説明

液状ポリブタジエン精製法

【課題】臭気成分を除去した(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエンの提供。
【解決手段】式(I)


[式中、PはGPCによる数平均分子量が500〜10,000であるポリブタジエン又は水素添加ポリブタジエン鎖を表し、X及びXは、それぞれ独立して、酸素原子及び/又は窒素原子を含んでもよいC〜C20の結合基を表し、Yは水素原子、水酸基、カルボキシル基又は(メタ)アクリル基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す]で表される(メタ)アクリル変性ポリブタジエン又は水素添加ポリブタジエンポリマーを製造後、減圧下で反応容器内にガスをバブリングすることにより、臭気成分が0.1重量%以下である(メタ)アクリル変性ポリブタジエン又は水素添加ポリブタジエンを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液状ポリブタジエンの精製法に関し、特に、臭気成分を除去した(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液状ポリブタジエンは、硬化させることによって、耐水・耐湿性、耐薬品性、電気特性(高絶縁耐力、低誘電率、耐アーク性)、透明性に優れ、高い靭性のある物性を示す樹脂となり、様々な用途に利用されている。
【0003】
そのために(水素添加)ポリブタジエンの水酸基末端にアクリロイル基やメタクロイル基を有する化合物を反応させて製造している(特許文献1〜2)。この反応に使用したアクリル酸エチルやメタクリル酸メチル等が(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエン中に臭気成分として残存していた。
【0004】
(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエンは、液状であるために結晶化による不純物の除去ができず、高沸点であるために蒸留によって精製する事も困難であり、また、(メタ)アクリル基を有するために温度を上げ、時間をかけて除去操作を行なうとゲル状になることが知られていた。
また、N−ビニル系ポリマーの水系溶媒中ではバブリングを行なうことで臭気成分を除去できることが知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−45284号公報
【特許文献2】特開2007−211240号公報
【特許文献3】特開2003−119201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエンの製造後、臭気成分を除去するためには、高温、減圧下にしても長時間が必要であり、長時間、高温下にすると(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエンはゲル状になる。
【0007】
本発明の課題は、臭気成分を除去した(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエンを製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために、特開2003−119201号公報の方法を参考に、(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエン中に単にバブリングを行い、臭気成分除去を行なってみたが、十分な効果が得られなかった。該公報の方法は、溶媒で希釈されているためにバブリングによる十分な攪拌効果が期待されるのに対し、(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエンの場合は無溶媒であり、高粘度のため単にバブリングを行なっても効率的に臭気成分を除去できないことが判明した。そこでさらに鋭意研究した結果、減圧下でバブリングをすることにより、真空接触面が大きくなるため、効率的に臭気成分を除去でき、臭気が低減された(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエンを得ることができることが判明した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)臭気成分が0.1重量%以下である、式(I)
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、Pは式(II)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、実線と点線の二重線部分は単結合又は二重結合を表す)で表される繰り返し単位0〜100モル%、及び、式(III)
【0014】
【化3】

(式中、実線と点線の二重線部分は単結合又は二重結合を表す)で表される繰り返し単位100〜0モル%を有し、GPCによる数平均分子量が500〜10,000であるポリブタジエン又は水素添加ポリブタジエン鎖を表し、X及びXは、それぞれ独立して、酸素原子及び/又は窒素原子を含んでもよいC〜C20の結合基を表し、Yは水素原子、水酸基、カルボキシル基又は(メタ)アクリロイルオキシ基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す]で表される(メタ)アクリル変性ポリブタジエン又は水素添加ポリブタジエン、及び、
(2)式(I)
【0015】
【化4】

【0016】
[Pは式(II)
【0017】
【化5】

【0018】
(式中、実線と点線の二重線部分は単結合又は二重結合を表す)で表される繰り返し単位0〜100モル%、及び、式(III)
【0019】
【化6】

【0020】
(式中、実線と点線の二重線部分は単結合又は二重結合を表す)で表される繰り返し単位100〜0モル%を有し、GPCによる数平均分子量が500〜10,000であるポリブタジエン又は水素添加ポリブタジエン鎖を表し、X及びXは、それぞれ独立して、酸素原子及び/又は窒素原子を含んでもよいC〜C20の結合基を表し、Yは水素原子、水酸基、カルボキシル基又は(メタ)アクリル基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す]で表される(メタ)アクリル変性ポリブタジエン又は水素添加ポリブタジエンポリマーを製造後、減圧下で反応容器内にガスをバブリングすることを特徴とする、臭気成分が0.1重量%以下である(メタ)アクリル変性ポリブタジエン又は水素添加ポリブタジエンの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の製法により、臭気成分が除去された(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエンを製造することができ、本発明品を取り扱う時に臭気成分が飛散することを防ぐことができる。
本発明の製造方法により得られる臭気成分が0.1重量%以下の(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエンは、濁りのない透明な液状のものを製造することができるため、光学器械等のように透明性が要求される物品の接着剤、塗料としても有用であり、低誘電率であることから、電子材料やアンテナ材料などの高周波用高分子材料としても有用な材料であり、臭気成分がないことから環境にも優しい。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエンとしては、少なくとも一端に、(メタ)アクリロイルオキシ基を有しているものであれば特に制限されるものではない。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、(水素添加)ポリブタジエンとはポリブタジエン又は水素添加されたポリブタジエンを意味する。
【0023】
(式(I)で表されるポリマー)
式(I)中、X及びXは、それぞれ独立して、酸素原子及び/又は窒素原子を含んでもよいC〜C20の結合基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。
酸素原子及び/又は窒素原子を含んでもよいC〜C20の結合基としては、具体的には、直鎖又は分岐鎖を有する2価のC〜C20のアルキレン基、エーテル結合を有する直鎖又は分岐鎖を有する2価のC〜C20のアルキレン基、式(IV)
【0024】
【化7】

【0025】
(式中、R〜Rはそれぞれ独立して、直鎖又は分岐鎖を有する2価のC〜C10のアルキレン基、C〜Cのアルキル基を置換基として有していても良いC〜Cのシクロアルキレン基、C〜Cのアルキル基を置換基として有していても良いC〜Cの芳香族基、又はそれらの複合した基を表す)で表わされる基等が挙げられる。
【0026】
直鎖又は分岐鎖を有する2価のC〜C20のアルキレン基として、メチレン、エチレン、プロピレン、メチルエチレン、ブチレン、1,2−ジメチルエチレン、ペンチレン、1−メチルブチレン、2−メチルブチレン、ヘキサエチレン、ヘプタエチレン、オクタエチレン、ノナエチレン、デカエチレン等を挙げることができ、エーテル結合を有する直鎖又は分岐鎖を有する2価のC〜C20のアルキレン基として、−(CHO)(CH)−[aは1〜17の整数を表す]、−(CHCHO)(CHCH)−[bは2〜8の整数を表す]、−(CHCHCHO)(CHCHCH)−[cは1〜5の整数を表す]等が挙げられる。
【0027】
式(IV)中の直鎖又は分岐鎖を有する2価のC〜C10のアルキレン基は式(I)の具体例と同様のものを挙げることができ、C〜Cのアルキル基を置換基として有していても良いC〜Cのシクロアルキレン基としては、シクロプロピレン、2−メチルシクロプロピレン、シクロブチレン、2,2−ジメチルシクロブチレン、シクロペンチレン、2,3−ジメチルシクロペンチレン、シクロヘキシレン、1,3,3,−トリメチルシクロヘキシレン、シクロオクチレン等が挙げられ、C〜Cのアルキル基を置換基として有していても良いC〜Cの芳香族基としては、1,4−フェニレン基、2−メチル−1,4−フェニレン基等が挙げられる。
【0028】
上記基の複合した基としては、メチレン−シクロプロピレン、メチレン−シクロペンチレン、メチレン−2,3−ジメチルシクロペンチレン、メチレン−1,3,3,−トリメチルシクロヘキシレン、エチレン−シクロプロピレン、エチレンーシクロヘキシレン、エチレン−3,3,−ジメチルシクロへキシレン、メチレン−シクロプロピレン−メチレン、エチレン−シクロヘキシレン−メチレン、ヘキシレン−シクロヘキシレンーメチレン等が挙げられる。また、これらの順序が入れ替わった基でもよい。
【0029】
式(IV)として、例えば
【0030】
【化8】

【0031】
【化9】

【0032】
(*は接続する位置を表す)を例示することができる。
【0033】
式(I)におけるPは、式(II)及び/又は式(III)を繰り返し単位として有するポリブタジエン鎖又は水素添加ポリブタジエン鎖であり、実線と点線の二重線部分が二重結合の場合は未水素添加のポリブタジエンであり、単結合の場合は水素添加ポリブタジエンを意味する。
また、式(II)で表される1,4−結合繰り返し単位が、二重結合を有する場合には、トランス体、シス体、又はそれらの混合体が存在しうる。
【0034】
式(II)で表される1,4−結合による繰り返し単位と式(III)で表される1,2−結合による繰り返し単位の比率は、各々0〜100モル%であるが、式(III)で表される1,2−結合のものが、モレロ法での測定によれば、80%以上であるものが好ましく、85%以上であるものがより好ましく、90%以上であるものがさらに好ましく、95%以上であるものが特に好ましい。
【0035】
式(I)におけるYは、無置換(水素原子)であってもよいし、置換基を有していてもよく、置換基としては、水酸基、カルボキシル基又は(メタ)アクリロイルオキシ基等を挙げることができ、(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。
【0036】
本発明の(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエンの数平均分子量としては、通常、ポリスチレンを指標として用いたGPC(ゲル濾過)法によると、500〜10000程度であり、1000〜5000であることが好ましい。
ポリマーの重量平均分子量を数平均分子量で割った値は分散度を表している。分散度はその値の小さいほうが分散は狭くなり、分子量が比較的近いポリマーで構成され、全て同一の分子量で構成されるポリマーは分散度が1になる。また、分散度が大きいと分散は広くなり分子量が小さいポリマーから大きいポリマーの混合物で構成されることになり、硬化後の硬化物の強度が弱くなったり、硬化温度が幅広くなったりする。このため、良好なポリマーを得るためには分散度が小さい方が好ましい。本発明の(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエンの分散度は1〜2であり、好ましくは1〜1.5であり、さらに好ましくは1〜1.3である。
【0037】
水素添加ポリブタジエンは、ポリブタジエンの二重結合を水素で還元して製造されるが、この時の水素添加率は全二重結合の80%以上であるが、好ましくは、90%以上であり、さらに好ましくは99%以上であり、さらに好ましくは99.5%である。残存する二重結合はヨウ素の付加反応にて定量分析(以下、「ヨウ素価」という)を行うことができるが、ヨウ素価が100以下であり、好ましくは50以下であり、さらに好ましくは25以下であり、さらに好ましくは15以下である。
【0038】
(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエンの(メタ)アクリル導入率とは、末端に水酸基を導入した後の全ての水酸基に対して(メタ)アクリル基の比率を百分率で表した値であり、本発明の(メタ)アクリル変性水素添加ポリブタジエンの(メタ)アクリル導入率は80%以上であり、好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。
【0039】
(式(I)で表される(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエンの製造方法)
本発明の末端(メタ)アクリル変性ポリブタジエン又は末端(メタ)アクリル変性水素添加ポリブタジエンは、例えば、下記に示す方法に従って製造することができる。
【0040】
すなわち、式(V)
【0041】
【化10】

【0042】
(式中、Rはアルキル基を表す)で表される(メタ)アクリレート及び重合体末端にヒドロキシル基を有するポリブタジエン又は水素添加ポリブタジエンを原料として、触媒の存在下又は非存在下で反応させることよって製造することができる。
上記(メタ)アクリレート化合物の使用量は、重合体末端にヒドロキシル基を有するポリブタジエン又は水素添加ポリブタジエンのヒドロキシル基に対して、0.2〜20倍モルの範囲である。
【0043】
重合体末端にヒドロキシル基を有するポリブタジエン又は水素添加ポリブタジエンは、上記式(II)及び/又は式(III)で表される繰り返し単位を有し、重合体末端の全部又は一部がヒドロキシル基を有する基で修飾されたものである。
【0044】
ポリブタジエンの製造法としては、例えば、(1)ブタジエンを溶液中、チーグラー触媒、リチウム触媒やラジカル重合開始剤により重合させる方法、(2)ブタジエンを溶液中でナトリウム触媒の存在下に重合させる方法があり、水素添加ポリブタジエンの製造法としては、上記(1)又は(2)で得られる繰り返し単位を有する高分子を水素添加する方法等が挙げられる。(1)の方法によれば、ブタジエンが主として1,4−結合で重合した生成物を得ることができ、(2)の方法によれば、ブタジエンが主として1,2−結合で重合した生成物を得ることができる。
【0045】
ポリブタジエン又は水素添加ポリブタジエンの重合体末端にヒドロキシル基を導入する方法としては、例えば、ブタジエンをアニオン重合させて得られる反応液にエポキシ化合物を添加する方法が挙げられる。ここで用いることのできるエポキシ化合物としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
上記(メタ)アクリレート化合物と重合体末端にヒドロキシル基を有するポリブタジエン又は水素添加ポリブタジエンとの反応は、無溶媒又は適当な不活性溶媒中で行なわれる。反応に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル等のエステル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の飽和炭化水素系溶媒;ジメチルスルホキシド;ヘキサメチルフォスホラストリアミド(HMPT)、ヘキサメチルフォスホロアミド(HMPA)等のリン酸アミド系溶媒等が挙げられる。
反応温度は、通常0℃〜200℃、好ましくは室温〜150℃の範囲であり、反応は通常数分〜数時間で完結する。
【0046】
(減圧下でのバブリング)
上記のようにして(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエンを製造後、反応容器内を0.1〜20KPa減圧、好ましくは0.5〜10KPaとし、容器内に導入したバブリングチューブよりガスを導入してバブリングを行う。
バブリング量は、樹脂容量に対して毎分0.005〜0.5倍量、好ましくは0.02〜0.3倍量のガスを導入して行う。
【0047】
減圧下でバブリングを行うには、例えば、以下の様にして行うことができる。
反応容器内の液状樹脂の下方部にバブリング用チューブの先を浸し、液状樹脂の攪拌を行いながら、減圧を始め、バブリング用チューブの先からガスを発生させながら、攪拌を行い真空接触面を増やす。ロータリーエバポレーターを使用する場合にも、同様に、液状樹脂の下方部にバブリング用チューブの先を浸し、ガスを発生させながら、フラスコを回転させて真空接触面を増やす。
【0048】
バブリングに使用するガスは、(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエンと反応を起こさなければ、特に限定されない。具体的には、不活性ガスや空気を例示することができる。不活性ガスとは、ヘリウムガス、アルゴンガスなどの希ガスや、二酸化炭素ガス、窒素ガスなどを意味する。使用するガスは1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
また、バブリングに使用するガスには、酸素ガスを混合してもよい。(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエンを含む液中にラジカル物質が存在する場合、酸素ガスを混合することにより、ラジカルをトラップすることができる。また、バブリングに使用するガスは、使用前に水分を除去しておくのが好ましい。
バブリングする量は特に限定されるものではなく、反応液のボリュームや反応装置の大きさ、形によって最適な量を選ぶことができる。バブリングの泡の大きさは特に限定されるものではなく、ノズル形状、ガス送風圧力等の条件により大きさが変化するが、より小さいほうが好ましい。バブリングする位置は反応液のどの位置であってもよいが、好ましくは、反応液の下層であり、さらに好ましくは攪拌機の真下である。
【0049】
(臭気成分)
本発明により、(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエン中に含まれる臭気成分は0.1重量%以下となる。
臭気成分は物質として特に限定されるものではなく、人間が(メタ)アクリル変性(水素添加)ポリブタジエンを取り扱う上で臭気により不快な思いをする原因物質を示す。
末端水酸基を有する(水素添加)ポリブタジエンにエステル交換反応にて(メタ)アクリル基を導入する場合は、メタクリル酸アルキルエステルやアクリル酸アルキルエステルを使用するので、主な臭気成分は原料のメタクリル酸アルキルエステルやアクリル酸アルキルエステルのほか、その分解物である、メチルアルコール、エチルアルコールなどのアルキルアルコール、アクリル酸、メタクリル酸などである。
また、臭気成分の測定は、パックドカラム、キャピラリーカラムのいずれかを用いてガスクロマトグラフィーにより行うことができるが、キャピラリーカラムが好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の記録材料について実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明は必ずしもこれだけに限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
減圧弁及びバブリング管の付いた5L反応容器に、末端がヒドロキシエチル化された1,2−ポリブタジエン(日本曹達社製G−3000)3002gとアクリル酸エチル793gを投入し、115〜120℃にて5時間反応させ、末端アクリル変性1,2−ポリブタジエンを製造した。液状物中の残存アクリル酸エチル及び副生物であるエタノールの量をガスクロマトグラフィーにより測定後、真空ポンプにより、反応容器内を減圧にし、乾燥空気をバブリング管より送り込んでバブリングした。減圧開始後1時間ごとにアクリル酸エチル及びエタノールの残存量を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
(実施例2、3及び比較例1)
同様に、末端がヒドロキシエチル化された1,2−ポリブタジエン(日本曹達社製G−3000)とアクリル酸エチルを用いて末端アクリル変性1,2−ポリブタジエンを製造した後、減圧速度又は乾燥空気流入量を変えて実施し、アクリル酸エチル及びエタノールの残存量を測定した。その結果を表1に示す。 なお、比較例1は減圧のみの場合である。
【0053】
【表1】

【0054】
なお、臭気成分の測定をおこなったガスクロマトグラフィーにおいて、アクリル酸エチルの検出限界は53ppmであり、エタノールの検出限界は49ppmであった。
【0055】
(実施例4)
減圧弁及びバブリング管の付いた5L反応容器に、末端がヒドロキシエチル化された1,2−ポリブタジエン(日本曹達社製GI−3000)107.45gとアクリル酸エチル28.39gを投入し、115〜120℃にて5時間反応させ、末端アクリル変性1,2−ポリブタジエンを製造した。液状物中の残存アクリル酸エチル及び副生物であるエタノールの量をガスクロマトグラフィーにより測定後、真空ポンプにより、反応容器内を減圧にし、乾燥空気をバブリング管より流入量60mL/minにて送り込んでバブリングした。アクリル酸エチル及びエタノールの残存量を測定した。その結果を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
減圧開始後3時間後の測定時点でアクリル酸エチル及びエタノールは検出されなかった。
【0058】
(実施例5)
実施例1と同様に、末端がヒドロキシエチル化された1,2−ポリブタジエン(日本曹達社製G−3000)とアクリル酸エチルを用いて末端アクリル変性1,2−ポリブタジエンを製造した後、減圧弁及びバブリング管の付いた2L反応容器に、上記生成物863gを入れて反応容器内を減圧にし、窒素をバブリング管より流入量200mL/minにて送り込んでバブリングした。減圧開始後1時間ごとにアクリル酸エチル及びエタノールの残存量を測定した。その結果を表3に示す。
【0059】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気成分が0.1重量%以下である、式(I)
【化1】

[式中、Pは式(II)
【化2】

(式中、実線と点線の二重線部分は単結合又は二重結合を表す)で表される繰り返し単位0〜100モル%、及び、式(III)
【化3】

(式中、実線と点線の二重線部分は単結合又は二重結合を表す)で表される繰り返し単位100〜0モル%を有し、GPCによる数平均分子量が500〜10,000であるポリブタジエン又は水素添加ポリブタジエン鎖を表し、X及びXは、それぞれ独立して、酸素原子及び/又は窒素原子を含んでもよいC〜C20の結合基を表し、Yは水素原子、水酸基、カルボキシル基又は(メタ)アクリルロイルオキシ基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す]で表される(メタ)アクリル変性ポリブタジエン又は水素添加ポリブタジエン。
【請求項2】
式(I)
【化4】

[式中、Pは式(II)
【化5】

(式中、実線と点線の二重線部分は単結合又は二重結合を表す)で表される繰り返し単位0〜100モル%、及び、式(III)
【化6】

(式中、実線と点線の二重線部分は単結合又は二重結合を表す)で表される繰り返し単位100〜0モル%を有し、GPCによる数平均分子量が500〜10,000であるポリブタジエン又は水素添加ポリブタジエン鎖を表し、X及びXは、それぞれ独立して、酸素原子及び/又は窒素原子を含んでもよいC〜C20の結合基を表し、Yは水素原子、水酸基、カルボキシル基又は(メタ)アクリルロイルオキシ基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す]で表される(メタ)アクリル変性ポリブタジエン又は水素添加ポリブタジエンポリマーを製造後、減圧下で反応容器内にガスをバブリングすることを特徴とする、臭気成分が0.1重量%以下である(メタ)アクリル変性ポリブタジエン又は水素添加ポリブタジエンの製造方法。

【公開番号】特開2011−162776(P2011−162776A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3913(P2011−3913)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】