性部分を導入することによって一般式4に示す活性化ポリイミドを調製する。本発明における好ましい活性化ポリイミドは、アリル基とその誘導体、ビニル基とその誘導体、スチレンとその誘導体、マレイミド或いは無水マレイン酸とその誘導体、及びノルボルネンとその誘導体を含む側鎖を有するジアミン或いは酸二無水物から調製される。本発明における最も好ましい活性化ポリイミドは表1に示す1種以上のジアミンを用いて調製される。本発明における好ましい新規な活性化ポリイミドは、側鎖に付加重合性部分を導入したモノマーを1〜100mol%、最も好ましくは1〜50mol%含有する。
【0057】
次いで、活性化ポリイミド4を付加性モノマー5と重合し、ハイブリッドポリマーを得る。本発明における付加性モノマーの好ましい付加重合性部分としては、それぞれメタクリレートとその誘導体、アクリレートとその誘導体、メタクリルアミドとその誘導体、アクリルアミドとその誘導体、アリル基とその誘導体、ビニル基とその誘導体、スチレンとその誘導体、マレイミド或いは無水マレイン酸とその誘導体、ノルボルネンとその誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明における付加性モノマーの最も好ましい付加重合性部分としては、メタクリレートとその誘導体及びアクリレートとその誘導体が挙げられる。
【0058】
【化2】

【0059】
式中、Mは4価の有機基であり、Mは5価の有機基であり、Qはフッ素、塩素、シアノ、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ或いはジアリルアミノで任意的に置換された2価の有機基であり、Qはフッ素、塩素、シアノ、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ或いはジアリルアミノで任意的に置換された3価の有機基であり、R、R及びRは各々、付加重合性部分を含む1価の有機基であって、R、R及びRは、メタクリレートとその誘導体、アクリレートとその誘導体、メタクリルアミドとその誘導体、アクリルアミドとその誘導体、アリル基とその誘導体、ビニル基とその誘導体、スチレンとその誘導体、マレイミド或いは無水マレイン酸とその誘導体、及びノルボルネンとその誘導体から成る群から独立して選択される少なくとも1種の有機基であり、Zは1価の有機基である。また、n1は0〜5000であり、n2は0〜5000であり、n3は0〜5000であって、n2+n3>0且つn1+n2+n3=3〜5000である。R、R、R、M、M、Q、Q及びZは各々独立して単一の化学構造、或いは異なる化学構造の集合体を示し得る。
【0060】
形成されたポリマー構造は分岐コポリマーであり、方法1で形成したポリマーと同様の利点を有する。
【0061】
方法3:
次の一般式で示すように、モノアミン或いは酸一無水物を末端とする官能基含有付加ポリマーを調製した後、ジアミンモノマー及び酸二無水物モノマーと重合してハイブリッドポリマーを合成する。本態様のハイブリッドポリマーの構造は当該技術分野ではABAトリブロックコポリマーとして知られており、「A」部分は付加ポリマー部分を示してポリマー鎖の末端部を形成し、「B」部分はポリイミド部分を示して各ポリマー鎖の中間部を形成する。アミン末端ポリメタクリレートを合成するための一方法が、ハドルトン(Haddleton)ら、Macromolecules、1999年、Vol.32、8732〜8739に開示されている。また、オリゴ/ポリマーモノアミン由来付加ポリマーを用いたポリイミド合成がヘドリック(Hedrick)ら、Polymer、1995年、Vol.36、No.25、4855〜4866に開示されている。これらの材料は、特にミクロ相分離(即ち、本発明のハイブリッドポリマーにとっては望ましくない特性)のために開発されたものである。ABAトリブロックハイブリッドポリマーを生成する他の方法は、官能基含有付加ポリマーを活性化ポリイミドと反応させることである。例えば、ジアミンを化学量論過剰の酸二無水物と結合させて、酸無水物で末端封止した活性化ポリイミドを生成する。このポリイミドを、モノアミンを末端とする官能基含有付加ポリマーと更に反応させることができる。同様に、アミンで末端封止した活性化ポリイミドを、酸無水物を末端とする官能基含有付加ポリマーと反応させることもできる。当業者であれば、ポリマーブロックのサイズ及び特性を制御することによって、本発明に有用な材料の開発が可能なことは理解できるであろう。このポリマー構造を得るための他の方法は、まず、ランダム重合ではなくリビングラジカル重合での使用に適した開始剤部分を有する末端官能化した活性化ポリイミドを調製することである。リビングラジカル重合理論に関する概説は、カミガイト(Kamigaito)ら、Chemical Reviews、2001年、101、3689〜3745に記載されている。次いで、ポリイミドの末端から離れてこの開始剤部分から付加ポリマーを成長させることができる。
【0062】
【化3】

【0063】
式中、Mは4価の有機基であり、Qはフッ素、塩素、シアノ、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ或いはジアリルアミノで任意的に置換された2価の有機基である。また、Wは3価の有機基であり、Xは2価の有機基であり、Yは付加ポリマーの繰り返し単位を示す2価の有機基であり、nは2〜5000である。M、W、X、Q及びYは各々独立して単一の化学構造、或いは異なる化学構造の集合体を示し得る。
【0064】
方法4:
1以上のアミン基或いは酸無水物基を有する官能基含有付加ポリマーを調製する。次の一般式に示すように、次いで、この官能基含有付加ポリマーをジアミンモノマー及び酸二無水物モノマーと重合してハイブリッドポリマーを合成する。
【0065】
【化4】

【0066】
式中、Mは4価の有機基であり、Qはフッ素、塩素、シアノ、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ或いはジアリルアミノで任意的に置換された2価の有機基である。また、Wは3価の有機基であり、Xは共有結合或いは2価の有機基である。Yは付加ポリマーの繰り返し単位を示す3価の有機基であり、Yは付加ポリマーの繰り返し単位を示す2価の有機基であり、nは2〜5000であり、pは1〜1000である。M、W、X、Q、Y及びYは各々独立して単一の化学構造、或いは異なる化学構造の集合体を示し得る。方法4の図は、酸二無水物モノマーとジアミンモノマーとを官能基含有付加ポリマーと併用して本発明のハイブリッドポリマーを形成することを示唆するが、これに限定されるものではない。例えば、ハイブリッドポリマーを形成し得る適切な比率及び反応条件であれば、ジアミンモノマー又は酸二無水物モノマーのいずれを用いても、ポリマー組成中の官能基含有付加ポリマーの官能基として適切となり得る。
【0067】
方法4の一実施形態において、両末端を官能化した付加ポリマーを用いた場合、得られたハイブリッドポリマーを「セグメント化ハイブリッドポリマー」(ABABABAB)と称する。ここで「A」ユニットは付加ポリマーユニットのセグメントを示し、「B」ユニットはポリイミドセグメントを示す。両末端を官能化したスチレン付加ポリマーの合成については、マチヤスゼフスキ(Matyjaszewski)ら、Macromol.Rapid Commun.1997年、Vol.18、1057〜1066に記載されている。本発明のハイブリッドポリマーの合成に有用となるであろう、アミン或いは酸無水物で両末端を官能化した付加ポリマーの合成については、ここでは特に記載しないが、当業者であれば、このような化学的転換に対し様々な方法が利用可能であることは理解できるであろう。米国特許第4,539,342号では、ジアミン及び酸二無水物或いはその相当物をアミン末端ブタジエン−ニトリルコポリマー(即ち、アミンで両末端を官能化した付加ポリマーの一例)と反応させて発泡ポリイミドを調製することが記載されている。当業者であれば、付加性モノマーを慎重に選択し、官能基含有付加ポリマーのサイズを制御することによって、米国特許第4,539,342号に記載されたアミン末端ブタジエン−ニトリルコポリマーについての特性(例えば、発泡ポリイミド形成)が回避可能であることは理解できるであろう。
【0068】
方法4の第2の実施形態においては、付加ポリマーの骨格に官能基含有付加性モノマー或いは官能基前駆体含有付加性モノマーをそれぞれランダムに導入することによって、官能基含有付加ポリマー或いは官能基前駆体含有付加ポリマーを調製する。官能基前駆体含有付加ポリマーを修飾して官能基含有付加ポリマーを得ることができる。官能基含有付加ポリマーをジアミン及び酸二無水物或いはその相当物と反応させてポリアミック酸ポリマーを得ることができ、このポリアミック酸ポリマーを化学的にイミド化して完全イミド化分岐ハイブリッドポリマーを得ることができる。しかし、ハイブリッドポリマーが部分的に或いは完全にイミド化されることは本発明に必要な要件ではない。また、所望により、イミド化を化学的に行う必要もない。他のイミド化方法(例えば、熱イミド化)は本発明のハイブリッドポリマーにおいて有用である。
【0069】
方法4の第3の実施形態においては、官能基含有付加ポリマーを活性化ポリイミドと反応させてハイブリッドポリマーを得ることができる。例えば、ジアミンを化学量論過剰の酸二無水物と結合して酸無水物で末端封止した活性化ポリイミドを生成する。この活性化ポリイミドをアミノ基を有する官能基含有付加ポリマーと更に反応させて本発明のハイブリッドポリマーを得ることができる。同様に、アミンで末端封止した活性化ポリイミドを、酸無水物基を有する官能基含有付加ポリマーと反応させることもできる。
【0070】
当業者であれば、官能基含有或いは官能基前駆体含有付加性モノマーに対する付加性モノマーの比率を調整し、反応条件を制御することによって、最終的な官能基含有付加ポリマーの官能部分の数と共に該付加ポリマーの分子量が制御可能であることは理解できるであろう。様々な付加性モノマーを用いて本発明における官能基含有付加ポリマーを調製することができる。
【0071】
本発明における好ましい官能基含有付加ポリマーは、メタクリレートとその誘導体、アクリレートとその誘導体、メタクリルアミドとその誘導体、アクリルアミドとその誘導体、オレフィンとその誘導体、ビニル化合物とその誘導体、スチレンとその誘導体、マレイミドとその誘導体、ノルボルネンとその誘導体、或いはこれらの混合物から調製される。本発明における好ましい官能基含有付加ポリマーは分子量が500〜150000の範囲である。本発明における最も好ましい官能基含有付加ポリマーは分子量が1000〜90000の範囲である。本発明における好ましい官能基含有付加ポリマーは、官能基含有或いは官能基前駆体含有付加性モノマーを0.1%〜20%用いて調製する。本発明における最も好ましい官能基含有付加ポリマーは、官能基含有或いは官能基前駆体含有付加性モノマーを1%〜10%用いて調製する。
【0072】
方法1及び方法2で調製される本発明のハイブリッドポリマーは、活性化ポリイミドに対して付加重合を行うことによって調製され、方法4によって調製されるハイブリッドポリマーは、官能基含有付加ポリマーをジアミン、酸二無水物或いは活性化ポリイミドで縮合することによって調製される。プロセスを入念に設計することにより、最終ハイブリッドポリマーの用途に応じて、いずれか一方の重合ステップの障害とはなるが両方の重合ステップの障害とはならない部分を導入することもできる。本発明のハイブリッドポリマーの形成に用いる方法は、合成に用いる出発モノマー及びポリマーの特定要件やハイブリッドポリマーの所望の最終特性に基づいて選択することができる。
【0073】
方法5:
ジアミン或いは酸二無水物を末端とする官能基含有付加ポリマーを調製する。このような材料の調製は、適切に官能化した開始剤を用いることによって、或いは、コエッセンス(Coessens)ら、Progress in Polymer Science、2001年、Vol.26、337〜377に概説された一般手順による末端基停止反応を用いることによって行うことができる。次いで、官能基含有付加ポリマー上のジアミン或いは酸二無水物をジアミンモノマー及び酸二無水物モノマーと重合させ、本発明のハイブリッドポリマーを合成する。本態様のハイブリッドポリマーを「櫛型ハイブリッドポリマー」と称するが、この場合、「櫛」の骨格はポリイミドであり、櫛の「歯」は付加ポリマーセグメントである。
【0074】
【化5】

【0075】
式中、Mは4価の有機基であり、Mは5価の有機基であり、Qはフッ素、塩素、シアノ、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ或いはジアリルアミノで任意的に置換された2価の有機基であり、Qはフッ素、塩素、シアノ、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ或いはジアリルアミノで任意的に置換された3価の有機基である。また、Yは付加ポリマーの繰り返し単位を示す2価の有機基であり、nは2〜5000である。M、M、Q1、Q及びYは各々独立して単一の化学構造、或いは異なる化学構造の集合体を示し得る。方法5の図は、酸二無水物モノマーとジアミンモノマーとを官能基含有付加ポリマーと併用して本発明のハイブリッドポリマーを形成することを示唆するが、これに限定されるものではない。例えば、ハイブリッドポリマーを形成し得る適切な比率及び反応条件であれば、ジアミンモノマー又は酸二無水物モノマーのいずれを用いても、ポリマー組成中の官能基含有付加ポリマーの官能基として適切となり得る。
【0076】
櫛型ハイブリッドポリマーを生成する他の方法は、官能基含有付加ポリマーを活性化ポリイミドと反応させることである。例えば、ジアミンを化学量論過剰の酸二無水物と結合して、酸無水物で末端封止した活性化ポリイミドを生成する。このポリイミドを、ジアミンを末端とする官能基含有付加ポリマーと更に反応させることができる。同様に、アミンで末端封止した活性化ポリイミドを、酸二無水物を末端とする官能基含有付加ポリマーと反応させることもできる。
【0077】
方法5の櫛型ハイブリッドポリマーを調製する他の方法は、まず、次のリビングラジカル重合での使用に適した開始剤部分を含有するジアミン或いは酸二無水物を調製することである。次いで、このジアミン或いは酸二無水物を、所望の特性及び分子量のために選択したジアミンと酸二無水物の混合物を用いて、活性化ポリイミドに導入する。次いで、活性化ポリイミドの側鎖から離れて上述の開始剤部分から付加ポリマーを成長させることができる。この方法を用いた各種櫛型ポリマーの調製については、マチヤスゼフスキ(Matyjaszewski)ら、Chemical Reviews、2001年、Vol.101、2921〜2990に記載されている。ポリイミドを用いた櫛型ポリマーの調製(即ち、本発明の一実施形態)については、上述の文献におけるマチヤスゼフスキ(Matyjaszewski)らの論文、或いは他のいずれの論文にもその記載がない。
【0078】
光学配向層を調製するため、所望の基板をハイブリッドポリマー溶液でコーティングする。通常、試験目的の場合、基板にはインジウムスズ酸化物透明電極がパターン形成されている。通常、コーティングは固形分1〜30重量%の溶液で行う。基板のコーティングは、従来の方法、例えば、ブラッシングやスプレーイング、スピンキャスティング、メニスカスコーティング、ディッピング、プリンティングによって行うことができる。実施例で示した基板をコーティングするための好ましい技法はスピニング及びプリンティングである。しかし、本発明の光学配向材料はプリンティング或いはスピニングプロセスでの使用に限定されない。
【0079】
コートした基板は(「未硬化」或いは「未乾燥」)のままで用いてもよく、処理前に加熱してもよい。加熱を行う場合、オーブンを用い、基板を大気中或いは不活性雰囲気下(例えば、窒素或いはアルゴン)で、通常300℃を超えない温度(好ましくは180℃以下)で約0.25〜12時間(好ましくは約2時間以内)加熱する。この加熱プロセスによって溶媒を除去し、また、加熱プロセスをポリマーの更なる硬化に用いることができる。例えば、一成分がポリアミック酸ポリマーであるハイブリッドポリマーの場合、得られた膜を熱硬化してポリアミック酸部分をポリイミドへとイミド化することができる。
【0080】
ポリマー濃度や溶媒の選択は、光学配向性、プレチルト及び電圧保持率(VHR)に影響を及ぼし得る。これらの選択は膜厚や基板上での膜形成の仕方に影響を及ぼし、その結果、配向性、プレチルト及びVHRの差となり得る。
【0081】
光学配向層に偏光を照射して液晶の配向を誘起する。「偏光」とは、ある軸(短軸と称する)と直交する軸(長軸と称する)に沿ってより偏向するように楕円状及び/又は部分的に偏向した光を意味する。本発明において、偏光は約150〜2000nmの範囲(好ましくは約150〜1600nmの範囲、より好ましくは約150〜800nmの範囲)に一以上の波長を有する。最も好ましくは、偏光は約150〜400nmの範囲(特に約300〜400nmの範囲)に一以上の波長を有する。好ましい光源はレーザ(例えば、アルゴンやヘリウムネオン、ヘリウムカドミウム)である。他の好ましい光源としては、水銀アーク重水素及び石英タングステンハロゲンランプや、キセノンランプ、マイクロ波励起ランプ、偏光器と組み合わせたブラックライトが挙げられる。非偏光光源から偏光を得るのに有用な偏光器としては、誘電スタックから成る干渉偏光器や、吸収偏光器、回折格子、ブルースター反射に基づく反射偏光器が挙げられる。低出力レーザを用いたり小さい配向領域を配向させる場合、光線を光学配向層に集めることが必要となることがある。
【0082】
「照射する」とは、偏光を光学配向層の全体或いはその一部に適用することを意味する。光線は固定させても回転させてもよい。照射は1ステップモード、バーストモード、スキャンモード或いは他の方法で行うことができる。照射時間は用いる材料等に応じて大きく変わり、1ミリ秒未満から1時間を越える範囲をとり得る。照射は光学配向層を液晶媒体へ接触させる前に行ってもよく、接触後に行ってもよい。照射は、あるパターンを有する少なくとも1個のマスクを透過した偏光、或いはあるパターンでスキャンした偏光光線を利用して行うことができる。照射はパターンを形成する可干渉光線の干渉を利用して行ってもよい。
【0083】
照射は2以上のステップで行うこともでき、その際、各ステップでの条件(例えば、入射角や偏向状態、エネルギー密度、波長)を変える。少なくとも1ステップ以上で偏光による照射を行う必要がある。照射は、基板サイズより遥かに小さい領域から基板全体のサイズと同等の範囲まで局在化させることもできる。
【0084】
必要照射エネルギーは、照射前或いは照射時の光学配向層の組成(formulation)や処理に応じて変わる。好ましい照射エネルギー範囲は約0.001〜100J/cmであり、最も好ましい照射エネルギー範囲は約0.001〜5J/cmである。照射エネルギーを低くすることは、光学配向層及び液晶ディスプレイ素子の製造規模を大きくする上で非常に有用である。また、照射エネルギーを低くすれば、基板上の他の材料への損傷の危険性が最小限になる。
【0085】
照射した基板から組立てた液晶セルの配向性及び電気的特性は、照射時及び/又は照射後、セルの組立て及び/又はセルの充填前に基板を加熱することによって向上させることができる。この追加的な基板の加熱は上述のプロセスの要件ではないが、この加熱を行えば良好な結果を得ることができる。
【0086】
光学配向層への液晶媒体の適用は、毛管を用いた液晶媒体のセルへの充填や、光学配向層への液晶媒体のキャスティング、予め形成した液晶膜を光学配向層へ積層すること、或いは他の方法によって行うことができる。好ましい方法は、毛管を用いたセルの充填、注入による充填、及び液晶媒体の光学配向層へのキャスティングである。光学配向層への偏光の照射は、光学配向層を液晶媒体に接触させる前、或いは接触させた後に行う。
【0087】
光化学現象(photochemistry that occurs)の種類及び液晶の分子構造によって、液晶媒体の配向方向が決定する。液晶媒体の配向は、コートした基板を照射する際の光学配向層面内の主たる偏光に関連して記載されることが多い。コートした基板面内の主たる偏光に対して液晶分子が主に平行、或いは垂直に配向している場合のそれぞれについて、液晶媒体が「平行に配向している」或いは「垂直に配向している」という。他の配向の種類は、液晶分子が配向層に対して主に垂直に配向しているホメオトロピック配向である。多くのハイブリッドポリマーにおいて幾つかの光化学的機構が起こり得るが、主要な機構は膜形成及び照射条件(例えば、照射前の温度及び膜が曝露される雰囲気や、照射を行う際の温度及び雰囲気、照射エネルギー密度)によって決まり得る。主要な光化学的機構や液晶分子構造に応じて、ハイブリッドポリマーは平行、垂直或いはホメオトロピック配向を示し得る。
【0088】
コートされた2枚の基板を用いて液晶媒体層を挟むことによってセルを調製することができる。一対の基板両方に光学配向層が含まれていてもよく、従来の配向層(例えば、機械研磨層)を、上述のハイブリッドポリマー或いはそれとは異なるポリマーを含有する第2の配向層として用いてもよい。
【0089】
液晶光学素子に用いる液晶物質としては、ネマティック液晶物質、強誘電性液晶物質、垂直配向液晶(負誘電性液晶)等が挙げられる。本明細書に記載の本発明において有用な液晶としては、4−シアノ−4’−アルキルビフェニルや4−シアノ−4’−アルキルオキシビフェニル、4−アルキル−(4’−シアノフェニル)シクロヘキサン、4−アルキル−(4’シアノビフェニル)シクロヘキサン、4−シアノフェニル−4’−アルキルベンゾエート、4−シアノフェニル−4’アルキルオキシベンゾエート、4−アルキルオキシフェニル−4’−シアノベンゾエート、4−アルキルフェニル−4’アルキルベンゾエート、1−(4’−アルキルフェニル)−4−シアノピリミジン、1−(4’−アルキルオキシフェニル)−4−シアノピリミジン、1−(4−シアノフェニル)−4−アルキルピリミジン等の正誘電性液晶が挙げられる。他の有用な液晶としては、EM Industries(ニューヨーク州ホーソン)より入手可能な新しい超フッ化液晶、例えば、次の市販材料:ZLI−5079、ZLI−5080、ZLI−5081、ZLI−5092、ZLI−4792、ZLI−1828、MLC− 2016、MLC−2019、MLC−6252及びMLC−6043が挙げられる。本発明を実施するための他の有用なネマティック材料としては、大日本インキ化学工業株式会社(東京)より入手可能な市販液晶、例えば、次のDLCシリーズ:22111、22112、22121、22122、23070、23170、23080、23180、42111、42112、42122、43001、43002、43003、63001、63002、63003、63004及び63005が挙げられる。
【0090】
本発明においては重合性液晶モノマーも有用である。好ましいものは米国特許第5,846,452号に開示されているが、該特許の開示内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。本発明は上述の液晶の用途に限定されない。当業者であれば、本発明が多種多様の液晶構造や液晶混合物を含む組成物に対する価値を理解できるであろう。
【0091】
照射された光学配向層は、入射偏光光線の長軸に対してある角度で、且つ光学配向層表面に沿って液晶媒体の配向を誘起する。当業者であれば、偏光照射条件を制御することによって、光学配向層の面内外のあらゆる所望の方向に液晶媒体の配向を上述のプロセスで制御可能なことは理解できるであろう。
【0092】
本発明の液晶ディスプレイ素子は、本発明のハイブリッドポリマー光学配向層を少なくとも1層有する電極基板と、電圧印加手段と、液晶材料とから成る。図1は典型的な液晶ディスプレイ素子を示すが、この素子は基板1上にITO(インジウムスズ酸化物)或いは酸化スズの透明電極2を有し、電極上には光学配向層3が形成されている。異方性吸収分子の吸収バンド内の波長を有する偏光を光学配向層に照射する。シール樹脂4を兼ねるスペーサを一対の光学配向層3の間に設ける。毛管を用いて液晶5をセルに充填し、セルを密封して液晶ディスプレイ素子を形成する。基板1は、絶縁膜やカラーフィルタ、カラーフィルタ保護膜、積層偏光膜等の保護膜を有してもよい。このようなコーティングや膜は全て基板1の一部と考える。更に、薄膜トランジスタや非線形抵抗素子等の能動素子を基板1上に形成することもできる。これらの電極やアンダーコート、保護膜等は従来の液晶ディスプレイ素子用構成要素であり、本発明のディスプレイ素子に用いることができる。こうして形成した電極基板を用いて、液晶ディスプレイセルを調製し、液晶物質をセルの空間内に充填し、電圧印加手段と組み合わせて液晶ディスプレイ素子を調製する。
【0093】
本発明の光学配向層は全ての液晶ディスプレイモードに対応できる。本発明の液晶ディスプレイ素子は、様々なディスプレイ構造、例えば、ねじれネマティック型、超ねじれネマティック型、面内スイッチング型、垂直配向型、アクティブマトリックス型、コレステリック型、ポリマー分散型、強誘電型、反強誘電型及びマルチドメイン型液晶ディスプレイから構成することができる。本明細書で示したディスプレイモードは主にねじれネマティック型と強誘電型であるが、本発明の光学配向層はねじれネマティック液晶や強誘電性ディスプレイへの用途に限定されない。
【0094】
本発明の光学配向層は液晶ディスプレイ以外の多くの液晶デバイスにおいても有用である。液晶デバイスの例として、電気光学光変調器や全光学的光変調器、消去可能リード/ライト光学データ記憶媒体;格子やビームスプリッタ、レンズ(例えば、フレスネルレンズ)、受動画像システム、フーリエプロセッサ、光学ディスク、放射コリメータ等の回折光学部品;眼鏡やカメラ、暗視ゴーグル、ロボットビジョン、3次元画像表示デバイス等の屈折レンズと回折レンズを組み合わせて形成したバイナリー光学デバイス;及びヘッドアップディスプレイや光学スキャナ等のホログラフィックデバイスが挙げられる。
【0095】
電圧保持率(VHR)は液晶ディスプレイの重要な電気的パラメータである。VHRは、ピクセルアップデート間の時間(フレーム時間)におけるLCDの電圧保持能力の一指標である。液晶の種類、配向層及びセル形状は全てVHR測定値に影響を及ぼし得る。以下の実施例では、パターン形成したインジウムスズ酸化物(ITO)透明電極を有するソーダ石灰基板を含む液晶試験セルについて記載する。試験セルを組み立てた後、電極の重なり部分は約1cmであった。試験セルを組み立てた後、液晶充填を行う前に、超音波はんだごてを用いて約2〜3インチのリード線をパターン形成したITO電極に取り付けた。セルを充填しアニールした後、試験クリップを用いてこのリード線をVHR測定システム(Elsicon VHR−100 電圧保持率測定システム、デラウェア州ニューアーク)に取り付けた。各実施例において、VHRは20ミリ秒のフレーム時間、1ボルトの印加信号で、室温及び75℃にて測定した。
【実施例】
【0096】
以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0097】
実施例1
本実施例では、本発明のハイブリッドポリマーの調製に用いる新規な付加性モノマー1の合成について記載する。
【0098】
3−[4−(6−ヒドロキシ−ヘキシルオキシ)−フェニル]−アクリル酸メチルエステル
【0099】
【化6】

【0100】
4−ヒドロキシ桂皮酸メチル(40g、225mmol)をNMP300mLに溶解した。6−クロロヘキサノール(269mmol、36.8g)、無水炭酸カリウム(37.2g、269mmol)及び触媒量のヨウ化カリウムを添加した。得られたバッチを90℃で32時間攪拌した。冷却した溶液に水を添加した後、酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。得られた混合有機物を10%KOH(2×100mL)及びブライン溶液で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。次いで、得られた濃縮物を酢酸エチル/へキサンの1:1混合物から再結晶化し、オフホワイトの固形物を45g得た(収率72%)。
【0101】
2−メチル−アクリル酸6−[4−(2−メトキシカルボニル−ビニル)−フェノキシ]−ヘキシルエステル(付加性モノマー1)
【0102】
【化7】

【0103】
3−[4−(6−ヒドロキシ−ヘキシルオキシ)−フェニル]−アクリル酸メチルエステル(20g、72mmol)と、トリエチルアミン(11.7g、116mmol)と、BHT(4結晶)とのジクロロメタン(150mL)氷冷溶液に塩化メタクリロイル(11.3g、108mmol)のジクロロメタン(5mL)溶液を滴下した。得られた混合物を2時間反応させ、その際にジクロロメタンを減圧下で除去した。この混合物を水(100mL)と酢酸エチル(100mL)とに分配し、次いで、得られた水層を更に酢酸エチル(2×100mL)で抽出した。得られた混合有機層を1MHCl、水、5%炭酸水素ナトリウム及びブライン(各100mL)で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。エタノールからの再結晶化によって白色固形物を18g得た(収率72%)。HNMR(CDCl):7.65(d、1H、J=16Hz)、7.47(dd、2H、J=2.1、6.4Hz)、6.89(dd、2H、J=1.9、6.6Hz)、6.30(d、1H、J=15.7Hz)、6.1(m、1H)、5.56(m、1H)、4.17(m、2H)、4.00(m、2H)、3.80(s、3H)、1.95(m、3H)、1.8〜1.4(m、8H)
【0104】
実施例2
本実施例では、本発明のハイブリッドポリマーの調製に用いる新規な付加性モノマー2の合成について記載する。
【0105】
3−(4−ヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸ヘキサデシルエステル
【0106】
【化8】

【0107】
4−ヒドロキシ桂皮酸(10g、61mmol)を1−ヘキサデカノール(14.0g、58mmol)、p−トルエンスルホン酸(1.2g、6.3mmol)及びトルエン100mLと混合し、140℃で24時間加熱しながら、ディーン−スターク蒸留装置を用いて水分を連続的に除去した。得られた混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル50mLを添加した。得られた溶液を水、5%炭酸水素ナトリウム及びブラインで洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。生成物を酢酸エチルから再結晶化し、3−(4−ヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸ヘキサデシルエステルを4.8g得た。
【0108】
3−[4−(6−ヒドロキシ−ヘキシルオキシ)−フェニル]−アクリル酸ヘキサデシルエステル
【0109】
【化9】

【0110】
3−(4−ヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸ヘキサデシルエステル(4.8g、12.4mmol)をNMP100mLに溶解した。この溶液に、6−クロロヘキサノール(2.19g、16mmol)、無水炭酸カリウム(1.7g、12mmol)及び触媒量のヨウ化カリウムを添加した。得られた反応混合物を90℃で18時間攪拌した。冷却した溶液に水を添加した後、酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。得られた有機混合物を水(2×100mL)、水/ブライン(100mL、50:50)及びブライン溶液で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル(25%)ヘキサン溶液で溶離)によって精製し、白色固形物を2.6g得た。
【0111】
2−メチル−アクリル酸6−[4−(2−ヘキサデシルオキシカルボニル−ビニル)−フェノキシ]−ヘキシルエステル(付加性モノマー2)
【0112】
【化10】

【0113】
3−[4−(6−ヒドロキシ−ヘキシルオキシ)−フェニル]−アクリル酸ヘキサデシルエステル(2.6g、5.3mmol)と、トリエチルアミン(0.99mL、7.4mmol)と、BHT(4結晶)とのテトラヒドロフラン(30mL)氷冷溶液に塩化メタクリロイル(0.68g、6.9mmol)を滴下した。得られた反応混合物を7.5時間反応させ、室温まで戻した。水酸化カリウム溶液(5重量%、50mL)を添加し、得られた溶液を酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。得られた混合有機層を1MHCl、水及びブライン(各100mL)で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。得られた未精製物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル(10%)ヘキサン溶液で溶離)によって精製した後、ヘキサンから再結晶化し、白色固形物を0.37g得た(HPLCによる純度:95%)。HNMR(CDCl):7.65(d、1H、J=16Hz)、7.49(d、2H、J=8.7Hz)、6.90(d、2H、J=8.8Hz)、6.33(d、1H、J=15.8Hz)、6.12(m、1H)、5.57(m、1H)、4.19(m、4H)、4.00(m、2H)、1.96(m、3H)、1.8〜1.4(m、8H)、1.28(s、32H)、0.90(vt、3H)
【0114】
実施例3
本実施例では、本発明のハイブリッドポリマーの調製に用いる新規な付加性モノマー3の合成について記載する。
【0115】
4−(6−ヒドロキシ−ヘキシルオキシ)−ベンズアルデヒド
【0116】
【化11】

【0117】
4−ヒドロキシベンズアルデヒド(15g、122mmol)をNMP150mLに溶解した。6−クロロヘキサノール(20.16g、146mmol)、無水炭酸カリウム(20.36g、146mmol)及び触媒量のヨウ化カリウムを添加した。得られたバッチを90℃で24時間攪拌した。冷却した溶液に水を添加した後、酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。得られた混合有機物を5%KOH(2×100mL)及びブライン溶液で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。次いで、得られた濃縮物を酢酸エチル/へキサンの1:1混合物から再結晶化し、オフホワイトの固形物を14g得た。
【0118】
3−[4−(6−ヒドロキシ−ヘキシルオキシ)−フェニル]−1−(4−ヨード−フェニル)プロペノン
【0119】
【化12】

【0120】
4−ヨードアセトフェノン(2.46g、10mmol)をトルエン20mLに溶解した。4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)ベンズアルデヒド(10mmol、2.22g)、水酸化カリウム(15mmol、0.84g(水4mLに溶解))及びAliquat336(0.2g)を添加し、得られた混合物を1時間激しく攪拌した。得られた沈殿物をろ過し、水及びトルエンで洗浄し、真空下で乾燥して、生成物を1.9g得た。
【0121】
3−[4−(6−ヒドロキシ−ヘキシルオキシ)−フェニル]−1−(4−トリデカフルオロヘキシル−フェニル)−プロペノン
【0122】
【化13】

【0123】
3−[4−(6−ヒドロキシ−ヘキシルオキシ)−フェニル]−1−(4−ヨード−フェニル)−プロペノン(1.9g、4.22mmol)の無水DMSO(10mL)溶液に、銅粉末(0.67g、10.55mmol)、ヨウ化ペルフルオロへキシル(2.35g、5.28mmol)及び触媒量のヨウ素を添加した。得られた反応混合物を105℃で24時間加熱し、冷却し、水100mL及び酢酸エチル50mLと混合した後、ろ過して不溶性銅塩を除去した。ろ液中の有機層と水層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出した。得られた混合有機物を水及びブラインで洗浄した後、MgSOで乾燥し、濃縮した。酢酸エチル(25%)ヘキサン溶液からの再結晶化によって生成物を1.6g得た。
【0124】
2−メチル−アクリル酸6−{4−[3−オキソ−3−(4−トリデカフルオロヘキシル−フェニル)−プロペニル]−フェノキシ}−ヘキシルエステル(付加性モノマー3)
【0125】
【化14】

【0126】
3−[4−(6−ヒドロキシ−ヘキシルオキシ)−フェニル]−1−(4−トリデカフルオロヘキシル−フェニル)−プロペノン(2.3g、3.58mmol)と、トリエチルアミン(0.58g、5.73mmol)と、BHT(4結晶)とのジクロロメタン(20mL)氷冷溶液に塩化メタクリロイル(0.56g、5.73mmol)のジクロロメタン(5mL)溶液を滴下した。得られた混合物を1時間反応させ、その際に減圧下でジクロロメタンを除去した。この混合物を水(50mL)と酢酸エチル(50mL)とに分配し、次いで、得られた水層を更に酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。得られた混合有機層を1MHCl、水、5%炭酸水素ナトリウム及びブライン(各50mL)で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。酢酸エチルからの再結晶化によって生成物を1.2g得た。HNMR(CDCl):8.12(d、2H、J=10.5Hz)、7.82(d、1H、J=15.8Hz)、7.74(d、2H、J=8.4Hz)、7.61(d、2H、J=8.9Hz)、7.38(d、1H、J=15.5Hz)、6.94(d、2H、J=8.9Hz)、6.10(s、1H)、5.55(m、1H)、4.17(m、2H)、4.02(m、2H)、1.95(m、3H)、1.4〜1.9(m、8H)
【0127】
実施例4
本実施例では、本発明のハイブリッドポリマーの調製に用いる新規な付加性モノマー4の合成について記載する。
【0128】
1−[4−(6−ヒドロキシ−ヘキシルオキシ)−フェニル]−3−フェニル−プロペノン
【0129】
【化15】

【0130】
4’−ヒドロキシカルコン(15g、67mmol)をNMP150mLに溶解した。6−クロロヘキサノール(13.72g、100mmol)、無水炭酸カリウム(9.24g、67mmol)及び触媒量のヨウ化カリウムを添加した。得られたバッチを90℃で27時間攪拌した。冷却した溶液に水を添加した後、酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。得られた混合有機物を5%NaOH(2×100mL)、水及びブライン溶液で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた酢酸エチル溶液を一部濃縮した後、冷却して生成物を結晶化し、白色固形物を17.5g得た。
【0131】
2−メチル−アクリル酸6−[4−(3−フェニル−アクリロイル)−フェノキシ]−ヘキシルエステル(付加性モノマー4)
【0132】
【化16】

【0133】
1−[4−(6−ヒドロキシ−ヘキシルオキシ)−フェニル]−3−フェニル−プロペノン(9.75g、30mmol)と、トリエチルアミン(4.6g、45mmol)と、BHT(4結晶)とのジクロロメタン(20mL)氷冷溶液に塩化メタクリロイル(4.75g、45mmol)のジクロロメタン(5mL)溶液を滴下した。得られた反応混合物を2時間反応させ、その際に減圧下でジクロロメタンを除去した。この混合物を水(100mL)と酢酸エチル(100mL)とに分配し、次いで、得られた水層を更に酢酸エチル(2×100mL)で抽出した。得られた混合有機層を1MHCl(2×50mL)、5%炭酸水素ナトリウム(2×50mL)、水(50mL)及びブライン(50mL)で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。酢酸エチル(40%)ヘキサン溶液からの再結晶化によって白色固形物を3.45g得た。HNMR(CDCl):8.04(d、2H、J=8.0Hz)、7.82(d、1H、J=15Hz)、7.65(m、2H)、7.56(d、1H、J=16.5Hz)、7.42(m、3H)、6.97(d、2H、J=8.1Hz)、6.11(m、1H)、5.56(m、1H)、4.18(m、2H)、4.06(m、2H)、1.95(s、3H)、1.8〜1.4(m、8H)
【0134】
実施例5
本実施例では、本発明のハイブリッドポリマーの調製に用いる付加性モノマー5の調製について記載する。
【0135】
2−メチル−アクリル酸2−[4−(2−メトキシカルボニル−ビニル)−フェノキシ]−エチルエステル(付加性モノマー5)
【0136】
【化17】

【0137】
4−ヒドロキシ桂皮酸メチル(5.0g、28mmol)と、トリフェニルホスフィン(7.73g、30mmol)と、アゾジカルボン酸ジエチル(5.13g、30mmol)との無水テトラヒドロフラン(50mL)氷冷溶液に2−ヒドロキシメタクリレート(4.02g、31mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液をゆっくりと添加した。得られた反応混合物を室温、窒素下で18時間攪拌した。水(100mL)を添加し、得られた溶液を酢酸エチル(3×100mL)に抽出した。得られた混合酢酸エチル抽出物を5%KOH(3×50mL)、水(100mL)及びブライン(100mL)で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した後、得られた未精製物をまずシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル(20%)ヘキサン溶液で溶離)を用い、次いで酢酸エチル(20%)ヘキサン溶液(50mL)から再結晶化することによって精製し、白色結晶を4.4g得た(HPLCによる純度:>99%)。HNMR(CDCl):7.66(d、1H、J=16Hz)、7.48(d、2H、J=8.7Hz)、6.92(d、2H、J=8.8Hz)、6.32(d、1H、J=16Hz)、6.14(m、1H)、5.60(m、1H)、4.51(m、2H)、4.25(m、2H)、3.80(s、3H)、1.95(m、3H)
【0138】
実施例6
本実施例では、ハイブリッドポリマーの調製に有用な新規な付加性モノマー6の合成について記載する。
【0139】
4−ヘプタデカフルオロオクチル−フェノール
【0140】
【化18】

【0141】
酢酸4−ヨード−フェニルエステル(9g、0.0366mol)の無水DMSO(75mL)溶液に銅粉末(5.8g、0.091mol)、ヨウ化ペルフルオロオクチル(25g、0.046mol)及びヨウ素(130mg)を添加した。得られた反応混合物を105℃で18時間加熱し、冷却し、水100mL及びエーテル50mLと混合した後、ろ過して不溶性銅塩を除去した。ろ液中の有機層と水層を分離し、水層をエーテル(2×100mL)で抽出した。得られた混合有機物を水及びブラインで洗浄した後、MgSOで乾燥し、濃縮した。得られた未精製物のメタノール(50mL)溶液に10NHCl(1.5mL)を添加した。得られた混合物をスチームバスで1時間還流させ、得られた酢酸エステルを完全に上述のフェノールへと加水分解した。室温まで冷却した後、反応混合物を、水100mLを含む分液漏斗へ注ぎ、エーテル(3×75mL)で抽出した。得られた混合有機物を水及びブラインで洗浄し、MgSOで乾燥した。未精製濃縮物を再結晶化し、前記フェノールをワックス状固形物(mp:63〜68℃)として12.5g得た(HPLCによる純度:99%)。
【0142】
2−メチル−アクリル酸6−[4−(2−カルボキシ−ビニル)−フェノキシ]−ヘキシルエステル
【0143】
【化19】

【0144】
3−[4−(6−ヒドロキシ−ヘキシルオキシ)−フェニル]−アクリル酸(4.1g、15.5mmol、実施例1参照)と、トリエチルアミン(4.08g、40mmol)と、BHT(少量の結晶)とのジクロロメタン(40mL)氷冷溶液に塩化メタクリロイル(4.05g、39mmol)のジクロロメタン(5mL)溶液を滴下した。得られた反応混合物を2時間反応させ、その際に減圧下でジクロロメタンを除去した。得られた混合物を1MHCl(100mL)と酢酸エチル(75mL)とに分配し、次いで、得られた水層を更に酢酸エチル(2×75mL)で抽出した。得られた混合有機層を5%炭酸水素ナトリウム及びブライン(各100mL)で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮し、白色固形物を5g得た。得られた酸無水物(3.2g)をアセトン(40mL)に溶解し、10%水酸化ナトリウム(10mL)で処理することによって上述の酸へと加水分解した。得られた酸性化溶液をろ過し、得られた固形物を真空下で一晩乾燥し、白色固形物を1.7g得た。
【0145】
2−メチル−アクリル酸6−{4−[2−(4−トリデカフルオロヘキシル−フェノキシカルボニル)−ビニル]−フェノキシ}−ヘキシルエステル(付加性モノマー6)
【0146】
【化20】

【0147】
2−メチル−アクリル酸6−[4−(2−カルボキシ−ビニル)−フェノキシ]−ヘキシルエステル(1.0g、3mmol)、4−ヘプタデカフルオロオクチル−フェノール(1.36g、3.3mmol)及びジメチルアミノピリジン(0.29g、2.4mmol)をジクロロメタン10mLに溶解し、氷浴中で冷却した。この溶液にジシクロヘキシルカルボジイミド(0.68g、3.3mmol)を添加した。得られた溶液を4時間反応させ、その際に減圧下でジクロロメタンを除去した。得られた混合物を酢酸エチル(50mL)に溶解し、ろ過した。酢酸エチルろ液を1MHCl(2×20mL)、水(2×20mL)、5%NaOH(2×20mL)及びブラインで洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。酢酸エチル(15%)ヘキサン溶液からの再結晶化によって生成物を1.25g得た。HNMR(CDCl):7.85(d、1H、J=15.8Hz)、7.65(d、2H、J=8.5Hz)、7.55(d、2H、J=8.9Hz)、7.35(d、2H、J=8.7Hz)、6.94(d、2H、J=8.9Hz)、6.50(d、1H、J=16.1Hz)、6.1(m、1H)、5.56(m、1H)、4.17(m、2H)、4.00(m、2H)、1.95(m、3H)、1.9〜1.4(m、8H)
【0148】
実施例7
本実施例では、官能基含有付加ポリマーの調製に用いる新規な官能基前駆体含有付加性モノマー1の合成について記載する。
【0149】
(4−ビニル−フェニル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(官能基前駆体含有付加性モノマー1)
【0150】
【化21】

【0151】
4−ビニルアニリン(4g、33.6mmol)と、トリエチルアミン(3.72g、36.8mmol)と、BHT(5結晶)との無水テトラヒドロフラン(40mL)氷冷溶液に固状のジ−tert−ブチルジカーボネート(8.0g、36.7mmol)を添加した。得られた反応混合物を室温で17.5時間攪拌し、その際に1MHCl(100mL)を添加した。得られた溶液を酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。得られた混合有機層を水、5%炭酸水素ナトリウム、水及びブライン(各100mL)で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。得られた生成物を酢酸エチル(10%)ヘキサン溶液を用いて再結晶化し、加熱しながらろ過して不溶性副生成物を除去し、白色固形物を3.0g得た(HPLCによる純度:>99%)。HNMR(CDCl):7.34(s、5H)、6.67(dd、1H、J=10.7、17.5Hz)、6.54(bs、1H)、5.67(dd、1H、J=1.0、17.6Hz)、5.18(dd、1H、J=1.0、10.8Hz)、1.53(s、9H)
【0152】
実施例8
本実施例では、ハイブリッドポリマーの合成に有用な新規な多価アミン官能基含有付加ポリマー1の2工程合成について記載する。
【0153】
官能基前駆体含有付加ポリマー1
付加性モノマー1(3.602g)、付加性モノマー3(200.2mg)及び官能基前駆体含有付加性モノマー1(200.3mg)の混合物を、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)258mgを含むジメチルホルムアミド(DMF)129.3gに溶解した。得られた溶液の脱気を凍結−吸引−解凍連続サイクル(3サイクル)によって行い、真空下で密封した後、60℃で16時間攪拌した。溶媒を減圧下(1mmHg/30℃)で除去して濃度を10重量%とし、得られた残留物をメタノール150mL中に沈殿させた。沈殿物をDMFに再溶解して濃度を20重量%とした後、更にメタノール150mLに2回再沈殿させた。溶媒を真空下、室温にて一晩で除去し、固形物(分子量:7700)を3.00g得た。記載した分子量は全て、MiniMixDカラム(Polymer Labs社、マサチューセッツ州アムハースト)を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(移動相DMF/HPO/LiBr/THF(99/0.3/0.3/0.6)、70℃で溶離)によって、分子量分布の狭いポリエチレンオキシド標準品に対して求めたものである。
【0154】
官能基含有付加ポリマー1
官能基前駆体含有付加ポリマー1(2.96g)をジクロロメタン15mLに溶解した。トリフルオロ酢酸(21.5mL)のジクロロメタン(125mL)溶液を添加し、得られた反応混合物を窒素雰囲気下、室温で2.5時間攪拌した。得られた反応混合物を氷浴中で冷却し、メタノール(1.5L)を添加した。トリエチルアミン(75mL)を1.25時間かけて滴下した。溶媒をデカンテーションで除去し、得られたポリマーを真空下、室温で一晩乾燥した。このポリマーをDMFに再溶解して濃度を15重量%とし、トリエチルアミン(1%)のメタノール(500mL)溶液中に再沈殿させた。溶媒をデカンテーションで除去し、得られたポリマーを真空下で3時間乾燥し、DMFに再溶解して濃度を15重量%とした後、メタノール500mL中で3回目の沈殿を行った。溶媒をデカンテーションで除去し、得られたポリマーを真空下で30分間乾燥した後、ジオキサンから凍結乾燥し、官能基含有付加ポリマー1(分子量:9700)を0.84g得た。アミン滴定により0.28mmolアミン/gポリマーであることが示された。
【0155】
実施例9
本実施例では、本発明のハイブリッドポリマーの調製に用いる新規な官能基含有付加ポリマー2の合成について記載する。
【0156】
官能基前駆体含有付加ポリマー2
付加性モノマー1(3.70g)、付加性モノマー3(198.8mg)及び官能基前駆体含有付加性モノマー1(100.5mg)の混合物を、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)76mgを含むジメチルホルムアミド(DMF)76.0gに溶解した。得られた溶液の脱気を凍結−吸引−解凍連続サイクル(3サイクル)によって行い、真空下で密封した後、60℃で16時間攪拌した。溶媒を減圧下(1mmHg/30℃)で除去して濃度を10重量%とし、得られた残留物をメタノール150mL中に沈殿させた。沈殿物をDMFに再溶解した後、メタノール中で2回再沈殿させた。溶媒を真空下、室温にて一晩で除去し、固形物(分子量:45000)を3.19g得た。
【0157】
官能基含有付加ポリマー2
官能基前駆体含有付加ポリマー2(3.19g)をジクロロメタン16.6mLに溶解した。トリフルオロ酢酸(23.3mL)のジクロロメタン(150mL)溶液を添加し、得られた反応混合物を窒素雰囲気下、室温で2.5時間攪拌した。メタノール(1.5L)を添加した後、トリエチルアミン(83mL)を1時間かけて滴下した。溶媒をデカンテーションで除去し、得られたポリマーを真空下、室温で一晩乾燥した。このポリマーをDMFに溶解して濃度を15重量%とし、トリエチルアミン(1%)のメタノール(500mL)溶液中で沈殿させた。溶媒をデカンテーションで除去し、得られたポリマーを真空下で乾燥し、DMFに再溶解して濃度を15重量%とした後、メタノール500mL中で3回目の沈殿を行った。溶媒をデカンテーションで除去し、得られたポリマーを真空下、室温で一晩乾燥した後、ジオキサンから凍結乾燥し、官能基含有付加ポリマー2(分子量:54000)を2.24g得た。アミン滴定により0.14mmolアミン/gポリマーであることが示された。
【0158】
実施例10
本実施例では、本発明のハイブリッドポリマーの調製に用いる新規な官能基含有付加ポリマー3の合成について記載する。
【0159】
官能基前駆体含有付加ポリマー3
付加性モノマー1(3.60g)、メタクリル酸オクタデシル(200mg)及び官能基前駆体含有付加性モノマー1(200mg)の混合物を、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)258mgを含むジメチルホルムアミド(DMF)129.5gに溶解した。得られた溶液の脱気を凍結−吸引−解凍連続サイクル(4サイクル)によって行い、真空下で密封した後、60℃で18時間攪拌した。溶媒を減圧下(1mmHg/30℃)で除去して濃度を10重量%とし、得られた残留物をメタノール150mL中に沈殿させた。沈殿物をDMFに再溶解して濃度を20重量%とした後、メタノール150mL中で2回再沈殿させた。溶媒を真空下、室温にて一晩で除去し、粉末(分子量:8800)を2.98g得た。
【0160】
官能基含有付加ポリマー3
官能基前駆体含有付加ポリマー3(2.95g)をジクロロメタン15mLに溶解した。トリフルオロ酢酸(21.5mL)のジクロロメタン(125mL)溶液を添加し、得られた反応混合物を窒素雰囲気下、室温で2.5時間攪拌した。メタノール(1.5L)を添加し、得られた反応混合物を外部氷浴中で冷却した。トリエチルアミン(75mL)を1.25時間かけて滴下した。溶媒をデカンテーションで除去し、得られたポリマーを真空下、室温で一晩乾燥した。このポリマーをDMFに溶解して濃度を20重量%とし、メタノール250mL中で沈殿させた後、再溶解して濃度を15重量%とし、メタノール250mL(トリエチルアミン5mL含有)中で沈殿させた。溶媒をデカンテーションで除去し、得られたポリマーを真空下で30分間乾燥し、DMFに再溶解した後、メタノール200mL中で再度沈殿させた。溶媒をデカンテーションで除去し、得られたポリマーを真空下、室温で30分間乾燥した後、ジオキサンから凍結乾燥し、官能基含有付加ポリマー3を0.79g得た。アミン滴定により0.27mmolアミン/gポリマーであることが示された。
【0161】
実施例11
本実施例では、本発明のハイブリッドポリマーの調製に用いる1−[4−ビニルフェノキシ]−2,4−ベンゼンジアミンの新規な合成について記載する。
【0162】
1−[4−ビニルフェノキシ]−2,4−ジニトロベンゼンの合成
【0163】
【化22】

【0164】
2,4−ジニトロフルオロベンゼン(6.38g、34mmol)、4−ビニルフェノール(4.32g、36mmol)、KCO(4.97g)及びBHT禁止剤(2〜3結晶)の混合物をNMP75mLに溶解し、窒素下、40℃で4時間攪拌した。得られた反応混合物を水150mLを含む分液漏斗へ注ぎ、酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。得られた混合有機物を10%KOH(100mL)及びブラインで洗浄し、無水MgSOで乾燥し、濃縮した。得られた残留物を酢酸エチル(70%)ヘキサン溶液から再結晶化し、生成物を9.5g得た。
【0165】
1−[4−ビニルフェノキシ]−2,4−ベンゼンジアミン
【0166】
【化23】

【0167】
1−[4−ビニルフェノキシ]−2,4−ジニトロベンゼン(9.0g、31mmol)をエタノール/テトラヒドロフラン(1:1)混合液100mLに溶解した。次いで、塩化スズ(II)(70.9、310mmol)及び10NHCl(37.7ml、377mmol)を添加した。得られた溶液を室温で16時間攪拌した。得られた反応混合物を氷冷水150mLを含む分液漏斗へ注いだ後、20%KOH(氷冷、629g)を添加した。得られた混合物をエーテル(3×100mL)で抽出した。得られた混合有機相を水(3×100mL)及びブラインで洗浄し、固状MgSOで乾燥し、濃縮した。カラムクロマトグラフィーによって生成物を4.5g得た。この生成物を酢酸エチル(40%)ヘキサン溶液から結晶化した。HNMR(CDCl):7.32(d、2H、J=8.5Hz)、6.88(d、2H、J=8.6Hz)、6.73(d、1H、J=8.3Hz)、6.66(dd、1H、J=17.3、11.9Hz)、6.15(d、1H、J=2.9Hz)、6.08(dd、1H、J=2.4、8.2Hz)、5.61(dd、1H、J=17.6Hz、0.8Hz)、5.14(d、1H、J=10.9Hz)、4.38、(br s、4H)
【0168】
実施例12
本実施例では、本発明のハイブリッドポリマーの調製に用いるN,N−ジプロピル−ベンゼン−1,2,4−トリアミンの合成について記載する。
【0169】
(2,4−ジニトロ−フェニル)−ジプロピル−アミン
【0170】
【化24】

【0171】
2,4−ジニトロフルオロベンゼン(9.3g、50mmol)とKCO(6.9g、50mmol)とのNMP(40mL)氷冷溶液にジプロピルアミン(6.07g、60mmol)のNMP(10mL)溶液を滴下した。1時間攪拌した後、得られた反応混合物を水100mLを含む分液漏斗に注ぎ、エーテル(3×100mL)で抽出した。得られた混合有機物を水(3×100mL)及びブライン(100mL)で洗浄し、無水MgSOで乾燥し、濃縮して、未精製物を13.1g得た。この未精製物の純度は次工程を続けて行うのに十分であった。
【0172】
1N,1N−ジプロピル−ベンゼン−1,2,4−トリアミン
【0173】
【化25】

【0174】
(2,4−ジニトロ−フェニル)−ジプロピル−アミン(13.1g、49mmol)をエタノール200mLに溶解し、氷浴中で冷却した。次いで、10NHCl(60ml、600mmol)及び塩化スズ(II)(112.5、499mmol)を添加した。得られた溶液を室温で16時間攪拌した。得られた反応混合物を氷冷水100mLを含む分液漏斗へ注いだ後、20%KOH(氷冷、1L)を添加した。得られた混合物をエーテル(3×150mL)で抽出した。得られた混合有機相を水(3×100mL)及びブラインで洗浄し、固状MgSOで乾燥し、濃縮した。蒸留(Krugel Rohr、90℃〜100℃、0.2mmHg)した後、脱色炭で処理し、酢酸エチル(15%)ヘキサン溶液から再結晶化して、生成物を8.0g得た(HPLCによる純度:>99%)。
【0175】
実施例13
本実施例では、本発明のハイブリッドポリマーの調製に用いる新規な活性化ポリイミド1の合成について記載する。
【0176】
活性化ポリイミド1
N,N−ジアリル−1,2,4−ベンゼントリアミン(5.284g、26mmol)を窒素雰囲気下で無水NMP41.28gに溶解した。固状1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(5.1048g、26mmol)を添加し、得られた溶液を21℃で18時間攪拌した結果、粘性を示した。NMP(77.46g)を添加した後、無水酢酸(7.96g)及びピリジン(3.38g)の混合物を添加した。得られた溶液を50℃で更に4時間攪拌した。得られたポリイミドをメタノール600mL中に沈殿させ、採取し、更にメタノールを加えて洗浄した。次いで、得られた固形物を真空下、室温で一晩乾燥し、更に60℃で6時間乾燥した。こうして約76%固形分を含む生成物を12.5g得た(分子量:133000)。
【0177】
実施例14
本実施例では、本発明のハイブリッドポリマーの調製に用いる新規な活性化ポリイミド2の合成について記載する。
【0178】
活性化ポリイミド2
1N,1N−ジプロピル−ベンゼン−1,2,4−トリアミン(946.7mg、4.57mmol)及び1−[4−ビニルフェノキシ]−2,4−ベンゼンジアミン(54.4mg、0.24mmol)を窒素雰囲気下で無水NMP7.76gに溶解した。固状1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(943.4mg、4.81mmol)を添加し、得られた溶液を21℃で18時間攪拌した結果、粘性を示した。NMP(14.6g)を添加した後、無水酢酸(1.47g)及びピリジン(0.63g)の混合物を添加した。得られた溶液を50℃で更に4時間攪拌した。得られたポリイミドをメタノール400mLに添加して沈殿させた。得られた固形物に更にメタノールを加えて洗浄した。溶媒の除去を真空下(0.2mmHg)、室温で一晩、引き続き60℃で3時間行った。収量は1.98g(分子量:82000)。
【0179】
実施例15
本実施例では、方法2に従って合成し、重合性アリル基をジアミン上に配置することにより活性化ポリイミドを官能化した本発明の新規なハイブリッドポリマーにおける良好な配向性及びプレチルトについて示す。C18アルキル基を含む付加性モノマーを用いることによって、本実施例の新規なハイブリッドポリマーでプレチルトが示される。
【0180】
ハイブリッドポリマー1
活性化ポリイミド1(3.10g、固形分として2.35g)、付加性モノマー1(8.13g)及びメタクリル酸オクタデシル(0.28g)の混合物を、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)364mgを含むジメチルホルムアミド(DMF)364gに溶解した。得られた溶液の脱気を凍結−吸引−解凍連続サイクル(4サイクル)によって行い、真空下で密封した後、60℃で15.5時間攪拌した。溶媒を減圧下(1mmHg/30℃)で除去して濃度を19重量%とし、得られた残留物をトルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液600mL中に沈殿させた。沈殿物をDMFに再溶解して濃度を12重量%とした後、トルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液600mL中に再沈殿させた。得られた固形物を採取し、真空下、室温で一晩、更に80℃で2時間乾燥し、固形物を3.6g得た(分子量:245000)。
【0181】
スピンコーティング用溶液は、γ−ブチロラクトン(BL)を用いて濃度2%で調製した。次の一般的手順を用いて、以下の実施例に記載の材料用試験セルを形成した。この手順に対して例外がある場合には、各実施例で述べることとする。
【0182】
透明インジウムスズ酸化物(ITO)でコーティングした2枚のソーダ石灰ガラス基板(0.9インチ×1.2インチ、厚さ1mm)(DCI社、Lenexa、KS66219)をハイブリッドポリマー(2重量%)BL溶液でスピンコートした。ポリマーの濡れ性を高めるため、スピンコーティングの直前に基板を85℃〜95℃で3分間加熱した。スピンコーティングは、該ハイブリッドポリマー溶液を0.45ミクロンのテフロンフィルター膜でろ過し、基板表面上に塗布することによって行った。基板を2500RPMで1分間回転させ、均一な薄膜を形成した。
【0183】
次いで、OptoAlignTMモデルE3−UV−600−Aランプ照射ユニット(Elsicon社、デラウェア州ニューアーク)内のモデルOM−SEMT光学モジュール(Elsicon社、デラウェア州ニューアーク)を用いて、基板に紫外(UV)偏光を照射した。
【0184】
照射後、光学的に生成した配向方向に直交させて基板を組み合わせた。この場合、配向方向は平行であると推定された。セルの厚みは約4ミクロンであった。次いで、アクティブマトリックス型液晶ディスプレイに適したネマティック液晶を毛管を用いてセルに充填した。予想通り、偏光器の間から見てねじれネマティック(TN)方向に液晶が配向しているのが分かった。液晶等方点を超える温度で液晶セルをアニール(120℃、30分間)した際、配向の均一性が改善されるのが分かった。
【0185】
以下の実施例の新規なハイブリッドポリマーを用いて形成したアニール済TNセルについて、プレチルトはPAS−301測定システム(Elsicon社、デラウェア州ニューアーク)を用いて測定し、VHRはVHR−100測定システム(Elsicon社、デラウェア州ニューアーク)を用いて測定した。実施例全てにおいて、配向性の評価は次の基準によって行った。
●優れた配向性、流動性無し、高い均一性
○良好な配向性、低い流動性、均一
△かなりの配向性、流動性有り、若干不均一(背景がまだら或いは不明瞭)
×低い配向性、高い流動性、不均一
+改善レベル:△<△+<△++<○
【0186】
0.5J/cmで照射した基板から得たセルにおいて、配向性は△++、プレチルトは−7°、75℃でのVHRは0.83であった。
【0187】
実施例16
本実施例では、方法2に従って合成した本発明の新規なハイブリッドポリマーにおける良好な配向性及びプレチルトについて示す。モノマー供給比を実施例15から変更すると、ハイブリッドポリマーのプレチルト値は増大する。
【0188】
ハイブリッドポリマー2
活性化ポリイミド1(4.47g、固形分として3.15g)、付加性モノマー1(6.97g)及びメタクリル酸オクタデシル(0.489g)の混合物を、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)267mgを含むジメチルホルムアミド(DMF)267gに溶解した。得られた溶液の脱気を凍結−吸引−解凍連続サイクル(3サイクル)によって行い、真空下で密封した後、60℃で15.5時間攪拌した。溶媒を減圧下(1mmHg/30℃)で除去して濃度を17重量%とし、得られた残留物をトルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液600mL中に沈殿させた。沈殿物をDMFに再溶解して濃度を11重量%とした後、トルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液600mL中に再沈殿させた。得られた固形物を採取し、真空下、室温で一晩乾燥し、固形物を5.54g得た(分子量:293000)。固形物の一部を真空下、80℃で2時間乾燥した後、スピンコーティング用溶液を調製した。0.75J/cmで照射した基板から得たセルにおいて、配向性は△++、プレチルトは−17°、75℃でのVHRは0.87であった。
【0189】
実施例17
本実施例では、方法2に従って合成し、重合性アリル基をジアミン上に配置することにより活性化ポリイミドを官能化した本発明の新規なハイブリッドポリマーにおける良好な配向性及びプレチルトについて示す。C16アルキル基及び光反応性桂皮酸エステルを含む付加性モノマーを用いることによって、本実施例の新規なハイブリッドポリマーでプレチルトが示される。
【0190】
ハイブリッドポリマー3
活性化ポリイミド1(200mg、固形分として168mg)、付加性モノマー1(570mg)及び付加性モノマー2(30mg)の混合物を、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)26mgを含むジメチルホルムアミド(DMF)26gに溶解した。得られた溶液の脱気を凍結−吸引−解凍連続サイクル(3サイクル)によって行い、真空下で密封した後、60℃で15.5時間攪拌した。溶媒を減圧下(1mmHg/30℃)で除去して濃度を25重量%とし、得られた残留物をトルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液50mL中に沈殿させた。沈殿物をDMFに再溶解して濃度を15重量%とした後、トルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液50mL中に再沈殿させた。得られた固形物を採取し、真空下、室温で一晩、更に80℃で0.45時間乾燥し、固形物を0.21g得た(分子量:144000)。0.5J/cmで照射した基板から得たセルにおいて、配向性は○、プレチルトは−9°、75℃でのVHRは0.86であった。
【0191】
実施例18
本実施例では、方法2に従って合成した本発明の新規なハイブリッドポリマーにおける良好な配向性及びプレチルトについて示す。本実施例では、良好な光配向性及びプレチルトに対する付加性モノマーを含むカルコンの有用性について示す。
【0192】
ハイブリッドポリマー4
活性化ポリイミド1(200mg、固形分として174mg)、付加性モノマー4(541mg)及び付加性モノマー3(60mg)の混合物を、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)26mgを含むジメチルホルムアミド(DMF)26gに溶解した。得られた溶液の脱気を凍結−吸引−解凍連続サイクル(3サイクル)によって行い、真空下で密封した後、60℃で15.5時間攪拌した。溶媒を減圧下(1mmHg/30℃)で除去して濃度を25重量%とし、得られた残留物をトルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液50mL中に沈殿させた。沈殿物をDMFに再溶解して濃度を15重量%とした後、トルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液50mL中に再沈殿させた。得られた固形物を採取し、真空下、室温で一晩、更に80℃で45分間乾燥し、固形物を0.23g得た(分子量:120000)。この材料のスピンコーティング用溶液は、2重量%BL溶液を20時間攪拌することによって調製した。0.2J/cmで照射した基板から得たセルにおいて、配向性は△、プレチルトは−2°、75℃でのVHRは0.78であった。
【0193】
実施例19
本実施例では、配向層として本発明の新規なハイブリッドポリマーを用いた強誘電性液晶(FLC)セルにおける配向性について示す。このポリマーは方法2に従って合成し、重合性アリル基をジアミン上に配置することにより活性化ポリイミドを官能化した。付加性モノマーの一種はプレチルトを誘起するフルオロアルキル基を含む。
【0194】
ハイブリッドポリマー5
活性化ポリイミド1(2.80g、固形分として2.44g)、付加性モノマー1(7.98g)及び付加性モノマー3(0.42g)の混合物を、AIBN364mgを含むDMF364gに溶解した。得られた溶液の脱気を凍結−吸引−解凍連続サイクル(4サイクル)によって行い、真空下で密封した後、60℃で15.5時間攪拌した。溶媒を減圧下(1mmHg/30℃)で除去して濃度を20重量%とし、得られた残留物をトルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液600mL中に沈殿させた。沈殿物をDMFに再溶解して濃度を20重量%とした後、トルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液600mL中に再沈殿させた。得られた固形物を採取し、真空下、室温で1.5時間、更に80℃で2時間乾燥し、固形物を3.72g得た(分子量:153000)。
【0195】
2重量%BL溶液でスピンコートした配向層を用いてFLCセルを調製した。光学的に生成した配向方向と平行にセルを組み立て、セルの厚み(spacing)を1.7ミクロンとした以外は、実施例15と同様に基板及びセルを調製した。次いで、当業者に知られた技法を用いて、85℃において毛管を用いてセルを強誘電性液晶で満たし、室温までゆっくりと冷却した(特に液晶のスメティックA相を経由して強誘電C相まで)。1.0J/cmで照射した基板から配向性が△++の領域を有するセルを得た。
【0196】
実施例20
本実施例では、配向層として本発明の新規なハイブリッドポリマーを用いた強誘電性液晶(FLC)セルにおける配向性について示す。このポリマーは方法2に従って合成し、重合性アリル基をジアミン上に配置することにより活性化ポリイミドを官能化した。付加性モノマーの一種はプレチルトを誘起する長鎖アルキル基を含む。
【0197】
ハイブリッドポリマー6
活性化ポリイミド1(200mg、固形分として168mg)、付加性モノマー1(560mg)及びメタクリル酸オクタデシル(40mg)の混合物を、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)26mgを含むジメチルホルムアミド(DMF)26gに溶解した。得られた溶液の脱気を凍結−吸引−解凍連続サイクル(3サイクル)によって行い、真空下で密封した後、60℃で15.5時間攪拌した。溶媒を減圧下(1mmHg/30℃)で除去して濃度を25重量%とし、得られた残留物をトルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液50mL中に沈殿させた。沈殿物をDMFに再溶解して濃度を15重量%とした後、トルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液50mL中に再沈殿させた。得られた固形物を採取し、真空下、室温で一晩、更に80℃で0.45時間乾燥し、固形物を0.217g得た(分子量:133000)。実施例19と同様にFLCセルを調製した。1.0J/cmで照射した基板は配向性が△++の領域を示した。
【0198】
実施例21
本実施例では、付加性モノマー5と、メタクリレート基とシンナメート基との間に炭素2個からなる鎖を有するモノマーを含む桂皮酸エステルとを用い、方法2に従って調製した本発明の新規なハイブリッドポリマーの良好な配向性について示す。
【0199】
ハイブリッドポリマー7
活性化ポリイミド1(200mg、固形分として168mg)、付加性モノマー5(570mg)及び付加性モノマー3(30mg)の混合物を、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)26mgを含むジメチルホルムアミド(DMF)26gに溶解した。得られた溶液の脱気を凍結−吸引−解凍連続サイクル(3サイクル)によって行い、真空下で密封した後、60℃で15.5時間攪拌した。溶媒を減圧下(1mmHg/30℃)で除去して濃度を25重量%とし、得られた残留物をトルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液50mL中に沈殿させた。沈殿物をDMFに再溶解して濃度を15重量%とした後、トルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液50mL中に再沈殿させた。得られた固形物を採取し、真空下、室温で一晩、更に80℃で45分間乾燥し、固形物を0.32g得た(分子量:158000)。0.5J/cmで照射した基板から得たセルにおいて、配向性は△++、75℃でのVHRは0.58であった。
【0200】
実施例22
本実施例では、方法2に従って調製し、良好な配向性及びプレチルトを示す本発明の新規なハイブリッドポリマーについて示す。本実施例では、C12アルキル鎖を含む付加性モノマーを用いてプレチルトを誘起し、あるアルキル鎖長範囲が本発明のハイブリッドポリマーに有用であることを示す。
【0201】
ハイブリッドポリマー8
活性化ポリイミド1(310.2mg、固形分として218mg)、付加性モノマー1(728.1mg)及びメタクリル酸ラウリル(52mg)の混合物を、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)34mgを含むジメチルホルムアミド(DMF)33.8gに溶解した。得られた溶液の脱気を凍結−吸引−解凍連続サイクル(3サイクル)によって行い、真空下で密封した後、60℃で15.5時間攪拌した。溶媒を減圧下(1mmHg/30℃)で除去して濃度を20重量%とし、得られた残留物をトルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液65mL中に沈殿させた。沈殿物をDMFに再溶解して濃度を12重量%とした後、トルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液65mL中に再沈殿させた。得られた固形物を採取し、真空下、室温で一晩、更に80℃で0.45時間乾燥し、固形物を0.29g得た(分子量:211000)。0.2J/cmで照射した基板から得たセルにおいて、配向性は○、プレチルトは−14.8°、75℃でのVHRは0.73であった。
【0202】
実施例23
本実施例では、方法2に従って調製し、良好な配向性及びプレチルトを示す本発明の新規なハイブリッドポリマーについて示す。本実施例では、過フッ化鎖を含む付加性モノマーを用いてプレチルトを誘起する。
【0203】
ハイブリッドポリマー9
活性化ポリイミド1(200mg、固形分として174mg)、付加性モノマー1(570mg)及びメタクリル酸1H,1H−ペンタデカフルオロオクチル(30mg)の混合物を、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)26mgを含むジメチルホルムアミド(DMF)26gに溶解した。得られた溶液の脱気を凍結−吸引−解凍連続サイクル(3サイクル)によって行い、真空下で密封した後、60℃で15.5時間攪拌した。溶媒を減圧下(1mmHg/30℃)で除去して濃度を25重量%とし、得られた残留物をトルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液50mL中に沈殿させた。沈殿物をDMFに再溶解して濃度を15重量%とした後、トルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液50mL中に再沈殿させた。得られた固形物を採取し、真空下、室温で2時間、更に80℃で1時間乾燥し、固形物を0.23g得た(分子量:163000)。0.2J/cmで照射した基板から得たセルにおいて、配向性は△+、プレチルトは−18.1°、75℃でのVHRは0.83であった。
【0204】
実施例24
本実施例では、方法2に従って調製し、良好な配向性及びプレチルトを示す本発明の新規なハイブリッドポリマーについて示す。本実施例では、過フッ化鎖及び桂皮酸エステルを含む付加性モノマーを用いてプレチルトを誘起する。
【0205】
ハイブリッドポリマー10
活性化ポリイミド1(199mg、固形分として174mg)、付加性モノマー1(571mg)及び付加性モノマー6(30mg)の混合物を、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)26mgを含むジメチルホルムアミド(DMF)26gに溶解した。得られた溶液の脱気を凍結−吸引−解凍連続サイクル(3サイクル)によって行い、真空下で密封した後、60℃で15.5時間攪拌した。溶媒を減圧下(1mmHg/30℃)で除去して濃度を25重量%とし、得られた残留物をトルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液50mL中に沈殿させた。沈殿物をDMFに再溶解して濃度を15重量%とした後、トルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液50mL中に再沈殿させた。得られた固形物を採取し、真空下、室温で2時間、更に80℃で1時間乾燥し、固形物を0.21g得た(分子量:156000)。0.3J/cmで照射した基板から得たセルにおいて、配向性は△+、プレチルトは−16.3°、75℃でのVHRは0.92であった。
【0206】
実施例25
本実施例では、方法2に従って調製し、良好な配向性及びプレチルトを示す本発明の新規なハイブリッドポリマーについて示す。本実施例では、本発明のハイブリッドポリマーの調製においてジアミン類が有用になり得ることを示す。
【0207】
ハイブリッドポリマー11
活性化ポリイミド2(201mg)、付加性モノマー1(571mg)及び付加性モノマー3(30mg)の混合物を、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)26mgを含むジメチルホルムアミド(DMF)26.0gに溶解した。得られた溶液の脱気を凍結−吸引−解凍連続サイクル(3サイクル)によって行い、真空下で密封した後、60℃で15.5時間攪拌した。溶媒を減圧下(1mmHg/30℃)で除去して濃度を19重量%とし、得られた残留物をトルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液50mL中に沈殿させた。沈殿物をDMFに再溶解して濃度を15重量%とした後、トルエン/メタノール(3:2、v/v)混合液50mL中に再沈殿させた。得られた固形物を採取し、真空下、室温で一晩乾燥し、固形物を0.12g得た(分子量:445000)。0.1J/cmで照射した基板から得たセルにおいて、配向性は△++、プレチルトは−6.4°、75℃でのVHRは0.72であった。
【0208】
実施例26
本実施例では、方法4に従って合成した本発明の新規なハイブリッドポリマーにおける良好な配向性及びプレチルトについて示す。この方法によって、官能基含有付加ポリマーをジアミン及び酸二無水物と反応させ、次いで化学的にイミド化し、本実施例の新規なハイブリッドポリマーを得る。
【0209】
ハイブリッドポリマー12
官能基含有付加ポリマー1(10重量%NMP溶液、1.05g)及びN,N−ジアリル−1,2,4−ベンゼントリアミン(76.5mg、0.377mmol)を窒素雰囲気下で無水NMP1.33gに溶解した。固状1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(71.2mg、0.363mmol)を添加し、得られた溶液を21℃で18時間攪拌した。無水酢酸(0.11g)、ピリジン(47mg)及びNMP(0.64g)の混合物を添加し、得られた溶液を50℃で更に4時間攪拌した。得られたポリイミドをメタノール200mLに添加して沈殿させた。得られた固形物に更にメタノールを加えて洗浄した後、真空下(0.2mmHg)、室温で一晩乾燥し、固形物を210mg得た(分子量:44000)。0.2J/cmで照射した基板から得たセルにおいて、配向性は△+、プレチルトは−4.6°、75℃でのVHRは0.86であった。
【0210】
実施例27
本実施例では、方法4に従って合成した本発明の新規なハイブリッドポリマーにおける良好な配向性及びプレチルトについて示す。本実施例では、実施例26と共に、ある範囲の分子量を有する官能基含有付加ポリマーが本発明の新規なハイブリッドポリマーの調製に有用であることを示す。
【0211】
ハイブリッドポリマー13
官能基含有付加ポリマー2(10重量%NMP溶液、1.05g)及びN,N−ジアリル−1,2,4−ベンゼントリアミン(74.4mg、0.366mmol)を窒素雰囲気下で無水NMP1.31gに溶解した。固状1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(70.5mg、0.359mmol)を添加し、得られた溶液を21℃で18時間攪拌した。無水酢酸(0.11g)、ピリジン(47mg)及びNMP(0.63g)の混合物を添加し、得られた溶液を50℃で更に4時間攪拌した。得られたポリイミドをメタノール200mLに添加して沈殿させた。得られた固形物に更にメタノールを加えて洗浄した後、真空下(0.2mmHg)、室温で一晩乾燥し、固形物を230mg得た(分子量:219000)。0.2J/cmで照射した基板から得たセルにおいて、配向性は○、プレチルトは−11°、75℃でのVHRは0.74であった。
【0212】
実施例28
本実施例では、方法4に従って合成した本発明の新規なハイブリッドポリマーにおける良好な配向性及びプレチルトについて示す。本実施例では、C18アルキル鎖を含む官能基含有付加ポリマーを用いて良好なプレチルトを示す。
【0213】
ハイブリッドポリマー14
官能基含有付加ポリマー3(10重量%NMP溶液、1.40g)及びN,N−ジアリル−1,2,4−ベンゼントリアミン(94.6mg、0.466mmol)を窒素雰囲気下で無水NMP1.71gに溶解した。固状1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(94.9mg、0.484mmol)を添加し、得られた溶液を21℃で18時間攪拌した。無水酢酸(0.15g)、ピリジン(63mg)及びNMP(0.82g)の混合物を添加し、得られた溶液を50℃で更に4時間攪拌した。得られたポリイミドをメタノール200mLに添加して沈殿させた。得られた固形物に更にメタノールを加えて洗浄した後、真空下(0.2mmHg)、室温で一晩乾燥し、固形物を307mg得た(分子量:260000)。0.5J/cmで照射した基板から得たセルにおいて、配向性は○、プレチルトは−17°、75℃でのVHRは0.82であった。
【0214】
実施例29
本実施例では、方法4に従って合成した本発明の新規なハイブリッドポリマーにおける良好な配向性及びプレチルトについて示す。本実施例では、フッ化鎖を含む官能基含有付加ポリマーを用いて良好なプレチルトを示す。本実施例では、アミン基を含む官能基含有付加ポリマーを活性化ポリイミドと反応させる。この活性化ポリイミドは、化学量論過剰の酸二無水物を用いて調製した酸無水物末端封止ポリアミック酸である。
【0215】
ハイブリッドポリマー15
N,N−ジアリル−1,2,4−ベンゼントリアミン(70.8mg、0.348mmol)を窒素雰囲気下で無水NMP0.60gに溶解した。固状1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(78.1mg、0.398mmol)を添加し、得られた溶液を21℃で3時間攪拌した(分子量:4400)。NMP(0.74g)及び官能基含有付加ポリマー1(10重量%NMP溶液、1.05g)を添加し、得られた溶液を更に19時間攪拌した。無水酢酸(0.11g)、ピリジン(0.047g)及びNMP(0.64g)の混合物を添加し、得られた溶液を50℃で更に4時間攪拌した。得られたハイブリッドポリマーをメタノール200mLに添加して沈殿させた。得られた固形物に更にメタノールを加えて洗浄した後、真空下(0.2mmHg)、室温で一晩乾燥し、固形物を198mg得た(分子量:43000)。0.2J/cmで照射した基板から得たセルにおいて、配向性は△++、プレチルトは2.2°、75℃でのVHRは0.79であった。
【符号の説明】
【0216】
1 基板
2 透明電極
3 光学配向層
4 シール樹脂
5 液晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)マクロモノマーと、少なくとも1個の付加重合性部分を側鎖として有するポリイミド、ポリアミック酸及びそのエステルから構成されるクラスに属するポリマーとから成る群から選択される少なくとも1成分と、
(b)付加性モノマーと官能基含有付加ポリマーとから成る群から選択される少なくとも1成分とから調製される分岐ハイブリッドポリマーであって、成分(a)と成分(b)は共有結合してコポリマーを形成しており、成分(a)の少なくとも1種は次の化合物
【化1】


【化2】

とから調製されている、分岐ハイブリッドポリマー。
【請求項2】
(a)マクロモノマーと、少なくとも1個の付加重合性部分を有するポリイミド、ポリアミック酸及びそのエステルから構成されるクラスに属するポリマーとから成る群から選択される少なくとも1成分と、
(b)次の化合物
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

及び
【化8】

から成る群から選択される少なくとも1成分とから調製される分岐ハイブリッドポリマーであって、成分(a)と成分(b)は共有結合してコポリマーを形成している、分岐ハイブリッドポリマー。
【請求項3】
成分(b)は次の化合物
【化9】

及び
【化10】

を含む、請求項1に記載の分岐ハイブリッドポリマー。
【請求項4】
成分(b)は次の化合物
【化11】

及び
【化12】

を含む、請求項1に記載の分岐ハイブリッドポリマー。
【請求項5】
成分(b)は次の化合物
【化13】

及び
【化14】

を含む、請求項1に記載の分岐ハイブリッドポリマー。
【請求項6】
成分(b)は次の化合物
【化15】

及び
【化16】

を含む、請求項1に記載の分岐ハイブリッドポリマー。
【請求項7】
成分(b)は次の化合物
【化17】

及び
【化18】

を含む、請求項1に記載の分岐ハイブリッドポリマー。
【請求項8】
成分(b)は次の化合物
【化19】

及び
【化20】

を含む、請求項1に記載の分岐ハイブリッドポリマー。
【請求項9】
成分(b)は次の化合物
【化21】

及び
【化22】

を含む、請求項1に記載の分岐ハイブリッドポリマー。
【請求項10】
(a)マクロモノマーと、少なくとも1個の付加重合性部分を側鎖として有するポリイミド、ポリアミック酸及びそのエステルから構成されるクラスに属するポリマーとから成る群から選択される少なくとも1成分と、
(b)付加性モノマーと官能基含有付加ポリマーとから成る群から選択される少なくとも1成分とから調製される分岐ハイブリッドポリマーであって、成分(a)と成分(b)は共有結合してコポリマーを形成しており、成分(a)の少なくとも1種は次の化合物
【化23】


【化24】

とから調製される、分岐ハイブリッドポリマー。
【請求項11】
成分(b)は次の化合物
【化25】

及び
【化26】

を含む、請求項10に記載の分岐ハイブリッドポリマー。
【請求項12】
(a)モノマーと、マクロモノマーと、ポリイミド、ポリアミック酸及びそのエステルから構成されるクラスに属するポリマーとから成る群から選択される少なくとも1成分と、
(b)官能基含有付加ポリマーである少なくとも1成分とから調製される分岐ハイブリッドポリマーであって、成分(a)と成分(b)は共有結合してコポリマーを形成している、分岐ハイブリッドポリマー。
【請求項13】
官能基含有付加ポリマーは官能部分を側鎖として有する、請求項12に記載の分岐ハイブリッドポリマー。
【請求項14】
官能部分を側鎖として有する官能基含有付加ポリマーは、メタクリレートとその誘導体、アクリレートとその誘導体、メタクリルアミドとその誘導体、アクリルアミドとその誘導体、オレフィンとその誘導体、ビニル化合物とその誘導体、スチレンとその誘導体、マレイミドとその誘導体、ノルボルネンとその誘導体、及びこれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1種から調製される、請求項13に記載の分岐ハイブリッドポリマー。
【請求項15】
側鎖としての少なくとも1個の官能部分はアミンである、請求項13に記載の分岐ハイブリッドポリマー。
【請求項16】
官能基含有付加ポリマーは官能基前駆体含有付加ポリマーから調製され、官能基前駆体含有付加ポリマーは次の化合物
【化27】

【化28】

及び
【化29】

から調製される、請求項15に記載の分岐ハイブリッドポリマー。
【請求項17】
官能基含有付加ポリマーは官能基前駆体含有付加ポリマーから調製され、官能基前駆体含有付加ポリマーは次の化合物
【化30】

【化31】

及び
【化32】

から調製される、請求項15に記載の分岐ハイブリッドポリマー。
【請求項18】
成分(a)は次の化合物
【化33】

及び
【化34】

を含む、請求項12に記載の分岐ハイブリッドポリマー。
【請求項19】
成分(a)の少なくとも1種は次の化合物
【化35】


【化36】

とから調製される、請求項12に記載の分岐ハイブリッドポリマー。
【請求項20】
請求項1に記載の少なくとも1種の分岐ハイブリッドポリマーから調製される光学配向層。
【請求項21】
請求項20に記載の少なくとも1種の光学配向層を有する液晶ディスプレイ素子。
【請求項22】
請求項2に記載の少なくとも1種の分岐ハイブリッドポリマーから調製される光学配向層。
【請求項23】
請求項22に記載の少なくとも1種の光学配向層を有する液晶ディスプレイ素子。
【請求項24】
請求項10に記載の少なくとも1種の分岐ハイブリッドポリマーから調製される光学配向層。
【請求項25】
請求項24に記載の少なくとも1種の光学配向層を有する液晶ディスプレイ素子。
【請求項26】
請求項12に記載の少なくとも1種の分岐ハイブリッドポリマーから調製される光学配向層。
【請求項27】
請求項26に記載の少なくとも1種の光学配向層を有する液晶ディスプレイ素子。
【請求項28】
請求項13に記載の少なくとも1種の分岐ハイブリッドポリマーから調製される光学配向層。
【請求項29】
請求項28に記載の少なくとも1種の光学配向層を有する液晶ディスプレイ素子。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−18807(P2010−18807A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180035(P2009−180035)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【分割の表示】特願2004−509733(P2004−509733)の分割
【原出願日】平成15年4月2日(2003.4.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(500057593)エルシコン・インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】