説明

液浸用上層膜形成組成物及びレジストパターン形成方法

【課題】パターン形状に優れるレジストパターンを形成でき、パターン倒れ耐性を向上させ、ブロッブ欠陥及びブリッジ欠陥の発生を低減できる液浸用上層膜形成組成物の提供。
【解決手段】本発明は、[A]同一又は異なる重合体中にカルボキシル基を含む構造単位(I)、スルホ基を含む構造単位(II)、α−トリフルオロメチルアルコール基を含む構造単位(III)、スルホンアミド基を含む構造単位(IV)及び下記式(i)で表される基を含む構造単位(V)からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する重合体成分を含有する液浸用上層膜形成組成物であって、この液浸用上層膜形成組成物が[A]重合体成分の同一又は異なる重合体中に、芳香族含窒素複素環を含む構造単位(A)をさらに有するか又は[B]芳香族含窒素複素環を有する化合物をさらに含有するかの少なくともいずれか一方であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液浸用上層膜形成組成物及びレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子の製造に代表される微細加工の分野においては、従来、フォトレジスト組成物を用いたレジストパターンの形成が行われる。このフォトレジスト組成物によれば、基板上に塗布してレジスト膜を形成した後、エキシマレーザ光等の露光光の照射によって露光部で酸を発生させ、その酸を触媒とする反応により露光部と未露光部とにおけるアルカリ現像液に対する溶解速度の差を生じさせることで、レジストパターンが形成される。
【0003】
かかるレジストパターン形成において、さらに微細なレジストパターンを形成する方法として、露光レンズとレジスト膜との間を、例えば純水やフッ素系不活性液体等の液浸媒体で満たして露光を行う液浸露光法(リキッドイマージョンリソグラフィ)の利用が拡大しつつある。この液浸露光法によれば、レンズの開口数(NA)の拡大が可能となり、またNAを拡大した場合であっても焦点深度が低下し難く、しかも高い解像性が得られるといった利点がある。
【0004】
一方、上記液浸露光法では、レジスト膜成分の液浸媒体への溶出や、レジスト膜表面に残存した液滴によるパターン欠陥の発生等が起こり得るため、これらの発生を抑制すると共に、スキャンスピードの向上を図ることが要求されている。これらの要求に対しては、レジスト膜上に保護膜(液浸用上層膜)を設けることが検討されている(特開2006−91798号公報、国際公開第2008/47678号及び国際公開第2009/41270号参照)。これらの技術によれば、非水溶性かつアルカリ可溶性の重合体を用いた液浸用上層膜を形成することで、液浸露光時には液浸用上層膜が有する撥水性により、レジスト膜成分の溶出やパターン欠陥発生の抑制を図ることができ、また、その後のアルカリ現像時に液浸用上層膜が現像液に溶解するので、レジスト膜表面から液浸用上層膜を剥離することができる。
【0005】
しかしながら、このような上層膜を形成した場合に、レジスト膜の種類によっては、現像後に得られるレジストパターンの形状が悪化することがあるという不都合がある。これに対処する技術としては、特定の構造単位を含む高分子化合物を含有する液浸用上層膜形成組成物に、アミン化合物を加える方法が知られている(特開2008−3569号公報参照)。しかし、パターンの微細化が進行している近年にあっては、このような技術によってもレジストパターン形状の良好性を満足させることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−91798号公報
【特許文献2】国際公開第2008/47678号
【特許文献3】国際公開第2009/41270号
【特許文献4】特開2008−3569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、パターン形状に優れるレジストパターンを形成させることができ、そのパターン倒れ耐性を向上させると共に、ブロッブ欠陥及びブリッジ欠陥の発生を低減することができる液浸用上層膜形成組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]同一又は異なる重合体中に、カルボキシル基を含む構造単位(I)、スルホ基を含む構造単位(II)、α−トリフルオロメチルアルコール基を含む構造単位(III)、スルホンアミド基を含む構造単位(IV)、及び下記式(i)で表される基を含む構造単位(V)からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有する重合体成分(以下、「[A]重合体成分」ともいう)
を含有する液浸用上層膜形成組成物であって、
この液浸用上層膜形成組成物が、[A]重合体成分の同一又は異なる重合体中に、芳香族含窒素複素環を含む構造単位(A)をさらに有するか、又は[B]芳香族含窒素複素環を有する化合物(以下、「[B]化合物」ともいう)をさらに含有するかの少なくともいずれか一方であることを特徴とする液浸用上層膜形成組成物である。
【化1】

(式(i)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、1価の脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、アラルキル基又はアリール基である。上記アルキル基、脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、アラルキル基及びアリール基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは、−C(=O)−R、−S(=O)−R、−R−CN又は−R−NOである。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、1価の脂環式炭化水素基、アルコキシ基、シアノ基、シアノメチル基、アラルキル基又はアリール基である。但し、R又はRとRとが互いに結合して環構造を形成していてもよい。R及びRは、それぞれ独立して、単結合又は炭素数1〜5のアルカンジイル基である。)
【0009】
本発明の液浸用上層膜形成組成物は、[A]重合体成分に加え、芳香族含窒素複素環を[A]重合体成分の構造単位(A)及び/又は[B]化合物として含有することで、パターン形状に優れるレジストパターンを形成させることができる。当該液浸用上層膜形成用組成物が上記構成を有することで上記効果を発揮する理由については、必ずしも明確ではないが、例えば、上記パターン形状に優れるレジストパターンを形成できることについては、[A]重合体成分に含まれるカルボキシル基、スルホ基等の酸性官能基の作用によって起こるレジスト膜中の重合体の脱保護反応等を制御することが効果的であると考えられるところ、上記芳香族含窒素複素環は、この脱保護反応等を効果的に制御することができること等が考えられ、かつレジストパターン形成への影響も小さいこと等が考えられる。
【0010】
上記芳香族含窒素複素環の含有量は、[A]重合体成分1kgに対して、0.0015モル以上0.3モル以下であることが好ましい。当該液浸用上層膜形成組成物は、上記芳香族含窒素複素環の含有量を上記特定範囲とすることで、エキシマレーザ光等の露光光を吸収する性質を有する芳香族含窒素複素環を含んでいる当該液浸用上層膜形成組成物であっても、この露光光の吸収の影響を小さく抑えることができ、その結果、レジストパターンのパターン形状をより良好にすることができ、パターン倒れ耐性を向上させ、かつブロッブ欠陥及びブリッジ欠陥の発生を低減させることができる。
【0011】
本発明のレジストパターン形成方法は、
(1)フォトレジスト組成物を基板上に塗布し、レジスト膜を形成する工程、
(2)当該液浸用上層膜形成組成物を上記レジスト膜上に塗布し、上層膜を形成する工程、
(3)上記上層膜上に液浸露光用液体を配置し、この液浸露光用液体を介して上記レジスト膜を液浸露光する工程、及び
(4)上記液浸露光されたレジスト膜を現像する工程
を有する。
【0012】
当該レジストパターン形成方法によれば、当該液浸用上層膜形成組成物を用いているので、パターン形状に優れ、パターン倒れ耐性が向上し、かつブロッブ欠陥及びブリッジ欠陥の少ないレジストパターンを形成することができる。
【0013】
ここで、本明細書において、「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。また、「脂環式炭化水素基」及び「芳香族炭化水素基」は、それぞれ、脂環構造及び芳香環構造を含む炭化水素基をいうが、環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の液浸用上層膜形成組成物及びレジストパターン形成方法によれば、パターン形状に優れるレジストパターンを形成させることができ、また、そのパターン倒れ耐性を向上させ、かつブロッブ欠陥及びブリッジ欠陥の少ないレジストパターンを形成することができる。従って、当該液浸用上層膜組成物及び当該レジストパターン形成方法は、さらなる微細化が進行する液浸露光法を用いたレジストパターンの形成に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の液浸用上層膜形成組成物は、
[A]重合体成分を含有する液浸用上層膜形成組成物であって、
この液浸用上層膜形成組成物が、[A]重合体成分の同一又は異なる重合体中に、構造単位(A)をさらに有するか、又は[B]化合物をさらに含有するかの少なくともいずれか一方であることを特徴とする。すなわち、当該液浸用上層膜形成組成物は、この組成物中に芳香族含窒素複素環を含み、その含有形態としては、[A]重合体成分中の構造単位(A)としてでもよく、[B]化合物としてでもよく、その両方としてでもよい。当該液浸用上層膜形成組成物は、好適成分として[C]溶媒を含有し、さらに本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有してもよい。当該液浸用上層膜形成組成物によれば、液浸露光に好適に用いられる上層膜を形成することができ、それにより、パターン形状に優れるレジストパターンを形成させることができ、また、そのパターン倒れ耐性を向上させ、かつブロッブ欠陥及びブリッジ欠陥の発生を抑制することができる。以下、各成分について説明する。
【0016】
<[A]重合体成分>
[A]重合体成分は、同一又は異なる重合体中に、構造単位(I)〜(V)からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有する重合体成分である。すなわち、[A]重合体成分は、構造単位(I)〜(V)のうちのそれぞれを同一の重合体に含んでもよく、異なる重合体に含んでもよい。また、[A]重合体成分は、同一又は異なる重合体中に、構造単位(I)〜(V)以外の構造単位を有していてもよく、構造単位(I)〜(V)以外の構造単位のみからなる重合体を含んでいてもよい。[A]重合体成分が構造単位(I)〜(V)を有することで、当該液浸用上層膜形成組成物から形成された形成された上層膜の現像液への溶解性を良好にすることができ、その結果、ブリッジ欠陥、ブロッブ欠陥等の欠陥発生の低減に寄与する。また、形成される上層膜の基板への密着性を高めることができ、その結果、上層膜の剥がれ耐性を向上させることができる。
【0017】
[A]重合体成分は、構造単位(I)、構造単位(II)及び構造単位(V)からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を含むことが好ましく、構造単位(I)を含むことがより好ましい。[A]重合体成分が、構造単位(I)、構造単位(II)及び構造単位(V)からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を含む場合には、これらの構造単位が有する酸性官能基の酸性度が強いため、芳香族含窒素複素環を[A]重合体成分の構造単位(A)及び/又は[B]化合物として含有することによるレジストパターンのパターン形状の改善に特に効果が得られる。
【0018】
また、[A]重合体成分は、さらに、構造単位(III)及び構造単位(IV)からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を含むことが好ましい。構造単位(III)及び構造単位(IV)からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を含むことで、上層膜の現像液への溶解性を良好にすることができるとともに、上層膜の撥水性を向上することができる。
【0019】
[A]重合体成分は、上記各構造単位以外にも、他の構造単位として、フッ素化アルキル基を含む構造単位(VI)及びその他の構造単位を有していてもよい。また、上述したように、当該液浸用上層膜形成組成物における芳香族含窒素複素環の含有形態の1つとして、[A]重合体成分の重合体の同一又は異なる重合体中に、構造単位(A)を有していてもよい。これらの各構造単位は、それぞれ1種又は2種以上を有していてもよい。以下、各構造単位について説明し、構造単位(A)については、後述の「芳香族含窒素複素環の含有形態」の項で、[B]化合物と合わせて説明する。
【0020】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、カルボキシル基を含む構造単位である。[A]重合体成分が構造単位(I)を有すると、当該液浸用上層膜形成用組成物は、上述の現像液への溶解性向上以外にも、剥がれ耐性を向上させることができる。構造単位(I)としては、例えば、下記式(1−1)〜(1−3)で表される構造単位(以下、それぞれ「構造単位(I−1)〜(I−3)」ともいう)等が挙げられる。
【0021】
【化2】

【0022】
上記式(1−1)〜(1−3)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
上記式(1−1)及び(1−2)中、Rc1及びRc2は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の2価の鎖状炭化水素基、炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基である。
【0023】
上記Rとしては、構造単位(I−1)〜(I−3)を与える単量体の共重合性等の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0024】
上記Rc1及びRc2で表される炭素数1〜6の2価の鎖状炭化水素基としては、例えば、メタンジイル基、1,2−エタンジイル基、1,1−エタンジイル基、1,3−プロパンジイル基、1,2−プロパンジイル基、1,1−プロパンジイル基、2,2−プロパンジイル基、1,4−プロパンジイル基、1,5−ペンタンジイル基、1,6−ヘキサンジイル基、1−メチル−1,3−プロパンジイル基、2−メチル−1,3−プロパンジイル基、2−メチル−1,2−プロパンジイル基、1−メチル−1,4−ブタンジイル基、2−メチル−1,4−ブタンジイル基等の飽和鎖状炭化水素基;1,2−エテンジイル基、1,3−プロペンジイル基、1,2−プロペンジイル基等の不飽和鎖状炭化水素基等が挙げられる。これらの中で、飽和鎖状炭化水素基が好ましく、1,2−エタンジイル基がさらに好ましい。
【0025】
上記Rc1及びRc2で表される炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,3−シクロブタンジイル基等のシクロブタンジイル基;1,3−シクロペンタンジイル基等のシクロペンタンジイル基;1,4−シクロヘキサンジイル基、1,2−シクロヘキサンジイル基等のシクロヘキサンジイル基;1,5−シクロオクタンジイル基等のシクロオクタンジイル基などの単環式炭化水素基;
1,4−ノルボルナンジイル基、2,5−ノルボルナンジイル基等のノルボルナンジイル基、1,3−アダマンタンジイル基、2,4−アダマンタンジイル基等のアダマンタンジイル基等の多環式炭化水素基等が挙げられる。これらの中で、単環式炭化水素基が好ましく、シクロヘキサンジイル基がより好ましく、1,2−シクロヘキサンジイル基がさらに好ましい。
【0026】
上記Rc1及びRc2で表される炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。
【0027】
構造単位(I−1)としては、例えば、下記式(1−1−1)〜(1−1−3)で表される構造単位が、構造単位(I−2)としては、下記式(1−2−1)及び(1−2−2)で表される構造単位等が挙げられる。
【0028】
【化3】

【0029】
上記式(1−1−1)〜(1−2−2)中、Rは、上記式(1−1)〜(1−3)と同義である。
【0030】
構造単位(I)としては、上記式(1−1)で表される構造単位、式(1−3)で表される構造単位が好ましい。また、上記式(1−1)で表される構造単位の中でも、(1−1−1)で表される構造単位がより好ましい。
【0031】
構造単位(I)の含有割合としては、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、0.5モル%〜80モル%以下が好ましく、1モル%〜60モル%がより好ましく、3モル%〜30モル%がさらに好ましい。構造単位(I)の含有割合を上記範囲とすることで、当該液浸用上層膜形成用組成物から形成される液浸用上層膜の上層膜除去性及び剥がれ耐性が向上する。
【0032】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、スルホ基を含む構造単位である。構造単位(II)としては、例えば、下記式(2)で表される構造単位(II−1)等が挙げられる。
【0033】
【化4】

【0034】
上記式(2)中、Rは、水素原子、メチル基、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。Rs1は、単結合、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜6の2価の鎖状炭化水素基、炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基又は−C(=O)−X’−R’−基である。但し、X’は、酸素原子、硫黄原子又はNH基である。R’は、単結合、炭素数1〜6の2価の鎖状炭化水素基、炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基である。
【0035】
上記Rとしては、構造単位(II−1)を与える単量体の共重合性等の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0036】
上記Rs1及びR’で表される炭素数1〜6の2価の鎖状炭化水素基、炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基、及び炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、上記式(1−1)におけるRc1及びRc2として例示したそれぞれの基と同様の基等が挙げられる。
【0037】
上記Rs1としては、単結合、炭素数1〜6の2価の鎖状炭化水素基、炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素、又はR’が炭素数1〜6の2価の鎖状炭化水素基である−C(=O)−NH−R’が好ましく、単結合、メタンジイル基、フェニレン基、−C(=O)−NH−CH(CH)−CH−がより好ましく、単結合、−C(=O)−NH−CH(CH)−CH−がさらに好ましい。
【0038】
構造単位(II−1)としては、例えば、下記式(2−1)〜(2−4)で表される構造単位等が挙げられる。
【0039】
【化5】

【0040】
上記式(2−1)〜(2−4)中、Rは、上記式(2)と同義である。
【0041】
これらの中でも、上記式(2−1)で表される構造単位、上記式(2−4)で表される構造単位が好ましい。
【0042】
構造単位(II)の含有割合としては、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、通常、0.1モル%〜10モル%以下が好ましく、0.5モル%〜5モル%がより好ましい。構造単位(II)の含有割合を上記範囲とすることで、Blob欠陥を好適に抑制でき、レジスト層のエッチング耐性を確保することができる。
【0043】
[構造単位(III)]
構造単位(III)は、α−トリフルオロメチルアルコール基を含む構造単位である。α−トリフルオロメチルアルコール基は、下記式(a)で表される基である。
【0044】
【化6】

【0045】
上記式(a)中、Xは、水素原子又は1価の有機基である。
【0046】
上記1価の有機基としては、例えば、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基等が挙げられる。これらの中でも、−OH基の酸性度が高くなる観点から、フッ素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基が好ましく、フッ素原子を有するアルキル基がより好ましく、パーフルオロアルキル基がさらに好ましく、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0047】
α−トリフルオロメチルアルコール基としては、例えば、2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基、1−ヒドロキシ−2,2,2−トリフルオロエチル基、2−ヒドロキシ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブチル基、2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,4,4,4−オクタフルオロ−2−ブチル基等が挙げられる。これらの中で、2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基が好ましい。
【0048】
構造単位(III)としては、例えば、下記式(3)で表される構造単位(III−1)等が挙げられる。
【0049】
【化7】

【0050】
上記式(3)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rt1は、2価の連結基である。
【0051】
上記Rとしては、構造単位(III−1)を与える単量体の共重合性等の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0052】
上記Rt1で表される2価の連結基としては、例えば、炭素数1〜6の2価の鎖状炭化水素基、炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。これらの基としては、例えば、上記式(1−1)のRc1及びRc2として例示したそれぞれの基と同様の基等が挙げられる。また、上記鎖状炭化水素基及び脂環式炭化水素基中のメチレン基(−CH−)は、酸素原子、カルボニル基又はエステル基で置換されていてもよい。Rt1としては炭素数1〜3の2価の鎖状炭化水素基、炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基が好ましく、プロパンジイル基、シクロヘキサン骨格を含む2価の基、ノルボルネン骨格を含む2価の基、アダマンタン骨格を含む2価の基がより好ましく、1,2−プロパンジイル基、1−シクロヘキシル−1,2−エタンジイル基がさらに好ましい。
【0053】
構造単位(III−1)としては、例えば、下記式(3−1)〜(3−7)で表される構造単位等が挙げられる。
【0054】
【化8】

【0055】
上記式(3−1)〜(3−7)中、Rは、上記式(3)と同義である。
【0056】
これらの中で、上記式(3−4)で表される構造単位が好ましい。
【0057】
構造単位(III)の含有割合としては、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、0モル%〜99モル%が好ましく、10モル%〜98モル%がより好ましく、50モル%〜97モル%がさらに好ましい。構造単位(III)の含有割合を上記範囲とすることで、当該液浸用上層膜形成用組成物から形成される液浸用上層膜の上層膜除去性及び剥がれ耐性が向上する。
【0058】
[構造単位(IV)]
構造単位(IV)は、スルホンアミド基を含む構造単位である。構造単位(IV)としては、例えば、下記式(4)で表される構造単位(IV−1)等が挙げられる。
【0059】
【化9】

【0060】
上記式(4)中、Rは、水素原子、メチル基、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。Rn1は、2価の連結基である。Rn2は、炭素数1〜20のフッ素化アルキル基である。
【0061】
上記Rとしては、構造単位(I−1)〜(I−3)を与える単量体の共重合性等の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0062】
上記Rn1で表される2価の連結基としては、例えば、上記式(3)のRt1として例示したものと同様の基等が挙げられる。これらの中で、炭素数1〜3の2価の鎖状炭化水素基が好ましく、1,2−エタンジイル基がより好ましい。
【0063】
上記Rn2で表される炭素数1〜20のフッ素化アルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロメチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられる。これらの中で、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0064】
構造単位(IV)の含有割合としては、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、0モル%〜30モル%が好ましく、0モル%〜99モル%が好ましく、3モル%〜95モル%がより好ましく、5モル%〜90モル%がさらに好ましい。構造単位(IV)の含有割合を上記範囲とすることで、当該液浸用上層膜形成用組成物から形成される液浸用上層膜の上層膜除去性及び剥がれ耐性が向上する。
【0065】
[構造単位(V)]
構造単位(V)は、上記式(i)で表される基(以下、「基(i)」ともいう)を含む構造単位である。
【0066】
上記式(1)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、1価の脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、アラルキル基又はアリール基である。上記アルキル基、脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、アラルキル基及びアリール基の水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは、−C(=O)−R、−S(=O)−R、−R−CN又は−R−NOである。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、1価の脂環式炭化水素基、アルコキシ基、シアノ基、シアノメチル基、アラルキル基又はアリール基である。但し、R又はRとRとが互いに結合して環構造を形成していてもよい。R及びRは、それぞれ独立して、単結合又は炭素数1〜5のアルカンジイル基である。
【0067】
上記Rで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。この中で、フッ素原子及び塩素原子が好ましい。
【0068】
上記Rで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の直鎖状のアルキル基;i−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等の分岐状のアルキル基等が挙げられる。上記アルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。
【0069】
上記Rで表される1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環の脂環式炭化水素基;アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基等の多環の脂環式炭化水素基等が挙げられる。上記脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基が好ましい。
【0070】
上記Rで表されるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。上記アルコキシ基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基が好ましい。
【0071】
上記Rで表されるアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基等が挙げられる。上記アシル基としては、炭素数2〜20のアシル基が好ましい。
【0072】
上記Rで表されるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。上記アラルキル基としては、炭素数7〜12のアラルキル基が好ましい。
【0073】
上記Rで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。上記アリール基としては、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。
【0074】
上記Rで表されるアルキル基、1価の脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、アラルキル基及びアリール基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0075】
上記Rとしては、当該液浸用上層膜形成組成物から形成される上層膜の現像液溶解性と、液浸露光時における撥水性とをバランスさせる観点から、この中でも、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜5のアルキル基及び炭素数1〜5のフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましく、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基及びトリフルオロメチル基がさらに好ましい。
【0076】
また、上記Rとしては、当該液浸用上層膜形成組成物から形成される液浸用上層膜の疎水性、高速スキャン性、レジスト膜からの溶出抑制性、当該液浸用上層膜形成組成物の塗布性、及び塗布量低減性を向上させる観点からは、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、1価の脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、アラルキル基、アリール基又はこれらの置換体が好ましい。
【0077】
が−C(=O)−R及び−S(=O)−Rの場合、R及びRで表されるアルキル基、1価の脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アラルキル基及びアリール基としては、例えば、上記Rのそれぞれの基として例示したものと同様の基等が挙げられる。また、R及びRで表されるフッ素化アルキル基としては、例えば、上記Rのアルキル基として例示した基の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された基等が挙げられる。これらの中でも、R及びRとしては、水素原子、アルキル基及びフッ素化アルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、フルオロメチル基及びトリフルオロメチル基がより好ましい。
【0078】
上記R又はRとRとが互いに結合して形成する環構造を含む基としては、R又はRとRとがそれぞれ結合する炭素原子を含み、かつオキソ基を有する炭素数5〜12の2価の脂環式炭化水素基が好ましい。
【0079】
が、−R−CN及び−R−NOの場合、R及びRとしては、単結合、メタンジイル基又はエタンジイル基が好ましい。
【0080】
上記Rは、当該液浸用上層膜形成組成物から形成される液浸用上層膜の疎水性、高速スキャン性及びレジスト膜からの溶出抑制性を向上させる観点からは、−C(=O)−R3f、−S(=O)−R、−R−CN又は−R−NOであり、R3fが、フッ素化アルキル基であり、Rが、水素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、1価の脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アラルキル基又はアリール基であり、R及びRが、それぞれ独立して、単結合又は炭素数1〜5のアルカンジイル基であることが好ましい。
【0081】
上記R3fで表されるフッ素化アルキル基としては、例えば上記Rのアルキル基として例示した基の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0082】
基(i)としては、例えば、下記式(i−1)〜(i−24)で表される基等が挙げられる。
【0083】
【化10】

【0084】
上記式(i−1)〜(i−24)中、*は結合部位を示す。
【0085】
この中で、上記式(i−1)、式(i−3)、式(i−6)、式(i−10)、式(i−11)、式(i−13)、式(i−18)、式(i−22)及び式(i−23)で表される基が好ましく、その中でも、形成される液浸用上層膜の疎水性を向上できる点で、上記式(i−3)、式(i−6)、式(i−10)、式(i−11)、式(i−13)、式(i−18)、式(i−22)及び式(i−23)で表される基が好ましい。
【0086】
構造単位(V)としては、例えば、基(i)を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体、(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエーテル誘導体、オレフィン誘導体、スチレン誘導体等に由来する構造単位等が挙げられる。この中で、(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構造単位が好ましい。すなわち、構造単位(V)としては、下記式(5)で表される構造単位(V−1)が好ましい。
【0087】
【化11】

【0088】
上記式(5)中、R及びRは、上記式(i)と同義である。nは、1〜3の整数である。R及びRがそれぞれ複数の場合、複数のR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Lは、(n+1)価の連結基である。Rは、水素原子、メチル基、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
【0089】
上記Rとしては、構造単位(V−1)を与える単量体の共重合性等の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0090】
上記Lで表される(n+1)価の連結基としては、例えば、2価の連結基(nが1の場合)としては、アルカンジイル基、2価の脂環式炭化水素基、アルケンジイル基、アレーンジイル基等が挙げられる。なお、これらの基が有する水素原子の一部又は全部は、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子、シアノ基等で置換されていてもよい。
【0091】
上記アルカンジイル基としては、例えば、メタンジイル基、エタンジイル基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ヘキサンジイル基、オクタンジイル基等が挙げられる。上記アルカンジイル基としては、炭素数1〜8のアルカンジイル基が好ましい。
【0092】
上記2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基等の単環の脂環式炭化水素基;ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の多環の脂環式炭化水素等が挙げられる。上記2価の脂環式炭化水素基としては、炭素数5〜12の脂環式炭化水素基が好ましい。
【0093】
上記アルケンジイル基としては、例えば、エテンジイル基、プロペンジイル基、ブテンジイル基等が挙げられる。上記アルケンジイル基としては、炭素数2〜6のアルケンジイル基が好ましい。
【0094】
上記アレーンジイル基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基等が挙げられる。上記アレーンジイル基としては、炭素数6〜15のアレーンジイル基が好ましい。
【0095】
これらのうち、Lとしては、アルカンジイル基、2価の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数6〜11の2価の脂環式炭化水素基がより好ましい。Lが2価の脂環式炭化水素基である場合は、得られる上層膜の撥水性を高めることができる観点から好ましい。
【0096】
構造単位(V−1)としては、例えば、下記式(5−1)〜(5−30)で表される構造単位等が挙げられる。
【0097】
【化12】

【0098】
【化13】

【0099】
【化14】

【0100】
【化15】

【0101】
上記式(5−1)〜(5−30)中、Rは、上記式(5)と同義である。
【0102】
この中で、上記式(5−1)、式(5−5)、式(5−14)、式(5−17)、式(5−18)、式(5−20)、式(5−24)、式(5−27)及び式(5−29)で表される構造単位が好ましく、当該液浸用上層膜形成組成物から形成される液浸用上層膜の疎水性をさらに向上できる点で、上記式(5−5)、式(5−14)、式(5−17)、式(5−18)、式(5−20)、式(5−24)、式(5−27)及び式(5−29)で表される構造単位がさらに好ましい。
【0103】
構造単位(V)の含有割合としては、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、0モル%〜90モル%が好ましく、5モル%〜90モル%がより好ましい。構造単位(V)の含有割合を上記範囲とすることで、当該液浸用上層膜形成用組成物から形成される液浸用上層膜の上層膜除去性及び剥がれ耐性が向上する。
【0104】
<他の構造単位>
[構造単位(VI)]
[A]重合体成分は、上記構造単位(I)〜(V)以外にも、同一又は異なる重合体中に、フッ素化アルキル基を含む構造単位(IV)を有していてもよい。[A]重合体成分が構造単位(VI)を有することで、当該液浸上層膜形成用組成物から形成される液浸用上層膜の撥水性を高めることができる。構造単位(VI)としては、例えば、下記式(6)で表される構造単位(VI−1)等が挙げられる。
【0105】
【化16】

【0106】
上記式(6)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、炭素数1〜10の1価のフッ素化鎖状炭化水素基又は炭素数3〜10の1価のフッ素化脂環式炭化水素基である。
【0107】
上記Rとしては、構造単位(VI−1)を与える単量体の共重合性等の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0108】
上記Rで表されるフッ素化鎖状炭化水素としては、例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられる。これらの中で、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基が好ましい。
【0109】
上記Rで表されるフッ素化脂環式炭化水素としては、例えば、ジフルオロシクロペンチル基、テトラフルオロシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0110】
構造単位(VI−1)としては、例えば、下記式(6−1)〜(6−6)で表される構造単位等が挙げられる。
【0111】
【化17】

【0112】
上記式(6−1)〜(6−6)中、Rは、上記式(6)と同義である。
【0113】
これらの中で、上記式(6−1)で表される構造単位、上記式(6−3)で表される構造単位が好ましい。
【0114】
構造単位(VI)の含有割合としては、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、0モル%〜50モル%が好ましく、2モル%〜35モル%がより好ましく、4モル%〜25モル%がさらに好ましい。構造単位(VI)の含有割合を上記範囲とすることで、当該液浸用上層膜形成組成物から形成される液浸用上層膜の撥水性と現像液溶解性とを高いレベルでバランスさせることができる。
【0115】
[その他の構造単位]
[A]重合体成分は、上記構造単位(I)〜(VI)以外にも、同一又は異なる重合体中に、その他の構造単位を有していてもよい。上記その他の構造単位としては、例えば、撥水性を向上させる観点からは、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸アルキルに由来する構造単位等が挙げられる。また、[A]重合体成分の分子量、ガラス転移点、溶媒への溶解性などを制御する観点からは、酸解離性基を有する構造単位等が挙げられる。上記その他の構造単位の含有割合としては、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、通常20モル%以下であり、10モル%以下が好ましい。
【0116】
<[A]重合体成分の合成方法>
上記[A]重合体成分は、例えば、適宜選択された重合開始剤や連鎖移動剤の存在下、重合溶媒中で、所定の単量体をラジカル重合等の重合をさせることによって合成することができる。
【0117】
上記重合溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;
テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類;
エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類;
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;
酢酸エチル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル等のエステル類等が挙げられる。この中で、環状エーテル類、多価アルコールのアルキルエーテル類、多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類、ケトン類又はエステル類が好ましい。なお、上記重合溶媒は1種又は2種以上を用いることができる。
【0118】
[A]重合体成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)としては、2,000〜100,000が好ましく、2,500〜50,000がより好ましく、3,000〜20,000がさらに好ましい。Mwを2,000以上とすることで、液浸用上層膜としての耐水性及び機械的特性を良好にでき、Mwを100,000以下とすることで、重合体の溶媒に対する溶解性を高めることができる。
【0119】
[A]重合体成分のMwとGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)としては、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。
【0120】
当該液浸用上層膜形成組成物は、ハロゲンイオン、金属等の不純物が少ないほど好ましい。不純物を少なくすることにより、液浸用上層膜としての塗布性とアルカリ現像液への均一な溶解性とを改善することができる。不純物を少なくするために[A]重合体を精製する方法としては、例えば水洗、液々抽出、脱メタルフィルター通液等の化学的精製法、これらの化学的精製法と限外ろ過、遠心分離等の物理的精製法との組み合わせ等が挙げられる。
【0121】
[A]重合体成分の含有量としては、当該液浸用上層膜形成組成物中の全固形分に対して、70質量%〜100質量%が好ましく、80質量%〜100質量%がより好ましく、90質量%〜100質量%がさらに好ましい。
【0122】
<芳香族含窒素複素環の含有形態>
上述したように、当該液浸用上層膜形成用組成物は、芳香族含窒素複素環を含有する。この芳香族含窒素複素環は、窒素原子を環構成原子として含む芳香族複素環をいう。この芳香族複素環を構成する窒素原子の数は特に限定されず、1個でも2個以上でもよいが、1個又は2個が好ましい。また窒素原子以外の酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を環構成原子として有していてもよい。当該液浸用上層膜形成組成物における芳香族含窒素複素環の含有形態としては、[A]重合体成分中の構造単位(A)でもよく、[B]化合物でもよく、その両方でもよい。以下、構造単位(A)及び[B]化合物について説明する。
【0123】
[構造単位(A)]
構造単位(A)は、芳香族含窒素複素環を含む構造単位である。構造単位(A)としては、下記式(A−1)で表される構造単位(A1)等が挙げられる。
【0124】
【化18】

【0125】
上記式(A−1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Ra1は、2価の連結基である。Qは、(p+1)価の芳香族含窒素複素環基である。Rは、1価の炭化水素基である。pは、0〜6の整数である。Rが複数の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。
【0126】
上記Rとしては、構造単位(A1)を与える単量体の共重合性等の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0127】
上記Ra1で表される2価の連結基としては、例えば、上記式(3)のRt1として例示した基と同様の基等が挙げられる。これらの中で、炭素数2〜6の2価の鎖状炭化水素基、炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数2〜4の2価の鎖状炭化水素基がより好ましく、1,2−エタンジイル基がさらに好ましい。
【0128】
上記Qで表される(p+1)価の芳香族含窒素複素環基としては、例えば、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1H−ピロリジン、インドリジン、イソインドール、インドーリル、インダゾール、プリン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、β−カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン等の芳香族含窒素複素環化合物から(p+1)個の水素原子を除いた基等が挙げられる。これらの中で、適度な塩基性を有する観点から、ヘテロ原子として窒素原子のみを有する芳香族含窒素複素環化合物に由来する基が好ましく、縮環していてもよい5員環含窒素複素環を有する化合物に由来する基がより好ましく、ピロール及びイミダゾールに由来する基がさらに好ましい。
【0129】
上記Rで表される1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、1価の脂環式炭化水素基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
【0130】
上記pとしては、0〜4の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0又は1がさらに好ましく、0が特に好ましい。
【0131】
構造単位(A1)としては、例えば、下記式(A−1−1)〜(4−1−9)で表される構造単位等が挙げられる。
【0132】
【化19】

【0133】
上記式(A−1−1)〜(A−1−9)中、Rは、上記式(A−1)と同義である。
【0134】
これらの中で、上記式(A−1−1)で表される構造単位、式(A−1−2)で表される構造単位が好ましい。
【0135】
[A]重合体成分が構造単位(A)を有する場合の構造単位(A)の含有割合としては、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、0.01モル%〜20モル%が好ましく、0.1モル%〜10モル%がより好ましく、0.2モル%〜5モル%がさらに好ましく、0.5モル%〜2モル%が特に好ましい。構造単位(A)の含有割合を上記範囲とすることで、当該液浸上層膜形成用組成物は、パターン形状、パターン倒れ耐性、ブロッブ欠陥抑制性、ブリッジ欠陥抑制性等の特性が向上する。
【0136】
また、[A]重合体成分が構造単位(A)を有する場合の構造単位(A)の含有割合としては、特には、[A]重合体成分を構成するスルホ基を含む構造単位(II)1モルに対して、0.1モル〜20モルが好ましく、0.2モル〜10モルがより好ましく、0.3モル〜5モルがさらに好ましく、0.5モル〜2モルが特に好ましい。構造単位(A)の含有割合を上記範囲とすることで、当該液浸上層膜形成用組成物は、パターン形状、パターン倒れ耐性、ブロッブ欠陥抑制性、ブリッジ欠陥抑制性等の特性が向上する。
【0137】
<[B]化合物>
[B]化合物は、芳香族含窒素複素環を有する化合物である。[B]化合物としては、例えば、下記式(B−1)で表される化合物等が挙げられる。
【0138】
【化20】

【0139】
上記式(B−1)中、Jは、(q+1)価の芳香族含窒素複素環基である。Rは、1価の炭化水素基である。qは、0〜6の整数である。Rが複数の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。
【0140】
上記Jで表される(q+1)価の芳香族含窒素複素環基としては、例えば、上記式(A−1)のQとして例示した(p+1)価の芳香族含窒素複素環基と同様の基等が挙げられる。
【0141】
上記qとしては、0〜4の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0又は1がさらに好ましく、0が特に好ましい。
【0142】
[B]化合物としては、例えば、下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0143】
【化21】

【0144】
これらの中で、適度な塩基性を有する観点から、ヘテロ原子として窒素原子のみを有する芳香族含窒素複素環化合物が好ましく、縮環していてもよい5員環含窒素複素環化合物がより好ましく、その中でも、入手容易性の観点から、ピロール、イミダゾールがさらに好ましい。
【0145】
[B]化合物の含有量としては、[A]重合体成分100質量部に対して、0.01質量部〜20質量部が好ましく、0.1質量部〜10質量部がより好ましく、0.2質量部〜5質量部がさらに好ましく、0.5質量部〜2質量部が特に好ましい。[B]化合物の含有量を上記範囲とすることで、当該液浸用上層膜形成組成物のパターン形状、パターン倒れ耐性、ブロッブ欠陥抑制性、ブリッジ欠陥抑制性等の特性が向上する。
【0146】
また、[B]化合物の含有量としては、特には、[A]重合体成分を構成するスルホ基を含む構造単位(II)1モルに対して、0.1モル〜500モルが好ましく、0.5モル〜300モルがより好ましく、1モル〜200モルがさらに好ましく、5モル〜100モルが特に好ましい。[B]化合物の含有量を上記範囲とすることで、当該液浸上層膜形成用組成物は、パターン形状、パターン倒れ耐性、ブロッブ欠陥抑制性、ブリッジ欠陥抑制性等の特性が向上する。
【0147】
[A]重合体成分中の構造単位(A)及び[B]化合物の芳香族含窒素複素環の塩基としての25℃、水中における塩基解離定数(pKb)の下限としては、6が好ましく、8がより好ましく、10がさらに好ましく、12が特に好ましい。一方、塩基解離定数の上限としては、20が好ましく、18がより好ましく、16がさらに好ましい。塩基解離定数を上記範囲とすることで、当該液浸用上層膜形成組成物のパターン形状、パターン倒れ耐性、ブロッブ欠陥抑制性、ブリッジ欠陥抑制性等の特性が向上する。
【0148】
当該液浸用上層膜形成用組成物における芳香族含窒素複素環の含有量としては、[A]重合体成分1kgに対して、0.0015モル〜0.3モルが好ましく、0.015モル〜0.15モルがより好ましく、0.03モル〜0.075モルがさらに好ましく、0.075モル〜0.03モルが特に好ましい。芳香族含窒素複素環の含有量を上記範囲とすることで、パターン形状、パターン倒れ耐性、ブロッブ欠陥抑制性、ブリッジ欠陥抑制性等の特性が向上する。
【0149】
<[C]溶媒>
当該液浸用上層膜形成組成物は、通常、[C]溶媒を含有する。[C]溶媒は、当該液浸用上層膜形成組成物をレジスト膜上に塗布する際に、レジスト膜と過度のインターミキシングを生じる等によるリソグラフィ性能の低下がほとんどないものを好適に使用することができる。
【0150】
[C]溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、水等が挙げられる。
【0151】
アルコール系溶媒として、例えば、
ブタノール、ペンタノール等の1価アルコール類;
エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類等が挙げられる。
【0152】
エーテル系溶媒として、例えば、
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの部分アルキルエーテル類;
エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類;
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ヘキシルメチルエーテル、オクチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジシクロペンチルエーテル等の脂肪族エーテル類;
アニソール、フェニルエチルエーテル等の脂肪族−芳香族エーテル類;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテル類等が挙げられる。
【0153】
炭化水素系溶媒として、例えば、
ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の低級炭化水素類;
デカン、ドデセン、ウンデカン等の高級炭化水素類等が挙げられる。
【0154】
上記ケトン系溶媒としては、例えば、
アセトン、メチルエチルケトン等のジアルキルケトン類;
シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の環状ケトン類等が挙げられる。
【0155】
上記エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
【0156】
これらの中でも、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒が好ましく、1価アルコール類、脂肪族エーテル類、環状エーテル類、多価アルコールの部分アルキルエーテル類、多価アルコールのアルキルエーテル類、多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類がより好ましく、炭素数4〜10の1価アルコール、炭素数4〜10のアルキル鎖を有する脂肪族エーテル類がさらに好ましく、4−メチル−2−ペンタノール、ジイソアミルエーテルが特に好ましい。エーテル系溶媒は、[C]溶媒に含まれることで、当該液浸用上層膜形成組成物の粘度を低減させ、塗布量を効果的に低減させ、コストの低減を図ることができることから好ましい。
【0157】
<その他の任意成分>
当該液浸用上層膜形成組成物は、[A]重合体、[B]化合物及び[C]溶媒以外にその他の任意成分を含有してもよい。上記その他の任意成分としては、例えば、界面活性剤等が挙げられる。
【0158】
上記界面活性剤としては、例えば、BM−1000、BM−1100(以上、BMケミー製)、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183(以上、大日本インキ化学工業製)等の市販のフッ素系界面活性剤等が挙げられる。上記界面活性剤の含有量としては、[A]重合体成分100質量部に対して、5質量部以下が好ましい。
【0159】
<液浸用上層膜形成組成物の調製方法>
当該液浸用上層膜形成組成物は、例えば、[A]重合体成分及び[B]化合物、必要に応じて任意成分を、[C]溶媒と混合し、溶解させることにより調製することができる。液浸用上層膜形成組成物の固形分濃度としては、通常、0.5質量%〜30質量%であり、1質量%〜20質量%が好ましい。
【0160】
<レジストパターンの形成方法>
当該レジストパターンの形成方法は、
(1)フォトレジスト組成物を基板上に塗布し、レジスト膜を形成する工程、
(2)当該液浸用上層膜形成組成物を上記レジスト膜上に塗布し、上層膜を形成する工程、
(3)上記上層膜上に液浸露光用液体を配置し、この液浸露光用液体を介して上記レジスト膜を液浸露光する工程、及び
(4)上記液浸露光されたレジスト膜を現像する工程
を有する。
【0161】
当該レジストパターン形成方法によれば、当該液浸用上層膜形成組成物を用いているので、パターン形状に優れ、また、パターン倒れ耐性が向上し、かつブロッブ欠陥及びブリッジ欠陥の少ないレジストパターンを形成することができる。以下、各工程について説明する。
【0162】
[(1)工程]
(1)工程では、フォトレジスト組成物を基板上に塗布し、レジスト膜を形成する。上記基板としては、通常、シリコンウエハ、アルミニウムで被覆したシリコンウエハ等が用いられる。また、レジスト膜の特性を最大限に引き出すため、あらかじめ、基板の表面に、例えば、特公平6−12452号公報等に記載されている有機系又は無機系の反射防止膜を形成しておくことも好ましい。
【0163】
上記フォトレジスト組成物としては、その種類は特に限定されず、従来、レジスト膜を形成するために用いられているフォトレジスト組成物の中から、レジストの使用目的に応じて適宜選択して使用することができる。その中でも、酸解離性基を含む重合体(P)と酸発生剤(Q)とを含有するフォトレジスト組成物、特にポジ型のフォトレジスト組成物が好ましい。
【0164】
上記重合体(P)において、酸解離性基を含む構造単位の含有割合としては、重合体(P)を構成する全構造単位に対して、30〜60モル%が好ましい。上記酸解離性基を含む構造単位の含有割合が30モル%未満であると、レジストとしての解像度が劣化するおそれがある。一方、60モル%を超えると、上層膜剥離後のレジスト膜厚が極度に減少するおそれがある。上記重合体(P)としては、例えば、下記構造単位(U−1)、下記構造単位(U−2)及び下記構造単位(U−3)を有する重合体、下記構造単位(U−1)、下記構造単位(U−2)及び下記構造単位(U−4)を有する重合体、下記構造単位(U−1)、下記構造単位(U−3)及び下記構造単位(U−5)を有する重合体等が挙げられる。
【0165】
【化22】

【0166】
上記酸発生剤(Q)は、放射線照射(露光)により酸発生剤から酸を発生させ、その発生した酸の作用によって、上記重合体の酸性基(例えば、カルボキシル基)を保護していた酸解離性基を解離させて、酸性基を発生するものである。
【0167】
上記酸発生剤(Q)としては、例えば、トリフェニルスルホニウム・ノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニル・ジフェニルスルホニウム・ノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム・ノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2’−イル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウム2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2’−イル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2’−イル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。
【0168】
上記フォトレジスト組成物としては、塗布容易性の観点から、全固形分濃度として、0.2質量%〜20質量%が好ましい。また、上記フォトレジスト組成物は、通常、孔径30nm程度のフィルターでろ過したものが用いられる。
【0169】
フォトレジスト組成物の塗布方法としては、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の従来公知の塗布方法等が挙げられる。基板上に塗布した後、溶媒を揮発させるために、プレベーク(PB)を行ってもよい。
【0170】
[(2)工程]
(2)工程では、当該液浸用上層膜形成組成物を上記レジスト膜上に塗布し、上層膜を形成する。当該液浸用上層膜形成組成物の塗布方法としては、(1)工程におけるフォトレジスト組成物の塗布方法と同様の方法が挙げられる。本工程は、当該液浸用上層膜形成組成物を塗布した後、プレベーク(PB)を行うことが好ましい。このようにレジスト膜上に液浸用上層膜を形成することによって、液浸液とレジスト膜とが直接接触しなくなるため、液浸液がレジスト膜に浸透することに起因してレジスト膜のリソグラフィ性能が低下したり、レジスト膜から液浸液に溶出した成分によって投影露光装置のレンズが汚染されたりすることが効果的に抑制される。
【0171】
上層膜の厚さは、λ/4m(但し、λ:放射線の波長、m:保護膜の屈折率)の奇数倍にできる限り近づけることが好ましい。このようにすることで、レジスト膜の上側界面における反射抑制効果を大きくすることができる。
【0172】
[(3)工程]
(3)工程では、上記上層膜上に液浸露光用液体を配置し、この液浸露光用液体を介して上記レジスト膜を液浸露光する。
【0173】
液浸媒体としては、通常、空気より屈折率の高い液体を使用する。液浸媒体としては、水を用いることが好ましく、純水を用いることがさらに好ましい。なお必要に応じて液浸液のpHを調整してもよい。この液浸媒体を介在させた状態で、すなわち、露光装置のレンズと液浸用上層膜との間に液浸媒体を満たした状態で、露光装置から露光光を照射し、所定のパターンを有するマスクを介して液浸用上層膜及びフォトレジスト膜を露光する。
【0174】
この液浸露光に用いる露光光としては、フォトレジスト膜や上層膜の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、可視光線;g線、i線等の紫外線;エキシマレーザ等の遠紫外線;シンクロトロン放射線等のX線;電子線等の荷電粒子線等が挙げられる。これらの中でも、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)が好ましく、ArFエキシマレーザ光がより好ましい。また、露光光の照射条件、例えば露光量等は、フォトレジスト組成物や液浸用上層膜形成組成物の配合組成、これらに含まれる添加剤の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0175】
上記液浸露光後、得られるレジストパターンの解像度、パターン形状、現像性等を向上させるために、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行うことが好ましい。PEB温度としては、使用されるフォトレジスト組成物や液浸用上層膜形成組成物の種類等によって適宜設定することができるが、通常、30℃〜200℃であり、50℃〜150℃が好ましい。PEB時間としては、通常、5秒〜600秒であり、10秒〜300秒が好ましい。
【0176】
[(4)工程]
(4)工程では、上記液浸露光されたレジスト膜を現像する。これにより、所望のレジストパターンを得ることができる。当該レジストパターン形成方法によれば、当該液浸用上層膜形成組成物によって液浸用上層膜を形成しているため、現像中には現像液によって、又は現像後に洗浄を行う場合には洗浄中に洗浄液によって、液浸用上層膜を容易に除去することができる。すなわち、液浸用上層膜を除去するために、別途の剥離工程を必要としない。
【0177】
現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類(例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなど)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノナン等のアルカリ性化合物を少なくとも1種溶解したアルカリ性水溶液が好ましい。この中でも、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類の水溶液がより好ましい。
【0178】
現像液には、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類等の水溶性有機溶媒や、界面活性剤を適量添加することもできる。なお、アルカリ性水溶液を用いて現像した場合には、現像後に水洗することが好ましく、水洗後、乾燥してもよい。
【実施例】
【0179】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0180】
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
重合体のMw及びMnは、高速GPC装置(HLC−8120、東ソー製)にGPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本、東ソー製)を用い、流量1.0mL/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするGPCにより測定した。
【0181】
13C−NMR分析]
重合体の13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(JNM−270、日本電子製、270MHz)を用い、測定溶媒としてCDClを用いて、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準として測定した。
【0182】
<[A]重合体成分を構成する重合体の合成>
重合体の合成に用いた単量体を以下に示す。
【0183】
【化23】

【0184】
なお、単量体(M−1)及び(M−2)は構造単位(A)を、(M−3)及び(M−4)は構造単位(III)を、(M−5)は構造単位(IV)を、(M−6)及び(M−7)は構造単位(VI)を、(M−8)及び(M−9)は構造単位(II)を、(M−10)及び(M−11)は構造単位(I)をそれぞれ与える。
【0185】
[合成例1]
上記単量体(M−1)3.6g(10モル%)、(M−8)1.7g(4モル%)、(M−10)14.8g(86モル%)及び重合開始剤としての2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオン酸メチル)2.3gをイソプロパノール20gに溶解させた単量体溶液を調製した。一方、温度計及び滴下漏斗を備えた200mLの三口フラスコにイソプロパノール16gを投入し、30分間窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら、80℃になるように加熱し、滴下漏斗を用いて、上記調製した単量体溶液を3時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに3時間反応を続けた。反応終了後、重合反応液を30℃以下になるまで冷却した。
【0186】
次いで、得られた重合反応液を58gに濃縮した後、分液漏斗に移した。この分液漏斗にメタノール58g、及びn−ヘキサン232gを投入し、分離精製を実施した。分離後、下層液を回収した。回収した下層液に及びn−ヘキサン232gを投入し、分離精製を実施した。分離後、下層液を回収した。回収した下層液を4−メチル−2−ペンタノールに置換し、重合体(A−1)を含む溶液を得た(収率80%)。この重合体(A−1)は、Mwが5,070であり、Mw/Mn(分子量の分散度)が1.6であった。また、13C−NMR分析の結果、(M−1):(M−8):(M−10)にそれぞれ由来する構造単位の各含有割合は、10.0:4.0:86.0(モル%)であった。
【0187】
[合成例2〜12]
下記表1に示す種類及び使用量の各単量体を用いた以外は、合成例1と同様にして、重合体(A−2)〜(A−12)を合成した。なお、単量体の総使用量は20gとした。表1における「−」は、該当する単量体を用いなかったことを示す。また合成した各重合体のMw、Mw/Mn、各構造単位の含有割合及び収率について下記表1に合わせて示す。
【0188】
【表1】

【0189】
<液浸用上層膜形成組成物の調製>
液浸用上層膜形成組成物の調製に用いた[B]化合物及び[C]溶媒について、以下に示す。
【0190】
[[B]化合物]
各化合物の構造を以下に示す。
B−1:ピロール
B−2:イミダゾール
CB−1:N−(1−アダマンチルメチルカルボニルプロピル)モルホリン
【0191】
【化24】

【0192】
[[C]溶媒]
C−1:4−メチル−2−ペンタノール
C−2:ジイソアミルエーテル
【0193】
[実施例1]
[A]重合体成分としての(A−1)20質量部、(A−5)15質量部及び(A−8)65質量部、並びに[C]溶媒としての(C−1)4,000質量部及び(C−2)1,000質量部を混合し、2時間攪拌した後、孔径200nmのフィルターでろ過することにより、実施例1の液浸用上層膜形成組成物を得た。
【0194】
[実施例2〜12及び比較例1]
下記表2に示す種類及び配合量の各成分を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜12及び比較例1の液浸用上層膜形成組成物を得た。なお、表2中の「−」は該当する成分を用いなかったことを示す。
【0195】
【表2】

【0196】
<フォトレジスト組成物の調製>
レジスト膜形成のためのフォトレジスト組成物を以下の方法により調製した。
【0197】
[[P]フォトレジスト組成物用重合体の合成]
[P]フォトレジスト組成物用重合体の合成に用いた単量体を以下に示す。
【0198】
【化25】

【0199】
[合成例13]
上記化合物(M−12)53.93g(50モル%)、化合物(M−13)35.38g(40モル%)、化合物(M−14)10.69g(10モル%)を2−ブタノン200gに溶解し、さらにジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5.58gを溶解させた単量体溶液を調製した。また、100gの2−ブタノンを投入した500mLの三口フラスコを30分窒素パージした。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合反応溶液を水冷することにより30℃以下に冷却し、2,000gのメタノール中へ投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を2回、400gずつのメタノールを用いてスラリー状にして洗浄した後ろ別し、50℃にて17時間乾燥して、白色粉末の重合体(P−1)を得た(74g、収率74%)。この重合体(P−1)はMwが6,900、Mw/Mn=1.70であった。また、13C−NMR分析の結果、(M−1):(M−2):(M−3)にそれぞれ由来する各構造単位の含有割合は、53.0:37.2:9.8(モル%)であった。
【0200】
<フォトレジスト組成物(α)の調製>
フォトレジスト組成物(α)の調製に用いた[Q]酸発生剤、[R]酸拡散制御剤及び[S]溶媒について以下に示す。
【0201】
[[Q]酸発生剤]
Q−1:トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート
Q−2:1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート
【0202】
[[R]酸拡散制御剤]
R−1:R−(+)−(tert−ブトキシカルボニル)−2−ピペリジンメタノール
【0203】
[[S]溶媒]
S−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
S−2:シクロヘキサノン
S−3:γ−ブチロラクトン
【0204】
[合成例14]
[P]重合体としての(P−1)100質量部、[Q]酸発生剤としての(Q−1)1.5質量部及び(Q−2)6質量部、[R]酸拡散制御剤としての(R−1)0.65質量部を混合し、この混合物に、[S]溶媒としての(S−1)2,900質量部、(S−2)1,250質量部及び(S−3)100質量部を加えて、全固形分濃度を5質量%に調整し、孔径30nmのフィルターでろ過することにより、フォトレジスト組成物(α)を調製した。
【0205】
<評価>
上記実施例及び比較例の液浸用上層膜形成組成物について、以下に示す各種評価を行った。評価結果を下記表3に示す。
【0206】
[組成物安定性]
液浸用上層膜形成組成物の経時的な白濁化の有無について評価した。
液浸用上層膜形成組成物を30分間攪拌した後、目視で白濁の有無を観察した。組成物安定性は、白濁が認められない場合は「○」と、白濁が認められる場合は「×」と評価した。
【0207】
[上層膜除去性]
液浸用上層膜のアルカリ現像液による除去性について評価した。
塗布/現像装置(CLEAN TRACK ACT8、東京エレクトロン製)にて8インチシリコンウエハ上に、液浸用上層膜形成組成物をスピンコートし、90℃で60秒間PBを行い、膜厚90nmの液浸用上層膜を形成した。膜厚は膜厚測定装置(ラムダエースVM90、大日本スクリーン製)を用いて測定した。この液浸用上層膜を上記塗布/現像装置にて、現像液として2.38質量%TMAH水溶液を用いて60秒間パドル現像を行い、振り切りによりスピンドライした後、ウエハ表面を観察した。上層膜除去性は、残渣が観察されない場合は「○」と、残渣が観察された場合は「×」と評価した。
【0208】
[後退接触角]
液浸用上層膜表面における水の後退接触角の値を測定した。
8インチシリコンウエハ上に、液浸用上層膜形成組成物をスピンコートし、ホットプレート上で90℃で60秒間PBを行い、膜厚30nmの液浸用上層膜を形成した。その後接触角計(DSA−10、KRUS製)を用いて、速やかに、室温23℃、湿度45%、常圧の環境下で、以下の手順により後退接触角を測定した。
まず、上記接触角計のウェハステージ位置を調整し、この調整したステージ上に上記ウェハをセットした。次に、針に水を注入し、上記セットしたウェハ上に水滴を形成可能な初期位置に針の位置を微調整した。その後、この針から水を排出させてウェハ上に25μLの水滴を形成し、一旦、この水滴から針を引き抜き、再び初期位置に針を引き下げて水滴内に配置した。続いて、10μL/minの速度で90秒間、針によって水滴を吸引すると同時に接触角を毎秒1回合計90回測定した。このうち、接触角の測定値が安定した時点から20秒間の接触角についての平均値を算出して後退接触角(単位:度(°))とした。後退接触角の測定値を下記表3に示す。
【0209】
[溶出量]
液浸用上層膜を形成したレジスト膜からのレジスト膜成分の溶出量について評価した。
上記塗布/現像装置にてヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理(100℃で60秒間)を行った8インチシリコンウェハ上の中心部に、中央部が直径11.3cmの円形状にくり抜かれたシリコンゴムシート(クレハエラストマー製、厚み1.0mm、1辺30cmの正方形)を乗せた。次いで、シリコンゴム中央部のくり抜き部に10mLホールピペットを用いて超純水10mLを満たした。
一方、上記シリコンウエハとは別に、下層反射防止膜、レジスト被膜及び液浸用上層膜を形成した8インチシリコンウエハを準備し、その8インチシリコンウエハを液浸用上層膜がシリコンゴムシート側に位置するように、すなわち、液浸用上層膜と超純水とを接触させつつ、超純水が漏れないように乗せた。
なお、下層反射防止膜、レジスト被膜及び液浸用上層膜を形成したシリコンウエハは、8インチシリコンウエハ上に、下層反射防止膜用組成物(ARC29A、ブルワー・サイエンス製)を、上記塗布/現像装置を用いてスピンコートして、膜厚77nmの下層反射防止膜を形成し、次いで、この下層反射防止膜上に、フォトレジスト組成物(α)を、上記塗布/現像装置を用いてスピンコートし、115℃で60秒間ベークすることにより膜厚205nmのレジスト膜を形成し、その後、このレジスト膜上に液浸用上層膜形成組成物を塗布して90℃で60秒間PBし膜厚30nmの液浸上層膜を形成することで得た。
【0210】
液浸上層膜を載せた後、その状態のまま10秒間保った。その後、上記別の8インチシリコンウェハを取り除き、超純水をガラス注射器にて回収し、これを分析用サンプルとした。なお、実験終了後の超純水の回収率は95%以上であった。
【0211】
次いで、上記で得られた超純水中の光酸発生剤のアニオン部のピーク強度を、液体クロマトグラフ−質量分析計(LC−MS)(LC部:SERIES1100(AGILENT製)、MS部:Mariner(Perseptive Biosystems,Inc.製))を用いて下記測定条件により測定した。その際、上記フォトレジスト組成物(α)に用いている光酸発生剤の1ppb、10ppb、100ppb水溶液のピーク強度を、下記測定条件で測定して検量線を作成し、この検量線を用いて上記ピーク強度から溶出量を算出した。また、酸拡散制御剤についても同様にして溶出量を測定した。これらの溶出量が5.0×10−12mol/cm以下であった場合に、レジスト組成物溶出の抑制性能が「○」と、5.0×10−12mol/cmよりも大きかった場合に「×」と評価した。
【0212】
(測定条件)
使用カラム:CAPCELL PAK MG(資生堂製)、1本
流量:0.2mL/分
流出溶媒:水/メタノール(3/7)に0.1質量%のギ酸を添加したもの
測定温度:35℃
【0213】
[剥がれ耐性]
液浸用上層膜の基板からの剥がれ難さを評価した。
基板として、HMDS処理をしていない8インチシリコンウェハを用いた。上記基板上に、液浸上層膜形成組成物を上記塗布/現像装置にて、スピンコートした後に90℃で60秒間PBを行い、膜厚30nmの塗膜(液浸用上層膜)を形成した。その後、上記塗布/現像装置にて純水によるリンスを60秒間行い、振り切りによる乾燥を行った。剥がれ耐性は、目視により、リンス後に中心部で液浸用上層膜の剥がれが認められた場合は「×」と、エッジ部でのみ剥がれが認められた場合を「△」と、剥がれが認められない場合を「○」と評価した。
【0214】
[パターン形状]
液浸用上層膜を形成させたレジスト膜からの形成したレジストパターンのパターン形状の良好性を評価した。
8センチシリコンウエハ基板上に、上記塗布/現像装置にて、下層反射防止膜形成組成物(ARC29A、ブルワー・サイエンス製)を塗布して膜厚77nmの下層反射防止膜を形成し、次いで、フォトレジスト組成物(α)をスピンコートした後に、115℃で60秒間PBすることにより膜厚205nmのレジスト膜を形成し、その後、このレジスト膜上に液浸用上層膜形成組成物を塗布し、90℃で60秒間PBを行うことにより膜厚30nmの液浸上層膜を形成した。
次に、形成したレジスト膜を、ArFエキシマレーザ液浸露光装置(S610C、NIKON製)を用いて、線幅90nmのラインアンドスペースパターン(1L/1S)形成用のマスクパターンを介して、露光を行った。次いで、115℃で60秒間PEBを行った後、2.38質量%のTMAH水溶液を現像液として、23℃で60秒間現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、線幅90nmのラインアンドスペースパターン(1L/1S)が形成される露光量を最適露光量とした。
この最適露光量で形成されたレジストパターンの断面形状を、走査型電子顕微鏡(S−4800、日立ハイテクノロジーズ製)で観察した。レジストパターンが矩形の断面形状である場合を「○」と、T−トップ形状、トップラウンド形状、裾引き形状等の矩形以外の形状である場合を「×」と評価した。
【0215】
[パターン倒れ耐性]
液浸用上層膜を形成させたレジスト膜から形成したレジストパターンの倒れ寸法を測定して、パターン倒れ耐性を評価した。
40nmラインアンドスペースパターン(1L/1S)形成用のマスクパターンを用いた露光によりレジストパターンを形成し、40nm1L/1Sのパターンを形成する露光量を最適露光量とした。この最適露光量から1mJの間隔で露光量を変化させながら露光を実施した。各露光量で形成したレジストパターンにつき、測長SEM(CG4000、日立製作所製)を用いてレジストパターンの写真を20枚撮り、1枚も倒れているレジストパターンのない露光量のうち最もパターン線幅が小さいもののパターン線幅をパターン倒れ寸法(nm)とした。このパターン倒れ寸法が、40nm以下の場合を「○」と、40nmを超える場合を「×」と評価した。
【0216】
[ブロッブ欠陥]
液浸用上層膜を形成したレジスト膜を現像して得られるレジストパターンにおけるブロッブ欠陥の発生数を測定した。
塗布/現像装置(CLEAN TRACK ACT12、東京エレクトロン製)を用いて、100℃で60秒間、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を行った8インチシリコンウエハを用意した。この8インチシリコンウエハ上に、フォトレジスト組成物(α)をスピンコートし、ホットプレート上で90℃で60秒間PBを行い、膜厚120nmのレジスト膜を形成した。このレジスト膜上に、液浸用上層膜形成組成物をスピンコートし、90℃で60秒間PBを行って膜厚30nmの液浸用上層膜を形成した。その後、パターンが形成されていない擦りガラスを介して露光を行った。この8インチシリコンウエハをブロッブ欠陥の評価に用いた。
【0217】
ブロッブ欠陥の評価では、まず、評価用の8インチシリコンウエハの液浸用上層膜上に、塗布/現像装置「CLEAN TRACK ACT8」のリンスノズルから超純水を60秒間吐出させ、4,000rpmで15秒間振り切りによりスピンドライを行った。次に、上記「CLEAN TRACK ACT8」のLDノズルによってパドル現像を30秒間行い、液浸用上層膜を除去した。なお、このパドル現像では、現像液として2.38%TMAH水溶液を使用した。現像後、欠陥検査装置(KLA2351、KLAテンコール製)を用いて、ブロッブ欠陥数を測定した。検出されたブロッブ欠陥の数が、1ウエハあたり、200個以下の場合を「○」と、200個を超え500個以下の場合を「△」と、500個を超える場合を「×」と評価した。
【0218】
[ブリッジ欠陥]
液浸用上層膜を形成したレジスト膜を現像して得られるレジストパターンにおけるブリッジ欠陥の発生数を測定した。
12インチシリコンウエハ表面に、下層反射防止膜(ARC66、日産化学製)を塗布/現像装置(Lithius Pro−i、東京エレクトロン製)を使用してスピンコートした後、PBを行うことにより膜厚105nmの塗膜を形成した。次いで、上記「CLEAN TRACK ACT12」を使用してフォトレジスト組成物(α)をスピンコートし、100℃で60秒間PBした後、23℃で30秒間冷却することにより膜厚100nmのフォトレジスト膜を形成した。その後、このレジスト膜上に、液浸用上層膜形成組成物をスピンコートし、90℃で60秒間PBを行って膜厚30nmの液浸用上層膜を形成した。
【0219】
次に、ArF液浸露光装置(S610C、NIKON製)を使用し、NA:1.30、Crosspoleの光学条件にて、45nmライン/90nmピッチのパターン形成用のマスクを介して露光した。次に上記「Lithius Pro−i」のホットプレート上で100℃で60秒間PEBを行い、23℃で30秒冷却した後、現像カップのGPノズルにて、2.38質量%TMAH水溶液を現像液として10秒間パドル現像を行い、超純水でリンスした。この後、2,000rpm、15秒間振り切りでスピンドライすることにより、レジストパターンが形成された基板を得た。このとき、45nmライン/90nmピッチのレジストパターンが形成される露光量を最適露光量とした。この最適露光量におけるレジストパターン形成において、ブリッジ欠陥が認められなかった場合を「○」と、ブリッジ欠陥が認められた場合を「×」と評価した。
【0220】
【表3】

【0221】
表3の結果から、実施例の液浸用上層膜形成組成物によれば、パターン形状に優れ、パターン倒れ耐性が向上し、かつブロッブ欠陥及びブリッジ欠陥の少ないレジストパターンを形成することができることが示された。なお、比較例のアミン化合物を含有する液浸用上層膜形成組成物では、これらの特性のいずれもが悪化することも示された。
【産業上の利用可能性】
【0222】
本発明の液浸用上層膜形成組成物によれば、パターン形状に優れ、パターン倒れ耐性が向上し、かつブロッブ欠陥及びブリッジ欠陥の少ないレジストパターンを形成することができる。従って、当該液浸用上層膜組成物及び当該レジストパターン形成方法は、さらなる微細化が進行する液浸露光法を用いたレジストパターンの形成に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]同一又は異なる重合体中に、カルボキシル基を含む構造単位(I)、スルホ基を含む構造単位(II)、α−トリフルオロメチルアルコール基を含む構造単位(III)、スルホンアミド基を含む構造単位(IV)、及び下記式(i)で表される基を含む構造単位(V)からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有する重合体成分
を含有する液浸用上層膜形成組成物であって、
この液浸用上層膜形成組成物が、[A]重合体成分の同一又は異なる重合体中に、芳香族含窒素複素環を含む構造単位(A)をさらに有するか、又は[B]芳香族含窒素複素環を有する化合物をさらに含有するかの少なくともいずれか一方であることを特徴とする液浸用上層膜形成組成物。
【化1】

(式(i)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、1価の脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、アラルキル基又はアリール基である。上記アルキル基、脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、アラルキル基及びアリール基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは、−C(=O)−R、−S(=O)−R、−R−CN又は−R−NOである。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、1価の脂環式炭化水素基、アルコキシ基、シアノ基、シアノメチル基、アラルキル基又はアリール基である。但し、R又はRとRとが互いに結合して環構造を形成していてもよい。R及びRは、それぞれ独立して、単結合又は炭素数1〜5のアルカンジイル基である。)
【請求項2】
上記芳香族含窒素複素環の含有量が、[A]重合体成分1kgに対して、0.0015モル以上0.3モル以下である請求項1に記載の液浸用上層膜形成組成物。
【請求項3】
(1)フォトレジスト組成物を基板上に塗布し、レジスト膜を形成する工程、
(2)請求項1又は請求項2に記載の液浸用上層膜形成組成物を上記レジスト膜上に塗布し、上層膜を形成する工程、
(3)上記上層膜上に液浸露光用液体を配置し、この液浸露光用液体を介して上記レジスト膜を液浸露光する工程、及び
(4)上記液浸露光されたレジスト膜を現像する工程
を有するレジストパターン形成方法。

【公開番号】特開2013−80018(P2013−80018A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218731(P2011−218731)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】