説明

液状又はペースト状物質を冷却し霧化する方法と装置

【課題】有効成分の組み込みのために適切なポリマー又は脂質の母材の注射可能な微細粒子の調製方法の提供。
【解決手段】液状又はペースト状の物質又は物質の混合物を迅速に冷却し、霧化する方法及び装置。特に、少量の液状又はペースト状の物質でさえも経済的に冷却し、霧化する方法及び装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状又はペースト状物質を冷却し霧化する方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却法は、物質の特定の特性を改変するために利用されている。冷却すべき物質は、その冷却作用が、冷却面において、冷却剤と冷却すべき物質との間で熱を移動させる方法に基づいている装置で通常処理される。したがって、冷媒と冷却すべき物質との間の熱又は冷気の移動は専ら間接的である。物質を比較的急速に冷却することは、要求されることが多いが、上記方法では、達成できない。また、このような冷却法は、断熱性堆積物が冷却面に生成して冷却工程を損なうことがあるので、結晶化又は凍結を行うには適切でないことが多い。この種の冷却法は、例えば、Rompp Chemielexikon(Chemistry lexicon) and Pahlmann,Taschenbuch der Kaltetechnik(Refrigera tion manual)に記載されている。
【0003】
さらに、工業レベルで、通常の冷蔵法を使って細粉を製造するためスプレー(ネブライジング)塔を使用することが知られている。
【0004】
低温ガスを使用する極低温冷却法と凍結法も一般に使用される技術である。Rompp Chemielexikon and Pahlmann,Taschenbuch der Kaltetechnikには、例えば、冷却すべき物質を、冷媒と共に特に液体窒素又はドライアイスもしくは雪の形態の固体二酸化炭素と共に噴霧する方法が開示されている。このように冷媒を物質と直接接触させると、物質は上記一般に使用される方法よりかなり速く冷却される。液状又はペースト状物質を比較的速く冷却するのに、この方法は適切でない。というのは、物質内部の冷却は、物質自体による熱の移動で決定され、例えば結晶化させるため急速冷却するための冷却面はやはり小さすぎる。この方法で、計量しやすい流動性物質を製造することは、事実上不可能である。
【0005】
米国特許第4,967,571号に記載されているCryopel(登録商標)法、ドイツ特許第44 19 010 C1号に記載されているCryobreak(登録商標)法及びドイツ特許第43 29 110 C1号に記載されているCryofals(登録商標)法は、液状物質を、液体窒素中に滴下して導入することによって極めて急速に冷却する公知の方法である。この冷却法によって、計量可能なペレット化された物質を得ることができる。達成される粒径は、一般に数ミリメートルの範囲内である。その冷却は、常に約77Kの温度で行われるが、この温度は多くの用途で、必要でないか又は望ましくないことさえある。
【0006】
さらに、液状物質を、急速に冷却するため、2ジェット・ノズルを使って、液体窒素に接触させる装置が知られている。この装置には、生成物が、低温の窒素によってノズル内で早くも冷却されて、このノズルを閉塞することがあるという欠点がある。
【0007】
さらに、溶融物質を液体二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素と混合し次いでスプレー塔で膨張させる、ヨーロッパ特許第1 027 144 B1号に記載のVariosol(登録商標)法が知られている。この膨張によって液状物質は冷却・霧化されて細粉が生成する。例えば、国際特許願公開第WO02/051386号に記載されているような製薬目的に適した微細粒子を製造するためにこの方法を使用することは、粒径の再現性がないこと及び粒子の大きさが大きいという欠点がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服して、液状又はペースト状の物質を比較的迅速・霧化に冷却することができ、特に、比較的少量の液状又はペースト状の物質でも、経済的に冷却・霧化させることができる方法と装置を提供することである。
【0009】
この目的は、液状又はペースト状の物質/物質の混合物及び気体二酸化炭素を、加圧下ノズルを通過させてスプレー塔内で膨張させる方法で達成される。同時に別のノズルから液体二酸化炭素をスプレー塔内にスプレーさせる。スプレーされた液状又はペースト状物質/物質の混合物と液体二酸化炭素とが接触すると、液状又はペースト状の物質/物質の混合物の瞬間冷却・霧化が起こる。この方法と装置の概略図を図1に示す。
【0010】
膨張中に、液状又はペースト状の物質/物質の混合物の球形小粒子が生成する。この方法は、優れた再現性を示し、平均直径が、使用されるノズルによって、2-100μm、好ましくは5-15μm又は40-80μmの微細粒子が得られる。さらに、これら粒子は、常に球形でありその粒径の分布の幅は狭い。
【0011】
したがって、本発明の主目的は、液状又はペースト状の物質/物質の混合物を気体二酸化炭素と混合し、次いでその液状又はペースト状の物質/物質の混合物と気体二酸化炭素との混合物を、膨張させて液体二酸化炭素の流れと接触させることによって冷却して物質/物質の混合物を冷却・霧化するステップからなる液状又はペースト状の物質又は物質の混合物を冷却・霧化する方法を提供することである。
【0012】
本発明によるさらなる利点は、物質/物質の混合物の第一ノズルからの流量と液体二酸化炭素の別のノズルからの流量の比率を変えることによって、得られる最終温度を、広範囲に変えることができることである。
【0013】
液体二酸化炭素は、圧力が6-72バールで温度が216-304Kであり、好ましくは圧力が30-70バールで温度が230-304Kでありそして特に圧力が50-68バールで温度が291-301Kであると予想される。
【0014】
貯蔵容器内の気体二酸化炭素の圧力は、1-10バールの範囲内であり、好ましくは1.2-4.5バールの範囲内である。貯蔵容器内の気体二酸化炭素の温度は通常、273K-304Kの範囲内であり好ましくは291K-301Kの範囲内である。
【0015】
この方法は、好ましい圧力範囲と温度範囲の二酸化炭素を、それ以上ガスを処理することなく、低圧及び中圧のタンク又は二酸化炭素のボンベなどの供給システムから直接取り出せるという利点がある。
【0016】
本発明では、液状又はペースト状の物質/物質の混合物と気体二酸化炭素と液体二酸化炭素の混合物を、0-60バールの圧力、好ましくは0-20バールの圧力、そして特に好ましくは約1バールの圧力で膨張させる。大気圧(約1バール)で膨張させることは、充填を非加圧システム中で実施できるという利点がある。
【0017】
本発明によれば、液状又はペースト状の物質/物質の混合物及び/又は気体二酸化炭素及び/又は液状又はペースト状の物質/物質の混合物と気体二酸化炭素の混合物は、少なくとも一つの加熱可能又は冷却可能な管路に供給できる。液状又はペースト状の物質/物質の混合物及び/又は気体二酸化炭素及び/又は液状又はペースト状の物質/物質の混合物と気体二酸化炭素との混合物の温度は、所望の又は必要な温度に設定するため、加熱可能な又は冷却可能な管路を使って制御できる。
【0018】
本発明によれば、液状又はペースト状の物質/物質の混合物は、貯蔵容器、タンクの中で、その容器に設置された攪拌器で混合される。
【0019】
さらに、本発明の目的は、
a. 管路が設置され、かつ液状又はペースト状の物質/物質の混合物を輸送する装置が配置されている液状又はペースト状の物質/物質の混合物の貯蔵容器、
b. 管路が設置されている液体二酸化炭素のソース、
c. 液状又はペースト状の物質/物質の混合物を輸送する管路に接続している管路が設置されている気体二酸化炭素のソース、
d. 液体二酸化炭素、及び気体二酸化炭素と混合された液状又はペースト状の物質/物質の混合物を運び入れる膨張チャンバー、
を備えてなる液状又はペースト状の物質/物質の混合物を冷却する装置によって達成される。
【0020】
この装置は、液状又はペースト状の物質/物質の混合物と気体二酸化酸素との混合物が、膨張装置からの出口に至るまで膨張されないような方式で構築されている。スプレー塔内で、液状又はペースト状の物質/物質の混合物と液体二酸化炭素の確かな直接接触が起こって、液状又はペースト状の物質/物質の混合物の冷却・霧化が達成される。この装置は、液状又はペースト状の物質/物質の混合物の迅速な冷却・霧化を確実に行う。本発明の膨張装置を使用して、液状又はペースト状の物質/物質の混合物の容易に流動可能な小粒子が製造される。
【0021】
液状又はペースト状の物質/物質の混合物及び/又は気体二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を運ぶ管路、装置又は器具;及び/又は液状又はペースト状の物質/物質の混合物と気体二酸化炭素との混合物を運ぶ管路、装置又は器具は、二酸化炭素及び/又は物質/物質の混合物を運ぶ個々のトレイン(train)に所望の又は必要な温度を設定するため、それらを加熱又は冷却する装置を備えていて有利である。単一又は複数の管路が、別個に加熱又は冷却されることが好ましい。加熱するための内部構造を有する配管が好ましい。
【0022】
加熱又は冷却するための装置は、液状又はペースト状の物質/物質の混合物の貯蔵容器に配置された管路に設置されると考えられる。
【0023】
本発明によれば、膨張装置は二つの弁と二つのノズルを備えている。使用される弁は、開閉する弁又は制御弁であればよく、スプレー塔を前記貯蔵容器及び液体二酸化炭素のソースに接続する管路に配置される。
【0024】
液体二酸化炭素用のノズル及び液状又はペースト状の物質/物質の混合物と気体二酸化炭素との混合物用のノズルは、遮蔽器具、好ましくはジャケットチューブを備えており有利である。ジャケットチューブを有するノズルを使用すると、流れの中に少量の空気しか吸引されないという利点がある。この場合の二酸化炭素は、少なくとも一部が、二酸化炭素のスノーに変換される。ノズルにおいて液体二酸化炭素が膨張している間に、通常、約30重量%の二酸化炭素スノーと約70重量%の気体二酸化炭素が生成する。
【0025】
このような膨張装置のチューブは準備処理を行うことが好ましい。その準備処理は、研磨又はコーティング又はセパレートヒーティング(separate heating)で実施される。本発明では、膨張装置のチューブの内面をテフロン(登録商標)でコートすることが、特に好ましい。
【0026】
さらに、本発明では、液状又はペースト状の物質/物質の混合物と気体二酸化炭素との混合物を膨張させるのに使用するノズルが、その底部に、その表面で冷却された物質によって障害物が生じるのを防ぐため、断熱コーティングを備えていて有利である。
【0027】
本発明では、液状又はペースト状の物質/物質の混合物と気体二酸化炭素との混合物を膨張させるのに使用するノズルは、毛細管流ノズル又はスプレー(ネブライジング)ノズルでよい。
【0028】
その毛細管流ノズルは、ワンコンポーネントノズルであり、直径は0.05-0.25mmの範囲内であり、好ましくは0.25mm又は0.20mm又は0.17mm又は0.12mm又は0.08mmである。平均粒径が40-80μmの範囲内の粒子を得ることができる。この毛細管ノズルの概略図を図2に示す。
【0029】
一方、そのスプレー(ネブライジング)ノズルは、ツーコンポーネントノズルであり、その直径は0.05-0.25mmの範囲内で、好ましくは0.25mmであり、そして液状又はペースト状の物質/物質の混合物と気体二酸化炭素との混合物、及びその後、霧化剤として働く単なる気体二酸化炭素の両者を運ぶ。平均粒径が5-15μmの範囲内の粒子が得られる。このスプレー(ネブライジング)ノズルの概略図を図3に示す。
【0030】
スプレー(ネブライジング)ノズル中の気体二酸化炭素は、圧力が、1-10バールで温度が273−304Kであり、好ましくは圧力が3.5-7.5バールで温度が291-301Kであると考えられる。
【0031】
本発明では、液体二酸化炭素のソースは恒温に保持されている。この条件は、好ましくはこのソースが中に配置される恒温キャビネットによって達成される。
【0032】
本発明の方法と本発明の装置は、ホモジナイジング、粉末化、ペレット化、顆粒化及び結晶化する際に有利に利用できる。
【0033】
例えば、本発明の方法と装置は、化粧品産業又は化学産業のみならず食品産業で有用な微細粒子を製造する際に有利に使用できる。
【0034】
本発明の方法と装置は、製薬目的で脂質の微細粒子(ミクロスフェア)を製造するのに特に適している。このような微細粒子は、ポリマー、脂質又はそれらの混合物で構成されていてもよい。その脂質又はポリマーの母材が本発明の方法でスプレーされるときに有効成分を含有していてもよく、又は微細粒子が本発明の方法で製造されるときに有効成分が微細粒子の表面層に吸収されていてもよい。
【0035】
脂質の場合、異なる親水性/疎水性と組成を有する幾種類もの脂質、例えば、トリ-、ジ-及びモノ-グリセリド類、PEG-もしくはPPG-グリセリド類、サッカリド-グリセリド類、脂肪酸類、リン脂質類並びにそれらの混合物を使用できる。かような脂質母材は、医薬として許容できる添加剤、例えば、生体接着性(bioadhesive)又は吸収促進性を有するポリマーであって、アクリルポリマー類(Carbopol(登録商標)、Polycarbophil,Noveon(登録商標))、中位連鎖脂肪酸類及びポリエチレングリコール類、可溶化剤(Cremophor(登録商標)、Solutol(登録商標))からなる群から選択されるポリマーなどを含有していてもよい。
【0036】
微細粒子の母材は、親水性又は疎水性のポリマー、例えば、PEG類、Poloxamer類(例えばLutrol(登録商標)F68、Lutrol(登録商標)F127)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、乳酸-グリコール酸コポリマー(poly(lactic-co-glycolic acid))(PLGA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリεカプロラクトンで構成されてもよい。
【0037】
有効成分は、任意のタイプの「小有機分子」すなわち治療のために有効なペプチド又はタンパク質であればよい。脂質微細粒子中に組み込むことができる治療のために有効なペプチド又はタンパク質は、以下の三つの主要クラスに分類できる。
−ホルモン類、サイトカイン類、リンホカイン類、ケモカイン類を含む制御因子、それらの受容体及び酵素を含む細胞の増殖と代謝の他の制御因子;
−血清誘導血液因子及び酵素的フィブリノーゲン活性化剤を含む血液製剤;
−モノクローナル抗体類。
【0038】
上記タンパク質又はペプチドとしては、限定されないが、以下の例:AAT、UK、PUK、ストレプトキナーゼ、tPA、SOD、インスリン、GH、GRF、ANF、GnRH、LHRH類似体、エリスロポエチン、顆粒球CSF、顆粒球マクロファージCSF、インターロイキン-1、インターロイキン-2、インターロイキン-3/多能性CSF、インターロイキン-4、インターロイキン-5(又は好酸球CSF)、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-8、インターロイキン-9、インターロイキン-10、インターロイキン-11、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、白血病抑制因子のマクロファージCSF、TNF、幹細胞因子、RANTESとその変異体、MCP-1とその変異体並びにそれらの受容体が挙げられる。
【0039】
本発明の好ましい実施態様では、前記タンパク質又はペプチドは、インターロイキン-6、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、IL-18結合タンパク質、GnRH、LHRH類似体、GH、GRF、ゴナドトロピン類(FSH、LH及びhCGなど)並びにTNF受容体もしくはその可溶性フラグメントからなる群から選択される。
【0040】
本発明の方法と本発明の装置は、好ましくは低溶解性であるが必ずしも低溶解性でない小有機分子を、単独で又は公知の添加剤、界面活性剤、自己乳化剤と組み合わて微粉化するのにも適している。
【0041】
ここで、本発明の方法と装置を、図面を参照して実施例によってより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】方法と装置の概略図である。
【図2】毛細管ノズルの概略図である。
【図3】スプレー(ネブライジング)ノズルの概略図である。
【図4】毛細管ノズルで製造したImwitor 900製LM。 再現性を評価するため類似の工程条件で製造したImwitor 900製LMのバッチのレーザー回折計(LD)による測定結果。(a) 0.25mmの生成物ノズルによる試験、(b) 0.12mmの生成物ノズルによる試験。ヒストグラムグラフの誤差バーは、同じバッチ由来の3個の試料について計算した標準偏差を参照している。頻度曲線(ベル形)とアンダーサイズ曲線(シグマ形)は、同じバッチ由来の3個の試料の平均曲線である。
【図5】再現性を評価するため類似の工程条件でスプレー(ネブライジング)ノズルを使って製造したImwitor 900製LMのバッチのLDによる測定結果。ヒストグラムグラフの誤差バーは、同じバッチ由来の3個の試料について計算した標準偏差を参照している。頻度曲線(ベル形)とアンダーサイズ曲線(シグマ形)は、同じバッチ由来の3個の試料の平均曲線である。
【図6】直径の異なる2種類の毛細管流ノズルを使って製造したCompritol E ATO製LMのバッチのLDによる測定結果。ヒストグラムグラフの誤差バーは、同じバッチ由来の3個の試料について計算した標準偏差を参照している。頻度曲線(ベル形)とアンダーサイズ曲線(シグマ形)は、同じバッチ由来の3個の試料の平均曲線である。
【図7】再現性を評価するため類似の工程条件でスプレー(ネブライジング)ノズルを使って製造したCompritol E ATO製LMのバッチのLDによる測定結果。ヒストグラムグラフのY誤差バーは、同じバッチ由来の3個の試料について計算した標準偏差を参照している。頻度曲線(ベル形)とアンダーサイズ曲線(シグマ形)は、同じバッチ由来の3個の試料の平均曲線である。
【図8】Compritol E ATO/PEG 6000製LMのLDによるデータとグラフ(頻度曲線(ベル形)とアンダーサイズ曲線(シグマ形))である。
【実施例】
【0043】
実施例1−本発明の方法による微細粒子の製造
1.1 材料の溶融とその母材への薬物の組込み
処理すべき物質(脂質及び/又はポリマーの混合物)を、使用される物質に対応して適正な温度の恒温浴中で溶融する。常に攪拌しながら、その溶融母材に薬物を添加する。次いでその溶融塊を、適温に恒温にした噴霧器の供給容器に注入する(溶融塊を液状に保持するため)。あるいは、この最初の溶融ステップは、噴霧器の供給容器が攪拌器を備えているので、その供給容器内で直接行なってもよい。
【0044】
あるいは、特定量の溶媒を前記混合物に添加してもよい。これを行うことによって、薬物を適切な溶媒に溶解する前に、母材に組み込むことができるか又は各種の添加物(例えば各種のポリマー及び脂質など)を完全に混合することによって組成物を調製できる。
【0045】
1.2 材料の処理
次に、前記溶融塊を、制御された圧力下、ノズル(適温に恒温にされている)を通じてスプレー(ネブライジング)塔に運び、その塔において、液体CO2のスプレー(ネブライジング)効果によって微細粒子が生成する。次に、その粉末形状の生成物を、スプレー(ネブライジング)塔の底部の適当な開口から集める。
【0046】
1.3 微細粒子の物理化学的特性
下記実施例に記載の微細粒子は、主にその粒径で特性を決定した。いくつかの試料には、熱分析と光学顕微鏡分析も実施した。
【0047】
1.3.1 粒径分析
微細粒子/ミクロスフェアは、レーザー回折計(LD)のMastersizer Microplus MAF 5001(Malvern)を使って、粒径分布で特性を決定した。小容量の試料分散ユニット(容量100ml)を使って分析した。約50μlのTween 20(商標)(Polysorbate 20としても一般に知られており、界面活性剤のモノ-9オクタデセノエートポリ(オキシ-1-エタンジイル)である)を、懸濁化剤として、30-40mgの微細粒子(この量の材料で、分析の基準によって要求されるような10-30%のオブスキュレーション値(obscuration value)が与えられる)に添加して、第一にスラリーを調製した。そのスラリーに、5mlの脱イオン水を段階的に添加し、生成した懸濁液を、3分間、超音波処理した。次いで、その懸濁液を小容積のユニットに注入し、ポンプの回転速度が1500rpmの分散ユニット内で循環させた。各試料について、3回ずつ測定し、次いでデータを、フラウンホーファーのプレゼンテーションを使って処理した。各バッチについて3回ずつ分析した。
【0048】
集団の大きさを以下の大きさのパラメータで説明する。
D(v,0.1)は、粒子の10%(容積)がこの値より小さい直径を有することを意味する。
D(v,0.5)は、粒子の50%(容積)がこの値より小さい直径を有することを意味する。
D(v,0.9)は、粒子の90%(容積)がこの値より小さい直径を有することを意味する。
スパン(span)は、(D(v,0.9)−D(v,0.1))/D(v,0.5)として計算され、直径の分布幅の尺度である。
【0049】
1.3.2 示差走査熱量測定(DSC)分析
下記操作条件下、Pyris 1示差走査熱量計(Perkin Elmer)を使って、加熱モードと冷却モードの両方で、DSC分析を実施した。
試料重量:3-6mg
温度範囲:0℃-100℃
走査速度:5℃/min
panの容量:50μL(孔つきpan)
パージ・ガス(N2)流量:20cc/min
【0050】
1.3.3 光学顕微鏡による形状の評価
Axiolab A(Zeiss)光学顕微鏡(Axiovision software)を使って、光学顕微鏡による分析を行った。
【0051】
LM試料を、そのまま又は水+Tween 20中に懸濁させた後、顕微鏡ガラス上においた。いくつかの試料については、その懸濁液を室温で乾燥した後に分析した。分析は、50x又は200xの倍率を利用して、透過光モードで行ったが、いくつかの場合は反射光モードで行った。
【0052】
実施例2−脂質の微細粒子(LM)
材料
下記実施例で、下記材料を試験した。
Imwitor 900(グリセリンモノステアレート)、Condea
Compritol E ATO(グリセリンベヘネート)、Gattefosse
Lutrol E 6000(PEG 6000)、Basf
Gelucire 50/13(ステアロイルマクロゴールグリセリド:モノ-、ジ-及びトリ-グリセリド並びにポリエチレングリコールのモノ-及びジ-脂肪酸エステルの混合物)、Gattefosse
【0053】
2.1 ノズル口径が異なる2種類の毛細管流ノズルを使用して行うLMの製造
200gのImwitor 900を恒温水浴(75℃)内で熔融し、供給容器に注入し次いで下記工程条件で処理した。
【表1】

繰返し試験を実施し、粒径分析の結果を図4に示す。粒径は光学顕微鏡でも確認した。
【0054】
2.2 スプレー(ネブライジング)ノズルを使用して行うImwitor 900製 LMの製造
200gのImwitor 900を恒温水浴(75℃)内で熔融し、供給容器に注入し次いで下記工程条件で処理した。
【表2】

繰返し試験を実施し、粒径分析の結果を図5に示す。粒径は光学顕微鏡でも確認した。
【0055】
2.3 ノズル口径が異なる2種類の毛細管流ノズルを使用して行うCompritol E ATO製LMの製造
200gのCompritol E ATOを恒温水浴(85℃)内で熔融し、供給容器に注入し次いで下記工程条件で処理した。
【表3】

粒径分析の結果を図6に示す。粒径は光学顕微鏡でも確認した。
【0056】
2.4 スプレー(ネブライジング)ノズルを使用して行うCompritol E ATO製LMの製造
200gのCompritol E ATOを恒温水浴(85℃)内で熔融し、供給容器に注入し次いで下記工程条件で処理した。
【表4】

2回繰返し試験を行った。粒径分析の結果を図7に示す。粒径は光学顕微鏡でも確認した。
【0057】
2.5 毛細管流ノズルを使用して行うCompritol E ATO-PEG 6000製 LM の製造
200gのCompritol E ATO/PEG 6000(8:2)混合物を恒温水浴(85℃)内で熔融し、供給容器に注入し次いで下記工程条件で処理した。
【表5】

粒径分析の結果を図8に示す。粒径は光学顕微鏡でも確認した。
【0058】
2.6 毛細管流ノズルを使用して行うGelucire 50/13製LMの製造
200gのGelucire 50/13を恒温水浴(60℃)内で熔融し、供給容器に注入し次いで下記工程条件で処理した。
【表6】

材料が水(LD分析するための媒体として通常使用される)に一部可溶化されるので、LD分析は実施しなかった。粒径は光学顕微鏡でも測定した。
【0059】
2.7 スプレー(ネブライジング)ノズルを使用して行うGelucire 50/13製LMの製造
100gのGelucire 50/13を恒温水浴(60℃)内で熔融し、供給容器に注入し次いで下記工程条件で処理した。
【表7】

材料が水(LD分析するための媒体として通常使用される)に一部可溶化されるので、LD分析は実施しなかった。粒径は光学顕微鏡でも測定した。
【0060】
結論
上記実施例で示したように、本発明の方法によって、下記の有利な特性を有する微細粒子を製造することができる。
・制御された粒径の製品:D(v,0.5) は、毛細管流ノズルを使用したとき、直径が約40-80μmであり、スプレー(ネブライジング)ノズルを使用したときは15μm又は10μmまで小さくなる(おそらく5μmのものもある)(これらのデータは、これまで試験した材料すなわち主としてImwitor 900とCompritol E ATOのデータを参照したものである)。
・ 比較的狭い粒径分布。
・ 球形の粒子。
【0061】
このような特性によって、注射用微細粒子としてのみならず経口投与、鼻腔内投与及びおそらく肺投与の経路用の送達システムとして利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状又はペースト状の物質/物質の混合物を気体二酸化炭素と混合し、次いで液状又はペースト状の物質/物質の混合物と気体二酸化炭素との混合物を、膨張させ次に液体二酸化炭素の流れと接触させることによって冷却して、前記物質/物質の混合物を冷却し霧化するステップからなる液状又はペースト状の物質又は物質の混合物を冷却し霧化する方法。
【請求項2】
液体二酸化炭素が、圧力は6-72バールで、温度は216-304Kである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
液体二酸化炭素が、圧力は30-70バールで、温度は230-304Kである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
気体二酸化炭素が、圧力は50-68バールで、温度は291-301Kである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
貯蔵容器中の気体二酸化炭素が、圧力は1-10バールで、温度は273-304Kである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
液状又はペースト状の物質/物質の混合物及び/又は液状又はペースト状の物質/物質の混合物と気体二酸化炭素との混合物が、少なくとも一つの加熱可能な又は冷却可能な管路に供給される請求項1-5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
最終の平均粒径が2-100μmの範囲内にある請求項1に記載の方法。
【請求項8】
最終の平均粒径が40-80μmの範囲内にある請求項1に記載の方法。
【請求項9】
最終の平均粒径が5-15μmの範囲内にある請求項1に記載の方法。
【請求項10】
液状又はペースト状の物質/物質の混合物が、気体二酸化炭素と、貯蔵容器中で、その容器に設置された攪拌器で混合される請求項1-9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
(a)管路が設置されかつ液状又はペースト状の物質/物質の混合物を輸送する装置が配置されている液状又はペースト状の物質/物質の混合物の貯蔵容器、
(b)管路が設置されている液体二酸化炭素のソース、
(c) 液状又はペースト状の物質/物質の混合物を輸送する管路に接続されている管路が設置されている気体二酸化炭素のソース、
(d)液体二酸化炭素、及び気体二酸化炭素と混合された液状又はペースト状の物質/物質の混合物が運び入れられる膨張チャンバー、
を備えてなる液状又はペースト状の物質/物質の混合物を冷却する装置。
【請求項12】
管路を加熱又は冷却する装置が、気体二酸化炭素のソースに設置されている管路に配置されている請求項11に記載の装置。
【請求項13】
気体と液体の二酸化炭素のソースが恒温キャビネットの中に入っている請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
管路を加熱又は冷却する装置が、液状又はペースト状の物質/物質の混合物の貯蔵容器に設置されている管路に設置されている請求項10-13のいずれか一つに記載の装置。
【請求項15】
混合するための装置が、液状又はペースト状の物質/物質の混合物の貯蔵容器に設置されている請求項11-14のいずれか一つに記載の装置。
【請求項16】
膨張装置が二つのノズルと二つの弁を有している請求項11-15のいずれか一つに記載の装置。
【請求項17】
前記ノズルと弁が断熱コーティングを有している請求項11-16のいずれか一つに記載の装置。
【請求項18】
ノズルが、毛細管流ノズル又はスプレー(ネブライジング)ノズルである請求項11-17のいずれか一つに記載の装置。
【請求項19】
弁が開閉する弁又は制御弁である請求項17又は18に記載の装置。
【請求項20】
粉末化、ペレット化、顆粒化及び結晶化するための請求項1に記載の方法又は請求項11に記載の装置の使用。
【請求項21】
製薬用途に使う微細粒子を製造するための請求項1に記載の方法又は請求項11に記載の装置の使用。
【請求項22】
微細粒子が一種又は二種以上の治療のため有効な物質を含有している請求項1に記載の方法又は請求項11に記載の装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−161796(P2012−161796A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−85640(P2012−85640)
【出願日】平成24年4月4日(2012.4.4)
【分割の表示】特願2006−537294(P2006−537294)の分割
【原出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(309025524)メルク セローノ ソシエテ アノニム (49)
【Fターム(参考)】