説明

液滴検出装置

【課題】 外乱光に影響されずに正確な滴下数をカウントし、消費電力を抑える液滴検出装置等を提供する。
【解決手段】 液滴を検出する液滴検出装置1であって、液滴が通過する経路に交叉する光を照射する発光部10と、前記発光部から照射された光を入力光とする受光部20と、前記発光部および前記受光部を間欠動作させる制御部50と、を含む。前記受光部からの入力光の変化に応じた検出信号を変換する信号変換部30を含み、前記信号変換部は、固定電位である第1の電位が印加される第1の入力端子と、前記検出信号を受け取る第2の入力端子とを備えた比較回路72を含み、前記制御部は、前記発光部が光を照射しないときに、前記第2の入力端子に前記第1の電位が印加されるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴検出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴を検出する液滴検出装置は、例えば点滴装置の一部として使用される。液滴検出装置は、例えば光源と、光源からの光を受け取る受光センサーとを備える。このような液滴検出装置では、光源と受光センサーとの間を通過する液滴によって受光センサーに到達する光が変化することを検出して液滴をカウントすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−317974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、医療に使用される点滴装置では、1分間の滴下数を厳密に管理する必要がある。しかし、外乱光の影響があると、液滴数を誤ってカウントする可能性がある。例えば、特許文献1には発光ダイオードとフォトダイオードの組み合わせによって液滴検出を行う実施例が記載されているが、外乱光の影響を考慮していない。
【0005】
また、特許文献1の実施例では、発光ダイオードは連続発光しており消費電力が大きいという問題もある。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明のいくつかの態様によれば、外乱光に影響されずに正確な滴下数をカウントし、消費電力を抑える液滴検出装置等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、液滴を検出する液滴検出装置であって、液滴が通過する経路に交叉する光を照射する発光部と、前記発光部から照射された光を入力光とする受光部と、前記発光部および前記受光部を間欠動作させる制御部と、を含む。
【0008】
本発明によれば、制御部が発光部および受光部を間欠動作させることで、外乱光に影響されずに正確な滴下数をカウントし消費電力を抑えることができる。ここで、間欠動作とは、発光部および受光部が発光動作と受光動作を行った後に動作を休止し、再び発光動作と受光動作を行うことを繰り返すことをいう。
【0009】
発光部はフラッシュ状に発光(強い光の照射)を行い、受光部も発光している間だけ入力光を受け取ることで外乱光の影響を受けにくくする。また、動作の休止状態があるため、連続発光に比べて消費電力を抑えることができる。なお、フラッシュ状の光を発する状態を目視することができ、例えば目視確認が必要とされる点滴装置等の医療用途にも適している。
【0010】
(2)この液滴検出装置において、前記入力光の変化に応じた信号である検出信号を前記受光部から受け取って変換する信号変換部を含み、前記信号変換部は、固定電位である第1の電位が印加される第1の入力端子と、前記検出信号を受け取る第2の入力端子とを備えた比較回路を含み、前記制御部は、前記発光部が光を照射しないときに、前記第2の入力端子に前記第1の電位が印加されるように制御してもよい。
【0011】
(3)この液滴検出装置において、前記入力光の変化に応じた信号である検出信号を前記受光部から受け取って変換する信号変換部を含み、前記制御部は、前記発光部が光を照射した第1の期間と、前記発光部が光を照射しない第2の期間とで、前記信号変換部が少なくとも1回ずつ前記検出信号を受け取るように制御し、少なくとも前記第1の期間において受け取った前記検出信号に基づく第1の信号と、前記第2の期間において受け取った前記検出信号に基づく第2の信号とを比較した結果に基づいて、前記発光部と前記受光部との間を通過する液滴を検出してもよい。
【0012】
(4)この液滴検出装置において、前記制御部は、前記発光部が光を照射した第1の期間と、前記発光部が光を照射しない第2の期間とで、前記信号変換部が少なくとも1回ずつ前記検出信号を受け取るように制御し、少なくとも前記第1の期間において受け取った前記検出信号に基づく第1の信号と、前記第2の期間において受け取った前記検出信号に基づく第2の信号とを比較した結果に基づいて、前記発光部と前記受光部との間を通過する液滴を検出してもよい。
【0013】
(5)この液滴検出装置において、前記制御部は、前記第1の信号と前記第2の信号との差である比較値が所定の閾値以下の場合に1滴の液滴が通過したと判断してもよい。
【0014】
(6)この液滴検出装置において、前記制御部は、前記第1の期間において、前記信号変換部が前記検出信号を複数回受け取り、複数回受け取った前記検出信号の各々に基づいて前記第1の信号を生成するように制御し、所定の期間において、所定の数以上の前記第1の信号についての前記比較値が閾値以下の場合に、1滴の液滴が通過したと判断してもよい。
【0015】
(7)この液滴検出装置において、前記制御部は、前記所定の期間において、前記第1の信号についての前記比較値が、所定の数以上連続して閾値以下の場合に、1滴の液滴が通過したと判断してもよい。
【0016】
これらの発明によれば、液滴検出装置は受光部からの検出信号を受け取って変換する信号変換部を含む。例えば、受光部からの検出信号は光電流であり、信号変換部は電圧に変換して出力する。信号変換部は、固定電位である第1の電位が印加される第1の入力端子と、検出信号を受け取る第2の入力端子とを備えた比較回路を含む。第1の電位とは、例えば電源電圧(例えば、Vdd)であってもよいし、接地電位であってもよい。また、比較回路は例えばオペアンプであってもよいが、これに限るものではない。
【0017】
このとき、発光部および受光部が休止している間、例えば外乱光によって生成した電荷がフォトダイオードの空乏層容量に蓄積されて、次回の信号受信に影響を与えることがないように、比較回路の第2の入力端子に第1の電位を印加する。このため、外乱光に影響されずに正確な検出ができる。
【0018】
ここで、外乱光以外にも、例えば液滴検出装置の設置場所における熱などの影響で信号変換部から出力される信号(以下、変換信号)のレベルに変動が生じる場合がある。そのような影響を排除して正確な検出を行うために、発光部が光を照射する前、又は後ろの変換信号を検出して比較してもよい。
【0019】
具体的には、制御部は、発光部が光を照射した第1の期間と、発光部が光を照射しない第2の期間とで、信号変換部が少なくとも1回ずつ検出信号(例えば光電流)を受け取るように制御する。そして、信号変換部は、少なくとも第1の期間において受け取った検出信号に基づく第1の信号(第1の期間における変換信号)と、第2の期間において受け取った検出信号に基づく第2の信号(第2の期間における変換信号)とを比較する。そして、比較結果に基づいて、発光部と受光部との間を通過する液滴を正確に検出することができる。ここで、1滴の液滴が発光部と受光部との間を通過するのは、例えば液滴が発光部と受光部との間を落下する場合が考えられるが、これに限るものではない。
【0020】
このとき、第1の信号と第2の信号との差である比較値が所定の閾値以下の場合に1滴の液滴が通過したと判断してもよい。閾値による判断を行うことで、雑音の影響等による誤検出を無くすことができる。なお、閾値は固定値でもよいし、可変であって液滴検出装置の動作開始時などに設定されてもよい。
【0021】
また、制御部は、第1の期間において、検出信号を複数回受け取り、複数回受け取った検出信号の各々に基づいて第1の信号を生成してもよい。そして、複数の第1の信号のそれぞれについて第2の信号と比較してもよい。その後、複数の比較値について、次のような条件を満たす場合には1滴の液滴が通過したと判断してもよい。
【0022】
まず、所定の期間において、所定の数以上の比較値が閾値以下であることを条件としてもよい。また、所定の期間において、連続して所定の数以上の比較値が閾値以下であることを条件としてもよい。このように複数の比較値が閾値以下であることを条件にすることで、より慎重な判断を行うことができる。なお、所定の期間とは、例えば第1の期間の全体でもよいし、その半分の期間等であってもよい。また、所定の数とは2以上の数であればいくつでもよい。以上のような判断を制御部が行うことにより、慎重で正確な判断が可能になる。
【0023】
(8)この液滴検出装置において、前記受光部は、フォトダイオードを含み、前記制御部は、前記発光部が光を照射しないときに、前記フォトダイオードのアノードとカソードを短絡させてもよい。
【0024】
(9)この液滴検出装置において、前記制御部は、前記発光部が光を照射するときに、前記比較回路をイネーブル状態にし、前記フォトダイオードのアノードとカソードを短絡させないでもよい。
【0025】
これらの発明によれば、受光部はフォトダイオードを含み、検出信号は光電流である。このとき、発光部が光を照射しないときには、フォトダイオードのアノードとカソードを短絡させてもよい。短絡させることで、外乱光に起因する電荷を除去し、光電流から外乱光の影響による成分を排除できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態の液滴検出装置のブロック図。
【図2】本実施形態の液滴検出装置を含む点滴装置の図。
【図3】図3(A)〜図3(D)は受光部への入力光が変化する様子を表す図。
【図4】図4(A)〜図4(C)は信号変換部の信号を表す図。
【図5】図5(A)〜図5(B)は本実施形態の信号の波形図。
【図6】図6(A)〜図6(B)は本実施形態の別の信号の波形図。
【図7】図7(A)〜図7(C)は制御部のサンプリング手法の例。
【発明を実施するための形態】
【0027】
1.第1実施形態
第1実施形態の液滴検出装置について図1〜図7(C)を参照して説明する。ここで、液滴検出装置とは特定の装置に限るものではないが、光を横切って落下(広義には通過)する液滴を検出する装置であって、少なくとも滴下数をカウントする機能を有するものとする。
【0028】
1.1.液滴検出装置の構成
図1は本実施形態の液滴検出装置1の構成を示す図である。液滴検出装置1は、発光部10、受光部20、信号変換部30、制御部50を含む。発光部10は、液滴が落下する経路に交叉する光を照射する。本実施形態の発光部10は、間欠的に光を照射する発光ダイオード12を含む。発光ダイオード12は、本実施形態のように赤外発光ダイオードでもよいし、白色発光ダイオードなど他の種類であってもよい。
【0029】
発光部10は、発光ダイオード12をフラッシュ状に発光させる。このための回路は、抵抗値Rである抵抗14、抵抗値Rである抵抗16、容量Cであるキャパシター18で構成されている。キャパシター18に電荷が蓄積されることによって、端子電圧が上昇し、発光ダイオード12をフラッシュ状に発光させることができる。
【0030】
受光部20は、発光部10から照射された光を入力光とし、例えば液滴が光を散乱させたり収束させたりすることで生じる入力光の変化に応じた検出信号210を出力する。発光部10から照射された光は、光の経路(光路110)を通って受光部20の入力光となる。本実施形態の受光部20は、受光素子としてフォトダイオード22を含む。そして、検出信号210は、具体的には光電流Ipdである。
【0031】
信号変換部30は、オペアンプ72と帰還抵抗74とを備える電流電圧変換回路を含む。オペアンプ72は広義には比較回路であり、その入力端子は、固定の電位Vddを供給する電源、およびフォトダイオード22に接続されている。帰還抵抗74の抵抗値はRである。本実施形態の信号変換部は、光電流Ipdを電圧に変換して変換信号310を生成する。
【0032】
つまり、信号変換部30は、液滴の落下に対応して変化する変換信号310を出力する。変換信号310は、例えば、後述するように1滴の液滴の落下に対応して2つのピーク(極値)を有する信号であってもよい(図4(C)参照)。
【0033】
制御部50は、トランスミッションゲート78のオン、オフを発光部イネーブル信号120で切り換えて、発光部10を間欠動作させる。図1の例では、発光部イネーブル信号120がハイレベル(“1”)である場合に、発光部10が動作(イネーブル)状態になる。
【0034】
また、制御部50は、トランスミッションゲート76のオン、オフを受光部短絡信号122で切り換える。例えば、受光部短絡信号122がハイレベルである場合には、フォトダイオード22のアノードとカソードを短絡させることができる。また、同時に、オペアンプ72の反転入力端子(第2の入力端子に対応)に、非反転入力端子(第1の入力端子に対応)に印加されているのと同じ電位Vdd(第1の電位に対応)を印加する。
【0035】
そして、制御部50は、信号変換部30の動作を制御する信号変換部イネーブル信号124を切り換える。図1の例では、信号変換部イネーブル信号124がハイレベル(“1”)である場合に、信号変換部30が動作(イネーブル)状態になる。制御部50は、信号変換部イネーブル信号124の反転信号を受光部短絡信号122としてもよい。そして、信号変換部イネーブル信号124がハイレベルである間に、発光部イネーブル信号120をハイレベルにして、発光部10に光を照射させてもよい。つまり、制御部50は、発光部10が光を照射するとき、オペアンプ72がイネーブル状態であり、フォトダイオード22のアノードとカソードが短絡していないように制御できる。
【0036】
制御部50は、また、判定回路(図外)を含んでもよい。判定回路は、例えば変換信号310を受け取り、その変化から1滴の滴下があったことを判定し、滴下数をカウントする。なお、制御部50はCPUであって、ハードウェアの判定回路を含むのではなく、判定回路に相当するプログラムを用いて滴下数をカウントしてもよい。
【0037】
なお、制御部50は、制御信号(図外)によって図1の抵抗値R、R、R、容量C、および電位Vddの少なくとも1つを調整してもよい。
【0038】
なお、図1では発光部10が電位Vddを供給する電源に接続されているように図示されているが、異なった電位を用いてもよい。発光部10の電源電位は、発光ダイオード12の種類によって定められることが多い。例えば、白色発光ダイオードならば3V程度であり、赤色発光ダイオードならば1.6V程度の場合もある。
【0039】
図2は本実施形態の液滴検出装置1を、点滴装置1000の一部として用いた場合の構成図である。なお、図1と同じ要素については同じ符号を付しており説明を省略する。点滴装置1000では、点滴用バッグ40からの液滴44が、落下経路46に沿って点滴筒42を落下する。ここで、液滴44は、輸液チューブ48を通って患者の体内に投与される薬である。液滴44は無色透明の場合もあるし、有色透明の場合もある。
【0040】
点滴装置1000において、点滴用バッグ40からの液滴44の一滴の量は規格により決まっている。そのため、液滴検出装置1は、1滴の量を計算する必要はないが滴下数を正確に数える必要がある。図2のように、液滴検出装置1は、点滴筒42を挟んで発光ダイオード12とフォトダイオード22とが向かい合うように設置される。光路110は、この例では液滴の落下経路46と垂直に交叉しているものとする。なお、フォトダイオード22の受光部の前にスリット(図外)を設けてもよい。スリットによって光路110の幅(ここでは、鉛直方向の長さ)を制限することにより、容易に液滴端を検出できるようにするためである。このとき、発光ダイオード12側にスリットを設けてもよい。
【0041】
1.2.発光時の変換信号の変化
図3(A)〜図3(D)は、液滴44が光束112を通過して、受光部への入力光が変化する様子を表す。なお、図1〜図2と同じ要素については同じ符号を付しており説明を省略する。
【0042】
図3(A)は、液滴44が落下しているが、まだ光束112に達していない様子を示す。このとき、フォトダイオード22は、液滴44が無い場合と同じ光量を受け取り、受光部への入力光に変化はない。
【0043】
なお、光束112とは、光路110(図2参照)を通る光のうちフォトダイオード22への入力光が作る光の束である。そして、図2には、光束112の中心を示す点線(中心部113)と液滴44の中心45が示されている。以下では、光束112の中心部113と液滴44の中心45との関係に基づいて説明をする。
【0044】
図3(B)は、液滴44の下端が光束112にかかっているが、まだ中心45は中心部113に達していない状態を示す。このとき、液滴44はレンズのように作用し、入力光の一部を矢印114の方向に屈折させてしまう。そのため、フォトダイオード22が受け取る光量が減少し、図3(A)に比べて暗い状態になる。
【0045】
図3(C)は、液滴44の中心45が光束112の中心部113に達した状態を示す。液滴44はレンズのように作用し、多くの光を矢印114の方向に屈折させて集める。そのため、フォトダイオード22が受け取る光量が多くなり、図3(A)に比べて明るい状態になる。
【0046】
図3(D)は、まだ液滴44の上端が光束112にかかっているが、液滴44は光束112を通過しようとしている状態を示している。このとき、図3(B)の場合と同じく、液滴44はレンズのように作用し、入力光の一部を矢印114の方向に屈折させてしまう。そのため、フォトダイオード22が受け取る光量が減少し、図3(A)に比べて暗い状態になる。
【0047】
図4(A)〜図4(C)は、図3(A)〜図3(D)のように液滴44が光束112を通過するときの変換信号310(図1参照)の変化の様子を示す図である。なお、図1〜図3(D)と同じ要素については同じ符号を付しており説明を省略する。
【0048】
図4(A)は、変換信号310の変化を表しており、暗い場合には高電位側へと変化し、明るい場合には低電位側へと変化する。図4(A)の最初の状態、すなわち電位Vであるときは、図3(A)の液滴通過前に対応する。そして、電位Vddへの変化(図4(A)の(a1))は、図3(B)の液滴通過開始時に対応する。その後の電位が0となる変化(図4(A)の(b))は、図3(C)の液滴通過中に対応する。そして、再びの電位Vddへの変化(図4(A)の(a2))は、図3(D)の液滴通過完了直前に対応する。なお、変換信号310は、検出信号210(光電流Ipd)を変換して得られるものであり、変換信号310における極値は検出信号210における極値に対応する。また、電位Vは例えばVdd/2である。
【0049】
ここで、変換信号310が得られた場合には、明るくなったときの極値(図4(A)の(b)が対応)を検出して、その数をカウントしてもよい。この手法では、極値のカウント値がそのまま液滴の数に対応するという利点がある。
【0050】
しかし、明るくなった場合の極値を検出する場合には、外乱光によって生じる極値(すなわち、正しくない極値)を誤検出する可能性がある。そこで、間欠的に発光ダイオードを発光させて外乱光の影響を受けないようにする手法がある。
【0051】
また、別の問題として図4(B)のような場合があり得る。図4(B)は、有色透明の液体を検出する場合であって、明るくなったときの極値が、無色透明の液体を検出する場合(例えば図4(A)が対応)に比べて著しく小さい。このとき、図4(B)の(b)で示す極値は、液滴通過前の電位Vとほぼ同じであるため、極値を見逃してしまう可能性がある。
【0052】
そこで、液滴の下端部、上端部が受光部への入力光の一部を散乱させて、暗くなった場合の極値である(a1)、(a2)に注目すると、図4(A)〜図4(B)のように、液体が無色透明であっても有色透明であっても液滴通過前の電位Vに比べて大きく変化することがわかる。また、この2つの変化は、液滴の大きさや落下速度で決まる所定時間内に連続して生じる。よって、所定時間内に2つの変化があることを検出することで、容易に外乱(例えばノイズ)による変化と区別することができる。
【0053】
以上のように、間欠動作に加えて、暗くなった場合の2つの極値である(a1)、(a2)を検出することで外乱光や液体の性質に影響されることなく正確な液滴数をカウントできる。ここで、発生原理から2つの極値である(a1)、(a2)は必ず連続して起こるので、例えば最初の極値である(a1)を検出してから、所定時間内に(a2)が検出されない場合に、液滴検出装置は異常があったと判断することができる。このとき、例えば使用者に対して警告を発して、故障等の有無の確認を促してもよい。このような機能を備えることで、例えば点滴装置として使用される場合に、信頼性の向上を図ることができる。
【0054】
ここで、図4(A)〜図4(B)の波形であっても正確な滴下数をカウントすることは可能である。しかし、図4(C)のように2つの極値である(a1)、(a2)だけを表す波形が得られれば後段の処理にとっても好ましい。以下に、図4(C)のような波形を得るための調整方法について図1を再び参照して説明する。
【0055】
変換信号310をVとすると、Vは電位Vdd、抵抗値R、光電流Ipdを用いてV=Vdd−R×Ipdで表される。すると、液滴通過前の光電流をIpd0とした場合に、0=Vdd−R×Ipd0を満たすように抵抗値Rを選択すれば図4(C)のような波形が得られる。すなわち、R=Vdd/Ipd0とすればよい。
【0056】
制御部50は、例えば前記の式に基づく計算で抵抗値Rを調整してもよい。また、例えば変換信号310を受け取りながら抵抗値Rを調整してもよい。このとき、図4(C)のように、液滴の中心が光路110の中心部を通る場合の変換信号310の出力レベルと、発光部と受光部との間を液滴が落下していない場合の変換信号310の出力レベルとを同じにするように調整を行う。なお、制御部50は、オペアンプの基準電圧を調整してもよい。
【0057】
このとき、抵抗値Rやオペアンプの基準電圧の調整といった簡単な手法で、図4(C)のような変換信号310を生成できる。そして、このように検出感度を高めた信号から、判定回路は2つの極値を容易に把握でき、さらに正確に滴下数をカウントすることが可能になる。
【0058】
1.3.間欠動作
本実施形態では、図5(A)のような間欠動作を行う。間欠動作によって、前記のように外乱光の影響を低減できることに加えて、消費電力も抑制することができる。本実施形態の液滴検出装置の制御部は、図5(A)のように、発光部イネーブル信号120をハイレベルにしたり(以下、オン)、ローレベルにしたり(以下、オフ)する。発光部イネーブル信号120がオンである期間Tを第1の期間、オフである期間Tを第2の期間とする。すると、図1のように、第2の期間では徐々にキャパシター18に電荷が蓄積される。そして、図5(A)のように第1の期間の最初に、発光ダイオード12がフラッシュ状に発光する。そして、キャパシター18の電荷が放電されるにつれて、発光ダイオード12の発光レベルも低下する(すなわち、暗くなっていく)。このような動作により、フラッシュ状の強い光を照射することができるので、外乱光に影響されないようにできる。また、間欠動作によって、発光ダイオード12に関する消費電力を抑えることができる。例えば、期間Tは5μs、期間Tは500μs程度であってもよい。
【0059】
このとき、光電流である検出信号210を変換する信号変換部30は、発光ダイオード12が発光する所定時間前にイネーブルとなり、発光した所定時間後にディスエーブルとなることが消費電力抑制の観点からは好ましい。
【0060】
本実施形態の液滴検出装置の制御部は、図5(B)のように、発光部イネーブル信号120がオンである期間Tを含む所定の期間Tだけ、信号変換部イネーブル信号124をオンにする。このことで、信号変換部30に関する消費電力を抑えることができる。なお、図5(B)は図5(A)の期間Pに対応する。
【0061】
ここで、外乱光以外にも、例えば液滴検出装置の設置場所における熱などの影響で信号変換部30からの変換信号310の出力レベルに変動が生じる場合がある。そのような影響を排除して正確な検出を行うために、発光部10による光の照射の前と、照射中の変換信号310を検出して比較することが好ましい。
【0062】
そこで、制御部は、第1の期間(T)における変換信号310である第1の信号だけでなく、第2の期間(T)における変換信号310である第2の信号を取得して、比較を行うことが正確な測定の観点から好ましい。つまり、光照射時のデータである第1の信号だけでなく、光照射が無い状態の出力レベルを把握するための参照値である第2の信号を取得することが好ましい。
【0063】
図5(B)の参照値サンプリング期間は、参照値である第2の信号を取得する期間である。また、データサンプリング期間は、データである第1の信号を取得する期間である。本実施形態の参照値サンプリング期間は、データサンプリング期間の直前に設けられている。なお、データサンプリング期間における第1の信号、参照値サンプリング期間における第2の信号は1度だけサンプリングが行われてもよいが、複数回のサンプリングが行われてもよい。例えば、複数回サンプリングされた第2の信号の平均値を、第1の信号との比較に用いてもよい。また、第1の信号はデータサンプリング期間に複数回サンプリングされて、制御部は、それらのデータが後述する条件を満たした場合にのみ滴下があったと判断してもよい。
【0064】
ここで、正確な測定のために、信号変換部30が動作していないときには、フォトダイオード22(図1参照)のアノードとカソードを短絡させることが好ましい。短絡させることで、外乱光に起因する電荷を除去し、光電流から外乱光の影響による成分を排除できる。このとき、信号変換部30は信号変換部イネーブル信号124がハイレベルのときに動作するので、制御部は、受光部短絡信号122を信号変換部イネーブル信号124の反転信号とすることが好ましい。
【0065】
図6(A)は、図5(B)の参照値サンプリング期間、データサンプリング期間に対応した変換信号310の変化を示している。参照値サンプリング期間における変換信号310、すなわち第2の信号は、図6(A)のVのままである。この例では、1回のサンプリングであっても、複数回のサンプリングであっても第2の信号の値としてVが得られる。
【0066】
そして、データサンプリング期間における変換信号310、すなわち第1の信号は、液滴の有無により変化が異なる。滴下があると、図3(B)および図3(D)に示した入力光が暗くなる変化が、図4(C)のような変換信号310の変化として表れる。ここで、本実施形態の液滴検出装置1の制御部は、変換信号310の変化を複数回サンプリングして、その中に第2の信号の値(V)との差が閾値Vth0以下のものが設定された条件を満たすように含まれている場合に滴下があったと判断する。
【0067】
図6(B)は、データサンプリング期間における変換信号310のサンプリングの様子を示している。なお、図6(B)の期間は図5(B)の期間Pに対応する。図6(B)の例では、制御部は所定の期間であるデータサンプリング期間Tにおいて、S〜S10で示す10回のサンプリングを行っているものとする。つまり、制御部は、第1の信号として10のサンプリング値を受け取る。以下では、各サンプリングで得られた変換信号310(第1の信号)の値を、サンプリングの番号S〜S10を用いて、例えばSの値のように表現する。なお、データサンプリング期間Tは1μs程度であってもよい。
【0068】
制御部は、もし滴下がなければ、例えばSの値と同じ値をデータサンプリング期間Tにおいてずっと受け取ることになる。このとき、Sの値と第2の信号の値(V)との差である比較値は、閾値Vth0より大きい。しかし、図6(B)の例のように滴下がある場合には、制御部は、例えばSの値とSの値のように、比較値が閾値Vth0以下となる複数のデータ(サンプリング値)を得ることができる。そこで、制御部は、比較値が閾値Vth0以下の場合に1滴の液滴が落下したと判断してもよい。閾値Vth0を用いた判断を行うことで、雑音の影響等による誤検出を無くすことができる。
【0069】
さらに、この例のように複数のデータを利用可能な場合には、所定の期間(この例ではデータサンプリング期間T)において、所定の数(例えば2)以上の比較値が閾値Vth0以下であることを条件としてもよい。
【0070】
また、所定の期間(この例ではデータサンプリング期間T)において、連続して所定の数(例えば2)以上の比較値が閾値Vth0以下であることを条件としてもよい。この例では、Sの値とSの値、又はSの値とSの値が連続して、閾値Vth0以下であるのでこの条件も満たす。
【0071】
また、Sの値とSの値のように、所定の時間以上の間をあけて、閾値Vth0以下となることを条件に加えてもよい。これは、図4(C)で(a1)と(a2)の変化の両方を把握した場合に液滴を検出したと判断することに対応する。
【0072】
この例のように、複数の比較値が閾値Vth0以下であることを条件にすることで、より慎重な判断を行うことができる。なお、所定の期間とは、データサンプリング期間Tに限らず、例えば、その半分の期間等であってもよい。また、所定の数とは2以上の数であればいくつでもよい。
【0073】
1.4.制御部の入力段
図7(A)〜図7(C)は、制御部がサンプリング値を得るための入力段の構成例の図とその説明図である。図1〜図6(B)と同じ要素には同じ符号を付しており、説明を省略する。本実施形態の液滴検出装置の制御部はADC(ADコンバーター82)を含み、変換信号310を例えば10ビットのデジタル信号314に変換する。このとき、制御部は例えばこのようなADコンバーターを含むMCUであって、プログラムによって液滴の有無を判断してもよい。
【0074】
ADコンバーター82は、変換信号310をDmin〜Dmaxのデジタル信号314へと変換する。図7(B)は、図4(A)と同じであり、変換信号310の変化の例を表す。そして、図7(C)は、図7(B)に対応するデジタル信号314である。
【0075】
ADコンバーター82は、例えば図6(B)のS〜S10に対応する所定の間隔でサンプリングを行って、デジタル信号314を出力する。そして、制御部は、それぞれのサンプリング値について比較値を求めて、前記の判定を行う。
【0076】
2.その他
これらの例示に限らず、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。
【0077】
例えば、制御部は図7(A)のADコンバーター82に代えて、適切な閾値(例えばVdd/2)と比較するコンパレーターを備えていてもよい。このとき、回路規模を小さくし、さらに消費電力を抑えることが可能である。滴下が無い場合には、発光部が光を照射した第1の期間と光を照射しない第2の期間に応じて、コンパレーターの出力は変化する。例えば、第1の期間では“1”に、第2の期間では“0”になる。一方、滴下がある場合には、第1の期間中に第2の期間と同じ値が生じる。例えば、第1の期間でも第2の期間と同じ値である“0”が生じ、制御部は第1の期間中の“0”を検出することで、滴下があると判断してもよい。このとき、第1の期間中に複数の“0”が生じることを条件とすることで、より慎重な判断が可能になる。
【0078】
また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0079】
1…液滴検出装置、10…発光部、12…発光ダイオード、14…抵抗、16…抵抗、18…キャパシター、20…受光部、22…フォトダイオード、30…信号変換部、40…点滴用バッグ、42…点滴筒、44…液滴、45…中心、46…落下経路、48…輸液チューブ、50…制御部、72…オペアンプ、74…帰還抵抗、76…トランスミッションゲート、78…トランスミッションゲート、82…ADコンバーター、110…光路、112…光束、113…中心部、120…発光部イネーブル信号、122…受光部短絡信号、124…信号変換部イネーブル信号、210…検出信号、310…変換信号、314…デジタル信号、1000…点滴装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を検出する液滴検出装置であって、
液滴が通過する経路に交叉する光を照射する発光部と、
前記発光部から照射された光を入力光とする受光部と、
前記発光部および前記受光部を間欠動作させる制御部と、を含む液滴検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴検出装置において、
前記入力光の変化に応じた信号である検出信号を前記受光部から受け取って変換する信号変換部を含み、
前記信号変換部は、
固定電位である第1の電位が印加される第1の入力端子と、前記検出信号を受け取る第2の入力端子とを備えた比較回路を含み、
前記制御部は、
前記発光部が光を照射しないときに、前記第2の入力端子に前記第1の電位が印加されるように制御する液滴検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の液滴検出装置において、
前記入力光の変化に応じた信号である検出信号を前記受光部から受け取って変換する信号変換部を含み、
前記制御部は、
前記発光部が光を照射した第1の期間と、前記発光部が光を照射しない第2の期間とで、前記信号変換部が少なくとも1回ずつ前記検出信号を受け取るように制御し、
少なくとも前記第1の期間において受け取った前記検出信号に基づく第1の信号と、前記第2の期間において受け取った前記検出信号に基づく第2の信号とを比較した結果に基づいて、前記発光部と前記受光部との間を通過する液滴を検出する液滴検出装置。
【請求項4】
請求項2に記載の液滴検出装置において、
前記制御部は、
前記発光部が光を照射した第1の期間と、前記発光部が光を照射しない第2の期間とで、前記信号変換部が少なくとも1回ずつ前記検出信号を受け取るように制御し、
少なくとも前記第1の期間において受け取った前記検出信号に基づく第1の信号と、前記第2の期間において受け取った前記検出信号に基づく第2の信号とを比較した結果に基づいて、前記発光部と前記受光部との間を通過する液滴を検出する液滴検出装置。
【請求項5】
請求項3乃至4のいずれか1項に記載の液滴検出装置において、
前記制御部は、
前記第1の信号と前記第2の信号との差である比較値が所定の閾値以下の場合に1滴の液滴が通過したと判断する液滴検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液滴検出装置において、
前記制御部は、
前記第1の期間において、前記信号変換部が前記検出信号を複数回受け取り、複数回受け取った前記検出信号の各々に基づいて前記第1の信号を生成するように制御し、
所定の期間において、所定の数以上の前記第1の信号についての前記比較値が閾値以下の場合に、1滴の液滴が通過したと判断する液滴検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液滴検出装置において、
前記制御部は、
前記所定の期間において、前記第1の信号についての前記比較値が、所定の数以上連続して閾値以下の場合に、1滴の液滴が通過したと判断する液滴検出装置。
【請求項8】
請求項2又は4に記載の液滴検出装置において、
前記受光部は、
フォトダイオードを含み、
前記制御部は、
前記発光部が光を照射しないときに、前記フォトダイオードのアノードとカソードを短絡させる液滴検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の液滴検出装置において、
前記制御部は、
前記発光部が光を照射するときに、前記比較回路をイネーブル状態にし、前記フォトダイオードのアノードとカソードを短絡させない液滴検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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