説明

液浸上層膜形成用組成物

【課題】撥水性、溶出量、Blob欠陥、ブリッジ欠陥、溶液安定性、溶解性及びパターン形状についての要求特性を維持しつつ、基板からの剥がれ耐性を高め、これらの要求特性をバランス良く満たすことができる液浸上層膜を形成可能な液浸上層膜形成用組成物の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、[A]下記式(1)で表される分子量100以上1,000以下の化合物、[B]フッ素原子を含む構造単位(I)を有する重合体(a)を含む重合体成分、及び[C]溶媒を含有する液浸上層膜形成用組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液浸上層膜形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造にあっては、従来から化学増幅型のレジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。この微細加工で用いられるパターン形成方法には、一般的に、基板上にレジスト膜を形成する工程、このレジスト膜にマクスを介して紫外線等の放射線を照射する露光工程、露光したレジスト膜を現像する現像工程、得られたレジストパターンを保護膜として基板をエッチングする工程が含まれる。
【0003】
このパターン形成方法では、露光部において生じた酸によりレジスト組成物中の重合体の酸解離性基を脱離させ、極性を変化させて露光部と未露光部とで現像液に対する溶解速度を異ならせてパターン形成がなされる。
【0004】
近年、さらに微細なレジストパターンを形成する方法として、レンズとレジスト膜との間を、例えば、純水やフッ素系不活性液体等の液浸媒体で満たして露光を行う液浸露光法の利用が拡大しつつある。この液浸露光法によれば、レンズの開口数(NA)の拡大が可能であり、NAを拡大した場合であっても焦点深度が低下しにくく、しかも高い解像性が得られるといった利点がある。
【0005】
この液浸露光法によるパターン形成方法では、レジスト膜成分の液浸媒体への溶出や、レジスト膜表面に残存した液浸媒体の液滴によるパターン欠陥を抑制すること等が要求されている。これらの要求を満たすための技術として、レジスト膜と液浸媒体との間に保護膜(液浸上層膜)を設けることが提案されている(特開2006−91798号公報、国際公開第2008/47678号及び国際公開第2009/41270号参照)。これらの公報には、非水溶性かつアルカリ可溶性の重合体を用いてレジスト膜上に液浸上層膜を形成し、露光時には、この液浸上層膜が有する撥水性によりレジスト膜成分の溶出やBlob欠陥及びブリッジ欠陥等のパターン欠陥の抑制を図ると共に、その後の現像工程において、液浸上層膜を現像液に溶解させることで、レジスト膜表面から液浸上層膜を除去することが開示されている。
【0006】
しかしながら、液浸上層膜の撥水性を高めると、レジスト膜成分の液浸上層膜への溶出量、Blob欠陥及びブリッジ欠陥が減少して良好になるものの、液浸上層膜周縁部における液浸上層膜と基板とが直接接する部位において、液浸上層膜と基板との密着性の低下による基板からの剥がれ耐性が低下する傾向にある。加えて、組成物としての溶液安定性、現像液に対する液浸上層膜の溶解性、及び形成されるレジストパターンにおけるパターン形状についての特性をも満たさなければならず、これらの要求特性をバランス良く満たすことができる液浸上層膜を形成可能な液浸上層膜形成用組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−91798号公報
【特許文献2】国際公開第2008/47678号
【特許文献3】国際公開第2009/41270号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、撥水性、溶出量、Blob欠陥、ブリッジ欠陥、溶液安定性、溶解性、及びパターン形状についての要求特性を維持しつつ、基板からの剥がれ耐性を高め、これらの要求特性をバランス良く満たすことができる液浸上層膜を形成可能な液浸上層膜形成用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]下記式(1)で表される分子量100以上1,000以下の化合物(以下、「[A]化合物」ともいう。)、[B]フッ素原子を含む構造単位(I)を有する重合体(a)を含む重合体成分(以下、「[B]重合体成分」ともいう。)、及び[C]溶媒を含有する液浸上層膜形成用組成物である。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、アラルキル基又はアリール基である。但し、上記アルキル基、脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、アラルキル基及びアリール基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。Rは、−C(=O)−R、−S(=O)−R、−R−CN又は−R−NOである。上記R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、脂環式炭化水素基、アルコキシ基、シアノ基、シアノメチル基、アラルキル基又はアリール基である。但し、上記R又はRとRとが互いに結合して、R及びRが結合している炭素原子と共に環構造を形成してもよい。上記R及びRは、それぞれ独立して、単結合、メチレン基又は炭素数2〜5のアルキレン基である。Rは、1価の有機基である。但し、上記RとRとが互いに結合して、Rが結合している炭素原子及びRが結合している炭素原子と共に環構造を形成してもよい。)
【0010】
このように、当該液浸上層膜形成用組成物は、[B]重合体成分及び[C]溶媒に加え、[A]化合物を含有することで、形成される液浸上層膜の基板からの剥がれ耐性を高め、上記要求特性をバランス良く満たすことができる液浸上層膜を形成することができる。
【0011】
上記式(1)におけるRは、水素原子、ニトロ基、アルキル基、脂環式炭化水素基、アルコキシ基又はアシル基であり、上記Rは、−C(=O)−R、−S(=O)−R又は−R−CNであることが好ましい。このように、R及びRを上記特定の基とすることで、上記要求特性をよりバランス良く満たすことができる。
【0012】
上記式(1)におけるRの有機基は、下記式(2)で表されることが好ましい。
【化2】

(式(2)中、Rは、1価の炭化水素基である。但し、上記RとRとが互いに結合して、Rが結合している炭素原子及びRが結合している炭素原子と共に環構造を形成してもよい。)
【0013】
このように、Rは、上記特定の基であることで、上記要求特性をよりいっそうバランス良く満たすことができる。
【0014】
当該液浸上層膜形成用組成物は、[A]化合物の含有量が、[B]重合体成分100質量部に対して、0.1質量部以上100質量部以下であることが好ましい。このように、当該液浸上層膜形成用組成物における[A]化合物の含有量を上記特定範囲とすることで、効果的に上記要求特性をバランス良く満たすことができる。
【0015】
構造単位(I)は、下記式(3−1)で表される基を含む構造単位及び下記式(3−2)で表される基を含む構造単位からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位であることが好ましい。
【化3】

(式(3−1)中、R及びR10は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のフッ素化アルキル基である。但し、上記R及びR10のうち、少なくともいずれかは、炭素数1〜4のフッ素化アルキル基である。
式(3−2)中、R11は、炭素数1〜10のフッ素化アルキル基又は炭素数3〜10のフッ素化シクロアルキル基である。)
【0016】
このように、構造単位(I)が、上記特定の基を含む構造単位であることで、当該液浸上層膜形成用組成物から形成される液浸上層膜の撥水性をより高め、溶出量、Blob欠陥及びブリッジ欠陥についての要求特性をより良好にすることができる。
【0017】
[B]重合体成分は、重合体(a)と同一又は異なる重合体中に、スルホ基を含む構造単位(II)をさらに有することが好ましい。このように、[B]重合体成分が、重合体(a)と同一又は異なる重合体中に、スルホ基を含む構造単位(II)をさらに有することで、現像液によるレジスト膜の膜減りを適度に生じさせることができ、その結果、現像残渣の付着などに起因するレジストパターンの欠陥を抑制できる。
【0018】
[C]溶媒は、エーテル系溶媒を含むことが好ましい。このように、[C]溶媒が、エーテル系溶媒を含むことで、液浸上層膜形成時における液浸上層膜へのレジスト膜成分の溶出を抑制し、インターミキシングを低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の液浸上層膜形成用組成物によれば、撥水性、溶出量、Blob欠陥、ブリッジ欠陥、溶液安定性、溶解性及びパターン形状についての要求特性を維持しつつ、基板からの剥がれ耐性を高め、これらの要求特性をバランス良く満たすことができる液浸上層膜を形成することができる。従って、当該液浸上層膜形成用組成物は、レジストパターンの更なる微細化が進む半導体デバイスの製造プロセスに好適に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<液浸上層膜形成用組成物>
本発明の液浸上層膜形成用組成物は、[A]化合物、[B]重合体成分及び[C]溶媒を含有する。また、当該液浸上層膜形成用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
【0021】
<[A]化合物>
[A]化合物は、上記式(1)で表される分子量100以上1,000以下の化合物である。当該液浸上層膜形成用組成物が、メチレン構造又はメチン構造を有する[A]化合物を含有することで、液浸上層膜と基板との密着性が高まる。その結果、液浸上層膜の基板からの剥がれ耐性を高めることができる。また、撥水性、溶出量、Blob欠陥、ブリッジ欠陥、溶液安定性、溶解性及びパターン形状についての各種特性にも優れる。また、このような構造は、カルボン酸、スルホン酸等に比較して、レジスト膜中の樹脂に対して脱保護等の影響が低いと推察されるため、リソグラフィー性能も向上する。
【0022】
上記式(1)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、アラルキル基又はアリール基である。但し、上記アルキル基、脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、アラルキル基及びアリール基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。Rは、−C(=O)−R、−S(=O)−R、−R−CN又は−R−NOである。上記R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、脂環式炭化水素基、アルコキシ基、シアノ基、シアノメチル基、アラルキル基又はアリール基である。但し、上記R又はRとRとが互いに結合して、R及びRが結合している炭素原子と共に環構造を形成してもよい。上記R及びRは、それぞれ独立して、単結合、メチレン基又は炭素数2〜5のアルキレン基である。Rは、1価の有機基である。但し、上記RとRとが互いに結合して、Rが結合している炭素原子及びRが結合している炭素原子と共に環構造を形成してもよい。
【0023】
上記Rで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0024】
上記Rで表されるアルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の直鎖状のアルキル基;i−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等の分岐状のアルキル基等が挙げられる。
【0025】
上記Rで表される脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基が好ましく、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環の脂環式炭化水素基;アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基等の多環の脂環式炭化水素基等が挙げられる。なお、本明細書において、脂環式炭化水素基は、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。
【0026】
上記Rで表されるアルコキシ基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
【0027】
上記Rで表されるアシル基としては、炭素数2〜20のアシル基が好ましく、例えば、アセチル基、プロピオニル基等が挙げられる。
【0028】
上記Rで表されるアラルキル基としては、炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0029】
上記Rで表されるアリール基としては、炭素数6〜10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0030】
上記Rで表されるアルキル基、1価の脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、アラルキル基及びアリール基が有する水素原子を置換してもよい基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0031】
上記R及びRで表されるアルキル基、脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アラルキル基及びアリール基としては、上記Rのそれぞれの例と同じものが挙げられる。また、R及びRで表されるフッ素化アルキル基としては、上記Rのアルキル基として例示した基の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0032】
上記R及びRで表される炭素数2〜5のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
【0033】
上記Rで表される1価の有機基としては、1価の有機基であれば特に限定されないが、上記式(2)で表される基であることが好ましい。Rが、上記式(2)で表される基であることで、上記要求特性をよりいっそうバランス良く満たすことができる。
【0034】
上記式(2)中、Rは、1価の炭化水素基である。但し、上記RとRとが互いに結合して、Rが結合している炭素原子及びRが結合している炭素原子と共に環構造を形成してもよい。
【0035】
上記Rで表される1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0036】
上記炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0037】
上記炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基等の単環式飽和炭化水素基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロオクタジエニル基、シクロデカジエン等の単環式不飽和炭化水素基;ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デシル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデシル基、アダマンチル基等の多環式飽和炭化水素基等が挙げられる。
【0038】
上記炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ベンジル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0039】
上記Rは、水素原子、ニトロ基、アルキル基、脂環式炭化水素基、アルコキシ基又はアシル基であり、上記Rは、−C(=O)−R、−S(=O)−R又は−R−CNであることが好ましい。R及びRを上記特定の基とすることで、上記要求特性をよりバランス良く満たすことができる。
【0040】
化合物[A]としては、下記式で表される化合物が好ましい。
【0041】
【化4】

【0042】
[A]化合物の分子量としては、100以上1,000以下であるが、100以上500以下が好ましい。分子量が上記特定の範囲内にあることで、後述する[C]溶媒への溶解性に優れる。
【0043】
[A]化合物は、1気圧における沸点が200℃以上であることが好ましい。また、[A]化合物は、融点が20℃以上であることが好ましい。
【0044】
[A]化合物の含有量としては、[B]重合体成分100質量部に対して、0.1質量部以上100質量部以下が好ましく、0.5質量部以上50質量部以下がより好ましい。[A]化合物の含有量を、上記特定範囲とすることで、効果的に上記要求特性をバランス良く満たすことができる。
【0045】
<[A]化合物の合成方法>
[A]化合物は、公知の方法を用いて合成することができる。また、市販品を用いてもよい。
【0046】
<[B]重合体成分>
[B]重合体成分は、フッ素原子を含む構造単位(I)を有する重合体(a)を含んでいる。また、[B]重合体成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、重合体(a)以外の重合体(以下、「その他の重合体」ともいう。)を含んでいてもよい。なお、[B]重合体成分は、上記各重合体を2種以上含んでもよい。
【0047】
<重合体(a)>
重合体(a)は、フッ素原子を含む構造単位(I)を有する。また、重合体(a)は、スルホ基を含む構造単位(II)を有することが好ましい。さらに、重合体(a)は、構造単位(III)等のその他の構造単位を有していてもよい。重合体(a)は、上記各構造単位をそれぞれ2種以上有していてもよい。なお、構造単位(II)及び(III)は、それぞれ、重合体(a)ではなくその他の重合体が有しているか、重合体(a)とその他の重合体の両者が有していてもよい。以下、各構造単位について詳述する。
【0048】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、フッ素原子を含む構造単位である。この構造単位(I)は、フッ素原子を含む構造単位であれば特に限定されないが、上記式(3−1)で表される基を含む構造単位及び上記式(3−2)で表される基を含む構造単位からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位であることが好ましい。重合体(a)が、構造単位(I)を有することで、当該液浸上層膜形成用組成物から形成される液浸上層膜の撥水性を高め、溶出量、Blob欠陥及びブリッジ欠陥についての要求特性を良好にすることができる。
【0049】
上記式(3−1)中、R及びR10は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のフッ素化アルキル基である。但し、上記R及びR10のうち、少なくともいずれかは、炭素数1〜4のフッ素化アルキル基である。上記式(3−2)中、R11は、炭素数1〜10のフッ素化アルキル基又は炭素数3〜10のフッ素化シクロアルキル基である。)
【0050】
上記R及びR10で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の直鎖状のアルキル基;i−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等の分岐状のアルキル基等が挙げられる。
【0051】
上記炭素数1〜4のフッ素化アルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基の水素原子の少なくとも1つが、フッ素原子で置換された基である。炭素数1〜4のアルキル基としては、上記炭素数1〜4のアルキル基として例示した基と同様の基を適用することができる。
【0052】
上記R11で表される炭素数1〜10のフッ素化アルキル基は、炭素数1〜10のアルキル基の水素原子の少なくとも1つが、フッ素原子で置換された基である。上記炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の直鎖状のアルキル基;i−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等の分岐状のアルキル基等が挙げられる。
【0053】
上記R11で表される炭素数3〜10のフッ素化シクロアルキル基は、炭素数3〜10のシクロアルキル基の水素原子の少なくとも1つが、フッ素原子で置換された基である。上記炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0054】
上記式(3−1)で表される基を含む構造単位及び上記式(3−2)で表される基を含む構造単位としては、それぞれ、下記式(3−1a)で表される構造単位及び下記式(3−2a)で表される構造単位が挙げられる。また、フッ素原子を含む構造単位としては、他に、下記式(3−3a)で表される構造単位が挙げられる。
【0055】
【化5】

【0056】
上記式(3−1a)、(3−2a)及び(3−3a)中、R12、R14、及びR16は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。式(3−1a)中、R13は、2価の連結基である。式(3−2a)中、R15は、2価の連結基である。R11は、式(3−2)と同義である。式(3−3a)中、R17は、炭素数1〜10のフッ素化アルキル基又は炭素数3〜10の1価のフッ素化脂環式炭化水素基である。
【0057】
上記R13で表される2価の連結基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状の2価の炭化水素基、炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基、又はこれらを組み合わせた基等が挙げられる。
【0058】
上記炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状の2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,2−プロピレン基、1,1−プロピレン基、2,2−プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基等が挙げられる。
【0059】
上記炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基等の単環式炭化水素基;ノルボルニレン基、アダマンチレン基等の多環式炭化水素基等が挙げられる。
【0060】
上記R15で表される2価の連結基としては、例えば、上記R13で表される2価の連結基として例示した基を適用することができる。
【0061】
上記R17で表される炭素数1〜10のフッ素化アルキル基は、炭素数1〜10のアルキル基の水素原子の少なくとも1つが、フッ素原子で置換された基である。
【0062】
上記炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の直鎖状のアルキル基;i−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等の分岐状のアルキル基等が挙げられる。
【0063】
上記R17で表される炭素数3〜10の1価のフッ素化脂環式炭化水素基は、炭素数3〜10の1価の脂環式炭化水素基の水素原子の少なくとも1つが、フッ素原子で置換された基である。
【0064】
上記炭素数3〜10の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環の脂環式炭化水素基;アダマンチル基、ノルボルニル基等の多環の脂環式炭化水素基等が挙げられる。
【0065】
上記式(3−1)で表される基を有する構造単位としては、例えば、下記式(3−1−1)〜(3−1−8)で表される構造単位等が挙げられる。
【0066】
【化6】

【0067】
上記式(3−1−1)〜(3−1−8)中、R12は、上記式(3−1a)と同義である。これらの中で、式(3−1−4)、及び(3−1−8)で表される構造単位が好ましい。
【0068】
上記式(3−2)で表される基を有する構造単位としては、例えば、下記式(3−2−1)〜(3−2−3)で表される構造単位等が挙げられる。
【0069】
【化7】

【0070】
上記式(3−2−1)〜(3−2−3)中、R14は、上記式(3−2a)と同義である。これらの中で、式(3−2−1)で表される構造単位が好ましい。
【0071】
上記式(3−3a)で表される構造単位としては、例えば、下記式(3−3−1)〜(3−3−6)で表される構造単位等が挙げられる。
【0072】
【化8】

【0073】
上記式(3−3−1)〜(3−3−6)中、R16は、式(3−3a)と同義である。これらの中で、式(3−3−1)及び(3−3−3)で表される構造単位が好ましい。
【0074】
重合体(a)における全構造単位に対する構造単位(I)の含有率としては、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましい。構造単位(I)の含有率を上記特定範囲とすることで、効果的に撥水性を高め、これにより溶出量、Blob欠陥及びブリッジ欠陥についての要求特性をより良好にすることができる。
【0075】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、スルホ基を含む構造単位である。重合体(a)が、構造単位(II)をさらに有することで、現像液によるレジスト膜の膜減りを適度に生じさせることができ、その結果、現像残渣の付着などに起因するレジストパターンの欠陥を抑制できる。この効果は、特にポジ型レジストにおいて顕著である。
【0076】
上記構造単位(II)としては、例えば、下記式(4)で表される構造単位等が挙げられる。
【0077】
【化9】

【0078】
上記式(4)中、R18は、水素原子、メチル基、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。R19は、単結合、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状の2価の炭化水素基、炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基又は−C(=O)−X−Y−基である。Xは、酸素原子、硫黄原子又はNH基である。Yは、単結合、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状の2価の炭化水素基、炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基である。
【0079】
上記R19及びYで表される炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状の2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,2−プロピレン基、1,1−プロピレン基、2,2−プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基等が挙げられる。
【0080】
上記R19及びYで表される炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロオクチレン基等の単環式炭化水素基;ノルボルニレン基、アダマンチレン基等の多環式炭化水素基等が挙げられる。
【0081】
上記R19及びYで表される炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。なお、上記脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基は、環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。
【0082】
上記構造単位(II)としては、例えば、下記式(4−1)〜(4−5)で表される構造単位等が挙げられる。
【0083】
【化10】

【0084】
上記式(4−1)〜(4−5)中、R18は、上記式(4)と同義である。これらの中で、(4−1)及び(4−5)が好ましい。
【0085】
重合体(a)における全構造単位に対する構造単位(II)の含有率としては、0.1モル%以上10モル%以下が好ましい。構造単位(II)の含有率を上記特定範囲とすることで、効果的にパターン欠陥を抑制できる。
【0086】
[その他の構造単位]
重合体(a)は、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、下記構造単位(III)等のその他の構造単位を有していてもよい。
【0087】
[構造単位(III)]
構造単位(III)は、カルボキシル基を含む構造単位である。重合体(a)が、構造単位(III)をさらに有することで、液浸上層膜の基板からの剥がれ耐性をより高めることができる。
【0088】
上記構造単位(III)としては、例えば、下記式(5−1)〜(5−3)で表される構造単位等が挙げられる。
【0089】
【化11】

【0090】
上記式(5−1)〜(5−3)中、R20は、水素原子、メチル基、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。上記式(5−1)及び(5−2)中のR21、並びに上記式(5−1)中のR22は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状の2価の炭化水素基、炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基である。
【0091】
上記R21及びR22で表される炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状の2価の炭化水素基、炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基、及び炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、上記R19で例示した基を適用することができる。
【0092】
上記式(5−1)で表される構造単位としては、例えば下記式(5−1−1)〜(5−1−3)で表される構造単位が、上記式(5−2)で表される構造単位としては、例えば下記式(5−2−1)〜(5−2−2)で表される構造単位が、それぞれ挙げられる。
【0093】
【化12】

上記式(5−1−1)〜(5−2−2)中、R20は、上記式(5−1)〜(5−3)と同義である。
【0094】
重合体(a)が構造単位(III)を有する場合には、重合体(a)における全構造単位に対する構造単位(III)の含有率としては、1モル%以上50モル%以下が好ましい。構造単位(III)の含有率を上記特定範囲とすることで、効果的に液浸上層膜の基板からの剥がれ耐性を高めることができる。
【0095】
[B]重合体成分における全重合体に対する重合体(a)の含有率としては、30質量%以上100質量%以下が好ましく、50質量%以上100質量%以下がより好ましい。
【0096】
<その他の重合体>
その他の重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、[B]重合体成分が含んでいてもよい重合体である。その他の重合体は、スルホ基を含む構造単位(II)を有することが好ましい。さらに、その他の重合体は、構造単位(III)等のその他の構造単位を有していてもよい。なお、その他の重合体における上記各構造単位の構成及び効果は、上記重合体(a)のものと同じであるため、その詳細な説明は省略する。その他の重合体は、上記各構造単位をそれぞれ2種以上含んでいてもよい。
【0097】
<各重合体の合成方法>
上記各重合体は、例えば、所定の各構造単位に対応する単量体を、重合開始剤を使用し、適当な重合溶媒中で重合することにより合成できる。
【0098】
上記重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオン酸メチル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチル等が挙げられる。これらの重合開始剤は1種又は2種以上を併用できる。
【0099】
重合溶媒としては、ラジカル重合を行なう場合は、重合を阻害する溶媒(重合禁止効果を有するニトロベンゼン、連鎖移動効果を有するメルカプト化合物等)以外の溶媒であれば特に限定されない。この重合溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル・ラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、1種又は2種以上を併用できる。
【0100】
重合反応により得られた各重合体は、再沈殿法により回収することが好ましい。即ち、重合反応終了後、重合液を再沈溶媒に投入することにより、目的の重合体を粉体として回収する。再沈溶媒としては、アルコール類やアルカン類等を、1種又は2種以上を併用できる。再沈殿法の他に、分液操作やカラム操作、限外ろ過操作等により、低分子成分を除去して、各重合体を回収することもできる。
【0101】
各重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)としては、2,000〜100,000が好ましく、3,000〜50,000がより好ましい。Mwが2,000未満であると、液浸上層膜の耐水性及び機械的特性が低下するおそれがあり、100,000を超えると、各重合体が溶媒に溶け難くなるおそれがある。また、GPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。
【0102】
なお、本明細書のMw及びMnは、東ソー製GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0mL/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするGPCにより測定したものである。
【0103】
<[C]溶媒>
[C]溶媒は、[A]化合物及び[B]重合体成分等を溶解する溶媒である。
【0104】
[C]溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、水等が挙げられる。
【0105】
上記アルコール系溶媒としては、例えば、ブタノール、ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール等の1価アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類等が挙げられる。
【0106】
上記エーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ヘキシルメチルエーテル、オクチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジシクロペンチルエーテル等の脂肪族エーテル類;アニソール、フェニルエチルエーテル等の脂肪族−芳香族エーテル類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテル類等が挙げられる。
【0107】
上記炭化水素系溶媒としては、例えば、デカン、ドデセン、ウンテカン等の高級炭化水素類が挙げられる。
【0108】
上記ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン等が挙げられる。
【0109】
上記エステル系溶媒としては、例えば、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0110】
これらの中でも、エーテル系溶媒が好ましい。[C]溶媒が、エーテル系溶媒を含むことで、液浸上層膜形成時における液浸上層膜へのレジスト膜成分の溶出を抑制し、インターミキシングを低減することができる。
【0111】
<任意成分>
当該液浸上層膜形成用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分を含有できる。各任意成分は、それぞれ1種又は2種以上を併用できる。また、任意成分の配合量は、その目的に応じて適宜決定することができる。
【0112】
<液浸上層膜形成用組成物の調製方法>
当該液浸上層膜形成用組成物は、[A]化合物、[B]重合体成分及び[C]溶媒等を所定の割合で混合することにより調製できる。
【0113】
<レジストパターンの形成方法>
当該液浸上層膜形成用組成物を用いて形成されるレジストパターンの形成方法は、
(1)基板上にレジスト組成物を塗布し、レジスト膜を形成する工程
(2)上記レジスト膜上に当該液浸上層膜形成用組成物を塗布し、液浸上層膜を形成する工程、
(3)上記液浸上層膜とレンズとの間に液浸媒体を配置し、この液浸媒体とマスクとを介して放射線を照射し、上記レジスト膜及び液浸上層膜を露光する工程、並びに
(4)上記露光されたレジスト膜及び液浸上層膜を現像液により現像し、レジストパターンを形成する工程を含む。
【0114】
[工程(1)]
本工程は、基板上にレジスト組成物を塗布し、レジスト膜を形成する工程である。上記基板としては、例えば、シリコンウエハ等が挙げられる。
【0115】
上記レジスト組成物としては、例えば、酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とからなるポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とからなるネガ型レジスト組成物等が挙げられる。なお、レジスト組成物として、市販のレジスト組成物を使用することもできる。レジスト組成物の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコート法等の公知の方法により塗布することができる。なお、レジスト組成物を塗布する際には、形成されるレジスト膜が所望の膜厚となるように、塗布するレジスト組成物の量を調整する。なお、レジスト組成物を基板上に塗布した後、溶媒を揮発させるためにプレベーク(以下、「PB」ともいう。)を行ってもよい。
【0116】
[工程(2)]
本工程は、レジスト膜上に、当該液浸上層膜形成用組成物を塗布し、液浸上層膜を形成する工程である。
【0117】
本工程では、当該液浸上層膜形成用組成物を塗布した後、焼成することが好ましい。この焼成により液浸媒体とレジスト膜とが直接接触しなくなるため、液浸媒体がレジスト膜に浸透することに起因するレジスト膜のリソグラフィー性能が低下したり、レジスト膜から液浸媒体に溶出した成分によって投影露光装置のレンズが汚染されたりすることを効果的に防止できる。液浸上層膜を形成する方法は、上記レジスト組成物に代えて当該液浸上層膜形成用組成物を用いること以外は、上記レジスト膜を形成する方法と同様の方法を採用することができる。
【0118】
[工程(3)]
本工程は、液浸上層膜とレンズとの間に液浸媒体を介在させて放射線をレジスト膜及び液浸上層膜に照射し、レジスト膜及び液浸上層膜を露光する工程である。
【0119】
上記液浸媒体としては、通常、空気より屈折率の高い液体を使用する。具体的には、水を用いることが好ましく、純水を用いることがさらに好ましい。この液浸媒体を介在させた状態、すなわち、レンズと液浸上層膜との間に液浸媒体を満たした状態で、露光装置から放射線を照射し、所定のパターンを有するマスクを介してレジスト膜及び液浸上層膜を露光する。
【0120】
上記放射線としては、例えば、可視光線;g線、i線等の紫外線;エキシマレーザ等の遠紫外線;X線;電子線等が挙げられる。この中でも、ArFエキシマレーザ(波長193nm)及びKrFエキシマレーザ(波長248nm)が好ましい。なお、放射線量等の照射条件は、レジスト組成物、液浸上層膜形成用組成物等に応じて適宜設定することができる。
【0121】
[工程(4)]
本工程は、露光されたレジスト膜及び液浸上層膜を現像液により現像し、レジストパターンを形成する工程である。液浸上層膜は、当該液浸上層膜形成用組成物から形成されているため、現像液により液浸上層膜を容易に除去することができ、液浸上層膜を除去する特別な工程を必要としない。
【0122】
上記現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類(例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなど)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノナン等のアルカリ性化合物を少なくとも1種溶解したアルカリ性水溶液が好ましく、この中でも、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類の水溶液がより好ましい。なお、この現像液には、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類等の水溶性有機溶媒や、界面活性剤を適量添加することもできる。
【0123】
なお、レジスト膜の解像度等を向上させるために、露光後現像前に焼成(以下、「PEB」ともいう。)を行うことが好ましい。焼成温度は、使用するレジスト組成物、液浸上層膜形成用組成物等によって適宜設定することができるが、30〜200℃が好ましく、50〜150℃がより好ましい。
【実施例】
【0124】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に制限されるものではない。
【0125】
<[A]化合物の準備>
下記式(A−1)、(A−6)、(A−7)及び(A−9)で表される化合物は、東京化成工業製のものを用いた。
【0126】
下記式(A−2)、(A−3)、(A−4)、(A−5)、(A−8)及び(A−10)で表される化合物は、それぞれ下記文献に基づき合成した。
【0127】
A−2:(文献1)Bulletin of the Chemical Society of Japan, 1989 , vol. 62, #4、 p.1179−1187、
A−3:(文献2)Journal of the American Chemical Society, 1987 , vol.109, #24, p.7488−7494、
A−4:(文献3)Journal of Organic Chemistry, 1991, vol.56, #21, p.6199−6205、
A−5:(文献4)Journal of Organic Chemistry, 2009 , vol.74, #23, p.8988−8996、
A−8:(文献5)WO2006/123639
A−10:(文献6)Tetrahedron: Asymmetry, 1998, vol.9, #15, p.2619−2626
【0128】
【化13】

【0129】
<[B]重合体成分の合成>
下記式(M−1)〜(M−7)で表される単量体を用い、各重合体成分を合成した。
【0130】
【化14】

【0131】
[合成例1](B−1)の合成
重合開始剤として2,2−アゾビス(2−メチルイソプロピオン酸メチル)0.9gをメチルエチルケトン0.9gに溶解させた混合溶液を準備した。一方、温度計及び滴下漏斗を備えた200mlの三つ口フラスコに、(M−1)11.8g(40モル%)、(M−5)8.2g(60モル%)、及びメチルエチルケトン39.1gを投入し、30分間窒素パージした。窒素パージ後、フラスコ内をマグネティックスターラーで撹拌しながら75℃になるように加熱した。続いて、滴下漏斗を用い、予め準備しておいた混合溶液を5分かけて滴下し、360分間熟成させた。その後、30℃以下に冷却して共重合液を得た。
【0132】
次いで、得られた共重合液を44gに濃縮した後、分液漏斗に移した。この分液漏斗にメタノール44g、及びn−ヘキサン220gを投入し、分離精製を実施した。分離後、下層液を回収した。回収した下層液に及びn−ヘキサン220gを投入し、分離精製を実施した。分離後、下層液を回収した。回収した下層液を4−メチル−2−ペンタノールに置換し、重合体成分(B−1)を含む溶液を得た。その重合体溶液0.5gをアルミ皿にのせ、155℃に加熱したホットプレート上で30分間加熱した後の残渣の質量から上記重合体成分(B−1)を含む溶液の固形分濃度を算出し、その固形分濃度の値をその後の保護膜形成用組成物溶液の調製と収率計算に用いた。得られた重合体成分(B−1)は、Mw=9,000、Mw/Mn=1,7、収率70%であり、(M−1)及び(M−5)に由来する各構造単位の含有率は、それぞれ40モル%、60モル%であった。なお、[B]重合体成分における各構造単位の含有率(モル%)を求めるためのH−NMR、13C−NMR、及び19F−NMR分析は、核磁気共鳴装置(JNM−ECX400、日本電子製)を使用した。
【0133】
[合成例2〜3](B−2)〜(B−3)の合成
各成分の種類及び使用量を表1に記載の通りとした以外は、合成例1と同様に操作し、各重合体を合成した。各重合体のMw及びMw/Mnを表1に示す。
【0134】
[合成例4](重合体(B−4)の合成)
(M−1)60.57g(85モル%)、及び重合開始剤として2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオン酸メチル)4.53gをイソプロパノール40.00gに溶解させた単量体溶液を準備した。一方、温度計及び滴下漏斗を備えた200mLの三つ口フラスコにイソプロパノール50gを投入し、30分間窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら、80℃になるように加熱した。そして、滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応を行い、(M−7)3.19g(15モル%)のイソプロパノール溶液10gを30分かけて滴下した。その後、さらに1時間反応を行った後、30℃以下に冷却して、重合液を得た。
【0135】
得られた上記重合液を150gに濃縮した後、分液漏斗に移した。この分液漏斗にメタノール50gとn−ヘキサン600gを投入し、分離精製を実施した。分離後、下層液を回収した。この下層液をイソプロパノールで希釈して100gとし、再度、分液漏斗に移した。その後、メタノール50gとn−ヘキサン600gを上記分液漏斗に投入して、分離精製を実施し、分離後、下層液を回収した。回収した下層液を4−メチル−2−ペンタノールに置換し、全量を250gに調整した。調整後、水250gを加えて分離精製を実施し、分離後、上層液を回収した。回収した上層液は、4−メチル−2−ペンタノールに置換し、重合体(B−4)を含む溶液を得た。得られた重合体(B−4)のMwは9,500、Mw/Mnは1.8であり、収率は75%であった。また、(M−1)及び(M−7)に由来する各構造単位の含有率は、それぞれ98モル%、2モル%であった。
【0136】
[合成例5〜6](B−5)〜(B−6)の合成
各成分の種類及び使用量を表1に記載の通りとした以外は、合成例4と同様に操作し、各重合体を合成した。各重合体のMw及びMw/Mnを表1に示す。
【0137】
【表1】

【0138】
<液浸上層膜形成用組成物の調製>
液浸上層膜形成用組成物の調製に用いた[A]化合物及び[B]重合体成分以外の各成分について以下に示す。
【0139】
[C]溶媒
C−1:4−メチル−2−ペンタノール
C−2:ジイソアミルエーテル
【0140】
[実施例1]
[A]化合物として(A−1)3質量部、[B]重合体成分として(B−1)20質量部及び(B−4)80質量部、並びに[C]溶媒として(C−1)4,000質量部及び(C−2)1,000質量部を配合して液浸上層膜形成用組成物を調製した。
【0141】
[実施例2〜12及び比較例1]
配合する各成分の種類及び配合量(質量部)を表2に記載の通りとした以外は、実施例1と同様に操作して、各液浸上層膜形成用組成物を調製した。なお、表2中、「−」で表記した欄は、その成分を配合していないことを示している。
【0142】
【表2】

【0143】
<レジスト組成物に含有される重合体の合成>
下記式(M−8)〜(M−10)で表される単量体を用い、レジスト組成物に含有される重合体を合成した。
【0144】
【化15】

【0145】
[合成例17]
500mLのフラスコに、(M−8)53.9g(50モル%)、(M−9)35.4g(40モル%)、(M−10)10.7g(10モル%)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5.6g、2−ブタノン200gを仕込み、窒素下、80℃で6時間し重合反応を行った。重合終了後、重合溶液を水冷することにより30℃以下に冷却した後、2,000gのメタノールへ投入して重合体を析出させ、この重合体をろ別後、800gのメタノールを加えて重合体を洗浄した。この重合体を更にろ別後、50℃にて17時間乾燥し、重合体(P−1)を得た(74g、収率74%)。この重合体は、Mwが6900、Mw/Mnが1.7であった。また、13C−NMR分析の結果、(M−8)、(M−9)及び(M−10)に由来する各構造単位の含有率が、それぞれ53モル%、37モル%、10モル%の共重合体であった。
【0146】
<レジスト組成物の調製>
重合体として(P−1)100質量部、酸発生剤としてトリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート1.5質量部及び1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート6質量部、酸拡散制御剤としてR−(+)−(tert−ブトキシカルボニル)−2−ピペリジンメタノール0.65質量部を混合し、この混合物に、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2,900質量部、シクロヘキサノン1,250質量部及びγ−ブチロラクトン100質量部を加えて、固形分濃度を5質量%に調整し、孔径30nmのフィルターでろ過することにより、レジスト組成物を調製した。
【0147】
<評価>
撥水性、溶出量、Blob欠陥、ブリッジ欠陥、溶液安定性、溶解性、剥がれ耐性、パターン形状を評価し、その評価結果を表3に示す。
【0148】
[撥水性]
シリコンウエハ上に、各液浸上層膜形成用組成物をスピンコートし、90℃で60秒間PBを行い、膜厚30nmの液浸上層膜を形成した。その後、後退接触角測定装置(DSA−10、KRUS製)に上記ウエハをセットし、このウエハ上に針から水を排出させて20μLの水滴を形成し、一旦針を水滴から引き抜いた後、再び針を水滴内に挿入し、この針により10μL/minの速度で90秒間水滴を吸引しながら毎秒1回の頻度で後退接触角を測定した。そして、測定値が安定した後の20秒間の後退接触角の平均値を算出し、この値を撥水性(°)とした。なお、撥水性が69°以上であれば実用的に問題のないレベルである。
【0149】
[溶出量]
シリコンウエハ上に中央部がくり抜かれたシリコーンゴムを載せ、そのくり抜き部を超純水10mLで満たした。そして、レジスト膜及び液浸上層膜が形成された他のシリコンウエハを重ねて液浸上層膜と超純水とが接触するようにした。なお、レジスト膜は、上記レジスト組成物をウエハ上にスピンコートした後、115℃で60秒間PBして形成した(膜厚205nm)。また、液浸上層膜は、上記レジスト膜上に、上記各液浸上層膜形成用組成物をスピンコートした後、90℃で60秒間PBして形成した(膜厚30nm)。
【0150】
そして、液浸上層膜と超純水とを10秒間接触させた後、上記他のシリコンウエハを取り除き、超純水を回収してその中に溶解している酸発生剤及び酸拡散制御剤の溶出量を液体クロマトグラフ質量分析計(LC部:AGILENT製 SERIES1100、MS部:Perseptive Biosystems,Inc.製 Mariner)により測定した。なお、測定は、カラム(CAPCELL PAK MG、資生堂製)1本を用い、測定温度:35℃、流量:0.2mL/分、流出溶媒:水/メタノール(3/7)に0.1質量%のギ酸を添加したもの、にて行った。このとき酸発生剤及び酸拡散制御剤共に溶出量が5.0×10−12mol/cm以下であれば溶出量は良好「A」、少なくともいずれかが5.0×10−12mol/cmを超えていれば不良「B」とした。
【0151】
[Blob欠陥]
予め100℃で60秒HMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理を行ったシリコンウエハ上に、レジスト組成物をスピンコートし、90℃で60秒PBを行って膜厚120nmのレジスト膜を形成した。そして、このレジスト膜上に、各液浸上層膜形成用組成物をスピンコートし、90℃で60秒PBを行って膜厚30nmの液浸上層膜を形成した。その後、無地の擦りガラスを介して露光を行った。
【0152】
そして、形成された液浸上層膜を超純水でリンスし、乾燥させた後、2.38%TMAH水溶液の現像液を用いて30秒間パドル現像を行い、液浸上層膜を除去した。そして、液浸上層膜の溶け残りを、「KLA2351」(KLAテンコール製)で測定し、この測定値をBlob欠陥とした。このとき、Blob欠陥が200個以下であればBlob欠陥は良好「A」、200個を超えれば不良「B」とした。
【0153】
[ブリッジ欠陥]
シリコンウエハ上に、レジスト組成物をスピンコートし、100℃で60秒PBを行って膜厚100nmのレジスト膜を形成した。そして、このレジスト膜上に各液浸上層膜形成用組成物を塗布して液浸上層膜を形成した。そして、ArF液浸露光装置(S610C、NIKON製)を用い、NA:1.30、Crosspoleの光学条件にて、45nmライン/90nmピッチのパターン形成用のマスクを介して露光した。そして、100℃で60秒PEBを行い、冷却した後、2.38%TMAH水溶液の現像液を用いて10秒間パドル現像を行い、超純水でリンス後、乾燥してレジストパターンを形成した。このとき、形成されたレジストパターンにブリッジ欠陥が発見されなければブリッジ欠陥は良好「A」、発見されれば不良「B」とした。
【0154】
[溶液安定性]
調製した各液浸上層膜形成用組成物を30分間撹拌した後、目視で確認し、白濁せずに溶解していれば溶液安定性は良好「A」、白濁していれば不良「B」とした。
【0155】
[溶解性]
シリコンウエハ上に各液浸上層膜形成用組成物をスピンコートし、90℃で60秒間PBを行い、膜厚90nmの塗膜を形成した。そして、2.38%TMAH水溶液により60秒間パドル現像を行い、乾燥後、ウエハ表面を観察した。このとき、残渣がなければ溶解性は良好「A」、残渣が観察されれば不良「B」とした。
【0156】
[剥がれ耐性]
HMDS処理をしていないシリコンウエハ上に、各液浸上層膜形成用組成物をスピンコートし、90℃で60秒PBを行って膜厚30nmの塗膜(液浸上層膜)を形成した。そして、半導体製造装置(CLEAN TRACK ACT8、東京エレクトロン製)を用いて純水によるリンスを60秒間行った後、乾燥させた。その後、目視により液浸上層膜の剥がれの有無を観測し、剥がれが観測されなければ剥がれ耐性は特に良好「AA」、エッジ部でのみ剥がれが観測されれば剥がれ耐性は良好「A」、中心部で剥がれが観測されれば不良「B」とした。
【0157】
[パターン形状]
高解像度のレジストパターンが形成されることを評価するため本評価を行った。また、12インチシリコンウエハ上に、商品名「Lithius Pro−i」を使用して、下層反射防止膜用組成物(商品名「ARC66」、日産化学製)をスピンコートし、PB(205℃、60秒)を行うことにより膜厚105nmの塗膜(下層反射防止膜)を形成した。形成した下層反射防止膜上に、上記レジスト組成物をスピンコートし、PB(100℃、60秒)を行うことにより膜厚100nmの塗膜(レジスト膜)を形成した。形成したレジスト膜上に、液浸上層膜形成用組成物をスピンコートし、PB(90℃、60秒)を行うことにより膜厚30nmの塗膜(液浸上層膜)を形成した。ArF液浸露光装置(S610C、NIKON製)を使用し、45nmライン/90nmピッチのパターンを投影するためのマスクを介して露光した。Lithius Pro−iのホットプレート上で100℃、60秒の条件でPEBを行い、23℃で30秒間冷却した後、現像カップのGPノズルにて、2.38%TMAH水溶液を現像液としてパドル現像を10秒間行い、超純水でリンスした。2,000rpm、15秒間振り切りでスピンドライすることにより、レジストパターンが形成された評価用基板を得た。形成されたレジストパターンについて、線幅45nmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)を1対1の線幅に形成する露光量を最適露光量とした。なお、測定には走査型電子顕微鏡(商品名「CG−4000」、日立計測器製)を使用した。また、線幅90nmライン・アンド・スペースパターンの断面形状を、走査型電子顕微鏡(型番「S−4800」、日立計測器製)にて観察した。形成されたレジストパターンのレジスト膜の中間での線幅Lbと、レジスト膜の上部での線幅Laを測定し、この測定結果をパターン形状とした。このとき、0.9≦La/Lb≦1.1であった場合をパターン形状が良好「A」、La/Lb<0.9、またはLa/Lb>1.1であった場合を不良「B」とした。
【0158】
【表3】

【0159】
表3の結果から、実施例1〜12の液浸上層膜形成用組成物により形成された液浸上層膜は、比較例1のものに比べ、剥がれ耐性が良好であった。また、撥水性、溶出量、Blob欠陥、ブリッジ欠陥、溶液安定性、溶解性及びパターン形状についての特性も良好であり、要求特性をバランス良く満たすものであった。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明の液浸上層膜形成用組成物によれば、撥水性、溶出量、Blob欠陥、ブリッジ欠陥、溶液安定性、溶解性及びパターン形状についての要求特性を維持しつつ、基板からの剥がれ耐性を高め、これらの要求特性をバランス良く満たすことができる液浸上層膜を形成することができる。従って、当該液浸上層膜形成用組成物は、レジストパターンの更なる微細化が進む半導体デバイスの製造プロセスに好適に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]下記式(1)で表される分子量100以上1,000以下の化合物、
[B]フッ素原子を含む構造単位(I)を有する重合体(a)を含む重合体成分、及び
[C]溶媒
を含有する液浸上層膜形成用組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、アラルキル基又はアリール基である。但し、上記アルキル基、脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、アラルキル基及びアリール基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。Rは、−C(=O)−R、−S(=O)−R、−R−CN又は−R−NOである。上記R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、脂環式炭化水素基、アルコキシ基、シアノ基、シアノメチル基、アラルキル基又はアリール基である。但し、上記R又はRとRとが互いに結合して、R及びRが結合している炭素原子と共に環構造を形成してもよい。上記R及びRは、それぞれ独立して、単結合、メチレン基又は炭素数2〜5のアルキレン基である。Rは、1価の有機基である。但し、上記RとRとが互いに結合して、Rが結合している炭素原子及びRが結合している炭素原子と共に環構造を形成してもよい。)
【請求項2】
上記式(1)におけるRが、水素原子、ニトロ基、アルキル基、脂環式炭化水素基、アルコキシ基又はアシル基であり、上記Rが、−C(=O)−R、−S(=O)−R又は−R−CNである請求項1に記載の液浸上層膜形成用組成物。
【請求項3】
上記式(1)におけるRの有機基が、下記式(2)で表される請求項1又は請求項2に記載の液浸上層膜形成用組成物。
【化2】

(式(2)中、Rは、1価の炭化水素基である。但し、上記RとRとが互いに結合して、Rが結合している炭素原子及びRが結合している炭素原子と共に環構造を形成してもよい。)
【請求項4】
[A]化合物の含有量が、[B]重合体成分100質量部に対して、0.1質量部以上100質量部以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の液浸上層膜形成用組成物。
【請求項5】
構造単位(I)が、下記式(3−1)で表される基を含む構造単位及び下記式(3−2)で表される基を含む構造単位からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液浸上層膜形成用組成物。
【化3】

(式(3−1)中、R及びR10は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のフッ素化アルキル基である。但し、上記R及びR10のうち、少なくともいずれかは、炭素数1〜4のフッ素化アルキル基である。
式(3−2)中、R11は、炭素数1〜10のフッ素化アルキル基又は炭素数3〜10のフッ素化シクロアルキル基である。)
【請求項6】
[B]重合体成分が、重合体(a)と同一又は異なる重合体中に、スルホ基を含む構造単位(II)をさらに有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の液浸上層膜形成用組成物。
【請求項7】
[C]溶媒が、エーテル系溶媒を含む請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の液浸上層膜形成用組成物。