説明

液滴噴霧装置のノズル本体

【課題】液体を噴霧することにより生じた雲状の液滴の蒸発を制御する、革新的なノズル本体および対応する液滴噴霧装置を提供する。
【解決手段】ノズル本体1は、基板2と、低圧かつ単分散の霧状の液滴として、液体を吐出するよう基板に形成され、吹出ノズル4を貫通させることにより、ノズル本体から液体を排出することができるように、液体を受け取る配置になっており、略垂直であって一直線かつ互いに平行な側壁を有する、複数のトラバース吹出ノズルとを備える。基板の中心から端に向かうにつれて、吹出ノズルの密度が高くなるように、吹出ノズルは基板に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤や芳香剤、その他のエアロゾル化された液体などの液体物質を霧化するのに適した液滴噴霧装置のノズル本体、および液滴噴霧装置自体に関する。このような装置は、例えば、香水ディスペンサーやインクジェットプリンタのヘッド、表面上への液滴列付着、エンジンの燃料噴射装置、患者の呼吸器系からの噴霧薬の投与に利用することができる。そのような投与装置はその最も単純な形態では一般的に吸入器と呼ばれている。投与装置は、例えば、薬剤の制御投与、麻酔など噴霧薬を投与する様々な治療、または低侵襲手術中に利用することができる。投与装置は液体物質の薬剤を噴霧液滴に分散させて供給する。さらに具体的には、本発明は、霧状の液滴を効率的に生成し完全に排出する、改良型液滴噴霧装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような液滴噴霧装置はまた、圧電噴霧装置やエアゾール発生器、ネブライザーなどと呼ばれることもある。液滴噴霧装置は一般的にノズル本体を支持部に有し、特に、そのノズル本体は液体物質を霧状の液滴として供給する液滴噴霧装置のノズル本体である。また、液滴噴霧装置は通常、液体を振動させることで液体を加速しノズル本体に設けられた吹出ノズルから液滴として排出するための超音波生成手段、例えば圧電アクチュエータを有する。さらにこの装置は、容器に連結された液体空間、液体供給部および流体界面、容器、超音波生成手段とそれに対応する電子回路との電気的接続などの要素から成る。液体の例として、環境芳香剤、香水、殺虫剤、アロマテラピーエッセンス、液体の医薬製剤、水性ベースの液体、および引火性または可燃性液体などが挙げられる。
【0003】
そのようなノズル本体は、アパーチャプレート、ノズルアレイ、投与アパーチャ、オリフィスプレート、振動可能膜部材、投与アパーチャ配置物、エアゾール発生器などと呼ばれることがある。当然のことながら、上記の用語は本文書を通して置き換え可能である。
【0004】
実際、このようなノズル本体および液滴噴霧装置は周知であり、例えば、本出願人名義の特許文献、欧州特許第1129741号明細書を参照されたい。同特許文献では、本体およびノズル本体から形成される頂部基板を有する液滴噴霧装置が記載されている。このノズル本体は、液滴排出手段のノズルアレイを有しているので、液滴噴霧装置に収容されている液体物質を、この場合は霧状の液滴として装置から排出させることができる。圧電アクチュエータは霧状の液滴を生成するため液体を振動させるのに用いられる。
【0005】
芳香剤や殺虫剤を含む液体物質の微小液滴から成るミストや雲を形成し、そのミストや雲を微小液滴として大気中に吐出することで、このような装置により芳香剤や殺虫剤を大気中に分散させることは周知である。ミストや雲が安定すると、液滴から芳香剤や殺虫剤が蒸発する。これを行う装置の例が、米国特許第4,085,893号明細書、米国特許第5,173,274号明細書、米国特許第5,601,235号明細書、米国特許第5,894,001号明細書に示されている。一般的にこれらの装置は液体の芳香剤や殺虫剤を振動霧化プレートに供給し、振動霧化プレートはその振動により、液体を微小液滴にしてそれらをミストや雲の状態で上方向に吐出する。液滴が落下すると、芳香剤や殺虫剤は液滴から蒸発し大気中に分散する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の装置が排出する液滴の雲の密度は非常に高くなり得るため、液滴同士の「合体」が原因となり、蒸発前に液滴が落下する。実際、そのような合体が原因で、蒸発にさらに時間のかかるより大きな液滴が形成され、重力により落下する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明の目的は、液体を噴霧することにより生じた雲状の液滴の蒸発を制御する、革新的なノズル本体および対応する液滴噴霧装置を提供し、先行技術文献に見られる不便さや限定を克服して、排出された液体の落下を最小限に抑えることである。
【0008】
したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲に規定されるノズル本体および液滴噴霧装置に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるノズル本体および液滴噴霧装置の特徴により、落下を確実に最小限に抑えることが可能となる。
【0010】
有利なことに、いくつかの好ましい実施形態ではさらに、排出された液体の指向性を制御することができる。
【0011】
実際、本発明によると、排出された液体により生じた雲の密度が雲の中心部において、従来のノズル本体を利用した場合に比べて低いため、落下を最小限に抑えられるようにノズル本体の吹出ノズルは配置されている。
【0012】
有利には、特定の実施形態において、排出された液体により生じた雲の密度は雲の周縁部よりも中心部の方が低くても良い。密度が不均一な雲を生じることにより、落下をさらに軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明による方法および液滴噴霧装置の他の特徴および利点は、以下の記述を読むことで明確になる。添付図面を参照すると、以下の記述は単なる例であり、それに限定されるものではない。
【図1】図1は、本発明に係る実施の形態1のノズル本体の一例を示す。
【図2a】図2aは、本発明に係る実施の形態2のノズル本体の一例と、吹出ノズルが傾斜していることを示す。
【図2b】図2bは、本発明に係る実施の形態2の吹出ノズル間の距離を示す。
【図3】図3は、本発明に係る実施の形態3のノズル本体の一例を示す。
【図4A】図4Aは、本発明に係るノズル本体を有する液滴噴霧装置の第1の例を示す。
【図4B】図4Bは、本発明に係るノズル本体を有する液滴噴霧装置の第2の例を示す。
【0014】
[実施形態の説明]
異なる複数の実施形態の実施例を以下に記載する。ノズル本体は一般的に、液体を霧状の液滴として吐出させる液体通路の役割をするトラバースノズルを有する基板から形成される。そのようなノズルは、当業者に周知の方法でエッチング処理やレザードリル加工などを行うことにより製造できる。ノズル本体に適した材料には例えば、シリコンやプラスティックなどがある。
【0015】
[実施の形態1]
図1は、本発明に係る実施の形態1の液滴噴霧装置に適したノズル本体の一例を示す。
【0016】
ノズル本体1は周知の方法で液滴噴霧装置から液体物質を受け取るように配置されており、トラバース吹出ノズル4を有する基板2から成る。基板2はシリコンやプラスティックなどでもよいが、一直線の側壁を有するトラバース吹出ノズルを得られる貫通孔を開けられる材料であればよい。複数の吹出ノズル4は、当該技術分野で知られる方法で噴霧装置から液体を排出させる液体通路として設けられる。例えば、そのような周知の方法で(図4参照)、液体チャンバをノズル本体に隣接して設けることができ、圧電アクチュエータなどの超音波生成手段で液体を振動させて、超音波が液体に作用することにより吹出ノズルを通して液体を吐出できる。
【0017】
各吹出ノズル4は、略垂直であって、一直線かつ互いに平行な側壁を有する。本発明によると、吹出ノズル4の密度が基板2の中心から端に向かうほど高くなるよう、複数の吹出ノズル4は前記基板に配置されている。
【0018】
したがって、図1に示されるように、基板2の中心部または中心付近に位置し隣接する吹出ノズル4同士の距離d1は、基板2の周縁または周縁付近に位置し隣接する吹出ノズル4同士の距離d2よりも長い。
【0019】
この配置により、ノズル本体の中心から排出される液滴はノズル本体の端から排出される液滴よりも少ない。結果として、排出された液滴により形成された雲の密度は周縁部よりも中心部で低くなる。このように中心の密度が低いため、吹出ノズルが通常のアレイ配置である従来の噴霧装置と比較すると液滴同士が「合体する」可能性は低いので雲は軽くなる。これにより、排出された液滴の落下は軽減される。
【0020】
実際、本出願人は、排出された雲の中心部の密度が高いと、合体する可能性のある液滴同士が衝突するため、落下の可能性が高まることを発見した。このように形成されたより大きな液滴は、蒸発にさらに時間がかり、完全に蒸発する前にそれらが排出された表面に落下する可能性がある。雲の中心部の密度を低くすることにより、液滴数が少なくなるため衝突のリスクが軽減される。雲の周縁部ではいずれにしても衝突のリスクは低く、雲の中心部に位置する液滴に比べ蒸発しやすい。
【0021】
[実施の形態2]
図2は、本発明に係る実施の形態2の液滴噴霧装置に適したノズル本体の一例を示す。
【0022】
この実施の形態2のノズル本体21は、吹出ノズルの配置以外では、実施の形態1のノズル本体と類似している。ここでは、類似の部分と配置について詳しく記載しない。図2aに示されるように、基板22の中心から離れて周縁方向に配置されている吹出ノズル24は傾いており、排出される液体を受け取るノズル本体の底面に対して角度α(0<α≦90°)をなしているという点で、ノズル本体21はノズル本体1と異なる。中心部に配置された吹出ノズルまたは複数の吹出ノズルは、ノズル本体の底面に対して90度の角度をなす。基板22の端により近い吹出ノズル24は、すべて同じ角度αをなしても、異なる角度をなしてもよい。異なる角度をなす場合この角度αは、例えば、基板12(22の誤記と思われます)の中心から端に向かうにつれ90度未満から0度へと小さくすることができる。
【0023】
この傾斜により、排出された雲は、通常の吹出ノズルアレイを有する従来の噴霧装置と比べて中心部の密度が低くなる。
【0024】
したがって、この配置によっても、排出された液滴の衝突のリスクが低下するため、落下を軽減できる。
【0025】
有利には、本発明のこの配置により、中心部以外に配置されている吹出ノズル24の角度αを変化させることで、排出された雲の一定の指向性を可能にする。
【0026】
また、図2bに示されるように、上述の実施の形態1と同様、吹出ノズル間の距離は異なる。つまり、基板22の中心部または中心付近に位置し隣接する吹出ノズル24同士の距離d1は、基板22の周縁部または周縁付近に位置し隣接する吹出ノズル24同士の距離d2よりも長い。
【0027】
[実施の形態3]
図3は、本発明に係る実施の形態3の液滴噴霧装置に適したノズル本体の一例である。
【0028】
この実施の形態3のノズル本体31は、吹出ノズル以外では、実施の形態1のノズル本体と類似している。ここでは、類似の部分と配置について詳しく記載しない。吹出ノズル34の直径はさまざまで、基板32の中心付近に配置される場合はより小さく、基板32の周縁方向に配置される場合はより大きくなるという点で、ノズル本体31はノズル本体1と異なる。したがって、トラバースノズルの直径はそれぞれ異なり、結果的にノズルのサイズが異なることで、排出される液滴のサイズも異なる。
【0029】
当然ながら、所望のスプレーになるようノズルを配置することも可能である。例えば、基板の中心部と周縁方向に異なるサイズのノズルを混合して配置することが挙げられる。
【0030】
図4Aは、本発明によるノズル本体を有する液滴噴霧装置の第1の例である。液滴噴霧装置8は、従来通りに、ノズル本体41を有する基板から成る筐体42を具備する。ノズル本体41は、上述の実施形態で記載されたノズル本体のいずれでもかまわない。空間44すなわち液体チャンバをノズル本体41と隣接して設けてもよい。圧電アクチュエータなどの超音波生成手段46を第2の基板43に設けてもよく、生成された超音波が空間44で液体を振動させるように配置し、液体への超音波の作用により液体を吹出ノズルから吐出する。有利に、液体に超音波を送るため、超音波生成手段46とチャンバ44との間に作動膜45を設けることができる。さらに、周知の方法で容器の液体を空間44に供給するように液体供給手段(図示せず)を設けてもよい。
【0031】
図4Bは、本発明によるノズル本体を有する液滴噴霧装置7の第2の例である。この装置は、本出願人名義の特許文献、欧州特許第B−1 287 904号に開示された内容と類似の方法で、装置の頂部からではなく側面から液滴がスプレーされる。ここでもノズル本体は、上述の実施形態に開示されているようなノズル本体であり、液滴が側面からスプレーされる。前述の欧州特許文献において、噴霧装置はあらゆる方向にスプレーする、つまり噴霧装置の各側面からスプレーするが、当然のことながら、一面以上からスプレーすることにより、一方向または複数の方向のみにスプレーすることも可能である。
【0032】
本発明の好ましい実施形態を記載したが、その概念を含む他の実施形態が使用され得ることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、開示した実施形態に限定されるべきではなく、むしろ、添付の特許請求の範囲でのみ限定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴噴霧装置のノズル本体(1)であって、前記液滴噴霧装置から液体物質を受け取り、排出された雲状の液滴として前記液体物質を排出するように配置されている前記ノズル本体は、
基板(2)と、
低圧かつ単分散の霧状の液滴として液体を吐出するよう前記基板(2、22、32)に形成され、吹出ノズルを貫通させることにより前記ノズル本体から前記液体を排出することができるように、前記液体を受け取る配置になっており、略垂直であって一直線かつ互いに平行な側壁を有する、複数のトラバース吹出ノズル(4、24、34)とを備え、
排出された液滴の落下が軽減されるように、前記基板の中心から端に向かうにつれ前記吹出ノズルの密度が高くなるように、前記吹出ノズル(4、24、34)が前記基板に配置されるノズル本体。
【請求項2】
中心部に位置する吹出ノズルは前記基板に対し垂直である一方、前記基板の周縁方向に位置する吹出ノズルは角度α(0<α≦90°)で傾斜するように、前記吹出ノズル(4)が前記基板(2)に配置されている、請求項1に記載のノズル本体(21)。
【請求項3】
前記吹出ノズルの前記角度αは、前記基板の中心から端に向かうにつれて、前記基板の中心からの距離に応じて小さくなる、請求項2に記載のノズル本体。
【請求項4】
前記基板の中心または中心付近に位置し隣接する吹出ノズル間の距離d1は、前記基板の周縁または周縁付近に位置し隣接する吹出ノズル間の距離d2よりも長い、請求項1、2または3に記載のノズル本体。
【請求項5】
前記基板の中心または中心付近に位置する吹出ノズルの直径は、前記基板の周縁または周縁付近に位置する吹出ノズルの直径よりも短い、請求項1に記載のノズル本体。
【請求項6】
液体を霧状の液滴として吐出する液滴噴霧装置(8、7)は、
筐体(41)と、
液体物質を収容する前記筐体内の空間(44)と、
前記液体物質を前記空間(44)に供給する手段と、
前記液体が振動するように、前記空間(44)内の前記液体物質に超音波を送るよう配置された超音波生成手段(46)とを備え、
前記液滴噴霧装置はさらに、前記筐体に配置される、上記請求項のいずれかに記載のノズル本体を備える。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2011−245480(P2011−245480A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−104657(P2011−104657)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(510038094)イーピー システムズ エスエー マイクロフロー ディビジョン (5)
【氏名又は名称原語表記】EP Systems SA Microflow Division
【住所又は居所原語表記】Switzerland 2000 Neuchatel Case postale 352 Rue du Plan 30
【Fターム(参考)】