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液状体滴下用ノズル
説明

液状体滴下用ノズル

【課題】 高強度で耐摩耗性に優れ、長期にわたり精度良く、かつ高密度に液状体の滴下を行なうことが可能であるとともに、生物試料の吸着を有効に防止して精度のよい検出を行なうことが可能な液状体滴下用ノズルを提供すること。
【解決手段】 セラミックスから成る柱状体1の一端部の外径を先端ほど漸次小さくなるようにし、一端部の先端から柱状体1の軸方向に切り込み1aを形成するとともに切り込み1aの終点部の幅を大きくして液状体を溜める貯留部3を形成し、貯留部3に保持された液状体を、切り込み1aを通過させて切り込み1aの開口部から滴下するための液状体滴下用ノズルにおいて、切り込み1aの内面から一端部の外面にかけて連続した金属または金属窒化物から成るコーティング層2を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はDNA断片やオリゴヌクレオチドなどの生物試料の配列を測定するための検出用基板に測定試料のスポットを形成するためのノズルに関し、より詳細には蛍光検出法による検出用基板へ良好にスポットを形成することが可能な液状態滴下用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
多様な生物の遺伝子機能を解析するためにマイクロアレイの技術開発が進んでいるが、このマイクロアレイへのプローブDNAのスポットはスポッティングピンと呼ばれるノズルとその内部に配されたノズル軸線方向に往復運動可能なスタンピングピンによってスライドガラスやシリコンに点状に形成される。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、このようなスポッティングピンによってマイクロアレイのミクロ配列形成方法が述べられている。また特許文献2には、このようなスポッティングピンの操作中の洗浄方法が述べられている。また、特許文献3にはこのようなスポッティングピンのガイド支持体を工夫することにより、耐久性や機能を高める方法が述べられている。
【特許文献1】特開2004−325421号公報
【特許文献2】特表平10−503841号公報
【特許文献3】特開2003−21640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のスポッティングピンはノズル部分も金属製またはガラス製であり、このノズル部分の耐摩耗性が劣るため、使用や取り付けに際してノズル部分が曲がったり、折れたりするため、マイクロアレイへの生物試料のプローブDNAのスポットを長期にわたって精度よく、かつ高密度に形成することができないという問題点がある。
【0005】
一方、耐摩耗性が優れ、且つ、高強度のために折れたり曲がったりしにくい材料としてはアルミナやジルコニアなどのセラミックスが一般的に知られている。しかしながら、これらのセラミックスは一般的に生物試料の吸着が大きく、生物試料を含む液状体から生物試料の減少を生じさせるため、点状形成されたスポットに生物試料がほとんど残存せず、検出精度が低くなるという問題点を有していた。
【0006】
よって、本発明は高強度で耐摩耗性に優れ、長期にわたり精度良く、かつ高密度に液状体の滴下を行なうことが可能であるとともに、生物試料の吸着を有効に防止して精度のよい検出を行なうことが可能な液状体滴下用ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液状体滴下用ノズルは、セラミックスから成る柱状体の一端部の外径を先端ほど漸次小さくなるようにし、前記一端部の先端から前記柱状体の軸方向に切り込みを形成するとともに該切り込みの終点部の幅を大きくして液状体を溜める貯留部を形成し、該貯留部に保持された前記液状体を、前記切り込みを通過させて前記切り込みの開口部から滴下するための液状体滴下用ノズルにおいて、前記切り込みの内面から前記一端部の外面にかけて連続した金属または金属窒化物から成るコーティング層を形成したことを特徴とする。
【0008】
本発明の液状体滴下用ノズルにおいて好ましくは、前記コーティング層をクロム、チタン、ニッケル−クロム合金、4A族元素の窒化物、および5A族元素の窒化物の少なくとも一種で形成したことを特徴とする。
【0009】
本発明の液状体滴下用ノズルにおいて好ましくは、前記切り込みの内面に形成されたコーティング層の表面の算術平均粗さRaを30〜100nmとしたことを特徴とする。
【0010】
本発明の液状体滴下用ノズルにおいて好ましくは、前記切り込みの内面に形成されたコーティング層の表面の算術平均粗さRaを前記一端部の外面に形成されたコーティング層の表面の算術平均粗さRaよりも大きくしたことを特徴とする。
【0011】
本発明の液状体滴下装置は、上記本発明の液状体滴下用ノズルと、前記貯留部に前記液状体を供給する供給手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液状体滴下用ノズルは、切り込みの内面から柱状体の一端部の外面にかけて連続した金属または金属窒化物から成るコーティング層を形成したことから、柱状体が折れたり曲がったりしにくく、また耐摩耗性も良いため、長期にわたり精度良く、かつ高密度に液状体の滴下を行なうことが可能となる。
【0013】
また、生物試料がセラミックスに接するのを有効に防止できる。このため、生物試料がセラミックスに吸着されて液状体中の生物試料が減少するのを有効に防止することができ、生物試料の濃度を良好に維持した状態でスポットを点状形成することができ、きわめて精度の高い測定を行なうことが可能となる。
【0014】
更に本発明の液状体滴下用ノズルにおいて好ましくは、コーティング層をクロム、チタン、ニッケル−クロム合金、4A族元素の窒化物、および5A族元素の窒化物の少なくとも一種で形成したことから、硬いコーティング層が得られるため、耐摩耗性は高い状態が維持される。また、生物試料の取り扱いにおける耐薬品性も高い。
【0015】
更に本発明の液状体滴下用ノズルにおいて好ましくは、切り込みの内面に形成されたコーティング層の表面の算術平均粗さRaを30〜100nmとしたことから、表面粗さによる毛管現象により、液状体を良好に保持しながらマイクロアレイ等の検査用基板上に液状体を高い繰り返し精度でスポットを供給することが可能となり、スポット形成の高密度化をより向上させることができる。
【0016】
更に本発明の液状体滴下用ノズルにおいて好ましくは、切り込みの内面に形成されたコーティング層の表面の算術平均粗さRaを柱状体の一端部の外面に形成されたコーティング層の表面の算術平均粗さRaよりも大きくしたことから、切り込みの内面の比較的粗いコーティング層の表面で液状体を良好に保持してスポット形成に適した体積の液滴を切り込みの開口部に形成するとともに、この液滴が適度な大きさになった時点で柱状体の一端部の外面に形成された比較的滑らかな表面のコーティング層に液状体を濡れ広がらすことによって所望の体積の液滴を滴下させることができる。すなわち、液滴が小さすぎたり、過剰に大きくなったりすることなく、所望の大きさのスポットを高い繰り返し精度で形成することが可能となる。
【0017】
本発明の液状体滴下装置は、上記本発明の液状体滴下用ノズルと、貯留部に液状体を供給する供給手段とを具備することから、供給手段によって切り込みの開口部から貯留部へ毛管現象によりきわめて高速に液状体を液状体滴下用ノズルに保持させることができるとともに、この保持した液状体のスポットを検査用基板上に高密度に形成することによって液状体適用ノズルの移動距離を短縮でき、検査工程におけるスポット形成時間の短縮化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に本発明の液状体滴下用ノズルを添付の図面に従って詳細に説明する。図1に本発明の液状体滴下用ノズルの一例の断面図を示した。また、図2に図1の液状体滴下用ノズルの正面図を示し、図3に図1の液状体滴下用ノズルの斜視図を示した。これらの図において、1はセラミックスから成る柱状体、1aは切り込み、2はコーティング層、3は貯留部である。
【0019】
柱状体1は、一端部の外径を先端ほど漸次小さくなっており、この一端部の先端から柱状体1の軸方向に切り込み1aが形成されている。そして、この切り込み1aの終点部の幅が切り込み1aの残部よりも大きくされており、この幅の大きい部位が液状体を溜める貯留部3として機能する。これにより、貯留部3に保持された液状体を、毛管現象を利用して切り込み1aを通過させた後、切り込み1aの開口部から吐出させて所望の体積の液滴を切り込み1aの開口部に形成することができる。そして、この液滴をマイクロアレイ等の検査用基板上に滴下することにより、液状体のスポットが形成される。
【0020】
柱状体1は機械工業的に用いられるセラミックスであれば何でも良いが、特にジルコニア系のセラミックス(以下、ジルコニアセラミックスという)は強度や弾性や耐摩耗性や靱性や価格の点からみて好適である。
【0021】
柱状体1に形成された切り込み1aは点状形成されたスポットの直径や液状体の粘度などに応じて幅(柱状体1の内壁面間の間隔)が変わるが50〜200μm程度の幅が好適である。また、液状体保持のための貯留部3の幅(柱状体1の内壁面間の間隔)はなるべく大きな方がよいが、毛管現象による保持力や蒸発の影響も鑑み100〜400μm程度が好適である。
【0022】
本発明の液状体滴下用ノズルは、切り込み1aの内面から柱状体1の一端部の外面にかけて連続した金属または金属窒化物から成るコーティング層2が形成されている。これにより、柱状体1が折れたり曲がったりしにくく、また耐摩耗性も良いため、長期にわたり精度良く、かつ高密度に液状体の滴下を行なうことが可能となる。
【0023】
また、生物試料がセラミックスに接するのを有効に防止できる。このため、生物試料がセラミックスに吸着されて液状体中の生物試料が減少するのを有効に防止することができ、生物試料の濃度を良好に維持した状態でスポットを点状形成することができ、きわめて精度の高い測定を行なうことが可能となる。
【0024】
コーティング層2は金属または金属窒化物から成り、液状体に対して耐性があるとともに柱状体1に対する密着性に優れたものであれば、どのような金属または金属窒化物でもよい。また、コーティング層2の厚みとしては0.1から0.5μmが好適である。コーティング層2の厚みが0.1μm未満であると均一にコーティング層2を形成するのが困難になりやすい。一方、0.5μmを超えると柱状体1とコーティング層2との熱膨張係数差による応力によりコーティング層2の剥離が生じやすくなる。
【0025】
好ましくは、コーティング層2がクロム、チタン、ニッケル−クロム合金、4A族元素の窒化物、および5A族元素の窒化物の少なくとも一種から成るのがよい。これにより、硬いコーティング層2が得られるため、耐摩耗性は高い状態が維持される。また、生物試料の取り扱いにおける耐薬品性も高い。
【0026】
また好ましくは、コーティング層2のうち切り込み1aの内面に形成されているものの表面の算術平均粗さRaが30〜100nmであるのがよい。これにより、表面粗さによる毛管現象により、液状体を良好に保持しながらマイクロアレイ等の検査用基板上に液状体を高い繰り返し精度でスポットを供給することが可能となり、スポット形成の高密度化をより向上させることができる。
【0027】
更に本発明の液状体滴下用ノズルにおいて好ましくは、切り込み1aの内面に形成されたコーティング層2の表面の算術平均粗さRaを柱状体1の一端部の外面に形成されたコーティング層2の表面の算術平均粗さRaよりも大きくするのがよい。これにより、柱状体1の内面の比較的粗いコーティング層2の表面で液状体を良好に保持してスポット形成に適した体積の液滴を開口部に形成するとともに、この液滴が適度な大きさになった時点で開口部側の外面に形成された比較的滑らかなコーティング層2に液状体を濡れ広がらすことによって所望の体積の液滴を滴下させることができる。すなわち、液滴が小さすぎたり、過剰に大きくなったりすることなく、所望の大きさのスポットを高い繰り返し精度で形成することが可能となる。
【実施例】
【0028】
本発明の液状体滴下用ノズルの実施例を以下に説明する。
【0029】
スポッターに取り付けられるように端部の成形を施したジルコニアセラミックスの円柱状の丸棒の中程に丸棒に直交する方向に直径が200μmの貫通穴を開け、液状体が溜まる貯留部3とした。
【0030】
次に貯留部3から一方の先端に向かって溝入れ加工を施し、幅が100μmの切り込み1aを形成した。次に溝入れされた先端部を研磨して先端をとがらせ柱状体1を形成した。先端部は直径80μmの円錐形とした。最後に、仕上げ研磨を行うが、所定の表面荒さとなるまでそれぞれの部位毎に磨き、コーティング後の表面荒さをコントロールした。
【0031】
次に有機溶剤による洗浄とアルコール乾燥を行い、コーティング層2の成膜前の処理とした。次にイオンプレーティング装置にて種々の金属から成るコーティング層2を約0.3μmの厚さで成膜した。なお、成膜の際は、柱状体1を自公転するパラボラに取り付けて行なった。その際、柱状体1は、切り込み1aのある先端がターゲット方向に向けて取り付けられ、反対側の先端付近がパラボラに設置されている自転可能なチャッキング治具にセットされた。なお、チャッキング治具はターゲットから15゜ずれた方向を向いて自転するのでチャッキング部以外には全て成膜される。他の材料を用いたサンプルも同様に製作した。
【0032】
成膜された液状体滴下用ノズルを洗浄後、スタンピングピンを介してスポッターに取り付け、生物試料のスポットの点状形成工程に供した。
【0033】
試験はAPS(3−アミノトリエトキシシラン)をコートしたクラウンガラス上にほぼ同一形状のスポットが何回形成されるかをカウントして行った。スポットする液状体はオリゴDNAの3‘にCy3蛍光標識を行なった試料を0.6μMの濃度にした溶液を用いた。スポットの形状はマイクロアレイ用の蛍光測定装置を用い、蛍光強度の強さや分布によって判断した。
【0034】
表1に実施結果を示した。評価は、ほぼ同一形状のスポットが何回まで形成されるか、スポットの形状が安定しているかおよび、蛍光強度の3項目を優、良、可、不可の4段階評価で行ない、評価3項目の最低の評価を総合評価での評価とした。なお、4段階評価の判断基準としては、スポット回数が1〜500回を不可、501〜1000回を可、1001〜2000回を良、2001回以上を優とした。
【0035】
滴下用ノズルの切り込み1aの内面のRaが30nm〜100nmで、かつ内面のRaが外面のRaより大きい範囲(No.2〜4、6、9〜14)では、優れたスポット回数で、優れたスポット形状となっており、最も優れた結果となった。
【0036】
滴下用ノズルの切り込み1aの内面のRaが30nm未満のもの(No.1)だと液状体の保持力が下がり、ノズルの上下動作により、液状体が垂れたりするためにスポット回数が減少する傾向がある。
【0037】
また、滴下用ノズルの切り込み1aの内面のRaが100nmを越えるもの(No.4)では液状体の保持力が上がりすぎるためにノズルの先端に液状体が十分供給されないためにスポット回数が減少する傾向がある。
【0038】
また、滴下用ノズルの切り込み1aの内面のRaがノズルの外面のRaよりも大きくなっていない範囲(No.1、No.7、No.8)ではノズルの外面の毛管現象が相対的に大きくなり、液状体がノズルの外面に回り込みやすくなって、スポット形状が多少不安定になりやすい傾向がある。
【0039】
また、コート膜は窒化ハフニウムを主として評価したが、クロミウム、チタニウム、ニッケルクロム、窒化タンタル、窒化チタンもほぼ同様に優れた蛍光強度を得た(No.1〜14)のに対し、コート膜を形成していない場合には、蛍光強度が弱く不可であった(No.15〜18)。
【0040】
また、セラミックスはジルコニアセラミックスを主としてみたがアルミナでも優れた結果を得た(No.14)。
【表1】

【0041】
なお、本発明は上述の最良の形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことは何等差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の液状体滴下用ノズルの実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】図1の液状体滴下用ノズルの正面図である。
【図3】図1の液状体滴下用ノズルの斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1:柱状体
1a:切り込み
2:コーティング層
3:貯留部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスから成る柱状体の一端部の外径を先端ほど漸次小さくなるようにし、前記一端部の先端から前記柱状体の軸方向に切り込みを形成するとともに該切り込みの終点部の幅を大きくして液状体を溜める貯留部を形成し、該貯留部に保持された前記液状体を、前記切り込みを通過させて前記切り込みの開口部から滴下するための液状体滴下用ノズルにおいて、前記切り込みの内面から前記一端部の外面にかけて連続した金属または金属窒化物から成るコーティング層を形成したことを特徴とする液状体滴下用ノズル。
【請求項2】
前記コーティング層をクロム、チタン、ニッケル−クロム合金、4A族元素の窒化物、および5A族元素の窒化物の少なくとも一種で形成したことを特徴とする請求項1記載の液状体滴下用ノズル。
【請求項3】
前記切り込みの内面に形成されたコーティング層の表面の算術平均粗さRaを30〜100nmとしたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の液状体滴下用ノズル。
【請求項4】
前記切り込みの内面に形成されたコーティング層の表面の算術平均粗さRaを前記一端部の外面に形成されたコーティング層の表面の算術平均粗さRaよりも大きくしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の液状体滴下用ノズル。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の液状体滴下用ノズルと、前記貯留部に前記液状体を供給する供給手段とを具備することを特徴とする液状体滴下装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−308309(P2006−308309A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128074(P2005−128074)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】