説明

液滴吐出ヘッド及び画像形成装置

【課題】ノズル稼働率に応じて圧電素子に印加する微駆動の電圧値を変えることで微駆動の大きさを変え液体の空吐出量の低減を図る。
【解決手段】ノズルから液滴を吐出する駆動データに基づいてノズル稼働率を算出するノズル稼動率算出手段を有し、ノズル稼動率算出手段によって算出されたノズル稼働率に応じて微駆動電圧生成手段によって微駆動用のパルス電圧のピーク電圧値を変えて当該微駆動用のパルス電圧を含む電圧波形を圧電素子に印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッド及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリンタ、ファックス、複写機、プロッタ、或いはこれらの内の複数の機能を複合した画像形成装置としては、例えばインクの液滴を吐出する液体吐出ヘッドを備え、媒体を搬送しながらインク滴を用紙に付着させて画像形成を行うインクジェット記録装置がある。ここでの媒体は「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙なども同義で使用する。また、画像形成装置は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味する。そして、画像形成とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与する(単に液滴を吐出する)ことをも意味する。また、インクとは、所謂インクに限るものではなく、吐出されるときに液体となるものであれば特に限定されるものではなく、例えばDNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる液体の総称として用いる。
【0003】
画像形成装置の一例であるインクジェット記録装置における記録ヘッドは、インク滴を吐出するノズルと、このノズルと連通する加圧液室と、この加圧液室内を昇圧するエネルギーを発生するアクチュエータ手段と、上記加圧液室に連通しインクを供給する共通液室とを備えている。そして、アクチュエータ手段を駆動することで加圧液室内を昇圧してノズルからインク滴を吐出させる。インク滴を吐出させるためのアクチュエータ手段において、圧電素子の軸方向に直交する厚み方向に振動する圧電アクチュエータを使用したものが多く実用化されている。圧電アクチュエータによるインクジェット記録装置において、駆動電圧生成手段によって生成された駆動用のパルス電圧が、加圧液室の内壁の一部を構成する振動板に固定されている圧電素子に印加され、その圧電素子が振動する。そして、この圧電素子の振動によって振動板が変位することにより加圧液室の内圧が変化する。これにより、インクが共通液室から加圧液室へ供給されながら加圧液室内のインクがインク滴としてノズルから吐出される。
【0004】
このようなインクジェット記録装置の記録ヘッドでは、インクをノズルから用紙に吐出させて記録を行う関係上ノズルを通してインクが外気に触れている。このため、インクに含まれる溶媒が蒸発することでインクの粘度が上昇するので、増粘したインクがノズルに詰まって吐出不良を起こすという問題を抱えている。
【0005】
記録ヘッド内の増粘インクによる吐出不良を回避する方法として、特許文献1に記載されているものがある。この特許文献1の方法では、印刷データに基づいて、各ノズルについて、いつどこでインク滴を吐出しているかを示す稼動状態を印字前に解析する。この解析したノズルの稼動状態に応じて一定のピーク電圧値である微駆動用のパルス電圧を圧電素子に印加している。この微駆動とは、駆動用のパルス電圧のピーク電圧値より小さいピーク電圧値の微駆動用のパルス電圧を圧電素子に印加してノズルからインクが吐出されない程度で記録ヘッド内のインクに圧力を付与する駆動である。上記微駆動用のパルス電圧は微駆動電圧生成手段によって生成される。これにより、ノズルに形成されるメニスカスを微振動させ記録ヘッド内の増粘インクを攪拌することで増粘インクの増粘度を緩和している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、一定のピーク電圧値である微駆動用のパルス電圧を圧電素子に印加して行う上記微駆動を長時間あるいは頻繁に行うと、増粘インクが加圧液室内全体に拡散してしまい、増粘インクを含むインクの体積が増大する。その結果、吐出性能回復のために行う空吐出における吐出量が増えてしまい、インクを無駄に破棄してしまうという問題が発生する。
【0007】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、圧電素子に印加する微駆動用のパルス電圧のピーク電圧値をノズル稼働率に応じて変化させることで、増粘液体の体積増加を抑制して液体の空吐出量の低減を図る液滴吐出ヘッド及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、液体が供給される加圧液室を構成する内壁の一部に設けられる前記加圧液室内の圧力を変化させる振動板と、該振動板を変位させる圧電素子と、前記加圧液室の内壁の一部に設けられたノズルから液滴を吐出する駆動用のパルス電圧を生成する駆動電圧生成手段と、非液滴吐出時に前記ノズルから液滴が吐出されないように前記ノズルに形成されるメニスカスを振動させる微駆動用のパルス電圧を生成する微駆動電圧生成手段と、駆動用及び微駆動用の各パルス電圧を含む電圧波形を前記圧電素子に印加する印加手段とを有する液滴吐出ヘッドにおいて、前記ノズルから液滴を吐出する駆動データに基づいて前記ノズルのノズル稼働率を算出するノズル稼動率算出手段を有し、前記ノズル稼動率算出手段によって算出した前記ノズル稼働率に基づいて、前記微駆動電圧生成手段によって前記ノズル稼働率に応じたピーク電圧値の微駆動用のパルス電圧を生成し、生成した微駆動用のパルス電圧及び駆動用のパルス電圧を含む電圧波形を前記印加手段によって前記圧電素子に印加することを特徴とするものである。
【0009】
微駆動を行うと増粘インクが攪拌され局所的な粘度を低減できる。ただし、微駆動が小さいと大滴のドット径に影響してしまう。そこで、ノズル稼動率を算出し、算出したノズル稼働率に応じて圧電素子に印加する微駆動用のパルス電圧のピーク電圧値を変え、ノズルに形成されるメニスカスに発生させる微振動の大きさを変える。例えばノズル稼動率が低く、被記録画像の画質要求度合いが小さいので、ドット径の僅かな縮小が許容される場合、圧電素子に印加する微駆動用のパルス電圧のピーク電圧値を小さくしてノズルにおけるメニスカスの微振動を小さくして増粘した液体がノズルに連通する加圧液室内で拡散するのを抑える。これにより、増粘液体の体積増加を抑制することで、空吐出で破棄する液体の量を低減することができる。ノズル稼働率は、所定の液滴吐出領域においてノズルから液滴を吐出する回数と吐出しない回数との総和に対する液滴を吐出する回数の割合である。
【発明の効果】
【0010】
以上、本発明によれば、圧電素子に印加する微駆動用のパルス電圧のピーク電圧値をノズル稼働率に応じて変化させることで、増粘液体の体積増加を抑制して液体の空吐出量の低減を図るという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】フルラインヘッド型インクジェットプリンタの印刷時の各記録ヘッドの模式図である。
【図2】フルラインヘッド型インクジェットプリンタの構成を示す概略断面図である。
【図3】千鳥状配列のインクジェットヘッドの構成を示す平面図である。
【図4】メンテナンスヘッドの構成を示す斜視図である。
【図5】メンテナンス動作の様子を示す断面図である。
【図6】液滴吐出ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図である。
【図7】液滴吐出ヘッドの液室短手方向(ノズルの並び方向)の断面説明図である。
【図8】第1の実施形態におけるノズル稼働率が大であるときの平面説明図である。
【図9】第1の実施形態におけるノズル稼働率が小であるときの平面説明図である。
【図10】第1駆動波形と第2駆動波形における各環境での空吐出滴数を示す図である。
【図11】第1駆動波形〜第10駆動波形における各環境での空吐出滴数を示す図である。
【図12】第1駆動波形と滴制御信号の信号波形を示す波形図である。
【図13】第2駆動波形と滴制御信号の信号波形を示す波形図である。
【図14】微駆動電圧と増粘体積との関係を示す特性図である。
【図15】微駆動電圧と増粘度との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1はフルラインヘッド型インクジェットプリンタの印刷時の各記録ヘッドの模式図である。図1の(a)は斜視図、図1の(b)は図1の(a)中の矢印Aからみた側面図である。同図において、各記録ヘッドY,M,C,Kと被記録媒体10とが対向している。図1に示す長尺のフルラインヘッド型の記録ヘッドY,M,C,Kを使用した場合に限っているような模式図を示しているが、図2のような複数の短尺ヘッドY,M,C,Kを組み合わせたフルラインヘッドユニットUY,UM,UC,UKでも同じである。従って、以下においては、説明を簡略化するために、1つの矩形でフルラインヘッドを表しているが、このフルラインヘッドは単一のヘッドから構成する場合に限らず、複数の短尺ヘッドから成るフルラインヘッドユニットも含むものとする。
【0013】
図2はフルラインヘッド型インクジェットプリンタの構成を示す概略断面図である。同図に示すインクジェット記録装置1は画像形成部2、インク補給部3、開口形成部4、メンテナンス部5、ロール紙搬送部6で構成されている。画像形成部2は、被記録媒体搬送方向上流側よりブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)に対応可能な4つの記録ヘッド2K、2C、2M、2Yを配設して構成されている。例えば、イエロー(Y)の記録ヘッド2Yは、図3に示すようにそれぞれY方向に短い4つのインクジェットヘッド2Y−1、2Y−2、2Y−3、2Y−4を千鳥状にY方向に配列させ、保持板8に固定している。そして、それぞれのインクジェットヘッド2Y−1、2Y−2、2Y−3、2Y−4は、被記録媒体にインクを吐出する多数のノズル11がノズルプレート9に1列に形成されたノズル列12を有する。また、X軸方向から上記4つのインクジェットヘッド2Y−1、2Y−2、2Y−3、2Y−4を見て4本のノズル列端部が少し重なるように配置され、この構成により記録ヘッド2Yは1本のY軸方向の記録幅の長さを有するノズル列を形成している。他の記録ヘッド2K、2C、2Mも同様の構成であり、4つの記録ヘッド2K、2C、2M、2Yは同じピッチPを保持してX軸方向に配列されている。これにより、被記録媒体10に対して画像形成時に固定のライン状の記録ヘッドから構成される画像形成部2を構成している。
【0014】
次に、インク補給部3はインクボトル13、サブタンク14、インク補給電磁弁15等で構成され、高さ方向の最上位置にインクボトル13が設けられ、インク補給電磁弁15の開閉によって適宜サブタンク14へインクが補給される。サブタンク14には液面検出センサ(図示せず)が設けられており、サブタンク14内のインク液面高さを一定にするように制御している。その際の液面高さはインクジェットヘッド2K−1、2K−2、2K−3、2K−4、・・・、2Y−4のノズルプレート9の表面から重力方向の下方に10[cm]程度下がった位置にある。
【0015】
サブタンク14内は大気開放電磁弁16によって通常は大気に開放されている。サブタンク14から各インクジェットヘッド2K−1、2K−2、2K−3、2K−4、・・・、2Y−4へはチューブでインク流路が連結されている。また、サブタンク14とインクジェットヘッド2K−1、2K−2、2K−3、2K−4、・・・、2Y?4間には補給経路弁17が設けられている。更に、サブタンク14に圧縮空気を送り込む加圧ポンプ18が、途中に加圧弁19を設けてサブタンク14と連結している。この加圧ポンプ18は、インクジェットヘッド2K−1、2K−2、2K−3、2K−4、・・・、2Y−4にインクを充填する際、インク補給電磁弁15、大気開放電磁弁16、補給経路弁17を締めて、サブタンク14の圧力を高めた後、補給経路弁17を開けて一気にインクを充填する。インクボトル13、サブタンク14、インク補給電磁弁15、大気開放電磁弁16、補給経路弁17、加圧ポンプ18、及び加圧弁19の上記構成は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色毎に設けられている。
【0016】
次に、開口形成部4は開口形成機構20、チューブ21、及び負圧源22で構成されている。また、開口形成機構20は画像形成部2の被記録媒体10の搬送方向上流側に配設され、開口形成機構20にはZ軸方向に移動可能な先端が長方形状で中空の抜き刃20aが、前述の記録ヘッド2K、2C、2M、2Yと同様、千鳥状に、Y軸方向に4つ配置され、その内部空間は、チューブ21を介して負圧源22に接続されている。また、抜き刃20aには、Z軸方向に移動可能な移動機構(図示せず)が設けられている。
【0017】
次に、メンテナンス部5は、プラテン23に支持される被記録媒体10に対して記録ヘッド2K、2C、2M、2Yと反対側の空間である下方向に配置されている。メンテナンス部5は記録ヘッド2K、2C、2M、2Yに対応するメンテナンスヘッド24、メンテナンスヘッド24を保持する保持部材25、及び保持部材25を移動させる移動機構26から構成されている。メンテナンスヘッド24はそれぞれのインクジェットヘッド2K−1、2K−2、2K−3、2K−4、・・・、2Y−4に対応するようにY軸方向に千鳥状に4つ配列され、更にそれがX軸方向に4組、配列している。また、吸引ポンプの負圧源27が上記保持部材25内に形成されたチューブを介して各メンテナンスヘッド24に接続されている。メンテナンスヘッド24の先端部は、それぞれプラテン23の支持部開口23aに対向するように位置している。メンテナンスヘッド24の先端部は、図4に示すように、ノズルプレート9に接する外周部28、外周部28より若干凹んだ凹み部29、凹み部29に形成されチューブを介して負圧源27に通じる吸引孔30を有する。
【0018】
また、記録ヘッド2K、2C、2M、2Yに対向して平面状のプラテン23が配置されている。プラテン23にはそれぞれのインクジェットヘッド2K−1、2K−2、2K−3、2K−4、・・・、2Y−4、及びメンテナンスヘッド24に対応するようにY軸方向に千鳥状に4つ配列し、更にそれがX軸方向に4組、配列した支持部開口23aが形成されている。
【0019】
次に、ロール紙搬送部6は、搬送ローラ31〜34、元巻きローラ35、及び巻取ローラ36で構成されている。そして、被記録媒体10は元巻きローラ35にロール状に巻かれた連続紙であり、搬送ローラ31、32、33、34により元巻きローラ35から巻き出され、プラテン23上を搬送され、巻取ローラ36によって巻き取られる。
【0020】
次に、このような構成のインクジェット記録装置1による画像形成動作について説明する。
先ず、搬送ローラ31、32、33、34を駆動し、元巻きローラ35から被記録媒体10を巻き出し、4つの記録ヘッド2K、2C、2M、2Yが配設された画像形成部2に対して、プラテン23上を搬送させる。また、この時、画像データを記録ヘッド2に供給し、4つの記録ヘッド2K、2C、2M、2Yからそれぞれブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを被記録媒体10上に吐出させ、被記録媒体10上に画像形成を行う。その後、被記録媒体10を巻取ローラ36で巻き取らせる。また、この間記録ヘッド2K、2C、2M、2Yへのインク補給は、前述の構成のインク補給部3によって行う。この時、メンテナンスヘッド24は被記録媒体10と干渉しないように、外周部28がプラテン23の被記録媒体10を支持する面よりも下方に位置する図5に実線で示す位置24にあり、保持部材25は同じく実線で示す位置25にある。支持部開口23aがプラテン23に形成されている。
【0021】
一方、メンテナンスについては、以下のようにして行う。先ず、被記録媒体10の搬送を中止し、開口形成部4による被記録媒体10への開口作業を行う。この作業は、前述の負圧源22を駆動し、負圧を発生する。そして、図5に示すように抜き刃20aが図示しない移動機構によりプラテン23上に押し当てられ、被記録媒体10が四角状に抜き加工され、媒体開口10aを形成する。発生した抜きカス10bは、上記負圧によりチューブ21を通して負圧源22に吸引される。なお、抜き刃20aが押し当てられるプラテン23の部分23bは、同図に示すように例えば0.1〜0.5[mm]だけ凹んでおり、抜き刃20aによりプラテン表面の平面度が悪化しても、被記録媒体10に当たらず、搬送性能に影響を与えることはない。上記抜き加工により、Y軸方向に千鳥状に配列した4つの媒体開口10aが形成される。その後、隣り合う記録ヘッド2K、2C、2M、2Y間の配列のピッチPだけ被記録媒体10を搬送方向に移動させ、抜き加工を継続する。そして、同じ処理を3度繰り返してX軸方向に4列の媒体開口10aを形成する。その後、被記録媒体10を抜き刃20aと記録ヘッド2Kの距離だけ搬送させ、各媒体開口10aを各インクジェットヘッド2K−1、2K−2、2K−3、2K−4、・・・、2Y−4のノズルプレート9の直下に位置させる。
次に、移動機構26によりメンテナンスヘッド24及び保持部材25を、Z軸(+)方向に移動し、各メンテナンスヘッド24先端の外周部28を各インクジェットヘッド2K−1、2K−2、2K−3、2K−4、・・・、2Y−4のノズルプレート9の表面に当接させる。この時、メンテナンスヘッド24は図5に二点鎖線で示す位置24’にあり、保持部材25は同じく二点鎖線で示す位置25’にある。支持部開口23aがプラテン23に形成されている。
【0022】
以上のようにして、各インクジェットヘッド2K−1、2K−2、2K−3、2K−4、・・・、2Y−4のノズルプレート9に対応するメンテナンスヘッド24を密着させた後、メンテナンス処理を行う。
【0023】
次に、メンテナンス処理の具体例を、以下に説明する。
<キャッピング処理>
キャッピング処理は画像形成処理を長時間行わない場合や、画像形成装置1の電源を切る場合に行う。先ず、前述のように、メンテナンスヘッド24及び保持部材25は、移動機構26によりZ軸(+)方向に移動し、各メンテナンスヘッド24先端の外周部28を各インクジェットヘッド2K−1、2K−2、2K−3、2K−4、・・・、2Y−4のノズルプレート9の表面に当接させる。図4のメンテナンスヘッド24の少なくとも外周部28はフッ素ゴム等の弾性部材で構成されており、外周部28がノズルプレート9の表面に密着する。
【0024】
このキャッピング処理により、インクジェット記録装置1を使用しない間、全ノズル11は前述の凹み部29内部に位置するように構成され、ノズル11内のインクの増粘、乾燥が防止でき、更にノズル11の周辺へのゴミ等の付着も防止できる。
【0025】
<空吐出処理>
空吐出処理は、負圧源27を動作させた状態で、各インクジェットヘッド2K−1、2K−2、2K−3、2K−4、・・・、2Y−4内の電極に電圧を印加して空吐出駆動を行い、各ノズル11からインクを凹み部29に吐出させる。この空吐出処理により、各ノズル11周辺の増粘したインクや、異物をノズルから除去し、吐出性能を回復させることができる。また、凹み部29に吐出されたインクは、吸引孔30から保持部材25内に形成されたチューブを介して負圧源27に吸引され、図示しない廃液タンクに溜められる。
【0026】
この空吐出処理について、画像形成装置では搬送を中止して行う上記空吐出の他に、紙を搬送して印字している間に行う印字中空吐出も行っている。この印字中空吐出では、ヘッドを動かすことができず、また連続紙なのでヘッド下には常に紙が搬送されているので、搬送されている紙の上に吐出させている。そして、印字中空吐出には、被記録画像の用紙と用紙との境界にラインを形成して行うラインフラッシング法や、画像に影響が出ないほど微小な滴を被記録画像全体に散りばめて空吐出するスターフラッシング法がある。
【0027】
<加圧パージ処理>
加圧パージ処理は、前述のインク補給電磁弁15、大気開放電磁弁16、及び補給経路弁17を締めて加圧弁19を開放し、加圧ポンプ18を駆動してサブタンク14内を所定の圧力にした後、補給経路弁17を開放し、インク経路を介してインクジェットヘッド2K−1、2K−2、2K−3、2K−4、・・・2Y−4内の図示しないインク室内に圧力を加え、ノズル11よりインクを押し出す処理である。この処理によって押し出されたインクは、吸引孔30によって吸引される。このメンテナンス処理によっても、各ノズル11周辺の増粘したインクや、異物をノズルから除去し、吐出性能を回復させることができる。
【0028】
<吸引パージ処理>
吸引パージ処理は、負圧源27を動作させて、凹み部29内に負圧を発生させ、ノズル11内のインクやノズルプレート9の表面に残留するインクを吸引する処理である。このメンテナンス処理によって、例えば各ノズル11周辺の増粘したインクや、異物をノズル11から除去し、ノズルプレート9表面の不要なインクを除去し、吐出性能を回復させることができる。なお、上記空吐出処理、加圧パージ処理、吸引パージ処理において、負圧源27の負圧レベルを変更する様に構成してもよい。
【0029】
次に、上記各メンテナンス後、画像形成処理を行う場合には、メンテナンスヘッド24及び保持部材25をZ軸(−)方向に移動し、被記録媒体10を搬送させて、すべての媒体開口10aを画像形成部2の下流側に移動させた後に画像形成処理を開始する。巻取ローラ36に巻き取られた被記録媒体10の裁断等の後処理時には、必要な画像に同時に印字されたマークを検出して後処理される。必要であれば、媒体開口10aが形成された最初と最後の位置を示すマークを印字してこれを検出し、又は媒体開口10aを直接光学センサ等で検出し、この媒体開口10aが形成された部分を後処理工程で、必要な画像が形成された部分とは別の処理を行う様に構成してもよい。
【0030】
このように構成することにより、連続紙を用いた記録ヘッド2K、2C、2M、2Yのメンテナンスを、連続紙を画像形成部2にローディングしたままで実行することができる。このため、メンテナンス後の画像形成処理を開始するまでの時間を短くでき、スループットを向上させることができる。
【0031】
また、メンテナンス時に連続紙を途中でカットする必要がないので、巻き取りも連続した1ロールに行うことができ、画像形成後の後処理も容易となる。更に、1ロールの途中で、長時間印字が中断する場合にも前述のキャッピング処理が可能であり、対応が容易となる。更に、メンテナンス部5を被記録媒体10に対して記録ヘッド2K、2C、2M、2Yと反対側の空間に配置したので、メンテナンス時、メンテナンスヘッド24及び保持部材25を僅かにZ軸方向に移動させるだけでよい。このため、移動機構を小型化でき、インクジェット記録装置も小型に構成することができる。
【0032】
例えば、その移動量の最小値は記録ヘッド2K、2C、2M、2Yと記録媒体10を支持するプラテン23表面の間隔である0.5〜3[mm]程度とすればよい。また、メンテナンスのために記録ヘッド2K、2C、2M、2Yを移動させる必要がないので、記録ヘッド2K、2C、2M、2Yの位置精度を高く保持でき、高品質の画像形成を行うことができる。
【0033】
次に、この画像形成装置における記録ヘッドを構成する液滴吐出ヘッドの一例について図6及び図7を参照して説明する。図6は液滴吐出ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図、図7は液滴吐出ヘッドの液室短手方向(ノズルの並び方向)の断面説明図である。
【0034】
この液滴吐出ヘッドは、例えば単結晶シリコン基板を異方性エッチングして形成した流路板201と、この流路板201の下面に接合した例えばニッケル電鋳で形成した振動板202と、流路板201の上面に接合したノズル板203とを接合して積層し、これらによって液滴(インク滴)を吐出するノズル204が連通する流路であるノズル連通205及び液室206、液室206にインクを供給するための共通液室208に連通するインク供給口209などを形成している。
【0035】
また、振動板202を変形させて液室206内のインクを加圧するための圧力発生手段(アクチュエータ手段)である電気機械変換素子としての2列(図6では1列のみ図示)の積層型圧電素子221と、この圧電素子221を接合固定するベース基板222とを備えている。圧電素子221の間には支柱部223を設けている。この支柱部223は圧電素子部材を分割加工することで圧電素子221と同時に形成した部分であるが、駆動電圧を印加しないので単なる支柱となる。
【0036】
更に、圧電素子221には駆動回路227に接続するためのFPCケーブル226を接続している。この駆動回路227には、駆動電圧の波形を生成する駆動電圧生成手段、第1微駆動電圧の波形や第2微駆動電圧の波形を生成する微駆動電圧生成手段及び滴制御信号を生成する滴制御信号生成手段を含んでいる。そして、振動板202の周縁部をフレーム部材230に接合し、このフレーム部材230には、圧電素子221及びベース基板222などで構成されるアクチュエータユニットを収納する貫通部231及び共通液室208となる凹部、この共通液室208に外部からインクを供給するためのインク供給穴232を形成している。このフレーム部材230は、例えばエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成している。
【0037】
ここで、流路板201は、例えば結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、ノズル連通路205、液室206となる凹部や穴部を形成したものであるが、単結晶シリコン基板に限られるものではなく、その他のステンレス基板や感光性樹脂などを用いることもできる。
【0038】
振動板202は、ニッケルの金属プレートから形成したもので、例えばエレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製しているが、この他、金属板や金属と樹脂板との接合部材などを用いることもできる。この振動板202に圧電素子221及び支柱部223を接着剤接合し、更にフレーム部材230を接着剤接合している。ノズル板203は各液室206に対応して直径10〜30[μm]のノズル204を形成し、流路板201に接着剤接合している。このノズル板203は、金属部材からなるノズル形成部材の表面に所要の層を介して最表面に撥水層を形成したものである。
【0039】
圧電素子221は、圧電材料251と内部電極252とを交互に積層した積層型圧電素子(ここではPZT)である。この圧電素子221の交互に異なる端面に引き出された各内部電極252には個別電極253及び共通電極254が接続されている。この実施形態では、圧電素子221の圧電方向としてd33方向の変位を用いて液室206内インクを加圧する構成としているが、圧電素子221の圧電方向としてd31方向の変位を用いて加圧液室206内インクを加圧する構成とすることもできる。また、1つの基板222に1列の圧電素子221が設けられる構造とすることもできる。
【0040】
このように構成した液滴吐出ヘッドにおいては、例えば圧電素子221に印加する電圧を基準電位から下げることによって圧電素子221が収縮し、振動板202が下降して液室206の容積が膨張することで、液室206内にインクが流入し、その後圧電素子221に印加する電圧を上げて圧電素子221を積層方向に伸長させ、振動板202をノズル204方向に変形させて液室206の容積/体積を収縮させることにより、液室206内の記録液が加圧され、ノズル204から記録液の滴が吐出(噴射)される。
【0041】
そして、圧電素子221に印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板202が初期位置に復元し、液室206が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室208から液室206内に記録液が充填される。そこで、ノズル204のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
【0042】
このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。
【0043】
次に、第1の実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。
この画像形成装置では図2の元巻きローラ35から、搬送ローラ31、32、33、34を使って巻き出された被記録媒体用紙10上に記録ヘッド2K、2C、2M、2Yから各色インク滴を、入力された画像データに応じて吐出させることによって画像を形成する。被記録画像データは印字前に解析され、その画像を印字するのに、全入力信号のうちインク吐出信号の割合、ノズル稼働率を計算する。具体的には、例えば被記録材の画像形成有効領域内における全ピクセル数(総液滴有効数)において被記録画像データに基づきインク吐出が行われる実ピクセル数(実液滴数)を計数し、その計数値の全ピクセル数に対する割合をノズル稼働率として算出している。そのノズル稼働率の計算結果、ノズル稼働率が所定値以上となる画像データならば微駆動電圧を従来通りに設定した第1駆動波形を使用し、ノズル稼働率が所定値より小さくなる画像データでは微駆動電圧を従来の値より低く設定した第2駆動波形を使用して印字を行うという制御を行う。
【0044】
例えば図8に示すような印字領域の大きい、すなわちノズル稼働率が大きい画像データの場合は従来の駆動波形を使用する。そして、例えば図9に示すような印字領域が一定の割合より小さい、すなわちノズル稼働率が小さい画像データでは従来の値より微駆動用のパルス電圧のピーク電圧値を小さくした駆動波形を使用する。また、空吐出は特にラインフラッシングによって行い、特定の大きさの用紙における境界、例えばA4の境界にラインを印字することで行う。この空吐出ラインは後に切断される。
【0045】
このように、ノズル稼働率が小さい画像データでは微駆動用のパルス電圧のピーク電圧値を従来の所定値より小さく設定することによって従来よりもノズルの増粘インク体積を小さく抑えることが可能である。そして、より少ない空吐出量でノズルの吐出安定性を保つことができ、ラインフラッシングによる損紙の影響をできる限り小さくすることができる。具体的には例えば被記録画像データのノズル稼働率が30%より以上ならば第1駆動波形を選択し、ノズル稼働率が30%より未満では第2駆動波形を選択するようにする。第1駆動波形と第2駆動波形において各環境における空吐出の滴数は図10に示すようになり、ノズル稼働率が30%以下のときの空吐出の滴数を削減できることがわかる。第2駆動波形を選択すると大滴の液滴の大きさが第1駆動波形を選択時に比べて小さくなることが推測されるが、ノズル稼働率が30%以下であることから、インク被覆面積が小さいのでその影響は小さいと考えられる。図10中の環境は、LLは低温低湿、MMは常温常湿、HLは高温低湿をそれぞれ意味し、その環境で、各駆動波形のときに空吐出滴数がどのくらいになるかを示している。
【0046】
次に、この画像形成装置における第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態ではノズル稼働率によって駆動波形を2種類に分けたが、更に一般化し、N(Nは正の整数)種類に分けても良い。その場合は第1駆動波形を従来どおりの微駆動値V1に設定し、第2駆動波形の微駆動値V2をV1>V2に設定、以下第N駆動波形の微駆動値VNをV(N−1)>VN>V(N+1)>・・・>VLを満たすように設定する。Nは2以上の正の整数である。ただし、VLは空吐出を行うまでに吐出不良を起こさず、吐出安定性を保つための微駆動極小値である。
【0047】
更に、各駆動波形の選択は、先ずN個のP1、P2、・・・、PN(100%>P1>P2>・・・>PN)を設定し、次に第1の実施形態と同様にノズル稼働率Pを計算し、Pi−1>P>Pi(P0=100%)のとき、第i駆動波形を選択する制御を行う。
【0048】
このように、ノズル稼働率P<P1の記録画像データで、微駆動を従来の値より小さく設定することによって、従来よりもノズルの増粘インク体積を小さく抑えることが可能である。そして、より少ない空吐出量でノズルの吐出安定性を保つことができ、ラインフラッシングによる損紙の影響をできる限り小さくすることができる。
【0049】
具体的には例えばN=10、Pi=30−3*iに設定する。第i駆動波形の各環境における空吐出滴数は図11のようになり、ノズル稼働率と空吐出滴数との相関関係に基づいて微駆動波形を設定すればよく、特にノズル稼働率がP1以下のときに空吐出滴数を削減できることがわかる。第i駆動波形(i>1)を選択すると大滴の滴の大きさが第1駆動波形を選択時に比べて小さくなることが推測されるが、ノズル稼働率が30%以下であることからインク被覆面積が小さいので、その影響は小さいと考えられる。
【0050】
次に、画像形成装置における第3の実施形態について説明する。
上記第1の実施形態ではノズルの稼働率によって駆動波形を2種類に分けたが、記録画像データに文字以外、例えば写真データを含むかどうかで分けても良い。この場合は記録画像データを解析し文字以外の画像データが含まれる場合には第1駆動波形を、文字データのみの場合は第2駆動波形を選択する制御を行う。このように、文字のみの記録画像データで、微駆動を従来の値より小さく設定することによって、従来よりもノズルの増粘インク体積を小さく抑えることが可能であり、より少ない空吐出量でノズルの吐出安定性を保つことができ、ラインフラッシングによる損紙の影響をできる限り小さくすることができる。
【0051】
例えば第1駆動波形と第2駆動波形において各環境における空吐出滴数は図10のようになり、被記録画像データが文字データのみのときに空吐出滴数を削減できることがわかる。第2駆動波形を選択すると大滴の滴の大きさが第1駆動波形を選択時に比べて小さくなることが推測されるが、文字データのみであることから、インク滴の縮小による画像劣化の影響は小さいと考えられる。
【0052】
次に、上記実施形態1におけるノズル稼働率で第1駆動波形と第2駆動波形の制御を行う場合の構成の一例について図12及び図13を参照して説明する。
前述した2つの駆動波形は、図12に示すような従来通りの電圧で微駆動を行う駆動パルス(駆動信号)を含む第1駆動波形V1と、図13に示すような従来よりも小さい微駆動を行う駆動パルス(駆動信号)を含む第2駆動波形V2である。具体的に説明すると、第1及び第2駆動波形は、図12(または図13)に示すように、液滴を吐出させないノズルメニスカスを微駆動する非吐出駆動信号P0及び画像形成に使用する吐出量の液滴を吐出させる複数の第1吐出駆動信号(駆動パルス)P1〜P3で構成される。ここで、各駆動信号P0〜P3は、基準電位Veから立ち下がる波形要素と、立下り後の状態から立ち上がる波形要素などで構成される。駆動信号の電位Vが基準電位Veから立ち下がる波形要素は、これによって図6及び図7の圧電素子221が収縮して加圧液室206の容積が膨張する引き込み波形要素である。また、立下り後の状態から立ち上がる波形要素は、これによって圧電素子221が伸長して加圧液室206の容積が収縮する加圧波形要素である。つまり、ここでは、駆動波形に含まれる駆動信号P0は液滴を吐出させないでメニスカス振動を与える微駆動信号であり、P0のピーク電圧値(V11)は図12(または図13)に示すように、第1駆動波形で従来の値を、第2駆動波形では、それよりも小さいピーク電圧値(V12)を設定する。ここで小さいピーク電圧値とは基準電位からの差が小さいということを意味し、特に微駆動電圧ではP0における基準電位からの下げ幅が小さいことを意味する。
【0053】
駆動信号P1〜P3は、液体吐出ヘッド2K−1、2K−2、2K−3、2K−4、・・・、2Y−4のノズル204が連通する液室206を膨張させた後収縮させることで液滴を吐出させる駆動波形としている。そして、データ転送部からの図中に示すような滴制御信号M0〜M3によって、例えば微駆動を行うときには滴制御信号M0で駆動信号P0を選択し(ONで選択される)、小滴(小ドット)を形成するときには滴制御信号M1で駆動信号P1のみを選択し、大滴(大ドット)を形成するときには滴制御信号M2で駆動信号P0〜P3を全て選択し、それぞれ記録ヘッドの圧電素子221に印加させるようにする。ここでは小滴と大滴の2種類のサイズとしているが、例えば両者の間の大きさの中滴も吐出させるようにすることもできる。
【0054】
また、空吐出には上記駆動波形と同様の波形で吐出させ、例えば大滴信号を使用する。また、第1駆動波形V1と第2駆動波形V2の違いは微駆動信号P0における波高値(振幅値)が異なるのみである。
【0055】
そこで、記録ヘッド2の各ヘッド2K−1、2K−2、2K−3、2K−4、・・・、2Y−4の各ノズル204について被記録画像データによってノズル稼働率を計算し、第1駆動波形V1、第2駆動波形V2を切り替えて(選択して)、ノズル稼働率が所定値以上の場合は第1駆動波形V1を、それ以外については第2駆動波形V2を印加する。
【0056】
次に、微駆動電圧の大きさと空吐出量との関係について説明する。
図14は微駆動電圧の大きさと空吐出時でのノズルの増粘インクの体積の関係を表した模式図である。同図において例えばA4用紙の境界のタイミングでの空吐出の場合である。微駆動によって増粘インクが攪拌されるので、微駆動電圧が大きいほど増粘インク体積が大きい。また、増粘インクが蓄積して吐出不良を起こすのを防ぐためにも、空吐出によってこの増粘インクを全て吐出しなければならない。したがって、微駆動が大きいほど必要な空吐出量は多くなる。
【0057】
次に、図15は微駆動と空吐出時での増粘インクの増粘度を示す特性図である。同図において例えばA4用紙境界のタイミングでの空吐出の場合である。インクは微小な増粘ならば、正常に吐出可能であるが増粘度が一定以上進行すると吐出不良を起こす。図15において、C点は従来の微駆動電圧値である。例えば微駆動が小さすぎるA点では空吐出前に吐出不良を起こすので、図14に示すような空吐出量が小さくなると分かっていても微駆動として選択できない。したがって、例えば微駆動電圧としてB点を選択すれば、従来よりも空吐出量を削減し、かつ正常吐出を保つことが可能である。よって、第2駆動波形の微駆動電圧値としてはB点のような微駆動を選択すればよい。このような駆動波形の選択を行うことによって、第2駆動波形を使用した場合に空吐出量を削減することが可能である。空吐出時にちょうど吐出不良になるD点が、第2実施形態で述べた微駆動電圧の極小値VLである。
【0058】
上記各実施形態においてはフルラインヘッド型インクジェットプリンタの例で説明しているが、記録ヘッドを複数配置したライン型ヘッドや、記録ヘッドを主走査方向に走査させるシリアルプリンタであっても、被記録画像データによって微駆動電圧値の異なる駆動波形の選択を行い、空吐出量を削減することは可能である。
【0059】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
ノズル稼動率算出手段によってノズルから液滴を吐出する駆動データに基づいてノズル稼働率を算出する。このノズル稼動率算出手段によって算出されたノズル稼働率に応じて、微駆動電圧生成手段によって生成された微駆動用のパルス電圧のピーク電圧値を変え、当該微駆動用のパルス電圧を含む電圧波形を圧電素子に印加する。これによれば、上記第1、第2の実施形態について説明したように、微駆動の大きさを小さくすることで、加圧液室内で増粘液体が拡散されることを抑えることができるので、特にノズル稼働率が小さく画質要求度合いが低いときに、空吐出で破棄する液体の量を低減することができる。
(態様B)
(態様A)において、ノズル稼動率算出手段によって算出されたノズル稼動率が所定値以上のときは微駆動電圧生成手段によって生成された第1微駆動用のパルス電圧を含む電圧波形を圧電素子に印加して第1微駆動を行う。ノズル稼働率が所定値より小さいときは微駆動電圧生成手段によって生成された第1微駆動用のパルス電圧のピーク電圧値より低いピーク電圧値の第2微駆動用のパルス電圧を含む電圧波形を電圧素子に印加して第2微駆動を行う。これによれば、上記第1の実施形態について説明したように、ノズル稼働率が所定値より小さいとき微駆動の大きさを小さくすることで加圧液室内に拡散されることを抑え増粘液体の体積増加が抑制される。これにより、空吐出で破棄する液体の量を低減することができる。
(態様C)
(態様B)において、液体が記録液であってノズルから記録液を吐出することで被記録媒体に画像を形成する場合駆動データが文字データ以外のデータを含んで構成されているときは第1微駆動を行い、駆動データが文字データのみで構成されているときは第2微駆動を行う。これによれば、上記第3の実施形態について説明したように、駆動データが文字データ以外のデータを含んで構成されているときは画質要求が高くなり、このときは第1微駆動を行う。駆動データが文字データのみであれば画質要求が低く、このときは第2微駆動を行う。これにより、空吐出で破棄する液体の量を低減することができる。
(態様D)
(態様A)〜(態様C)のいずれかにおける液滴吐出ヘッドを備え、ノズルから記録液を被記録媒体に吐出して画像を形成する。これによれば、画質要求度合いに応じて、特に画質要求が低いときに、空吐出量を低減することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 インクジェット記録装置
2 画像形成部
3 インク補給部
4 開口形成部
5 メンテナンス部
6 ロール紙搬送部
10 被記録媒体
221 圧電素子
227 駆動回路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特許第3611177号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が供給される加圧液室を構成する内壁の一部に設けられる前記加圧液室内の圧力を変化させる振動板と、該振動板を変位させる圧電素子と、前記加圧液室の内壁の一部に設けられたノズルから液滴を吐出する駆動用のパルス電圧を生成する駆動電圧生成手段と、非液滴吐出時に前記ノズルから液滴が吐出されないように前記ノズルに形成されるメニスカスを振動させる微駆動用のパルス電圧を生成する微駆動電圧生成手段と、駆動用及び微駆動用の各パルス電圧を含む電圧波形を前記圧電素子に印加する印加手段とを有する液滴吐出ヘッドにおいて、
前記ノズルから液滴を吐出する駆動データに基づいて前記ノズルのノズル稼働率を算出するノズル稼動率算出手段を有し、
前記ノズル稼動率算出手段によって算出した前記ノズル稼働率に基づいて、前記微駆動電圧生成手段によって前記ノズル稼働率に応じたピーク電圧値の微駆動用のパルス電圧を生成し、生成した微駆動用のパルス電圧及び駆動用のパルス電圧を含む電圧波形を前記印加手段によって前記圧電素子に印加することを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
前記ノズル稼動率算出手段によって算出された前記ノズル稼動率が所定値以上のときは前記微駆動電圧生成手段によって生成された第1微駆動用のパルス電圧を含む電圧波形を前記圧電素子に印加して第1微駆動を行い、前記ノズル稼働率が所定値より小さいときは前記微駆動電圧生成手段によって生成された前記第1微駆動用のパルス電圧のピーク電圧値より低いピーク電圧値の第2微駆動用のパルス電圧を含む電圧波形を前記電圧素子に印加して第2微駆動を行うことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項2記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
前記液体が記録液であって前記ノズルから前記記録液を被記録媒体に吐出する場合、前記駆動データが文字データ以外のデータを含んで構成されているときは前記第1微駆動を行い、前記駆動データが文字データのみで構成されているときは前記第2微駆動を行うことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを備え、ノズルから記録液を被記録媒体に吐出して画像を形成することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−18252(P2013−18252A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155361(P2011−155361)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】