説明

液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法および液滴吐出装置

【課題】振動手段の制御波形の設計を容易に行うことができる振動板を備える信頼性の高い液滴吐出ヘッド、かかる液滴吐出ヘッドを製造する液滴吐出ヘッドの製造方法、およびかかる液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置を提供すること。
【解決手段】インクジェット式記録ヘッド1は、基板20と、ノズルプレート10と、振動板30と、圧電素子(振動手段)50とを有し、振動板30は、圧電素子50の変位面が固定される島状をなす島部31と、この島部31の外周部に位置する、島部31よりも厚さの薄い薄膜部33とを有しており、これら島部31と薄膜部33とが同一の構成材料により一体的に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法および液滴吐出装置に関するも
のである。
【背景技術】
【0002】
例えば、インクジェットプリンタのような液滴吐出装置には、液滴を吐出するための液
滴吐出ヘッドが備えられている。このような液滴吐出ヘッドとしては、例えば、インクを
液滴として吐出するノズルに連通し、インクを収容するインク室(キャビティー)と、こ
のインク室の壁面を変形させる駆動用の圧電素子(振動手段)とを備えるものが知られて
いる。
【0003】
かかる液滴吐出ヘッドにあっては、駆動用の圧電素子を伸縮させることにより、インク
室の一部(振動板)を変位させる。これにより、インク室の容積を変化させて、ノズルか
らインク液滴が吐出される。
ところで、この液滴吐出ヘッドは、ノズルが形成されたノズルプレートと、インク室が
形成された基板と、インク室の容積を変化させる振動板と、歪みにより振動板を振動させ
る圧電素子とを有しており、これらを接合することによって組み立てられている。
【0004】
また、振動板は、通常、圧電素子の歪みにより振動する振動フィルムと、圧電素子の歪
みを振動フィルムに伝播する支持板とを有しており、これら同士を互いに接合することに
よって組み立てられ、さらに、支持板が有する島状に形成された島部に、圧電素子の変位
面を固定することで振動フィルムが振動するようになっている(例えば、特許文献1等参
照。)。
【0005】
そして、このような振動フィルムと支持板とを有する振動板の形成は、通常、振動フィ
ルムと支持板との間に、各種接着剤で構成される接着層を設けることにより行われる。
そのため、圧電素子の制御波形は、振動フィルムおよび支持板の構成材料や厚さ、さら
には、接着剤の種類および接着層の厚さ等に応じて、適切な波形に設計する必要があるた
め、その設計に時間と手間を要するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−67305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、振動手段の制御波形の設計を容易に行うことができる振動板を備える
信頼性の高い液滴吐出ヘッド、かかる液滴吐出ヘッドを製造する液滴吐出ヘッドの製造方
法、およびかかる液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液滴吐出ヘッドは、吐出液を貯留する吐出液貯留室が形成された基板と、
前記吐出液貯留室を覆うように前記基板の一方の面に設けられ、前記吐出液を液滴とし
て吐出するノズル孔を備えるノズルプレートと、
前記吐出液貯留室を覆うように前記基板の他方の面に設けられた振動板と、
歪みにより前記振動板を振動させる振動手段とを有し、
前記振動板は、前記振動手段の変位面が固定される島状をなす島部と、該島部の外周部
に位置する、前記島部よりも厚さの薄い薄膜部とを有しており、
前記島部と、前記薄膜部とが同一の構成材料により一体的に形成されていることを特徴
とする。
これにより、振動手段の制御波形の設計を容易に行うことができる振動板とすることが
できるため、信頼性の高い液滴吐出ヘッドを確実に得ることができる。
【0009】
本発明の液滴吐出ヘッドでは、前記振動板は、前記吐出液貯留室側の面が平坦面で構成
され、前記振動手段側の面が凹凸面で構成されていることが好ましい。
これにより、振動手段の制御波形の設計を容易に行うことができる振動板とすることが
できるため、信頼性の高い液滴吐出ヘッドを確実に得ることができる。
本発明の液滴吐出ヘッドでは、前記島部の厚さは、10μm以上、70μm以下である
ことが好ましい。
これにより、振動板の大型化を図ることなく、振動手段で発生した歪みを薄膜部に伝播
する機能を島部に確実に付与することができる。
【0010】
本発明の液滴吐出ヘッドでは、前記薄膜部の厚さは、1μm以上、8μm以下であるこ
とが好ましい。
これにより、島部を介して伝播された歪みにより、薄膜部を確実に変位させることがで
きる。
本発明の液滴吐出ヘッドでは、前記島部の厚さをA[μm]とし、前記薄膜部の厚さを
B[μm]としたとき、B/Aは、1/40以上、1/6以下なる関係を満足することが
好ましい。
これにより、振動板の大型化を図ることなく、振動手段で発生した歪みを薄膜部に伝播
する機能を島部により確実に付与することができるとともに、島部を介して伝播された歪
みにより、薄膜部をより確実に変位させることができる。
【0011】
本発明の液滴吐出ヘッドでは、前記振動板のヤング率は、2.0GPa以下であること
が好ましい。
これにより、島部における厚膜化により島部に優れた強度を付与することができるため
、振動手段で発生した歪みを薄膜部に伝播する機能を島部に付与することができる。さら
に、薄膜部における薄膜化により、薄膜部は弾性変形し得るものとなるため、島部を介し
て伝播された歪みにより、薄膜部を変位させることができる。
【0012】
本発明の液滴吐出ヘッドでは、前記島部および前記薄膜部は、ともに芳香族ポリアミド
またはSiを主材料として構成されることが好ましい。
これにより、振動板のヤング率を2.0GPa以下のものとすることができる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法は、本発明の液滴吐出ヘッドを製造するための液滴
吐出ヘッドの製造方法であって、
平板状をなす母材を用意し、該母材の一方の面に環状をなす凹部を形成することで、前
記島部と前記薄膜部とを有する前記振動板を形成する工程を有することを特徴とする。
これにより、振動手段の制御波形の設計を容易に行うことができる振動板を形成するこ
とができ、信頼性の高い液滴吐出ヘッドを確実に得ることができる。
【0013】
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記凹部は、前記母材の一方の面をエッチン
グすることにより形成されることが好ましい。
これにより、振動手段の制御波形の設計を容易に行うことができる振動板を容易に形成
することができる。
本発明の液滴吐出装置は、本発明の液滴吐出ヘッドを備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い液滴吐出装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の液滴吐出ヘッドをインクジェット式記録ヘッドに適用した実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すインクジェット式記録ヘッドを備えるインクジェットプリンタの実施形態を示す概略図である。
【図3】本発明の液滴吐出ヘッドをインクジェット式記録ヘッドに適用した他の構成例を示す縦断面図である。
【図4】インクジェット式記録ヘッドの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図5】インクジェット式記録ヘッドの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図6】インクジェット式記録ヘッドの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法および液滴吐出装置を、添
付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<インクジェット式記録ヘッド>
まず、本発明の液滴吐出ヘッドについて説明する。
なお、以下では、本発明の液滴吐出ヘッドを、インクジェット式記録ヘッドに適用した
場合を一例に説明する。
【0016】
図1は、本発明の液滴吐出ヘッドをインクジェット式記録ヘッドに適用した実施形態を
示す縦断面図、図2は、図1に示すインクジェット式記録ヘッドを備えるインクジェット
プリンタの実施形態を示す概略図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」
、下側を「下」と言う。
図1に示すインクジェット式記録ヘッド1(以下、単に「ヘッド1」と言うこともある
。)は、図2に示すようなインクジェットプリンタ(本発明の液滴吐出装置)9に搭載さ
れている。
【0017】
図2に示すインクジェットプリンタ9は、装置本体92を備えており、上部後方に記録
用紙Pを設置するトレイ921と、下部前方に記録用紙Pを排出する排紙口922と、上
部面に操作パネル97とが設けられている。
操作パネル97は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDランプ
等で構成され、エラーメッセージ等を表示する表示部(図示せず)と、各種スイッチ等で
構成される操作部(図示せず)とを備えている。
【0018】
また、装置本体92の内部には、主に、往復動するヘッドユニット93を備える印刷装
置(印刷手段)94と、記録用紙Pを1枚ずつ印刷装置94に送り込む給紙装置(給紙手
段)95と、印刷装置94および給紙装置95を制御する制御部(制御手段)96とを有
している。
制御部96の制御により、給紙装置95は、記録用紙Pを一枚ずつ間欠送りする。この
記録用紙Pは、ヘッドユニット93の下部近傍を通過する。このとき、ヘッドユニット9
3が記録用紙Pの送り方向とほぼ直交する方向に往復移動して、記録用紙Pへの印刷が行
なわれる。すなわち、ヘッドユニット93の往復動と記録用紙Pの間欠送りとが、印刷に
おける主走査および副走査となって、インクジェット方式の印刷が行なわれる。
【0019】
印刷装置94は、ヘッドユニット93と、ヘッドユニット93の駆動源となるキャリッ
ジモータ941と、キャリッジモータ941の回転を受けて、ヘッドユニット93を往復
動させる往復動機構942とを備えている。
ヘッドユニット93は、その下部に、多数のノズル孔11を備えるヘッド1と、ヘッド
1にインクを供給するインクカートリッジ931と、ヘッド1およびインクカートリッジ
931を搭載したキャリッジ932とを有している。
【0020】
なお、インクカートリッジ931として、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(黒
)の4色のインクを充填したものを用いることにより、フルカラー印刷が可能となる。
往復動機構942は、その両端をフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド
軸943と、キャリッジガイド軸943と平行に延在するタイミングベルト944とを有
している。
【0021】
キャリッジ932は、キャリッジガイド軸943に往復動自在に支持されるとともに、
タイミングベルト944の一部に固定されている。
キャリッジモータ941の作動により、プーリを介してタイミングベルト944を正逆
走行させると、キャリッジガイド軸943に案内されて、ヘッドユニット93が往復動す
る。そして、この往復動の際に、ヘッド1から適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印
刷が行われる。
【0022】
給紙装置95は、その駆動源となる給紙モータ951と、給紙モータ951の作動によ
り回転する給紙ローラ952とを有している。
給紙ローラ952は、記録用紙Pの送り経路(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従
動ローラ952aと駆動ローラ952bとで構成され、駆動ローラ952bは給紙モータ
951に連結されている。これにより、給紙ローラ952は、トレイ921に設置した多
数枚の記録用紙Pを、印刷装置94に向かって1枚ずつ送り込めるようになっている。な
お、トレイ921に代えて、記録用紙Pを収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得る
ような構成であってもよい。
【0023】
制御部96は、例えばパーソナルコンピュータやディジタルカメラ等のホストコンピュ
ータから入力された印刷データに基づいて、印刷装置94や給紙装置95等を制御するこ
とにより印刷を行うものである。
制御部96は、いずれも図示しないが、主に、各部を制御する制御プログラム等を記憶
するメモリ、印刷装置94(キャリッジモータ941)を駆動する駆動回路、給紙装置9
5(給紙モータ951)を駆動する駆動回路、および、ホストコンピュータからの印刷デ
ータを入手する通信回路と、これらに電気的に接続され、各部での各種制御を行うCPU
とを備えている。
【0024】
また、CPUには、例えば、インクカートリッジ931のインク残量、ヘッドユニット
93の位置等を検出可能な各種センサ等が、それぞれ電気的に接続されている。
制御部96は、通信回路を介して、印刷データを入手してメモリに格納する。CPUは
、この印刷データを処理して、この処理データおよび各種センサからの入力データに基づ
いて、各駆動回路に駆動信号を出力する。この駆動信号により印刷装置94および給紙装
置95は、それぞれ作動する。これにより、記録用紙Pに印刷が行われる。
【0025】
以下、ヘッド1について、図1を参照しつつ詳述する。
図1に示すように、ヘッド1は、ノズルプレート10と、ノズルプレート上に設けられ
た吐出液貯留室形成基板(基板)20と、吐出液貯留室形成基板20上に設けられた振動
板30と、振動板30上に設けられた圧電素子(振動手段)50およびケースヘッド60
とを有している。なお、本実施形態では、このヘッド1は、ピエゾジェット式ヘッドを構
成する。
【0026】
吐出液貯留室形成基板20(以下、省略して「基板20」と言う。)には、インクを貯
留する複数の吐出液貯留室(圧力室)21が形成され、さらに、各吐出液貯留室21に連
通し、各吐出液貯留室21にインクを供給する吐出液供給室22が形成されている。
図1に示すように、各吐出液貯留室21および吐出液供給室22は、それぞれ、平面視
において、ほぼ長方形状をなし、各吐出液貯留室21の幅(短辺)は、吐出液供給室22
の幅(短辺)より細幅となっている。
【0027】
また、各吐出液貯留室21は、吐出液供給室22に対して、ほぼ垂直をなすように配置
されており、各吐出液貯留室21および吐出液供給室22は、平面視において全体として
、櫛状をなしている。
基板20を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、単結晶シリコン、多
結晶シリコン、アモルファスシリコンのようなシリコン材料、ステンレス鋼のような金属
材料、石英ガラスのようなガラス材料、アルミナのようなセラミックス材料、グラファイ
トのような炭素材料、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル−スチレン共
重合体(AS樹脂)、シリコーン樹脂のような樹脂材料等が挙げられ、これらのうち1種
または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
また、上記のような材料に、酸化処理(酸化膜形成)、めっき処理、不働態化処理、窒
化処理等の各処理を施した材料でもよい。
これらの中でも、基板20の構成材料は、シリコン材料またはステンレス鋼であるのが
好ましい。このような材料は、耐薬品性に優れることから、長時間にわたってインクに曝
されたとしても、基板20が変質・劣化するのを確実に防止することができる。また、こ
れらの材料は、加工性に優れるため、寸法精度の高い基板20が得られる。このため、吐
出液貯留室21や吐出液供給室22の容積の精度が高くなり、高品位の印字が可能なヘッ
ド1が得られる。
【0029】
また、吐出液供給室22は、後述するケースヘッド60に設けられた吐出液供給路61
と連通して複数の吐出液貯留室21にインクを供給する共通のインク室として機能するリ
ザーバ70の一部を構成する。
基板20の下面(振動板30と反対側の面;一方の面)には、接着層15を介して、吐
出液貯留室21および吐出液供給室22を覆うようにノズルプレート10が接着されてい
る。
【0030】
ノズルプレート10には、各吐出液貯留室21に対応するように、それぞれノズル孔1
1が形成(穿設)されている。このノズル孔11から、吐出液貯留室21に貯留されたイ
ンク(吐出液)を押し出すことにより、インクが液滴として吐出されることとなる。
また、ノズルプレート10は、各吐出液貯留室21や吐出液供給室22の内壁面の下面
を構成している。すなわち、ノズルプレート10と、基板20および振動板30とにより
、各吐出液貯留室21や吐出液供給室22を画成している。
【0031】
このようなノズルプレート10を構成する材料としては、例えば、前述したようなシリ
コン材料、金属材料、ガラス材料、セラミックス材料、炭素材料、樹脂材料、またはこれ
らの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
これらの中でも、ノズルプレート10の構成材料は、シリコン材料またはステンレス鋼
であるのが好ましい。このような材料は、耐薬品性に優れることから、長時間にわたって
インクに曝されたとしても、ノズルプレート10が変質・劣化するのを確実に防止するこ
とができる。また、これらの材料は、加工性に優れるため、寸法精度の高いノズルプレー
ト10が得られる。このため、信頼性の高いヘッド1が得られる。
【0032】
なお、ノズルプレート10の構成材料は、線膨張係数が300℃以下で2.5〜4.5
[×10-6/℃]程度であるものが好ましい。
また、ノズルプレート10の厚さは、特に限定されないが、0.01〜1mm程度であ
るのが好ましい。
さらに、ノズルプレート10の下面には、必要に応じて、撥液処理を施すのが好ましい
。これにより、ノズル孔から吐出されるインク滴が意図しない方向に吐出されるのを防止
することができる。
【0033】
なお、かかる構成のノズルプレート10は、接着層15を介して基板20に接合される
が、この接着層15としては、特に限定されず、例えば、ビスフェノール系、ノボラック
系のようなエポキシ系接着剤等を用いて形成される。
基板20の上面(他方の面)には、接着層25を介して、吐出液貯留室21および吐出
液供給室22を覆うように振動板30が接着されている。
【0034】
これにより、振動板30は、各吐出液貯留室21や吐出液供給室22の内壁面の上面を
構成する。すなわち、振動板30と、基板20およびノズルプレート10とにより、各吐
出液貯留室21や吐出液供給室22を画成している。そして、振動板30が基板20と確
実に接合されていることにより、各吐出液貯留室21や吐出液供給室22との液密性を確
保している。
【0035】
この振動板30は、図1に示すように、基板20(吐出液貯留室21)側の面が平坦面
により構成され、さらに、基板20と反対側の面が、吐出液貯留室21に対応する位置に
環状をなす凹部53が形成されることで凹凸面により構成されている。
これにより、振動板30は、吐出液貯留室21に対応する位置の内側(内部)に島状に
形成された島部31と、島部31の外周部に位置する薄膜状をなす薄膜部33と、薄膜部
33を介して島部31を取り囲む厚膜部32とで構成される。
【0036】
島部31は、圧電素子50で発生した歪みを、このものを介して、各吐出液貯留室21
に対応した位置に形成された薄膜部33に伝播する機能を有するものである。したがって
、この島部31に圧電素子50の変位面である先端部を固定し、この状態で、圧電素子5
0に歪みを発生させることで、島部31を介して歪みを振動板30の薄膜部33に伝播さ
せることができる。
【0037】
また、薄膜部33は、凹部53の形成により、島部31よりも厚さを薄くして薄膜化す
ることで弾性変形する機能が付与されたものである。したがって、圧電素子50で発生し
た歪みを、島部31を介して伝播させることで、薄膜部33において変位(振動)を生じ
させることができる。そのため、各吐出液貯留室21における容積に変化が生じることか
ら、ノズル孔11からインクが吐出される。
【0038】
さらに、厚膜部32は、島部31および薄膜部33を支持する機能を有するものである
。上述のように島部31および薄膜部33を取り囲むようにして支持することで、圧電素
子50で発生した歪みを、島部31を介してより確実に伝播させることができる。そのた
め、各吐出液貯留室21における容積変化をより確実に生じさせることができる。
本発明では、上述したような構成の振動板30において、図1に示すように、島部31
と、薄膜部33とが同一の構成材料により一体的に形成されている。
【0039】
したがって、前記背景技術で説明したように、振動板を、振動フィルムと支持板とが接
着層を介して接合された積層体で構成する場合と比較して、振動板30は、その構成が簡
略化されたものとなる。
そのため、圧電素子50の制御波形を、振動板30(島部31および薄膜部33)の構
成材料、島部31の厚さおよび薄膜部33の厚さに応じて設計するだけでよいので、その
設計要する時間の短縮化と手間の簡略化を実現することができる。さらに、振動板30を
形成する際の歩留まりの向上およびコストダウンが図られることとなる。
【0040】
また、島部31と薄膜部33とを一体的に形成することで、接着層の形成を省略できる
ため、圧電素子50で発生した歪みを、島部31を介してより確実に薄膜部33に伝播さ
せることができる。すなわち、圧電素子50で発生した歪みの損失を低減することが可能
となる。
このような島部31と薄膜部33との一体化は、振動板30を、そのヤング率が2.0
GPa以下となる構成材料で構成することに確実に実現することが可能となる。より詳し
くは、ヤング率が0.5GPa以上、2.0GPa以下となっているのが好ましい。これ
により、島部31における厚膜化により島部31に優れた強度(剛性)を付与することが
できるため、圧電素子50で発生した歪みを薄膜部33に伝播する機能を島部31に付与
することができる。さらに、薄膜部33における薄膜化により、薄膜部33は弾性変形し
得るものとなるため、島部31を介して伝播された歪みにより、薄膜部33を変位させる
ことができる。
【0041】
この際、島部31の厚さは、10μm以上、70μm以下であるのが好ましく、30μ
m以上、50μm以下であるのがより好ましい。島部31の厚さをかかる範囲内に設定す
ることにより、振動板30の大型化を図ることなく、圧電素子50で発生した歪みを薄膜
部33に伝播する機能を島部31に確実に付与することができる。
また、薄膜部33の厚さは、1μm以上、8μm以下であるのが好ましく、1.5μm
以上、5μm以下であるのがより好ましい。薄膜部33の厚さをかかる範囲内に設定する
ことにより、島部31を介して伝播された歪みにより、薄膜部33を確実に変位させるこ
とができる。
【0042】
さらに、島部31の厚さをA[μm]とし、薄膜部33の厚さをB[μm]としたとき
、B/Aは、1/40以上、1/6以下なる関係を満足するのが好ましく、1/20以上
、1/10以下なる関係を満足するのがより好ましい。これにより、島部31を厚膜化す
ることにより得られる効果と、薄膜部33を薄膜化することにより得られる効果との双方
がより顕著に発揮されることとなる。
【0043】
また、振動板30(島部31、薄膜部33)の構成材料としては、そのヤング率が上述
のように2.0GPa以下となるものであれば特に限定されず、例えば、各種樹脂材料、
各種金属材料および各種シリコン系材料等を用いることができるが、特に、芳香族ポリア
ミドまたはSiを主材料とするものを用いるのが好ましい。これにより、島部31および
薄膜部33に前述した機能を確実に付与することができる。
なお、芳香族ポリアミドとしては、特に限定されないが、下記式(1)で表わされる繰
り返し単位を有するものが挙げられる。
【0044】
【化1】

[式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、置換または無置換の芳香族炭化
水素環を表わす。]
【0045】
また、基Rおよび基Rとしては、具体的には、下記式(2)で表わされるもの等が
挙げられる。
【0046】
【化2】

[式(2)中、XおよびYは、それぞれ独立して、−O−、−CH−、−CO−、−
CO−、−S−、−SO−または−C(CH−を表わす。]
【0047】
また、基RおよびRの少なくとも一方が置換の芳香族炭化水素環である場合、水素
原子に置換する置換基としては、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子のようなハロ
ゲン基、メチル基、エチル基、プロピル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基
、プロポキシ基のようなアルコキシ基およびニトロ基等が挙げられ、これらのうちの1種
または2種以上を組み合わせて選択される。
【0048】
なお、上記式(1)で表わされる繰り返し単位を有する芳香族ポリアミドは、上記の芳
香族炭化水素環がパラ配向性を有しているものが、全芳香族炭化水素環のうち80モル%
以上であるのが好ましく、90モル%以上であるのがより好ましい。これにより、振動板
30は、より優れた強度および耐熱性を有するものとなる。
ただし、本明細書中で「パラ配向性」とは、芳香族炭化水素環上の主鎖を構成する2価
の結合手が互いに同軸または平行となっている場合をいう。
【0049】
かかる構成の振動板30は、接着層25を介して基板20に接合されるが、この接着層
25としては、接着層15と同様に、特に限定されず、例えば、ビスフェノール系、ノボ
ラック系のようなエポキシ系接着剤等を用いて形成される。
また、振動板30の島部31には、圧電素子(振動手段)50の変位面である先端部が
接合(固定)されている。
【0050】
圧電素子50は、圧電材料で構成された圧電体層51と、この圧電体層51に電圧を印
加する電極膜52との積層体で構成されている。このような圧電素子50では、電極膜5
2を介して圧電体層51に電圧を印加することにより、圧電体層51に電圧に応じた歪み
が発生する(逆圧電効果)。この歪みが振動板30の島部31を介して薄膜部33に撓み
(振動)をもたらし、吐出液貯留室21の容積を変化させる。かかる構成の圧電素子50
が島部31と確実に接合されていることにより、圧電素子50に発生した歪みを、島部3
1を介して薄膜部33の変位へと確実に変換することができ、その結果、各吐出液貯留室
21が確実に容積変化することとなる。
【0051】
なお、圧電体層51と電極膜52との積層方向は、特に限定されず、振動板30に対し
て平行な方向であっても、直交する方向であってもよい。なお、圧電体層51と電極膜5
2との積層方向が、図1に示すように、振動板30に対して直交する方向である場合、こ
のように配置された圧電素子50を特にMLP(Multi Layer Piezo)と言う。圧電素子
50がMLPであれば、振動板30の変位量を大きくとることができるので、インクの吐
出量の調整幅が大きいという利点がある。
【0052】
圧電素子50のうち、振動板30の島部31に固定する(接触する)変位面である先端
部は、圧電素子50の配置方法によって異なるが、圧電体層が露出した面、電極膜が露出
した面、または圧電体層と電極膜の双方が露出した面のいずれかである。
圧電素子50のうち、圧電体層51を構成する材料としては、例えば、チタン酸バリウ
ム、ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、タンタル酸リ
チウム、ニオブ酸リチウム、水晶等が挙げられる。
【0053】
一方、電極膜52を構成する材料としては、例えば、Fe、Ni、Co、Zn、Pt、
Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、Mo、またはこれらを含む合金等の各種金属
材料が挙げられる。
また、圧電素子50の電極膜52は、図示しない駆動ICと電気的に接続されている。
これにより、圧電素子50の動作を駆動ICによって制御することができる。
【0054】
さらに、振動板30の厚膜部32には、ケースヘッド60が接合されている。このよう
に、ケースヘッド60と振動板30とが接合されることで、ノズルプレート10、基板2
0および振動板30の積層体で構成された、いわゆるキャビティー部分を補強し、キャビ
ティー部分のよじれや反り等を確実に抑制することができる。
ケースヘッド60を構成する材料としては、例えば、前述したようなシリコン材料、金
属材料、ガラス材料、セラミックス材料、炭素材料、樹脂材料、またはこれらの各材料の
1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
【0055】
これらの中でも、ケースヘッド60の構成材料は、ポリフェニレンサルファイド(PP
S)、ザイロンのような変性ポリフェニレンエーテル樹脂(「ザイロン」は登録商標)ま
たはステンレス鋼であるのが好ましい。これらの材料は、十分な剛性を備えていることか
ら、ヘッド1を支持するケースヘッド60の構成材料として好適である。
また、振動板30は、吐出液供給室22に対応する位置に貫通孔23を有する。この貫
通孔23により、ケースヘッド60に設けられた吐出液供給路61と吐出液供給室22と
が連通している。なお、吐出液供給路61と吐出液供給室22とにより、複数の吐出液貯
留室21にインクを供給する共通のインク室として機能するリザーバ70の一部を構成す
る。
【0056】
このようなヘッド1では、図示しない外部吐出液供給手段からインクを取り込み、リザ
ーバ70からノズル孔11に至るまで内部をインクで満たした後、駆動ICからの記録信
号により、各吐出液貯留室21に対応するそれぞれの圧電素子50を動作させる。これに
より、圧電素子50の逆圧電効果によって振動板30の薄膜部33に撓み(振動)が生じ
る。その結果、例えば、各吐出液貯留室21内の容積が収縮すると、各吐出液貯留室21
内の圧力が瞬間的に高まり、ノズル孔11からインクが液滴として押し出される(吐出さ
れる)。
【0057】
このようにして、ヘッド1において、印刷したい位置の圧電素子50に、駆動ICを介
して電圧を印加すること、すなわち、吐出信号を順次入力することにより、任意の文字が
図形等を印刷することができる。
なお、ヘッド1は、前述したような構成のものに限らず、例えば、振動手段としての圧
電素子50に代えて、静電アクチュエータを備えるものであってもよい。
【0058】
ただし、本実施形態のように、振動手段が圧電素子で構成されていることにより、振動
板30に発生する撓みの程度を容易に制御することができる。これにより、インク滴の大
きさを容易に制御することができる。
また、振動板30は、島部31の側面と薄膜部33の上面とがともに平坦面で構成され
これらが直交することとしたが、図3に示すように、島部31の側面と薄膜部33の上面
とで1つの湾曲面が形成されるようにしてもよい。
この湾曲面の曲率半径は、特に限定されないが、0.1μm以上、2μm以下であるの
が好ましく、0.1μm以上、0.5μm以下であるのがより好ましい。曲率半径をこの
ような範囲とすることにより、島部31および薄膜部33に掛かる応力を分散させること
ができるため、振動板30の耐久性の向上を図ることができる。
【0059】
<インクジェット式記録ヘッドの製造方法>
以上のようなインクジェット式記録ヘッド1は、例えば、基板20および振動板30を
得るための母材20’および母材30’をそれぞれ用いて、次のようにして作製される。
図4ないし図6は、インクジェット式記録ヘッドの製造方法を説明するための図(縦断
面図)である。なお、以下の説明では、図4ないし図6中の上側を「上」、下側を「下」
と言う。
【0060】
本実施形態にかかるヘッド1の製造方法は、母材20’を用意し、この母材20’に対
して加工を施し、基板20を形成する工程と、母材30’を用意するとともに、基板20
上に接着層25を形成し、この接着層25を介して基板20と母材30’とを接着する工
程と、母材30’に凹部53を形成するととともに、貫通孔23を形成することにより振
動板30を得る工程と、振動板30上に圧電素子50を接合する工程と、振動板30上に
ケースヘッド60を接合する工程と、基板20の振動板30と反対側の面上に接着層15
を形成し、この接着層15を介して基板20とノズルプレート10とを接合する工程とを
有する。
【0061】
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、基板20を作製するための母材としての平板状をなす母材20’を用意す
る(図4(a)参照)。
次いで、図4(b)に示すように、母材20’に対して加工を施し、各吐出液貯留室2
1および吐出液供給室22を形成することで、母材20’から基板20を得る。
なお、吐出液貯留室21および吐出液供給室22の形成は、後述する貫通孔23および
凹部53の形成で説明するのと同様の各種エッチング法を用いて行われる。
【0062】
[2]次に、振動板30を作製するための母材としての平板状をなす母材30’を用意
する(図4(c)参照)。
次いで、図4(d)に示すように、接着層25を介して、基板20と、母材30’とを
接着することで、接着層25を介して基板20と母材30’とがこの順で積層された積層
体を得る。
【0063】
[3]次に、母材30’の上面(一方の面)において、基板20の各吐出液貯留室に対
応する位置に、凹部53を形成するとともに、基板20の吐出液供給室22に対応する位
置に、すなわち、吐出液供給室22に連通するように貫通孔23を形成する。
これにより、図5(a)に示すように、島部31と薄膜部33と厚膜部32とで構成さ
れた振動板30が基板20上に形成される。
【0064】
また、貫通孔23および凹部53の形成は、ドライエッチング、リアクティブイオンエ
ッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウエット
エッチング等の化学的エッチング法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いて
行うことができる。
なお、図1に示すように、振動板30において、島部31の側面と薄膜部33の上面と
をともに平坦面とし、これらが直交するような構成とする場合、貫通孔23および凹部5
3の形成には、上記のうち物理的エッチング法を用いるのが好ましい。物理的エッチング
法によれば、厚さ方向に対するエッチングの際に、横方向に対してまわり込みが生じるの
を的確に防止または抑制することができるため、振動板30を確実に図1に示したような
構成のものとすることができる。
ただし、母材30’として面方位(110)のSi単結晶基板を選択した場合には、エ
ッチング法として化学的エッチング法を用いたとしても、振動板30を確実に図1に示し
たような構成のものとすることができる。
【0065】
[4]次に、圧電素子50を用意し、島部31に、圧電素子50を接合することで、図
5(b)に示すように、基板20、振動板30および圧電素子50をそれぞれ接合させる

[5]次に、ケースヘッド60を用意し、厚膜部32に、ケースヘッド60を接合する
ことで、図6(a)に示すように、基板20、振動板30、圧電素子50およびケースヘ
ッド60が接合される。
【0066】
この際、吐出液供給室22は、振動板30に形成された貫通孔23、および、ケースヘ
ッド60に設けられた吐出液供給路61と連通し、これにより、リザーバ70が形成され
る。
なお、ここでは、予め母材20’に加工を施して各吐出液貯留室21および吐出液供給
室22が形成された基板20に対して母材30’を接合する場合について説明したが、こ
れに限定されず、母材20’に対して母材30’を接合した後に、母材20’に加工を施
して各吐出液貯留室21および吐出液供給室22が形成して基板20を得るようにしても
良い。
【0067】
[6]次に、ノズルプレート10を用意し、図6(b)に示すように、接着層15を介
して、基板20の振動板30と反対側の面とノズルプレート10とを接着することで、基
板20とノズルプレート10とを接合させて、ヘッド1を得る。
以上のような工程を経て、ヘッド1が製造される。
以上、液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法および液滴吐出装置を、図示の実施
形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
例えば、本発明の液滴吐出ヘッドを製造する方法では、前記実施形態の構成に限定され
ず、工程の順序が前後してもよい。また、任意の目的の工程が1または2以上追加されて
いてもよく、不要な工程を削除してもよい。
また、本発明の液滴吐出ヘッドは、振動板を備える、あらゆる方式(形態)の液滴吐出
ヘッドに適用することができる。
【実施例】
【0069】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.インクジェット式記録ヘッドの製造
<1>まず、面方位(110)のSi単結晶基板を母材20’として用意し、このSi
単結晶基板をドライエッチング法によりエッチングして、各吐出液貯留室21および吐出
液供給室22を形成することで基板20を得た。
【0070】
<2>次に、パラ系芳香族ポリアミドフィルム(東レ社製、「ミクトロン」;厚さ:4
2 μm)を母材30’として用意し、エポキシ系接着剤(スリーボンド社製、「スリー
ボンド2000シリーズ」)を介した状態で、基板20と、母材30’とを接着すること
で、接着層25を介して基板20と母材30’とがこの順で積層された積層体を得た。
<3>次に、母材30’(芳香族ポリアミドフィルム)の上面をドライエッチング法に
よりエッチングして、凹部53を形成することにより、島部31(厚さ:42μm)と薄
膜部33(厚さ:2μm)と、厚膜部32(厚さ:42μm)とを有する振動板30を基
板20上に形成した。
【0071】
<4>次に、圧電素子50を用意し、島部31に、圧電素子50を接合した。
<5>次に、ケースヘッド60を用意し、厚膜部32に、ケースヘッド60を接合した

<6>次に、ステンレス鋼(SUS201)製のノズルプレート10を用意し、エポキ
シ系接着剤(スリーボンド社製、「スリーボンド2000シリーズ」)を介した状態で、
基板20とノズルプレート10とを接着することで、図1に示すヘッド1を得た。
【0072】
2.評価
ヘッド1をインクジェットプリンタ(セイコーエプソン社製、「PM−A900」)に
搭載して、インク滴を100回吐出させた。そして、記録用紙の目的とする着弾位置と、
実際に印字されたインク滴の着弾位置とのズレを測定した。
その後、所定の画像の印刷を5000枚の記録用紙に行った後、前記と同様にして、イ
ンク滴の着弾位置を測定した。
その結果、画像印刷の前後とも、目的とする着弾位置からのズレが少なく、ヘッド1は
優れた液滴吐出能を有していた。
さらに、インクジェットプリンタに搭載されたヘッド1を再度取り出し、振動板30の
状態を目視で確認したが、薄膜部33における破損等を認めることはできなかった。
【符号の説明】
【0073】
1……インクジェット式記録ヘッド 10……ノズルプレート 11……ノズル孔 15
、25、35……接着層 20……吐出液貯留室形成基板 20’、30’……母材 2
1……吐出液貯留室 22……吐出液供給室 23……貫通孔 30……振動板 31…
…島部 32……厚膜部 33……薄膜部 50……圧電素子 51……圧電体層 52
……電極膜 53……凹部 60……ケースヘッド 61……吐出液供給路 70……リ
ザーバ 9……インクジェットプリンタ 92……装置本体 921……トレイ 922
……排紙口 93……ヘッドユニット 931……インクカートリッジ 932……キャ
リッジ 94……印刷装置 941……キャリッジモータ 942……往復動機構 94
3……キャリッジガイド軸 944……タイミングベルト 95……給紙装置 951…
…給紙モータ 952……給紙ローラ 952a……従動ローラ 952b……駆動ロー
ラ 96……制御部 97……操作パネル P……記録用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出液を貯留する吐出液貯留室が形成された基板と、
前記吐出液貯留室を覆うように前記基板の一方の面に設けられ、前記吐出液を液滴とし
て吐出するノズル孔を備えるノズルプレートと、
前記吐出液貯留室を覆うように前記基板の他方の面に設けられた振動板と、
歪みにより前記振動板を振動させる振動手段とを有し、
前記振動板は、前記振動手段の変位面が固定される島状をなす島部と、該島部の外周部
に位置する、前記島部よりも厚さの薄い薄膜部とを有しており、
前記島部と、前記薄膜部とが同一の構成材料により一体的に形成されていることを特徴
とする液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
前記振動板は、前記吐出液貯留室側の面が平坦面で構成され、前記振動手段側の面が凹
凸面で構成されている請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
前記島部の厚さは、10μm以上、70μm以下である請求項1または2に記載の液滴
吐出ヘッド。
【請求項4】
前記薄膜部の厚さは、1μm以上、8μm以下である請求項1ないし3のいずれかに記
載の液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
前記島部の厚さをA[μm]とし、前記薄膜部の厚さをB[μm]としたとき、B/A
は、1/40以上、1/6以下なる関係を満足する請求項1ないし4のいずれかに記載の
液滴吐出ヘッド。
【請求項6】
前記振動板のヤング率は、2.0GPa以下である請求項1ないし5のいずれかに記載
の液滴吐出ヘッド。
【請求項7】
前記島部および前記薄膜部は、ともに芳香族ポリアミドまたはSiを主材料として構成
される請求項6に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを製造するための液滴吐出ヘッド
の製造方法であって、
平板状をなす母材を用意し、該母材の一方の面に環状をなす凹部を形成することで、前
記島部と前記薄膜部とを有する前記振動板を形成する工程を有することを特徴とする液滴
吐出ヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記凹部は、前記母材の一方の面をエッチングすることにより形成される請求項8に記
載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし7に記載の液滴吐出ヘッドを備えることを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−994(P2013−994A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134866(P2011−134866)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】