説明

液晶配向膜形成用組成物、液晶配向膜及び液晶表示素子

【課題】本発明は、リタデーション値が大きい液晶配向膜の提供、及びこの液晶配向膜を備える高い表示品位を実現する液晶表示素子、並びに横電界方式の液晶表示素子、当該液晶配向膜を形成可能な液晶配向膜形成用組成物の提供を目的とする。
【解決手段】テトラカルボン酸二無水物と少なくとも下記式(1)で表されるジアミンを含むジアミン化合物との反応により得られるポリアミック酸、及びこのポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体を含有する液晶配向膜形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向膜形成用組成物、液晶配向膜及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、消費電力が小さく、小型化及びフラット化が容易である等の利点を有していることから、携帯電話等の小型の液晶表示装置から液晶テレビ等の大画面液晶表示装置まで幅広く用いられている。
【0003】
液晶表示装置の表示モードとしては、液晶分子の配向状態の変化に応じ、Twisted Nematic型(TN型)、Super Twisted Nematic型(STN型)、In−Plane Switching型(IPS型)、Vertical Alignment型等が知られている。いずれの表示モードにおいても、液晶分子の配向状態は、液晶配向膜で制御されていることから、液晶配向膜及びこの液晶配向膜の材料となる液晶配向膜形成用組成物の有する特性が、液晶表示素子の特性の発現に寄与する。
【0004】
これらの表示モードのうち、IPS型は、液晶を駆動するための2つの電極が片側の基板に櫛歯状に配置され、基板面に平行な電界を発生させて液晶分子を制御する横電界方式である。例えば特開平5−505247号公報には、この横電界方式の液晶表示素子が広視野角特性に優れることが開示されている。また、特開平9−80424号公報には、この横電界方式液晶表示素子に光学補償フィルムを適用し、広視野角特性をより向上させる技術が開示されている。
【0005】
近年、この横電界方式の液晶表示素子には、上記のような技術に加え、さらに高い表示品位が望まれている。高い表示品位を実現するためには、液晶の応答速度の高速化とコントラストの向上を必要とし、かかる特性を液晶表示素子に発現させるためには、液晶配向膜のリタデーション値が大きいことが要求される。
【0006】
しかしながら、かかる特性を十分に発現させるリタデーション値が大きい液晶配向膜は提供されておらず、高い表示品位を実現する液晶表示素子の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−505247号公報
【特許文献2】特開平9−80424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、リタデーション値が大きい液晶配向膜の提供及びこの液晶配向膜を備える高い表示品位を実現する液晶表示素子、並びに横電界方式の液晶表示素子、当該液晶配向膜を形成可能な液晶配向膜形成用組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、
テトラカルボン酸二無水物と少なくとも下記式(1)で表されるジアミンを含むジアミン化合物との反応により得られるポリアミック酸、及びこのポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド
からなる群より選択される少なくとも1種の重合体を含有する液晶配向膜形成用組成物である。
【化1】

(式(1)中、Xは置換されてもよい2価の芳香族基である。U及びUは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−である。)
【0010】
当該液晶配向膜形成用組成物が、上記のように特定構造の重合体を有することで、リタデーション値の大きい液晶配向膜を形成できる。リタデーションの値が大きくなることで液晶配向膜と液晶との相互作用が大きくなり、液晶配向膜が液晶を配向方位へ並べる力が強くなる。この力が強いことで、電場をかけて駆動している液晶を電場から開放した場合に、液晶を配向方位へ戻す力が強くなり、結果として液晶の応答速度が高速化される。
【0011】
上記テトラカルボン酸二無水物として、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、上記Xは、1,4−フェニレン基又はナフチレン基であることが好ましい。テトラカルボン酸二無水物として、かかる特定の化合物を含み、Xをかかる特定の基とすることで、所望の特性を有する液晶配向膜形成用組成物の成分となるポリアミック酸が得られる。
【0012】
当該液晶配向膜形成用組成物から形成される本発明の液晶配向膜は、リタデーション値が大きく、当該液晶配向膜を、例えば横電界方式の液晶表示素子に適用した場合、液晶の応答速度は高速化され、かつ、暗状態での黒レベルが上昇することによりコントラストが向上し、結果として、高い表示品位を実現できる。
【0013】
本発明の液晶表示素子は、表示モードが横電界方式であることが好ましい。上記特性を有する当該液晶配向膜を横電界方式の液晶表示素子に適用した場合に、その特性が最大限に発現される。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の液晶配向膜形成用組成物から形成される液晶配向膜は、リタデーション値が大きく、当該液晶配向膜を、特に横電界方式の液晶表示素子に適用した場合、液晶の応答速度は高速化され、かつ、暗状態での黒レベルが上昇することによりコントラストが向上し、結果として、高い表示品位を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳述する。
【0016】
(液晶配向膜形成用組成物)
本発明の液晶配向膜形成用組成物は、テトラカルボン酸二無水物と、少なくとも上記式(1)で表される化合物を含むジアミン化合物との反応により得られるポリアミック酸、及びこのポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体を含有し、さらに必要に応じて任意成分を含有してもよい。当該液晶配向膜形成用組成物が、上記のように特定構造の重合体を有することで、リタデーション値の大きい液晶配向膜を形成できる。以下、各成分について詳述する。
【0017】
(テトラカルボン酸二無水物)
ポリアミック酸の合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの他に、特願2009−157556号に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0018】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0019】
脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン等が挙げられる。
【0020】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物等が挙げられる。
【0021】
これらのテトラカルボン酸二無水物のうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、ピロメリット酸二無水物がより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物が特に好ましい。テトラカルボン酸二無水物が、上記の好ましい化合物を含むことで、所望の特性を有する液晶配向膜形成用組成物の材料となるポリアミック酸を得ることができる。
【0022】
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物と他のテトラカルボン酸二無水物を併用する場合、全てのテトラカルボン酸二無水物中の2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物の含有量としては、30mol%以上が好ましく、50mol%以上がより好ましい。
【0023】
(ジアミン化合物)
ポリアミック酸の合成に用いられるジアミン化合物としては、少なくとも上記式(1)で表されるジアミンを含み、必要に応じて、その他のジアミンを併用してもよい。
【0024】
上記式(1)において、Xは置換されてもよい2価の芳香族基である。2価の芳香族基としては、例えば1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、ビフェニル−4,4’−ジイル基、ナフチレン基、アントラセンジイル基等が挙げられる。U、Uはそれぞれ独立に、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−である。
【0025】
上記Xの置換基としては、例えばハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロアルキル基等が挙げられる。
【0026】
式(1)で表わされるジアミンとしては、下記の式で表わされる化合物が好ましい。
【0027】
【化2】

【0028】
(その他のジアミン)
上記式(1)で表されるジアミンと共にジアミン化合物に含まれてもよいその他のジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、ジアミノオルガノシロキサン、芳香族ジアミン等が挙げられる。これらの他に、特願2009−157556号に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0029】
脂肪族ジアミンとしては、例えば1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0030】
脂環式ジアミンとしては、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0031】
ジアミノオルガノシロキサンとしては、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0032】
芳香族ジアミンとしては、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノーN,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン及び下記式(2)で表されるジアミンが挙げられる。
【0033】
【化3】

【0034】
(式(2)中、Yは炭素数1〜3のアルカンジイル基、−O−、−COO−又は−OCO−である。aは0又は1である。bは0〜2の整数である。cは1〜20の整数である。)
【0035】
上記式(2)において、Yは炭素数1〜3のアルカンジイル基である。炭素数1〜3のアルキル基としては、例えばメタンジイル基、エタンジイル基、n−プロパンジイル基等が挙げられる。上記式(2)において、C2c+1基としては、例えば直鎖状又は分岐状の、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。上記式(2)において、ジアミノフェニル基としては、2,4−ジアミノフェニル基又は3,5−ジアミノフェニル基が好ましい。
【0036】
上記式(2)で表されるジアミンとしては、例えば下記式(2−1)〜(2−5)で表わされる化合物等が挙げられる。なお、上記式(2)において、a及びbは同時に0にならないことが好ましい。
【0037】
【化4】

【0038】
これらのその他のジアミンのうち、芳香族ジアミンが好ましく、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,5−ジアミノ安息香酸、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、[3−(4−アミノベンゾイル)オキシフェニル]4−アミノベンゾエートがより好ましく、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、[3−(4−アミノベンゾイル)オキシフェニル]4−アミノベンゾエートが特に好ましい。
【0039】
上記その他のジアミンを併用する場合、ジアミン化合物中の上記式(1)で表されるジアミンの含有量としては、0.1mol%以上が好ましく、1mol%〜50mol%がより好ましく、5mol%〜35mol%が特に好ましい。
【0040】
(ポリアミック酸の合成方法)
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物と上記式(1)で表されるジアミンを含むジアミン化合物とを反応させることにより得られる。
【0041】
テトラカルボン酸二無水物の含有量としては、ジアミン化合物のアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2当量〜2当量が好ましく、0.3当量〜1.2当量がより好ましい。
【0042】
合成反応は、有機溶媒中において行うことが好ましい。反応温度としては、−20℃〜150℃が好ましく、0℃〜100℃がより好ましい。反応時間としては、0.1時間〜24時間が好ましく、0.5時間〜12時間がより好ましい。
【0043】
上記有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール及びその誘導体、アルコール類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類等が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0044】
非プロトン性極性溶媒としては、例えばアミド類、ケトン類、エステル類、その他の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
【0045】
アミド類としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0046】
ケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0047】
エステル類としては、例えば乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート等が挙げられる。
【0048】
その他の非プロトン性極性溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド等が挙げられる。
【0049】
フェノール誘導体としては、例えばm−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール等が挙げられる。
【0050】
アルコール類としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0051】
エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコール−ジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−ジ−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−ジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジイソペンチルエーテル等が挙げられる。
【0052】
ハロゲン化炭化水素類としては、例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等が挙げられる。
【0053】
炭化水素類としては、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0054】
これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒が好ましく、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンがより好ましい。
【0055】
反応後に得られるポリアミック酸溶液は、そのまま液晶配向膜形成用組成物の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離した上で液晶配向膜形成用組成物の調製に供してもよく、単離したポリアミック酸を精製した上で液晶配向膜形成用組成物の調製に供してもよい。ポリアミック酸の単離方法としては、例えば反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで得られる析出物を減圧下乾燥する方法、反応溶液をエバポレーターで減圧留去する方法等が挙げられる。ポリアミック酸の精製方法としては、単離したポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解し、貧溶媒で析出させる方法、エバポレーターで有機溶媒等を減圧留去する工程を1回若しくは複数回行う方法が挙げられる。
【0056】
(ポリイミド)
ポリイミドは、上記ポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得られる。
【0057】
ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有しているアミック酸構造の全てを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存している部分イミド化物であってもよい。このとき、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。ポリイミド中のイミド化率は、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上が特に好ましい。なお、ポリイミド中のイミド化率は、ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解させ、テトラメチルシランを基準物質として室温でH−NMRを測定し、得られたH−NMRスペクトルから、下記式(3)で表わされる式により求めた。
【0058】
イミド化率(%)={1−(A/A)×α}×100 (3)
【0059】
式(3)中、AはNH基のプロトン由来のピーク面積(10ppm)である。Aはその他のプロトン由来のピーク面積である。αはポリアミック酸におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。
【0060】
(ポリイミドの合成方法)
ポリイミドの合成方法としては、例えば(i)ポリアミック酸を加熱する方法(以下、「方法(i)」と称することがある。)、(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し、必要に応じて加熱する方法(以下、「方法(ii)」と称することがある。)等のポリアミック酸の脱水閉環反応による方法が挙げられる。
【0061】
(方法(i))
方法(i)における反応温度としては、50℃〜200℃が好ましく、60℃〜170℃がより好ましい。反応温度が50℃未満では、脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるポリイミドの分子量が低下することがある。反応時間としては、1.0時間〜24時間が好ましく、1.0時間〜12時間がより好ましい。
【0062】
方法(i)において得られるポリイミドはそのまま液晶配向膜形成用組成物の調製に供してもよく、ポリイミドを単離した上で液晶配向膜形成用組成物の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製した上で又は得られるポリイミドを精製した上で液晶配向膜形成用組成物の調製に供してもよい。
【0063】
(方法(ii))
方法(ii)における脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物が挙げられる。
【0064】
脱水剤の含有量としては、所望のイミド化率により適宜選択されるが、ポリアミック酸のアミック酸構造1molに対して0.01mol〜20molが好ましい。
【0065】
方法(ii)における脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0066】
脱水閉環触媒の含有量としては、含有する脱水剤1molに対して0.01mol〜10molが好ましい。なお、イミド化率は上記脱水剤及び脱水閉環剤の含有量が多いほど高くできる。
【0067】
方法(ii)に用いられる有機溶媒としては、例えばポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒と同様の有機溶媒等が挙げられる。
【0068】
方法(ii)における反応温度としては、0℃〜180℃が好ましく、10℃〜150℃がより好ましい。反応時間としては、1.0時間〜120時間が好ましく、2.0時間〜30時間がより好ましい。反応条件を上記範囲とすることで、脱水閉環反応が十分に進行し、また、得られるポリイミドの分子量を適切なものとできる。
【0069】
方法(ii)においてはポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液をそのまま液晶配向膜形成用組成物の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向膜形成用組成物の調製に供してもよく、ポリイミドを単離した上で液晶配向膜形成用組成物の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製した上で液晶配向膜形成用組成物の調製に供してもよい。反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除く方法としては、例えば溶媒置換の方法等が挙げられる。ポリイミドの単離方法及び精製方法としては、例えばポリアミック酸の単離方法及び精製方法として例示したものと同様の方法等が挙げられる。
【0070】
当該液晶配向膜形成用組成物に含有されるポリアミック酸又はポリイミドは、末端修飾型のものであってもよい。末端修飾型の重合体を用いることにより、本発明の効果が損なわれることなく液晶配向膜形成用組成物の塗布特性等をさらに改善することができる。
【0071】
このような末端修飾型の重合体は、ポリアミック酸を合成する際に、分子量調節剤を重合反応系に添加することにより行うことができる。分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0072】
酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物等が挙げられる。
【0073】
モノアミン化合物としては、例えば、アニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミン等が挙げられる。
【0074】
モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が挙げられる。
【0075】
分子量調節剤の使用量としては、ポリアミック酸を合成する際に使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の合計100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0076】
粘度としては、濃度が10質量%のポリアミック酸溶液又はポリイミド溶液で測定した場合20mPa・s〜800mPa・sが好ましく、30mPa・s〜500mPa・sがより好ましい。粘度(mPa・s)は、所定の溶媒を用い、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
【0077】
(任意成分)
当該液晶配向膜形成用組成物は、所期の効果を損なわない範囲で、その他の重合体、エポキシ化合物、官能性シラン化合物等の任意成分を含有できる。
【0078】
(その他の重合体)
その他の重合体を含有することで、当該液晶配合剤の溶液特性、及び当該液晶配合剤により形成される液晶配向膜の電気特性が向上する。
【0079】
その他の重合体としては、上記ポリアミック酸及びポリイミド以外の重合体が挙げられ、例えば、テトラカルボン酸二無水物と上記式(1)で表されるジアミンを含まないジアミン化合物とを反応させて得られるポリアミック酸(以下、「その他のポリアミック酸」と称することがある。)、このポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド(以下、「その他のポリイミド酸」と称することがある。)、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリスチレン−フェニルマレイミド誘導体、ポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、他のポリアミック酸、他のポリイミド酸が好ましく、他のポリアミック酸がより好ましい。
【0080】
その他の重合体の含有量としては、全重合体に対して、50質量%以下が好ましく、0.1質量%〜40質量%がより好ましく、0.1質量%〜30質量%が特に好ましい。
【0081】
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物を含有することで、当該液晶配合剤により形成される液晶配向膜の剛直性及び電気特性が向上する。
【0082】
エポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0083】
エポキシ化合物の含有量は、全重合体100質量部に対して、40質量部以下が好ましく、0.1質量部〜30質量部がより好ましい。
【0084】
(官能性シラン化合物)
官能性シラン化合物は、得られる当該液晶配向膜と基板との接着性を向上する目的で含有される。
【0085】
官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0086】
官能性シラン含有化合物の含有量は、全重合体100質量部に対して、2質量部以下が好ましく、0.02質量部〜0.2質量部がより好ましい。
【0087】
(液晶配向膜形成用組成物の製造方法)
当該液晶配向膜形成用組成物は、テトラカルボン酸二無水物と、少なくとも下記式(1)で表されるジアミンを含むジアミン化合物との反応により得られるポリアミック酸、及びこのポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体、及び必要に応じて任意成分を、有機溶媒に混合することによって溶解又は分散させ調製する。
【0088】
当該液晶配向膜形成用組成物の製造に使用できる有機溶媒としては、非プロトン性極性溶媒、ケトン類、エステル類、エーテル類、ジエチレングリコールモノアルキルアセテート類等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0089】
非プロトン性極性溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム等が挙げられる。
【0090】
ケトン類としては、例えば4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、ジイソブチルケトン等が挙げられる。
【0091】
エステル類としては、例えば乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0092】
エーテル類としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジイソペンチルエーテル等が挙げられる。
【0093】
ジエチレングリコールモノアルキルアセテートとしては、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0094】
当該液晶配向膜形成用組成物における固形分濃度としては、粘性、揮発性、塗布方法等を考慮して適宜選択されるが1質量%〜10質量%が好ましい。固形分濃度を上記範囲とすることで、当該液晶配向膜形成用組成物から形成される液晶配向膜の膜厚が適切なものとされ、結果として、良好な液晶配向膜を得ることができ、また塗布作業性が向上する。なお、上述のように、好ましい固形分濃度の範囲は、液晶配向膜形成用組成物の塗布方法によって異なるが、例えばスピンナー法では1.5質量%〜4.5質量%が好ましく、印刷法では、3質量%〜9質量%が好ましく、これらの濃度範囲における粘度は12mPa・s〜50mPa・sの範囲とすることが好ましい。また、インクジェット法における固形分濃度は、1質量%〜5質量%が好ましく、この濃度範囲における粘度は3mPa・s〜15mPa・sの範囲とすることが好ましい。
【0095】
当該液晶配向膜形成用組成物を調製する際の温度としては10℃〜50℃が好ましく、20℃〜30℃がより好ましい。
【0096】
(液晶配向膜)
本発明の液晶配向膜は、当該液晶配向膜形成用組成物から形成され、リタデーション値が大きく、当該液晶配向膜を、例えば横電界方式の液晶表示素子に適用した場合、液晶の応答速度は高速化され、かつ、暗状態での黒レベルが上昇することによりコントラストが向上し、結果として、高い表示品位を実現できる。
【0097】
(液晶配向膜の製造方法)
当該液晶表示素子の製造方法としては、例えば塗膜形成工程(1)及びラビング処理工程(2)を有する製造方法が挙げられる。
【0098】
(塗膜形成工程(1))
塗膜形成工程(1)では、まず基板上に当該液晶配向膜形成用組成物を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。なお、使用基板、液晶配向膜形成用組成物の好ましい塗布方法及び液晶配向膜形成用組成物塗布後の加熱温度は、所望の表示モードによって適宜選択される。
【0099】
基板の材料としては、例えばフロートガラス、ソーダガラス等のガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)等のプラスチック等が挙げられる。
【0100】
基板は、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜が設けられている基板の導電膜形成面と、これに対向する導電膜が設けられていない基板とを一対として用い、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜が設けられている基板の導電膜形成面と、導電膜が設けられていない基板(対向基板)の片面とに、当該液晶配向膜形成用組成物を好ましくは印刷法、スピンナー法又はインクジェット法によってそれぞれ塗布し、次いで各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。
【0101】
透明導電膜としては、例えば、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社、登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜等が挙げられる。パターニングされた透明導電膜を得る方法としては、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後、フォト・エッチングによりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法等が挙げられる。
【0102】
液晶配向膜形成用組成物の塗布に際しては、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成する面に、前処理として官能性シラン化合物、官能性チタン化合物等を予め塗布することが好ましい。
【0103】
液晶配向膜形成用組成物を塗布した後の加熱温度としては、80℃〜300℃が好ましく、120℃〜250℃がより好ましい。加熱時間としては、1分〜60分が好ましく、10分〜30分がより好ましい。形成される塗膜の膜厚としては、10nm〜1,000nmが好ましく、50nm〜500nmがより好ましい。
【0104】
当該液晶配向膜形成用組成物は、上記のように塗布後に加熱をして有機溶媒を除去し塗膜を形成するが、当該液晶配向膜形成用組成物がポリイミドを含有する場合には、塗膜形成後にさらに加熱することによって脱水閉環反応を進行させ、よりイミド化された塗膜としてもよい。
【0105】
(ラビング処理工程(2))
ラビング処理工程(2)では、上記のようにして形成された塗膜面を、例えば、ナイロン、レーヨン、コットン等の繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理を行う。これにより上記塗膜は、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜が形成される。
【0106】
さらに、上記のようにして形成される液晶配向膜に対し、液晶配向膜の一部に紫外線を照射することによって液晶配向膜の一部の領域のプレチルト角を変化させる処理や、液晶配向膜表面の一部にレジスト膜を形成した上で先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、液晶配向膜が領域ごとに異なる液晶配向能を持つようにすることによって得られる液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。
【0107】
(液晶表示素子)
本発明の液晶表示素子は、上記のようにして形成される当該液晶配向膜を備える。当該液晶配向膜形成用組成物から形成される本発明の液晶配向膜は、リタデーション値が大きく、当該液晶配向膜を、例えば横電界方式の液晶表示素子に適用した場合、液晶の応答速度は高速化され、かつ暗状態での黒レベルが上昇することによりコントラストが向上し、結果として、高い表示品位を実現できる。
【0108】
本発明の液晶表示素子は、具体的には当該液晶配向膜が表面に形成された基板が2枚、基板の周辺部に設けられたシール剤を介して液晶配向膜側で対向して配置されており、これら2枚の基板間に液晶が充填されている。
【0109】
(横電界方式の液晶表示素子の製造方法)
当該液晶配向膜を横電界方式の液晶表示素子に適用した場合に、その特性が最大限に発現される。当該横電界方式の液晶表示素子の製造方法としては、例えば以下の工程が挙げられる。
【0110】
上記のようにして当該液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより、液晶セルを製造する。ここで、塗膜に対してラビング処理を行った場合には、2枚の基板は、各塗膜におけるラビング方向が互いに所定の角度、例えば直交又は逆平行となるように対向配置される。
【0111】
液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法等が挙げられる。第一の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの当該液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造できる。
【0112】
第二の方法はOne Drop Fill方式(ODF方式)と呼ばれる方法である。当該液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに当該液晶配向膜面上に液晶を滴下した後、当該液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造できる。
【0113】
いずれの方法による場合でも、上記のようにして製造した液晶セルにつき、さらに、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶注入時の流動配向を除去することが望ましい。そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、当該横電界方式の液晶表示素子を得ることができる。
【0114】
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0115】
液晶としては、例えばネマティック型液晶、スメクティック型液晶等が挙げられる。これらのうちネマティック型液晶が好ましく、例えば、シッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶等が挙げられる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネート等のコレステリック液晶;カイラル剤(メルク社、C−15、CB−15);p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメート等の強誘電性液晶等を、さらに添加してもよい。
【0116】
液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、例えばポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板等が挙げられる。
【実施例】
【0117】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0118】
(上記式(1)で表わされるジアミンの合成)
[合成例1]
下記反応スキームに従い、ビス(4−アミノフェニル)テレフタレートを合成した。
【0119】
【化5】

【0120】
窒素雰囲気下、3Lの三口フラスコに塩化メチレン1,200mLを入れ、テレフタロイルクロリド1mol(203.02g)、4−ニトロフェノール2.2mol(306.04g)を混合し、室温で攪拌しながらピリジン3mol(237.3g)をゆっくり滴下した。その後、反応溶液をリフラックスで3時間攪拌し反応させた。室温に戻した後に反応で得られた析出物を濾別し、析出物を3質量%の塩酸水溶液、3質量%の炭酸水素ナトリウム溶液、蒸留水の順で洗浄し、得られた固体を60℃で12時間真空乾燥して中間体1(334.82g)を得た。窒素雰囲気下、1Lの三口フラスコに中間体1を0.05mol(20.42g)、塩化すず(II)・二水和物0.5mol(112.83g)、γ−ブチロラクトン500mLを混合し、80℃で2時間攪拌し反応させた。反応溶液に、γ−ブチロラクトン4Lを加え、2mol/Lのフッ化カリウム水溶液で洗浄した。得られた有機溶剤相に酢酸エチル6Lを加え、蒸留水で洗浄した。有機溶剤相をロータリーエバポレーターで濃縮した。濃縮して得られた固体を2Lのナスフラスコに入れ、メタノールを400mL加えて攪拌した。吸引ろ過により固体を濾別して、得られた固体を60℃で12時間真空乾燥し目的のジアミン、ビス(4−アミノフェニル)テレフタレート(12.64g)を得た。
【0121】
[合成例2]
下記反応スキームに従い、ビス(4−アミノフェニル)−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを合成した。
【0122】
【化6】

【0123】
窒素雰囲気下で、300mLナスフラスコに2,6−ナフタレンジカルボン酸0.1mol(21.62g)、塩化チオニル80mL、N,N−ジメチルホルムアミド0.2mLを混合し、80℃で5時間攪拌し反応させた。反応溶液を室温に戻した後に水流アスピレーターで残存の塩化チオニルを除去した。塩化メチレンを1,200mL加え、蒸留水で洗浄した。有機溶剤相を硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾別し、有機溶剤相をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた濃縮液を、窒素雰囲気下で2Lの三口に移し、4−ニトロフェノールを0.22mol(30.6g)、塩化メチレン1,000mLを混合し、室温で攪拌しながらピリジン0.3mol(23.73g)をゆっくり滴下した。その後、反応溶液をリフラックスで6時間攪拌し反応させた。室温に戻した後に反応で得られた析出物を濾別し、析出物を3質量%の塩酸水溶液、3質量%の炭酸水素ナトリウム溶液、蒸留水で洗浄し、60℃で12時間真空乾燥を行った。得られた固体を500mLのナスフラスコに移し、300mLのテトラヒドロフランを加え、リフラックスで1時間攪拌した。室温に戻し固体を濾別して、得られた固体を60℃で12時間乾燥し中間体3を22.26g得た。窒素雰囲気下で1Lの三口フラスコに中間体3を0.04mol(18.34g)、塩化すず(II)・2水和物0.4mol(90.26g)、γ−ブチロラクトン400mLを混合し、80℃で2時間攪拌し反応させた。反応後に酢酸エチルを400mL加え2mol/Lのフッ化カリウム水溶液、蒸留水の順で洗浄した。得られた有機溶剤相をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた組成精製物をシリカゲルカラムクロマトグラフ(展開溶媒、テトラヒドロフラン:ヘキサン=2:1)により精製し目的のジアミン、ビス(4−アミノフェニル)2,6−ナフタレンジカルボキシレート(6.7g)4を得た。
【0124】
(ポリアミック酸及びポリイミドの合成)
[合成例3] (A−1)の合成
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物113g(0.50mol)、ジアミン化合物として[3−(4−アミノベンゾイル)オキシフェニル]4−アミノベンゾエート17g(0.05mol、岩谷瓦斯化学社)及びp−フェニレンジアミン495g(0.45mol)をγ−ブチロラクトン1,600gに溶解し、60℃で6時間反応させることにより、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液にγ−ブチロラクトン1,800gを追加し、ピリジン200g及び無水酢酸150gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行なった。脱水閉環反応後、系内の濃縮と希釈を2回繰り返した後にγ−ブチロラクトンを所定量加えることにより、イミド化率約83%のポリイミド(A−1)を10質量%含有する溶液1,800gを得た。
【0125】
[合成例4] (A−2)の合成
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物112g(0.50mol)、ジアミン化合物としてビス(4−アミノフェニル)テレフタレート35g(0.10mol)及びp−フェニレンジアミン43g(0.40mol)をN−メチル−2−ピロリドン1,700gに溶解し、60℃で6時間反応させることにより、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン1,900gを追加し、ピリジン200g及び無水酢酸150gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行なった。脱水閉環反応後、系内の溶媒をγ−ブチロラクトンで溶媒置換し、次いで濃縮することにより、イミド化率約86%のポリイミド(A−2)を10質量%含有する溶液1,900gを得た。
【0126】
[合成例5] (A−3)の合成
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物112g(0.50mol)、ジアミン化合物としてビス(4−アミノフェニル)−2,6−ナフタレンジカルボキシレート60g(0.15mol)及びp−フェニレンジアミン38g(0.35mol)をN−メチル−2−ピロリドン1,900gに溶解し、60℃で6時間反応させることにより、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン2,100gを追加し、ピリジン200g及び無水酢酸150gを添加して、110℃で4時間脱水閉環反応を行なった。脱水閉環反応後、系内の溶媒をγ−ブチロラクトンで溶媒置換し、次いで濃縮することにより、イミド化率約84%のポリイミド(A−3)を10質量%含有する溶液2,100gを得た。
【0127】
[合成例6] (A−4)の合成
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物101g(0.45mol)、及びピロメリット二酸無水物11g(0.05mol)、ジアミン化合物として[3−(4−アミノベンゾイル)オキシフェニル]4−アミノベンゾエート52g(0.15mol、岩谷瓦斯化学社)、p−フェニレンジアミン11g(0.1mol)及び4,4’―ジアミノジフェニルメタン50g(0.25mol)をγ−ブチロラクトン2,000gに溶解し、60℃で6時間反応させることによりポリアミック酸を含有する溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン2,250gを追加し、ピリジン200g及び無水酢酸150gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行なった。脱水閉環反応後、系内を濃縮と希釈を2回繰り返した後にγ−ブチロラクトンを所定量加えることにより、イミド化率約84%のポリイミド(A−4)を10質量%含有する溶液2,250gを得た。
【0128】
[合成例7] (A−5)の合成
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物67g(0.3mol)、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物29g(0.15mol)、及びピロメリット二酸無水物11g(0.05mol)、ジアミン化合物として[3−(4−アミノベンゾイル)オキシフェニル]4−アミノベンゾエート52g(0.15mol、岩谷瓦斯化学社)、p−フェニレンジアミン11g(0.1mol)及び4,4’―ジアミノジフェニルメタン50g(0.25mol)をγ−ブチロラクトン2,000gに溶解し、60℃で6時間反応させることによりポリアミック酸を含有する溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン2,250gを追加し、ピリジン200g及び無水酢酸150gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行なった。脱水閉環反応後、系内を濃縮と希釈を2回繰り返した後にγ−ブチロラクトンを所定量加えることにより、イミド化率約82%のポリイミド(A−5)を10質量%含有する溶液2,200gを得た。
【0129】
[合成例8] (A−6)の合成
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物111g(0.50mol)、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン54g(0.5mol)をN−メチル−2−ピロリドン1,500gに溶解し、60℃で6時間反応させることにより、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン1,650gを追加し、ピリジン200g及び無水酢酸150gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行なった。脱水閉環反応後、系内の溶媒をγ−ブチロラクトンで溶媒置換し、次いで濃縮することにより、イミド化率約89%のポリイミド(A−6)を10質量%含有する溶液1,650gを得た。
【0130】
[合成例8] (A−7)の合成
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物102g(0.45mol)、及びピロメリット酸二無水物11g(0.05mol)、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン27g(0.25mol)及び4,4’―ジアミノジフェニルメタン50g(0.25mol)をN−メチル−2−ピロリドン1,700gに溶解し、60℃で6時間反応させることにより、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン1,900gを追加し、ピリジン200g及び無水酢酸150gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行なった。脱水閉環反応後、系内の溶媒をγ−ブチロラクトンで溶媒置換し、次いで濃縮することにより、イミド化率約85%のポリイミド(A−7)を10質量%含有する溶液1,900gを得た。
【0131】
(液晶配向膜形成用組成物の調製)
[実施例1]
上記ポリイミド(A−1)を含有する溶液に、γ−ブチロラクトン及びエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテルを加え、さらにエポキシ化合物としてN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(分子量 約400)を、上記溶液に含有されるイミド化重合体の100質量部に対して5質量部加え、γ−ブチロラクトンとエチレングリコール−n−ブチルエーテルの重量比が80:20、固形分濃度が4質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向膜形成用組成物を調製した。
【0132】
[実施例2〜5及び比較例1〜2]
使用する重合体をそれぞれA−2(実施例2)、A−3(実施例3)、A−4(実施例4)、A−5(実施例5)、A−6(比較例1)、A−7(比較例2)とする以外は、実施例1と同様に操作して実施例2〜5及び比較例1〜2の液晶配向膜形成用組成物を調製した。
【0133】
(液晶配向膜の製造)
[実施例6〜10及び比較例3〜4]
実施例1〜5及び比較例1〜2の液晶配向膜形成用組成物を、厚さ1mmのガラス基板の一面に設けられたITO膜からなる透明導電膜上にスピンナー法により塗布し、230℃のホットプレート上で15分間乾燥することで、膜厚約100nmの塗膜を形成した。この塗膜に対し、レーヨン製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数1000rpm、ステージの移動速度2cm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmの条件下でラビング処理を行い、塗膜に液晶配向能を付与して液晶配向膜とした。この基板を、超純水中で1分間超音波洗浄した後、100℃のクリーンオーブン中で10分間乾燥し、液晶配向膜を有する基板を得た。かかる液晶配向膜をそれぞれ実施例6〜10及び比較例3〜4とした。
【0134】
(横電界方式の液晶表示素子の製造)
[実施例11〜15及び比較例5〜6]
片面に櫛歯状に設けられたクロム電極を有する厚さ1mmのガラス基板上に、上記で調整した実施例1〜5及び比較例1〜2の液晶配向膜形成用組成物を、スピンナーにより塗布し、230℃のホットプレート上で10分間加熱して、膜厚約800Åの塗膜を形成した。形成された塗膜面に対し、ナイロン製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンを用いて、ロールの回転数1,000rpm、ステージの移動速度25mm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmにてラビング処理を行い、液晶配向能を付与した。さらにこの基板を超純水中で1分間超音波洗浄し、100℃クリーンオーブンで10分間乾燥することにより、櫛歯状のクロム電極を有する面上に液晶配向膜を有する基板を製造した。これとは別に、電極を有さない厚さ1mmのガラス基板の一面に、上記と同様にして液晶配向膜形成用組成物の塗膜を形成し、ラビング処理を行い、洗浄、乾燥して、片面上に液晶配向膜を有する基板を製造した。続いて基板のラビング処理された液晶配向膜を有する面の外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、各液晶配向膜におけるラビング方向が逆平行となるように2枚の基板を間隙を介して対向配置し、外縁部同士を当接して圧着して接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマティック型液晶(メルク社、MLC−2042)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止し、さらに基板の外側の両面に偏光板を貼り合わせることにより、横電界方式の液晶表示素子を得た。かかる横電界方式の液晶表示素子をそれぞれ実施例11〜15及び比較例5〜6とした。
【0135】
(評価)
実施例6〜10及び比較例3〜4の液晶配向膜を有する基板について、リタデーション(nm)を測定した。また、実施例11〜15及び比較例5〜6の横電界方式の液晶表示素子における液晶配向膜について、最小相対透過率(%)を評価した。
【0136】
(リタデーションの測定)
モリテックス社のLayscanを使用しリタデーション(nm)を測定した。リタデーションの値が0.025nm以上を良好とし0.025nm未満のものを不良とした。結果を表1に示す。
【0137】
【表1】

【0138】
(最小相対透過率の測定)
光源と光量検出器の間に偏光子と検光子を配置した装置を使用して、下記式(4)で表される最小相対透過率(%)を測定した。暗状態の黒レベルは液晶表示素子の最小相対透過率で表され、横電界方式では暗状態での黒レベルが小さいほどコントラストが優れる。最小相対透過率が0.5%未満のものを良好とし、0.5%以上のものを不良とした。結果を表2に示す。
【0139】
最小相対透過率(%)=(β−B)/(B100−B)×100 (4)
【0140】
式中、Bはブランクでクロスニコル下の光の透過量である。B100はブランクでパラニコル下の光の透過量である。βはクロスニコル下で偏光子と検光子の間に液晶表示素子を挟み最小となる光透過量である。
【0141】
【表2】

【0142】
表1及び表2の結果から明らかなように、実施例は比較例と比べ、リタデーション値が大きく、かつ、最少相対透過率が小さいことから、この液晶配向膜を有する液晶表示素子は液晶の応答速度が高速化され、また、コントラストについても向上し、結果として、高い表示品位を有することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の液晶配向膜形成用組成物から形成される液晶配向膜は、リタデーション値が大きく、当該液晶配向膜を、特に横電界方式の液晶表示素子に適用した場合、液晶の応答速度は高速化され、かつ暗状態での黒レベルが上昇することによりコントラストが向上し、結果として、高い表示品位を実現できる。従って、当該液晶表示素子は、動画表示装置として、携帯電話等の小型の液晶表示装置から液晶テレビ等の大画面液晶表示装置まで幅広く利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物と少なくとも下記式(1)で表されるジアミンを含むジアミン化合物との反応により得られるポリアミック酸、及びこのポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体を含有する液晶配向膜形成用組成物。
【化1】

(式(1)中、Xは、置換されていてもよい2価の芳香族基である。U及びUは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−である。)
【請求項2】
上記テトラカルボン酸二無水物として、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の液晶配向膜形成用組成物。
【請求項3】
上記Xが、フェニレン基又はナフチレン基である請求項1に記載の液晶配向膜形成用組成物。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の液晶配向膜形成用組成物から形成される液晶配向膜。
【請求項5】
請求項4に記載の液晶配向膜を備える液晶表示素子。
【請求項6】
表示モードが横電界方式である請求項5に記載の液晶表示素子。