説明

液状化実験装置及び液状化実験方法

【課題】液状化現象を確実に定性的に体験でき、学習者に正しい液状化現象前後のイメージを与えることができ、しかもコンパクトで可搬性がある液状化実験装置を提供する。
【解決手段】水と砂とを含んだサンプル土102の液状化実験装置100であって、サンプル土102を収容する容器104と、容器104に振動を付与する振動付与部106と、振動付与部106が出力する振動波形を制御する制御部108とを備える。また、水と砂との割合を計測する計測部110を更に備える。更に、制御部108は、振動付与部106が出力する振動波形を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と砂とを含んだサンプル土の液状化実験装置及び液状化実験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地盤の上層部(土壌)は土、砂粒、水、空気などで構成される。砂粒と砂粒との間隙は水、空気などにより充填されている。地盤の揺れによって砂粒が再配置され、間隙が砂粒で密に充填されることで間隙にあった水が絞り出されることにより、粒子間の摩擦が失われ、粒子が懸濁状(液状)になる。その際、地上の建物は倒壊し、地中の埋設管や地下室などは地表に浮き上がることになる。地震発生時、海岸や川付近の比較的地盤がゆるい地域においてみられる液状化現象は、このようなメカニズムで発生する。
【0003】
近年、科学教育や防災教育が活発になり、地震発生時の地盤の液状化現象を説明する機会が増している。地盤の液状化現象を説明するには、液状化現象を疑似体験することが有効であり、液状化現象を再現し得る装置が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、液状化現象発生前の地盤(サンプル土)を迅速に形成し得る液状化実験装置が開示される。液状化実験装置が備えた水位調整タンクを上下することで水位を上昇させ、緩い砂層を形成し、液状化現象発生前のサンプル土を形成する。さらに下降させることにより、液状化の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−52143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の液状化実験装置では、液状化現象発生のタイミングを制御することが困難である。液状化現象発生の有無、液状化現象発生のタイミングは、液状化実験装置を操作する者の経験や勘に依存する。また、地下水位の上昇を擬似再現し液状化現象発生前のサンプル土を形成するため、複数の容器、水を蓄えた水位調整タンク、水中ポンプを備え、装置構成が複雑になる。従って、特許文献1の液状化実験装置は、簡易に扱え、搬送し易いことが求められる科学・防災教育的な用途には不向きである。
【0007】
本発明は、液状化現象を確実に定性的に体験でき、学習者に正しい液状化現象前後のイメージを与えることができ、しかもコンパクトで可搬性がある液状化実験装置及び液状化実験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る液状化実験装置の特徴的な構成は、水と砂とを含んだサンプル土の液状化実験装置であって、サンプル土を収容する容器と、容器に振動を付与する振動付与部と、振動付与部が出力する振動波形を制御する制御部とを備える。
【0009】
背景技術の項目で説明したように、従来の液状化実験装置は、液状化現象発生のタイミングを制御することができず、液状化現象発生の有無、液状化現象発生のタイミングは、液状化実験装置を操作する者(学習者)の経験や勘に依存していた。従って、本来未熟である学習者の操作では、振動状況によって異なる液状化現象を体験することができなかった。
【0010】
一方、本発明の液状化実験装置によれば、振動付与部がサンプル土の収容された容器に振動を付与するにあたり、振動付与部が出力する振動波形を制御することができる。その結果、液状化現象発生条件を制御し得、振動状況によって異なる液状化現象を体験することができる。更に、本発明の液状化実験装置によれば、構成が簡易なため、科学教育や防災教育の現場に持ち運びが容易である。また、学習者自らが模型を使って町風景を再現し、模型構造物の倒壊・沈下・浮上を実際に確認でき、地表面に地下水が湧出して冠水状況をも確認できることから、液状化現象を定性的に体験し得る。従って、学習者は新しい体験を実感しながら液状化現象のメカニズムを習得することができ、学習効果を上げることができる。
【0011】
本発明の液状化実験装置の好適な態様によれば、水と砂との割合を計測する計測部を更に備える。その結果、液状化現象発生に求められる振動とサンプル土の含水比との関係を認識し得る。又、サンプル土の含水比に応じて振動付与部が出力する振動波形を制御できるので、確実に液状化現象を発生させることができる。更に、サンプル土の含水比に応じた液状化現象発生のタイミングを制御し得る。
【0012】
本発明の液状化実験装置の好適な態様によれば、制御部は、振動付与部が出力する振動波形を変更する。その結果、液状化現象発生の有無、液状化現象発生のタイミングをより柔軟に制御することができる。
【0013】
本発明の液状化実験装置の好適な態様によれば、複数の振動パターンを記憶する記憶部を更に備え、制御部は、複数の振動パターンのうちの少なくとも一つの振動パターンに基づいた振動波形を振動付与部に出力させる。例えば、記憶部に過去に発生した地震の振動を示す振動パターンを記憶させておくことで、過去に発生した地震動による液状化特性を比較検討できる。その結果、過去の地震動による液状化現象を疑似体験し得、学習効果を更に高めることができる。
【0014】
本発明の液状化実験装置の好適な態様によれば、容器は、少なくとも第1収容部と第2収容部とを含み、第1収容部におけるサンプル土と第2収容部におけるサンプル土との物理的性質は異なる。第1収容部のサンプル土と第2収容部のサンプル土との物理的性質が異なる場合には、第1収容部と第2収容部とに付与する振動を同一とした場合、第1収容部のサンプル土と第2収容部のサンプル土とで異なる液状化現象を同時に比較しながら体験し得る。その結果、学習効果を更に高めることができる。
【0015】
上記課題を解決するため、本発明に係る液状化実験方法の特徴構成は、水と砂とを含んだサンプル土の液状化実験方法であって、サンプル土に振動を付与する振動付与工程と、サンプル土の振動を制御する制御工程とを包含する。
【0016】
本発明に係る液状化実験方法によれば、上記説明した本発明の液状化実験装置と同様の作用効果を奏する。すなわち、本発明の液状化実験方法によれば、サンプル土に振動を付与する振動付与工程と、サンプル土の振動を制御する制御工程とを実行することにより、液状化現象発生条件を制御し得、振動状況によって異なる液状化現象を体験することができる。また、学習者自らが模型を使って町を再現し、液状化現象を定性的に体験し得るので、楽しみながら液状化現象のメカニズムを習得することができ、学習効果を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1に係る液状化実験装置を示す模式図である。
【図2】振動付与部の振動機構の詳細を示す模式図である。
【図3】液状化現象発生の前後の容器の断面を示す模式図である。
【図4】記憶部に記憶された振動パターンの例を示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態2に係る液状化実験装置を示す模式図である。
【図6】本発明の実施例による実験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1から図6を参照して、本発明の液状化実験装置及び液状化実験方法に関する実施形態を説明する。本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図せず、当該構成と均等な構成も含む。
【0019】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る液状化実験装置100を示す模式図である。液状化実験装置100は、水と砂とを含んだサンプル土102の液状化現象を実験する装置である。液状化実験装置100は、サンプル土102を収容する容器104と、容器104に振動を付与する振動付与部106と、振動付与部106が出力する振動波形を制御する制御部108とを備える。サンプル土102の表面に模型Aが配置され、サンプル土の中に模型Bが配置されている。振動付与部106により容器104に振動が付与されると、容器104に収容されているサンプル土102も振動する。サンプル土102の振動によって液状化現象が発生し、模型Aはサンプル土102の表面で傾き、模型Bはサンプル土102の表面に浮かび上がる。
【0020】
サンプル土102として、例えば、豊浦砂、ケイ砂、ホウ砂等を使用することができる。また、容器104は、液状化現象を外部から観察できるように、ガラス、アクリル樹脂等の透明の材質で構成される。ただし、実験中の振動に耐え得るように、強化ガラスや強化プラスチック等の強化品を使用することが好ましい。
【0021】
制御部108は、振動付与部106が出力する振動波形を変更する。制御部108は、複数の振動パターンを記憶する記憶部112と、複数の振動パターンから少なくとも一つの振動パターンを選択するスイッチ114とを備える。例えば、制御部108は、選択されたスイッチ114に応じて、複数の振動パターンのうちの少なくとも一つの振動パターンで振動付与部106が出力する振動波形を制御する。例えば、記憶部112に過去に発生した地震の振動を示す振動パターンを記憶させておくことで、過去に発生した液状化現象を再現できる。その結果、過去の地震時に発生した液状化現象を疑似体験し得、学習効果を更に高めることができる。制御部108は、液状化実験装置100に専用の装置としてもよいが、汎用のパーソナルコンピュータで構築することも可能である。また、制御部108に内蔵される記憶部112は、ハードディスクやフラッシュメモリ等により構成される。なお、記憶部112に記憶された振動パターンの詳細は、図4を参照して後述される。
【0022】
液状化実験装置100は、水と砂との割合を計測する計測部110を更に備える。計測部110は、制御部108に電気的に接続された状態で、サンプル土102に突っ込まれている。計測部110は、例えば含水率計である。相対的な水分量によって、水と砂との割合を認識し得る。なお、計測部110は、含水率計に限定されない。水と砂との割合を計測し得る限りは、計測部110は重量計であり得る。砂量は一定であるので、サンプル土102の総重量から砂の重量を除くことで水の重量が計測され、水と砂との割合(例えば含水比=(水重量/砂重量)×100、含水率=(水重量/(砂重量+水重量))×100)を計測し得る。このように、計測部110を備えることで、液状化現象発生に求められる振動とサンプル土の含水比との関係を認識し得る。又、サンプル土の含水比に応じて振動付与部が出力する振動波形を制御することができるので、確実に液状化現象を発生させることができる。更に、サンプル土の含水比に応じた液状化現象発生のタイミングを制御し得る。
【0023】
図2は、振動付与部106の振動機構の詳細を示す模式図である。以下、図1と図2とを参照して、振動付与部106の振動機構を説明する。
【0024】
容器104の底部には転がり手段116が設けられる。振動付与部106は、筐体106aと、駆動源106bと、駆動源106bの出力軸に接続されたカム106cと、カム106cから付与される力によって伸縮するバネ106dと、ストッパー118を含む。転がり手段116は例えばキャスターである。筐体106aは、例えば木箱である。駆動源106bは例えば電気モータである。容器104は、振動付与部106の上に設けられている。バネ106dは筐体106aの側壁に力を作用させるように設けられている。ストッパー118は筐体106aの上面周囲に設けられている。ストッパー118は、容器104が筐体106aの上面から落下することを防止する。
【0025】
駆動源106b(例えば電気モータ)が回転すると、カム106cがバネ106dに力を付与し、バネ106dが伸縮する。バネ106dの伸縮によって筐体106aの側壁に力が作用する。作用した力によって容器104が水平方向に揺さぶられ、転がり手段116によって容器104が筐体106aの上面を所定方向に移動する。転がり手段116はストッパー118にぶつかり、所定方向とは反対の方向に跳ね返る。なお、振動付与部106の振動によって容器104が振動する限りは、キャスターの代わりとして、例えば、バネ、ゴムシート等を用いてもよい。さらに、液状化実験装置100が転がり手段116を備えることに限定されない。振動付与部106の振動によって容器104が振動する限りは、転がり手段116は必須ではないが、液状化実験装置100が転がり手段116を有する場合は、小さい力で容器104が効果的に振動する。
【0026】
振動付与部106は制御部108に電気的に接続されている。制御部108は振動付与部106に与える電圧、電流の周波数、電流の振幅などを変化させることで、振動付与部106が出力する振動波形を制御する。更に、制御部108は、計測部110によって計測した水と砂との割合に応じて、振動付与部106に与える電圧、電流の周波数、電流の振幅などを変化し得る。
【0027】
図3は、液状化現象発生の前後の容器104の断面を示す模式図である。(a)は液状化現象発生前の容器104の断面を示し、(b)は液状化現象発生後の容器104の断面を示す。液状化現象発生前は、模型Aはサンプル土102の表面に配置され、模型Bはサンプル土の中に配置されている((a)の状態)。スイッチ114によって記憶部112に記憶されている振動パターンを選択する。振動付与部106は、選択された振動パターンに応じてサンプル土が振動するように、容器104に振動を付与することで、選択された振動パターンに対応した液状化現象が発生する。液状化現象発生後は、模型Aはサンプル土102の表面で傾き、模型Bはサンプル土102の表面に浮かび上がる((b)の状態)。液状化現象によって、サンプル土102は砂と水とに分離する。
【0028】
図4は、記憶部112に記憶された振動パターンの例を示すグラフである。横軸は時間(t)を示し、縦軸は振幅を示す。(a)は振動パターンαを示す。振動パターンαは、周波数一定(周波数a)及び振幅一定(振幅b)である振動波形である。(b)は振動パターンβを示す。振動パターンβは周波数一定(周波数a’)及び振幅一定(振幅b)である振動波形である。周波数a<周波数a’である。(c)は振動パターンγを示す。振動パターンγは、時間tに応じて周波数と振幅とが変動する。0<t≦t1のとき、周波数a、振幅bである。t1<t≦t2のとき、周波数a、振幅b’である。振幅b<振幅b’である。さらに、t2<tのとき、周波数a’、振幅bである。
【0029】
記憶部112は3つの振動パターン(振動パターンα、振動パターンβ、振動パターンγ)を記憶する。制御部108は、スイッチ114の選択に応じて、3つの振動パターンの一つで振動付与部106が出力する振動波形を制御する。
【0030】
本発明の液状化実験装置100によれば、振動付与部106がサンプル土102の収容された容器104に振動を付与するにあたり、振動付与部106が出力する振動波形を制御することができる。その結果、液状化現象発生条件を制御し得、振動状況によって異なる液状化現象を体験することができる。
【0031】
更に、本発明の液状化実験装置100によれば、構成が簡易なため、科学教育や防災教育の現場に持ち運びが容易である。また、学習者自らが模型を使って町を再現し、液状化現象を定性的に体験し得るので、楽しみながら液状化現象のメカニズムを習得することができ、学習効果を上げることができる。
【0032】
[実施形態2]
図5は、本発明の実施形態2に係る液状化実験装置200を示す模式図である。液状化実験装置200は、容器104と、振動付加部106と、制御部108と、仕切り板205と、第1計測部210aと、第2計測部210bとを備える。仕切り板205、第1計測部210a、及び第2計測部210b以外の各構成要素は、第1実施形態で説明した液状化実験装置に含まれた対応する各構成要素と同様の機能、構成を有するので、これらの説明を省略する。
【0033】
容器104は、仕切り板205で第1収容部204aと第2収容部204bとに分けられている。第1収容部204aにおける水と砂との割合と第2収容部204bにおける水と砂との割合とは異なる。第1収容部204aのサンプル土には第1計測部210aが、第2収容部204bのサンプル土には第2計測部210bが各々突っ込まれている。第1計測部210aと第2計測部210bとは制御部108に電気的に接続されている。第1計測部210aは第1収容部204aにおける水と砂との割合を計測し得、第2計測部210bは第2収容部204bにおける水と砂との割合を計測し得る。
【0034】
第1収容部と第2収容部とに付与する振動を同一とした場合、第1収容部のサンプル土と第2収容部のサンプル土とで異なる液状化現象を同時に比較しながら体験し得る。その結果、学習効果を更に高めることができる。
【0035】
容器104に底部には実施形態1と同様の振動付与部106が備えられている。振動付与部106は制御部108に電気的に接続されている。制御部108は振動付与部106に与える電圧、電流の周波数、電流の振幅などを変化させることで、振動付与部106が出力する振動波形を制御する。制御部108は、第1計測部210a及び第2計測部210bによって計測した水と砂との割合に応じて、振動付与部106に与える電圧、電流の周波数、電流の振幅などを変化し得る。
【0036】
なお、本実施形態では、容器104を、仕切り板205用いて第1収容部204a及び第2収容部204bの2つの収容部に分割したものについて説明したが、3つ以上の収容部に分割したものであっても同様の実験が可能である。また、本発明の実施形態において、第1収容部における水と砂との割合と第2収容部における水と砂との割合とが異なることに限定されない。第1収容部におけるサンプル土と第2収容部におけるサンプル土との物理的性質が異なればよい。第1収容部のサンプル土と第2収容部のサンプル土との物理的性質が異なる場合には、第1収容部と第2収容部とに付与する振動を同一とした場合、第1収容部のサンプル土と第2収容部のサンプル土とで異なる液状化現象を同時に比較しながら体験し得る。その結果、学習効果を更に高めることができる。なお、第1収容部のサンプル土と第2収容部のサンプル土との物理的性質とは、例えば、砂の種類、砂の粒径、砂と砂との間隙、砂粒の形状、砂の均質性なども含む。
【0037】
[別実施形態]
以上、図1〜図5を参照して本発明の実施形態を説明したが、液状化実験装置100と液状化実験装置200とは、砂粒と砂粒との間隙を水が埋めるようにサンプル土を撹拌する撹拌部(図示せず)を更に備えても良い。この場合、液状化現象発生後に撹拌部を作動することでサンプル土を液状化現象発生前の状態に戻すことができる。又、記憶部112に記憶された振動パターンは振動パターンα、振動パターンβ、振動パターンγに限らない。記憶部112に記憶された振動パターンは任意である。
【0038】
さらに、容器104の側壁底部には給排水用の穴を有し得る。給排水用の穴は、液状化現象発生時は栓で閉じられる。液状化実験の前後では栓が外され、給排水用の穴を通して容器104に給水し得、又容器104から排水し得る。例えば、液状化実験前に給排水用の穴を通して容器104に給水することで、液状化現象発生前のサンプル土(即ち砂と砂との間隙を水によって充填したサンプル土)を形成し得る。例えば、液状化実験後に給排水用の穴を通して容器104から排水することで、サンプル土の重量を減ずることができ、運搬が容易になる。
【0039】
また、給排水用の穴が栓で閉じられている場合には容器104の上面開口部から給水することで、給排水用の穴が開いている場合は当該穴から給水することで水中自然堆積の砂層を模したサンプル土を容易に形成し得る。さらに、容器の上面開口部からサンプル土を撹拌し得るので、盛土地盤などを模したサンプル土を容易に形成し得る。
【0040】
さらに、振動付与部106が容器104に振動を付与し得、制御部108が振動付与部106から出力される振動波形を制御し得る限りは、振動付与部106の構成は、図2を参照して説明した構成に限定されない。振動付与部106は、例えば、偏心円盤を備え、当該偏心円盤をモータで回転させることによって、容器104に振動を付与し得る。この場合、制御部108はモータへの入力電圧を制御することで、振動付与部106から出力される振動波形を制御する。振動付与部106は、例えば、制御部108から入力された電気信号に応じて油圧アクチュエータを駆動する電気油圧サーボ機構を備え得る。油圧アクチュエータは容器104に接続されているので、油圧アクチュエータの伸縮に応じて容器104に振動を付与し得る。
【実施例】
【0041】
図6は、本発明の実施例による実験結果を示す表である。以下、図6を参照して、本発明の実施例を説明する。実施例1〜実施例4においては、容器104として透明プラスチック容器(縦53.5cm、横34.8cm、高さ8.5cm:重量1.136kg)を用いた。駆動源106bの一例として電気モータを用いた。電気モータへの入力電流は印加電圧にほぼ比例するが約0.8Aであった。サンプル土102として乾燥豊浦砂を11.2kg(自由落下体積:7850cc)使った。乾燥豊浦砂の間隙比eは、0.858であった。
【0042】
[実施例1]
実施例1での注入水重量と含水比wとは、下記のとおりである。
注入水重量:3.00kg(3000cc)
含水比w=(注入水重量/乾燥豊浦砂重量)×100=(3000/1120)×100≒26.79%
【0043】
制御部108は、電気モータへの入力電圧(V)を22V〜25Vの間で制御して、振動付与部106が出力する振動波形を変更(制御)した。入力電圧に対応する振動波形の振幅(mm)は1.148mm〜1.535mmであった。入力電圧に対応する振動波形の周波数(Hz)は、16.9Hz〜19.39Hzであった。入力電圧に対応する液状化発生時間(秒)は、210秒〜43秒であった。入力電圧の減少に伴い、振幅及び周波数は減少し、液状化発生時間は増加した。なお、振幅は上限ピークと下限ピークとの間の幅とした。以下、振幅が上限ピークと下限ピークとの間の幅であることは、実施例2〜実施例4においても同様である。
【0044】
[実施例2]
実施例2での注入水重量と含水比wとは、下記のとおりである。
注入水重量:3.05kg(3050cc)
含水比w=(注入水重量/乾燥豊浦砂重量)×100=(3050/1120)×100≒27.23%
【0045】
制御部108は、電気モータへの入力電圧(V)を22V〜26.5Vの間で制御して、振動付与部106が出力する振動波形を変更(制御)した。入力電圧に対応する振動波形の振幅(mm)は1.148mm〜1.7285mmであった。入力電圧に対応する振動波形の周波数(Hz)は、16.9Hz〜20.635Hzであった。入力電圧に対応する液状化発生時間(秒)は、145秒〜14秒であった。入力電圧の減少に伴い、振幅及び周波数は減少し、液状化発生時間は増加した。
【0046】
[実施例3]
実施例3での注入水重量と含水比wとは、下記のとおりである。
注入水重量:3.15kg(3150cc)
含水比w=(注入水重量/乾燥豊浦砂重量)×100=(3150/1120)×100≒28.13%
【0047】
制御部108は、電気モータへの入力電圧(V)を21.1V〜27.1Vの間で制御して、振動付与部106が出力する振動波形を変更(制御)した。入力電圧に対応する振動波形の振幅(mm)は1.0319mm〜1.8059mmであった。入力電圧に対応する振動波形の周波数(Hz)は、16.153Hz〜21.133Hzであった。入力電圧に対応する液状化発生時間(秒)は、226秒〜10秒であった。入力電圧の減少に伴い、振幅及び周波数は減少し、液状化発生時間は増加した。
【0048】
[実施例4]
実施例4での注入水重量と含水比wとは、下記のとおりである。
注入水重量:3.20kg(3200cc)
含水比w=(注入水重量/乾燥豊浦砂重量)×100=(3200/1120)×100≒28.57%
【0049】
制御部108は、電気モータへの入力電圧(V)を20V〜25.1Vの間で制御して、振動付与部106が出力する振動波形を変更(制御)した。入力電圧に対応する振動波形の振幅(mm)は0.89mm〜1.5479mmであった。入力電圧に対応する振動波形の周波数(Hz)は、15.24Hz〜19.473Hzであった。入力電圧に対応する液状化発生時間(秒)は、375秒〜6秒であった。入力電圧の減少に伴い、振幅及び周波数は減少し、液状化発生時間は増加した。
【0050】
さらに、実施例1〜実施例4の結果によれば、入力電圧が同一であれば、含水比の増加に伴い液状化発生時間は減少した。例えば、入力電圧24Vの場合、含水比26.79%(実施例1)で液状化発生時間は60秒であり、含水比27.23%(実施例2)で液状化発生時間は30秒であり、含水比28.13%(実施例3)で液状化発生時間は約16秒と推定され、含水比28.57%(実施例4)で液状化発生時間は8秒であった。
【0051】
サンプル土102の均質性が一定であり、含水比が同一の場合は、入力電圧の減少に伴い、振幅及び周波数は減少し、液状化発生時間は増加する。従って、入力電圧によって液状化現象発生条件を制御し得、振動状況によって異なる液状化現象を体験することができる。
【0052】
このように、本発明の液状化実験装置100によれば、サンプル土102の収容された容器104に振動を付与するにあたり、振動付与部106が出力する振動波形を制御することができる。その結果、液状化現象発生条件を制御し得、振動状況によって異なる液状化現象を体験することができる。更に、本発明の液状化実験装置100によれば、構成が簡易なため、科学教育や防災教育の現場に持ち運びが容易である。また、学習者自らが模型を使って町を再現し、液状化現象を定性的に体験し得るので、楽しみながら液状化現象のメカニズムを習得することができ、学習効果を上げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明による液状化実験装置及び液状化実験方法は、液状化現象を疑似体験することによる科学教育又は防災教育に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
100 液状化実験装置
102 サンプル土
104 容器
106 振動付与部
108 制御部
110 計測部
112 記憶部
114 スイッチ
200 液状化実験装置
205 仕切り板
204a 第1収容部
204b 第2収容部
210a 第1計測部
210b 第2計測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と砂とを含んだサンプル土の液状化実験装置であって、
前記サンプル土を収容する容器と、
前記容器に振動を付与する振動付与部と、
前記振動付与部が出力する振動波形を制御する制御部と
を備えた液状化実験装置。
【請求項2】
前記水と前記砂との割合を計測する計測部を更に備えた、請求項1に記載の液状化実験装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記振動付与部が出力する振動波形を変更する、請求項1又は請求項2に記載の液状化実験装置。
【請求項4】
複数の振動パターンを記憶する記憶部を更に備え、
前記制御部は、前記複数の振動パターンのうちの少なくとも一つの振動パターンに基づいた振動波形を前記振動付与部に出力させる、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の液状化実験装置。
【請求項5】
前記容器は、少なくとも第1収容部と第2収容部とを含み、
前記第1収容部におけるサンプル土と前記第2収容部におけるサンプル土との物理的性質は異なる、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の液状化実験装置。
【請求項6】
水と砂とを含んだサンプル土の液状化実験方法であって、
前記サンプル土に振動を付与する振動付与工程と、
前記サンプル土の振動を制御する制御工程と
を包含する液状化実験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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