説明

液状有機化合物に対する流体の溶解度の測定方法及び装置

【課題】
液状有機化合物に対する超臨界状態の流体の溶解度、溶解量を短時間に測定できる簡便な方法及び装置を提供すること。
【解決手段】
(1)液状有機化合物を収納した容器内に加圧流体を供給する段階、該流体を超臨界状態にする段階、該容器に振動を与える段階、及び該液状有機化合物が該流体を収着した後の該容器の温度、圧力、及び該容器の重量変化を測定する段階を含むことを特徴とする、液状有機化合物に対する流体の溶解度の測定方法及び装置、(2)液状有機化合物を収納した容器内に加圧流体を供給する段階、該流体を超臨界状態にする段階、該容器の圧力を下げて、該流体を収着した液状有機化合物を分離し、捕捉する段階、及び該液状有機化合物が収着した該流体を分離し、その収着量を測定する段階を含むことを特徴とする流体の溶解量の測定方法及び装置、及び(3)それらを組み合わせた装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状有機化合物に対する流体の溶解度の測定方法及び装置に関し、さらに詳しくは、簡便な手法によって、短時間で精度よく液状有機化合物に対する流体の溶解度を測定することができる方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬質ポリウレタンフォーム等の発泡成形体は、その優れた断熱性、緩衝性、成形性、接着性等により、住宅や冷蔵倉庫等の断熱材、建築・土木用の材料・構造材、家電製品の枠体等として広く活用されている。
硬質ポリウレタンフォーム等の樹脂発泡成形体の代表的な製造方法として、物理発泡法法がある。物理発泡法は、低沸点の物理発泡剤により発泡成形する方法である。例えば、硬質ポリウレタンフォームは、一般にポリイソシアネートとポリオールを発泡剤の存在下で反応させることにより製造される。発泡剤としてはハイドロフルオロカーボン(HFC)やハイドロカーボン等が用いられているが、地球温暖化等の環境面、引火性等の安全面で課題がある。
このため、化学発泡方法として水とポリイソシアネートとの反応により発生する二酸化炭素を発泡成形に利用している。しかし、この方法には、気泡収縮、成形体密度調整の必要性、成形体の脆化、接着性の低下、熱伝導率の低下等の様々な課題がある。
【0003】
そこで、水とポリイソシアネートとの反応により発生する二酸化炭素に加えて、二酸化炭素ガスを発泡剤として併用する技術も提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1は、ポリウレタンフォーム又はポリイソシアヌレートフォームを製造するのに必要な複数の原料成分に、二酸化炭素をその臨界圧力で混入し、急減圧して発泡成形体を製造する方法である。亜臨界ないし超臨界状態の二酸化炭素を用いることは有力な手段であるが、特許文献1の方法は、短いライン中の混合であるため、二酸化炭素の均一な分散が困難であり、均一な微細発泡成形体を得ることが困難である。
【0004】
一方、超臨界流体を用いた発泡プロセス、分離抽出プロセス等の設計において、液状有機化合物に対する超臨界流体の溶解度は重要な因子である。それにも関わらず、これまでの報告例は少なく、溶解度データの測定方法、及びデータ蓄積は不十分である。
例えば、ウレタン原料であるポリオールと二酸化炭素の高圧下での溶解状態を確認するために、目視できる容器を用いて、容器中の曇りの発生具合により判断する方法(例えば、非特許文献1)がある。しかしながら、非特許文献1の方法では、液状化合物に対する超臨界流体の溶解性を、特定の温度、圧力において曇りが発生するか否かで決定しているため、溶解量を定量化することができない。また、液状有機化合物の粘度、表面張力等の物理的性質の影響があるために、液状有機化合物と超臨界流体の温度、圧力が異なる条件で使用する場合には、液状有機化合物に対する溶解性の比較ができないという問題がある。
また、液状有機化合物を収納した静止状態の容器にポンプを利用して超臨界流体を液状有機化合物と超臨界流体が均一に溶解する為には長時間を要するという問題がある。
【0005】
硬質ポリウレタンフォーム等の発泡成形体の断熱性等を向上させるためには、均一な微細発泡制御を行うことが不可欠である。しかしながら、上記のように、液状有機化合物に対する超臨界流体の溶解度データが不十分であることが、微細発泡セルを有する高品質の成形体の製造等に対する障害の一つとなっていた。また、液状有機化合物に対する流体の溶解度の測定をしてまで、超高品質の硬質ポリウレタンフォーム等の発泡成形体を得ようとする試みがなされていないのが実情である。
【0006】
【特許文献1】特開2002−20444号公報
【非特許文献1】クリステン・パークス(KRISTEN L.PARKS)他, 「ポリマー・エンジニアリング アンド サイエンス(POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE)」(米国), 1996年10月,第136巻, 第19号, P.2404−2431
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、プラスチック原料をはじめとする液状有機化合物に対する亜臨界状態又は超臨界状態の流体の溶解度、溶解量を比較的短時間に測定できる簡便な方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、従来にない超高品質の硬質ポリウレタンフォーム等の発泡成形体を得るため、液状有機化合物に対する亜臨界状態又は超臨界状態の流体の溶解度及び溶解量を測定するための簡便な方法及び装置を開発すべく鋭意研究した。その結果、液状有機化合物と超臨界流体等を収納した容器に振動を与えたり、攪拌混合して拡散を促進させ、その重量変化を測定すること、又は抽出、分離操作を行うことにより、上記目的を達成しうることを見出した。
すなわち、本発明は、
(1)液状有機化合物を収納した容器内に加圧流体を供給する段階、該流体を亜臨界状態又は超臨界状態にする段階、該容器に振動を与える段階及び/又は該容器内を撹拌混合する段階、並びに該液状有機化合物が該流体を収着した後の該容器の温度、圧力、及び該容器の重量変化を測定する段階を含むことを特徴とする、液状有機化合物に対する流体の溶解度の測定方法及びその装置、
(2)液状有機化合物を収納した容器内に加圧流体を供給する段階、該流体を亜臨界状態又は超臨界状態にする段階、該容器の圧力を下げて、該流体を収着した液状有機化合物を分離し、捕捉する段階、及び該液状有機化合物が収着した該流体を分離し、その収着量を測定する段階を含むことを特徴とする、液状有機化合物に対する流体の溶解量の測定方法及びその装置、並びに
(3)上記(1)の装置と、上記(2)の装置とを組み合わせたことを特徴とする液状有機化合物に対する流体の溶解度の測定装置
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の測定方法及び測定装置によれば、任意の温度、圧力において、液状有機化合物に対する亜臨界状態又は超臨界状態の流体の溶解度、溶解量を、簡便な手法によって、短時間で精度よく測定することができる。
また、各温度、圧力における液状有機化合物に対する亜臨界状態又は超臨界状態の流体の溶解量を把握することにより、該流体を発泡剤として発泡体を作製する場合の発泡倍率の制御データとしたり、液状有機化合物を分離、抽出する場合の制御データとしたり、多成分で構成されるプラスチック原料を配合する場合の基礎データとして利用することができ、各種のプロセスの設計、操作を簡易かつ効率化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、測定対象である液状有機化合物としては特に制限はないが、ポリウレタンフォームの原料であるポリオール化合物及びイソシアネート化合物が好ましい。
ポリオール化合物としては、例えば、エステル系、アジペート系、エーテル系、ラクトン系、カーボネート系のポリオール化合物等が挙げられる。
エステル系及びアジペート系のポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ブテンジオール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1、5−ペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ビスフェノールA等の多価アルコールのうち少なくとも1種と、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、芳香族カルボン酸等の二塩基酸のうち少なくとも1種との縮合反応により得られる化合物等が挙げられる。
【0011】
エーテル系のポリオール化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、ビスフェノールA、3−メチル−1、5−ペンタンジオール等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、トリス(2−ヒドロキシルエチル)イソシアヌレート、シュークローズ、グルコース、ソルビトール、メチルグルコキシド等の多価アルコールやエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等のアミン化合物等の活性水素基含有化合物が挙げられる。
また、上記活性水素基含有化合物のうち少なくとも1種を開始剤としてアルキレンオキシド等を付加重合することによって得られるものも用いられる。
【0012】
ラクトン系のポリオール化合物としては、例えば、ポリカプロラクトングリコール、ポリプロピオラクトングリコール、ポリバレロラクトングリコール等が挙げられる。
カーボネート系のポリオール化合物としては、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール等の多価アルコールと、ジエチレンカーボネート、ジプロピレンカーボネート等との脱アルコール反応により得られる化合物等が挙げられる。
【0013】
イソシアネート化合物としては、炭素数(NCO基中の炭素を除く)6〜20の芳香族ジイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネート、炭素数4〜15の芳香脂肪族ジイソシアネートおよびこれらのジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物など)が挙げられる。
より具体的には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ノルボルナンジメチルイソシアナート等が挙げられる。
上記のポリオール化合物及びイソシアネート化合物は、一種単独で又は二種以上を混合して使用することができる。
【0014】
また、これら化合物のうち特にポリオール化合物はポリウレタン製造時には触媒、整泡剤、発泡剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤等と予め混合されてポリオール成分液として用いられる場合が多く、これらの混合物を測定対象とすることができる。
触媒はイソシアネートとポリオール化合物の反応やイソシアネートの二量化、三量化を進行させる役割で添加され、公知の触媒を使用することができる。具体的にはトリエチレンジアミン、2−メチルトリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、ペンタメチルヘキサンジアミン、ジメチルアミノエチルエーテル、トリメチルアミノプロピルエタノールアミン、トリジメチルアミノプロピルヘキサヒドロトリアジン、三級アンモニューム塩等の三級アミンや酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、ジブチルチンジラウレート、オクチル酸鉛等の有機金属化合物を挙げられる。
整泡剤、発泡剤、難燃剤、その他の添加剤も限定されるものでなく、ポリウレタンフォームの製造において使用されるものは全て使用できる。具体的には、整泡剤としては、ジメチルシリコンのエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加重合物等が挙げられる。発泡剤としては、1,1,1,3,3,−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3,−ペンタフルオロブタン、1,1,2−テトラフルオロエタン等のHFC類、ペンタン、シクロペンタン等の炭化水素類、水等が挙げられる。難燃剤としては、トリエチルフォスフェート、トリス(2,3ジブロモプロピル)フォスフェート等が挙げられる。その他の添加剤としては、三酸化アンチモン、ゼオライト等の充填剤や顔料、染料等の着色剤が挙げられる。
【0015】
本発明において用いることのできる流体としては、亜臨界状態又は超臨界状態とすることのできる流体であれば特に制限はないが、好ましい流体は、亜臨界状態又は超臨界状態の二酸化炭素である。
ここで、「亜臨界状態の二酸化炭素」とは、圧力が二酸化炭素の臨界圧力以上でありかつ温度が臨界温度未満である液体状態の二酸化炭素、或いは圧力が二酸化炭素の臨界圧未満でありかつ温度が臨界温度以上である気体状態の二酸化炭素、又は、温度及び圧力が共に臨界点未満ではあるがこれに近い状態をいう。より、具体的には、温度が20℃〜31℃でかつ圧力が5MPa以上の二酸化炭素が好ましい。
また、「超臨界状態の二酸化炭素」とは、圧力が二酸化炭素の臨界圧力(7.38MPa)以上であり、かつ温度が臨界温度(31.1℃)以上である状態の二酸化炭素をいう。二酸化炭素を超臨界状態とするためには、温度を31.1℃以上、圧力7.38MPa以上、ウレタンフォーム原料の使用状態を考慮すると好ましくは35〜50℃、8〜20MPとすることが好ましい。
亜臨界状態又は超臨界状態の二酸化炭素は、拡散性や溶解性に優れ、その密度を連続的に大幅に変化できる特徴を持っているため、対環境性に優れた溶媒である。
【0016】
次に、図1を参照して本発明の第1群発明、第2群発明、及び第3発明について説明する。図1は、本発明を具体化した態様の装置の一例を示す概略図である。
<第1群発明>
第1群発明は、液状有機化合物を収納した容器内に加圧流体を供給する段階、該流体を亜臨界状態又は超臨界状態にする段階、該容器に振動を与える段階及び/又は該容器内を撹拌混合する段階、並びに該液状有機化合物が該流体を収着した後の該容器の温度、圧力、及び該容器の重量変化を測定する段階を含むことを特徴とする、液状有機化合物に対する流体の溶解度の測定方法及びその装置である。
【0017】
図1において、液体状態の二酸化炭素は、液化二酸化炭素ボンベ等の二酸化炭素容器1に貯蔵されており、空気駆動式ブースターポンプ等のポンプ2を介して、所定圧力とされ、熱交換器3を経て加熱され、小型圧力容器等の圧力容器4に供給される。圧力容器4には、予め、測定対象の液状有機化合物が所定量収納されているので、供給された二酸化炭素は、圧力容器4内で液状有機化合物と接触する。また、圧力容器4の重量は、ロードセル等の重量測定装置5により測定できるように構成されている。
二酸化炭素を亜臨界状態、又は超臨界状態にする場合は、二酸化炭素を圧力容器4に供給し液状有機化合物と接触させた後、亜臨界状態、又は好ましくは超臨界状態とすることができる。しかし、予め、ポンプ2により二酸化炭素の臨界圧力以上の一定圧力となるように調整し、熱交換器3により二酸化炭素の臨界温度以上に昇温して超臨界二酸化炭素としてから、液状有機化合物と接触させることがより好ましい。
【0018】
次に、圧力容器4をラインから取り外し、必要に応じて、恒温槽等(図示せず)に収納し、二酸化炭素を亜臨界状態、又は好ましくは超臨界状態、特に温度35〜50℃、8〜20MPaに調整した後、圧力容器4に振動を与えて充分に接触させ、液状有機化合物に対する二酸化炭素の拡散、溶解、ないし収着を促進させる。圧力容器4に振動を与える代りに、又は振動を与えながら容器内を撹拌混合することもできる。容器内を撹拌混合する手段としては、撹拌子を容器内に入れておき、常法により撹拌子を回転撹拌する方法が挙げられる。
液状有機化合物が二酸化炭素を収着した後、その時の圧力容器4の温度及び圧力、圧力容器4の重量を測定することにより亜臨界状態又は超臨界状態の流体の溶解度を測定することができる。
【0019】
液状有機化合物に対する亜臨界状態又は超臨界状態の流体の溶解度は、以下の式により算出することができる。
(1)液状有機化合物に対する流体の溶解度(重量%)
=(液状有機化合物に溶解した流体の溶解量/液状有機化合物の重量(封入量)
×100
(2)液状有機化合物に溶解した流体の溶解量(重量)
=流体の封入量−容器空寸部の超臨界流体の理論封入量
=流体の封入量−(容器空寸部の容積×超臨界流体の比重)
(3)流体の注入量
=流体の注入後の容器重量−注入前容器の重量
(4)容器空寸部の容積
=容器内容積−液状有機化合物の容量
=容器内容積−(液状有機化合物の封入量/液状有機化合物の比重)
【0020】
<第2群発明>
第2群発明は、液状有機化合物を収納した容器内に加圧流体を供給する段階、該流体を亜臨界状態又は超臨界状態にする段階、該容器の圧力を下げて、該流体を収着した液状有機化合物を分離し、捕捉する段階、及び該液状有機化合物が収着した該流体を分離し、その収着量を測定する段階を含むことを特徴とする、液状有機化合物に対する流体の溶解量の測定方法及びその装置である。
図1において、液体状態の二酸化炭素は、二酸化炭素容器1からポンプ2を介して、所定圧力とされ、熱交換器3を経て加熱され、容器(抽出器)6に供給される。抽出器6には、予め、測定対象の液状有機化合物が所定量収納されている。液体状態の二酸化炭素は、抽出器6内で、亜臨界状態、又は好ましくは超臨界状態、特に温度35〜50℃、8〜20MPaとされる。
二酸化炭素を亜臨界状態、又は超臨界状態にする場合は、二酸化炭素を抽出器6に供給し液状有機化合物と接触させた後、亜臨界状態、又は好ましくは超臨界状態とすることができる。しかし、予め、ポンプ2により二酸化炭素の臨界圧力以上の一定圧力となるように調整し、熱交換器3により二酸化炭素の臨界温度以上に昇温して超臨界二酸化炭素としてから、液状有機化合物と接触させることがより好ましい。また、抽出器6の外壁をジャケット構造とし、ジャケット内に温水等の熱媒を通して、抽出器6内の温度を一定に保持することができる。
【0021】
亜臨界状態、又は超臨界状態の二酸化炭素を一定時間、抽出器6内に保持して、測定対象の液状有機化合物を二酸化炭素中に拡散、抽出させた後、調圧弁8により減圧し、二酸化炭素中に拡散、抽出された液状有機化合物を分離器9に移送し、捕捉する。分離器9は、その外壁をジャケット構造とし、ジャケット内に温水等の熱媒を通して、分離器9内の温度を一定に保持することができる。
次いで、分離器9で液状有機化合物が収着した二酸化炭素を分離して回収する。二酸化炭素が分離された液状有機化合物は、分離器9の下部から回収することができる。また、回収した二酸化炭素は、ポンプ2の上流に移送し、循環し、再利用することができる。回収された液状有機化合物(抽出器内の残量)と回収された二酸化炭素の量を測定する。
【0022】
なお、圧力容器4及び抽出器6には、二酸化炭素の拡散、溶解、収着状態を目視で確認できるようにするために、サファイアガラス等を付設した覗き窓7を設けておくことが好ましい。覗き窓があれば、例えば、液状有機化合物と亜臨界状態又は超臨界状態の流体が相分離を起こしたり、発泡している状態を確認し、必要な対応をとることが可能となる。覗き窓は、圧力容器4や抽出器6とは別に、状態観察用の特別の容器を設け、その容器に付設して、状態観察が可能な構造にすることもできる。
圧力容器4、抽出器6及び分離器9等の材質は、SUS316、SUS304等のステンレス鋼とすることが好ましい。
【0023】
<第3発明>
第3発明は、第1群発明の装置と、第2群発明の装置とを組み合わせたことを特徴とする液状有機化合物に対する流体の溶解度の測定装置である。第3発明によれば、第1群発明の装置を用いて、単一成分の有機化合物に対する流体の溶解度の測定を行い、第2群発明の装置を用いて、多成分からなる有機化合物の混合物に対する流体の溶解量の測定を行うことができるため、簡便に、かつ短時間で精度よく流体の溶解度を測定することができる。
【実施例】
【0024】
本発明を実施例及び比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
実施例1
図1に示す装置を用いて、内容積501mLの圧力容器4中に、室温でポリプロピレングリコール(重量平均分子量200)107.7gを収納し、ブースターポンプで二酸化炭素を16MPaまで加圧し供給した。圧力容器4に封入した二酸化炭素の重量は、360.1gであった。圧力容器4を恒温水槽に浸漬して40℃として、圧力容器4を十分に振とうし、30分間保持し、安定した時の圧力・温度を測定した。温度は40℃、圧力は17.0MPであった。
上記した式(1)〜(4)により、ポリプロピレングリコールに対する二酸化炭素の溶解量を算出した。その結果、ポリプロピレングリコールに対する二酸化炭素の溶解量は24.3g、溶解度は、23.9重量%であった。
【0025】
実施例2〜5
実施例1で用いたポリプロピレングリコールの代わりに、第1表に示すポリオール又はポリオール成分液を用いて、第1表に示す条件で、実施例1と同様の操作を行った。結果を第1表に示す。
なお、第1表の有機化合物の略号の意味は、次のとおりである。
PG1:プロピレングリコール(重量平均分子量200)
PG2:プロピレングリコール(重量平均分子量2000)
GLY:グリセリンにプロピレンオキサイドが付加したポリオール(重量平均分子量250)
NPG:ネオペンチルグリコールにプロピレンオキサイドが付加したポリオール(重量平均分子量560)
PGM:下記成分の混合液である。
ネオペンチルグリコール系ポリオール(水酸基価400) 32%
グリセリン系ポリオール(水酸基価400) 32%
トルエンジアミン系ポリオール(水酸基価400)32%
トリエチレンジアミン(三級アミン触媒) 1%
ペンタメチルジエタノ−ルアミン1%、シリコン整泡剤 1%


【0026】
【表1】

【0027】
実施例6
図1に示す装置を用いて、抽出器7中にポリプロピレングリコール(重量平均分子量200)を106.0g収納し、40℃、15MPaの抽出条件化で、30分間、超臨界二酸化炭素を供給し、ポリプロピレングリコールを超臨界二酸化炭素に溶解した。その後、調圧弁8により抽出器7の圧力を4MPaまで減圧して10分間保持した後、更に大気圧まで減圧し、5分間保持して、超臨界二酸化炭素に溶解したポリプロピレングリコールを分離器9で補足した。分離器9の下部からポリプロピレングリコールを回収し、ポリプロピレングリコールから分離、回収した二酸化炭素は、ポンプ2の上流に移送し、再利用した。ポリプロピレングリコールから分離、回収した二酸化炭素の量を測定した結果を第2表に示す。
第2表から、各種のポリオールに対する二酸化炭素の溶解性の大小を、ポリプロピレングリコールから分離、回収した二酸化炭素の回収量の大小により、判断することができる。
また、覗き窓7から、二酸化炭素の圧力を変化させた際の、抽出器4内の状態を観察することにより、ポリプロピレングリコールと超臨界二酸化炭素の相分離状態や発泡状態の有無を知ることができた。
【0028】
実施例7〜10
実施例6で用いたポリプロピレングリコールの代わりに、第2表に示すポリオール又はポリオール混合液を用いて、第2表に示す条件で、実施例6と同様の操作を行った。結果を第2表に示す。なお、第2表の有機化合物の略号は、第1表と同じである。
【0029】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を具体化した態様の装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0031】
1.二酸化炭素容器、 2.ポンプ、 3.熱交換器、 4.圧力容器、 5.重量測定装置、 6.抽出器、 7.覗き窓、 8.調圧弁、 9.分離器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状有機化合物を収納した容器内に加圧流体を供給する段階、該流体を亜臨界状態又は超臨界状態にする段階、該容器に振動を与える段階及び/又は該容器内を撹拌混合する段階、並びに該液状有機化合物が該流体を収着した後の該容器の温度、圧力、及び該容器の重量変化を測定する段階を含むことを特徴とする、液状有機化合物に対する流体の溶解度の測定方法。
【請求項2】
液状有機化合物を収納した容器内に加圧流体を供給する手段、該流体を亜臨界状態又は超臨界状態にする手段、該容器に振動を与える手段及び/又は該容器内を撹拌混合する手段、並びに該液状有機化合物が該流体を収着した後の該容器の温度、圧力、及び該容器の重量変化を測定する手段を含むことを特徴とする、液状有機化合物に対する流体の溶解度の測定装置。
【請求項3】
液状有機化合物が、プラスチック原料である請求項1又は2に記載の流体の溶解度の測定方法。
【請求項4】
液状有機化合物が、ウレタン発泡用原料である請求項1〜3のいずれかに記載の流体の溶解度の測定方法。
【請求項5】
流体が二酸化炭素である請求項1〜4のいずれかに記載の流体の溶解度の測定方法。
【請求項6】
液状有機化合物を収納した容器内に加圧流体を供給する段階、該流体を亜臨界状態又は超臨界状態にする段階、該容器の圧力を下げて、該流体を収着した液状有機化合物を分離し、捕捉する段階、及び該液状有機化合物が収着した該流体を分離し、その収着量を測定する段階を含むことを特徴とする、液状有機化合物に対する流体の溶解量の測定方法。
【請求項7】
液状有機化合物を収納した容器内に加圧流体を供給する手段、該流体を亜臨界状態又は超臨界状態にする手段、該流体を収着した液状有機化合物を分離し、捕捉する手段、及び該液状有機化合物が収着した該流体を分離し、その収着量を測定する手段を含むことを特徴とする、液状有機化合物に対する流体の溶解量の測定装置。
【請求項8】
流体が二酸化炭素である請求項6又は7に記載の流体の溶解量の測定装置。
【請求項9】
請求項2に記載の装置と、請求項7に記載の装置とを組み合わせたことを特徴とする液状有機化合物に対する流体の溶解度の測定装置。


【図1】
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【公開番号】特開2006−3177(P2006−3177A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178917(P2004−178917)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【出願人】(000187149)昭和炭酸株式会社 (60)