液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドユニット
【課題】ヘッド構成体の損傷を防止できる液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】液滴を吐出する液滴吐出ヘッド9を含むヘッド構成体を有し、ヘッド構成体及び記録媒体Pの一方を他方に対して走査移動させて記録媒体に液滴を吐出する。ヘッド構成体を支持してヘッド構成体と一体的に移動する支持部材4と、ヘッド構成体を挟んだ走査移動方向の両側において、ヘッド構成体よりも記録媒体と対向する方向に突出し、且つ、ヘッド構成体と分離して支持部材に設けられた突出部材60を備える。
【解決手段】液滴を吐出する液滴吐出ヘッド9を含むヘッド構成体を有し、ヘッド構成体及び記録媒体Pの一方を他方に対して走査移動させて記録媒体に液滴を吐出する。ヘッド構成体を支持してヘッド構成体と一体的に移動する支持部材4と、ヘッド構成体を挟んだ走査移動方向の両側において、ヘッド構成体よりも記録媒体と対向する方向に突出し、且つ、ヘッド構成体と分離して支持部材に設けられた突出部材60を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な記録媒体に対して印刷可能な記録装置として、液滴吐出装置であるインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置は、液滴吐出ヘッドと記録媒体とを相対移動させながら、液滴吐出ヘッドの記録媒体に対向する面に設けられた吐出口(以下、ノズル)から色材であるインク(液滴)を直接記録媒体に対して吐出して、記録媒体上に着弾させることで記録媒体上に画像を形成する記録装置であり、工程の単純さ、印刷時における静粛性及び印字、印画品質の点で非常に優れた特徴がある。
【0003】
上記の液滴吐出装置においては、紙材やプリント基板、ガラス基板等、厚さが異なる多種の記録媒体が用いられるため、例えば、特許文献1に記載されているように、記録媒体を保持するステージを上下方向に移動させることで、記録媒体の厚さに対応させて液滴吐出ヘッドとの間のギャップ量を適切な値に設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−201107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
記録媒体の位置と液滴吐出ヘッドの位置との少なくとも一方の設定にミスが生じた場合、液滴吐出ヘッドと記録媒体とを相対移動させた際にこれらが干渉して、高価な液滴吐出ヘッドが損傷する可能性がある。
【0006】
また、近年では、液滴吐出装置を用いて、樹脂や金属等のインク吸収性を有さない種々の材料を記録媒体として画像記録を行う場合があり、このような記録媒体に対してインクを定着させるために、光硬化型インクが用いられていることがある。通常、この光硬化型インクを用いたインクジェット記録装置には、インクを硬化させるための紫外線照射装置がヘッド構成体として液滴吐出ヘッドと一体的に配設された液滴吐出ヘッドユニットが用いられ、記録媒体に画像を記録する際は、インクを記録媒体に着弾させた直後に、インクの硬化が可能な一定の照射時間及び照射回数の条件下で、紫外線照射装置に具備された光源から紫外線を照射してインクを硬化定着させるが、上記のように、記録媒体の位置設定にミスがあった状態で液滴吐出ヘッドユニットと記録媒体を相対移動させると、紫外線照射装置にも損傷が及ぶ可能性がある。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、ヘッド構成体の損傷を防止できる液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用している。
本発明の液滴吐出装置は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを含むヘッド構成体を有し、前記ヘッド構成体及び記録媒体の一方を他方に対して走査移動させて前記記録媒体に前記液滴を吐出する液滴吐出装置であって、前記ヘッド構成体を支持して前記前記ヘッド構成体と一体的に移動する支持部材と、前記ヘッド構成体を挟んだ前記走査移動方向の両側において、前記ヘッド構成体よりも前記記録媒体と対向する方向に突出し、且つ、前記ヘッド構成体と分離して前記支持部材に設けられた突出部材を備えることを特徴とするものである。
【0009】
従って、本発明の液滴吐出装置では、液滴吐出ヘッド等のヘッド構成体と記録媒体との走査移動時にヘッド構成体と記録媒体とが接触する前に、突出部材が記録媒体に接触するため、ヘッド構成体と記録媒体との接触を回避することが可能になり、ヘッド構成体の損傷を防止できる。
【0010】
また、本発明の液滴吐出装置では、前記突出部材が、前記記録媒体と対向する方向に存在する物体と接触したことを検出する検出装置と、前記検出装置の検出結果に基づいて、前記ヘッド構成体と前記記録媒体との走査移動を制御する駆動制御装置とを備える構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、検出装置が突出部材と物体とが接触したことを検知した場合、駆動制御装置がヘッド構成体と記録媒体との走査移動を、例えば停止させることにより、突出部材と物体との接触後に物体が移動してヘッド構成体と接触することを回避できる。
【0011】
本発明の液滴吐出装置では、前記ヘッド構成体を駆動する第1駆動装置と、前記記録媒体を駆動する第2駆動装置とを備え、前記検出装置としては、前記突出部材と前記物体との接触に伴って生じる前記第1駆動装置と前記第2駆動装置との少なくとも一方の負荷の変化を検出する負荷検出部を有する構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、ヘッド構成体と記録媒体との走査移動時に突出部材と物体(例えば、記録媒体)とが接触すると、第1駆動装置と第2駆動装置との少なくとも一方の負荷が増大するため、負荷検出部が負荷の変化を検出することにより、突出部材と物体との接触を容易に検出することが可能になる。
【0012】
また、本発明の液滴吐出装置では、前記記録媒体を吸着保持して移動するステージ装置を備え、前記検出装置は、前記突出部材と前記物体との接触に伴って生じる前記ステージ装置への前記記録媒体の吸着力の変化を検出する吸着力検出部を有する構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、ヘッド構成体と記録媒体との走査移動時に突出部材と記録媒体とが接触して、ステージ装置への記録媒体の吸着が解除される等の事態が生じた場合、記録媒体への吸着力が変化するため、吸着力検出部が当該吸着力の変化を検出することにより、突出部材と記録媒体との接触を容易に検出することが可能になる。
【0013】
また、本発明の液滴吐出装置における前記検出装置としては、前記突出部材に設けられ該突出部材の変形に応じて電圧を生じる電歪素子を有する構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、ヘッド構成体と記録媒体との走査移動時に突出部材と物体(例えば、記録媒体)とが接触して、突出部材が変形するのに伴って電歪素子が変形して電圧を生じる。そのため、電歪素子から生じる電圧を検出することにより、突出部材と記録媒体との接触を容易に検出することが可能になる。
【0014】
また、本発明の液滴吐出装置では、前記突出部材を前記記録媒体と対向する方向に移動させる移動装置を備える構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、突出部材のヘッド構成体に対する突出量、すなわち記録媒体等の物体との間の隙間量を任意の値に調節することが可能になる。
【0015】
また、本発明の液滴吐出装置では、前記突出部材と隣り合って配置された前記ヘッド構成体は、前記突出部材に対して該突出部材の長さよりも大きい距離で離間して配置される構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、ヘッド構成体と記録媒体との走査移動時に突出部材と物体(例えば、記録媒体)とが接触して突出部材が折れ曲がったり破損した場合でも、当該突出部材がヘッド構成体と接触することを回避できる。
【0016】
上記構成の前記突出部材としては、前記ヘッド構成体のうち、前記記録媒体と対向する方向に最も突出したヘッド構成体と略面一の高さに設けられて該突出部材よりも大きな強度を有する台座部を介して前記支持部材に支持される構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、ヘッド構成体よりも突出する突出部材の長さを短くすることができ、結果として突出部材とヘッド構成体との距離を短くして小型化することが可能になる。
【0017】
また、本発明の液滴吐出装置では、前記支持部材に、前記走査移動方向及び前記記録媒体と対向する方向と略直交する非走査方向で前記ヘッド構成体を挟んだ両側に、前記ヘッド構成体と分離して設けられ、前記ヘッド構成体よりも前記記録媒体と対向する方向に突出する第2突出部材を備える構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、ヘッド構成体に対して走査移動方向に存在する物体以外にも、非走査方向に存在する物体と第2突出部材とが接触することにより、当該物体とヘッド構成体とが接触することを防止できる。
【0018】
そして、本発明のヘッドユニットは、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを含むヘッド構成体を有するヘッドユニットであって、前記ヘッド構成体を支持して、所定方向に一体的に移動する支持部材と、前記支持部材に前記ヘッド構成体を挟んだ前記所定方向の両側に、前記ヘッド構成体と分離して設けられ、前記ヘッド構成体よりも前記液滴を吐出する方向に突出する突出部材を備えることを特徴とするものである。
【0019】
従って、本発明のヘッドユニットでは、液滴吐出ヘッド等のヘッド構成体と記録媒体との所定方向への走査移動時にヘッド構成体と記録媒体とが接触する前に、突出部材が記録媒体に接触するため、ヘッド構成体と記録媒体との接触を回避することが可能になり、ヘッド構成体の損傷を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態の液滴吐出装置1の概略構成を示す模式図である。
【図2】第1実施形態に係るヘッド構成体の概略構成図である。
【図3】ノズル形成面21Aにおけるノズル17の配列状態を示す図である。
【図4】液滴吐出ヘッド9の内部構成を示す部分断面図である。
【図5】第2実施形態に係るヘッド構成体の概略構成図である。
【図6】第3実施形態に係るヘッド構成体の概略構成図である。
【図7】他の実施形態に係るヘッド構成体の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドユニットの実施の形態を、図1ないし図7を参照して説明する。
なお、以下の実施の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0022】
以下の説明においては、図1中に示されたXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材について説明する。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸がステージ(ステージ装置)6に対して平行な方向に設定され、Z軸がステージ6に対して直交する方向に設定されている。図1中のXYZ座標系は、実際にはXY平面が水平面に平行な面に設定され、Z軸が鉛直上方向に設定される。なお、液滴吐出ヘッド9の走査移動方向をY方向、ステージ6の移動方向をX方向とする。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る第1実施形態の液滴吐出装置1の概略構成を示す模式図である。液滴吐出装置1は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネート(PC)等のシート状部材、あるいはプリント基板等の板状部材からなる記録媒体P上に紫外線硬化型インクを吐出し、記録媒体Pに着弾した紫外線硬化型インクに対して紫外線照射を行って該紫外線硬化型インクを硬化させ、記録媒体P上に画像や各種の模様等のパターンを描画するものである。なお、以下「紫外線硬化型インク」について説明するときは、便宜上、単に「インク」と称することがある。
【0024】
この液滴吐出装置1は、記録媒体Pを載置する基台2と、基台2上の記録媒体Pをステージ6を介して、図1中のX方向に搬送する搬送装置3と、紫外線硬化型インクを吐出する液滴吐出ヘッド9と、液滴吐出ヘッド9を複数備えてなるキャリッジ4と、このキャリッジ4をY方向に移動させる送り装置(第1駆動装置)5と、紫外線照射部12と、各種構成部品の制御を行う制御部8と、を具備して構成されている。搬送装置3及び送り装置5により、記録媒体Pとキャリッジ4(液滴吐出ヘッド9)とを、X方向とY方向とにそれぞれ相対移動させる移動手段が構成されている。
【0025】
搬送装置3は、基台2上に設けられたステージ6及びステージ移動装置(第2駆動装置)7を備えて構成されたものである。ステージ6は、ステージ移動装置7によって基台2上をX方向に移動可能に設けられたもので、上流側の搬送装置(図示せず)から搬送される記録媒体Pを、例えば真空吸着機構によってXY平面上に保持するものである。
【0026】
ステージ移動装置7は、ボールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構を備えたもので、制御部8から入力される、ステージ6のX座標を示すステージ位置制御信号に基づいて、ステージ6をX方向に移動させるよう構成されたものである。
【0027】
キャリッジ(支持部材)4は、送り装置5に移動可能に取り付けられた矩形板状のもので、図2に示すように、その底面側(−Z側)に保持部材50を介して複数の液滴吐出ヘッド9を、Y方向に沿って配列させた状態で保持したものである。また、キャリッジ4の液滴吐出ヘッド9を挟んだY方向の両側には紫外線照射部12がそれぞれ液滴吐出ヘッド9と一体的に移動可能に設けられている。さらに、キャリッジ4には、各紫外線照射部12の外側にそれぞれ保護部材(突出部材)60が一体的に設けられている。これら一体的に移動可能に設けられた液滴吐出ヘッド9及び紫外線照射部12により、ヘッド構成体が構成される。
【0028】
複数の液滴吐出ヘッド9(9Y,9C,9M,9K)は、後述するように複数のノズル17を備えたもので、制御部8から入力される描画データや駆動制御信号に基づいて、紫外線硬化型インクの液滴を吐出するものである。また、これら複数の液滴吐出ヘッド9(9Y,9C,9M,9K)は、Y(イエロー)、C(シアン)、M(マゼンタ)、K(黒)に対応した紫外線硬化型インクをそれぞれ吐出するもので、それぞれの液滴吐出ヘッド9には、図1に示すようにキャリッジ4を介してチューブ(配管)10が連結されている。
【0029】
そして、Y(イエロー)に対応する液滴吐出ヘッド9Yには、チューブ10を介してY(イエロー)用の紫外線硬化型インクを充填・貯蔵した第1タンク(インク貯留室)11Yが接続されており、これによって液滴吐出ヘッド9Yには、この第1タンク11YからY(イエロー)用の紫外線硬化型インクが供給されるようになっている。同様に、C(シアン)に対応する液滴吐出ヘッド9CにはC(シアン)用の紫外線硬化型インクを充填した第2タンク11Cが接続され、M(マゼンタ)に対応する液滴吐出ヘッド9MにはM(マゼンタ)用の紫外線硬化型インクを充填した第3タンク11Mが接続され、K(黒)に対応する液滴吐出ヘッド9KにはK(黒)用の紫外線硬化型インクを充填した第4タンク11Kが接続されている。このような構成によって液滴吐出ヘッド9Cには、第2タンク11CからC(シアン)用の紫外線硬化型インクが供給されるようになっており、液滴吐出ヘッド9Mには、第3タンク11MからM(マゼンタ)用の紫外線硬化型インクが供給されるようになっており、液滴吐出ヘッド9Kには、第4タンク11KからK(黒)用の紫外線硬化型インクが供給されるようになっている。
【0030】
ここで、紫外線硬化型インクは、例えば紫外線硬化型のインクなど、所定波長の光を受けて硬化するタイプのもので、モノマーと光重合開始剤と各色に対応する顔料とを含有し、さらに必要に応じて、界面活性剤や熱ラジカル重合禁止剤などの各種添加剤が配合されたものである。なお、このような紫外線硬化型インクは、通常はその成分(配合)等によって吸収する光(紫外線)の波長域等が異なることから、硬化する波長の最適値、すなわち最適硬化波長も、インク毎に異なっている。
【0031】
次に、図3及び図4を参照して液滴吐出ヘッド9の構成について説明する。図3は、液滴吐出ヘッド9のノズル形成面21Aにおけるノズル17の配列状態を示す図である。図4は、液滴吐出ヘッド9の内部構成を示す部分断面図である。
【0032】
図3に示すように、ノズル17はノズル形成面21Aにおいて記録媒体Pの搬送方向(X方向)に沿って複数設けられ、ノズル列16を形成している。このノズル列16は、液滴吐出ヘッド9の走査方向(Y方向)に沿って計5列設けられている。なお、液滴吐出ヘッド9に設けるノズル数及びノズル列数は任意に変更可能である。また、液滴吐出ヘッド9どうしをノズル17間のピッチの半分だけ左右方向にずらして配置してもよい。これにより、記録媒体Pに対して印字する解像度を向上させることができる。
【0033】
図4に示すように、液滴吐出ヘッド9は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22とを備える。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21とを備えるとともに、共通インク室29と、インク供給口30と、圧力室31とを形成する。さらに、流路形成ユニット22は、ダイヤフラム部として機能する島部32と、共通インク室29内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33とを備える。ヘッド本体18には、固定部材26とともに駆動ユニット24を収容する収容空間23と、インクを流路形成ユニット22に案内する内部流路28とが形成される。
【0034】
上記構成の液滴吐出ヘッド9によれば、ケーブル27を介して駆動ユニット24に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。これにより、振動板19が圧力室31に接近する方向(−Z方向)及び圧力室31から離れる方向(+Z方向)に変形(移動)する。このため、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル17からインクが噴射される。
【0035】
紫外線照射部12は、記録媒体Pに吐出された紫外線硬化型インクを硬化させるためのもので、本実施形態では、例えば複数のLED(発光ダイオード)からなっている。ただし、本発明では、LEDに限定されることなく、これ以外にも例えばレーザーダイオード(LD)や、さらには水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等を紫外線照射部12として用いることができる。
【0036】
本実施形態のLEDからなる紫外線照射部12は、それぞれ照射する光が、対応する液滴吐出ヘッド9Y,9C,9M,9Kが吐出する紫外線硬化型インクの、最適硬化波長に対応した波長を有している。
なお、図1及び図2では、キャリッジ4に代表的に一つの液滴吐出ヘッド9及び一組の紫外線照射部12が設けられる構成を図示しているが、各色毎に液滴吐出ヘッド9Y,9C,9M,9Kが設けられてもよい。また、各液滴吐出ヘッド9Y,9C,9M,9Kを挟んだY方向両側に、各色に対応した波長を有する光を照射する紫外線照射部を設ける構成であってもよい。
【0037】
保護部材60は、液滴吐出ヘッド9が他の物体(例えば、記録媒体P)と接触することを防止するものであって、キャリッジ4における液滴吐出ヘッド9及び紫外線照射部12を挟んだY方向両側に設けられている。保護部材60は、液滴吐出ヘッド9及び紫外線照射部12よりも、記録媒体Pと対向する方向である−Z側に突出する長さを有している。換言すると、液滴吐出ヘッド9、紫外線照射部12、保護部材60と所定位置にある記録媒体Pとの距離をそれぞれL9、L12、L60とすると、これらの距離は以下の関係に設定されている。
L60<L9 且つ L60<L12
(L9、L12、L60はいずれも正の値)
なお、本実施形態では、L9<L12であり、液滴吐出ヘッド9が紫外線照射部12よりも−Z側に突出する構成Tなっている。
【0038】
また、保護部材60は、不測の事態が生じて走査移動時等に記録媒体P等の物体と接触した場合でも、変形して液滴吐出ヘッド9や紫外線照射部12と接触しないように十分な強度で形成されている。
【0039】
図1に戻り、キャリッジ4を移動させる送り装置5は、例えば基台2を跨ぐ橋梁構造をしたもので、Y方向及びXY平面に直交するZ方向に対して、ボールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構を備えたものである。このような構成のもとに送り装置5は、制御部8から入力される、キャリッジ4のY座標及びZ座標を示すキャリッジ位置制御信号に基づいて、キャリッジ4をY方向に移動させるとともに、Z方向にも移動させるようになっている。
【0040】
制御部8は、ステージ移動装置7にステージ位置制御信号を出力し、送り装置5にキャリッジ位置制御信号を出力し、さらには液滴吐出ヘッド9の駆動回路基板(図示せず)に描画データ及び駆動制御信号を出力するものである。これによって制御部8は、記録媒体Pとキャリッジ4とを相対移動させるべく、ステージ6の移動による記録媒体Pの位置決め動作、及びキャリッジ4の移動による液滴吐出ヘッド9の位置決め動作の同期制御を行い、さらに液滴吐出ヘッド9に液滴吐出動作を行わせることにより、記録媒体P上の所定の位置に紫外線硬化型インクの液滴を配するようになっている。また、この制御部8は、液滴吐出ヘッド9に液滴吐出動作を行わせるのとは別に、紫外線照射部12に光照射動作を行わせるようになっている。
【0041】
上記構成の液滴吐出装置1においては、液滴吐出ヘッド9、紫外線照射部12及び保護部材60と記録媒体PとのZ方向の相対位置を調整した後に、制御部8がステージ移動装置7を制御して、ステージ6をX方向に移動させて記録媒体Pを所定の記録位置に位置決めするとともに、送り装置5を制御して、キャリッジ4をY方向に走査移動させつつ、液滴吐出ヘッド9から紫外線硬化型インクを吐出させて記録媒体Pに付着させる。
【0042】
より詳細には、例えばキャリッジ4が−Y側に移動する場合においては、液滴吐出ヘッド9が紫外線硬化型インクを吐出し、それに追従する移動方向の後方側(+Y側)に位置する紫外線照射部12が記録媒体P(に噴射された紫外線硬化型インク)に向けて紫外線を照射する。一方、キャリッジ4が+Y側に移動する場合においては、液滴吐出ヘッド9が紫外線硬化型インクを吐出して、それに追従する移動方向の後方側(−Y側)に位置する紫外線照射部12が記録媒体P(に噴射された紫外線硬化型インク)に向けて紫外線を照射する。これにより、紫外線を照射された記録媒体P上の紫外線硬化型インクは硬化して、記録媒体P上の画像等が固定され記録物として生産される。
【0043】
上記の液滴吐出動作においては、液滴吐出ヘッド9等のヘッド構成体と記録媒体PとのZ方向の相対位置関係が所定値であれば、ヘッド構成体は記録媒体Pとの間にZ方向に所定量の隙間をあけた状態で走査移動して、円滑に記録媒体Pへの記録処理が行われるが、不測の事態が生じてヘッド構成体と記録媒体Pとの間に隙間が形成されない状態、すなわち走査移動したときにヘッド構成体と記録媒体Pとが接触する状態で液滴吐出ヘッド9の走査移動が開始される可能性がある。
【0044】
このような場合、図2に二点鎖線で示されるように、例えばステージ6の−Y側への移動時に、記録媒体Pは液滴吐出ヘッド9及び紫外線照射部12のヘッド構成体と対向する領域に移動してこれらに接触する前に、+Y側に位置する保護部材60に接触する。
これにより、ステージ6を移動させるステージ移動装置7、及び上記ヘッド構成体を移動させる送り装置5の駆動抵抗(負荷)が増大し、制御部8が負荷検出部として、ステージ移動装置7及び送り装置5における負荷増大を検出して不測の事態が生じたことを検知するとともに、駆動制御装置として、送り装置5及びステージ移動装置7の駆動を制御して、ヘッド構成体と記録媒体Pとの走査移動を停止させ、モニター画面へのエラー表示や、ブザー等のエラー音を発生させる。
【0045】
このように、本実施形態では、液滴吐出ヘッド9や紫外線照射部12のヘッド構成体よりも記録媒体Pと対向する方向に突出する保護部材60を設けているため、ヘッド構成体と記録媒体Pとの間の距離が所定値以下となった場合でも、高価なヘッド構成体が記録媒体Pと接触して損傷してしまうことを防止できる。特に、本実施形態では、ステージ装置7及び送り装置5における負荷増大を検出するという簡単な構成で不測の事態が生じたことを容易に検知することが可能であり、装置の大型化及びコスト増を回避することができる。
【0046】
(第2実施形態)
続いて、液滴吐出装置1の第2実施形態について、図5を参照して説明する。
この図において、図1乃至図4に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
上記第1実施形態では、保護部材60がキャリッジ4に支持される構成としているが、本実施形態では、台座部を介してキャリッジ4に支持される構成について説明する。
【0047】
図5に示すように、本実施形態における液滴吐出装置1では、保護部材60は台座部60Aを介してキャリッジ4に支持されている。台座部60Aは、保護部材60よりも大きな強度を有しており、その先端面は液滴吐出ヘッド9の先端面と略面一の高さに位置している。また、Y方向における保護部材60と紫外線照射部12との間の距離L60bは、保護部材60の台座部60Aからの突出量L60aよりも大きく設定されている。
他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0048】
本実施形態では、保護部材60と記録媒体Pとが接触して保護部材60が変形したり破損した場合でも、当該保護部材60が紫外線照射部12に接触する可能性を大幅に低くすることができる。そのため、本実施形態では、上記第1実施形態と同様の作用・効果が得られることに加えて、高価なヘッド構成体が記録媒体Pと接触して損傷してしまうことをより確実に防止できる。
【0049】
(第3実施形態)
続いて、液滴吐出装置1の第3実施形態について、図6を参照して説明する。
この図において、図1乃至図4に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
上記第1実施形態では、保護部材60と記録媒体Pとの接触を、ステージ移動装置7、送り装置5の駆動抵抗の増大に基づいて検知する構成としたが、第3実施形態では保護部材60の変形に基づいて検知する場合について説明する。
【0050】
図6に示すように、本実施形態の保護部材60は、合成樹脂等の弾性材料で形成された長尺部材で構成されている。各保護部材60には、例えばピエゾ素子等の電歪素子61がそれぞれ貼設されている。各電歪素子61は制御部8に接続されており、各電歪素子61の変形に応じて出力される電圧は制御部8により検知される。
他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0051】
上記の構成の液滴吐出装置1では、保護部材60と記録媒体Pとが接触して保護部材60が弾性変形した場合には、電歪素子61が保護部材60とともに変形するため、電歪素子61からは変形量に応じた大きさの電圧が出力される。制御部8は、電歪素子61から電圧が出力されると、保護部材60と記録媒体Pとが接触したことを検知する。そして、制御部8は、送り装置5及びステージ移動装置7の駆動を制御して、ヘッド構成体と記録媒体Pとの走査移動を停止させ、モニター画面へのエラー表示や、ブザー等のエラー音を発生させる。
【0052】
このように、本実施形態では、上記第1実施形態と同様の作用・効果が得られることに加えて、保護部材60が弾性材料で形成されるため、保護部材60と接触した記録媒体Pやステージ6が損傷することを防止できる。
【0053】
なお、保護部材60を弾性材料で形成する場合には、走査移動時の慣性力で保護部材60が弾性変形して、保護部材60と記録媒体Pとが接触していない場合でも電歪素子61からは変形量に応じた大きさの電圧が出力される可能性がある。そのため、予め走査移動時の慣性力に起因して電歪素子61から出力される電圧をしきい値として記憶しておき、このしきい値を超えた電圧が電歪素子61から出力されたときに、保護部材60と記録媒体Pとが接触したと検知することが好ましい。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0055】
例えば、上記第1、第2実施形態では、保護部材60と記録媒体Pとの接触を、ステージ移動装置7、送り装置5の駆動抵抗の増大に基づいて検知する構成としたが、例えば、ステージ6が記録媒体Pを吸着保持する吸着力をモニターしておき、当該吸着力に変化が生じた場合には、制御部8が吸着力検出部として、保護部材60と記録媒体Pとの接触を検出する構成としてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、保護部材60が一定量でヘッド構成体から突出する構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば図7に示すように、保護部材60をZ方向に移動させる移動装置70を設ける構成としてもよい。
この構成では、例えば吐出する液体の種類等に応じて液滴吐出ヘッド9と記録媒体Pとの距離を調整する際にも、この距離に応じて移動装置70が制御部8の制御により、保護部材60を移動させてヘッド構成体に対する突出量を容易に変更することができる。
【0057】
さらに、保護部材60に、例えば静電吸着機能を保持させる構成とすることも可能である。この構成では、液滴吐出ヘッド9と記録媒体Pとの間に浮遊するミストや塵埃等を走査移動時に吸着除去することが可能になり、クリーンな環境を維持することができる。
【0058】
また、上記実施形態では、保護部材60をY方向の両側に設ける構成としたが、これに限られるものではなく、X方向の両側にも第2の保護部材(第2突出部材)を設ける構成としてもよい。
この構成では、記録媒体Pへの液滴吐出処理のためにY方向に走査移動する際に、記録媒体Pがヘッド構成体に接触して損傷させることを防止できるだけではなく、例えばメンテナンス処理のためにキャリッジ4がX方向に移動した際に、ヘッド構成体が、例えばメンテナンス装置の物体と接触して損傷することを回避できる。
【符号の説明】
【0059】
1…液滴吐出装置、 3…搬送装置、 4…キャリッジ(支持部材)、 5…送り装置(第1駆動装置)、 6…ステージ(ステージ装置)、 7…ステージ移動装置(第2駆動装置)、 8…制御部(負荷検出部、駆動制御装置)、 9…液滴吐出ヘッド、 12…紫外線照射部、 60…保護部材(突出部材)、 60A…台座部、 61…電歪素子(ピエゾ素子)、 P…記録媒体
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な記録媒体に対して印刷可能な記録装置として、液滴吐出装置であるインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置は、液滴吐出ヘッドと記録媒体とを相対移動させながら、液滴吐出ヘッドの記録媒体に対向する面に設けられた吐出口(以下、ノズル)から色材であるインク(液滴)を直接記録媒体に対して吐出して、記録媒体上に着弾させることで記録媒体上に画像を形成する記録装置であり、工程の単純さ、印刷時における静粛性及び印字、印画品質の点で非常に優れた特徴がある。
【0003】
上記の液滴吐出装置においては、紙材やプリント基板、ガラス基板等、厚さが異なる多種の記録媒体が用いられるため、例えば、特許文献1に記載されているように、記録媒体を保持するステージを上下方向に移動させることで、記録媒体の厚さに対応させて液滴吐出ヘッドとの間のギャップ量を適切な値に設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−201107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
記録媒体の位置と液滴吐出ヘッドの位置との少なくとも一方の設定にミスが生じた場合、液滴吐出ヘッドと記録媒体とを相対移動させた際にこれらが干渉して、高価な液滴吐出ヘッドが損傷する可能性がある。
【0006】
また、近年では、液滴吐出装置を用いて、樹脂や金属等のインク吸収性を有さない種々の材料を記録媒体として画像記録を行う場合があり、このような記録媒体に対してインクを定着させるために、光硬化型インクが用いられていることがある。通常、この光硬化型インクを用いたインクジェット記録装置には、インクを硬化させるための紫外線照射装置がヘッド構成体として液滴吐出ヘッドと一体的に配設された液滴吐出ヘッドユニットが用いられ、記録媒体に画像を記録する際は、インクを記録媒体に着弾させた直後に、インクの硬化が可能な一定の照射時間及び照射回数の条件下で、紫外線照射装置に具備された光源から紫外線を照射してインクを硬化定着させるが、上記のように、記録媒体の位置設定にミスがあった状態で液滴吐出ヘッドユニットと記録媒体を相対移動させると、紫外線照射装置にも損傷が及ぶ可能性がある。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、ヘッド構成体の損傷を防止できる液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用している。
本発明の液滴吐出装置は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを含むヘッド構成体を有し、前記ヘッド構成体及び記録媒体の一方を他方に対して走査移動させて前記記録媒体に前記液滴を吐出する液滴吐出装置であって、前記ヘッド構成体を支持して前記前記ヘッド構成体と一体的に移動する支持部材と、前記ヘッド構成体を挟んだ前記走査移動方向の両側において、前記ヘッド構成体よりも前記記録媒体と対向する方向に突出し、且つ、前記ヘッド構成体と分離して前記支持部材に設けられた突出部材を備えることを特徴とするものである。
【0009】
従って、本発明の液滴吐出装置では、液滴吐出ヘッド等のヘッド構成体と記録媒体との走査移動時にヘッド構成体と記録媒体とが接触する前に、突出部材が記録媒体に接触するため、ヘッド構成体と記録媒体との接触を回避することが可能になり、ヘッド構成体の損傷を防止できる。
【0010】
また、本発明の液滴吐出装置では、前記突出部材が、前記記録媒体と対向する方向に存在する物体と接触したことを検出する検出装置と、前記検出装置の検出結果に基づいて、前記ヘッド構成体と前記記録媒体との走査移動を制御する駆動制御装置とを備える構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、検出装置が突出部材と物体とが接触したことを検知した場合、駆動制御装置がヘッド構成体と記録媒体との走査移動を、例えば停止させることにより、突出部材と物体との接触後に物体が移動してヘッド構成体と接触することを回避できる。
【0011】
本発明の液滴吐出装置では、前記ヘッド構成体を駆動する第1駆動装置と、前記記録媒体を駆動する第2駆動装置とを備え、前記検出装置としては、前記突出部材と前記物体との接触に伴って生じる前記第1駆動装置と前記第2駆動装置との少なくとも一方の負荷の変化を検出する負荷検出部を有する構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、ヘッド構成体と記録媒体との走査移動時に突出部材と物体(例えば、記録媒体)とが接触すると、第1駆動装置と第2駆動装置との少なくとも一方の負荷が増大するため、負荷検出部が負荷の変化を検出することにより、突出部材と物体との接触を容易に検出することが可能になる。
【0012】
また、本発明の液滴吐出装置では、前記記録媒体を吸着保持して移動するステージ装置を備え、前記検出装置は、前記突出部材と前記物体との接触に伴って生じる前記ステージ装置への前記記録媒体の吸着力の変化を検出する吸着力検出部を有する構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、ヘッド構成体と記録媒体との走査移動時に突出部材と記録媒体とが接触して、ステージ装置への記録媒体の吸着が解除される等の事態が生じた場合、記録媒体への吸着力が変化するため、吸着力検出部が当該吸着力の変化を検出することにより、突出部材と記録媒体との接触を容易に検出することが可能になる。
【0013】
また、本発明の液滴吐出装置における前記検出装置としては、前記突出部材に設けられ該突出部材の変形に応じて電圧を生じる電歪素子を有する構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、ヘッド構成体と記録媒体との走査移動時に突出部材と物体(例えば、記録媒体)とが接触して、突出部材が変形するのに伴って電歪素子が変形して電圧を生じる。そのため、電歪素子から生じる電圧を検出することにより、突出部材と記録媒体との接触を容易に検出することが可能になる。
【0014】
また、本発明の液滴吐出装置では、前記突出部材を前記記録媒体と対向する方向に移動させる移動装置を備える構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、突出部材のヘッド構成体に対する突出量、すなわち記録媒体等の物体との間の隙間量を任意の値に調節することが可能になる。
【0015】
また、本発明の液滴吐出装置では、前記突出部材と隣り合って配置された前記ヘッド構成体は、前記突出部材に対して該突出部材の長さよりも大きい距離で離間して配置される構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、ヘッド構成体と記録媒体との走査移動時に突出部材と物体(例えば、記録媒体)とが接触して突出部材が折れ曲がったり破損した場合でも、当該突出部材がヘッド構成体と接触することを回避できる。
【0016】
上記構成の前記突出部材としては、前記ヘッド構成体のうち、前記記録媒体と対向する方向に最も突出したヘッド構成体と略面一の高さに設けられて該突出部材よりも大きな強度を有する台座部を介して前記支持部材に支持される構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、ヘッド構成体よりも突出する突出部材の長さを短くすることができ、結果として突出部材とヘッド構成体との距離を短くして小型化することが可能になる。
【0017】
また、本発明の液滴吐出装置では、前記支持部材に、前記走査移動方向及び前記記録媒体と対向する方向と略直交する非走査方向で前記ヘッド構成体を挟んだ両側に、前記ヘッド構成体と分離して設けられ、前記ヘッド構成体よりも前記記録媒体と対向する方向に突出する第2突出部材を備える構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、ヘッド構成体に対して走査移動方向に存在する物体以外にも、非走査方向に存在する物体と第2突出部材とが接触することにより、当該物体とヘッド構成体とが接触することを防止できる。
【0018】
そして、本発明のヘッドユニットは、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを含むヘッド構成体を有するヘッドユニットであって、前記ヘッド構成体を支持して、所定方向に一体的に移動する支持部材と、前記支持部材に前記ヘッド構成体を挟んだ前記所定方向の両側に、前記ヘッド構成体と分離して設けられ、前記ヘッド構成体よりも前記液滴を吐出する方向に突出する突出部材を備えることを特徴とするものである。
【0019】
従って、本発明のヘッドユニットでは、液滴吐出ヘッド等のヘッド構成体と記録媒体との所定方向への走査移動時にヘッド構成体と記録媒体とが接触する前に、突出部材が記録媒体に接触するため、ヘッド構成体と記録媒体との接触を回避することが可能になり、ヘッド構成体の損傷を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態の液滴吐出装置1の概略構成を示す模式図である。
【図2】第1実施形態に係るヘッド構成体の概略構成図である。
【図3】ノズル形成面21Aにおけるノズル17の配列状態を示す図である。
【図4】液滴吐出ヘッド9の内部構成を示す部分断面図である。
【図5】第2実施形態に係るヘッド構成体の概略構成図である。
【図6】第3実施形態に係るヘッド構成体の概略構成図である。
【図7】他の実施形態に係るヘッド構成体の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドユニットの実施の形態を、図1ないし図7を参照して説明する。
なお、以下の実施の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0022】
以下の説明においては、図1中に示されたXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材について説明する。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸がステージ(ステージ装置)6に対して平行な方向に設定され、Z軸がステージ6に対して直交する方向に設定されている。図1中のXYZ座標系は、実際にはXY平面が水平面に平行な面に設定され、Z軸が鉛直上方向に設定される。なお、液滴吐出ヘッド9の走査移動方向をY方向、ステージ6の移動方向をX方向とする。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る第1実施形態の液滴吐出装置1の概略構成を示す模式図である。液滴吐出装置1は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネート(PC)等のシート状部材、あるいはプリント基板等の板状部材からなる記録媒体P上に紫外線硬化型インクを吐出し、記録媒体Pに着弾した紫外線硬化型インクに対して紫外線照射を行って該紫外線硬化型インクを硬化させ、記録媒体P上に画像や各種の模様等のパターンを描画するものである。なお、以下「紫外線硬化型インク」について説明するときは、便宜上、単に「インク」と称することがある。
【0024】
この液滴吐出装置1は、記録媒体Pを載置する基台2と、基台2上の記録媒体Pをステージ6を介して、図1中のX方向に搬送する搬送装置3と、紫外線硬化型インクを吐出する液滴吐出ヘッド9と、液滴吐出ヘッド9を複数備えてなるキャリッジ4と、このキャリッジ4をY方向に移動させる送り装置(第1駆動装置)5と、紫外線照射部12と、各種構成部品の制御を行う制御部8と、を具備して構成されている。搬送装置3及び送り装置5により、記録媒体Pとキャリッジ4(液滴吐出ヘッド9)とを、X方向とY方向とにそれぞれ相対移動させる移動手段が構成されている。
【0025】
搬送装置3は、基台2上に設けられたステージ6及びステージ移動装置(第2駆動装置)7を備えて構成されたものである。ステージ6は、ステージ移動装置7によって基台2上をX方向に移動可能に設けられたもので、上流側の搬送装置(図示せず)から搬送される記録媒体Pを、例えば真空吸着機構によってXY平面上に保持するものである。
【0026】
ステージ移動装置7は、ボールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構を備えたもので、制御部8から入力される、ステージ6のX座標を示すステージ位置制御信号に基づいて、ステージ6をX方向に移動させるよう構成されたものである。
【0027】
キャリッジ(支持部材)4は、送り装置5に移動可能に取り付けられた矩形板状のもので、図2に示すように、その底面側(−Z側)に保持部材50を介して複数の液滴吐出ヘッド9を、Y方向に沿って配列させた状態で保持したものである。また、キャリッジ4の液滴吐出ヘッド9を挟んだY方向の両側には紫外線照射部12がそれぞれ液滴吐出ヘッド9と一体的に移動可能に設けられている。さらに、キャリッジ4には、各紫外線照射部12の外側にそれぞれ保護部材(突出部材)60が一体的に設けられている。これら一体的に移動可能に設けられた液滴吐出ヘッド9及び紫外線照射部12により、ヘッド構成体が構成される。
【0028】
複数の液滴吐出ヘッド9(9Y,9C,9M,9K)は、後述するように複数のノズル17を備えたもので、制御部8から入力される描画データや駆動制御信号に基づいて、紫外線硬化型インクの液滴を吐出するものである。また、これら複数の液滴吐出ヘッド9(9Y,9C,9M,9K)は、Y(イエロー)、C(シアン)、M(マゼンタ)、K(黒)に対応した紫外線硬化型インクをそれぞれ吐出するもので、それぞれの液滴吐出ヘッド9には、図1に示すようにキャリッジ4を介してチューブ(配管)10が連結されている。
【0029】
そして、Y(イエロー)に対応する液滴吐出ヘッド9Yには、チューブ10を介してY(イエロー)用の紫外線硬化型インクを充填・貯蔵した第1タンク(インク貯留室)11Yが接続されており、これによって液滴吐出ヘッド9Yには、この第1タンク11YからY(イエロー)用の紫外線硬化型インクが供給されるようになっている。同様に、C(シアン)に対応する液滴吐出ヘッド9CにはC(シアン)用の紫外線硬化型インクを充填した第2タンク11Cが接続され、M(マゼンタ)に対応する液滴吐出ヘッド9MにはM(マゼンタ)用の紫外線硬化型インクを充填した第3タンク11Mが接続され、K(黒)に対応する液滴吐出ヘッド9KにはK(黒)用の紫外線硬化型インクを充填した第4タンク11Kが接続されている。このような構成によって液滴吐出ヘッド9Cには、第2タンク11CからC(シアン)用の紫外線硬化型インクが供給されるようになっており、液滴吐出ヘッド9Mには、第3タンク11MからM(マゼンタ)用の紫外線硬化型インクが供給されるようになっており、液滴吐出ヘッド9Kには、第4タンク11KからK(黒)用の紫外線硬化型インクが供給されるようになっている。
【0030】
ここで、紫外線硬化型インクは、例えば紫外線硬化型のインクなど、所定波長の光を受けて硬化するタイプのもので、モノマーと光重合開始剤と各色に対応する顔料とを含有し、さらに必要に応じて、界面活性剤や熱ラジカル重合禁止剤などの各種添加剤が配合されたものである。なお、このような紫外線硬化型インクは、通常はその成分(配合)等によって吸収する光(紫外線)の波長域等が異なることから、硬化する波長の最適値、すなわち最適硬化波長も、インク毎に異なっている。
【0031】
次に、図3及び図4を参照して液滴吐出ヘッド9の構成について説明する。図3は、液滴吐出ヘッド9のノズル形成面21Aにおけるノズル17の配列状態を示す図である。図4は、液滴吐出ヘッド9の内部構成を示す部分断面図である。
【0032】
図3に示すように、ノズル17はノズル形成面21Aにおいて記録媒体Pの搬送方向(X方向)に沿って複数設けられ、ノズル列16を形成している。このノズル列16は、液滴吐出ヘッド9の走査方向(Y方向)に沿って計5列設けられている。なお、液滴吐出ヘッド9に設けるノズル数及びノズル列数は任意に変更可能である。また、液滴吐出ヘッド9どうしをノズル17間のピッチの半分だけ左右方向にずらして配置してもよい。これにより、記録媒体Pに対して印字する解像度を向上させることができる。
【0033】
図4に示すように、液滴吐出ヘッド9は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22とを備える。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21とを備えるとともに、共通インク室29と、インク供給口30と、圧力室31とを形成する。さらに、流路形成ユニット22は、ダイヤフラム部として機能する島部32と、共通インク室29内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33とを備える。ヘッド本体18には、固定部材26とともに駆動ユニット24を収容する収容空間23と、インクを流路形成ユニット22に案内する内部流路28とが形成される。
【0034】
上記構成の液滴吐出ヘッド9によれば、ケーブル27を介して駆動ユニット24に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。これにより、振動板19が圧力室31に接近する方向(−Z方向)及び圧力室31から離れる方向(+Z方向)に変形(移動)する。このため、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル17からインクが噴射される。
【0035】
紫外線照射部12は、記録媒体Pに吐出された紫外線硬化型インクを硬化させるためのもので、本実施形態では、例えば複数のLED(発光ダイオード)からなっている。ただし、本発明では、LEDに限定されることなく、これ以外にも例えばレーザーダイオード(LD)や、さらには水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等を紫外線照射部12として用いることができる。
【0036】
本実施形態のLEDからなる紫外線照射部12は、それぞれ照射する光が、対応する液滴吐出ヘッド9Y,9C,9M,9Kが吐出する紫外線硬化型インクの、最適硬化波長に対応した波長を有している。
なお、図1及び図2では、キャリッジ4に代表的に一つの液滴吐出ヘッド9及び一組の紫外線照射部12が設けられる構成を図示しているが、各色毎に液滴吐出ヘッド9Y,9C,9M,9Kが設けられてもよい。また、各液滴吐出ヘッド9Y,9C,9M,9Kを挟んだY方向両側に、各色に対応した波長を有する光を照射する紫外線照射部を設ける構成であってもよい。
【0037】
保護部材60は、液滴吐出ヘッド9が他の物体(例えば、記録媒体P)と接触することを防止するものであって、キャリッジ4における液滴吐出ヘッド9及び紫外線照射部12を挟んだY方向両側に設けられている。保護部材60は、液滴吐出ヘッド9及び紫外線照射部12よりも、記録媒体Pと対向する方向である−Z側に突出する長さを有している。換言すると、液滴吐出ヘッド9、紫外線照射部12、保護部材60と所定位置にある記録媒体Pとの距離をそれぞれL9、L12、L60とすると、これらの距離は以下の関係に設定されている。
L60<L9 且つ L60<L12
(L9、L12、L60はいずれも正の値)
なお、本実施形態では、L9<L12であり、液滴吐出ヘッド9が紫外線照射部12よりも−Z側に突出する構成Tなっている。
【0038】
また、保護部材60は、不測の事態が生じて走査移動時等に記録媒体P等の物体と接触した場合でも、変形して液滴吐出ヘッド9や紫外線照射部12と接触しないように十分な強度で形成されている。
【0039】
図1に戻り、キャリッジ4を移動させる送り装置5は、例えば基台2を跨ぐ橋梁構造をしたもので、Y方向及びXY平面に直交するZ方向に対して、ボールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構を備えたものである。このような構成のもとに送り装置5は、制御部8から入力される、キャリッジ4のY座標及びZ座標を示すキャリッジ位置制御信号に基づいて、キャリッジ4をY方向に移動させるとともに、Z方向にも移動させるようになっている。
【0040】
制御部8は、ステージ移動装置7にステージ位置制御信号を出力し、送り装置5にキャリッジ位置制御信号を出力し、さらには液滴吐出ヘッド9の駆動回路基板(図示せず)に描画データ及び駆動制御信号を出力するものである。これによって制御部8は、記録媒体Pとキャリッジ4とを相対移動させるべく、ステージ6の移動による記録媒体Pの位置決め動作、及びキャリッジ4の移動による液滴吐出ヘッド9の位置決め動作の同期制御を行い、さらに液滴吐出ヘッド9に液滴吐出動作を行わせることにより、記録媒体P上の所定の位置に紫外線硬化型インクの液滴を配するようになっている。また、この制御部8は、液滴吐出ヘッド9に液滴吐出動作を行わせるのとは別に、紫外線照射部12に光照射動作を行わせるようになっている。
【0041】
上記構成の液滴吐出装置1においては、液滴吐出ヘッド9、紫外線照射部12及び保護部材60と記録媒体PとのZ方向の相対位置を調整した後に、制御部8がステージ移動装置7を制御して、ステージ6をX方向に移動させて記録媒体Pを所定の記録位置に位置決めするとともに、送り装置5を制御して、キャリッジ4をY方向に走査移動させつつ、液滴吐出ヘッド9から紫外線硬化型インクを吐出させて記録媒体Pに付着させる。
【0042】
より詳細には、例えばキャリッジ4が−Y側に移動する場合においては、液滴吐出ヘッド9が紫外線硬化型インクを吐出し、それに追従する移動方向の後方側(+Y側)に位置する紫外線照射部12が記録媒体P(に噴射された紫外線硬化型インク)に向けて紫外線を照射する。一方、キャリッジ4が+Y側に移動する場合においては、液滴吐出ヘッド9が紫外線硬化型インクを吐出して、それに追従する移動方向の後方側(−Y側)に位置する紫外線照射部12が記録媒体P(に噴射された紫外線硬化型インク)に向けて紫外線を照射する。これにより、紫外線を照射された記録媒体P上の紫外線硬化型インクは硬化して、記録媒体P上の画像等が固定され記録物として生産される。
【0043】
上記の液滴吐出動作においては、液滴吐出ヘッド9等のヘッド構成体と記録媒体PとのZ方向の相対位置関係が所定値であれば、ヘッド構成体は記録媒体Pとの間にZ方向に所定量の隙間をあけた状態で走査移動して、円滑に記録媒体Pへの記録処理が行われるが、不測の事態が生じてヘッド構成体と記録媒体Pとの間に隙間が形成されない状態、すなわち走査移動したときにヘッド構成体と記録媒体Pとが接触する状態で液滴吐出ヘッド9の走査移動が開始される可能性がある。
【0044】
このような場合、図2に二点鎖線で示されるように、例えばステージ6の−Y側への移動時に、記録媒体Pは液滴吐出ヘッド9及び紫外線照射部12のヘッド構成体と対向する領域に移動してこれらに接触する前に、+Y側に位置する保護部材60に接触する。
これにより、ステージ6を移動させるステージ移動装置7、及び上記ヘッド構成体を移動させる送り装置5の駆動抵抗(負荷)が増大し、制御部8が負荷検出部として、ステージ移動装置7及び送り装置5における負荷増大を検出して不測の事態が生じたことを検知するとともに、駆動制御装置として、送り装置5及びステージ移動装置7の駆動を制御して、ヘッド構成体と記録媒体Pとの走査移動を停止させ、モニター画面へのエラー表示や、ブザー等のエラー音を発生させる。
【0045】
このように、本実施形態では、液滴吐出ヘッド9や紫外線照射部12のヘッド構成体よりも記録媒体Pと対向する方向に突出する保護部材60を設けているため、ヘッド構成体と記録媒体Pとの間の距離が所定値以下となった場合でも、高価なヘッド構成体が記録媒体Pと接触して損傷してしまうことを防止できる。特に、本実施形態では、ステージ装置7及び送り装置5における負荷増大を検出するという簡単な構成で不測の事態が生じたことを容易に検知することが可能であり、装置の大型化及びコスト増を回避することができる。
【0046】
(第2実施形態)
続いて、液滴吐出装置1の第2実施形態について、図5を参照して説明する。
この図において、図1乃至図4に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
上記第1実施形態では、保護部材60がキャリッジ4に支持される構成としているが、本実施形態では、台座部を介してキャリッジ4に支持される構成について説明する。
【0047】
図5に示すように、本実施形態における液滴吐出装置1では、保護部材60は台座部60Aを介してキャリッジ4に支持されている。台座部60Aは、保護部材60よりも大きな強度を有しており、その先端面は液滴吐出ヘッド9の先端面と略面一の高さに位置している。また、Y方向における保護部材60と紫外線照射部12との間の距離L60bは、保護部材60の台座部60Aからの突出量L60aよりも大きく設定されている。
他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0048】
本実施形態では、保護部材60と記録媒体Pとが接触して保護部材60が変形したり破損した場合でも、当該保護部材60が紫外線照射部12に接触する可能性を大幅に低くすることができる。そのため、本実施形態では、上記第1実施形態と同様の作用・効果が得られることに加えて、高価なヘッド構成体が記録媒体Pと接触して損傷してしまうことをより確実に防止できる。
【0049】
(第3実施形態)
続いて、液滴吐出装置1の第3実施形態について、図6を参照して説明する。
この図において、図1乃至図4に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
上記第1実施形態では、保護部材60と記録媒体Pとの接触を、ステージ移動装置7、送り装置5の駆動抵抗の増大に基づいて検知する構成としたが、第3実施形態では保護部材60の変形に基づいて検知する場合について説明する。
【0050】
図6に示すように、本実施形態の保護部材60は、合成樹脂等の弾性材料で形成された長尺部材で構成されている。各保護部材60には、例えばピエゾ素子等の電歪素子61がそれぞれ貼設されている。各電歪素子61は制御部8に接続されており、各電歪素子61の変形に応じて出力される電圧は制御部8により検知される。
他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0051】
上記の構成の液滴吐出装置1では、保護部材60と記録媒体Pとが接触して保護部材60が弾性変形した場合には、電歪素子61が保護部材60とともに変形するため、電歪素子61からは変形量に応じた大きさの電圧が出力される。制御部8は、電歪素子61から電圧が出力されると、保護部材60と記録媒体Pとが接触したことを検知する。そして、制御部8は、送り装置5及びステージ移動装置7の駆動を制御して、ヘッド構成体と記録媒体Pとの走査移動を停止させ、モニター画面へのエラー表示や、ブザー等のエラー音を発生させる。
【0052】
このように、本実施形態では、上記第1実施形態と同様の作用・効果が得られることに加えて、保護部材60が弾性材料で形成されるため、保護部材60と接触した記録媒体Pやステージ6が損傷することを防止できる。
【0053】
なお、保護部材60を弾性材料で形成する場合には、走査移動時の慣性力で保護部材60が弾性変形して、保護部材60と記録媒体Pとが接触していない場合でも電歪素子61からは変形量に応じた大きさの電圧が出力される可能性がある。そのため、予め走査移動時の慣性力に起因して電歪素子61から出力される電圧をしきい値として記憶しておき、このしきい値を超えた電圧が電歪素子61から出力されたときに、保護部材60と記録媒体Pとが接触したと検知することが好ましい。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0055】
例えば、上記第1、第2実施形態では、保護部材60と記録媒体Pとの接触を、ステージ移動装置7、送り装置5の駆動抵抗の増大に基づいて検知する構成としたが、例えば、ステージ6が記録媒体Pを吸着保持する吸着力をモニターしておき、当該吸着力に変化が生じた場合には、制御部8が吸着力検出部として、保護部材60と記録媒体Pとの接触を検出する構成としてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、保護部材60が一定量でヘッド構成体から突出する構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば図7に示すように、保護部材60をZ方向に移動させる移動装置70を設ける構成としてもよい。
この構成では、例えば吐出する液体の種類等に応じて液滴吐出ヘッド9と記録媒体Pとの距離を調整する際にも、この距離に応じて移動装置70が制御部8の制御により、保護部材60を移動させてヘッド構成体に対する突出量を容易に変更することができる。
【0057】
さらに、保護部材60に、例えば静電吸着機能を保持させる構成とすることも可能である。この構成では、液滴吐出ヘッド9と記録媒体Pとの間に浮遊するミストや塵埃等を走査移動時に吸着除去することが可能になり、クリーンな環境を維持することができる。
【0058】
また、上記実施形態では、保護部材60をY方向の両側に設ける構成としたが、これに限られるものではなく、X方向の両側にも第2の保護部材(第2突出部材)を設ける構成としてもよい。
この構成では、記録媒体Pへの液滴吐出処理のためにY方向に走査移動する際に、記録媒体Pがヘッド構成体に接触して損傷させることを防止できるだけではなく、例えばメンテナンス処理のためにキャリッジ4がX方向に移動した際に、ヘッド構成体が、例えばメンテナンス装置の物体と接触して損傷することを回避できる。
【符号の説明】
【0059】
1…液滴吐出装置、 3…搬送装置、 4…キャリッジ(支持部材)、 5…送り装置(第1駆動装置)、 6…ステージ(ステージ装置)、 7…ステージ移動装置(第2駆動装置)、 8…制御部(負荷検出部、駆動制御装置)、 9…液滴吐出ヘッド、 12…紫外線照射部、 60…保護部材(突出部材)、 60A…台座部、 61…電歪素子(ピエゾ素子)、 P…記録媒体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを含むヘッド構成体を有し、前記ヘッド構成体及び記録媒体の一方を他方に対して走査移動させて前記記録媒体に前記液滴を吐出する液滴吐出装置であって、
前記ヘッド構成体を支持して前記ヘッド構成体と一体的に移動する支持部材と、
前記ヘッド構成体を挟んだ前記走査移動方向の両側において、前記ヘッド構成体よりも前記記録媒体と対向する方向に突出し、且つ、前記ヘッド構成体と分離して前記支持部材に設けられた突出部材を備えることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1記載の液滴吐出装置において、
前記液滴は紫外線硬化材料を含み、
前記ヘッド構成体は、吐出された前記液滴に対して紫外線を照射する紫外線照射部を含むことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の液滴吐出装置において、
前記突出部材が、前記記録媒体と対向する方向に存在する物体と接触したことを検出する検出装置と、
前記検出装置の検出結果に基づいて、前記ヘッド構成体と前記記録媒体との走査移動を制御する駆動制御装置とを備えることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
請求項3記載の液滴吐出装置において、
前記ヘッド構成体を駆動する第1駆動装置と、
前記記録媒体を駆動する第2駆動装置とを備え、
前記検出装置は、前記突出部材と前記物体との接触に伴って生じる前記第1駆動装置と前記第2駆動装置との少なくとも一方の負荷の変化を検出する負荷検出部を有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項5】
請求項3記載の液滴吐出装置において、
前記記録媒体を吸着保持して移動するステージ装置を備え、
前記検出装置は、前記突出部材と前記物体との接触に伴って生じる前記ステージ装置への前記記録媒体の吸着力の変化を検出する吸着力検出部を有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項3記載の液滴吐出装置において、
前記検出装置は、前記突出部材に設けられ該突出部材の変形に応じて電圧を生じる電歪素子を有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の液滴吐出装置において、
前記突出部材を前記記録媒体と対向する方向に移動させる移動装置を備えることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の液滴吐出装置において、
前記突出部材と隣り合って配置された前記ヘッド構成体は、前記突出部材に対して該突出部材の長さよりも大きい距離で離間して配置されることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項9】
請求項8記載の液滴吐出装置において、
前記突出部材は、前記ヘッド構成体のうち、前記記録媒体と対向する方向に最も突出したヘッド構成体と略面一の高さに設けられて該突出部材よりも大きな強度を有する台座部を介して前記支持部材に支持されることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の液滴吐出装置において、
前記支持部材に、前記走査移動方向及び前記記録媒体と対向する方向と略直交する非走査方向で前記ヘッド構成体を挟んだ両側に、前記ヘッド構成体と分離して設けられ、前記ヘッド構成体よりも前記記録媒体と対向する方向に突出する第2突出部材を備えることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項11】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを含むヘッド構成体を有する液滴吐出ヘッドユニットであって、
前記ヘッド構成体を支持して、所定方向に一体的に移動する支持部材と、
前記支持部材に前記ヘッド構成体を挟んだ前記所定方向の両側に、前記ヘッド構成体と分離して設けられ、前記ヘッド構成体よりも前記液滴を吐出する方向に突出する突出部材を備えることを特徴とする液滴吐出ヘッドユニット。
【請求項1】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを含むヘッド構成体を有し、前記ヘッド構成体及び記録媒体の一方を他方に対して走査移動させて前記記録媒体に前記液滴を吐出する液滴吐出装置であって、
前記ヘッド構成体を支持して前記ヘッド構成体と一体的に移動する支持部材と、
前記ヘッド構成体を挟んだ前記走査移動方向の両側において、前記ヘッド構成体よりも前記記録媒体と対向する方向に突出し、且つ、前記ヘッド構成体と分離して前記支持部材に設けられた突出部材を備えることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1記載の液滴吐出装置において、
前記液滴は紫外線硬化材料を含み、
前記ヘッド構成体は、吐出された前記液滴に対して紫外線を照射する紫外線照射部を含むことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の液滴吐出装置において、
前記突出部材が、前記記録媒体と対向する方向に存在する物体と接触したことを検出する検出装置と、
前記検出装置の検出結果に基づいて、前記ヘッド構成体と前記記録媒体との走査移動を制御する駆動制御装置とを備えることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
請求項3記載の液滴吐出装置において、
前記ヘッド構成体を駆動する第1駆動装置と、
前記記録媒体を駆動する第2駆動装置とを備え、
前記検出装置は、前記突出部材と前記物体との接触に伴って生じる前記第1駆動装置と前記第2駆動装置との少なくとも一方の負荷の変化を検出する負荷検出部を有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項5】
請求項3記載の液滴吐出装置において、
前記記録媒体を吸着保持して移動するステージ装置を備え、
前記検出装置は、前記突出部材と前記物体との接触に伴って生じる前記ステージ装置への前記記録媒体の吸着力の変化を検出する吸着力検出部を有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項3記載の液滴吐出装置において、
前記検出装置は、前記突出部材に設けられ該突出部材の変形に応じて電圧を生じる電歪素子を有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の液滴吐出装置において、
前記突出部材を前記記録媒体と対向する方向に移動させる移動装置を備えることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の液滴吐出装置において、
前記突出部材と隣り合って配置された前記ヘッド構成体は、前記突出部材に対して該突出部材の長さよりも大きい距離で離間して配置されることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項9】
請求項8記載の液滴吐出装置において、
前記突出部材は、前記ヘッド構成体のうち、前記記録媒体と対向する方向に最も突出したヘッド構成体と略面一の高さに設けられて該突出部材よりも大きな強度を有する台座部を介して前記支持部材に支持されることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の液滴吐出装置において、
前記支持部材に、前記走査移動方向及び前記記録媒体と対向する方向と略直交する非走査方向で前記ヘッド構成体を挟んだ両側に、前記ヘッド構成体と分離して設けられ、前記ヘッド構成体よりも前記記録媒体と対向する方向に突出する第2突出部材を備えることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項11】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを含むヘッド構成体を有する液滴吐出ヘッドユニットであって、
前記ヘッド構成体を支持して、所定方向に一体的に移動する支持部材と、
前記支持部材に前記ヘッド構成体を挟んだ前記所定方向の両側に、前記ヘッド構成体と分離して設けられ、前記ヘッド構成体よりも前記液滴を吐出する方向に突出する突出部材を備えることを特徴とする液滴吐出ヘッドユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2012−91133(P2012−91133A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241845(P2010−241845)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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