説明

液滴吐出装置および液滴吐出装置の洗浄方法

【課題】より効率的に液滴吐出ヘッドを洗浄することのできる液滴吐出装置およびその洗浄方法を提供すること。
【解決手段】液滴吐出装置100は、洗浄ヘッド210を液滴吐出ヘッド110に対して接触させた状態で、移動手段290によって、洗浄ヘッド210を液滴吐出ヘッド110に対して相対的に移動させながら、第1の開口216から該第1の開口216に覆われたノズル118を介して液滴吐出ヘッド110内に洗浄液貯留槽から送液された洗浄液2を供給するとともに、第2の開口214から第2の開口214に覆われたノズル118を介して液滴吐出ヘッド110内の洗浄液2を吸引するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置および液滴吐出装置の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、基板上に配線(導体パターン)用の液状材料や、カラーフィルター用の液状材料や、印刷用の液状材料を塗布する方法として、液滴吐出装置の液滴吐出ヘッドから液状材料を液滴状に吐出するインクジェット法が広く知られている(例えば、特許文献1参照)。
液滴吐出装置が備える液体吐出ヘッドは、ノズルが形成されたノズルプレートと、ノズルに連通し液状材料が充填されたキャビティと、キャビティ内の圧力を変化させる圧電素子とを有している。そして、圧電素子によってキャビティ内の圧力を高めることによりノズルから液状材料を液滴として吐出する。
【0003】
液滴吐出ヘッドから吐出される液状材料は、一般に、高粘度で固形分の含有率が高いため、液滴吐出ヘッドのノズルや吐出面に前記固形分が残存しやすい。そのため、例えば、液滴吐出ヘッドから液状材料を継続して吐出した場合、液状材料に含まれる成分が液滴吐出ヘッドのノズルや吐出面に付着し、液滴吐出ヘッドからの液状材料の吐出が不安定になる。
【0004】
このような問題を解消するために、従来では、例えば、液滴吐出ヘッドを基板上から退避させた状態で液滴吐出ヘッドから液滴を吐出することによる行う方法(つば吐き)により、液滴吐出ヘッドに存在する凝集物、付着物等を取り除き、液状材料等による汚れ、目詰まりの解消を行う。しかしながら、このような方法は、プロセス時間と液状材料の消費を伴う上、この方法のみでは十分に凝集物、付着物を取り除くことができない。また、再び液滴の吐出を行うと比較的短期間で液滴の吐出量が不安定になったり、ノズルが再び目詰まりしたりする問題があった。
また、液滴吐出ヘッドの洗浄方法として、液滴吐出装置内の液状材料を全て洗浄液に置換して洗浄を行う方法も知られている。しかしながら、このような方法では、洗浄液との置換によって、液滴吐出装置内の液状材料が無駄になり、インクロスが発生するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−84387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、より効率的に液滴吐出ヘッドを洗浄することのできる液滴吐出装置およびその洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液滴吐出装置は、液状材料を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽から送液された前記液状材料を吐出する複数のノズルを備えた液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドの洗浄に用いる洗浄液を貯留する洗浄液貯留槽と、
前記液滴吐出ヘッドに対して相対的に接離自在に設けられた洗浄ヘッドと、
前記洗浄ヘッドを前記液滴吐出ヘッドに対して接触させつつ、前記洗浄ヘッドと前記液滴吐出ヘッドとを相対的に移動させる移動手段とを有し、
前記洗浄ヘッドは、前記液滴吐出ヘッドと接触した状態にて、前記複数のノズルのうちの一部のノズルを覆う第1の開口と、前記第1の開口で覆われていない前記ノズルのうちの一部のノズルまたは全部のノズルを覆う第2の開口とを有し、
前記洗浄ヘッドを前記液滴吐出ヘッドに対して接触させた状態にて、前記移動手段によって前記洗浄ヘッドと前記液滴吐出ヘッドとを相対的に移動させつつ、前記第1の開口から該第1の開口に覆われた前記ノズルを介して前記液滴吐出ヘッド内に前記洗浄液貯留槽から送液された前記洗浄液を供給するとともに、前記第2の開口から該第2の開口に覆われた前記ノズルを介して前記液滴吐出ヘッド内の前記洗浄液を吸引するよう構成されていることを特徴とする。
これにより、より効率的に液滴吐出ヘッドを洗浄することのできる液滴吐出装置が得られる。
【0008】
本発明の液滴吐出装置では、前記洗浄ヘッドを前記液滴吐出ヘッドに対して接触させた状態で、前記第1の開口から該第1の開口に覆われた前記ノズルを介して前記液滴吐出ヘッド内に前記洗浄液を供給するとともに、前記第2の開口から該第2の開口に覆われた前記ノズルを介して前記液滴吐出ヘッド内の前記洗浄液を吸引する第1の状態と、前記第2の開口から該第2の開口に覆われた前記ノズルを介して前記液滴吐出ヘッド内に前記洗浄液を供給するとともに、前記第1の開口から該第1の開口に覆われた前記ノズルを介して前記液滴吐出ヘッド内の前記洗浄液を吸引する第2の状態とを交互に行うよう構成されていることが好ましい。
これにより、汚れに対して両方向から小刻みに負荷を加えることができ、汚れを除去(剥離)する確率を特に高めることができる。
【0009】
本発明の液滴吐出装置では、前記洗浄ヘッドは、外管と、該外管の内側に設けられた内管とを有し、前記内管の内側に形成された流路の一端および前記外管と前記内管の間に形成された流路の一端の一方が前記第1の開口を構成し、他方が前記第2の開口を構成することが好ましい。
これにより、洗浄ヘッドの構成がより簡単となる。
本発明の液滴吐出装置では、前記第1の開口は、前記第2の開口よりも、前記洗浄ヘッドの前記液滴吐出ヘッドとの相対的移動方向前方側に位置していることが好ましい。
これにより、洗浄ヘッドの構成がより簡単となる。
【0010】
本発明の液滴吐出装置では、前記洗浄ヘッドを前記液滴吐出ヘッドに対して接触させた状態にて、前記第1の開口で覆われる前記ノズルの数をXとし、前記第2の開口で覆われる前記ノズルの数をYとしたとき、X/Yは、0.8以上、1.2以下であることが好ましい。
これにより、液滴吐出ヘッド内への洗浄液の供給量と、液滴吐出ヘッド内からの洗浄液の吸引量とのバランスをとることができる。
【0011】
本発明の液滴吐出装置では、前記第2の開口から吸引した洗浄液に含まれる前記液状材料を除去するフィルターを有し、前記フィルターによって前記液状材料が除去された前記洗浄液を前記洗浄ヘッドから前記液滴吐出ヘッド内に送出することが好ましい。
これにより、洗浄液を繰り返し用いることができるので、洗浄液を有効利用することができる。また、洗浄液の洗浄能力を高い状態で維持することができる。
【0012】
本発明の液滴吐出装置では、前記洗浄液が前記液滴吐出ヘッド内に供給されている状態で、前記貯留槽から前記液滴吐出ヘッドへの前記液状材料の送液を阻止するバルブを有していることが好ましい。
これにより、液滴吐出ヘッドの洗浄時に除去される液状材料を最小限に留めることができる。
【0013】
本発明の液滴吐出装置では、前記洗浄液は、前記液状材料に含まれる固形分を溶解または分散可能であり、かつ、前記液状材料に含まれる主溶媒と相溶性を有する液体であることが好ましい。
これにより、インクの固形分が析出したとしても、再溶解または再分散により固形分を洗浄液中に取り込んで、洗い流すことができる。
【0014】
本発明の液滴吐出装置では、前記洗浄液は、前記液状材料の前記主溶媒を主成分としていることが好ましい。
これにより、洗浄液は、インクとの置換性が特に優れたものとなり、残存したインクと素早く混合させ、かつ置換することができる。
本発明の液滴吐出装置では、前記液状材料は、金属粒子を分散媒に分散したものであることが好ましい。
これにより、導体パターンを形成するのに適した液状材料となる。
【0015】
本発明の液滴吐出装置の洗浄方法は、液状材料を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽から送液された前記液状材料を吐出する複数のノズルを備えた液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドの洗浄に用いる洗浄液を貯留する洗浄液貯留槽と、
前記液滴吐出ヘッドに対して相対的に接離自在に設けられた洗浄ヘッドと、
前記洗浄ヘッドを前記液滴吐出ヘッドに対して接触させつつ、前記洗浄ヘッドと前記液滴吐出ヘッドとを相対的に移動させる移動手段とを有し、
前記洗浄ヘッドは、前記液滴吐出ヘッドと接触した状態にて、前記複数のノズルのうちの一部のノズルを覆う第1の開口と、前記第1の開口で覆われていない前記ノズルのうちの一部のノズルまたは全部のノズルを覆う第2の開口とを有し、
前記洗浄ヘッドを前記液滴吐出ヘッドに対して接触させた状態にて、前記移動手段によって前記洗浄ヘッドと前記液滴吐出ヘッドとを相対的に移動させつつ、前記第1の開口から該第1の開口に覆われた前記ノズルを介して前記液滴吐出ヘッド内に前記洗浄液貯留槽から送液された前記洗浄液を供給するとともに、前記第2の開口から該第2の開口に覆われた前記ノズルを介して前記液滴吐出ヘッド内の前記洗浄液を吸引することを特徴とする。
これにより、より効率的に液滴吐出ヘッドを洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】液滴吐出装置(インクジェット装置)の好適な実施形態の一例を示す斜視図である。
【図2】液滴吐出装置の全体構成の一例を示した模式図である。
【図3】図1の液滴吐出装置が備える液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)の概略構成を説明するための模式図である。
【図4】図1の液滴吐出装置が備える液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)の概略構成を説明するための模式図である。
【図5】図2に示す洗浄ヘッドの断面図である。
【図6】本発明の液滴吐出装置の洗浄方法を説明するための図である。
【図7】液滴吐出装置の全体構成の他の一例を示した模式図である。
【図8】液滴吐出装置の全体構成の他の一例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《液滴吐出装置および液滴吐出装置の洗浄方法》
まず、本発明の液滴吐出装置の好適な実施形態について説明する。
図1は、液滴吐出装置(インクジェット装置)の好適な実施形態の一例を示す斜視図、図2は、液滴吐出装置の全体構成の一例を示した模式図、図3および図4は、図1の液滴吐出装置が備える液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)の概略構成を説明するための模式図、図5は、図2に示す洗浄ヘッドの断面図、図6は、本発明の液滴吐出装置の洗浄方法を説明するための図である。
液滴吐出装置(インクジェット装置)100は、例えば、導体パターン成用インク(液状材料。以下、単に「インク」と呼ぶ)1を吐出することにより、例えば、セラミックス成形体等からなる基板11上に所定の導体パターンを形成するのに用いられる装置である。
【0018】
図1および図2に示すように、液滴吐出装置100は、液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド。以下、単に「ヘッド」と呼ぶ)110と、ベース130と、テーブル140と、インク貯留槽150と、テーブル位置決め手段170と、ヘッド位置決め手段180と、制御装置190とを有している。
ベース130は、テーブル140、テーブル位置決め手段170、およびヘッド位置決め手段180等の液滴吐出装置100の各構成部材を支持する台である。
【0019】
テーブル140は、テーブル位置決め手段170を介してベース130に設置されている。また、テーブル140は、液滴を着弾させる基板(受容物)11を載置するものである。
テーブル位置決め手段170は、第1移動手段171と、モーター172とを有している。テーブル位置決め手段170は、ベース130におけるテーブル140の位置を決定し、これにより、ベース130における基板11の位置を決定する。
【0020】
第1移動手段171は、Y方向と略平行に設けられた2本のレールと、当該レール上を移動する支持台とを有している。第1移動手段171の支持台は、モーター172を介してテーブル140を支持している。そして、支持台がレール上を移動することにより、基板11を載置するテーブル140は、Y方向に移動および位置決めされる。
モーター172は、テーブル140を支持しており、θz方向にテーブル140を揺動および位置決めする。
ヘッド位置決め手段180は、第2移動手段181と、リニアモーター182と、モーター183、184、185とを有している。ヘッド位置決め手段180は、ヘッド110の位置を決定する。
【0021】
第2移動手段181は、ベース130から立設する2本の支持柱と、当該支持柱同士の間に当該支持柱に支持されて設けられ、2本のレールを有するレール台と、レールに沿って移動可能でヘッド110を支持する支持部材(図示せず)とを有している。そして、支持部材がレールに沿って移動することにより、ヘッド110は、X方向に移動および位置決めされる。
【0022】
リニアモーター182は、支持部材付近に設けられており、ヘッド110のZ方向の移動および位置決めをすることができる。
モーター183、184、185は、ヘッド110を、それぞれα,β,γ方向に揺動および位置決めする。
以上のようなテーブル位置決め手段170およびヘッド位置決め手段180により、インクジェット装置100は、ヘッド110のインク吐出面115Pと、テーブル140上の基板11との相対的な位置および姿勢を、正確にコントロールできるようになっている。
【0023】
図3に示すように、ヘッド110は、インクジェット方式(液滴吐出方式)によってインク1をノズル118から吐出するものである。本実施形態では、ヘッド110は、圧電体素子としてのピエゾ素子113を用いてインクを吐出させるピエゾ方式を用いている。ピエゾ方式は、インク1に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えないなどの利点を有する。
【0024】
ヘッド110は、ヘッド本体111と、振動板112と、ピエゾ素子113とを有している。
ヘッド本体111は、本体114と、その下端面にノズルプレート115とを有している。そして、本体114を板状のノズルプレート115と振動板112とが挟み込むことにより、空間としてのリザーバー116およびリザーバー116から分岐した複数のインク室117が形成されている。
【0025】
リザーバー116には、後述するインク貯留槽150よりインク1が供給される。また、リザーバー116は、各インク室117にインク1を供給するための流路を形成している。
ノズルプレート115は、本体114の下端面に装着されており、インク吐出面115Pを構成している。このノズルプレート115には、インク1を吐出する複数のノズル118が、各インク室117に対応して開口されている。そして、各インク室117から対応するノズル(吐出部)118に向かって、インク流路が形成されている。
【0026】
振動板112は、ヘッド本体111の上端面に装着されており、各インク室117の壁面を構成している。振動板112は、ピエゾ素子113の振動に応じて振動可能となっている。
ピエゾ素子113は、その振動板112のヘッド本体111と反対側に、各インク室117に対応して設けられている。ピエゾ素子113は、水晶等の圧電材料を一対の電極で挟持したものである。その一対の電極は、駆動回路191に接続されている。
【0027】
そして、駆動回路191からピエゾ素子113に電気信号を入力すると、ピエゾ素子113が膨張変形または収縮変形する。ピエゾ素子113が収縮変形すると、インク室117の圧力が低下して、リザーバー116からインク室117にインク1が流入する。また、ピエゾ素子113が膨張変形すると、インク室117の圧力が増加して、ノズル118からインク1が吐出される。なお、印加電圧を変化させることにより、ピエゾ素子113の変形量を制御することができる。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子113の変形速度を制御することができる。すなわち、ピエゾ素子113への印加電圧を制御することにより、インク1の吐出条件を制御し得るようになっている。
【0028】
図4に示すように、ヘッド110には、複数のノズル118が各インク室117に対応して直列に並んで形成されている。これら複数のノズル118のうち、ノズル118の配列方向の両端部にある、各端部それぞれ少なくとも1つのノズル118については、インク1を吐出させない非吐出ノズル(ダミーノズル)118aである。例えば、一般的なヘッド110では、200個程度のノズル118が直列に並んで形成されているが、この場合には、両端からそれぞれ20個程度のノズル118、計40個程度のノズル118を非吐出ノズル118aとするのが好ましい。
【0029】
一般的に、ヘッド110内のインク経路の形状により、ヘッド110の両端部に位置するノズル118へのインク供給流速が影響を受ける。その結果、ヘッド110の両端部に位置するノズル118から吐出されるインク1の吐出速度・吐出量にばらつきが生じてしまう。インク1の吐出速度・吐出量のばらつきは、各種制御である程度は補正可能であるが、高精度を要求されるような場面(例えば、導体パターン形成等)では、前記ばらつきを補正しきれない。そのため、両端部に非吐出ノズル118aを設けることにより、簡単に、各ノズル118からのインク1の吐出速度・吐出量をほぼ等しくすることができる。
制御装置190は、インクジェット装置100の各部位を制御する。例えば、駆動回路191で生成する印加電圧の波形を調節してインク1の吐出条件を制御したり、テーブル位置決め手段170およびヘッド位置決め手段180を制御したりすることにより基板11へのインク1の吐出位置を制御する。
【0030】
インク貯留槽150は、インク1を貯留する。
インク貯留槽150は、図2に示すように、インク搬送路151を介して、ヘッド110(リザーバー116)に接続されている。
インク搬送路151には、インク貯留槽150側とヘッド110との間に、インク1の逆流を防止するための自己封止弁153が設けられている。また、インク貯留槽150と自己封止弁153との間には、インク搬送路151を開閉する開閉弁152が別途設けられている。
インク貯留槽150に貯留されたインク1は、液滴吐出時等における必要に応じて、インク搬送路151に送られ、開閉弁152および自己封止弁153を介して、リザーバー116に供給される。
【0031】
また、図2に示すように、液滴吐出装置100は、ヘッド110を洗浄するための洗浄機構200を備えている。
洗浄機構200は、洗浄ヘッド210と、洗浄ヘッド210から洗浄液(クリーニングインク)2を送出する送出手段と、洗浄ヘッド210から洗浄液2を吸引する吸引手段と、洗浄ヘッド210を移動させる移動手段290とを有している。送出手段は、洗浄液2を貯留する洗浄液貯留槽240と、洗浄液貯留槽240から洗浄ヘッド210の内部へ洗浄液2を供給する洗浄液搬送路202と、洗浄液搬送路202の途中に設けられた加圧ポンプ250とを有している。また、吸引手段は、ヘッド110内へ供給された洗浄液2を回収する回収タンク230と、洗浄ヘッド210から回収タンク230へと洗浄液2を送液する吸引媒体搬送路201と、吸引媒体搬送路201の途中に設けられた吸引ポンプ220とを有している。
【0032】
図5に示すように、洗浄ヘッド210は、外管211と、外管211の内側に設けられた内管212とを有する二重管構造をなしている。内管212の内側には、流路213が形成されており、この流路213は、吸引媒体搬送路201に接続されている。また、流路213の一端(ヘッド110と対向する側の一端)は、洗浄液2を吸引する吸引口(第2の開口)214を構成している。また、外管211と内管212との間には、流路215が形成されており、この流路215は、洗浄液搬送路202に接続されている。また、流路215の一端(ヘッド110と対向する側の一端)は、洗浄液2を送出する送出口(第1の開口)216を構成している。
【0033】
このように、洗浄ヘッド110を二重管構造とすることにより、洗浄ヘッド210の構成がより簡単となる。
このような洗浄ヘッド210は、ヘッド110のインク吐出面115Pに対向するよう配置される。そして、洗浄ヘッド210が送出口216および吸引口214は、インク吐出面115Pに対向する面に開口し、ヘッド110に対して接触させた状態にて、ノズル118を覆うよう構成されている。
【0034】
また、洗浄ヘッド210は、インク吐出面115Pに対して相対的に接離自在に設けられており、インク吐出面115Pに対して洗浄ヘッド210が接触させた状態では、外管211および内管212は、それぞれ、インク吐出面115Pとともに気密空間を画成する。なお、洗浄ヘッド210は、インク吐出面115Pに対して相対的に接触または離間すればよいので、洗浄ヘッド210のみが移動する構成、ヘッド110のみが移動する構成、双方が移動する構成のいずれであってもよい。以下の説明では、洗浄ヘッド210のみが移動する場合について説明する。
【0035】
インク吐出面115Pに対する洗浄ヘッド210の接触部、すなわち、外管211および内管212の上端部は、密着性の高い材料で構成されており、流路213、215の気密性を確保している。密着性の高い材料としては、例えば、各種エラストマー、各種ゴム等が挙げられる。なお、外管211および内管212は、洗浄液2を流すことができれば、その形状は限定されない。
【0036】
移動手段290は、洗浄ヘッド210を、ヘッド110に対して接触した状態を保ちながら、ヘッド110に対してノズル118の配列方向に移動させる機能を有している。このような移動手段290の構成としては、上記機能を発揮することができれば、特に限定されないが、例えば、洗浄ヘッド210の移動を案内するレールと、洗浄ヘッド210をレールに沿って移動させるモーターとを有した構成とすることができる。前記モーターの駆動は、制御装置190により制御することができる。
【0037】
加圧ポンプ250は、洗浄液貯留槽240に貯留された洗浄液2を加圧しつつ、洗浄液搬送路202を介して洗浄ヘッド210に送液する。このような加圧ポンプ250としては、例えば、ダイヤフラム方式、ピストン方式等の加圧ポンプが用いられる。
一方、吸引ポンプ220は、洗浄ヘッド210の吸引口214から媒体を吸引媒体搬送路201を介して強制的に吸い出し、回収タンク230へと送液する。なお、媒体としては、インク1、洗浄液2のような液体、またはこれらの2種以上を含む混合物が挙げられる。このような吸引ポンプ220としては、例えば、ダイヤフラム方式、ピストン方式等の吸引ポンプが用いられる。
なお、開閉弁152、吸引ポンプ220および加圧ポンプ250は、それぞれ前述した制御装置190と電気的に接続されており、制御装置190により開閉弁152の開閉操作、吸引ポンプ220の吸引や加圧ポンプ250の加圧の開始や終了、あるいは吸引量や加圧量等の動作条件を制御し得るよう構成されている。
【0038】
次いで、洗浄機構200の動作について説明する。
図6は、本発明の液滴吐出装置の洗浄方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図6中の上側を「上」、下側を「下」という。
液滴吐出装置100は、通常、ヘッド110のノズル118からインク1を吐出する動作を行うが、この動作を繰り返すうち、ノズル118にインク1に含まれる固形分(汚れ)が付着する。洗浄機構200の動作は、この通常動作の開始前・終了後や通常動作の合間等に行われ、ヘッド110に付着した固形分を除去するために行われる。
具体的には、まず、ヘッド110を降下させ、図6に示すように、インク吐出面115Pが洗浄ヘッド210の上面と接する状態にする。この状態では、流路213、215がそれぞれ気密的に封止される。また、この状態では、複数のノズル118のうちの一方の端部に位置するノズル118が送出口216または吸引口214で覆われる。
【0039】
次いで、開閉弁152を閉状態とした後、加圧ポンプ250により洗浄液2を送出口216から送出し、送出口216から送出された洗浄液2を送出口216で覆われたノズル118を介してヘッド110の内部(各インク室117およびリザーバー116)に供給する。これとともに、吸引ポンプ220により流路213内を吸引することにより、吸引口214に覆われたノズル118を介して、ヘッド110内に供給された洗浄液2を吸引する。吸引された洗浄液2は、回収タンク230に回収される。
【0040】
さらに、このようなヘッド110内への洗浄液の供給および吸引を行いながら、移動手段290によって、洗浄ヘッド210をヘッド110に対してノズル118の配列方向に移動させる。これにより、各ノズル118が順に送出口216および吸引口214に覆われ、送出口216に覆われている時は、そのノズル118を介してヘッド110内に洗浄液2が供給され、吸引口214に覆われている時は、そのノズル118を介してヘッド110内の洗浄液2が吸引される。
【0041】
このように、洗浄ヘッド210をヘッド110に対して移動させつつ、洗浄液2を所定のノズル118を介してヘッド110の内部に供給し、この供給された洗浄液2を他のノズル118を介して吸引することにより、ヘッド110の内部で洗浄液2が流動(強制対流)し、これにより、ヘッド110の内部の汚れの除去が行われる。
ここで、加圧ポンプ250による洗浄液2の送液速度は、特に限定されないが、1mL/min以上200mL/min以下であるのが好ましく、5mL/min以上100mL/min以下であるのがより好ましい。これにより、より効果的に洗浄を行うことができる。
なお、洗浄ヘッド210に覆われていないノズル118は、大気開放状態となっているが、前述のように、洗浄液2の送液速度および吸引速度が充分に大きいため、大気開放しているノズル118が存在していても、ヘッド110内の洗浄を効率よく行うことができる。
【0042】
また、所定時刻において、送出口216で覆われるノズル118の数と、吸引口214で覆われるノズル118の数としては、特に限定されないが、互いにほぼ等しいことが好ましい。具体的には、送出口216で覆われるノズル118の数をXとし、吸引口214で覆われるノズル118の数をYとしたとき、X/Yは、0.8以上、1.2以下程度であるのが好ましい。これにより、ヘッド110の内部への洗浄液2の供給と、ヘッド110の内部の洗浄液2の吸引とをバランスよく行うことができる。
【0043】
また、所定のノズル118が送出口216に覆われている時間(洗浄ヘッド210の移動方向において吸引口214より前方側に位置する領域に覆われている時間および吸引口214より後方側に位置する領域に覆われている時間)は、特に限定されないが、1秒以上、10秒以下程度であるのが好ましい。所定のノズル118が吸引口214に覆われている時間についてもこれと同様である。これにより、各ノズル118内を充分に洗浄することができるとともに、洗浄にかかる時間を比較的短くすることができる。また、洗浄液2の使用量を抑えることもできる。
【0044】
このような方法によれば、従来のようにインク1を用いないため、インク1の無駄をなくすことができる。また、インク1の流動経路と洗浄液2の流動経路とが異なっているため、効果的にヘッド110の内部の汚れを除去することができる。さらには、複数のノズル118から供給された洗浄液2が、例えば、リザーバー116内で混じり合い、衝突することにより乱流が生じ、これにより、より効果的にヘッド110の内部の汚れを除去することができる。
【0045】
また、ほぼ全てのノズル118(両端部位置するノズル118以外のノズル118)が、ヘッド110内へ洗浄液2を供給するための供給口として機能した後、ヘッド110内の洗浄液2を排出する排出口として機能し、その後さらに供給口として機能するため、ほぼ全てのノズル118内に、ヘッド110内に向かう洗浄液2の流れと、ヘッド110外に向かう洗浄液2の流れを交互に発生させることができる。そのため、ノズル118内の汚れに対して両方向から負荷を加えることができ、汚れを除去(剥離)する確率を特に高めることができる。
【0046】
また、洗浄ヘッド210を前述したような二重管構造とすることにより、洗浄ヘッド210の移動方向の前方側に位置するノズル118および後方側に位置するノズル118からヘッド110内に洗浄液2を供給し、洗浄液2が供給されたノズル118たちの間に位置するノズル118から洗浄液2を吸引することができるため、ヘッド110内を流れる洗浄液2の流れをより複雑にすることができる。そのため、ヘッド110内にて乱流を発生させ易く、汚れを除去(剥離)する確率を特に高めることができる。
【0047】
また、複数のノズル118のうち、ノズル118の配列方向両端部に位置するノズル118を非吐出ノズル118aとすることにより、次のような効果を奏することができる。すなわち、前述したような洗浄方法によれば、ノズル118の配列方向両端部に位置するノズル118は、ヘッド110内へ洗浄液2を供給するための供給口としての機能およびヘッド110内の洗浄液2を排出する排出口としての機能の一方の機能しか発揮できない場合がある。そのため、ノズル118の配列方向両端部に位置するノズル118の洗浄効率は、それ以外の中央部に位置するノズル118の洗浄効率よりも低くなる場合がある。
【0048】
したがって、ノズル118の配列方向両端部に位置し、洗浄効率が低くなる可能性があるノズル118を、インク1を吐出しない非吐出ノズル118aとし、それ以外の洗浄効果の高いノズル118のみからインク1を吐出することにより、インク1の吐出に用いられる各ノズル118を効果的に洗浄することができる。
また、前述したように、洗浄時には、開閉弁152を閉状態とするため、洗浄時に除去されるインク1は、ヘッド110の内部に残存しているもののみである。そのため、洗浄によって除去されるインク1の量を最小限に留めることができる。
【0049】
なお、洗浄方法としては、例えば、まず、吸引ポンプ220により流路213内を吸引することにより、吸引口214に覆われたノズル118を介して、ヘッド110内に残存するインク1を吸引したのち、ヘッド110の内部へ洗浄液2を供給するようにしてもよい。また、洗浄液2のヘッド110内への供給した後、ヘッド110内の洗浄液を吸引しヘッド110内を空にするプロセスを複数回行ってもよい。これにより、汚れの除去作用を特に高めることができる。
【0050】
以上、本発明の液滴吐出装置について、好適な実施形態について説明したが、これに限定されず、例えば、図7、図8に示すような液滴吐出装置であってもよい。
図7は、本発明の液滴吐出装置の全体構成の他の一例を示した模式図である。
本実施形態では、上述した実施形態と異なる点について説明し、同様の構成については、その説明を省略する。
【0051】
図7に示す液滴吐出装置は、吸引媒体搬送路201の吸引ポンプ220と回収タンク230との間に設けられ、吸引媒体搬送路201を2つに分岐する分岐部203(流路選択部)と、洗浄液搬送路202の加圧ポンプ250と洗浄液貯留槽240との間に設けられ、洗浄液搬送路202を2つに分岐する分岐部204(流路選択部)と、分岐部203と分岐部204とを連絡する連絡路205とを備えている。
【0052】
分岐部203は、吸引媒体搬送路201を流れる媒体を回収タンク230へと送液する第1の状態と、連絡路205へと送液する第2の状態とを自在にとり得るものである。また、分岐部204は、洗浄液貯留槽240に貯留された洗浄液2を洗浄ヘッド210へと送液する第1の状態と、連絡路205から送液された媒体を洗浄ヘッド210へと送液する第2の状態とを選択する。
【0053】
分岐部203および分岐部204においてそれぞれ第1の状態を選択した場合、洗浄機構200の動作は前述した動作と同様になる。
これに対して、分岐部203および分岐部204においてそれぞれ第2の状態を選択した場合、洗浄液2の消費が停止され、代わりに洗浄ヘッド210から吸引された洗浄液2を、再び洗浄ヘッド210へと送液することができる。その結果、この洗浄液2は、加圧ポンプ250と吸引ポンプ220とを動作させることで、洗浄液搬送路202、流路215、ヘッド110、流路213、吸引媒体搬送路201および連絡路205で構成される環状の経路を循環することとなる。このようにすれば、洗浄液2の消費を抑えつつ、汚れの除去をさらに促進することができる。
【0054】
分岐部203および分岐部204は、制御装置190と電気的に接続され、その動作が制御されるよう構成されている。これにより、分岐部203および分岐部204の各動作を、加圧ポンプ250や吸引ポンプ220の吸引動作と協調的に制御することができるので、分岐部203および分岐部204を最適なタイミングで動作させ、洗浄液2の消費を最小限に抑えるとともに、汚れの除去作用を最大限に増強することができる。
【0055】
このように洗浄液2を循環させる場合、インク1を含む洗浄液2を循環させるようにしてもよいが、インク1の含有率が高い吸引開始直後の媒体については回収タンク230に送液し、インク1の含有率が低下したタイミングで循環を開始するのが好ましい。これにより、洗浄液2を無駄に消費することなく、ヘッド110の内部に付着した汚れをより清浄な洗浄液2の流れに曝すことができ、汚れの除去作用を特に増強することができる。
【0056】
また、吸引媒体搬送路201の洗浄ヘッド210と吸引ポンプ220との間(吸引ポンプ220の上流側)には、フィルター260が設けられている。このフィルター260により吸引媒体搬送路201内を流れる媒体を濾過し、含まれる汚れ(固形分)を濾別することができる。これにより、環状の経路には、汚れを含まない清浄な洗浄液2を循環させることができ、汚れの再付着を防止することができる。
【0057】
フィルター260としては、例えば、不織布、織布からなる布帛フィルター、糸巻きフィルター、メンブレンフィルター、スポンジフィルター、金属フィルター、セラミックスフィルター等が挙げられる。
ここで、この際、加圧ポンプ250や吸引ポンプ220の回転方向を一定時間だけ逆転させることで、洗浄液2の流れを反転させるようにしてもよい。これにより、ヘッド110の内部に付着した汚れにも反対方向の負荷が加わることになり、汚れを除去(剥離)する確率を高めることができる。
【0058】
さらには、加圧ポンプ250や吸引ポンプ220の回転方向の正転と逆転とを短時間で交互に繰り返すようにしてもよい。すなわち、送出口216からノズル118を介してヘッド110の内部に洗浄液2を供給するとともに、吸引口214からノズル118を介してヘッド110の内部の洗浄液2を吸引する第1の状態と、吸引口214からノズル118を介してヘッド110の内部に洗浄液2を供給するとともに、送出口216からノズル118を介して洗浄液2を吸引する第2の状態とを交互に行ってもよい。これにより、汚れに対して両方向から小刻みに負荷を加えることができ、前述したような洗浄ヘッド210の移動によっても加えられる両方向からの負荷との相乗効果によって、汚れを除去(剥離)する確率をさらに高めることができる。
このとき、回転方向を変更する周期は、0.1秒以上10秒以下程度であるのが好ましく、0.3秒以上5秒以下程度であるのがより好ましい。
【0059】
図8は、本発明の液滴吐出装置の全体構成の他の一例を示した模式図である。
本実施形態では、上述した実施形態と異なる点について説明し、同様の構成については、その説明を省略する。
図8に示す液滴吐出装置では、洗浄ヘッド210が2つの管体241、242を有している。これら管体241、242は、洗浄ヘッド210の移動方向に並んで配設されており、移動方向前方側に管体241が位置し、後方側に管体242が位置している。そして、管体241の内側に流路215が形成されており、管体241の開口が送出口216を構成している。同様に、管体242の内側に流路213が形成されており、管体242の開口が吸引口214を構成している。これにより、洗浄ヘッド210の構成が簡単となる。
また、このような洗浄ヘッド210によれば、吸引口214が洗浄ヘッド210の移動方向の後方側にあるため、ヘッド110内の洗浄液2をより確実に吸引することができ、洗浄後にヘッド110内に洗浄液2が残存するのを効果的に抑制することができる。
【0060】
次に、前述した液滴吐出装置100に好適に適用することができるインク1および洗浄液2について説明する。
<インク1>
インク1としては、例えば、銀粒子(金属粒子)を水系分散媒(分散媒)に分散してなる分散液を好適に用いることができる。このような構成とすることにより、導体パターンを形成するのに適した液状材料となる。
【0061】
〔水系分散媒〕
本明細書において、「水系分散媒」とは、水および/または水との相溶性に優れる液体(例えば、25℃における水100gに対する溶解度が30g以上の液体)で構成されたもののことを指す。このように、水系分散媒は、水および/または水との相溶性に優れる液体で構成されたものであるが、主として水で構成されたものであるのが好ましく、特に、水の含有率が70wt%以上のものであるのが好ましく、90wt%以上のものであるのがより好ましい。これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。
【0062】
水系分散媒の具体例としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、ピリジン、ピラジン、ピロール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、アセトアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、インク1中における水系分散媒の含有量は、20wt%以上80wt%以下であることが好ましく、25wt%以上70wt%以下であることがより好ましい。これにより、インク1の粘度を好適なものとしつつ、分散媒の揮発による粘度の変化を少ないものとすることができる。
【0063】
〔銀粒子〕
次に、銀粒子(金属粒子)について説明する。
銀粒子は、形成される導体パターンの主成分であり、導体パターンに導電性を付与する成分である。このような銀粒子は、インク1中において分散している。
銀粒子の平均粒径は、1nm以上100nm以下であるのが好ましく、10nm以上40nm以下であるのがより好ましい。これにより、インク1の吐出安定性をより高くすることができるとともに、微細な導体パターンを容易に形成することができる。なお、本明細書では、「平均粒径」とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒径のことを指す。
【0064】
また、インク1中に含まれる銀粒子(分散剤が表面に吸着していない銀粒子)の含有量は、0.5wt%以上60wt%以下であるのが好ましく、10wt%以上45wt%以下であるのがより好ましい。これにより、導体パターンの断線をより効果的に防止することができ、より信頼性の高い導体パターンを形成することができる。
また、銀粒子は、その表面に分散剤が付着した銀コロイド粒子として、水系分散媒中に分散していることが好ましい。これにより、銀粒子の水系分散媒への分散性が特に優れたものとなり、インク1の吐出安定性が特に向上する。
【0065】
分散剤としては、特に限定されないが、COOH基とOH基とを合わせて3個以上有し、かつ、COOH基の数がOH基と同じか、それよりも多いヒドロキシ酸またはその塩を含むことが好ましい。これらの分散剤は、銀粒子の表面に吸着してコロイド粒子を形成し、分散剤中に存在するCOOH基の電気的反発力によって銀コロイド粒子を水溶液中に均一に分散させてコロイド液を安定化する働きを有する。
【0066】
このように、銀コロイド粒子が安定してインク1中に存在することにより、より容易に微細な導体パターンを形成することができる。また、インク1によって形成されたパターンにおいて銀粒子が均一に分布し、クラック、断線等が発生し難くなる。このような分散剤としては、例えば、クエン酸、りんご酸、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三リチウム、クエン酸三アンモニウム、りんご酸二ナトリウム、タンニン酸、ガロタンニン酸、五倍子タンニン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
インク1中における銀コロイド粒子の含有量は、1wt%以上60wt%以下であるのが好ましく、5wt%以上50wt%以下であるのがより好ましい。
また、銀コロイド粒子の熱重量分析における500℃までの加熱減量は、1wt%以上25wt%以下が好ましい。
【0067】
〔有機バインダー〕
また、インク1は、有機バインダーを含んでいてもよい。有機バインダーは、インク1を用いて形成された導体パターン前駆体において、銀粒子の凝集を防止するものである。また、有機バインダーは、基板11に対するインク1の密着性を向上させる機能を有している。
【0068】
有機バインダーとしては、特には限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール#200(重量平均分子量200)、ポリエチレングリコール#300(重量平均分子量300)、ポリエチレングリコール#400(平均分子量400)、ポリエチレングリコール#600(重量平均分子量600)、ポリエチレングリコール#1000(重量平均分子量1000)、ポリエチレングリコール#1500(重量平均分子量1500)、ポリエチレングリコール#1540(重量平均分子量1540)、ポリエチレングリコール#2000(重量平均分子量2000)等のポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール#200(重量平均分子量:200)、ポリビニルアルコール#300(重量平均分子量:300)、ポリビニルアルコール#400(平均分子量:400)、ポリビニルアルコール#600(重量平均分子量:600)、ポリビニルアルコール#1000(重量平均分子量:1000)、ポリビニルアルコール#1500(重量平均分子量:1500)、ポリビニルアルコール#1540(重量平均分子量:1540)、ポリビニルアルコール#2000(重量平均分子量:2000)等のポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリグリセリンエステル等のポリグリセリン骨格を有するポリグリセリン化合物が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ポリグリセリンエステルとしては、例えば、ポリグリセリンのモノステアレート、トリステアレート、テトラステアレート、モノオレエート、ペンタオレエート、モノラウレート、モノカプリレート、ポリシノレート、セスキステアレート、デカオレエート、セスキオレエート等が挙げられる。
【0069】
〔乾燥抑制剤〕
また、インク1は、乾燥抑制剤を含んでいてもよい。乾燥抑制剤は、インク1中の水系分散媒の不本意な揮発を防止するものである。その結果、インクジェット装置100のノズル118付近において水系分散媒が揮発することを防止でき、インク1の粘度の上昇、乾燥が抑えられる。このような乾燥抑制剤としては、下記式(I)で示される化合物、アルカノールアミン、糖アルコール等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
【化1】

(ただし、R、R’は、それぞれ、Hまたはアルキル基である。)
【0071】
〔表面張力調整剤〕
また、インク1は、表面張力調整剤を含んでいてもよい。表面張力調整剤は、インク1と基板11との接触角を所定の角度に調整する機能を有している。表面張力調整剤としては、各種界面活性剤を用いることができ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、少ない添加量で、インク1と基板11との接触角を所定の範囲に調整することができる観点からアセチレングリコール系化合物を含むことが好ましい。
【0072】
アセチレングリコール系化合物としては、例えば、サーフィノール104シリーズ(104E、104H、104PG−50、104PA等)、サーフィノール400シリーズ(420、465、485等)、オルフィンシリーズ(EXP4036、EXP4001、E1010等)(「サーフィノール」および「オルフィン」は、日信化学工業株式会社の商品名)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
〔その他の成分〕
なお、インク1の構成成分は、上記成分に限定されず、上記以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、チオ尿素等が挙げられる。
また、インク1の粘度は、特に限定されないが、1.0mPa・s以上15.0mPa・s以下であることが好ましく、4.0mPa・s以上11.0mPa・s以下であることがより好ましい。これにより、液滴の吐出安定性が向上するとともに、基板11に供給されたインク1の不本意な濡れ広がりをより確実に防止することができる。
以上、インク1の一例を説明した。
【0074】
<洗浄液>
本発明に適用される洗浄液(クリーニングインク)は、導体パターンの形成に用いられるヘッド110の洗浄をするものであり、特に、前述したようなインク1によるヘッド110の汚れ、目詰まり等を好適に解消するものである。
また、洗浄液2は、インク1に含まれる固形分を溶解または分散可能であり、かつ、インク1に含まれる主溶媒と相溶性を有する液体である。これにより、ヘッド110内をより効率的に洗浄することができる。
このような洗浄液2としては、特に限定されないが、セラミックス粒子とセラミックス粒子を分散する分散媒を含んでいるものを用いるのが好ましい。
【0075】
このセラミックス粒子は、比較的硬度が高いものであり、インク1の流路に対して研磨剤として機能する。この結果、ヘッド110のノズル118付近において金属粒子が析出した場合であっても、セラミックス粒子が析出した金属粒子を速やかに削り取り、ヘッド110のノズル118出口付近に金属粒子が蓄積することが防止される。このため、洗浄液2を用いてインク1の流路を洗浄した場合、インク1の飛行曲がりや、液滴の吐出量の不安定化が防止され、液滴の吐出安定性に優れたものとなる。そして、洗浄液2を用いてインク1の流路を洗浄した場合、インク1により微細なパターンを精度よく描画でき、形成される導体パターンは、断線やショート等の不良が防止された信頼性の高いものとなる。
【0076】
[セラミックス粒子]
上述したように、洗浄液2は、セラミックス粒子を含んでいる。
また、セラミックス粒子は、後述する水系分散媒中に分散している。
セラミックス粒子として用いることのできるセラミックス材料としては、特に限定されないが、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化ランタニウム、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化チタニウム、酸化ゲルマニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、ホウケイ酸ガラス、ケイ酸塩、二酸化ケイ素等のガラス材料、炭化ケイ素等の炭化物、窒化ケイ素等の窒化物、蛍石等のハロゲン化物、酸化アンチモン、酸化ビスマス等または、これらの混合物等を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、セラミックス粒子は、上述した中でも、金属酸化物を含むことが好ましい。このような化合物は、化学的に安定であり、安定して洗浄液中で分散される。また、比較的硬度が高いため、好適に吐出口の汚れを除去し、この結果、導体パターン形成用インクの液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0077】
特に、金属酸化物としてセラミックス粒子が、酸化アルミニウムまたは酸化チタンを含む場合、以下のような効果が得られる。これらの化合物は、硬度が高いものであり、比較的高い洗浄性を有している。また、これらの化合物は、融点が比較的高いものであるため、洗浄液2がインク1の流路に残存した場合であっても、インク1によって形成される導体パターンにおいて導体パターンの前駆体を焼結する際には溶融せず、粒子として存在する。この結果、導体パターンの銀粒子が溶融した際に液状の銀の表面張力によって、これらのセラミックス粒子が押し出され、形成される導体パターンからセラミックス粒子が排除される。この結果、形成される導体パターンは、目的とした性能をより確実に発揮でき、信頼性の高いものとなる。また、特に、酸化アルミニウムおよび酸化チタンは、基板となるセラミックス成形体の構成材料として一般に用いられるものであり、セラミックス成形体から形成されるセラミックス基板への影響も少ないもとなる。
【0078】
また、セラミックス粒子は、上述した中でも、ガラス材料を含むことが好ましく、二酸化ケイ素またはケイ酸塩を含むことがより好ましい。ガラス材料は、インクの流路に付着した汚れを吸着する機能を有しており、一旦削り取られた汚れを吸着して、好適にインク1の流路を洗浄することができる。また、洗浄液2がインク1の流路に残存した場合であっても、インク1によって形成される導体パターンにおいて、このような化合物は、焼結中に少なくともその一部が溶融することにより、導体パターンと基板との密着性の向上に寄与することができ、導体パターンの信頼性をより高くすることができる。特に、二酸化ケイ素およびケイ酸塩は、基板となるセラミックス成形体の構成材料として一般に用いられるものであり、セラミックス成形体に二酸化ケイ素またはケイ酸塩が含まれる場合、セラミックス成形体から形成されるセラミックス基板への影響も少ないものとなると同時に、導体パターンとセラミックス基板との密着性がより向上し、導体パターンの信頼性がより高いものとなる。
【0079】
また、セラミックス粒子の平均粒子径は、10nm以上300nm以下であることが好ましく、20nm以上2000nm以下であることがより好ましい。これにより、インクの流路に付着した金属粒子を取り除くことができる。すなわち、セラミックス粒子の洗浄効果を特に優れたものとすることができる。この結果、洗浄後の液滴吐出装置を用いて、微細な導体パターン前駆体を容易に精度よく形成することができる。
なお、本明細書では、「平均粒径」とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒径のことを指すものとする。
【0080】
また、洗浄液2中におけるセラミックス粒子(セラミックス粒子がコロイドとして存在する場合には、セラミックスコロイド粒子)の含有量は、1wt%以上30wt%以下であることが好ましく、3wt%以上25wt%以下であることがより好ましい。これにより、インク1の流路に金属粒子が付着することを防止できるとともに、洗浄後においてセラミックス粒子がインクの流路に残存することを防止することができる。
【0081】
また、セラミックス粒子は、その表面に分散剤が付着したセラミックスコロイド粒子として、水系分散媒中に分散していることが好ましい。これにより、セラミックスコロイド粒子の水系分散媒への分散性が特に優れたものとなり、セラミックス粒子の洗浄性能が好適に発揮されるとともに、インクの流路にセラミックス粒子が残存しにくくなる。
また、セラミックスコロイド粒子の熱重量分析における500℃までの加熱減量は、1wt%以上25wt%以下が好ましい。これにより、セラミックスコロイド粒子の分散安定性安定性を特に優れたものとすることができ、セラミックス粒子による洗浄効果をより顕著なものとすることができる。
【0082】
[分散剤]
洗浄液2は、分散剤を含むことが好ましい。
分散剤は、インクの流路に付着した銀粒子をセラミックス粒子が削り取った際に、遊離した銀粒子に付着して銀コロイド粒子を形成する。このため、一旦、分散した銀粒子が再度インクの流路に付着することを防止することができ、洗浄液の洗浄効果を高めることができる。
また、分散剤は、セラミックス粒子に付着して、それぞれ、セラミックスコロイド粒子を形成する。このようなセラミックスコロイド粒子は、分散安定性に優れるため、好適に洗浄性能が発揮されるとともに、洗浄後において、インクの流路に残存しにくいものとなる。
【0083】
分散剤としては、特に限定されないが、COOH基とOH基とを合わせて3個以上有し、かつ、COOH基の数がOH基と同じか、それよりも多いヒドロキシ酸またはその塩を含むことが好ましい。これらの分散剤は、銀粒子やセラミックス粒子の表面に吸着してコロイド粒子を形成し、分散剤中に存在するCOOH基の電気的反発力によって銀コロイド粒子やセラミックスコロイド粒子を水溶液中に均一に分散させてコロイド液を安定化する働きを有する。これにより、セラミックス粒子の洗浄効果が十分に発揮されるとともに、一旦遊離した銀等の汚れがインクの流路に再付着しにくいものとなる。これに対して、分散剤中のCOOH基とOH基の数が3個未満であったり、COOH基の数がOH基の数よりも少なかったりすると、銀コロイド粒子やセラミックスコロイド粒子の分散性が十分に得られない場合がある。
このような分散剤としては、例えば、クエン酸、りんご酸、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三リチウム、クエン酸三アンモニウム、りんご酸二ナトリウム、タンニン酸、ガロタンニン酸、五倍子タンニン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
また、分散剤は、COOH基とSH基とを合わせて2個以上有するメルカプト酸またはその塩を含んでいてもよい。これらの分散剤は、メルカプト基が銀粒子やセラミックス粒子の表面に吸着してコロイド粒子を形成し、分散剤中に存在するCOOH基の電気的反発力によってコロイド粒子を水溶液中に均一に分散させてコロイド液を安定化する働きを有する。これにより、上述したような、ヒドロキシ酸またはその塩と同様の効果を得ることができる。これに対して、分散剤中のCOOH基とSH基の数が2個未満すなわち片方のみであると、銀コロイド粒子やセラミックスコロイド粒子の分散性が十分に得られない場合がある。
【0085】
このような分散剤としては、例えば、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、チオジプロピオン酸、メルカプトコハク酸、チオ酢酸、メルカプト酢酸ナトリウム、メルカプトプロピオン酸ナトリウム、チオジプロピオン酸ナトリウム、メルカプトコハク酸二ナトリウム、メルカプト酢酸カリウム、メルカプトプロピオン酸カリウム、チオジプロピオン酸カリウム、メルカプトコハク酸二カリウム等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
洗浄液2中に含まれる分散剤は、インク1中に含まれる分散剤を構成する成分の少なくとも一部を含むことが好ましく、インク1中に含まれる分散剤と組成がほぼ同一であることがより好ましい。析出した付着物は、インク1の元の分散剤が付着していると考えられるため、セラミックス粒子によって遊離した付着物に、さらに、インク1に含まれる分散剤と同一の洗浄液中にある分散剤が付着することにより、容易に遊離した付着物がコロイド粒子として洗浄液中に分散することができる。このため、洗浄液は、より洗浄性に優れたものとなる。また、洗浄後において、インク1の流路中の洗浄液2とインク1との置換を素早く行うことができる。
【0087】
洗浄液2中における分散剤の含有量は、特に限定されないが、0.1wt%以上20wt%以下であることが好ましく、0.3wt%以上10wt%以下であることがより好ましい。これにより、上述したようなセラミックス粒子や銀粒子の分散効果を顕著に発揮できるとともに、分散剤が多すぎて、洗浄後において分散剤が残存し、洗浄液2とインク1との置換に時間がかかることを防止することができる。
【0088】
[水系分散媒]
次に、水系分散媒について説明する。
本発明において、「水系分散媒」とは、水および/または水との相溶性に優れる液体(例えば、25℃における水100gに対する溶解度が30g以上の液体)で構成されたもののことを指す。このように、水系分散媒は、水および/または水との相溶性に優れる液体で構成されたものであるが、主として水で構成されたものであるのが好ましく、特に、水の含有率が70wt%以上のものであるのが好ましく、90wt%以上のものであるのがより好ましい。
また、洗浄液2中に含まれる水系分散媒は、インク1を構成する水系分散媒とほぼ同じ組成のものであるのが好ましい。これより、インク1との置換性が特に優れたものとなり、残存したインク1と素早く混合、置換することができる。
【0089】
水系分散媒の具体例としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロパンジオール等のアルコール系溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、ピリジン、ピラジン、ピロール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、アセトアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、洗浄液2中における水系分散媒の含有量は、95〜65wt%であることが好ましく、85〜75wt%であることがより好ましい。これにより、洗浄液2の粘度を好適なものとすることができ、洗浄液としての特性をより高いものとすることができる。
【0090】
[乾燥抑制剤]
また、洗浄液2は、乾燥抑制剤を含むことが好ましい。乾燥抑制剤は、洗浄後にインク流路が乾燥するのを防止する機能を有している。これにより、洗浄後にインク1を再充填する際に、気泡の混入を防止することができ、また、インク1の再充填を容易に行うことができる。
【0091】
このような乾燥抑制剤としては、下記式(II)で示される化合物、糖アルコール、アルカノールアミン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの化合物は、上述したように水系分散媒の揮発を防止する機能を有するとともに、水酸基やカルボニル基等の極性基を多く有し、このため、金属酸化物がこれらに包み込まれるようにして洗浄液中に安定して分散する。このため、インク1がセラミックス粒子として金属酸化物を含み、かつ、上記の化合物を含む場合、洗浄液2中におけるセラミックス粒子の分散安定性は特に優れたものとなり、洗浄液2の洗浄性が特に優れたものとなる。
【0092】
【化2】

(ただし、R、R’は、それぞれ、Hまたはアルキル基である。)
【0093】
上記式(II)で表される化合物は、水素結合性の高い成分である。このため、水との親和性が高く、適度な水分を保持することができ、インクの流路における水系分散媒の不本意な揮発を防止することができる。
上述したように、本発明で用いる上記式(II)で表される化合物中における、R、R’は、それぞれ、水素またはアルキル基であるが、R、R’は、ともに水素であるのが好ましい。すなわち、尿素であるのが好ましい。これにより、上述したような保湿性を特に高いものとすることができる。また、セラミックス粒子が上述したようなコロイド粒子として存在する場合に、特に優れた分散安定性を示すものとなり、洗浄液2の洗浄性が特に優れたものとなる。
【0094】
アルカノールアミンは、保湿性の高い成分であるとともに、金属粒子やセラミックス粒子が前述したようなコロイド粒子である場合に、コロイド粒子表面の分散剤の官能基を活性化させることができ、セラミックス粒子の分散安定性をより高いものとすることができる。
アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等各種のものを挙げることができる。
【0095】
また、アルカノールアミンは、第3級アミンであるのが好ましい。第3級アミンは、アルカノールアミンの中でも、特に保湿性が高く、上記効果をより顕著なものとすることができる。
また、第3級アミンの中でも、取り扱いやすさや、保湿性の高さ等の観点から、特に、トリエタノールアミンを用いるのが好ましい。
【0096】
糖アルコールは、糖類のアルデヒド基およびケトン基を還元して得られるものである。
また、糖アルコールは、高い保湿性を有する化合物である。
糖アルコールとしては、例えば、トレイトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、スレイトール、グリトール、タリトール、ガラクチトール、アリトール、アルトリトール、ドルシトール、イディトール、グリセリン(グリセロール)、イノシトール、マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール、ツラニトール等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0097】
また、インク1に乾燥抑制剤が含まれている場合、洗浄液2に含まれる乾燥抑制剤としては、インク1中に含まれる分散剤を構成する成分の少なくとも一部を含むものであるが好ましい。これにより、洗浄後において、インクの流路中の洗浄液2とインク1との置換を素早く行うことができる。
上述したような乾燥抑制剤の洗浄液中における含有量は、3wt%以上20wt%以下であるのが好ましく、5wt%以上15wt%以下であるのがより好ましい。これにより、インクの流路における水系分散媒の不本意な揮発をより効果的に防止することができる。
【0098】
[その他の成分]
洗浄液は、その他の成分を含むものであってもよい。
このような成分としては、例えば、インク1に用いる成分が挙げられ、具体的には、表面張力調整剤、有機バインダー、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール、チオ尿素等が挙げられる。
上述したような洗浄液2は、インク1より25℃での表面張力が低いものであることが好ましい。これにより、洗浄時において、液滴吐出装置100の洗浄部位に好適に洗浄液2が濡れ広がることができる。このため、洗浄後における洗浄部位に残存する汚れが特に少ないものとなる。
【0099】
25℃における洗浄液2の表面張力は、特に限定されないが、例えば、15〜45dyn/cmであるのが好ましく、20〜40dyn/cmであるのがより好ましい。これにより、洗浄時において、液滴吐出装置100の洗浄部位に好適に洗浄液2が濡れ広がることができ、洗浄液2の洗浄性を優れたものとすることができる。また、洗浄液2が微量に残存した場合であっても、インク1の表面張力への影響を極めて少ないものとすることができる。なお、本明細書において、表面張力は、JIS K 3362に準拠して測定される値を採用することができる。
【0100】
洗浄液2は、インク1より25℃における粘度が低いものであることが好ましい。これにより、洗浄時において、液滴吐出装置100の洗浄部位に好適に洗浄液2が濡れ広がることができる。また、洗浄時において、洗浄液2は、インクの流路内での流速を早いものとすることができる。このため、洗浄後における洗浄部位に残存する汚れが特に少ないものとなる。
【0101】
25℃における洗浄液2の粘度は、特に限定されないが、例えば、20mPa・s以下であるのが好ましく、10mPa・s以下であるのがより好ましい。これにより、洗浄時において、液滴吐出装置100の洗浄部位に好適に洗浄液が濡れ広がることができ、洗浄液2の洗浄性を優れたものとすることができる。また、洗浄液2が微量に残存した場合であっても、後述するインク1の粘度への影響を極めて少ないものとすることができる。なお、本明細書において、粘度の値としては、振動式粘度計を用いて25℃で測定して求められる値を採用することができ、特に、JIS Z8809に準拠して25℃で測定して求められる値を採用することができる。
【0102】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、液滴吐出装置を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。また、前述した実施形態では、液滴吐出装置から吐出される液状材料(インク)を導体パターン形成用インクとした構成について説明したが、液状材料としては、これに限定されず、例えば、カラーフィルターを形成するためのカラーフィルター形成用インクであってもよいし、画像を形成するための印刷用インクであってもよい。
【符号の説明】
【0103】
1…インク 2…洗浄液 11…基板 100…インクジェット装置(液滴吐出装置) 110…インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド、ヘッド) 111…ヘッド本体 112…振動板 113…ピエゾ素子 114…本体 115…ノズルプレート 115P…インク吐出面 116…リザーバー 117…インク室 118…ノズル 118a‥‥非吐出ノズル 130…ベース 140…テーブル 150…インク貯留槽 151…インク搬送路 152…開閉弁 153…自己封止弁 170…テーブル位置決め手段 171…第1移動手段 172…モーター 180…ヘッド位置決め手段 181…第2移動手段 182…リニアモーター 183、184、185…モーター 190…制御装置 191…駆動回路 200…洗浄機構 201…吸引媒体搬送路 202…洗浄液搬送路 203、204…分岐部 205…連絡路 210…洗浄ヘッド 211‥‥外管 212‥‥内管 213、215‥‥流路 214‥‥吸引口 216‥‥送出口 220…吸引ポンプ 230…回収タンク 240…洗浄液貯留槽 241、242‥‥管体 250…加圧ポンプ 260…フィルター 290‥‥移動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状材料を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽から送液された前記液状材料を吐出する複数のノズルを備えた液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドの洗浄に用いる洗浄液を貯留する洗浄液貯留槽と、
前記液滴吐出ヘッドに対して相対的に接離自在に設けられた洗浄ヘッドと、
前記洗浄ヘッドを前記液滴吐出ヘッドに対して接触させつつ、前記洗浄ヘッドと前記液滴吐出ヘッドとを相対的に移動させる移動手段とを有し、
前記洗浄ヘッドは、前記液滴吐出ヘッドと接触した状態にて、前記複数のノズルのうちの一部のノズルを覆う第1の開口と、前記第1の開口で覆われていない前記ノズルのうちの一部のノズルまたは全部のノズルを覆う第2の開口とを有し、
前記洗浄ヘッドを前記液滴吐出ヘッドに対して接触させた状態にて、前記移動手段によって前記洗浄ヘッドと前記液滴吐出ヘッドとを相対的に移動させつつ、前記第1の開口から該第1の開口に覆われた前記ノズルを介して前記液滴吐出ヘッド内に前記洗浄液貯留槽から送液された前記洗浄液を供給するとともに、前記第2の開口から該第2の開口に覆われた前記ノズルを介して前記液滴吐出ヘッド内の前記洗浄液を吸引するよう構成されていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記洗浄ヘッドを前記液滴吐出ヘッドに対して接触させた状態で、前記第1の開口から該第1の開口に覆われた前記ノズルを介して前記液滴吐出ヘッド内に前記洗浄液を供給するとともに、前記第2の開口から該第2の開口に覆われた前記ノズルを介して前記液滴吐出ヘッド内の前記洗浄液を吸引する第1の状態と、前記第2の開口から該第2の開口に覆われた前記ノズルを介して前記液滴吐出ヘッド内に前記洗浄液を供給するとともに、前記第1の開口から該第1の開口に覆われた前記ノズルを介して前記液滴吐出ヘッド内の前記洗浄液を吸引する第2の状態とを交互に行うよう構成されている請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記洗浄ヘッドは、外管と、該外管の内側に設けられた内管とを有し、前記内管の内側に形成された流路の一端および前記外管と前記内管の間に形成された流路の一端の一方が前記第1の開口を構成し、他方が前記第2の開口を構成する請求項1または2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記第1の開口は、前記第2の開口よりも、前記洗浄ヘッドの前記液滴吐出ヘッドとの相対的移動方向前方側に位置している請求項1または2に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記洗浄ヘッドを前記液滴吐出ヘッドに対して接触させた状態にて、前記第1の開口で覆われる前記ノズルの数をXとし、前記第2の開口で覆われる前記ノズルの数をYとしたとき、X/Yは、0.8以上、1.2以下である請求項1ないし4のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記第2の開口から吸引した洗浄液に含まれる前記液状材料を除去するフィルターを有し、前記フィルターによって前記液状材料が除去された前記洗浄液を前記洗浄ヘッドから前記液滴吐出ヘッド内に送出する請求項1ないし5のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記洗浄液が前記液滴吐出ヘッド内に供給されている状態で、前記貯留槽から前記液滴吐出ヘッドへの前記液状材料の送液を阻止するバルブを有している請求項1ないし6のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記洗浄液は、前記液状材料に含まれる固形分を溶解または分散可能であり、かつ、前記液状材料に含まれる主溶媒と相溶性を有する液体である請求項1ないし7のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
前記洗浄液は、前記液状材料の前記主溶媒を主成分としている請求項8に記載の液滴吐出装置。
【請求項10】
前記液状材料は、金属粒子を分散媒に分散したものである請求項1ないし9のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項11】
液状材料を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽から送液された前記液状材料を吐出する複数のノズルを備えた液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドの洗浄に用いる洗浄液を貯留する洗浄液貯留槽と、
前記液滴吐出ヘッドに対して相対的に接離自在に設けられた洗浄ヘッドと、
前記洗浄ヘッドを前記液滴吐出ヘッドに対して接触させつつ、前記洗浄ヘッドと前記液滴吐出ヘッドとを相対的に移動させる移動手段とを有し、
前記洗浄ヘッドは、前記液滴吐出ヘッドと接触した状態にて、前記複数のノズルのうちの一部のノズルを覆う第1の開口と、前記第1の開口で覆われていない前記ノズルのうちの一部のノズルまたは全部のノズルを覆う第2の開口とを有し、
前記洗浄ヘッドを前記液滴吐出ヘッドに対して接触させた状態にて、前記移動手段によって前記洗浄ヘッドと前記液滴吐出ヘッドとを相対的に移動させつつ、前記第1の開口から該第1の開口に覆われた前記ノズルを介して前記液滴吐出ヘッド内に前記洗浄液貯留槽から送液された前記洗浄液を供給するとともに、前記第2の開口から該第2の開口に覆われた前記ノズルを介して前記液滴吐出ヘッド内の前記洗浄液を吸引することを特徴とする液滴吐出装置の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−135746(P2012−135746A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291295(P2010−291295)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】