説明

液滴の分離方法及び検査方法

【課題】簡便かつ短時間で、液滴の性質に応じて液滴を分離することができる、液滴の分離方法及び簡便かつ短時間で、液滴が所定の性質を有しているか否かや、溶質の濃度等を検査することができる、液滴の検査方法を提供すること。
【解決手段】液滴の転落角が異なる複数の領域を有する斜面上を液滴に転落させると、転落角が異なる領域同士の境界において液滴の転落方向が変わり、その結果、液滴が重力に従って斜面内を真下に向かって転落した場合とは異なる位置に到達し、かつ、その到達点が、液滴の大きさや溶質の濃度等の性質に依存して変化する。この現象を利用して、液滴をその性質に基づいて分離する。また、この現象を利用して、液滴が所定の性質を有しているか否かを検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴の分離方法及び検査方法並びにそれらに用いられる器具に関する。
【背景技術】
【0002】
液体成分の分離技術は様々な学術分野や製造業分野で必要とされており、これまで多くの手法が開発されている。中でもクロマトグラフのように細孔で形成されるカラム内を液体試料が透過する過程での基材との親和性の違いを利用するものが最も一般的な技術であり、これに外部から電界や磁場、あるいは遠心力などを利用するものが考案されている。このような方法は条件を適切に選ぶことで優れた分離効率を挙げることができるが、一方でカラムを通過するのに一定の時間がかかるため一般に効率が低く大量処理が行いにくい、分離するものによりカラム寿命が極端に短くなるため多くのカラムを必要とする、カラムコストが高い、といった問題点がある。
【0003】
一方、固体表面の濡れ制御は物理と化学の境界に位置する技術課題であり、その応用範囲はあらゆる工学分野に及ぶ最も基礎的かつ重要な研究領域である。従来、固体表面の濡れはヤングの式を基にして接触角の測定等から得られる濡れ特性と固体表面の組成や構造との関係が理論・実験両面から検討されてきた。しかしながら近年各種の工学分野では液滴の除去性、具体的には転落加速度の重要性が認識され始めている。しかしながらこれまでの研究は、ほとんどが表面での転落加速度の実測値と物性との対応付けに終始しており(非特許文献1〜4)、動的濡れ性の制御を液体の分離に応用した例は無い。
【0004】
【非特許文献1】Miwa, M., Nakajima, A., Fujishima, A., Hashimoto, K. and Watanabe, T., Langmur. Vol.16, pp5754-5760 (2000)
【非特許文献2】Nakajima, A., Suzuki, S., Kameshima, Y., Yoshida, N., Watanabe, T., and Okada, K., Chem. Lett., 32[12], 1148-1149 (2003)
【非特許文献3】Yoshida, N., Abe, Y., Shigeta, H., Takami, K., Osaki, K, Watanabe, T., Hashimoto, K., and Nakajima, A., J. Sol-Gel Sci. Tech., 31, 195-199 (2004)
【非特許文献4】Suzuki, S., Kameshima, Y., Nakajima, A., and Okada, K., Surf. Sci., Vol 557/1-3 pp L163-L168 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、簡便かつ短時間で、液滴の性質に応じて液滴を分離することができる、液滴の分離方法を提供することである。また、本発明の目的は、簡便かつ短時間で、液滴が所定の性質を有しているか否かや、溶質の濃度等を検査することができる、液滴の検査方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、これらの方法に用いられる器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明らは、鋭意研究の結果、液滴の転落角が異なる複数の領域を有する斜面上を液滴に転落させると、転落角が異なる領域同士の境界において液滴の転落方向が変わり、その結果、液滴が重力に従って斜面内を真下に向かって転落した場合とは異なる位置に到達し、かつ、その到達点が、液滴の大きさや溶質の濃度等の性質に依存して変化することを見出した。そして、この現象を利用して、液滴をその性質に基づいて分離することが可能であることに想到した。さらに、この現象を利用して、液滴が所定の性質を有しているか否かを検査することも可能であることに想到し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、斜面上に液滴を点着し、該液滴に前記斜面上を転落させて斜面の下に到達させ、液滴の性質に応じて到達位置が異なることを利用して液滴を分離する方法であって、前記斜面の表面は、前記液滴の転落角が異なる少なくとも2個の領域を有し、前記点着点から前記斜面内直下方向に斜面下まで延びる直線が、転落角の異なる前記少なくとも2個の領域を通過するように該少なくとも2個の領域が配置される、液滴の分離方法を提供する。また、本発明は、斜面上に一定量の液滴を点着し、斜面上を転落させて斜面の下に到達させ、液滴の性質に応じて到達位置が異なることを利用して液滴を検査する方法であって、前記斜面の表面は、前記液滴の転落角が異なる少なくとも2個の領域を有し、前記点着点から前記斜面内直下方向に斜面下まで延びる直線が、転落角の異なる前記少なくとも2個の領域を通過するように該少なくとも2個の領域が配置される、液滴の検査方法を提供する。さらに、本発明は、液滴の転落角が異なる少なくとも2個の領域を有する板を具備し、上記本発明の分離方法を行なうために用いられる液滴の分離器具を提供する。さらに、本発明は、液滴の転落角が異なる少なくとも2個の領域を有する板を具備し、上記本発明の検査方法を行なうために用いられる液滴の検査器具を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、簡便かつ短時間で、液滴の性質に応じて液滴を分離することができる、液滴の分離方法が提供された。本発明の分離方法は、斜面上に液滴を点着し、斜面下において、各位置ごとに液滴を回収するだけで極めて簡便に実施することができ、かつ、液滴の点着から回収までに要する時間は数秒以内であり、極めて短時間に実施することができる。
【0009】
また、本発明により、簡便かつ短時間で、液滴が所定の性質を有しているか否かや、溶質の濃度等を検査することができる、液滴の検査方法が提供された。本発明の検査方法は、斜面上に液滴を点着し、斜面下における液滴の転落位置を測定するだけで極めて簡便に実施することができ、かつ、液滴の点着から回収までに要する時間は数秒以内であり、極めて短時間に実施することができる。この検査方法により、飲料の品質管理や、工場排液の管理等を極めて簡便かつ短時間に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
上記の通り、本発明の液滴の分離方法は、斜面上に液滴を点着し、該液滴に前記斜面上を転落させて斜面の下に到達させ、液滴の性質に応じて到達位置が異なることを利用して液滴を分離する方法である。該方法に用いられる斜面は、前記液滴の転落角が異なる少なくとも2個の領域を有する。該少なくとも2個の領域は、前記点着点から前記斜面内直下方向に斜面下まで延びる直線が、転落角の異なる前記少なくとも2個の領域を通過するように該少なくとも2個の領域が配置されている。
【0011】
転落角は、平坦な面上に液滴を点着し、面を傾けていったときに液滴が転落し始める時の傾斜角である。転落角が異なることは、撥液性が異なることを意味する。液滴の転落時に、斜面の表面に液滴が付着する(斜面の表面が濡れる)と、回収される液の量が減少し、かつ、次の液滴の分離を行なう前に斜面の表面を洗浄、乾燥させる必要が生じるため、斜面の表面は液滴に対して撥液性であることが好ましく、各領域の転落角はいずれも20度以下であることが好ましい。また、分離能を大きくするために、各領域の転落角の差は3度以上であることが好ましく、5度以上であることがさらに好ましい。また、斜面の傾斜角は、転落角の最も大きな領域の転落角よりも大きな角度であればよいが、あまりに大きいと分離能が低下するので、通常、25度〜45度程度が好ましい。
【0012】
また、分離に供される液滴は、水系の場合が多いので、各領域は、転落角が異なる少なくとも2種類の撥水剤でそれぞれ処理することにより形成することが好ましい。撥水剤を用いた表面処理により前記各領域を形成する場合には、各領域を任意のパターンに形成することができるので有利である。撥水剤としては、フッ素を含有したものが、撥水効果が大きいので好ましく、特にフルオロアルキルシラン類(フッ素数の多いものはパーフルオロアルキルシラン類と呼ばれる)が好ましい。フルオロアルキルシラン類中のアルキル基の長さやアルキル基中の置換フッ素の数を変えることにより撥水性を変えることができる。フルオロアルキルシラン類としては、シラン(SiH4)の1つの水素を長鎖アルキル基で置換し、かつ、該長鎖アルキル中の複数の水素をフッ素で置換し、シランの残りの3個の水素はメトキシ基のような低級アルコキシル基又は塩素のようなハロゲンで置換されたものが多い。このようなフルオロアルキルシラン系の撥水剤は種々市販されているので、市販品を好ましく用いることができる。この他、パーフルオロアルキルカルボン酸系、パーフルオロアルキルスルホン酸系、パーフルオロアルキルリン酸系等の表面処理剤、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、PTFE に代表される各種フッ素系樹脂も適用が可能である。またフッ素を含まない、オクタデシルトリメトキシシラン(ODS)のようなアルキル系の撥水剤も利用可能である。これらの撥水剤も種々市販されているので、市販品を利用することができる。撥水処理は浸漬法が効率やコストの点で最も優れるが、原料によっては蒸着法も可能である。
【0013】
上記の通り、液滴の点着点から前記斜面内直下方向に斜面下まで延びる直線が、転落角の異なる前記少なくとも2個の領域を通過するように該少なくとも2個の領域が配置されている。ここで、「斜面内直下方向」とは、斜面の表面が均一である場合に、液滴が重力に従って転落する進路の方向であり、斜面が平坦な平面である場合には、最短距離で斜面下に到達する進路の方向である。
【0014】
分離能を大きくするために、本発明の方法では、前記直線が、転落角の異なる前記領域の境界を複数回通過することが好ましく、少なくとも4回通過することがさらに好ましい。
【0015】
転落角が異なる前記少なくとも2個の領域は、転落角が異なる3種類以上の領域であってもよいが、該領域は、転落角が異なる2種類の領域から成り、前記直線が該2種類の領域の境界を複数回通過するように該2種類の領域が交互に配置することが、使用する撥水剤の種類数を少なくし、斜面の形成がより簡便であり、一方、それでいて十分な分離能が得られるので好ましい。
【0016】
以下、本発明の分離方法の1例を図面に基づきより具体的に説明する。図1及び図2は、本発明の方法の原理を説明するための模式図である。図2に示すように、この例では、2種類の撥水剤でそれぞれ撥水処理して形成した第1の撥水領域16(以下、単に「領域」と呼ぶことがある)と第2の撥水領域18(以下、単に「領域」と呼ぶことがある)が交互に縞状に配置されている。図1では、明瞭性のために2種類の領域は図示されていない。図1中、参照番号10が斜面、12が液滴、14が液滴を滴下するためのノズルの先端である。斜面10は、傾斜角が角度αの斜面であり、図1中、「g sinα方向」と記載されている方向及び図2中、真下に向いた白抜きの矢印の方向が、「斜面内直下方向」である。図1中、「回転ライン方向」は、図2に示す縞模様のパターンを斜面内直下方向に沿って形成した場合から、角度Φだけ斜面内で回転させた方向を意味し、図2には回転角Φが35度の場合が示されている。なお、分離能が最も大きくなる最適の回転角Φは、液滴の性質や傾斜角により異なるので、回転角Φを変えて予備実験を行なって最適の回転角Φを見つけた後、分離を実施することが好ましい。
【0017】
図2によく示されるように、斜面内直下方向(真下に向いた白抜きの矢印の方向)に斜面下まで延びる直線が、転落角の異なる2つの領域である領域16及び領域18を通過するように領域16及び領域18が配置されている。また、この直線が、領域16と領域18の境界を複数回(図2の模式図では4回)通過するように領域16及び領域18が配置されている。
【0018】
本発明の方法では、斜面10の上部の一点に液滴を点着し、液滴に前記斜面上を転落させて斜面の下に到達させる。この場合、液滴は領域16と領域18の各境界で進路が変わり、図2中の直角に折れ曲がった複数の白抜き矢印で示すように、ジグザグに転落していく。このため、液滴は、斜面内真下とは異なる斜面下の位置に到達する。そして、領域16と領域18の各境界における進路変更の程度は、液滴の性質に依存して異なるので、斜面下での到達位置が液滴の性質に依存して異なる。従って、斜面下に転落してきた液滴を、各位置ごとに回収することにより、液滴の性質に基づき液滴を分離することができる。なお、ここで、「液滴を分離する」とは、言うまでもなく、単一の液滴を分離する意味ではなく、複数の液滴を上記の方法に供することにより、各液滴をその性質に基づいて分離するという意味である。
【0019】
ここで、液滴の性質としては、液滴のサイズ、液滴を構成する溶媒の種類、及び液滴中の1又は2以上の溶質の種類や濃度、液滴の温度及び液滴の表面張力等を挙げることができる。図1の斜面下には、異なる大きさの液滴20が模式的に描かれており、大きな液滴ほど斜面内真下方向に近い方向に転落することを示している。
【0020】
点着する液滴のサイズを一定にすれば、液滴のサイズ以外の性質、すなわち、液滴を構成する溶媒の種類、及び液滴中の1又は2以上の溶質の濃度等により液滴を分離することができる。さらに溶媒が同一の場合(例えば水溶液の場合)には、溶質の種類や濃度に基づいて液滴を分離することができる。なお、点着する液滴のサイズは、特に限定されないが、通常、5mgから45mg程度、好ましくは8mgから35mg程度である。
【0021】
斜面下における液滴の回収は、例えば、斜面下の水平方向の数mmごとに行なうことができ、それによって、性質の異なる液滴を、分離(分画)することができる。
【0022】
なお、転落角が異なる領域のパターンは、図2に示すような単純な等幅の縞模様に限定されるものではなく、種々のパターンのものを採用することができる。これらの例を図3から図5に示す。図3に示すパターンは、図2と同様な縞模様であるが、斜面の下側に行くほど縞の幅が大きくなっている。図4に示すパターンは、点着位置から放射状に各領域を形成したものである。図5に示すパターンは、一方の領域を細長い直角三角形とし、この直角三角形を斜面方向に複数配置し、他方の領域を背景としたものである。なお、パターンは、要するに、点着点から前記斜面内直下方向に斜面下まで延びる直線が、転落角の異なる前記少なくとも2個の領域を通過するように該少なくとも2個の領域が配置されていればよく、好ましくは、該直線が、各領域の境界を複数回通過するように配置されていればよく、上記したパターンやそれらに類似するパターンに限定されるものではない。なお、各種パターンの場合も、上記した等幅縞模様の場合と同様、最適な回転角Φを予備実験により予め見つけた後、分離を行なうことが好ましい。
【0023】
本発明の分離方法によれば、それぞれ性質の異なる液滴を、その性質に基づいて分離し、回収することができる。従って、複数種類の異なる液体試料を、性質の同じもの同士でまとめることや、不均一な組成の単一の液体(例えば、溶質の濃度に勾配が生じているような液体)を、溶質の濃度等に基づいて分画することができる。
【0024】
上記した分離方法と同様の原理を、液滴の検査に適用することができる。すなわち、斜面に点着する液滴の量を一定にすれば、液滴の到達位置は、液滴の組成に基づいて変化するので、液滴の到達位置を測定することにより、その液滴が所定の組成を有しているか否かを検査することができる。例えば、飲料の品質検査において、ある溶質(例えば、酒類におけるアルコール等)が所定量含まれているか否かを上記した方法により検査することができる。同様に、工場からの排液中の有害物質の濃度が、所定値以下になっているか否かを検査することができる。さらには、溶媒が同じで、1つの溶質の濃度だけが変化することがわかっている場合には、上記方法により溶質の濃度を検査する(すなわち濃度を測定する)ことも可能である。これは、例えば、濃度既知の標準液を複数作製し、それぞれについて到達位置を調べ、濃度と到達位置の関係を検量線に描いておき、濃度未知の試料液滴を点着した場合に、その到達位置を上記検量線にあてはめることにより、未知の試料中の前記溶質の濃度を測定することが可能である。なお、本発明の検査方法は、上記した本発明の分離方法と同一の原理により行なうものであるので、上記した本発明の分離方法についての説明事項は、本発明の検査方法においてもそのまま当てはまる(ただし、検査方法では、点着される液滴の量は一定であり、斜面下において液滴を回収する必要はない)。
【0025】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
パーフルオロアルキルシラン(FAS-17)(水の転落角が15度)を150℃、1時間の条件でCVDでガラス表面にコーティングし、ラインとスペースの幅が各500μmのライン・アンド・スペースのマスクを当ててXe真空紫外光を照射した。得られた表面をトルエンとアセトンで洗浄し、すぐにオクタデシルトリメトキシシラン(ODS)(水の転落角が9度)を同じ条件でCVD処理を行った。この面を35度に傾斜させ(図1中の角度α)、回転角度(図1中の角度Φ)を変えて様々な大きさの水滴を落とす実験を行った。その結果、35度回転した面において、水滴が転落する際、後退接触角側(固体との後ろ端点)で横方向にジグザグに移動する挙動が見られ(図2)、30mgの水滴と25mgの水滴とでは、点着位置からの面内直下の位置までの距離が80mmの時、8mm横にずれていた。
【0027】
比較例1
パーフルオロアルキルシラン、又はオクタデシルトリメトキシシラン(ODS)だけを同様にコーティングした斜面上で、実施例1と同じ操作を行った。その結果、各水滴は常に同じ場所に着液し、水滴のサイズに基づく分離は行なわれなかった。
【実施例2】
【0028】
実施例1と同じ表面に対し、水とジオキサンの混合溶液による実験を行った。水10mlに対し、ジオキサンを0.5ml〜5ml添加した混合溶液を調整し、液適量12μlで転落実験を行った。その結果、ジオキサンの濃度により液滴の転落経路が異なり、液中のジオキサン濃度の違いによる液滴の分離が可能であった。すなわち、ジオキサンの濃度が高いほど、真下からより大きく離れた位置に着液した。
【0029】
比較例2
パーフルオロアルキルシラン、又はオクタデシルトリメトキシシラン(ODS)だけを同様にコーティングした斜面を用い、実施例2と同じ操作を行った。その結果、液滴の量が同じ場合、各液滴は常に同じ場所に着液し、ジオキサン濃度に基づく分離は行なわれなかった。
【実施例3】
【0030】
実施例1と同様な方法により、日本酒、芋焼酎、泡盛及びウイスキーを用いて実験した。ただし回転角Φは15°にした。結果を図6に示す。図6に示すように、アルコール濃度の高い芋焼酎とウィスキーでは、真下から大きく離れた位置に着液し、次に泡盛、次に日本酒の順で、真下からの距離が離れた位置に着液した。これにより、本発明の方法により、飲料の検査(アルコール濃度等の検査)が可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の方法の原理を説明するための模式図である。
【図2】実施例で用いた斜面を模式的に示す図である。
【図3】本発明の方法に用いる斜面上の、転落角の異なる2種類の領域の配置パターンの1例を示す図である。
【図4】本発明の方法に用いる斜面上の、転落角の異なる2種類の領域の配置パターンの他の1例を示す図である。
【図5】本発明の方法に用いる斜面上の、転落角の異なる2種類の領域の配置パターンのさらに他の1例を示す図である。
【図6】実施例において行った、本発明の方法による酒類の液滴の転落の様子を示す連続写真である。
【符号の説明】
【0032】
10 斜面
12 液滴
14 ノズル先端
16 第1の撥水領域
18 第2の撥水領域
20 液滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜面上に液滴を点着し、該液滴に前記斜面上を転落させて斜面の下に到達させ、液滴の性質に応じて到達位置が異なることを利用して液滴を分離する方法であって、前記斜面の表面は、前記液滴の転落角が異なる少なくとも2個の領域を有し、前記点着点から前記斜面内直下方向に斜面下まで延びる直線が、転落角の異なる前記少なくとも2個の領域を通過するように該少なくとも2個の領域が配置され、前記斜面下において各位置ごとに前記液滴を回収する、液滴の分離方法。
【請求項2】
前記直線が、転落角の異なる前記領域の境界を複数回通過する請求項1記載の方法。
【請求項3】
転落角が異なる前記少なくとも2個の領域は、転落角が異なる2種類の領域から成り、前記直線が該2種類の領域の境界を複数回通過するように該2種類の領域が交互に配置されている請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記直線が、転落角の異なる領域の境界を少なくとも4回通過する請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも2個の領域は、前記斜面の表面を、転落角が異なる少なくとも2種類の撥水剤でそれぞれ処理することにより形成されたものである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
一定量の液滴が点着される請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
斜面上に一定量の液滴を点着し、斜面上を転落させて斜面の下に到達させ、液滴の性質に応じて到達位置が異なることを利用して液滴を検査する方法であって、前記斜面の表面は、前記液滴の転落角が異なる少なくとも2個の領域を有し、前記点着点から前記斜面内直下方向に斜面下まで延びる直線が、転落角の異なる前記少なくとも2個の領域を通過するように該少なくとも2個の領域が配置される、液滴の検査方法。
【請求項8】
前記直線が、転落角の異なる前記領域の境界を複数回通過する請求項7記載の方法。
【請求項9】
転落角が異なる前記少なくとも2個の領域は、転落角が異なる2種類の領域から成り、前記直線が該2種類の領域の境界を複数回通過するように該2種類の領域が交互に配置されている請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記直線が、転落角の異なる前記領域の境界を少なくとも4回通過する請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも2個の領域は、前記斜面の表面を、転落角が異なる少なくとも2種類の撥水剤でそれぞれ処理することにより形成されたものである請求項7ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記検査方法は、前記液滴中の溶質の濃度が所定の範囲内にあるか否かを調べるためのものである請求項7ないし11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
液滴の転落角が異なる少なくとも2個の領域を有する板を具備し、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法を行なうために用いられる液滴の分離器具。
【請求項14】
液滴の転落角が異なる少なくとも2個の領域を有する板を具備し、請求項7ないし12のいずれか1項に記載の方法を行なうために用いられる液滴の検査器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−232449(P2007−232449A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51982(P2006−51982)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(591243103)財団法人神奈川科学技術アカデミー (271)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)