説明

液滴吐出装置

【課題】ワーク処理のタクトタイムに影響を及ぼすことなく、機能液滴吐出ヘッドのメンテナンスを効率良く実施することができる液滴吐出装置を提供することである。
【解決手段】機能液滴吐出ヘッド6を搭載した2組のキャリッジ群5と、描画が行われる描画エリア25に配設され、ワークWがセットされるワークテーブル21と、機能液滴吐出ヘッド6の保守を行う一対のメンテナンスエリア26と、描画エリア25と、の間で両キャリッジ群5を移動させるキャリッジ移動機構と、一対のメンテナンスエリア26に配設され、機能液滴吐出ヘッド6の保守を実施する2組のメンテナンス装置51と、描画エリア25を画成する描画チャンバー27と、各メンテナンスエリア26を画成する一対のメンテナンスチャンバー28と、描画チャンバー27の内部雰囲気および各メンテナンスチャンバー28の内部雰囲気を個別に雰囲気調和する雰囲気調和手段29,30と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能液滴吐出ヘッドを用いてワークに描画を行なう液滴吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液滴吐出装置として、複数のキャリッジユニットから成る2組のキャリッジ群を交互に使用して連続的に描画しながら、待機状態のキャリッジユニットをメンテナンスするものが知られている(特許文献1参照)。
この液滴吐出装置は、ワークテーブルにセットしたワークを、X軸方向に移動するX軸テーブルと、X軸テーブルを跨ぐように配設されたY軸テーブル4と、Y軸テーブル4に移動自在に搭載され、複数の機能液滴吐出ヘッドを搭載した2組のキャリッジ群と、Y軸テーブル4の両外端に設けられ、機能液滴吐出ヘッドを保守・検査する一対のメンテナンス装置と、を備えている。そして、X軸テーブルおよびY軸テーブル4が交差する領域には、描画処理を行う描画エリアが設定され、描画エリアからY軸方向に外れた両領域には、機能液滴吐出ヘッド(ヘッドユニット45)を交換・保守・検査する一対のメンテナンスエリアが設定されている。さらに、液滴吐出装置全体は、クリーンブース形式のチャンバーで覆われており、雰囲気管理されている。
この場合、描画エリアに臨んだ一方のキャリッジ群によりワークに対して描画を行っている間、他方のキャリッジ群をメンテナンスエリアに臨ませてメンテナンスを行い、待機状態としておく。これにより、一方のキャリッジ群に故障やヘッドユニット45が要交換となっても、遅滞なく描画動作が続行されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−6212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような液滴吐出装置では、装置全体がチャンバーに収容されているため、ヘッドユニット45を交換しようとすると、チャンバー内(メンテナンスエリア)に作業者が入る必要がある。このため、安全性の観点から装置を停止させる必要があり、内部雰囲気の復旧時間と合わせて、ワーク処理のタクトタイムに影響を及ぼす問題がある。また、メンテナンスエリアにおいて、ヘッドユニット45の交換後に行う機能液滴吐出ヘッドの吐出検査では、温度条件を実際の描画動作と合わせるべく、予備吐出(ヘッドの昇温)を十分に行う必要があり、吐出検査に時間を要すると共に機能液を無駄に消費する問題があった。
【0005】
本発明は、ワーク処理のタクトタイムに影響を及ぼすことなく、機能液滴吐出ヘッドのメンテナンスを効率良く実施することができる液滴吐出装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液滴吐出装置は、ワークに描画を行なう機能液滴吐出ヘッドを搭載した1以上のキャリッジユニットから成る2組のキャリッジ群と、機能液滴吐出ヘッドにより描画が行われる描画エリアに配設され、ワークがセットされるワークテーブルと、描画エリアの両外側に位置し機能液滴吐出ヘッドの保守を行う一対のメンテナンスエリアと描画エリアとの間で、2組のキャリッジ群を交互に移動させるキャリッジ移動手段と、一対のメンテナンスエリアに配設され、各キャリッジ群における機能液滴吐出ヘッドの保守を実施する2組のメンテナンス手段と、描画エリアを画成する描画チャンバーと、各メンテナンスエリアを画成する一対のメンテナンスチャンバーと、描画チャンバーの内部雰囲気および各メンテナンスチャンバーの内部雰囲気を個別に雰囲気調和する雰囲気調和手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、描画エリアは描画チャンバーにより画成されており、一対のメンテナンスエリアは一対のメンテナンスチャンバーによりそれぞれ画成されている。これにより、例えば作業者が、メンテナンスチャンバー内でヘッドユニットを交換することができるため、描画チャンバー内の装置を停止させる必要がなく、ワーク処理のタクトタイムに影響を及ぼすことがない。また、各チャンバーは、雰囲気調和手段によって内部雰囲気が個別に雰囲気調和されている。これにより、例えば機能液滴吐出ヘッドの吐出検査において、メンテナンスチャンバー内を所定の温度条件等に設定することができ、あるいは自在に大気開放することができ、メンテナンス時間や機能液の無駄を省くことができる。さらに、一方のキャリッジ群を待機状態としておくことができるため、描画中のキャリッジ群に故障等が生じても、遅滞なく描画動作を続行することができる。
【0008】
この場合、雰囲気調和手段は、描画チャンバーを雰囲気調和する描画部調和手段と、各メンテナンスチャンバーを雰囲気調和する一対のメンテナンス部調和手段と、を有していることが、好ましい。
【0009】
この構成によれば、描画チャンバーは描画部調和手段により雰囲気調和されており、各メンテナンスチャンバーは一対のメンテナンス部調和手段により雰囲気調和されているため、両調和手段の故障や機能不全に対して、簡単且つ迅速に復旧を行うことができ、ワーク処理のタクトタイムへの影響を極力少なくすることができる。
【0010】
この場合、描画部調和手段および描画エリア内の構成手段を制御する描画部制御手段と、各メンテナンス部調和手段および各メンテナンスエリア内の構成手段を制御する一対のメンテナンス部制御手段と、キャリッジ移動手段を制御するキャリッジ移動制御手段と、を更に備えたことが、好ましい。
【0011】
また、一対のメンテナンス部制御手段が、キャリッジ移動制御手段を兼ねていることが、好ましい。
【0012】
これらの構成によれば、制御手段の構成を単純化することで、制御動作を効率良く行うことができる。また、1の制御系の故障に対し、他の制御系が影響を受けることがなく、結果的にワーク処理のタクトタイムへの影響を極力少なくすることができる。
【0013】
この場合、描画チャンバーと各メンテナンスチャンバーとは、間隙を存して配設されていることが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、正圧に調整された描画チャンバーおよび各メンテナンスチャンバーの内部雰囲気は、大気圧となる間隙に流出するだけで、対峙するチャンバーに流入することがない。例えば、描画エリア(描画チャンバー)においては、吐出した機能液の溶媒が気化するが、この気化した溶媒がメンテナンスチャンバーに流入することがなく、作業者がメンテナンスチャンバーに入って作業を行なう機能液滴吐出ヘッドの交換等において、この気化した溶媒の影響を排除することができる。
【0015】
この場合、描画チャンバーおよび一対のメンテナンスチャンバー間には、キャリッジ移動手段のキャリッジ移動軸が架設され、描画チャンバーは、キャリッジ移動軸が挿通すると共に各キャリッジ群が通過する2つの第1チャンバー開口と、各第1チャンバー開口おけるキャリッジ移動軸以外の部分を開閉する2つの第1開閉扉と、有し、各メンテナンスチャンバーは、キャリッジ移動軸が挿通すると共に各キャリッジ群が通過する1つの第2チャンバー開口と、第2チャンバー開口おけるキャリッジ移動軸以外の部分を開閉する1つの第2開閉扉と、有していることが、好ましい。
【0016】
この構成によれば、キャリッジユニット(キャリッジ群)の移動時にのみ第1開閉扉および第2開閉扉を開放し、各エリアでの作業時には、両開閉扉を閉塞することにより、各チャンバーにおける内部雰囲気の流出を極力抑制することができ、雰囲気管理を良好に行うことができる。
【0017】
この場合、描画チャンバーと各メンテナンスチャンバーとの間において、相互のチャンバー開口間を覆う一対の部分チャンバーを、更に備え、各部分チャンバーは、描画チャンバーおよび各メンテナンスチャンバーより低圧に設定されていることが、好ましい。
【0018】
また、各部分チャンバーは、排気設備に連通していることが、好ましい。
【0019】
これらの構成によれば、第1開閉扉および第2開閉扉を開放したときに、両チャンバーの内部雰囲気は、部分チャンバーに流れ込む。このため、両チャンバーの内部雰囲気が相互に流出入するのを確実に防止することができると共に、部分チャンバー内の雰囲気を適切に排気処理することができる。
【0020】
この場合、描画エリアに配設され、キャリッジ移動手段による移動方向と直交する方向にワークテーブルを移動させるワーク移動手段と、ワーク移動手段のワーク移動軸に搭載され、各キャリッジ群における機能液滴吐出ヘッドの保守を実施する描画部メンテナンス手段と、ワーク移動軸に搭載され、各キャリッジ群における機能液滴吐出ヘッドからの検査吐出を受けるシートユニットと、シートユニットへの検査吐出結果を画像認識する画像認識手段と、を更に備えることが、好ましい。
【0021】
この構成によれば、キャリッジユニット(キャリッジ群)をメンテナンスエリアに移動させることなく、機能液滴吐出ヘッドの保守および吐出性能検査を実施することができるため、描画品質を維持しつつ、装置の停止時間を短縮することができる。なお、機能液滴吐出ヘッドの保守や吐出性能検査は、ワークの交換時に実施することが好ましい。
【0022】
この場合、各メンテナンスエリアに配設され、各キャリッジ群における機能液滴吐出ヘッドの吐出性能検査を実施するメンテナンス部検査手段と、を更に備えたことが、好ましい。
【0023】
この構成によれば、機能液滴吐出ヘッドの交換時等に機能液滴吐出ヘッドの吐出性能検査を行うことができるため、一方のキャリッジ群を完全に描画待機状態としておくことができ、ワーク処理のタクトタイムへの影響を極力排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】液滴吐出装置の平面模式図である。
【図2】メンテナンス装置廻りの(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図3】吸引ユニットの側面図である。
【図4】ワイピングユニットの側面図である。
【図5】アライメントユニットの側面図である。
【図6】重量測定ユニットの側面図である。
【図7】ヘッド昇温機構の側面図である。
【図8】第1実施形態に係る描画チャンバーおよびメンテナンスチャンバーの平面図である。
【図9】第2実施形態に係る描画チャンバーおよびメンテナンスチャンバーの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれており、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッドを用いて、液晶表示装置のカラーフィルターや有機EL装置の各画素となる発光素子等を形成するものである。
【0026】
図1および図2に示すように、液滴吐出装置1は、ワークテーブル21にセットされたワークWを、描画時の主走査方向となるX軸方向に移動させる描画部X軸テーブル(ワーク移動手段)2と、描画部X軸テーブル2を挟むように配設され、機能液滴吐出ヘッド6の保守を実施する2組のメンテナンス装置(メンテナンス手段)51をそれぞれX軸方向に移動させる一対のメンテナンス部X軸テーブル3,3と、描画部X軸テーブル2および一対のメンテナンス部X軸テーブル3,3を跨ぐように架け渡され、描画時の副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル(キャリッジ移動手段)4と、Y軸テーブル4に搭載され、複数の機能液滴吐出ヘッド6を搭載した複数のキャリッジユニット7でそれぞれ構成された2組のキャリッジ群5と、を備えている。なお、機能液滴吐出ヘッド6は、図1においてキャリッジユニット7あたり1つのみ図示しており、その他の図面においては省略している。
【0027】
また、液滴吐出装置1は、ワークテーブル21と共に描画部X軸テーブル2に搭載した定期フラッシングユニット22および描画部ロール紙ユニット(シートユニット)23を備えると共に、描画部X軸テーブル2を跨ぐように配設した描画部画像認識ユニット(画像認識手段)24を備えている。描画部画像認識ユニット24は、Y軸テーブル4の近傍に固定され、描画部ロール紙ユニット23と共に機能液滴吐出ヘッド6の吐出性能検査を実施する描画部検査手段を構成している。
【0028】
また、描画部X軸テーブル2および描画部X軸テーブル2廻りの構成装置を含む領域には、ワークWへの描画、ワークWの除給および機能液滴吐出ヘッド6の検査等を行う描画エリア25が設定されている。同様に、各メンテナンス部X軸テーブル3および各メンテナンス部X軸テーブル3廻りの構成装置を含む領域には、機能液滴吐出ヘッド6の保守・機能回復および検査を行うと共に後述するヘッドユニット45を交換するためのメンテナンスエリア26がそれぞれ設定されている。
【0029】
そして、液滴吐出装置1は、上記の描画エリア25を覆う描画チャンバー27と、一対のメンテナンスエリア26,26をそれぞれ覆う一対のメンテナンスチャンバー28,28と、描画チャンバー27の内部雰囲気を雰囲気調和する描画部調和装置(描画部調和手段)29と、各メンテナンスチャンバー28の内部雰囲気を雰囲気調和する一対のメンテナンス部調和装置(メンテナンス部調和手段)30と、を更に備えている。描画チャンバー27は、一対のメンテナンスチャンバー28,28に挟まれるように且つ相互に間隙を存して配設され、また上記のY軸テーブル4は、これらチャンバー27,28,28を横断するように延在している。なお、請求項にいう雰囲気調和手段は、描画部調和装置29およびメンテナンス部調和装置30から構成されている。
【0030】
さらに、液滴吐出装置1は、描画部調和装置29および描画チャンバー27内の構成装置等を制御する描画部制御装置(描画部制御手段)31と、各メンテナンス部調和装置30および各メンテナンスチャンバー28内の構成装置等を制御する一対のメンテナンス部制御装置(メンテナンス部制御手段)32と、Y軸テーブル4を制御するキャリッジ移動制御装置(キャリッジ移動制御手段)33と、を備えている。そして、描画部制御装置31、一対のメンテナンス部制御装置32およびキャリッジ移動制御装置33は、制御的に相互にリンクしている。なお、メンテナンス部制御装置32が、キャリッジ移動制御装置33を兼ねていてもよい(図示省略)。
【0031】
描画部X軸テーブル2は、X軸方向に延在する一対の描画部X軸ガイドレール(ワーク移動軸)39と、描画部X軸ガイドレール39に搭載された上記のワークテーブル21を、描画部X軸ガイドレール39に沿って移動させるワークテーブル移動機構35と、上記の定期フラッシングユニット22および描画部ロール紙ユニット23を、描画部X軸ガイドレール39に沿って移動させるユニット移動機構36と、を有している。すなわち、ワークテーブル21と、定期フラッシングユニット22および描画部ロール紙ユニット23は、個別に描画部X軸ガイドレール39上を移動可能に構成されている。
【0032】
定期フラッシングユニット22は、機能液滴吐出ヘッド6から捨て吐出(フラッシング)された機能液を受けるボックスであり、ワークWの除給材時に、Y軸テーブル4の直下に移動して機能液滴吐出ヘッド6から捨て吐出を受ける。これにより、ワークWの除給材時に描画動作を休止する機能液滴吐出ヘッド6の保守が図られている。
【0033】
描画部ロール紙ユニット23は、上記の描画部画像認識ユニット24と共に描画部検査手段を構成しており、機能液滴吐出ヘッド6の吐出性能検査を実施する。
描画部ロール紙ユニット23は、機能液滴吐出ヘッド6からの検査吐出を受ける検査シート37を有しており、ワークWの除給材時に、Y軸テーブル4の直下に移動して機能液滴吐出ヘッド6からの検査吐出を受ける。この検査吐出は、描画動作に連続するようにして実施され、ワークWが除給材位置に達することにより、描画部ロール紙ユニット23が描画部画像認識ユニット24の直下に達するようになっている。
一方、描画部画像認識ユニット24は、検査シート37上に着弾した着弾ドットを画像認識する複数台のカメラ37と、複数台のカメラ37をY軸方向に移動(操作)させるカメラ移動機構38と、から構成されている。描画部画像認識ユニット24は、ワークWの給除材時において、検査吐出された着弾ドットを画像認識する。認識した画像は、描画部制御装置31に送信されて、各機能液滴吐出ヘッド6の各吐出ノズルが正常に機能液を吐出しているか(ノズル詰まりおよび飛行曲がりがあるか)否かが評価される。
【0034】
Y軸テーブル4は、Y軸方向に延在する一対のY軸ガイドレール(キャリッジ移動軸)41と、Y軸ガイドレール41に搭載された複数のキャリッジユニット7(2組のキャリッジ群5)を、Y軸ガイドレール41に沿って個々に移動させるキャリッジ移動機構42と、を有している。各キャリッジユニット7は、一対のY軸ガイドレール41に掛け渡したブリッジプレート43と、ブリッジプレート43から吊下したθテーブル付きのキャリッジ本体44と、キャリッジ本体44の下端部に着脱自在に取り付けたヘッドユニット45と、を有している(図3参照)。ヘッドユニット45は、下面にアライメント基準となる一対の基準マークを有するヘッドプレート46と、ヘッドプレート46に6個ずつ2群に分けて搭載した12個の機能液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)6と、から構成されている。なお、キャリッジユニット7の個数および各キャリッジユニット7に搭載される機能液滴吐出ヘッド6の個数は任意である。
【0035】
このように構成されたY軸テーブル4は、上記のキャリッジ移動制御装置33に接続されており、キャリッジ移動制御装置33は、描画エリア25において各キャリッジ群5をY軸方向に副走査し、描画エリア25と一対のメンテナンスエリア26との間で2組のキャリッジ群5を交互に移動させる。すなわち、キャリッジ移動制御装置33は、一方のキャリッジ群5を描画エリア25に移動させ、他方のキャリッジ群5を対応するメンテナンスエリア26に移動させて描画を実施するが、一方のキャリッジ群5がメンテナンス要(交換要)となったときに、一方のキャリッジ群5を対応するメンテナンスエリア26に移動させ、他方のキャリッジ群5を描画エリア25に移動させる。これにより、短時間でキャリッジ群5の交換が行われ、ワーク処理のタクトタイム(サイクルタイム)への影響を極力少なくしている。
【0036】
各メンテナンス部X軸テーブル3は、X軸方向に延在する一対のメンテナンス部X軸ガイドレール34と、メンテナンス部X軸ガイドレール34に搭載されたメンテナンス装置51を、メンテナンス部X軸ガイドレール34に沿って移動させるメンテナンス装置移動機構52と、を有している。メンテナンス部X軸テーブル3は、メンテナンスエリア26に移動したキャリッジ群5に対し、メンテナンス装置51の各構成ユニットを臨ませる。
【0037】
図2ないし図7に示すように、各メンテナンス装置51は、各機能液滴吐出ヘッド6から機能液を吸引する複数(各キャリッジ群5のキャリッジユニット7数に対応)の吸引ユニット53と、各機能液滴吐出ヘッド6のノズル面を払拭するワイピングユニット54と、各機能液滴吐出ヘッド6の液滴吐出量を測定する重量測定ユニット55と、ヘッドユニット45のアライメントを実施するためのアライメントユニット56と、機能液滴吐出ヘッド6の吐出性能検査を実施するメンテナンス部ロール紙ユニット57およびメンテナンス部画像認識ユニット58と、吐出性能検査時において、各機能液滴吐出ヘッド6を昇温するヘッド昇温機構59と、を有している。なお、請求項にいうメンテナンス部検査手段は、は、メンテナンス部ロール紙ユニット57、メンテナンス部画像認識ユニット58およびヘッド昇温機構59から構成されている。
【0038】
図3に示すように、吸引ユニット53は、各機能液滴吐出ヘッド6のノズル面に密接するキャップユニット61と、キャップユニット61を昇降させるキャップ昇降機構62と、有しており、このキャップユニット61を密接状態として、装置の稼働停止時における機能液滴吐出ヘッド6の保全(乾燥防止)と、機能液吸引による機能液滴吐出ヘッド6の機能回復と、を実施する。また、キャップユニット61を離間状態として、機能液滴吐出ヘッド6からの捨て吐出を受ける。
【0039】
図4に示すように、ワイピングユニット54は、リール・ツー・リールで送られるワイピングシート63と、ワイピングシート63を搭載したユニット本体64と、ユニット本体64をY軸方向(払拭方向)に移動させる本体移動機構65と、を有している。ワイピングシート63を走行させながら、ユニット本体64を払拭方向に移動させることより、吸引後の各機能液滴吐出ヘッド6のノズル面を払拭する。なお、ワイピングユニット54は、複数搭載されていてもよい。
【0040】
メンテナンスエリア26に移動したキャリッジ群5(キャリッジユニット7)は、定期的にそのヘッドユニット45(機能液滴吐出ヘッド6)を交換するようになっている。そして、交換後のヘッドユニット45に対して、アライメント、機能液の重量測定、吐出性能検査が実施される。
図5に示すように、アライメントユニット56は、アライメントカメラ66と、アライメントカメラ66をY軸方向に移動させるキャリッジカメラ移動機構67と、を有している。アライメントカメラ66をY軸方向に移動させ、ヘッドユニット45に設けた一対の基準マークを画像認識する。この認識結果に基づいて、ヘッドユニット45のθ補正が実施されると共に、ヘッドユニット45のY軸方向の位置補正(データ補正)および吐出タイミング補正(Y軸方向の位置補正)が実施される。
【0041】
図6に示すように、重量測定ユニット55は、1の機能液滴吐出ヘッド6(ノズル列単位)から吐出した機能液を受ける複数の受液容器68と、各受液容器68を介して機能液の重量を測定する複数の電子天秤69と、これらをY軸方向に移動する重量測定ユニット移動機構70と、を有している。機能液滴吐出ヘッド6からの液滴吐出を受容し、吐出ドットの重量を測定する。この測定結果に基づいて、各機能液滴吐出ヘッド6への駆動電圧が補正される。
メンテナンス部検査手段であるメンテナンス部ロール紙ユニット57およびメンテナンス部画像認識ユニット58は、構造および機能において上記の描画部ロール紙ユニット23および描画部画像認識ユニット24と同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0042】
ところで、描画動作時の機能液滴吐出ヘッド6は、そのヘッド基板からの発熱により幾分昇温する(機能液の粘度低下)。そこで、メンテナンス部検査手段による吐出性能検査の際に、描画動作時の機能液滴吐出ヘッド6と同一条件で検査吐出を実施すべく、ヘッド昇温機構59がキャリッジユニット7単位で設けられている。
図7に示すように、ヘッド昇温機構59は、ヘッドユニット45に向って昇温エアーを吹き付ける吹出し口71と、ヘッドユニット45を通過した昇温エアーを吸引する吸込み口72と、吹出し口71と吸込み口72とを連通する循環ダクト73と、循環ダクト73に介設したヒーター74およびファン75と、を有している。ファン75を駆動し、ヒーター74で昇温した昇温エアーを、吹出し口71からヘッドユニット45に吹き付けて機能液滴吐出ヘッド6を所定の温度に昇温させる。なお、ヒーター74およびファン75は、図外のセンサーにより制御されることは、言うまでもない。また、キャリッジユニット7単位の複数のヘッド昇温機構59を、単一のもので構成してもよい(図示省略)。
【0043】
このように、各メンテナンスエリア26においては、キャリッジ群5を単位として、例えば描画部検査手段によりNGとなったヘッドユニット45(機能液滴吐出ヘッド6)のメンテナンスが実施され、またヘッドユニット45の交換とその後のメンテナンスが実施される。すなわち、描画エリア25において、一方のキャリッジ群5によりワークWに描画が行なわれている間に、メンテナンスエリア26において、他方のキャリッジ群5の交換やメンテナンスが実施される。そして、メンテナンスエリア26のキャリッジ群5は、描画待機状態となる。
【0044】
次に、図8を参照して、描画チャンバー27およびメンテナンスチャンバー28について説明する。描画チャンバー27および一対のメンテナンスチャンバー28,28は、描画エリア25および一対のメンテナンスエリア26,26をそれぞれ画成しており、Y軸方向において相互に間隙を存して配設されている。また、両チャンバー27,28間には、排気設備81に接続した部分チャンバー82がそれぞれ配設されており、両チャンバー27,28に連通している。描画チャンバー27および各メンテナンスチャンバー28は、プレハブ形式のクリーンブースの形態を有しており、描画チャンバー27には上記の描画部調和装置29が、各メンテナンスチャンバー28には上記のメンテナンス部調和装置30が、それぞれ併設されている。
【0045】
描画チャンバー27は、X軸方向から描画部X軸テーブル2を挟むように配設した一対の第1X軸側壁91,91と、Y軸方向から描画部X軸テーブル2を挟むように配設した一対の第1Y軸側壁92,92と、描画部X軸テーブル2の上方に配設した描画天壁と、を有し、底壁を構成するベース(共に図示省略)に取り付けられている。また、描画チャンバー27には、相互の内部流路を連通するようにして、描画部制御装置31に接続した描画部調和装置29が併設されている。
【0046】
一対の第1Y軸側壁92,92には、Y軸ガイドレール41が挿通すると共に、キャリッジユニット7が通過する第1チャンバー開口93がそれぞれ形成されている。各第1チャンバー開口93には、一対のY軸ガイドレール41に対応する部分を切り欠いたスライド式の開閉扉94が設けられている。開閉扉94は、例えばエアーシリンダー等のエアーアクチュエーターにより、上下方向に開閉動作する。すなわち、第1チャンバー開口93に形成したガイドに案内されて、上方に移動して第1チャンバー開口93を閉塞し、この状態から下方に移動して第1チャンバー開口93を開放する。
【0047】
一方、各メンテナンスチャンバー28は、X軸方向からメンテナンス部X軸テーブル3を挟むように配設した一対の第2X軸側壁95,95と、Y軸方向からメンテナンス部X軸テーブル3を挟むように配設した一対の第2Y軸側壁96,96と、メンテナンス部X軸テーブル3の上方に配設したメンテナンス天壁と、を有し、底壁を構成するベース(共に図示省略)に取り付けられている。また、各メンテナンスチャンバー28には、相互の内部流路を連通するようにして、メンテナンス部調和装置30に接続したメンテナンス部調和装置30が併設されている。描画チャンバー27側の第2Y軸側壁96には、Y軸ガイドレール41が挿通すると共に、キャリッジユニット7が通過する第2チャンバー開口97が形成されている。なお、第2チャンバー開口97にも、上記のような開閉扉94を設けてもよい。
【0048】
部分チャンバー82は、各チャンバー開口93,97を連通する連通チャンバー101と、連通チャンバー101に連通すると共に、排気設備81に連通した排気管102と、から構成されている。すなわち、一対の連通チャンバー101,101を介して、描画チャンバー27および一対のメンテナンスチャンバー28,28が連通した形態となっている。また、各部分チャンバー82は、排気設備81による吸引動作により、描画チャンバー27およびメンテナンスチャンバー28内より低圧に制御されている。これにより、描画チャンバー27および一対のメンテナンスチャンバー28,28の内部雰囲気は、部分チャンバー82に向かって流れ出すため、各チャンバー27,28の内部雰囲気が相互に影響を及ぼすことがない。
【0049】
描画部調和装置29は、描画チャンバー27の描画天壁に連通し、描画天壁に組み込んだHEPAフィルターを介して、図外の窒素源からの窒素やエアー源からのドライエアーを、雰囲気調和して描画チャンバー27に常時供給する。また、描画チャンバー27の下部の複数箇所には、排気設備81に連なる排気配管が接続され、描画チャンバー27の雰囲気は、流量調整されながら常時排気されるようになっている。そして、雰囲気調和を行うため、描画部調和装置29に形成した内部流路には、ヒーター、クーラー、ファン等が組み込まれており(いずれも、図示省略)、これらヒーター、クーラー、ファン等は、描画チャンバー27内に設置した各種センサー(圧力センサーも含む)の検出結果に基づいて、描画部制御装置31により制御される。すなわち、描画部調和装置29は、描画部制御装置31により、適宜、描画チャンバー27内の内部雰囲気を一定に調和する。なお、メンテナンス部調和装置30も同一構成であるため、ここでの説明は省略する。
【0050】
描画部制御装置31は、描画部調和装置29の他、描画チャンバー27の各開閉蓋の開閉を制御すると共に、描画チャンバー27内に収容した各種の装置を制御する。同様に、各メンテナンス部制御装置32は、メンテナンス部調和装置30の他、メンテナンスチャンバー28内の各種の装置を制御する。そして、描画部制御装置31およびメンテナンス部制御装置32は、相互にリンクしており、描画チャンバー27およびメンテナンスチャンバー28の内部雰囲気が、両チャンバー27,28の外部より高圧になるように、且つ各チャンバー27,28における作業に合わせて内部雰囲気をそれぞれ調整する。これにより、各チャンバー27,28,28内の内部雰囲気は、部分チャンバー82への流入が促進される。すなわち、一方のチャンバー27(28)の内部雰囲気が、他方のチャンバー28(27)内に流入することを防止でき、両チャンバー27,28の内部雰囲気が相互に影響を及ぼすことがない。
【0051】
次に、図9を参照して、本発明の第2実施形態に係る液滴吐出装置1について説明する。なお、重複した記載を避けるべく、第1実施形態と異なる部分を主として説明する。この液滴吐出装置1では、描画チャンバー27および一対のメンテナンスチャンバー28,28が、それぞれが間隙なく配設されている。すなわち、描画チャンバー27および一対のメンテナンスチャンバー28間には、第1Y軸側壁92と第2Y軸側壁96とを兼ねる隔壁様の一対のY軸側壁103が配設されている。そして、各Y軸側壁103には、チャンバー開口93,93がそれぞれ形成されている。また、描画チャンバー27内には、Y軸側壁103に沿わせて一対のチャンバー開口93,93を覆うように、一対の開閉扉94,94がそれぞれ配設されている。係る場合には、描画チャンバー27およびメンテナンスチャンバー28内の内部雰囲気が、相互に流入しないように、各チャンバー27,28,28内を制御することが好ましい。例えば、両チャンバー27,28内の圧力を同一となるように制御する、あるいは、同一気流となるように内部雰囲気をそれぞれ調整する。
【0052】
以上の構成によれば、描画エリア25およびメンテナンスエリア26は、描画チャンバー27および一対のメンテナンスチャンバー28によりそれぞれ画成され、且つ個別に制御可能に構成されているため、メンテナンスチャンバー28内で人的にヘッドユニット45などの交換などを行う場合であっても、ワーク処理のタクトタイムに影響を及ぼすことがなく、機能液滴吐出ヘッド6のメンテナンス作業を効率良く実施することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…液滴吐出装置 2…X軸テーブル 4…Y軸テーブル 5…キャリッジ群 6…機能液滴吐出ヘッド 7…キャリッジユニット 17…フラッシングユニット 21…ワークテーブル 23…描画部ロール紙ユニット 24…描画部画像認識ユニット 25…描画エリア 26…メンテナンスエリア 27…描画チャンバー 28…メンテナンスチャンバー 29…描画部調和装置 30…メンテナンス部調和装置 31…描画部制御装置 32…メンテナンス部制御装置 41…Y軸ガイドレール 51…メンテナンス装置 57…メンテナンス部ロール紙ユニット 58…メンテナンス部画像認識ユニット 81…排気設備 82…部分チャンバー 93…第1チャンバー開口 94…第1開閉扉 97…第2チャンバー開口 W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに描画を行なう機能液滴吐出ヘッドを搭載した1以上のキャリッジユニットから成る2組のキャリッジ群と、
前記機能液滴吐出ヘッドにより描画が行われる描画エリアに配設され、前記ワークがセットされるワークテーブルと、
前記描画エリアの両外側に位置し前記機能液滴吐出ヘッドの保守を行う一対のメンテナンスエリアと前記描画エリアとの間で、前記2組のキャリッジ群を交互に移動させるキャリッジ移動手段と、
前記一対のメンテナンスエリアに配設され、前記各キャリッジ群における前記機能液滴吐出ヘッドの保守を実施する2組のメンテナンス手段と、
前記描画エリアを画成する描画チャンバーと、
前記各メンテナンスエリアを画成する一対のメンテナンスチャンバーと、
前記描画チャンバーの内部雰囲気および前記各メンテナンスチャンバーの内部雰囲気を個別に雰囲気調和する雰囲気調和手段と、を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記雰囲気調和手段は、
前記描画チャンバーを雰囲気調和する描画部調和手段と、
前記各メンテナンスチャンバーを雰囲気調和する一対のメンテナンス部調和手段と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記描画部調和手段および前記描画エリア内の構成手段を制御する描画部制御手段と、
前記各メンテナンス部調和手段および前記各メンテナンスエリア内の構成手段を制御する一対のメンテナンス部制御手段と、
前記キャリッジ移動手段を制御するキャリッジ移動制御手段と、を更に備えたことを特徴とする請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記一対のメンテナンス部制御手段が、前記キャリッジ移動制御手段を兼ねていることを特徴とする請求項3に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記描画チャンバーと前記各メンテナンスチャンバーとは、間隙を存して配設されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記描画チャンバーおよび前記一対のメンテナンスチャンバー間には、前記キャリッジ移動手段のキャリッジ移動軸が架設され、
前記描画チャンバーは、前記キャリッジ移動軸が挿通すると共に前記各キャリッジ群が通過する2つの第1チャンバー開口と、前記各第1チャンバー開口おける前記キャリッジ移動軸以外の部分を開閉する2つの第1開閉扉と、有し、
前記各メンテナンスチャンバーは、前記キャリッジ移動軸が挿通すると共に前記各キャリッジ群が通過する1つの第2チャンバー開口と、前記第2チャンバー開口おける前記キャリッジ移動軸以外の部分を開閉する1つの第2開閉扉と、有していることを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記描画チャンバーと前記各メンテナンスチャンバーとの間において、相互の前記チャンバー開口間を覆う一対の部分チャンバーを、更に備え、
前記各部分チャンバーは、前記描画チャンバーおよび前記各メンテナンスチャンバーより低圧に設定されていることを特徴とする請求項6に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記各部分チャンバーは、排気設備に連通していることを特徴とする請求項7に記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
前記描画エリアに配設され、
前記キャリッジ移動手段による移動方向と直交する方向に前記ワークテーブルを移動させるワーク移動手段と、
前記ワーク移動手段のワーク移動軸に搭載され、前記各キャリッジ群における前記機能液滴吐出ヘッドの保守を実施する描画部メンテナンス手段と、
前記ワーク移動軸に搭載され、前記各キャリッジ群における前記機能液滴吐出ヘッドからの検査吐出を受けるシートユニットと、
前記シートユニットへの検査吐出結果を画像認識する画像認識手段と、を更に備えたことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項10】
前記各メンテナンスエリアに配設され、
前記各キャリッジ群における前記機能液滴吐出ヘッドの吐出性能検査を実施するメンテナンス部検査手段と、を更に備えたことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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