説明

液状化対策装置

【課題】設置後の時間経過に拘わらず液状化防止効果を確実に発揮できるとともに、地震発生時に液状化層の不飽和化を即座に行って、液状化現象を軽減させることできる液状化対策装置を提供する。
【解決手段】透水性を有する埋設管1と、この埋設管1内に設けられ、内部に気体が封入されることで弾性的に膨張している膨張部材2と、地震を検出する地震検出手段3と、地震検出手段3によって、地盤に液状化が生じる程度の地震を検出した際に、膨張部材2を瞬時に破断させる破断手段4とを備えているので、地盤に液状化が生じる程度の地震が発生すると、破断手段によって膨張部材2が瞬時に破断されて、埋設管内部に間隙水を取り込み、埋設管近辺の土質を不飽和化させて、地盤の液状浄化現象を軽減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震発生時に液状化現象を軽減させる液状化対策装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、地盤の液状化とは、含水率の高い地盤が地震により衝撃や振動を受けて変形することに伴い、土粒子間に飽和状態で存在している間隙水の水圧が急激に上昇し、その結果、土粒子間の摩擦抵抗が消失して地盤があたかも液体のように挙動して耐力を失ってしまう現象をいう。
そのような液状化を防止するための液状化防止方法の一例として、グラベルドレーン工法と呼ばれるものがある。この工法は、地盤中に設けられたドレーン柱に地下水を吸収させることで、周囲の土中で発生した間隙水圧の上昇を抑制し地盤液状化を抑止するといった工法である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−158044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記従来のグラベルドレーン工法では、形成されたドレーン柱内の間隙部(例えば充填されている礫同士の間隙)に周辺地盤の細粒分が流入して、係るドレーン柱の透水性を低下させ、地震時に発生が予想される過剰間隙水圧を吸収することが困難となってしまう問題がある。
つまり、施工後に時間が経過するほどドレーン柱の特性は失われて、当初考えられていた液状化防止効果を発揮することが難しくなるという問題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、設置後の時間経過に拘わらず液状化防止効果を確実に発揮できるとともに、地震発生時に液状化層の不飽和化を即座に行って、液状化現象を軽減させることできる液状化対策装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、例えば図1〜図3に示すように、液状化対策装置であって、
液状化の可能性のある地盤に埋設される透水性を有する埋設管1と、
この埋設管1内に設けられ、内部に気体が封入されることで弾性的に膨張している膨張部材2と、
前記地盤の地震を検出する地震検出手段3と、
この地震検出手段3によって、前記地盤に液状化が生じる程度の地震を検出した際に、前記膨張部材2を瞬時に破断させる破断手段4とを備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、地震検出手段によって、地盤に液状化が生じる程度の地震を検出すると、破断手段によって膨張部材が瞬時に破断される。これによって埋設管内には、膨張部材によって占有されていた部分が無くなるので、埋設管内部にその外周部に形成された孔から間隙水を取り込み、埋設管近辺の土質を不飽和化させて、地盤の液状浄化現象を軽減させることができる。
また、地震発生前の状態では、膨張した状態の膨張部材によって、埋設管内に流入する地下水の量をほぼ無くするか、または減少させることができるので、設置後の時間経過に拘わらず液状化防止効果を確実に発揮できる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、例えば図4〜図6に示すように、液状化対策装置であって、
液状化の可能性のある地盤に埋設される透水性を有する埋設管1と、
この埋設管1内に設けられ、内部に気体が封入されることで弾性的に膨張している膨張部材2と、
前記地盤の地震を検出する地震検出手段3と、
この地震検出手段3によって前記地盤に液状化が生じる程度の地震を検出した際に、前記膨張部材2内の内圧を瞬時に減圧させる減圧手段10とを備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、地震検出手段によって、地盤に液状化が生じる程度の地震を検出すると、減圧手段によって膨張部材内の内圧が瞬時に減圧されて、膨張部材が収縮する。これによって埋設管内には、膨張部材によって占有されていた部分が無くなるので、埋設管内部にその外周部に形成された孔から間隙水を取り込み、埋設管近辺の土質を不飽和化させて、地盤の液状浄化現象を軽減させることができる。
また、地震発生前の状態では、膨張した状態の膨張部材によって、埋設管内に流入する地下水の量をほぼ無くするか、または減少させることができるので、設置後の時間経過に拘わらず液状化防止効果を確実に発揮できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、例えば図7に示すように、請求項2に記載の液状化対策装置において、
前記埋設管1は、その外周部に複数の孔1aが形成されることによって透水性を有し、
前記埋設管1の内側から取り付けられて、膨張している前記膨張部材2によって前記埋設管1の内面に押圧されることで、前記複数の孔1aを閉塞する閉塞部材15を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、地震検出手段によって、地盤に液状化が生じる程度の地震を検出すると、減圧手段によって膨張部材内の内圧が瞬時に減少されて、膨張部材が収縮する。したがって、埋設管の孔を閉塞していた閉塞手段は、地盤から流入しようとする間隙水の圧力によって、緩むかまたは外れるので、埋設管内部に孔から間隙水を取り込み、埋設管近辺の土質を不飽和化させて、地盤の液状浄化現象を軽減させることができる。
また、地震発生前の状態では、閉塞手段によって、孔からの埋設管内への地下水の流入を防止しているので、設置後の時間経過に拘わらず液状化防止効果を確実に発揮できる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、例えば図8および図9に示すように、液状化対策装置であって、
液状化の可能性のある地盤に埋設され、外周部に複数の孔1aが形成された埋設管1と、
前記埋設管1の内側からそれぞれ取り付けられ、当該埋設管1内に封入された圧縮空気の圧力によって前記埋設管1の内周面に密着して前記複数の孔1aを塞ぐ閉塞部材15と、
前記地盤の地震を検出する地震検出手段3と、
この地震検出手段3によって前記地盤に液状化が生じる程度の地震を検出した際に、前記埋設管1内の内圧を瞬時に減圧させる減圧手段10とを備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、地震検出手段によって、地盤に液状化が生じる程度の地震を検出すると、減圧手段によって埋設管内の内圧が瞬時に減少される。したがって、埋設管の孔を閉塞していた閉塞手段は、地盤から流入しようとする間隙水の圧力によって、緩むかまたは外れるので、埋設管内部に孔から間隙水を取り込み、埋設管近辺の土質を不飽和化させて、地盤の液状浄化現象を軽減させることができる。
また、地震発生前の状態では、閉塞手段によって、孔からの埋設管内への地下水の流入を防止しているので、設置後の時間経過に拘わらず液状化防止効果を確実に発揮できる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液状化対策装置において、前記埋設管1を複数備え、これら埋設管1が平面視において前記地盤に構築された建物5の周囲を取り囲むようにして、所定間隔で配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、複数の埋設管が平面視において前記地盤に構築された建物の周囲を取り囲むようにして、所定間隔で配置されているので、これら埋設管の内側にある地盤の液状化現象を確実に軽減させることができ、この結果、建物を保持できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、地盤に液状化が生じる程度の地震が発生すると、埋設管内にその外周部に形成せれた孔から間隙水を取り込み、埋設管近辺の土質を不飽和化させて、地盤の液状浄化現象を軽減させることができる。
また、地震発生前の状態では、埋設管内に流入する地下水の量をほぼ無くするか、または減少させることができるので、設置後の時間経過に拘わらず液状化防止効果を確実に発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る液状化対策装置の第1の実施の形態を示すもので、液状化対策装置の概略構成図である。
【図2】同、地震が発生した場合の液状化対策装置の概略構成図である。
【図3】同、埋設管を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る液状化対策装置の第2の実施の形態を示すもので、液状化対策装置の概略構成図である。
【図5】同、地震が発生した場合の液状化対策装置の概略構成図である。
【図6】同、埋設管を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る液状化対策装置の第2の実施の形態の変形例を示すもので、埋設管を示す斜視図である。
【図8】同、埋設管の孔およびその近傍を示す要部の拡大断面図であり、(a)は孔を栓部材によって閉塞した状態を示す図、(b)は孔から栓部材が外れた状態を示す図である。
【図9】同、抜出防止部材を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る液状化対策装置の第3の実施の形態を示すもので、液状化対策装置の概略構成図である。
【図11】同、地震が発生した場合の液状化対策装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明に係る液状化対策装置の実施の形態について説明する
(第1の実施の形態)
図1〜図3は第1の実施の形態に係る液状化対策装置を示すものである。
図1に示すように、本実施の形態の液状化対策装置は、液状化の可能性のある地盤に埋設される透水性を有する埋設管1と、この埋設管1内に設けられ、内部に気体が封入されることで弾性的に膨張している膨張部材2と、地盤の地震を検出する地震検出手段3と、この地震検出手段3によって、地盤に液状化が生じる程度の地震を検出した際に、膨張部材2を瞬時に破断させる破断手段4とを備えている。
【0019】
前記埋設管1は、図3に示すように、例えば硬質の円筒状のポリエチレン管によって形成されており、その下端部は閉塞されている。また、埋設管1の上端部は開放しておいてもよいし、蓋をしてもよい。埋設管1の外周部には多数の孔1aが形成されている。多数の孔1aは、埋設管1の軸方向に所定間隔で形成されるともに、周方向にも所定間隔で形成されている。これら多数の孔1aが形成されることによって埋設管1は透水性を有している。
そして、埋設管1は、地盤に構築された建物5の周囲を取り囲むようにして配置され、地盤にほぼ鉛直に埋設されるか、あるいは鉛直方向に対して若干傾斜させて埋設されている。埋設管1を地盤に埋設する場合、打設機によって、液状化の可能性のある地盤に打ち込むようにして打設するか、あるいはボーリングマシンによって地盤に孔を掘削し、この孔に挿入してもよい。埋設管1を地盤に打設によって埋設する場合、埋設管1の下端部を尖った形状にするのが好ましい。なお、地盤の地下水位は埋設管1の上端部付近となっている。
埋設管1の長さは特に限定するものではないが、例えば、通常の住宅等の建物5の周囲に埋設管1を1m〜2m程度の所定間隔で埋設する場合、7m〜10m程度が望ましい。
【0020】
膨張部材2は柔軟なゴム等によって円筒の袋状に形成されており、内部に圧縮空気が封入されることで弾性的に膨張している。この膨張した状態で膨張部材2は、埋設管1の内面(底面、内周面、蓋がある場合は上面)に、当該内面を押圧するようにして密着しており、これによって、埋設管1に形成された多数の孔1a・・・は閉塞され、地盤からの地下水の侵入を防止している。
なお、膨張部材2は、膨張した状態で埋設管1の内面、特に孔1aが形成されている内周面に密着しているのが望ましいが、若干、隙間があってもよい。若干隙間がある場合、この隙間に若干量の地下水が流入して溜まる可能性があるが、膨張部材2によって、埋設管1の内部の殆どが占有されているので、埋設管1の内部全体に地下水が溜まることはない。
【0021】
地震検出手段3としては、例えば加速度センサが使用される。この加速度センサによる地震検出手段3は、建物5の近傍の地盤に設置されており、破断手段4に電気的に接続されている。地震検出手段3は、地盤に液状化が生じる程度の地震(例えば震度5以上)の揺れを検出した際に前記破断手段4に検出信号を出力するようになっている。
なお、地震検出手段3は、加速度センサに限らず、これに加えてまたは代えて、緊急地震速報を受信可能な手段を採用してもよい。
【0022】
破断手段4は、図1に示すように、各埋設管1の上端部にそれぞれ設置されており、前記膨張部材2を突き破ることが可能な針部材4aを備えている。この針部材4aは下端部が尖っており、図示しないバネやソレノイド等によって、下降して埋設管1の上端部内側に突出して、膨張部材2を突き破るようになっている。
【0023】
針部材4aがバネによって下降する場合、バネを圧縮した状態で針部材4aをストッパ等の規制部材によって、埋設管1の上端部近傍に保持しておき、地震検出手段3から検出信号が破断手段4に入力されると、ストッパによる規制が外れて、バネの復元力によって、針部材4aが下降して、埋設管1の上端部内側に突出し、膨張部材2の上端部を突き破って、当該膨張部材2を瞬時に破裂(破断)させるようになっている。
【0024】
また、針部材4aがソレノイドによって下降する場合、バネを埋設管1の上端部近傍に保持しておき、地震検出手段3から検出信号が破断手段4に入力されると、ソレノイドによって、針部材4aが下降して、埋設管1の上端部内側に突出し、膨張部材2の上端部を突き破って、当該膨張部材2を瞬時に破裂(破断)させるようになっている。
なお、埋設管1の上端部に蓋がされている場合、この蓋に針部材4aが貫通可能な貫通孔を形成しておくのが望ましい。
【0025】
上記のような液状化対策装置では、地震検出手段3によって、地盤に液状化が生じる程度の地震(例えば震度5以上)の揺れを検出すると、この地震検出手段3が検出信号を出力して、当該検出信号を破断手段4に入力する。すると、図2に示すように、針部材4aが下降して、埋設管1の上端部内側に突出し、膨張部材2の上端部を突き破って、当該膨張部材2を瞬時に破裂(破断)させる。
これによって埋設管1内には、膨張部材2が破裂した跡である破断片2aが残るが、膨張していた膨張部材2によって占有されていた部分が無くなるので、埋設管1内部に、その外周部に形成された孔1aから間隙水Sを取り込み、埋設管近辺の土質を不飽和化させて、地盤の液状浄化現象を軽減させることができる。
【0026】
また、地震発生前の状態では、膨張した状態の膨張部材2が埋設管1の内面に密着して、埋設管1に形成された多数の孔1a・・・が閉塞されているので、地盤からの埋設管1内への地下水の侵入を防止できる。したがって、埋設管内に流入して溜まる地下水の量をほぼ無くすることができるので、設置後の時間経過に拘わらず液状化防止効果を確実に発揮できる。
【0027】
なお、地震時に埋設管1内に取り込んだ間隙水(地下水)は、例えば、図3に示すように、埋設管1の上端部にサイフォン管6を接続し、このサイフォン管6から排水して、建物5の周囲の地盤に設けられている排水枡等を介して、下水管に排水すればよい。
【0028】
(第2の実施の形態)
図4〜図6は第2の実施の形態に係る液状化対策装置を示すものである。
図4に示すように、第2の実施の形態の液状化対策装置は、液状化の可能性のある地盤に埋設される透水性を有する埋設管1と、この埋設管1内に設けられ、内部に空気が封入されることで弾性的に膨張している膨張部材2と、地盤の地震を検出する地震検出手段3と、この地震検出手段3によって、地盤に液状化が生じる程度の地震を検出した際に、膨張部材2内の内圧を瞬時に減圧させる減圧手段10とを備えている。
【0029】
第2の実施の形態の液状化対策装置は、埋設管1、膨張部材2、地震検出手段3等については前記第1の実施の形態の液状体対策装置と同様であるので、同一構成部分には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
図6に示すように、埋設管1の上端部は蓋によって閉塞されており、この蓋に配管7が取り付けられ、この配管7の下端部に前記膨張部材2の上端部が取り付けられている。配管7の内部と膨張部材2の内部は連通しており、配管7を介して、膨張部材2内に圧縮空気が充填されるようになっている。
【0030】
図4に示すように、建物5の近傍の地盤には、空気供給装置11が設置されており、この空気供給装置11の空気供給管11aが連結配管12に接続されている。
連結配管12は、建物5の周囲を取り囲むようにして配置された前記複数の埋設管1・・・の上端部を繋ぐようにして水平環状に配置されており、当該連結配管12にそれぞれ前記埋設管1の配管7の上端部が接続されている。
したがって、空気供給装置11からの空気は、空気供給管11a、連結配管12、配管7を順次流通して、埋設管1内の膨張部材2内に供給されるようになっている。そして、膨張部材2はその内部に空気が供給されて弾性的に膨張し、この膨張した状態で膨張部材2は、埋設管1の内面(底面、内周面、上面)に、当該内面を押圧するようにして密着しており、これによって、埋設管1に形成された多数の孔1a・・・は閉塞され、地盤からの地下水の侵入を防止している。
【0031】
減圧手段10は、前記空気供給管11aに取り付けられたリリーフ弁10によって構成されている。このリリーフ弁10には、地震検出手段3が電気的に接続されており、地震検出手段3は、地盤に液状化が生じる程度の地震(例えば震度5以上)の揺れを検出した際に前記リリーフ弁(減圧手段)10に検出信号を出力し、これによって、リリーフ弁10が開放されるようになっている。リリーフ弁10が開放されると、膨張部材2、配管7、連結配管12、空気供給管11a内の空気が大気に放出され、これによって、膨張部材2内の内圧が瞬時に減少されるようになっている。
【0032】
なお、リリーフ弁10には、圧力センサが設けられており、この圧力センサによって、膨張部材2および連結配管12の内圧を検出し、この検出値が所定値以下になると、膨張部材2内の空気が自然減少したと判断して、空気供給装置11を起動して、空気を空気供給管11a、連結配管12、配管7を順次流通させて、埋設管1内の膨張部材2内に供給して、膨張部材2の内圧を所定の値に保持する。
また、リリーフ弁10は、空気供給管11aに代えてまたは加えて、連結配管12に設けてもよい。
【0033】
上記のような液状化対策装置では、地震検出手段3によって、地盤に液状化が生じる程度の地震(例えば震度5以上)の揺れを検出すると、この地震検出手段3が検出信号を出力して、当該検出信号をリリーフ弁(減圧手段)10に入力する。すると、リリーフ弁10が開放され、これによって、膨張部材2内の内圧が瞬時に減少される。
これによって埋設管1内には、図5に示すように、膨張部材2が収縮した跡である収縮片2bが残るが、膨張していた膨張部材2によって占有されていた部分が無くなるので、埋設管1内部に、その外周部に形成された孔1aから間隙水Sを取り込み、埋設管近辺の土質を不飽和化させて、地盤の液状浄化現象を軽減させることができる。
【0034】
また、地震発生前の状態では、膨張した状態の膨張部材2が埋設管1の内面に密着して、埋設管1に形成された多数の孔1a・・・は閉塞されているので、地盤からの埋設管1内への地下水の侵入を防止できる。したがって、埋設管1内に流入する地下水の量をほぼ無くするか、または減少させることができるので、設置後の時間経過に拘わらず液状化防止効果を確実に発揮できる。
さらに、地震による揺れが収まった際は、空気供給装置11を起動して再び膨張部材2に空気を充填し、当該膨張部材2を弾性的に膨張させることにより、埋設管1内に溜まっている地下水を孔1aを通して地盤に戻すことができるとともに、液状化対策装置を元の状態に戻すことができる。
【0035】
(変形例)
図7〜図9は、第2の実施の形態の液状化対策装置の変形例を示すものである。この変形例では、埋設管1に形成された複数の孔1aを閉塞する閉塞部材15を備えている点が、第2の実施の形態の液状化対策装置と異なる。
閉塞部材15としては、前記孔1aに取り付けられる栓部材15が使用されている。この栓部材15は、円板部15aと、この円板部15aの中央部に立設された軸部15bと、この軸部15bの周囲に設けられたバネ(コイルバネ)15cとによって構成されている。
【0036】
このような栓部材15は、埋設管1の内周面に、当該埋設管1の内側から孔1aに軸部15bを挿入することによって取り付けられている。軸部15bを孔1aに挿入した状態において、バネ15cは圧縮されて、孔1aの内面の段部に当接されている。さらに、栓部材15の円板部15aは、膨張している膨張部材2によって埋設管1の内周面に直接または後述する抜出防止部材16のフランジ部17bを介して押圧されることで、孔1aを閉塞している。したがって、膨張部材2内の内圧は、地盤の地下水による自然水圧にバネ15cによる圧力を加えた圧力より大きくなっている。
【0037】
また、前記栓部材15は、抜出防止部材16によって、孔1aからの完全な抜け出しが防止されている。この抜出防止部材16はゴム製のものであり、図9に示すように、円筒状に形成されて、前記孔1aに装着される装着部17と、前記栓部材15の円板部15aが当接される当接部18と、この当接部18を前記装着部17に接離可能に接続する接続部19とで構成されている。
【0038】
前記装着部17の先端部(図9において右端部)と基端部(図9において左端部)にはそれぞれ、外側に張り出すリング状のフランジ部17a,17bが形成されている。このような装着部17は、図8に示すように、孔1aに埋設管1の内側から挿入されて、先端のフランジ部17aが埋設管1の外周面の孔19aの周囲に係止され、基端のフランジ部17bが埋設管1の内周面の孔19aの周囲に係止されることにより、孔19aに抜け出が防止された状態で取り付けられている。
前記当接部18はリング状に形成されており、この当接部18の内径は、栓部材15の円板部15a外径より小さくなっている。
前記接続部19は、フランジ部17bおよび当接部18の外周方向に所定間隔で複数配置された帯状のものであり、その両端部がそれぞれ前記フランジ部17bと当接部18の外周縁部に連結されている。
上記のような抜出防止部材16は、図8(a)に示すように、栓部材15の軸部15bが孔19aに挿入されて、前記膨張部材2が膨張している状態において、接続部19が外側に張り出すようにして折り曲げられ、当接部18が円板部15aを押圧した状態で、当該円板部15aに当接している。
【0039】
このような変形例による液状化対策装置では、地震検出手段3によって、地盤に液状化が生じる程度の地震(例えば震度5以上)を検出すると、この地震検出手段3が検出信号を出力して、当該検出信号をリリーフ弁(減圧手段)10に入力する。すると、リリーフ弁10が開放され、膨張部材2、配管7、連結配管12、空気供給管11a内の空気が大気に放出され、これによって、膨張部材2内の内圧が瞬時に減少される。
これによって、図8(b)に示すように、膨張している膨張部材2によって埋設管1の孔1aを閉塞していた栓部材15は、地盤から流入しようとする間隙水の圧力とバネ15cによる圧力によって、孔1aから外れる(栓部材15の軸部15cの先端部が孔1aに残った状態で円板部15aが埋設管1の内周面から離れる)ので、埋設管1内部に孔1aから間隙水を取り込み、埋設管近辺の土質を不飽和化させて、地盤の液状浄化現象を軽減させることができる。
また、間隙水の圧力やバネ15cによって栓部材15が孔1aから完全に外れようとすると、図8(b)に示すように、抜出防止部材16の接続部19が真っすぐに伸びて当接部18の移動を規制するとともにこの当接部18に円板部15aが当接するので、栓部材15のそれ以上の孔1aからの抜け出を防止できる。したがって、地震による揺れが収まった際は、空気供給装置11を起動して再び膨張部材2に空気を充填し、当該膨張部材2を弾性的に膨張させることにより、埋設管1内に溜まっている地下水を孔1aを通して地盤に戻すことができるとともに、孔1aから外れていた栓部材15を再び孔1aに挿入して、液状化対策装置を元の状態に戻すことができる。
なお、本実施の形態において、栓部材15はバネ15cを備えていなくてもよい。この場合、膨張部材2内の内圧を、地盤の地下水による自然水圧より大きく設定すればよい。
【0040】
(第3の実施の形態)
図10および図11は第3の実施の形態に係る液状化対策装置を示すものである。
図10に示すように、第3の実施の形態の液状化対策装置は、液状化の可能性のある地盤に埋設され、外周部に複数の孔1aが形成された埋設管1と、埋設管1の内側からそれぞれ取り付けられて、当該埋設管1内に封入された圧縮空気の圧力によって前記複数の孔1aを塞ぐ閉塞部材15と、地盤の地震を検出する地震検出手段3と、この地震検出手段3によって地盤に液状化が生じる程度の地震の揺れを検出した際に、埋設管1内の内圧を瞬時に減圧させる減圧手段10とを備えている。
【0041】
第3の実施の形態の液状化対策装置は、埋設管1、地震検出手段3、減圧手段10、空気供給装置11、連結配管12等については前記第2の実施の形態の液状体対策装置と同様であるので、同一構成部分には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
本実施の形態では、第2の実施の形態で使用されていた膨張部材2を使用せず、埋設管1の上端部に配管7が接続され、この配管7が連結配管12に接続されている。したがって、複数の埋設管1の内部と連結配管12とは配管7を介して連通している。
【0042】
前記閉塞部材15は、第2の実施の形態における栓部材15と同様の構成となっている。
このような栓部材15は、埋設管1の内周面に、当該埋設管1の内側から孔1aに軸部15bを挿入することによって取り付けられている。軸部15bを孔1aに挿入した状態において、バネ15cは圧縮されて、孔1aの内面の段部に当接されている。さらに、栓部材15の円板部15aは、埋設管1内に封入されている圧縮空気の圧力によって、埋設管1の内周面に押圧されることで、孔1aを閉塞している。したがって、埋設管1の内圧は、地盤の地下水による自然水圧にバネ15cによる圧力を加えた圧力より大きくなっている。
また、栓部材15は前記変形例と同様に、前記抜出防止部材16によって、孔1aからの完全な抜け出しが防止されている。
なお、本実施の形態において、栓部材15はバネ15cを備えていなくてもよい。この場合、埋設管1内の内圧を、地盤の地下水による自然水圧より大きく設定すればよい。
【0043】
埋設管1内に圧縮空気を封入するには、埋設管1の孔1aに栓部材15の軸部15cを挿入しておき、この状態で、空気供給装置11を起動させることによって、この空気供給装置11から圧縮空気を、空気供給管11a、連結配管12、配管7を順次流通させて、埋設管1内に所定の内圧(大気圧以上でかつ、地盤の地下水による自然水圧にバネ15cによる圧力を加えた圧力より大きい圧力)となるように供給する。そして、この圧縮空気の圧力によって閉塞部材15の円板部15aが押圧されて埋設管1の内周面に密着し、これによって複数の孔1aが閉塞される。
なお、この状態において、各埋設管1、配管7、連結配管12、空気供給管11aは等しい内圧となっている。
【0044】
上記のような液状化対策装置では、地震検出手段3によって、地盤に液状化が生じる程度の地震(例えば震度5以上)の揺れを検出すると、この地震検出手段3が検出信号を出力して、当該検出信号をリリーフ弁(減圧手段)10に入力する。すると、リリーフ弁10が開放され、これによって、膨張部材2内の内圧が瞬時に減少される。
これによって、図9に示すように、孔1aを閉塞していた栓部材15は、地盤から流入しようとする間隙水の圧力とバネ15cによる圧力によって、孔1aから外れるので、埋設管1内部に孔1aから間隙水を取り込み、埋設管近辺の土質を不飽和化させて、地盤の液状浄化現象を軽減させることができる。
また、地震発生前の状態では、栓部材15によって、孔1aからの埋設管1内への地下水の流入を防止しているので、設置後の時間経過に拘わらず液状化防止効果を確実に発揮できる。
また、間隙水の圧力やバネ15cによって栓部材15が孔1aから完全に外れようとすると、抜出防止部材16の接続部19が真っすぐに伸びて当接部18の移動を規制するとともにこの当接部18に円板部15aが当接するので、栓部材15のそれ以上の孔1aからの抜け出を防止できる。したがって、地震による揺れが収まった際は、空気供給装置11を起動して再び埋設管1内に圧縮空気を充填することによって、埋設管1内に溜まっている地下水を孔1aを通して地盤に戻すことができるとともに、孔1aから外れていた栓部材15を再び孔1aに挿入して、液状化対策装置を元の状態に戻すことができる。
【0045】
なお、閉塞部材15としては、前記栓部材15に限らず、例えば、埋設管1の内周面に当接されたリング状の閉塞部材で構成してもよい。このリング状の閉塞部材は、例えば、埋設管1の軸方向に所定間隔で配置されることで、周方向に所定間隔で形成されている複数の孔1aを一体的に閉塞するものである。
このようなリング状の閉塞部材は、埋設管1内の圧縮空気によって埋設管1の孔1aを閉塞しているが、埋設管1内の内圧が減圧されると、地盤から流入しようとする間隙水の圧力によって、内側に撓むようにして緩んで、孔1aと閉塞部材との間に隙間が形成されるので、埋設管1内部に孔1aから間隙水を取り込み、埋設管近辺の土質を不飽和化させて、地盤の液状浄化現象を軽減させることができる。
【0046】
なお、上記複数の実施の形態では、本発明に係る液状化対策装置を、住宅等の建物の周囲の地盤に設置する場合を例にとって説明したが、本発明は、これに限ることなく、例えばビル等の大型建物やその他の大型構造物の周囲の地盤に設置してもよく、さらには、建物や構造物に存在非存在に拘わらず、液状化の可能性が高い地盤に設置してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 埋設管
1a 孔
2 膨張部材
3 地震検出手段
4 破断手段
5 建物
10 減圧手段
15 閉塞部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状化の可能性のある地盤に埋設される透水性を有する埋設管と、
この埋設管内に設けられ、内部に気体が封入されることで弾性的に膨張している膨張部材と、
前記地盤の地震を検出する地震検出手段と、
この地震検出手段によって、前記地盤に液状化が生じる程度の地震を検出した際に、前記膨張部材を瞬時に破断させる破断手段とを備えていることを特徴とする液状化対策装置。
【請求項2】
液状化の可能性のある地盤に埋設される透水性を有する埋設管と、
この埋設管内に設けられ、内部に気体が封入されることで弾性的に膨張している膨張部材と、
前記地盤の地震を検出する地震検出手段と、
この地震検出手段によって前記地盤に液状化が生じる程度の地震を検出した際に、前記膨張部材内の内圧を瞬時に減圧させる減圧手段とを備えていることを特徴とする液状化対策装置。
【請求項3】
前記埋設管は、その外周部に複数の孔が形成されることによって透水性を有し、
前記埋設管の内側から取り付けられて、膨張している前記膨張部材によって前記埋設管の内面に押圧されることで、前記複数の孔を閉塞する閉塞部材を備えていることを特徴とする請求項2に記載の液状化対策装置。
【請求項4】
液状化の可能性のある地盤に埋設され、外周部に複数の孔が形成された埋設管と、
前記埋設管の内側からそれぞれ取り付けられ、当該埋設管内に封入された圧縮空気の圧力によって前記埋設管の内周面に密着して前記複数の孔を塞ぐ閉塞部材と、
前記地盤の地震を検出する地震検出手段と、
この地震検出手段によって前記地盤に液状化が生じる程度の地震を検出した際に、前記埋設管内の内圧を瞬時に減圧させる減圧手段とを備えていることを特徴とする液状化対策装置。
【請求項5】
前記埋設管を複数備え、これら埋設管が平面視において前記地盤に構築された建物の周囲を取り囲むようにして、所定間隔で配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液状化対策装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−108253(P2013−108253A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252806(P2011−252806)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】(511044216)フジミコンサルタント株式会社 (2)
【Fターム(参考)】