説明

液滴吐出装置及びワイピング方法

【課題】従来の液滴吐出装置では、描画品位を向上させることが困難である。
【解決手段】液状体を液滴として吐出するノズルが設けられたノズル面35を有する吐出ヘッド33と、ノズル面35に接触した状態で、ノズル面35に付着した前記液状体を払拭するブレード83と、ブレード83に接触した状態で設けられ、ブレード83に付着した前記液状体を吸収する吸収体85と、吸収体85のブレード83に対する位置を変化させる電磁ソレノイド87と、を有し、吸収体85は、ブレード83がノズル面35に接触している状態において、ノズル面35から離間しており、電磁ソレノイド87は、吸収体85のブレード83に対する位置を吐出ヘッド33側に向けて変化させる、ことを特徴とする液滴吐出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置及びワイピング方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出装置の一種にインクジェット装置がある。インクジェット装置では、インクなどの液状体をノズルから液滴として吐出する吐出ヘッドを用いて、種々の記録媒体に液状体で描画を行うことができる。
従来、このようなインクジェット装置として、吐出ヘッドの吐出口面(ノズル面)を摺擦(ワイピング)するブレードに、インクを吸収する吸収体を一体的に設けたメンテナンス装置を有するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−234221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されたメンテナンス装置では、ブレードが吸収体よりも吐出ヘッド側に突出している。さらに、ブレードと吸収体とが一体的に設けられている。このため、ブレードにおいて、吸収体よりも吐出ヘッド側に突出した領域にインクが残留することがある。インクが残留しているブレードでノズル面をワイピングすると、ブレードに残留していたインクがノズル内に進入してしまうことがある。この結果、ブレードに残留していたインクと、ノズル内のインクとが混ざり合ってしまい、混色が発生することがある。混色が発生した状態で描画を行うと、描画の品位が損なわれやすい。
つまり、従来の液滴吐出装置では、描画品位を向上させることが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]液状体を液滴として吐出するノズルが設けられたノズル面を有する吐出ヘッドと、前記ノズル面に接触した状態で、前記ノズル面に付着した前記液状体を払拭するブレードと、前記ブレードに接触した状態で設けられ、前記ブレードに付着した前記液状体を吸収する吸収体と、前記吸収体の前記ブレードに対する位置を変化させる変位装置と、を有し、前記吸収体は、前記ブレードが前記ノズル面に接触している状態において、前記ノズル面から離間しており、前記変位装置は、前記吸収体の前記ブレードに対する位置を前記吐出ヘッド側に向けて変化させる、ことを特徴とする液滴吐出装置。
【0007】
この適用例の液滴吐出装置は、吐出ヘッドと、ブレードと、吸収体と、変位装置と、を有する。
吐出ヘッドは、液状体を液滴として吐出するノズルが設けられたノズル面を有する。
ブレードは、ノズル面に付着した液状体を払拭する。ブレードは、ノズル面に接触した状態で、ノズル面を払拭する。
吸収体は、ブレードに接触した状態で設けられている。吸収体は、ブレードに付着した液状体を吸収する。
変位装置は、吸収体のブレードに対する位置を変化させる。
この液滴吐出装置では、例えば、ブレードでノズル面を払拭した後に、ブレードに付着した液状体を吸収体で拭くことができる。また、吸収体は、ブレードがノズル面に接触している状態において、ノズル面から離間している。このため、ブレードでノズル面を払拭するときに、吸収体がノズル面に接触することを避けることができる。
そして、この液滴吐出装置では、変位装置は、吸収体のブレードに対する位置を吐出ヘッド側に向けて変化させる。これにより、例えば、ブレードにおいて、ノズル面に接触する部位までの領域を吸収体で拭くことができる。この結果、ブレードに液状体が残留することを低く抑えやすくすることができるので、描画品位を向上させやすくすることができる。
【0008】
[適用例2]上記の液滴吐出装置であって、前記変位装置は、前記吸収体が前記ブレードを前記吐出ヘッド側に超えるまで、前記吸収体の前記ブレードに対する位置を変化させる、ことを特徴とする液滴吐出装置。
【0009】
この適用例では、吸収体がブレードを吐出ヘッド側に超えるまで、吸収体のブレードに対する位置を変化させることができるので、ブレードに液状体が残留することを一層低く抑えやすくすることができる。
【0010】
[適用例3]液状体を液滴として吐出するノズルが設けられたノズル面を有する吐出ヘッドの前記ノズル面をブレードで払拭する工程と、前記液状体を吸収する性質を有する吸収体を前記ブレードに接触させた状態で、前記吸収体の前記ブレードに対する位置を、前記ノズル面とは交差する方向に沿って変位させることによって、前記ブレードを前記吸収体で拭く工程と、を有する、ことを特徴とするワイピング方法。
【0011】
この適用例のワイピング方法は、ノズル面をブレードで払拭する工程と、ブレードを吸収体で拭く工程と、を有する。
ノズル面をブレードで払拭する工程では、吐出ヘッドのノズル面をブレードで払拭する。これにより、ノズル面に付着した液状体を払拭することができる。
ブレードを吸収体で拭く工程では、吸収体をブレードに接触させた状態で、吸収体のブレードに対する位置を、ノズル面とは交差する方向に沿って変位させる。吸収体は、液状体を吸収する性質を有する。このため、この工程によって、ブレードに付着している液状体を吸収体で拭くことができる。
このワイピング方法では、ブレードを吸収体で拭く工程において、吸収体のブレードに対する位置を、ノズル面とは交差する方向に沿って変位させるので、例えば、ブレードにおいて、ノズル面に接触する部位までの領域を吸収体で拭くことができる。この結果、ブレードに液状体が残留することを低く抑えやすくすることができるので、描画品位を向上させやすくすることができる。
【0012】
[適用例4]上記のワイピング方法であって、前記ブレードを前記吸収体で拭く工程では、前記吸収体が前記ブレードを前記吐出ヘッド側に超えるまで、前記吸収体の前記ブレードに対する位置を変化させる、ことを特徴とするワイピング方法。
【0013】
この適用例では、吸収体がブレードを吐出ヘッド側に超えるまで、吸収体のブレードに対する位置を変化させることができるので、ブレードに液状体が残留することを一層低く抑えやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態における液滴吐出装置の概略の構成を示す斜視図。
【図2】本実施形態におけるヘッドユニットを図1中のA視方向に見たときの正面図。
【図3】本実施形態における吐出ヘッドの底面図。
【図4】図2中のB−B線における断面図。
【図5】図1中のC−C線における断面図。
【図6】本実施形態におけるワイピング動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照しながら、実施形態について説明する。なお、各図面において、それぞれの構成を認識可能な程度の大きさにするために、構成や部材の縮尺が異なっていることがある。
【0016】
本実施形態における液滴吐出装置1は、図1に示すように、ワーク搬送装置3と、ヘッドユニット5と、キャリッジ7と、キャリッジ搬送装置9と、メンテナンス装置11と、を有している。
液滴吐出装置1では、基板などのワークWとヘッドユニット5との平面視での相対位置を変化させつつ、ヘッドユニット5から液状体を液滴として吐出させることによって、ワークWに液状体で所望のパターンを描画することができる。なお、図中のY方向はワークWの移動方向を示し、X方向は平面視でY方向とは直交する方向を示している。また、X方向及びY方向によって規定されるXY平面と直交する方向は、Z方向として規定される。
【0017】
このような液滴吐出装置1は、例えば、液晶表示パネル等に用いられるカラーフィルターの製造や、有機EL装置の製造などに適用され得る。
赤、緑及び青の3色のフィルターエレメントを有するカラーフィルターの場合、液滴吐出装置1は、例えば、基板に赤、緑及び青の各着色層を形成する工程で好適に使用され得る。この場合、ヘッドユニット5から各着色層に対応する各液状体を、ワークWに液滴として吐出させることによって、ワークWに赤、緑及び青のそれぞれのフィルターエレメントのパターンが描画される。
また、有機EL装置の製造では、例えば、赤、緑及び青の画素ごとに、各色に対応する機能層(有機層)を形成する工程で好適に使用され得る。この場合、ヘッドユニット5から各色の機能層に対応する各液状体を、ワークWに液滴として吐出させることによって、ワークWに赤、緑及び青のそれぞれの機能層のパターンが描画される。
【0018】
ここで、液滴吐出装置1の各構成について、詳細を説明する。
ワーク搬送装置3は、図1に示すように、定盤21と、ガイドレール23aと、ガイドレール23bと、ワークテーブル25と、を有している。
定盤21は、例えば石などの熱膨張係数が小さい材料で構成されており、Y方向に沿って延びるように据えられている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、定盤21の上面21a上に配設されている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、それぞれ、Y方向に沿って延在している。ガイドレール23aとガイドレール23bとは、互いにX方向に隙間をあけた状態で並んでいる。
【0019】
ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bを挟んで定盤21の上面21aに対向した状態で設けられている。ワークテーブル25は、定盤21から浮いた状態でガイドレール23a及びガイドレール23b上に載置されている。ワークテーブル25は、ワークWが載置される面である載置面25aを有している。載置面25aは、定盤21側とは反対側(上側)に向けられている。ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bによってY方向に沿って案内され、定盤21上をY方向に沿って往復移動可能に構成されている。
【0020】
ワークテーブル25は、図示しない移動機構及び動力源によって、Y方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、ワークテーブル25をY方向に沿って移動させるための動力源として、ワーク搬送モーターが採用されている。ワーク搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
ワーク搬送モーターからの動力は、移動機構を介してワークテーブル25に伝達される。これにより、ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bに沿って、すなわちY方向に沿って往復移動することができる。つまり、ワーク搬送装置3は、ワークテーブル25の載置面25aに載置されたワークWを、Y方向に沿って往復移動させることができる。
【0021】
ヘッドユニット5は、ヘッドユニット5を図1中のA視方向に見たときの正面図である図2に示すように、ヘッドプレート31と、吐出ヘッド33と、を有している。
吐出ヘッド33は、底面図である図3に示すように、ノズル面35を有している。ノズル面35には、複数のノズル37が形成されている。なお、図3では、ノズル37をわかりやすく示すため、ノズル37が誇張され、且つノズル37の個数が減じられている。
複数のノズル37は、Y方向に沿って所定のピッチPで配列形成されており、Y方向に延在するノズル列39を構成している。
【0022】
吐出ヘッド33は、図2中のB−B線における断面図である図4に示すように、ノズルプレート46と、キャビティープレート47と、振動板48と、複数の圧電素子49と、を有している。
ノズルプレート46は、ノズル面35を有している。複数のノズル37は、ノズルプレート46に設けられている。
キャビティープレート47は、ノズルプレート46のノズル面35とは反対側の面に設けられている。キャビティープレート47には、複数のキャビティー51が形成されている。各キャビティー51は、各ノズル37に対応して設けられており、対応する各ノズル37に連通している。各キャビティー51には、図示しないタンクから機能液53(液状体)が供給される。
【0023】
振動板48は、キャビティープレート47のノズルプレート46側とは反対側の面に設けられている。振動板48は、Z方向に振動(縦振動)することによって、キャビティー51内の容積を拡大したり、縮小したりする。
複数の圧電素子49は、それぞれ、振動板48のキャビティープレート47側とは反対側の面に設けられている。各圧電素子49は、各キャビティー51に対応して設けられており、振動板48を挟んで各キャビティー51に対向している。各圧電素子49は、駆動信号に基づいて、伸長する。これにより、振動板48がキャビティー51内の容積を縮小する。このとき、キャビティー51内の機能液53に圧力が付与される。その結果、ノズル37から、機能液53が液滴55として吐出される。吐出ヘッド33による液滴55の吐出法は、インクジェット法の1つである。
【0024】
上記の構成を有する吐出ヘッド33は、図2に示すように、ノズル面35がヘッドプレート31から突出した状態で、ヘッドプレート31に支持されている。
キャリッジ7は、図1に示すように、ヘッドユニット5を支持している。ここで、ヘッドユニット5は、ノズル面35(図2)がZ方向の下方に向けられた状態でキャリッジ7に支持されている。
なお、本実施形態では、縦振動型の圧電素子49が採用されているが、機能液53に圧力を付与するための加圧手段は、これに限定されず、例えば、下電極と圧電体層と上電極とを積層形成した撓み変形型の圧電素子も採用され得る。また、加圧手段としては、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなども採用され得る。さらに、発熱体を用いてノズル内に泡を発生させ、その泡によって機能液に圧力を付与する構成も採用され得る。
【0025】
キャリッジ搬送装置9は、図1に示すように、架台61と、ガイドレール63と、を有している。
架台61は、X方向に延在しており、ワーク搬送装置3及びメンテナンス装置11をX方向にまたいでいる。架台61は、ワークテーブル25の定盤21側とは反対側で、ワーク搬送装置3及びメンテナンス装置11のそれぞれに対向している。架台61は、支柱67aと支柱67bとによって支持されている。支柱67a及び支柱67bは、定盤21を挟んでX方向に互いに対峙する位置に設けられている。支柱67a及び支柱67bは、それぞれ、ワークテーブル25よりもZ方向の上方に突出している。これにより、架台61とワークテーブル25との間、及び架台61とメンテナンス装置11との間には、それぞれ隙間が保たれている。
【0026】
ガイドレール63は、架台61の定盤21側に設けられている。ガイドレール63は、X方向に沿って延在しており、架台61のX方向における幅にわたって設けられている。
前述したキャリッジ7は、ガイドレール63に支持されている。キャリッジ7がガイドレール63に支持された状態において、吐出ヘッド33のノズル面35は、Z方向においてワークテーブル25側に向いている。キャリッジ7は、ガイドレール63によってX方向に沿って案内され、X方向に往復動可能な状態でガイドレール63に支持されている。なお、平面視で、キャリッジ7がワークテーブル25に重なっている状態において、ノズル面35とワークテーブル25の載置面25aとは、互いに隙間を保った状態で対向する。
【0027】
キャリッジ7は、図示しない移動機構及び動力源によって、X方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、キャリッジ7をX方向に沿って移動させるための動力源として、キャリッジ搬送モーターが採用されている。キャリッジ搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
キャリッジ搬送モーターからの動力は、移動機構を介してキャリッジ7に伝達される。これにより、キャリッジ7は、ガイドレール63に沿って、すなわちX方向に沿って往復移動することができる。つまり、キャリッジ搬送装置9は、キャリッジ7に支持されたヘッドユニット5を、X方向に沿って往復移動させることができる。
上記の構成を有する液滴吐出装置1では、ワークWと吐出ヘッド33とを互いに対向させた状態で吐出ヘッド33をX方向に往復移動させつつ、吐出ヘッド33から液滴55を吐出させることによって、ワークWに対するパターンの描画が行われる。
【0028】
メンテナンス装置11は、図1に示すように、定盤71と、ガイドレール73aと、ガイドレール73bと、保守テーブル75と、キャッピングユニット76と、フラッシングユニット77と、ワイピングユニット79と、を有している。
定盤71は、例えば石などの熱膨張係数が小さい材料で構成されており、X方向に支柱67aを挟んで定盤21と対峙する位置に設けられている。
ガイドレール73a及びガイドレール73bは、定盤71の上面71a上に配設されている。ガイドレール73a及びガイドレール73bは、それぞれ、Y方向に沿って延在している。ガイドレール73aとガイドレール73bとは、互いにX方向に隙間をあけた状態で並んでいる。
保守テーブル75は、ガイドレール73a及びガイドレール73bを挟んで定盤71の上面71aに対向した状態で設けられている。保守テーブル75は、定盤71から浮いた状態でガイドレール73a及びガイドレール73b上に載置されている。
【0029】
保守テーブル75には、キャッピングユニット76や、フラッシングユニット77、ワイピングユニット79などの保守ユニットが載置される。本実施形態では、保守ユニットは、キャッピングユニット76と、フラッシングユニット77と、ワイピングユニット79と、を含んでいる。
保守テーブル75は、ガイドレール73a及びガイドレール73bによってY方向に沿って案内され、定盤71上をY方向に沿って往復移動可能に構成されている。
フラッシングユニット77は、保守テーブル75の定盤71側とは反対側に設けられている。
ここで、ワークWへのパターンの描画とは無関係に、吐出ヘッド33から機能液53を吐出させる動作は、フラッシング動作と呼ばれる。フラッシング動作には、例えば、ノズル37内に滞留する機能液53がノズル37内で固化してしまうことを予防する効果がある。フラッシングユニット77は、フラッシング動作のときに、吐出ヘッド33から吐出される機能液53を受ける装置である。
【0030】
キャッピングユニット76は、吐出ヘッド33に蓋をする装置である。吐出ヘッド33から吐出される機能液53では、液体成分が蒸発することがある。一般的に、機能液53における液体成分が蒸発すると、機能液53の粘度が高くなる。吐出ヘッド33内の機能液53の粘度が高くなると、ノズル37における液滴55を吐出する性能(以下、吐出性能と呼ぶ)が低下することがある。吐出性能の低下としては、例えば、ノズル37から吐出された液滴55の進行方向が曲がってしまったり(飛行曲がり)、ノズル37から液滴55が吐出されなかったり(不吐出)することなどが挙げられる。なお、キャッピングユニット76で吐出ヘッド33に蓋をする動作は、キャッピング動作と呼ばれる。
【0031】
キャッピングユニット76は、吐出ヘッド33に蓋をすることで、機能液53における液体成分がノズルから蒸発することを低く抑える。これにより、吐出ヘッド33における吐出性能を維持しやすくすることができる。
ワイピングユニット79は、吐出ヘッド33のノズル面35を払う装置である。液滴吐出装置1では、ノズル面35に機能液53が付着することがある。ノズル面35に機能液53が付着すると、吐出ヘッド33における吐出性能が低下することがある。ワイピングユニット79は、ノズル面35を払うことによって、ノズル面35に付着している機能液53を払拭する。これにより、吐出ヘッド33における吐出性能を維持しやすくすることができる。なお、ワイピングユニット79でノズル面35を払う動作は、ワイピング動作と呼ばれる。
【0032】
保守テーブル75は、図示しない移動機構及び動力源によって、Y方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、保守テーブル75をY方向に沿って移動させるための動力源として、テーブル搬送モーターが採用されている。テーブル搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
テーブル搬送モーターからの動力は、移動機構を介して保守テーブル75に伝達される。これにより、保守テーブル75は、ガイドレール73a及びガイドレール73bに沿って、すなわちY方向に沿って往復移動することができる。
つまり、メンテナンス装置11は、キャッピングユニット76や、フラッシングユニット77、ワイピングユニット79などの保守ユニットを、Y方向に沿って往復移動させることができる。これにより、平面視で吐出ヘッド33がメンテナンス装置11に重なっている状態において、吐出ヘッド33をキャッピングユニット76、フラッシングユニット77及びワイピングユニット79のそれぞれに対向させることができる。
【0033】
ワイピングユニット79は、図1中のC−C線における断面図である図5(a)に示すように、支持台81と、ブレード83と、吸収体85と、電磁ソレノイド87と、を有している。
支持台81は、吐出ヘッド33とワイピングユニット79とが互いに対向している状態において、ノズル面35に対向する面である支持面81aを有している。
ブレード83は、ゴムやエラストマなどの弾性体で構成されており、支持面81aに設けられている。ブレード83は、支持面81aから吐出ヘッド33側に向かって突出している。ブレード83は、ノズル面35のZ方向における高さ位置よりもヘッドプレート31側に突出している。
吸収体85は、支持面81aよりも吐出ヘッド33側に突出している。吸収体85は、支持面81aよりも吐出ヘッド33側から、支持台81の内側にわたって延びている。吸収体85は、ブレード83の側面に接触している。吸収体85は、ブレード83の側面に接触した状態で、Z方向に沿って移動可能に構成されている。なお、吸収体85の材料としては、機能液53に対する吸収性が高い材料が採用され得る。このような材料としては、例えば、フェルトなどが挙げられる。
【0034】
電磁ソレノイド87は、支持台81の内側に設けられている。電磁ソレノイド87は、駆動軸91を有している。駆動軸91は、電磁ソレノイド87を電気的に駆動することによって、吐出ヘッド33側に向かって駆動される。また、駆動軸91は、電磁ソレノイド87の駆動が停止すると、吐出ヘッド33側とは反対側に向かって退避する。
吸収体85は、支持台81の内側において、伝動部93を介して電磁ソレノイド87の駆動軸91につながっている。
なお、電磁ソレノイド87の駆動が停止した状態、すなわち駆動軸91が吐出ヘッド33側とは反対側に退避した状態において、吸収体85とノズル面35との間には、隙間G1が保たれている。
駆動軸91が吐出ヘッド33側に向かって駆動されると、駆動軸91からの動力が、伝動部93を介して吸収体85に伝達される。これにより、吸収体85は、図5(b)に示すように、Z方向において、支持面81aからのブレード83の高さ位置Z1を越える位置Z2まで変位する。つまり、吸収体85は、電磁ソレノイド87の駆動によって、ブレード83よりもヘッドプレート31側に突出する。
【0035】
液滴吐出装置1におけるワイピング動作について説明する。
ワイピング動作は、吐出ヘッド33とブレード83とを互いに対向させながら、吐出ヘッド33に対するブレード83の相対位置をX方向に変化させることによって行われる。
ワイピング動作では、まず、図5(a)に示すように、吐出ヘッド33とワイピングユニット79とを互いに対向させる。このとき、吐出ヘッド33は、X方向において、吸収体85のブレード83側とは反対側に位置している。
次いで、図6(a)に示すように、吐出ヘッド33を、X方向に沿ってブレード83側に向けて(図6(a)中の矢印の向きに)移動させる。これにより、ブレード83がノズル面35に当接する。
ブレード83がノズル面35に当接した状態で、さらに、吐出ヘッド33をX方向に沿って移動させることによって、図6(b)に示すように、ノズル面35をブレード83で払うことができる。
【0036】
このとき、ブレード83には、機能液53が付着することがある。ブレード83に機能液53が付着(残留)したままの状態で、ノズル面35をブレード83で払うと、ブレード83に残留していた機能液53がノズル37内に進入してしまうことがある。この結果、ブレード83に残留していた機能液53と、ノズル37内の機能液53とが混ざり合ってしまい、混色が発生することがある。混色が発生した状態で描画を行うと、描画の品位が損なわれやすい。
そこで、本実施形態では、ワインピング方法は、ノズル面35をブレード83で払った後に、ブレード83を吸収体85で拭く工程を有している。ブレード83を吸収体85で拭く工程では、図5(b)に示すように、吸収体85を位置Z2に進出させる。これは、電磁ソレノイド87を駆動することによって達成され得る。
本実施形態では、ブレード83を吸収体85で拭く工程によって、ブレード83に機能液53が残留することを低く抑えやすくすることができるので、描画品位を向上させやすくすることができる。
【0037】
本実施形態において、電磁ソレノイド87が変位装置に対応している。
本実施形態では、吸収体85は、ブレード83がノズル面35に接触している状態において、ノズル面35から離間している。このため、ブレード83でノズル面35を払うときに、吸収体85がノズル面35に接触することを避けることができる。これにより、ノズル37内の機能液53のメニスカスを維持しやすくすることができる。この結果、液滴55の吐出性能や吐出精度を維持しやすくすることができるため、描画品位を向上させやすくすることができる。
【符号の説明】
【0038】
1…液滴吐出装置、11…メンテナンス装置、33…吐出ヘッド、35…ノズル面、37…ノズル、53…機能液、55…液滴、79…ワイピングユニット、81…支持台、81a…支持面、83…ブレード、85…吸収体、87…電磁ソレノイド、91…駆動軸、93…伝動部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状体を液滴として吐出するノズルが設けられたノズル面を有する吐出ヘッドと、
前記ノズル面に接触した状態で、前記ノズル面に付着した前記液状体を払拭するブレードと、
前記ブレードに接触した状態で設けられ、前記ブレードに付着した前記液状体を吸収する吸収体と、
前記吸収体の前記ブレードに対する位置を変化させる変位装置と、を有し、
前記吸収体は、前記ブレードが前記ノズル面に接触している状態において、前記ノズル面から離間しており、
前記変位装置は、前記吸収体の前記ブレードに対する位置を前記吐出ヘッド側に向けて変化させる、
ことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記変位装置は、前記吸収体が前記ブレードを前記吐出ヘッド側に超えるまで、前記吸収体の前記ブレードに対する位置を変化させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
液状体を液滴として吐出するノズルが設けられたノズル面を有する吐出ヘッドの前記ノズル面をブレードで払拭する工程と、
前記液状体を吸収する性質を有する吸収体を前記ブレードに接触させた状態で、前記吸収体の前記ブレードに対する位置を、前記ノズル面とは交差する方向に沿って変位させることによって、前記ブレードを前記吸収体で拭く工程と、を有する、
ことを特徴とするワイピング方法。
【請求項4】
前記ブレードを前記吸収体で拭く工程では、前記吸収体が前記ブレードを前記吐出ヘッド側に超えるまで、前記吸収体の前記ブレードに対する位置を変化させる、
ことを特徴とする請求項3に記載のワイピング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−179583(P2012−179583A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45998(P2011−45998)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】