説明

液滴吐出装置、および画像形成装置

【課題】キャップ部材内吸収体の乾燥防止メンテナンスに要する時間を軽減する。
【解決手段】ノズル部を備えた記録ヘッド31と、ノズルの開口を封止するキャップ部材82と、キャップ部材内に配置され液体を保持するキャップ部材内吸収体500と、キャップ部材にノズルから液体を吐出させる補充吐出手段と、キャップ部材から液体の吸引を行うチュービングポンプ211と、を備えた液滴吐出装置において、キャップ部材82内の乾燥度合いを計測する乾燥度計測手段と、計測手段で計測された乾燥度合いに基づいて前記補充吐出手段を駆動する第1の動作、および前記補充吐出実施時と同時、またはそれに先き立って前記吸引手段を駆動する第2の動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクなどの液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置、およびこの液滴吐出装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置としてインクを液滴(インク滴)としてインク吐出ノズルから噴射して記録紙などの記録媒体に画像を形成するインクジェットプリンターが広く使用されている。このインクジェットプリンターでは、インク吐出ノズル内のインクが乾燥すると正常な吐出ができなくなるため、インクの乾燥を抑え、あるいは乾燥した状態から回復させる必要がある。
【0003】
このため、インクジェットプリンターには、インク吐出ノズルの開口を封止(キャッピング)するためのキャップ部材が設けられており、インクジェットプリンターの非稼働時にインク吐出ノズルをキャップ部材でキャッピングして、インク吐出ノズル内のインクの乾燥を抑えるようにしている。
【0004】
また、このようなキャップ部材には、インクをインク吐出ノズルから吸い出す吸引手段が備えられている。インク吐出ノズルをキャッピングした状態で、吸引手段を駆動して、インク吐出ノズルからインクを吸引する動作、すなわちヘッド吸引(ノズル吸引)動作を行い、ノズル内から乾燥したインクを排除する。
【0005】
また、画像形成動作の前後や、その最中において紙面外の領域にインクの吐出を行うことにより、インク吐出ヘッドの吐出性能の回復、維持を図るノズルメンテナンスも行われる。このようなノズルメンテナンスのための吐出は空吐出と呼ばれ、この空吐出ではキャップ部材内にインクを吐出することが多い。
【0006】
また、キャップ部材内にはインクを保持するための吸収体(保湿部材)が設けられることがある。この吸収体は、吸収体中に保持されるインクの水分で、キャッピングされた封止空間内を高湿に保つ。
【0007】
しかし、インクを保持するための吸収体を備えたキャップ部材内にインクを空吐出すると、時間が経過するにつれて吸収体が乾燥し、キャッピング時に吸収体がノズル内の水分を奪ってノズル内のインクの粘度が増すことがある。
【0008】
すなわち、キャップ部材内の吸収体に保持されたインクが乾燥して、吸収体がノズル内の水分を奪い、ノズル内のインクの粘度が増すことによりインク吐出不良などの問題が発生することとなるのである。このような問題を解決するため、以下の技術が提案されている。
【0009】
特許文献1には、キャッピングされた状態でノズル内のインク乾燥防止をするため、キャップ部材内の吸収体にたまった乾燥した古いインクを効率的に排除する技術が開示されている。すなわち、特許文献1には、キャップ部材内に吐出する予備吐出インク量があらかじめ定められた値になると、キャップ部材内にインクの補充吐出をし(予備吐出量の数倍〜数十倍吐出し)、続く動作でキャップ部材内を吸引して補充したインクとともにキャップ部材内の古いインクを排出するものが記載されている。
【0010】
また、特許文献2には、キャッピングされた状態でのノズル内のインク乾燥防止をするため、キャップ部材内吸収体のインク乾燥を防止する技術が開示されている。すなわち、特許文献2には、キャッピングされていない状態の経過時間(デキャップ累積時間)を計測し、このデキャップ累積時間があらかじめ定めた閾値以上に達したときに、ヘッド吸引(ノズル吸引)を行い、その後キャップ部材内の吸収体にインクを補給し、キャップ部材内吸収体のインク乾燥状態を回復するものが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1および、特許文献2に記載の発明は、キャップ部材の乾燥防止メンテナンスに長い時間が掛かるという問題がある。
【0012】
本発明は上述の点にかんがみてなされたものであり、キャップ部材内吸収体の乾燥防止メンテナンスに要する時間を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る液滴吐出装置は、液体を液滴として吐出するノズル部を備えた液滴吐出ヘッドと、前記ノズルの開口を封止するキャップ部材と、前記キャップ部材内に配置され液体を保持する吸収体と、前記キャップ部材に前記ノズルから液体を吐出させる補充吐出手段と、前記キャップ部材から前記液体の吸引を行う吸引手段と、を備えた液滴吐出装置において、前記キャップ部材内の乾燥度合いを計測する乾燥度計測手段と、前記計測手段で計測された乾燥度合いに基づいて前記補充吐出手段を駆動する第1の動作、および前記補充吐出実施時と同時、またはそれに先き立って前記吸引手段を駆動する第2の動作を行う制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、キャップ部材内の乾燥度に基づいて、キャップ部材内へのインクの補充吐出とキャップ部材内吸引を並列的に行うので、キャップ部材内吸収体の乾燥防止メンテナンスにおけるメンテナンス時間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1に係る画像形成装置の一例を示す前方側からの斜視図である。
【図2】同画像形成装置の機構部の概略を示す断面図である。
【図3】同画像形成装置の機構部の要部を示す平面図である。
【図4】同画像形成装置の維持回復機構を示す説明図である。
【図5】同画像形成装置の制御部の概要を説明するブロック図である。
【図6】同画像形成装置の印刷制御部の一例を示すブロック図である。
【図7】キャップ内残留インクによる吸湿作用の説明に供する断面図である。
【図8】実施形態1の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】従来技術と実施形態1に係る画像形成装置の処理手順を比較するものであり、(a)は従来例の処理手順を示すフローチャート、(b)実施形態1の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】実施形態1に係る画像形成装置の乾燥度合い測定の手順を示すフローチャートである。
【図11】実施形態1に係る画像形成装置の乾燥度合い計測手段の具体的な計測例を示す表である。
【図12】実施形態2に係る画像形成装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】実施形態2に係る画像形成装置の処理手順を比較するものであり、(a)は第3の動作の処理手順を示すフローチャート、(b)は第2の動作の処理手順を示すフローチャートである。
【図14】実施形態3に係る画像形成装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下では単に実施形態と記載する)に係る液滴吐出装置、および画像形成装置について説明する。
【0017】
<実施形態1>
以下、実施形態1に係る画像形成装置を図面に基づいて説明する。図1は実施形態1に係る画像形成装置の一例を示す前方側からの斜視図である。この画像形成装置は、装置本体1と、装置本体1に装着された用紙を配置するための給紙トレイ2と、装置本体1に着脱自在に装着されて画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ3とを備えている。
【0018】
さらに、装置本体1の前面の一端部側(給紙トレイ2および排紙トレイ3の側方)には、前面から装置本体1の前方側に突き出し、上面よりも低くなったインクカートリッジを配置するためのカートリッジ配置部4を備える。また、このカートリッジ配置部4の上面を操作ボタンや表示器などを設ける操作/表示部5としている。
【0019】
このカートリッジ配置部4には、色の異なる記録液(インク)、例えば黒(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数の記録液カートリッジであるインクカートリッジ10k、10c、10m、10yを、装置本体1の前面側から後方側に向かって挿入して配置可能としている。
【0020】
また、このカートリッジ配置部4の前面側には、インクカートリッジ10を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)6を開閉可能に設けている。なお、インクカートリッジ10k、10c、10m、10yについては、色を区別しないときは「インクカートリッジ10」という。
【0021】
また、操作/表示部5には、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの残量がニアーエンドおよびエンドになったことを表示するための各色の残量表示部11k、11c、11m、11yを配置している。この残量表示部11k、11c、11m、11yは、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの装着位置(配置位置)に対応する位置に配置される。さらに、この操作/表示部5には、電源ボタン12、用紙送り/印刷再開ボタン13、キャンセルボタン14を配置している。
【0022】
次に、この画像形成装置の機構部について説明する。図2は実施形態1に係る画像形成装置の機構部の概略を示す断面図、図3は同画像形成装置の機構部の要部を示す平面図である。図示しない左右の側板間に架け渡したガイドロッド21とステー22とでキャリッジ23を主走査方向に移動自在に保持する。キャリッジ23は、主走査モータ24によって駆動プーリ25と従動プーリ26間に架け渡したタイミングベルト27を介して図3中の矢印で示した方向(キャリッジ走査方向:主走査方向)に移動走査される。
【0023】
このキャリッジ23には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する液滴吐出ヘッドである記録ヘッド31k、31c、31m、31yを複数のインク吐出口を主走査方向と交差する方向に配列している。ここで、記録ヘッド31k、31c、31m、31yは、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。なお、記録ヘッド31k、31c、31m、31yについて、色を区別しないときは「記録ヘッド31」という。
【0024】
記録ヘッド31は、インク滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段を備える。圧力発生手段としては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを使用できる。
【0025】
また、キャリッジ23には、記録ヘッド31に各色のインクを供給するための各色のサブタンク32を搭載している。この各色のサブタンク32には各色のインク供給チューブを介して、カートリッジ配置部4に装着された各色のインクカートリッジ10から各色のインクが補充供給される。
【0026】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上には用紙42が配置される。この用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離して搬送する半月コロ(給紙コロ)43、分離パッド44を備える。分離パッド44は、給紙コロ43に対向して配置され、摩擦係数の大きな材質からなり、給紙コロ43側に押し付けられている。
【0027】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド31の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンターローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備える。さらに、搬送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド31に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備える。
【0028】
搬送ベルト51は、環状のベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に架け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回する。この搬送ベルト51は、例えば、抵抗制御を行っていない純粋な厚さ40μm程度の樹脂材、例えばETFEピュア材で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏側層(中抵抗層、アース層)とを有している。
【0029】
そして、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に所定の押し付け力を掛けている。なお、搬送ローラ52はアースローラの役目も担っており、搬送ベルト51の中抵抗層(裏側層)と接触配置され接地している。
【0030】
また、搬送ベルト51の裏側には、記録ヘッド31による印刷領域に対応してガイド部材57を配置している。このガイド部材57は、上面が搬送ベルト51を支持する2つのローラ(搬送ローラ52とテンションローラ53)の接線よりも記録ヘッド31側に突き出させることで搬送ベルト51の高精度な平面性を維持するようにしている。
【0031】
この搬送ベルト51は、副走査モータ58によって駆動ベルト59およびプーリ60を介して搬送ローラ52が回転駆動されることによってベルト搬送方向(副走査方向:図3参照)に周回移動する。
【0032】
さらに、記録ヘッド31で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62および排紙コロ63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0033】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンターローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0034】
さらに、図3に示すように、キャリッジ23の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド31のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構81を配置している。
【0035】
この維持回復機構81には、記録ヘッド31の各ノズル面をキャッピングするためのキャップ部材82a〜82dと、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード83と、粘度が増した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84などを備えている。ここでは、キャップ部材82aを吸引および保湿用キャップ部材(吸引用キャップ部材)とし、他のキャップ部材82b〜82dは保湿用キャップ部材としている。なお、キャップ部材82a〜82dについては、色を区別しないときは「キャップ部材82」という。
【0036】
また、キャリッジ23の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに粘度が増した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置している。この空吐出受け88には記録ヘッド31のノズル列方向に沿った開口89a〜89dを設けている。
【0037】
このように構成したインクジェット記録装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド部材45で案内され、搬送ベルト51とカウンターローラ46との間に挟まれて搬送され、さらに先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0038】
このとき、図示しない制御部によってACバイアス供給部から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が搬送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0039】
そこで、キャリッジ23を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド31を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号または用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0040】
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ23は維持回復機構81側に移動されて、キャップ部材82で記録ヘッド31がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。さらに、キャップ部材82a(吸引用キャップ部材)で記録ヘッド31をキャッピングした状態で図示しない吸引ポンプによってノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」または「ヘッド吸引」という。)し、粘度が増した記録液や気泡を排出する回復動作を行うことができる。
【0041】
また、キャップ部材82a(吸引用キャップ部材)が記録ヘッド31をデキャップした状態(キャッピングしていない状態)で吸引ポンプによってノズルから記録液を吸引し(「キャップ部材内吸引」という。)し、吸引用キャップ部材82a内のインクを排除することができる。
【0042】
また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出(一部の場合における吐出は「補充吐出」という。)動作を行う。これによって、記録ヘッド31の安定した吐出性能を維持する。
【0043】
空吐出実施箇所は、空吐出受け84や空吐出受け88に吐出しても良いし、キャップ部材82a(吸引用キャップ部材)内に吐出することも可能である。本文内で空吐出位置に関して特に記載していない箇所は、どちらに吐出しても構わないものとする。
【0044】
空吐出の一部の場合における吐出、「補充吐出」について説明する。補充吐出とは、キャップ部材内吸収体乾燥防止目的のための動作であり、キャップ部材内の吸収体にインクを補充するために実行される動作のことである。補充吐出は、空吐出同様記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出であり、キャップ部材内にインク滴を吐出することにより行われる。また、常にキャップ部材内吸引と共に実行されるものであり、1動作あたりの吐出量は空吐出数倍ないし数十倍程度以上とし、キャップ部材内吸収体内のインク乾燥を回復できる相当量の吐出量としている。補充吐出により、キャップ部材内吸収体内のインク乾燥状態を回復できる。
【0045】
次に、維持回復機構81の概要について説明する。図4は同画像形成装置の維持回復機構を示す説明図である。この維持回復機構81には、前述したように、吸引および保湿用キャップ部材82aと、保湿用キャップ部材82bを保持する保持機構を含むキャップ部材ホルダ201Aと、保湿用キャップ部材82cと保湿用キャップ部材82dを保持する保持機構を含むキャップ部材ホルダ201Bと、記録ヘッド31のノズル面31aを清浄化する(拭き取る)ための弾性体からなるブレードであるワイパーブレード83を保持するブレードホルダ203と、記録ヘッド31から印字に寄与しない液滴を吐出する空吐出動作(予備吐出動作)を行うための空吐出受け84とが配置されている。
【0046】
ここで、印字領域に最も近い側の吸引用および保湿用キャップ部材82aにはフレキシブルチューブ210を介して吸引手段であるチュービングポンプ(吸引ポンプ)211を接続している。したがって、記録ヘッド31の維持回復動作を行うときには、回復動作を行う記録ヘッド31をキャップ部材82aによってキャッピング可能な位置に選択的に移動させる。
【0047】
なお、この吸引用および保湿用キャップ部材82aには図示しないが内部に保湿部材を設けて、保湿をすることにより維持回復動作を行うときの後述する閾値を大きくして維持回復動作回数を低減でき、記録液の無駄な消費や回復動作にともなう印刷待機時間を短縮することができる。
【0048】
また、これらのキャップ部材ホルダ201A、201Bの下方にはフレーム212に回転自在に支持したカム軸213を配置し、このカム軸213には、キャップ部材ホルダ201A、201Bを昇降させるためのキャップ部材カム214A、214Bと、ブレードホルダ203を昇降させるためのワイパーカム215をそれぞれ設けている。
【0049】
そして、チュービングポンプ211およびカム軸213を回転駆動するために、モータ221の回転をモータ軸221aに設けたモータギア222に、チュービングポンプ211のポンプ軸211aに設けたポンプギア223をかみ合わせ、さらにこのポンプギア223と一体の中間ギア224に中間ギア225を介して一方向クラッチ227付きの中間ギア226をかみ合わせ、この中間ギア226と同軸の中間ギア228に中間ギア229を介してカム軸213に固定したカムギア230をかみ合わせている。
【0050】
この維持回復機構81においては、モータ221が正転することによってモータギア222、中間ギア224、ポンプギア223、中間ギア225、226までが回転し、チュービングポンプ211のポンプ軸211aが回転することでチュービングポンプ211が作動して、吸引用キャップ部材82a内を吸引する。その他のギア228以降は一方向クラッチ227によって回転が遮断されるので回転(作動)しない。
【0051】
また、モータ221が逆転することによって、一方向クラッチ227が連結されるので、モータ221の回転が、モータギア222、中間ギア224、ポンプギア223、中間ギア225、226、228、229を経てカムギア230に伝達され、カム軸213が回転する。
【0052】
このとき、チュービングポンプ211はポンプ軸211aの逆転では作動しない構造となっている。このカム軸213の回転によってキャップ部材カム214A、214Bおよびワイパーカム215がそれぞれ所定のタイミングで上昇、下降する。
【0053】
なお、記録ヘッド31のノズル面31aを清掃するときにはワイパーブレード83を上昇させた状態にして、記録ヘッド31をワイパーブレード83に相対的に移動させることによってノズル面31aをワイピングする。
【0054】
この維持回復機構のように複数のキャップ部材を備えて、複数のキャップ部材のうちの少なくとも1つは吸引手段に連結(連通)されない保湿キャップ部材とすることによって、維持回復動作回数を低減することができ、無駄な記録液の消費や回復動作に掛かる時間を短くすることができる。
【0055】
また、吸引用キャップ部材に対する記録ヘッドのみ維持回復動作を行うようにすることで過不足のない回復動作を行うことができる。さらに、記録ヘッドの数とキャップ部材の数を同じにすることによって維持回復機構のサイズを大きくすることがなく、部品点数の削減、装置の小型化を図れる。
【0056】
なお、この画像形成装置に使用する記録液(インク)は、水分蒸発にともなう粘度上昇率(mPa・s/%)がインク全重量に対する水分蒸発率30%までは1.0以下であり、かつ、水分蒸発率30〜45%の間に粘度上昇率が50を越える点を持つこと、粘度上昇率が50を越える点での、インク中の着色剤の平均粒子径が、初期平均粒子径の5倍以下であり、かつ0.8μm以下とすることが好ましい。
【0057】
このような記録液を使用することによって、長期放置でもノズル目詰まりを起こさず、普通紙上での高画質化および高速印字を達成できる。しかも、この記録液は、仮に、ノズル内の記録液が乾燥し粘度が増すことによりノズルから吐出できなくなったとしても、顔料などが粗大粒子化してノズル詰まりを発生するわけではないため、簡単な維持回復動作により容易に回復できるという利点を有している。
【0058】
次に、実施形態1に係る画像形成装置の制御部の概要について説明する。図5は同制御部の全体ブロック説明図である。この制御部は、この画像形成装置全体を制御する。制御部は、初期動作に関する制御をする手段などを兼ねたマイクロコンピューターで構成した主制御部301および印刷制御をつかさどるマイクロコンピューターで構成した印刷制御部302を備えている。
【0059】
そして、主制御部301は、通信回路300から入力される印刷処理の情報に基づいて用紙42に画像を形成する。このために、主制御部301は、主走査モータ24や副走査モータ58を主走査モータ駆動回路303および副走査モータ駆動回路304を介して駆動制御するとともに、印刷制御部302に対して印刷用データを送出するなどの制御を行う。
【0060】
また、主制御部301には、キャリッジ23の位置を検出するキャリッジ位置検出回路305からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいてキャリッジ23の移動位置および移動速度を制御する。キャリッジ位置検出回路305は、例えばキャリッジ23の走査方向に配置されたエンコーダシートのスリット数を、キャリッジ23に搭載されたフォトセンサーで読み取って計数することで、キャリッジ23の位置を検出する。
【0061】
主走査モータ駆動回路303は、主制御部301から入力されるキャリッジ移動量に応じて主走査モータ24を回転駆動させて、キャリッジ23を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0062】
また、主制御部301には搬送ベルト51の移動量を検出する搬送量検出回路306からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいて搬送ベルト51の移動量および移動速度を制御する。
【0063】
搬送量検出回路306は、例えば搬送ローラ52の回転軸に取り付けられた回転エンコーダシートのスリット数を、フォトセンサーで読み取って計数することで搬送量を検出する。副走査モータ駆動回路304は、主制御部301から入力される搬送量に応じて副走査モータ58を回転駆動させて、搬送ローラ52を回転駆動して搬送ベルト51を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0064】
主制御部301は、給紙コロ駆動回路307に給紙コロ駆動指令を与えることによって給紙コロ43を1回転させる。主制御部301は、維持回復機構駆動用モータ駆動回路308を介して維持回復機構81のモータ221を回転駆動することにより、前述したようにキャップ部材82の昇降、ワイパーブレード83の昇降、チュービングポンプ211の駆動などを行わせる。
【0065】
主制御部301は、インク供給モータ駆動回路311を介して供給ユニットのポンプを駆動するためのインク供給モータを駆動制御し、カートリッジ配置部4に配置されたインクカートリッジ10からサブタンク32に対してインクを補充供給する。このとき、主制御部301には、サブタンク32が満タン状態にあることを検知するサブタンク満タンセンサー312からの検知信号に基づいて補充供給を制御する。
【0066】
また、主制御部301は、カートリッジ通信回路314を通じて、カートリッジ配置部4に装着された各インクカートリッジ10に設けられる記憶手段である不揮発性メモリ316に記憶されている情報を取り込む。そして、主制御部301は、所要の処理を行って、本体記憶手段である不揮発性メモリ(例えばEEPROM)315に格納保持する。
【0067】
また、主制御部301には、環境温度、環境湿度を検知する環境センサー313からの検知信号が入力される。印刷制御部302は、主制御部301からの信号とキャリッジ位置検出回路305および搬送量検出回路306などからのキャリッジ位置や搬送量に基づいて、記録ヘッド31の液滴を吐出させるための圧力発生手段を駆動するためのデータを生成する。このデータは、上述した画像データをシリアルデータでヘッド駆動回路310に転送される。

また主制御部301は、画像データの転送および転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、滴制御信号(マスク信号)などをヘッド駆動回路310に出力する。さらに主制御部301は、ROMに格納されている駆動信号のパターンデータをD/A変換するD/A変換器および電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部およびヘッドドライバーに与える駆動波形選択手段を含む。これにより、主制御部301は、1の駆動パルス(駆動信号)あるいは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッド駆動回路310に対して出力する。
【0068】
ヘッド駆動回路310は、駆動信号を選択的に記録ヘッド31の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば前述したような圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド31を駆動する。この駆動信号は、シリアルに入力される記録ヘッド31の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部302から与えられる駆動波形を構成する。
【0069】
このとき、駆動波形を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴(大ドット)、中滴(中ドット)、小滴(小ドット)など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0070】
次に、印刷制御部302およびヘッド駆動回路(ヘッドドライバー)310の一例について説明する。図6はヘッド駆動回路を示すブロック図である。印刷制御部302は、上述したように、1印刷周期内に複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する駆動波形生成部401と、印刷画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号M0〜M3を出力するデータ転送部402とを備えている。
【0071】
なお、滴制御信号M0〜M3は、ヘッド駆動回路310の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチ415の開閉を滴ごとに指示する2ビットの信号である。また滴制御信号M0〜M3は、共通駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべき波形でHレベル(オン)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(オフ)に状態遷移する。
【0072】
ヘッド駆動回路310は、ラッチ回路412と、デコーダ413と、レベルシフタ414と、アナログスイッチ415とを備えている。ラッチ回路412は、データ転送部402からの転送クロック(シフトクロック)およびシリアル画像データ(階調データ:2ビット/CH)を入力するシフトレジスタ411と、シフトレジスタ411の各レジスト値をラッチ信号によってラッチする。また、デコーダ413は、階調データと滴制御信号M0〜M3をデコードして結果を出力する。レベルシフタ414は、デコーダ413のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ415が動作可能なレベルへとレベル変換する。そして、アナログスイッチ415は、レベルシフタ414を介して与えられるデコーダ413の出力でオン/オフ(開閉)される。
【0073】
アナログスイッチ415は、各圧電素子121の選択電極(個別電極)154に接続され、駆動波形生成部401からの共通駆動波形が入力されている。したがって、シリアル転送された画像データ(階調データ)と制御信号M0〜M3をデコーダ413でデコードした結果に応じてアナログスイッチ415がオンにすることにより、共通駆動波形を構成する所要の駆動信号が通過して(選択されて)圧電素子121に印加される。
【0074】
次に、キャップ部材内残存インクによる吸湿作用について説明する。図7はキャップ部材内の状態を示す模式図である。維持回復機構81によるヘッド回復動作時には、前述したように、記録ヘッド31のノズル面31aをキャップ部材82aでキャッピングしてノズル104からインクを吸引排出(ヘッド吸引)させた後、ノズル面31a表面の汚れを排出したインクとともにワイパーブレード83によってワイピングしてかき落として清浄化する。このヘッド吸引動作により、吸引用キャップ部材82a内に新規のインクが浸透し、吸引用キャップ部材内吸収体のインク乾燥状態を回復させることができる。
【0075】
あるいは、前述した補充吐出により、吸引用キャップ部材内吸収体内のインク乾燥状態を回復できる。キャップ部材内吸収体内にインクが浸透している間(乾燥がひどく進んでしていない間)は、キャッピング状態とすることで、ヘッドノズル内の保湿性を保つことができる。
【0076】
維持回復機構81によるヘッド回復動作時には、前述したように、記録ヘッド31のノズル面31aをキャップ82aでキャッピングしてノズル104からインクを吸引排出させた後、ノズル面31a表面の汚れを排出したインクとともにワイパーブレード83によってワイピングしてかき落として清浄化する。
【0077】
しかし、図7(a)に示すように、デキャップ部材状態(キャッピングしていない状態)が続くと、キャップ部材内吸収体500内のインクの乾燥が進む。同図(b)に示すように、この乾燥したキャップ部材内吸収体500によって記録ヘッド31のノズル面31aをキャッピングした状態で放置すると、乾燥したキャップ部材内吸収体500が記録ヘッド31のノズル104内にインクから水分を吸収する吸湿作用が生じて、ノズル104内のインクが吸湿されて粘度が増す。
【0078】
このようにして記録ヘッド31のノズル104内に粘度が増したインクが生じると、液滴吐出時に吐出方向が曲がったり、吐出不能になったりして、印字品質の劣化を招くことになる。
【0079】
後述するように、実施形態1では、キャップ部材内吸収体の乾燥による不吐出が発生しないように、キャップ部材内吸収体の乾燥度合いが進みすぎる前にキャップ部材内吸収体の乾燥防止メンテナンスを行う。ここで、乾燥度は図示していない湿度検出器で行うことができる。
【0080】
次に乾燥防止メンテナンスについて説明する。図8は実施形態1に係る液滴吐出装置、および画像形成装置の処理手順を示すフローチャートである。実施形態1では、記録ヘッド31からキャップ部材82が外されてキャッピングが解除されると(ステップSA1)、記録ヘッド31は空吐出を行う(ステップSA2)。そして、画像形成(ステップSA3)がなされた後、キャップ部材内吸収体500の乾燥度合いを計測し、乾燥度合い情報を更新し(ステップSA4)、乾燥度合いがあらかじめ定められた所定の度合い以上であるかを判定する(ステップSA5)。乾燥度合いが所定の値を超えた場合(ステップSA5のYes)は、キャップ部材内吸収体500の乾燥防止メンテナンスを行い(ステップSA7)、キャップ内乾燥度合いフラグを「0」にリセット更新する(ステップSA8)
【0081】
一方、乾燥度合いが所定の値を超えない場合(ステップSA5のNo)は、画像形成パターンデータが残っているかを確認して(ステップSA8)、残っている場合(ステップSA8のYes)は、さらにステップSA3〜SA8の処理を繰り返す。一方、画像形成パターンデータが残っていない場合(ステップSA8のNo)は、キャッピングを行い、印刷動作を終了する。
【0082】
実施形態1では、乾燥度合い情報更新タイミングや実施タイミングを印刷時として記載しているが、このタイミングは「印刷前」「印刷後」「電源オフからオン」「電源オンからオフ」等、いつでも良い。キャップ部材内吸収体の乾燥度合いを計測し、乾燥度合いがあらかじめ定められた所定の度合いを超えた場合は、キャップ内吸収体乾燥防止メンテナンスを実施する。
【0083】
また上記例では、乾燥度合い情報更新タイミングや実施タイミングを印刷時の例として記載しているが、タイミングは「印刷前」「印刷後」「電源オフからオン」「電源オンからオフ」等、いつでも良い。
【0084】
図9は従来技術と実施形態1に係る画像形成装置の処理手順を比較するものであり、(a)は従来例の処理手順を示すフローチャート、(b)実施形態1の処理手順を示すフローチャートである。実施形態1では、図9(b)に示すように、第1の動作である補充吐出実施(SB11、SB12)と同時、またはこれに先き立って吸引手段による第2の動作であるキャップ内吸引(SB13)を行う。実施形態1では、キャップ部材内補充吐出とキャップ部材内吸引を並列的に行うので、キャップ部材内吸収体の乾燥防止メンテナンスのメンテナンス時間を軽減することができる。
【0085】
ここで、第1の動作に「A+B」秒、第2の動作に「C2」秒掛かるとき、C2≧A+Bの関係を保持すると、補充吐出中は随時キャップ部材内を吸引していることとなる。このため、補充吐出の補充吐出量がいかなる量であろうとインクのあふれを防止することができる。
【0086】
ここで、従来技術での処理では、図9(a)に示すように、キャップ部材内補充吐出(SB1)にB秒、キャップ内吸引(SB2)にC1秒、合計「B+C1」秒掛かっていた。実施形態1の処理時間「A+B」が従来例の処理時間「A+B」より短くでき、処理時間を短縮できる。
【0087】
実施形態1に係る液滴吐出装置では、以下のようにキャップ部材内の乾燥度合いを検出することができる。図10は実施形態1に係る画像形成装置の乾燥度合い測定の手順を示すフローチャートである。すなわち、乾燥度合いは、温湿度環境情報や、キャッピングされていない時間情報(デキャップ時間)を読み取り、これらに基づいて乾燥度合いを更新し(SC1)、計測する。図11は実施形態1に係る画像形成装置の乾燥度合い計測手段の具体的な計測例を示す表である。実施形態1では、図11に示すように、前回情報更新時からのデキャップ時間が10秒の場合は温湿度情報が「HL」のとき温湿度補正係数を「3」、同じく「MM」のとき「1」、同じく「LL」のとき「2」を乗算し、乾燥度合いの進み方を異ならせ、更新させる。ここで、温湿度情報のH、M、Lは、高、中、低を示し、これらの基準はあらかじめ定めておく。
【0088】
<実施形態2>
前記実施形態1における第2の動作によるキャップ部材内乾燥防止メンテナンスは、キャップ部材内乾燥状態を回復するが、特許文献1に記載されたものに比べ、キャップ部材内吸収体上部に乾燥したインクが残存しやすい。このため実施形態2では、制御部は、実施形態1の第2の動作に加えて第3の動作を必要に応じて使い分けるものとする。
【0089】
以下、実施形態2に係る液滴吐出装置で、キャップ部材内残存インクを効率的に排除できる理由について説明する。実施形態2では、新規の液体を吸収体に補充(補充吐出)した上でキャップ部材内吸引を行うようになっているため、予備吐出による吸収体内に蓄積された古い(湿潤成分が失われた)液体を、新規の液体で洗い流して好適に排出させることができる。実施形態2に係る液滴吐出装置は、実施形態1の構成に加えて、キャップ部材内に蓄積された乾燥インクのインク蓄積量を計測するインク蓄積量計測手段を備え、
第3の動作としてインク蓄積量があらかじめ定められた量よりも多い場合は、補充吐出の実施後に前記吸引手段による吸引を実行させる。
【0090】
図12は実施形態2に係る画像形成装置の処理手順を示すフローチャート、図13は実施形態2に係る画像形成装置の処理手順を比較するものであり、(a)は第3の動作の処理手順を示すフローチャート、(b)は第2の動作の処理手順を示すフローチャートである。
【0091】
図12に示すように、キャップ部材内のインクの蓄積量が小さい場合(SD1のYes)、ノズル内乾燥へ影響が小さいので、メンテナンス時間の短い第2動作によるメンテナンスを実行する(SD3)。一方、キャップ部材内のインクの蓄積量が多い場合は第3の動作によるメンテナンスを実施し、キャップ部材内に蓄積されたインクを排除する(SD3)。このように、インクの蓄積量が小さい条件においては、第2の動作により、キャップ部材内への補充吐出とキャップ部材内の吸引とを並列的に行うので、キャップ部材内吸収体の乾燥防止メンテナンスのメンテナンス時間を軽減することができる。
【0092】
実施形態2では、蓄積量が多い条件においては、第3の動作により、キャップ部材内に蓄積されたインクを効率的に排除することができる。
【0093】
<実施形態3>
実施形態2に係る液滴吐出装置において、キャップ部材内の乾燥状態は、前述したようにデキャップ部材時間に応じて主に進むが、キャッピング状態においても時間と共に進む。つまり、あらゆる状態キャップ部材内乾燥状態は進み、キャップ部材内乾燥防止メンテナンスを必要とするタイミングもさまざまである。
【0094】
キャップ部材内乾燥防止メンテナンスを必要とするタイミングで想定できるのは、
(1)電源オフからオン時…ユーザーが使用する前に電源オンを入れるため、直後に使用する可能性が高い。
(2)印刷開始前…印刷命令があるので、直後に使用する可能性が高い。
(3)印刷開始中…印刷命令があるので、直後に使用する可能性が高い。
(4)印刷終了後…印刷命令に続けて、印刷命令を送ることを想定し、直後に使用する可能性が高い。
(5)電源オンからオフ時…装置使用後に電源をオフすることを想定し、直後に使用する可能性が低い。
等がある。
【0095】
実施形態3では、ユーザーが画像形成装置を直後に使用する可能性が高いタイミングと、そうでない場合のタイミングで、第2の動作と第3の動作を使い分ける。
【0096】
実施形態3に係る液滴吐出装置は、キャップ部材内の乾燥防止の実施タイミングにより、前記(1)〜(5)に示した使用可性を考慮して、第2の動作と第3の動作とを使い分ける。すなわち、ユーザーが画像形成装置を直後に使用する可能性が高いタイミングのとき、例えば、電源オフからオンであるとき、および(1)、(2)、(3)、(4)のとき、メンテナンス時間の短い第2の動作によるメンテナンスを実行し、メンテナンス時間短縮を図る。
【0097】
図14は実施形態3に係る画像形成装置の処理手順を示すフローチャートである。実施形態3では、図14に示すように、メンテナンスのタイミングが電源オンからオフ時であるかを判定する(SF1)。電源オンからオフである場合には、第2の動作によるメンテナンスを実行する(SF2)。
【0098】
一方、同タイミングが電源オフからオン時でないとき(SF1のNo)、タイミングが印刷の前、印刷中、印刷後であるかを判定し(SF3)する。そうであるときは(SB3のYes)第2の動作によるメンテナンスを実行し、そうでないとき、すなわち前記(5)電源オンからオフで直後に使用の可能性が低いとき、第3の動作によるメンテナンスを実行する(SF4)。
【0099】
実施形態3によれば、ユーザーが画像形成装置を直後に使用する可能性が高いタイミングのときは、メンテナンス時間の短い第2の動作によるメンテナンスを実行するので、ユーザーの印刷待ち時間を軽減することができる。
【符号の説明】
【0100】
10 インクカートリッジ
31 記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
31k、31c、31m、31y 記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
82 キャップ部材
82a〜82d キャップ部材
83 ワイパーブレード
84 空吐出受け
88 空吐出受け
300 通信回路
301 主制御部
302 印刷制御部
303 主走査モータ駆動回路
304 副走査モータ駆動回路
305 キャリッジ位置検出回路
306 搬送量検出回路
307 給紙コロ駆動回路
308 維持回復機構駆動用モータ駆動回路
310 ヘッド駆動回路
311 インク供給モータ駆動回路
312 サブタンク満タンセンサー
313 環境センサー
500 キャップ部材内吸収体(吸収体)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0101】
【特許文献1】特開2007−230204公報
【特許文献2】特開2007−130861公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を液滴として吐出するノズル部を備えた液滴吐出ヘッドと、
前記ノズルの開口を封止するキャップ部材と、
前記キャップ部材内に配置され液体を保持する吸収体と、
前記キャップ部材に前記ノズルから液体を吐出させる補充吐出手段と、
前記キャップ部材から前記液体の吸引を行う吸引手段と、
を備えた液滴吐出装置において、
前記キャップ部材内の乾燥度合いを計測する乾燥度計測手段と、
前記計測手段で計測された乾燥度合いに基づいて前記補充吐出手段を駆動する第1の動作、および前記補充吐出実施時と同時、またはそれに先き立って前記吸引手段を駆動する第2の動作を行う制御部と、
を備えることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記乾燥度計測手段が、前記乾燥度合いを前記液滴吐出ヘッドが前記キャップ部材でキャッピングされていない状態の累積時間である非キャッピング累積時間に基づいて計測することを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
環境温度を検知する環境条件検知手段を備え、
前記乾燥度計測手段が、前記環境温度条件と前記非キャッピング累積時間に基づいて計測することを特徴とする請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記補充吐出の吐出量が、前記吸収体体積よりも多くなるよう設定されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記キャップ部材内に蓄積された乾燥インクのインク蓄積量を計測するインク蓄積量計測手段を備え、
前記制御部が、
インク蓄積量があらかじめ定められた量よりも少ない場合は、前記第2の動作を行い、
インク蓄積量があらかじめ定められた量よりも多い場合は、補充吐出の実施後に前記吸引手段による吸引を実行させる第3の動作を行うことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記インク蓄積量計測手段が、前記インク蓄積量を前記第2の動作による吸引の累積回数に基づいて計測し、
前記第3の動作による吸引実施時には、前記累積回数をリセットすることを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
ユーザーが直後に装置を使用することが想定される場合、
前記制御部が、第2の動作を実行することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記ユーザーが直後に装置を使用することが想定される場合が、印刷前、印刷間、印刷終了後、電源オン時のいずれかを含むことを特徴とする請求項7に記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれかに記載の液滴吐出装置と、前記液滴吐出ヘッドが液滴を吐出する記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−254550(P2012−254550A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128378(P2011−128378)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】