説明

液滴吐出ヘッド及びその製造方法、液滴吐出ヘッド一体型カートリッジおよび画像形成装置

【課題】ノズルへの異物詰まりを防止する。
【解決手段】液体を液滴として吐出するノズル4と、該ノズル4に連通する個別流路6と、液体が個別流路6に至る途中に設けられたフィルタ10と、を少なくとも備えた液滴吐出ヘッド1において、フィルタ10は、ノズル4から液滴を排出する方向に液体を流した場合と、ノズル4から液体を供給する方向に液体を流した場合とでは、捕捉できる異物のサイズが異なるものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッド及びその製造方法、液滴吐出ヘッド一体型カートリッジおよび画像形成装置に関する。さらに詳述すると、液滴吐出ヘッドにおける異物等の除去に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば、液滴吐出ヘッドで構成した記録ヘッド(以下、液体吐出ヘッド、インクジェットヘッドともいう)を含む装置を用いて、記録媒体(以下、用紙ともいうが材質を限定するものではなく、被記録媒体、記録用紙、転写材、記録紙なども同義で使用する)を搬送しながら、液体としてのインクを用紙に付着させて画像形成(記録、印刷、印写、印字も同義語で用いる)を行なう、いわゆるインクジェット方式の画像形成装置(以下、インクジェット記録装置ともいう)が知られている。
【0003】
一般に、インクジェットヘッドは、数十μmの大きさで形成したノズルやインク液室等を備えて構成されているが、従来、インクジェットヘッドの製造過程において混入した異物が、インクジェットヘッドへインクによって流されてきてノズルに詰まり、インクジェットヘッドの吐出不良を発生させるという問題があった。
【0004】
このため、インクジェット記録装置においては、インクジェットヘッドのノズルを異物等によって閉塞することを防ぐために、インクカートリッジからノズルにインクを供給するインク供給経路内に、異物や気泡を排除するフィルタを設置することが必要となっている。
【0005】
しかしながら、フィルタを装着した状態では、組立工程で混入したノズル径より大きく且つフィルタ径より大きな異物を除去することが困難であるため、インクジェットヘッド内の異物を除去した後に、フィルタを装着する必要があるという問題がある。
【0006】
ここで、インクジェットヘッド内の異物を除去あるいは洗浄に関する技術として、例えば、特許文献1には、フィルタのゴミ除去装置を備えたインクジェット記録装置が開示されている。また、特許文献2には、超音波洗浄を用いてインクジェットヘッドを洗浄する方法が開示されている。また、特許文献3には、インクジェットヘッドからフィルタを取り外した状態で洗浄するインクジェット記録装置が開示されている。また、特許文献4には、流路形状を複雑化し異物がノズルに到達するのを阻止するインクジェットヘッドが開示されている。
【0007】
また、特許文献5および特許文献6には、インクジェット共通液室部に液排出口を設けて、フィルタユニットを装着した状態でインクジェットヘッドを洗浄することが可能なインクジェットヘッドが開示されている。さらに、特許文献7には、ノズル径が十分に大きな排出口を設けて、そこから異物を排出するインクジェットヘッドの製造方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、インクジェット記録装置を制御する情報処理端末(PC等)の処理能力が向上することに伴い、出力装置であるインクジェット記録装置の高速化も要求されている。この高速化の対応に際し、インクジェットヘッドでは、ノズル数の増加が要求され、それに伴って、吐出不良の原因となる異物除去手段の更なる改善が要求されている。
【0009】
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載の技術では、フィルタユニットを装着する際に発塵してしまうおそれがあるという問題があった。また、フィルタユニットを独自に洗浄する必要があり、コスト高になってしまうという問題があった。
【0010】
これに対し、特許文献5,6に記載の技術では、洗浄液排出口およびこれを塞ぐ栓が別途必要となり、その分、構造が複雑となるという問題があった。また、特許文献7に記載の発明でも、排出口を別途設けることでサイズも大きくなり、コスト的にも省スペース的にも不利となるという問題があった。
【0011】
そこで本発明は、ノズル数が増加しても、インクジェットヘッドの製造過程で発生したフィルタ及びインクジェットヘッド内の異物を、フィルタ及びインクカートリッジからのインク供給手段を装着した状態で確実に取り除き、異物混入の可能性を排除できる液滴吐出ヘッド及びその製造方法、該液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出ヘッド一体型カートリッジおよび画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するため、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、液体を液滴として吐出するノズルと、該ノズルに連通する個別流路と、液体が個別流路に至る途中に設けられたフィルタと、を少なくとも備えた液滴吐出ヘッドにおいて、フィルタは、ノズルから液滴を排出する方向に液体を流した場合と、ノズルから液体を供給する方向に液体を流した場合とでは、捕捉できる異物のサイズが異なるものである。
【0013】
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、液体を液滴として吐出するノズルと、該ノズルに連通する個別流路と、液体が個別流路に至る途中に設けられたフィルタと、を少なくとも備えた液滴吐出ヘッドの製造方法であって、フィルタは、ノズルから液滴を排出する方向に液体を流した場合と、ノズルから液体を供給する方向に液体を流した場合とでは、捕捉できる異物のサイズが異なり、フィルタの一部を電気鋳造工程により形成するようにしている。
【0014】
また、本発明に係る液滴吐出ヘッド一体型カートリッジは、本発明に係る液滴吐出ヘッドを備えたものである。
【0015】
また、本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る液滴吐出ヘッド、または、本発明に係る液滴吐出ヘッド一体型カートリッジを備えたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ノズルへの異物詰まりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る液滴吐出ヘッドの断面図である。
【図2】フィルタプレートの断面図の一例である。
【図3】フィルタプレートの製造工程の説明図である。
【図4】フィルタプレートの断面図の他の例である。
【図5】ヘッド一体型インクカートリッジの一例を示す斜視図である。
【図6】インクジェット記録装置の機構部の全体構成を説明する概略構成図である。
【図7】インクジェット記録装置の機構部の要部平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る構成を図1から図7に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
(液滴吐出ヘッド)
本実施形態に係る液滴吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(加圧液室長手方向)の断面図を図1に示す。図1に示す液滴吐出ヘッド1は、SUS(Steel Use Stainless)基板で形成した流路基板(液室基板ともいう)2と、この流路基板2の下面(図中の上側)に接合した振動板5と、流路基板2の上面(図中の下側)に接合したノズル板3とを有し、これらによって液滴を吐出するノズル4が連通する個別流路としての加圧液室(圧力室、加圧室、流路などとも称される)6、加圧液室6に液体であるインク(記録液)を供給する供給路を兼ねた流体抵抗部7、複数の加圧液室6に記録液を供給する共通液室8を形成している。
【0020】
共通液室8の一部にはマニホールドプレート9により振動板5とギャップを持ってフィルタプレート10(単に、フィルタ10ともいう)が形成されている。
【0021】
フィルタプレート10としては、例えば、Ni、SUS、樹脂フィルムなどをエッチング、またはレーザー加工等により形成したものを用いることができる(詳細は後述する)。また、共通液室8には図示しない記録液タンクから供給路を介して記録液が供給される。
【0022】
流路基板2は、厚み50umのSUS基板で構成されており、酸性エッチング液を用いてエッチング、あるいは打ち抜きなどの機械加工することで、各加圧液室6、流体抵抗部7などの開口がそれぞれ形成され、ノズル配列方向に並んで配置されている。
【0023】
振動板5は、流路基板2に接着接合されている。振動板5としては、例えば、図1に示すように、ポリイミドなどの樹脂部材5aにSUS基板から形成した凸部5bを接合して形成したものを用いることができる。また、この他、例えば、ニッケルの金属プレートから形成したものなどを用いることもできる。
【0024】
ノズル板3は、各加圧液室6に対応して直径10〜30μmの多数のノズル4を形成し、流路基板2に接着剤接合されている。ノズル板3としては、例えば、ステンレス、ニッケルなどの金属、ポリイミド樹脂フィルムなどの樹脂、シリコン、及びそれらの組み合わせからなるものを用いることができる。また、ノズル面(吐出方向の表面、吐出面ともいう)には、インクとの撥水性を確保するため、メッキ被膜、あるいは撥水剤コーティングなどの方法で撥水膜が形成される。
【0025】
また、振動板5の面外側(加圧液室6と反対面側)に凸部5bを介して各加圧液室6に対応して圧力発生手段(アクチュエータ手段)を構成する積層型圧電素子12をそれぞれ接合し、これらの積層型圧電素子12をベース部材13に接合している。
【0026】
複数の圧電素子12としては、例えば、1つの圧電素子部材を溝加工(スリット加工)によって分断することなく形成したものを用いることができ、圧電素子部材は複数個圧電素子12の並び方向(ノズル配列方向)に沿ってベース部材13上に固定配置されている。また、圧電素子12の一端面には駆動波形を与えるためのFPCケーブル(図示せず)を接続されている。
【0027】
なお、本実施形態では、圧電素子12の圧電方向としてd33方向の変位を用いて加圧液室6内インクを加圧するようにしている。また、圧電素子12の圧電方向としてd31方向の変位を用いて加圧液室6内インクを加圧する構成としても良い。
【0028】
ここで、製造工程により混入した異物がフィルタプレート10の下流からノズル4間に存在した場合の洗浄に際し、例えば、フィルタプレート10に直径(以下、φ)18umの貫通口、ノズル4にφ20umの貫通口が形成されているとすると、製造過程で混入した20umより大きな異物は、フィルタプレート10下流からノズル4の間に留まり、ノズル4近傍に移動した場合には不吐出や曲がりといった不良を引き起こしてしまう。
【0029】
そこで、本実施形態に液滴吐出ヘッド1は、ノズル4より液を排出する方向に液を流した場合とノズル4から液を供給する方向に液を流した場合とでは、捕捉する異物のサイズが異なるフィルタプレート10を備えるものである。例えば、フィルタプレート10からノズル4に向かって液が流れる場合には18umの異物捕捉性能が作用し、ノズル4からフィルタプレート10に向かって流れる場合には30umの異物捕捉性能が作用するものである。
【0030】
このようなフィルタプレート10を用いることにより、ノズル4から液を注入し、フィルタ10を通って共通液室へ排出する洗浄を行った場合には30umの異物を除去することが可能となり、不吐出、曲がり等を防止することが可能である。
【0031】
(フィルタの構成と製造方法)
図2はフィルタプレート10の断面を示す模式図である。フィルタプレート10は、電気鋳造(電鋳)工法により厚さ10umで形成されており、φ18umの小径の貫通口21とφ30umの大径の貫通口22が所定数形成されている。また、貫通口22の一面側には、弁23が形成されている。なお、弁23も同様に電鋳工法により形成され、厚さ5umである。
【0032】
図3(A)〜(G)を参照しつつフィルタプレートの製造方法を説明する。先ず、図3(A)に示すように、電鋳基板としてSiウエハ31を用いる。なお、電鋳基板としては、Siに限らず、SUS等を用いても良い。
【0033】
Siウエハ31上にはシード層となるTi膜(図示せず)が厚さ0.5umで形成されており、レジスト32をスピンコート法により1umの厚みでTi膜上に塗布し、露光現像によりフィルタ穴となる部分にφ20umとなる所定のパターン33を形成する。
【0034】
次に、Ni膜34を電鋳工法により厚さ3umで形成する(図3(B))。このとき、レジスト32に相当する部分にはNi膜34は形成せず開口部φ18umの穴32aが形成される。
【0035】
次に、Ni膜34上に、レジスト35を1umの厚みで形成した後、弁の稼動部となる根本部分(符号36で示す)を露光現像により開口させる(図3(C))。
【0036】
次に、レジスト35上にアルミニウム(ALスパッタ膜37)を0.5umの厚みでスパッタ法により形成する(図3(D))。なお、ここで形成するのは、アルミニウムに限らず、導電性の材料であればよい。また、低抵抗であることが好ましい。
【0037】
次に、弁の稼動部となる部分を形成するために、レジスト38を1umの厚みで形成し、弁となる部分を開口し所定のパターン39を得る(図3(E))。
【0038】
さらに、電鋳工法によりNiを2um形成し弁30をALスパッタ膜27上に形成し(図3(F))、その後、Siウエハ21を加熱しながら電鋳シート29を剥離する。
【0039】
剥離した電鋳シート29にはレジスト32,35,38が残っているため、これらを剥離するレジスト剥離液に浸漬し、レジスト32,35,38を溶解剥離させることによりフィルタプレート10が得られる(図3(G))。
【0040】
ここまで、逆止弁付のフィルタ口の部分についての製造方法を示したが、弁の無い部分はマスクの設計により選択的に形成すればよく、弁とそれ以外の穴は同時に形成することが可能である。
【0041】
上記ではフィルタ形成層である第一層に電鋳を用いたが、電鋳法に限ったものではなく、金属プレート(SUS,Cu,Al,Ni等)にエッチング工法やプレス工法を用いて貫通口を形成した物でもよいし、樹脂フィルムにエッチング工法、プレス工法、レーザー加工を用いて貫通口を形成した物を用いても良い。
【0042】
このような構成の液滴吐出ヘッド1によれば、通過する液の方向により捕捉する異物のサイズが異なるフィルタプレート10を有しているので、組立工程で混入したノズル径よりも大きな異物があっても逆洗浄(ノズル4から洗浄液を注入してフィルタプレート10を通過させて洗浄する方法)により、フィルタプレート10とノズル4の間から除去することが可能となる。さらに通常のノズル4から液を吐出する場合液の流れ(フィルタプレート10からノズル4に向かっての流れ)においては、より小さな異物を除去することが可能となる。したがって、ノズルへの異物詰まりによる不吐出、曲がりを防止することが可能となる。
【0043】
また、異なる2種類以上のサイズの貫通口が形成され、少なくとも1種類には逆止弁が形成されているため、フィルタプレート10を通過する液の方向によって異物捕捉性能を容易に切り替えることが可能となり、低コストでヘッドの洗浄性と清浄性を両立することが可能となる。
【0044】
(フィルタプレートの他の例)
次に、フィルタプレートの他の例について説明する。なお、上述した点と同様の点についての説明は省略する。
【0045】
図4(A),(B)に示すフィルタプレート10は、第一のプレート41と第二のプレート42との2枚のプレートで構成され、第一のプレート41は、厚さ20umのSUSの基板で形成され、φ18umの小径の貫通口43と、φ30umの大径の貫通口44がそれぞれ複数形成されている。なお、貫通口43,44は、例えば、エッチング法を用いて形成される。
【0046】
これに対し、第二のプレート42は、厚さ10umのポリイミドからなり、第一のプレート41の小径の貫通口43よりも大きいφ28umの貫通口45が形成されている。
【0047】
図4に示すフィルタプレート10において、第一のプレート41の貫通口43と第二のプレート42の貫通口45とは、お互い干渉しあわない位置でアライメントされて位置決めされている。また、第一のプレート41の貫通口44に対向する位置には、第二のプレート42の基板部分が相当し、貫通口45は、形成されない。
【0048】
また、第一のプレート41と第二のプレート42とは、第一のプレート41側から第二のプレート42へ向かって液を流した場合(図4(A))に第二のプレート42の変形を阻害しない位置で接着されている。例えば、プレートの周辺部のみでお互いが接着固定されている。
【0049】
このような構成のフィルタプレート10によれば、第一のプレート41側から第二のプレート42へ向かって液を流した場合(図4(A)、ノズル4より液を排出する方向)と、第二のプレート42側から第一のプレート41へ向かって液を流した場合(図4(B)、とノズル4から液を供給する方向)とで、捕捉する異物のサイズが異なるフィルタを構成することができる。また、逆止弁を容易に形成することが可能となり、低コストでヘッドの洗浄性と清浄性を両立することが可能となる。
【0050】
(ヘッド一体型インクカートリッジ)
以上説明した本実施形態にかかる液滴吐出ヘッドは、これを備えたヘッド一体型インクカートリッジ(液滴吐出ヘッド一体型カートリッジ)とすることが好ましい。
【0051】
例えば、図5に示すように、ノズル52を有する本実施形態に係る液滴吐出ヘッド51と、このインクジェットヘッド51にインクを供給するインクタンク53とを一体化したヘッド一体型インクカートリッジ50を構成することができる。
【0052】
以上説明した、ヘッド一体型インクカートリッジによれば、ヘッド内の洗浄を容易にすることが可能となり、また、フィルタ上流から流入する異物も捕捉することが可能となり、ノズル詰まりによる吐出不良を低減するカートリッジを低コストで製造することが可能となる。
【0053】
(画像形成装置)
次に、本実施形態に係る液滴吐出ヘッドを備える本実施形態に係るインクジェット記録装置について図6及び図7を参照して説明する。なお、図6は同装置の機構部の全体構成を説明する概略構成図、図7は同機構部の要部平面説明図である。
【0054】
この画像形成装置は、フレーム101を構成する左右の側板101A、101Bに横架したガイド部材であるガイドロッド131とステー132とでキャリッジ133を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによって矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0055】
このキャリッジ133には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個の液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドからなる記録ヘッド134を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0056】
この記録ヘッド134には前述したようにドライバICを搭載し、図示しない制御部との間でハーネス(フレキシブルプリントケーブル)102を介して接続されている。
【0057】
また、キャリッジ133には、記録ヘッド134に各色のインクを供給するための各色のサブタンク135を搭載している。この各色のサブタンク135には各色のインク供給チューブ136を介して、カートリッジ装填部114に装着されたインクカートリッジ120(120k,120c,120m,120y)から各色のインクが補充供給される。なお、このカートリッジ装填部114にはインクカートリッジ120内のインクを送液するための供給ポンプユニット115が設けられ、また、インク供給チューブ136は這い回しの途中でフレーム101を構成する後板101Cに係止部材105にて保持されている。
【0058】
一方、給紙トレイ112の用紙積載部(圧板)141上に積載した用紙142を給紙するための給紙部として、用紙積載部141から用紙142を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)143及び給紙コロ143に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド144を備えている。この分離パッド144は給紙コロ143側に付勢されている。
【0059】
そして、この給紙部から給紙された用紙142を記録ヘッド134の下方側に送り込むために、用紙142を案内するガイド部材145と、カウンタローラ146と、搬送ガイド部材147と、先端加圧コロ149を有する押さえ部材148とを備えるとともに、給送された用紙142を静電吸着して記録ヘッド134に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト151を備えている。
【0060】
この搬送ベルト151は、無端状ベルトであり、搬送ローラ152とテンションローラ153との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。この搬送ベルト151は、例えば、抵抗制御を行っていない純粋な厚さ40μm程度の樹脂材、例えばETFEピュア材で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)とを有している。
【0061】
そして、この搬送ベルト151の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ156を備えている。この帯電ローラ156は、搬送ベルト151の表層に接触し、搬送ベルト151の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に所定の押圧力をかけている。なお、搬送ローラ152はアースローラの役目も担っており、搬送ベルト151の中抵抗層(裏層)と接触配置され接地している。
【0062】
また、搬送ベルト151の裏側には、記録ヘッド134による印写領域に対応してガイド部材157を配置している。このガイド部材157は、上面が搬送ベルト151を支持する2つのローラ(搬送ローラ152とテンションローラ153)の接線よりも記録ヘッド134側に突出させることで搬送ベルト151の高精度な平面性を維持するようにしている。
【0063】
この搬送ベルト151は、図示しない副走査モータによって駆動ベルトを介して搬送ローラ152が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0064】
さらに、記録ヘッド134で記録された用紙142を排紙するための排紙部として、搬送ベルト151から用紙142を分離するための分離爪161と、排紙ローラ162及び排紙コロ163とを備え、排紙ローラ162の下方に排紙トレイ113を備えている。ここで、排紙ローラ162と排紙コロ163との間から排紙トレイ113までの高さは排紙トレイ113にストックできる量を多くするためにある程度高くしている。
【0065】
また、装置本体の背面部には両面ユニット171が着脱自在に装着されている。この両面ユニット171は搬送ベルト151の逆方向回転で戻される用紙142を取り込んで反転させて再度カウンタローラ146と搬送ベルト151との間に給紙する。また、この両面ユニット171の上面は手差しトレイ172としている。
【0066】
さらに、図7に示すように、キャリッジ133の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド134のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構(サブシステム)181を配置している。この維持回復機構181には、記録ヘッド134の各ノズル面をキャピングするためのキャップ部材182と、ノズル面をワイピングするためのワイパーブレード183と、空吐出(画像記録に寄与しない液滴の吐出)を行なうときに吐出された液滴を受けるための空吐出受け184などを備えている。また、キャリッジ133の走査方向の他方側の非印字領域には、同様に、空吐出時の液滴を受けるための空吐出受け185を配置している。
【0067】
このように構成したインクジェット記録装置においては、給紙トレイ112から用紙142が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙142はガイド145で案内され、搬送ベルト151とカウンタローラ146との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド147で案内されて先端加圧コロ149で搬送ベルト151に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0068】
このとき、図示しない制御回路によって高圧電源から帯電ローラ156に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト151が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト151上に用紙142が給送されると、用紙142が搬送ベルト151に吸着され、搬送ベルト151の周回移動によって用紙142が副走査方向に搬送される。
【0069】
そこで、キャリッジ133を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド134を駆動することにより、停止している用紙142にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙142を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙142の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙142を排紙トレイ113に排紙する。
【0070】
以上説明した、インクジェット記録装置において、本発明に係る液滴吐出ヘッド、または液滴吐出ヘッド一体型カートリッジを備えることで、異物によるノズル詰まりを防止でき、吐出不良を低減することができる。
【0071】
なお、上記実施形態においては、本発明に係る液滴吐出ヘッドをインクジェットヘッドに適用したが、インク以外の液体の滴、例えば、パターニング用の液体レジストを吐出する液体吐出ヘッド、遺伝子分析試料を吐出する液体吐出ヘッドなどにも適用することできる。
【0072】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0073】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0074】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0075】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0076】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【0077】
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 液滴吐出ヘッド
2 流路基板(液室基板)
3 ノズル板
4 ノズル
5 振動板
5a 樹脂部材
5b 凸部
6 加圧液室(個別流路)
7 流体抵抗部
8 共通液室
9 マニホールドプレート
10 フィルタプレート
12 積層型圧電素子
13 ベース部材
21,22 貫通口
23,30 弁
29 電鋳シート
31 Siウエハ
32,35,38 レジスト
33,39 パターン
34 Ni膜
37 ALスパッタ膜
41 第一のプレート
42 第二のプレート
43,44,45 貫通口
50 ヘッド一体型インクカートリッジ
51 液滴吐出ヘッド
52 ノズル
53 インクタンク
【先行技術文献】
【特許文献】
【0079】
【特許文献1】特開平7−314705号公報
【特許文献2】特許第3179332号
【特許文献3】特開平11−34350号公報
【特許文献4】特開2001−328264号公報
【特許文献5】特許第3108788号
【特許文献6】特開2000−238270号公報
【特許文献7】特開2006−76111号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を液滴として吐出するノズルと、
該ノズルに連通する個別流路と、
液体が前記個別流路に至る途中に設けられたフィルタと、を少なくとも備えた液滴吐出ヘッドにおいて、
前記フィルタは、前記ノズルから液滴を排出する方向に液体を流した場合と、前記ノズルから液体を供給する方向に液体を流した場合とでは、捕捉できる異物のサイズが異なることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
前記フィルタは、逆止弁を有することを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
前記フィルタは、その一部が接着固定された第一のプレートおよび第二のプレートの2つの基板からなり、
前記第一のプレートと前記第二のプレートは、対向する位置に貫通口がそれぞれ形成され、かつ、いずれか一方のプレートには、他方のプレートの基板部分に対応する位置に貫通口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
液体を液滴として吐出するノズルと、
該ノズルに連通する個別流路と、
液体が前記個別流路に至る途中に設けられたフィルタと、を少なくとも備えた液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
前記フィルタは、前記ノズルから液滴を排出する方向に液体を流した場合と、前記ノズルから液体を供給する方向に液体を流した場合とでは、捕捉できる異物のサイズが異なり、
前記フィルタの一部を電気鋳造工程により形成するようにしたことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記フィルタは、複数の貫通口を形成された基板と、
前記複数の貫通口のうちの幾つかを覆うように形成された電鋳層からなり、
前記基板上に前記電鋳層を形成した後に、レジストを除去して逆止弁を形成するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項6】
請求項1から3までのいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッド一体型カートリッジ。
【請求項7】
請求項1から3までのいずれか記載の液滴吐出ヘッド、または、請求項6に記載の液滴吐出ヘッド一体型カートリッジを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−59942(P2013−59942A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200760(P2011−200760)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】