説明

液状材料、膜付き基板の製造方法、電気光学装置の製造方法および電子機器の製造方法

【課題】溶媒を除去することにより、基板上に高精細なパターンの膜を簡単かつ安価に形成可能な液状材料、かかる液状材料を用いて高精細なパターンの膜を備えた基板を形成することができる膜付き基板の製造方法、および、かかる製造方法を用いた電気光学装置の製造方法および電子機器の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の液状材料は、基板上に所定パターンの膜を形成するのに用いられるものである。このような液状材料は、実質的に極性を有さないポリマーを溶媒に溶解してなり、溶媒の基板に対する後退接触角をA°とし、得られた液状材料の基板に対する後退接触角をB°としたとき、A−B≧5°となる関係を満足するものである。ここで、後退接触角とは、液滴を基板の表面に載置した状態で、基板の傾斜角度を徐々に増大させたとき、液滴が基板に対して移動を開始した時点において、液滴の移動方向と反対側において測定される接触角のことを言う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状材料、膜付き基板の製造方法、電気光学装置の製造方法および電子機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、膜付き基板の製造方法、すなわち、基板上に膜をパターニングする方法として、液状材料を液滴吐出法を用いて基板上に供給し、形成された液滴を乾燥させることにより、所望の形状の乾燥膜を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この方法では、液状材料に溶解している固形分(溶質)の濃度と、基板上に液状材料を滴下することにより形成された液滴の乾燥速度のうちの少なくとも一方をパラメータとして、乾燥膜の形状を制御する。かかる方法によれば、フォトリソグラフィー技術のような煩雑なプロセスを多用するパターニング方法を用いることなく、所望の形状の乾燥膜を容易に得ることができる。
しかしながら、液状材料を構成する溶質と溶媒の各構成材料、およびこの液状材料を滴下する基板の構成材料の組み合わせによっては、高い寸法精度の乾燥膜を形成することが困難な場合がある。
【0003】
【特許文献1】特開2005−28275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、溶媒を除去することにより、基板上に高精細なパターンの膜を簡単かつ安価に形成可能な液状材料、かかる液状材料を用いて高精細なパターンの膜を備えた基板を形成することができる膜付き基板の製造方法、および、かかる製造方法を用いた電気光学装置の製造方法および電子機器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液状材料は、基板上に所定パターンの膜を形成するのに用いられる液状材料であって、
前記液状材料は、実質的に極性を有さないポリマーを溶媒に溶解してなり、前記溶媒の前記基板に対する後退接触角をA[°]とし、前記液状材料の前記基板に対する後退接触角をB[°]としたとき、A−B≧5°となる関係を満足することを特徴とする。
これにより、溶媒を除去することにより、基板上に高精細なパターンの膜を簡単かつ安価に形成可能な液状材料が得られる。また、このような特性を示す液状材料は、液滴の収縮がより確実に抑制されることとなり、特に高い寸法精度を有する膜を、目的の位置に確実に形成し得るものとなる。
ここで、後退接触角とは、液滴を基板の表面に載置した状態で、基板の傾斜角度を徐々に増大させたとき、液滴が基板に対して移動を開始した時点において、液滴の移動方向と反対側において測定される接触角のことを言う。
【0006】
本発明の液状材料では、前記ポリマーの繰り返し単位を構成する単位構造の双極子モーメントが1D(デバイ単位)以下であることが好ましい。
単位構造の双極子モーメントは、ポリマー(溶質)の極性を実質的に支配している。このため、この双極子モーメントが前記範囲のように小さい値であれば、ポリマーの極性は極めて小さくなり、ポリマーは実質的に無極性となる。かかるポリマーは、液状材料に対する撥液性の強い基板に対して、特に、親和性の高いものとなり、ピニングが起こり易い液体材料を得ることができる。
【0007】
本発明の液状材料では、前記溶媒の前記基板に対する静的接触角が50°以上であることが好ましい。
基板に対する静的接触角がこのように大きな値を示す溶媒は、基板に対する親和性が適度に低い、すなわち撥液性が比較的高いものであると言える。したがって、かかる溶媒を含む液状材料は、基板上に液滴として供給した際に、必要以上に濡れ拡がり難い液滴を形成し、目的とする形状・寸法の膜をより確実に得ることができるものとなる。
【0008】
本発明の液状材料では、前記溶媒の前記ポリマーに対する第二ビリアル係数が、0〜1.5×10−4cm・mol/gであることが好ましい。
ポリマーに対する第二ビリアル係数が前記範囲内である溶媒は、ポリマーを溶解することができるが、その溶解度は低いものとなる。したがって、このようなポリマーと溶媒は、溶液(液状材料)として存在することが可能であるが、溶解度が低いため、液滴中からポリマーが析出し易く、基板に対して液滴の縁部が固定され易い。したがって、かかる溶液とポリマーとを含む液状材料は、ピニングが非常に起こり易く、特に高い寸法精度を有する膜を確実に形成し得るものとなる。
【0009】
本発明の液状材料では、前記溶媒は、非プロトン性の極性有機溶媒を主成分とすることが好ましい。
非プロトン性極性溶媒は、多種のポリマーを長期にわたって安定的に溶解するため、液状材料に含む溶媒として好適に用いられる。
本発明の液状材料では、前記ポリマーは、ポリスチレンを主成分とし、前記溶媒は、γ−ブチロラクトンを主成分とすることが好ましい。
これにより、液状材料は、特にピニングが起こり易いものとなり、高い寸法精度を有する膜を確実に形成し得るものとなる。
【0010】
本発明の液状材料は、その粘度(常温)が0.5〜20cPであることが好ましい。
このような粘度の液状材料は、例えば、液滴吐出法により基板上に微小な液滴として供給され易く、かつ、液滴の形状が容易に変形し難くなる。このため、最終的に得られる膜の寸法精度を高めることができる。さらに、液状材料を、液滴吐出装置の吐出口から確実に排出することができる。
【0011】
本発明の液状材料は、その表面張力が20〜40mN/mであることが好ましい。
このような表面張力の液状材料を用いることにより、液滴が球形化し過ぎるのを防止しつつ、液滴の表面がより平滑化され易くなる。このため、厚みのバラツキが小さい膜を容易に得ることができる。
【0012】
本発明の液状材料は、液滴吐出法に用いられるものであることが好ましい。
液滴吐出法は、液状材料を微細なパターンで供給できるので、別途パターニング工程が不要となり、簡易な工程で精密な形状の膜を形成することができる。したがって、本発明の液状材料による膜の形成をより効果的に行うことができる。
【0013】
本発明の膜付き基板の製造方法は、基板上に膜を形成して膜付き基板を製造する膜付き基板の製造方法であって、
前記基板上に、実質的に極性を有さないポリマーを溶媒に溶解してなる液状材料を供給して液状被膜を形成する第1の工程と、
前記液状被膜から前記溶媒を除去して、前記膜を得る第2の工程とを有し、
前記液状材料として、前記溶媒の前記基板に対する後退接触角をA[°]とし、前記液状材料の前記基板に対する後退接触角をB[°]としたとき、A−B≧5°となる関係を満足するものを用いることを特徴とする。
これにより、基板上に高精細なパターンの膜を備えた膜付き基板を簡単かつ安価に形成することができる。
【0014】
本発明の膜付き基板の製造方法では、前記第1の工程に先立って、前記基板の少なくとも一方の面に撥液処理を施す工程を有することが好ましい。
これにより、基板の撥液処理を施された面は、後述する液状材料に対して、撥液性を強めるものとなる。その結果、基板上に供給された液状材料が、必要以上に濡れ拡がってしまい、目的とする膜の形状・寸法から逸脱するのを防止することができる。また、基板表面の液状材料に対する撥液性のバラツキを低減することができるため、基板上における膜の形状のバラツキを抑制することもできる。
【0015】
本発明の電気光学装置の製造方法は、本発明の膜付き基板の製造方法を含むことを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電気光学装置を製造することができる。
本発明の電子機器の製造方法は、本発明の電気光学装置の製造方法を含むことを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の液状材料、膜付き基板の製造方法、電気光学装置の製造方法および電子機器の製造方法について、図示の好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
まず、本発明の液状材料および本発明の膜付き基板の製造方法の説明に先立ち、かかる製造方法により製造される膜付き基板について説明する。
本発明の膜付き基板の製造方法は、高精細なパターンの膜を基板上に形成するものであって、電気配線、電極または絶縁膜などに利用可能な膜を基板上に形成することができるものである。なお、以下では、膜付き基板の一例としてアクティブマトリクス装置を説明する。そして、膜付き基板上の膜を、アクティブマトリクス装置が備える薄膜トランジスタのゲート絶縁膜として用いる場合を例に説明する。
【0017】
図1は、本実施形態にかかるアクティブマトリクス装置(膜付き基板)の構成を示すブロック図であり、図2は、本実施形態のアクティブマトリクス装置が備える薄膜トランジスタの構成を示す図(縦断面図および平面図)である。なお、以下の説明では、図2(b)中、上側を「上」、下側を「下」として説明する。
図1に示すアクティブマトリクス装置100は、基板48と、いずれも基板48上に設けられ、互いに交差する複数のデータ線101および複数の走査線102と、これらのデータ線101と走査線102との各交点付近に設けられた薄膜トランジスタ1および画素電極103とを有している。
【0018】
図2に示すように、本実施形態において、薄膜トランジスタ1は、トップゲート型の薄膜トランジスタであり、基板48上に、互いに分離して設けられたソース電極72およびドレイン電極73と、ソース電極72およびドレイン電極73に接触して設けられた半導体層78と、ソース電極72、ドレイン電極73および半導体層78を覆うように設けられたゲート絶縁膜79と、半導体層78に対応するゲート絶縁膜79上に設けられたゲート電極80とを有している。
このような薄膜トランジスタ1では、ゲート電極80が走査線102に、ソース電極72がデータ線101に、ドレイン電極73が画素電極(個別電極)103に、それぞれ接続されている。
【0019】
また、この画素電極103は、マトリクス状に、すなわち、縦横に規則正しく配列するように分割されている。
なお、薄膜トランジスタ1は、ボトムゲート型の薄膜トランジスタであってもよい。
このようなアクティブマトリクス装置100は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0020】
以下、一例として、アクティブマトリクス装置100の製造方法(本発明の膜付き基板の製造方法)を説明する。なお、以下では、薄膜トランジスタ1の製造方法を中心に説明する。
本実施形態における薄膜トランジスタ1の製造方法は、基板48上にソース電極72およびドレイン電極73を形成する工程(以下、ソース電極およびドレイン電極形成工程という)と、半導体層78を形成する工程(以下、半導体層形成工程という)と、ゲート絶縁膜79を形成する工程(以下、ゲート絶縁膜形成工程という)と、ゲート電極80を形成する工程(以下、ゲート電極形成工程という)とを有する。
【0021】
以下、図3を参照しつつ、各工程について順次説明する。
図3は、本実施形態のアクティブマトリクス装置100(膜付き基板)の製造方法を説明するための図(断面図)である。なお、以下の説明に用いる各図面では、説明の便宜上、各部の縮尺を適宜変更している。
【0022】
[A1] ソース電極およびドレイン電極形成工程
まず、図3(a)に示すように、基板48上に、ソース電極72およびドレイン電極73を形成する。
具体的に説明すると、まず、基板48を用意する。
基板48には、例えば、ガラス基板、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)等で構成されるプラスチック基板(樹脂基板)、石英基板、シリコン基板、ガリウム砒素基板等を用いることができる。薄膜トランジスタに可撓性を付与する場合には、基板48には、樹脂基板が選択される。
【0023】
次に、基板48のソース電極72およびドレイン電極73を形成する面に、撥液処理を施す。これにより、基板48の撥液処理を施された面は、後述する液状材料に対して、撥液性を強めるものとなる。その結果、基板48上に供給された液状材料が、必要以上に濡れ拡がってしまい、目的とする膜の形状・寸法から逸脱するのを防止することができる。
また、基板48表面の液状材料に対する撥液性のバラツキを低減することができるため、基板48上における膜の形状のバラツキを抑制することもできる。
【0024】
このような撥液処理としては、例えば、基板48上に、撥液性の官能基を有する自己組織化膜(自己組織化単分子膜:SAM(Self Assembled Monolayer))を形成する方法が挙げられる。自己組織化膜とは、基板の表層原子と反応可能な結合性官能基とそれ以外の直鎖分子とからなり、直鎖分子の相互作用により極めて高い配向性を有する化合物を配向させて形成された膜である。この自己組織化膜は単分子を配向させて形成されているので、膜厚が極めて薄く、しかも、分子レベルで均一な膜となる。すなわち、膜の表面に同じ分子が位置するため、膜の表面に均一でしかも優れた撥液性を付与することができる。
【0025】
本実施形態では、基板48上に、例えば、アルキル基やフルオロアルキル基のような撥液性の官能基を有する自己組織化膜を形成する。これにより、前述のような優れた特性を付与し得る撥液処理を施すことができる。
撥液性の官能基を有する化合物としては、例えば、基板48がシリコン基板で構成されている場合、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシランのようなアルキルシランやフルオロアルキルシラン(シランカップリング剤)等を用いることができる。
【0026】
また、撥液処理は、前述したような自己組織化膜を形成する方法に代えて、例えば、基板48表面に撥液性を有する層を形成したり、基板48表面に撥液性を示す原子(例えば、フッ素原子)を注入する方法等により行うようにしてもよい。
なお、撥液処理は、基板48の両面に行うようにしてもよい。
また、撥液処理は、必要に応じて行えばよく、基板48自体が適度な撥液性を有している場合には省略することもできる。
【0027】
次に、基板48上に導電性膜を形成する。これは、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等により形成することができる。
【0028】
導電性膜の構成材料(すなわちソース電極72またはドレイン電極73の構成材料)としては、導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、Pd、Pt、Au、Ag、W、Ta、Mo、Al、Cr、Ti、Cuまたはこれらを含む合金等の導電性材料、ITO、FTO、ATO、SnO等の導電性酸化物、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素系材料、ポリアセチレン、ポリピロール、PEDOT(poly-ethylenedioxythiophene)のようなポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体等の導電性高分子材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、前記導電性高分子材料は、通常、塩化鉄、ヨウ素、無機酸、有機酸、ポリスチレンサルフォニック酸などの高分子でドープされ導電性を付与された状態で用いられる。これらの中でも、導電性膜の構成材料としては、それぞれ、Ni、Cu、Co、Au、Pd、Agまたはこれらを含む合金を主とするものが好適に用いられる。
【0029】
この導電性膜上に、レジスト材料を塗布した後に硬化させ、ソース電極72およびドレイン電極73の形状に対応する形状のレジスト層を形成する。このレジスト層をマスクとして用いて、導電性膜の不要部分を除去する。この導電性膜の除去には、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウェットエッチング等の化学的エッチング法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
その後、レジスト層を除去することにより、ソース電極72およびドレイン電極73が得られる。
なお、ソース電極72およびドレイン電極73は、例えば、導電性粒子を含む導電性材料を基板48上に供給して液状被膜を形成した後、必要に応じて、この液状被膜に対して後処理(例えば加熱、赤外線の照射、超音波の付与等)を施すことにより形成することもできる。
【0031】
また、導電性材料を供給する方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法、マイクロコンタクトプリンティング法等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、このとき、データ線101および画素電極103も形成する。
【0032】
[A2]半導体層形成工程
次に、図3(b)に示すようなソース電極72とドレイン電極73との間の間隙を埋めるように、半導体層78を形成する。この半導体層78のうち、ソース電極72とドレイン電極73との間の領域がチャネル領域となる。
半導体層78の形成方法としては、特に限定されず、構成材料に応じて、前述したソース電極72およびドレイン電極73の形成方法で挙げた各種方法から適宜選択して用いることができる。
半導体層78の構成材料としては、特に限定されず、各種有機半導体材料および各種無機半導体材料を用いることができる。
【0033】
このうち、有機半導体材料としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、フタロシアニン、ペリレン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、ジフェニルメタン、スチルベン、アリールビニル、ピラゾリン、トリフェニルアミン、トリアリールアミン、オリゴチオフェン、フタロシアニンまたはこれらの誘導体のような低分子の有機半導体材料や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ポリアリールアミン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂、フルオレン−ビチオフェン共重合体、フルオレン−アリールアミン共重合体またはこれらの誘導体のような高分子の有機半導体材料(共役系高分子材料)が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、特に、高分子の有機半導体材料(共役系高分子材料)を主とするものを用いるのが好ましい。共役系高分子材料は、その特有な電子雲の広がりにより、キャリアの移動能が特に高い。このような高分子の有機半導体材料は、簡易な方法で成膜することができるとともに、比較的容易に配向させることができる。
【0034】
一方、無機半導体材料としては、例えば、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等のシリコン、ゲルマニウム、ヒ素化ガリウム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。液滴吐出装置を用いて半導体層78を形成する場合には、例えば、シクロペンタシランを含む液体シリコンを液滴吐出装置によりソース電極72とドレイン電極73との間の間隙に供給し、これを乾燥・焼成することにより、半導体層78を形成することができる。
【0035】
[A3]ゲート絶縁膜形成工程
次に、図3(c)に示すように、ソース電極72、半導体層78、ドレイン電極73を覆うように基板48上にゲート絶縁膜79を形成する。
ゲート絶縁膜79は、溶質と、溶質を溶解する溶媒とを含む液状材料を、ソース電極72、半導体層78およびドレイン電極73を覆うように供給し、その後、必要に応じて後処理を施すことにより形成することができる。
このような液状材料として、本発明の液状材料を用いることができる。
【0036】
まず、ゲート絶縁膜形成工程の説明に先立って、本発明の液状材料について以下に説明する。
なお、以下では、溶解とは、溶質が微分散した状態のことを含んでおり、また、溶媒は、溶質が微分散した分散媒(媒質)を含んでいる。
ここで、基板上に、ゲート絶縁膜79のような所定パターンの膜を形成する方法として、以前から、高分子系材料(溶質)と、溶媒とを含む液状材料を液滴吐出法を用いて基板上に供給し、形成された液滴を乾燥させることにより、所望の形状の乾燥膜を形成する方法が知られていた。
【0037】
このような方法で膜を形成する場合、液状材料中の溶質は溶媒に溶解している必要があるため、溶質としては、前述のように、低分子系材料に比べて溶媒溶解性に優れる高分子系材料(ポリマー)が用いられる。さらに、ポリマーは、低分子系材料のように結晶化させる必要がないため取り扱い易く、ポリマーを含む液状材料を用いて形成された膜は、柔軟性に富んでいるという利点もある。
【0038】
しかしながら、液状材料中のポリマー(溶質)と溶媒、および基板の三者間の相互作用は、その作用機構が複雑であるため、ポリマー、溶媒および基板の各構成材料の組み合わせによっては、基板上に形成された液滴が乾燥する前に収縮してしまう。これにより、得られる乾燥膜の寸法精度が低下したり、目的の形状の乾燥膜が得られないという問題があった。
このような背景から、従来は、実際に実験を行うことにより、ポリマー、溶媒および基板の各構成材料の最適な組み合わせを見出し、これにより、所定パターンの膜を形成可能な液状材料を開発する方法が一般的であった。このため、開発の長期化あるいは高コスト化という問題を招いていた。
【0039】
ところで、基板上に供給された液状材料から目的の形状の膜を得るためには、基板上に液滴として供給された液状材料が、基板に対して速やかに固定化(ピン止め)され、液滴が収縮するのを防止するようなものである必要がある。
そこで、本発明者は、ポリマーで構成され、高い寸法精度で所望の形状をなす膜(本実施形態では、ゲート絶縁膜79)を、容易かつ安価に形成可能な液状材料を得ることを目的に鋭意検討した結果、実質的に極性を有さないポリマーを用い、このポリマーを溶媒に溶解してなる液状材料であって、溶媒の基板に対する後退接触角をA[°]とし、得られた液状材料の基板に対する後退接触角をB[°]としたとき、A−B≧5°となる関係を満足するものが、前述の液状材料として有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0040】
ここで、接触角は、一般に、静的接触角および動的接触角に分類される。
図4は、静的接触角および動的接触角を説明するための図である。
このうち、静的接触角は、図4(a)のように、水平に維持した基板Sの表面に液滴Lを載置した状態で測定される接触角θのことを言う。
一方、動的接触角は、図4(b)のように、液滴Lを基板Sの表面に載置した状態で、基板Sの傾斜角度を徐々に増大させたとき、液滴Lが基板Sに対して移動を開始した時点において測定される接触角θおよび接触角θのことを言う。また、動的接触角のうち、液滴Lの移動方向の前方において測定される接触角θのことを前進接触角と言い、液滴Lの移動方向と反対側において測定される接触角θのことを後退接触角と言う。
【0041】
このような各接触角は、液滴Lと基板Sとの相互作用の程度を反映する指標となり得るものである。
具体的には、静的接触角θは、液滴Lと基板Sとの相互作用が小さいと、すなわち親和性が低いと、その角度が大きくなる傾向を示す。
一方、液滴L中の溶質と基板Sとの相互作用が大きいと、液滴Lの縁部において、液滴L中の溶質が基板Sに対して固定化され易くなり、縁部が基板Sにピン止めされたような状態となる。このように、液滴L中の溶質によって液滴Lの縁部が基板Sにピン止めされる現象を「ピニング」とも言う。
このようなピニングされた状態で、基板Sの傾斜角度を徐々に増大させると、後退接触角θは、徐々に小さくなる傾向を示す。このような液滴L中の溶質の基板Sに対するピニングは、液滴L中の溶質と基板Sとの親和性が高いことに起因すると考えられるため、後退接触角θは、溶質と基板Sとの相互作用をより顕著に反映する指標となり得る。
【0042】
したがって、前述したように、溶媒の基板に対する後退接触角A[°]より、液状材料の基板に対する後退接触角B[°]が小さいと、基板に対する親和性が溶媒より溶質の方が高いこと、すなわち、液状材料の収縮が抑制されることとなる。この状態で、後処理等によって溶媒が除去されると、残存した溶質により、目的の形状をなす膜を容易に得ることができる。また、基板上において、液滴全体が移動するのを防止することもできる。
このように、「後退接触角」という指標に着目して、膜を形成する基板に対して溶質および溶媒を選択することにより、高い寸法精度を有し、目的の形状をなす膜を、目的の位置に形成し得る液状材料を得ることができる。
【0043】
また、溶媒の基板に対する後退接触角A[°]と、液状材料の基板に対する後退接触角B[°]との差A−Bは、5°以上とされるが、25°以上であるのが好ましく、30°以上であるのがより好ましい。このような特性を示す液状材料は、液滴の収縮がより確実に抑制されることとなり、特に高い寸法精度を有する膜を、目的の位置に確実に形成し得るものとなる。
【0044】
また、液状材料中の溶媒は、その基板に対する静的接触角が50°以上であるものが好ましく、60°以上であるものがより好ましい。基板に対する静的接触角がこのように大きな値を示す溶媒は、基板に対する親和性が適度に低い、すなわち撥液性が比較的高いものであると言える。したがって、かかる溶媒を含む液状材料は、基板上に液滴として供給した際に、必要以上に濡れ拡がり難い液滴を形成し、目的とする形状・寸法の膜をより確実に得ることができるものとなる。
【0045】
また、かかる溶媒は、そのポリマー(溶質)に対する第二ビリアル係数が、0〜1.5×10−4cm・mol/g程度であるのが好ましく、0〜1.2×10−4cm・mol/g程度であるのがより好ましい。ポリマーに対する第二ビリアル係数が前記範囲内である溶媒は、ポリマーを溶解することができるが、その溶解度は低いものとなる。したがって、このようなポリマーと溶媒は、溶液(液状材料)として存在することが可能であるが、溶解度が低いため、液滴中からポリマーが析出し易く、基板に対して液滴の縁部が固定され易い。したがって、かかる溶液とポリマーとを含む液状材料は、ピニングが非常に起こり易く、特に高い寸法精度を有する膜を確実に形成し得るものとなる。
【0046】
このような溶媒は、実質的に極性を有さない非極性溶媒(水素分子、窒素分子、二酸化炭素、メタンなど電荷の偏りを持たない無極性分子からなる溶媒であり、例えば、トルエン、シクロヘキサン等)であってもよいが、極性を有する極性溶媒(塩化水素、水、アンモニアのように、電荷のかたよりを持つ極性分子からなる溶媒)が好ましい。極性溶媒は、その極性にもよるが、前述のような実質的に極性を有さないポリマーに対する溶解度が比較的低い。このため、前述のように、液滴中からポリマーが析出し易くなり、ピニングが起こり易い液状材料が得られる。
【0047】
極性溶媒としては、例えば、γ−ブチロラクトン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)のような非プロトン性極性溶媒、酢酸、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレンジアミン、ジエチルアミン、水等のプロトン性極性溶媒等が挙げられるが、非プロトン性極性溶媒が好ましい。非プロトン性極性溶媒は、多種のポリマーを長期にわたって安定的に溶解するため、液状材料に含む溶媒として好適に用いられる。
【0048】
液体材料中のポリマーは、最終的に基板上に形成する膜の構成材料となるものであり、前述したように、実質的に極性を有さないものである。
このようなポリマーは、その繰り返し単位を構成する単位構造の双極子モーメントが1D(デバイ単位)(3.4×10−30C・m)以下のものであるのが好ましく、0.8D(2.7×10−30C・m)以下のものであるのがより好ましい。単位構造の双極子モーメントは、ポリマー(溶質)の極性を実質的に支配している。このため、この双極子モーメントが前記範囲のように小さい値であれば、ポリマーの極性は極めて小さくなり、ポリマーは実質的に無極性となる。かかるポリマーは、液体材料に対する撥液性の強い基板に対して、特に、親和性の高いものとなり、ピニングが起こり易い液体材料を得ることができる。
【0049】
かかるポリマーとしては、例えば、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルフェニレン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなアクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素系樹脂、ポリビニルフェノールあるいはノボラック樹脂のようなフェノール系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテンなどのオレフィン系樹脂等の絶縁性ポリマーが挙げられる。
また、ポリスチレンを主成分とする溶質を、γ−ブチロラクトンを主成分とする溶媒に溶解してなる液状材料は、特にピニングが起こり易いものである。このため、かかる液状材料は、高い寸法精度を有する膜を確実に形成し得るものである。
【0050】
このような液状材料は、その粘度(常温)が、0.5〜20cP程度であるのが好ましく、1〜10cP程度であるのがより好ましい。このような粘度の液状材料は、例えば、液滴吐出法により基板上に微小な液滴として供給され易く、かつ、液滴の形状が容易に変形し難くなる。このため、最終的に得られる膜の寸法精度を高めることができる。さらに、液状材料を、液滴吐出装置の吐出口から確実に排出することができる。
【0051】
また、液状材料の表面張力は、20〜40mN/m程度であるのが好ましく、25〜35mN/m程度であるのがより好ましい。このような表面張力の液状材料を用いることにより、液滴が球形化し過ぎるのを防止しつつ、液滴の表面がより平滑化され易くなる。このため、厚みのバラツキが小さい膜を容易に得ることができる。
なお、液状材料におけるポリマーの含有率は、ポリマーと溶媒との組み合わせによって若干異なるが、0.01〜5wt%程度であるのが好ましく、0.05〜1wt%程度であるのがより好ましい。これにより、液状材料は、十分な厚さの膜を形成し得るものとなる。
以上のような液状材料は、高い寸法精度を有し、目的の形状をなす膜を、目的の位置に確実に形成可能なものである。
【0052】
次に、このような液状材料を用いてゲート絶縁膜79を形成する方法について詳述する。
液状材料を用意または調製した後、この液状材料を、ソース電極72、半導体層78、ドレイン電極73を覆うように、基板48上に供給する(第1の工程)。
液状材料を基板48上に供給する方法としては、例えば、スピンコート法やディップコート法のような塗布法、液滴吐出法(インクジェット法)やスクリーン印刷法のような印刷法等が挙げられる。
このうち、液状材料の供給方法には、液滴吐出法を用いるのが好ましい。液滴吐出法は、液状材料を微細なパターンで供給できるので、別途パターニング工程が不要となり、簡易な工程で精密な形状の膜を形成することができる方法である。したがって、かかる液滴吐出法によれば、本発明の液状材料による膜の形成をより効果的に行うことができる。
【0053】
次に、基板48上に供給された液状材料を放置して、自然乾燥により、液状材料中から溶媒を除去する(第2の工程)。これにより、液状材料中から溶媒が経時的に揮発して除去され、絶縁性ポリマーが残存することとなる。このようにして、図3(c)に示すように、基板48上に絶縁性ポリマーで構成されたゲート絶縁膜79を形成することができる。
なお、自然乾燥による溶媒の除去に代えて、液状材料中から溶媒を強制的に除去する後処理を行うようにしてもよい。
溶媒を除去する後処理の方法としては、空気、窒素ガス等の気体を吹き付ける方法、周囲の圧力を減圧する方法、熱処理による方法等が挙げられる。
【0054】
次に、必要に応じて、形成したゲート絶縁膜79を研磨し、膜厚を減少させることにより平坦性の高い面を得る。
この膜厚を減少させる方法としては、例えばCMP法(化学的機械的研磨法)を採用することができ、具体的な条件としては、例えば軟質ポリウレタン製のパッドと、アンモニア系又はアミン系のアルカリ溶液にシリカ粒子を分散させた研磨剤(スラリー)を組み合わせて用い、圧力30000Pa、回転数50回転/分、研磨剤の流量を200sccm、といった条件を採用することができる。
【0055】
[A4]ゲート電極形成工程
次に、図3(d)に示すように、ソース電極72とドレイン電極73との間の領域に対応してゲート絶縁膜79上にゲート電極80を形成する。
ゲート電極80は、特に限定されず、前述したソース電極72およびドレイン電極73の形成方法と同様のものを用いることができる。
また、ゲート電極80の構成材料としては、ソース電極72とドレイン電極73と同様のものを用いることができる。
【0056】
以上説明したような各工程を経ることにより、半導体層78、ゲート絶縁膜79、ゲート電極80等を積層した電界効果型の薄膜トランジスタ1が得られる。
また、このとき、走査線102を形成する。これにより、図1に示すアクティブマトリクス装置100が得られる。
なお、本実施形態では、走査線102は、ゲート電極80とは別途形成されるが、隣接する薄膜トランジスタ1のゲート電極80を連続して形成することにより走査線102としてもよい。
【0057】
なお、ソース電極72、ドレイン電極73、ゲート電極80、走査線102、データ線101または画素電極103の構成材料として導電性のポリマーを用いる場合、これらを、ゲート絶縁膜79の形成方法と同様の方法で形成することもできる。
この場合、導電性ポリマーは、例えば、前述の導電性高分子材料として挙げられた材料から、電気伝導率等を考慮して、適宜選択して用いることができる。
また、半導体層78の構成材料として前述の高分子系半導体材料を用いる場合、半導体層78を、ゲート絶縁膜79の形成方法と同様の方法で形成することもできる。
【0058】
<電気光学装置>
次に、前述したようなアクティブマトリクス装置(膜付き基板)が組み込まれた本発明の電気光学装置について、電気泳動表示装置を一例に説明する。
図5は、電気泳動表示装置の実施形態を示す縦断面図である。
図5に示す電気泳動表示装置200は、アクティブマトリクス装置100と、このアクティブマトリクス装置100に電気的に接続された電気泳動表示部400とで構成されている。
【0059】
図5に示すように、電気泳動表示部400は、アクティブマトリクス装置100上に、順次積層された、マイクロカプセル402と、透明電極(共通電極)403および透明基板404とを有している。
そして、マイクロカプセル402がバインダ材405により、画素電極103と透明電極403との間に固定されている。
画素電極103は、前述したように、マトリクス状に、すなわち、縦横に規則正しく配列するように分割されている。
【0060】
各カプセル402内には、それぞれ、特性の異なる複数種の電気泳動粒子、本実施形態では、電荷および色(色相)の異なる2種の電気泳動粒子421、422を含む電気泳動分散液420が封入されている。
このような電気泳動表示装置200では、1本あるいは複数本の走査線102に選択信号(選択電圧)を供給すると、この選択信号(選択電圧)が供給された走査線102に接続されている薄膜トランジスタ1がONとなる。
【0061】
これにより、かかる薄膜トランジスタ1に接続されているデータ線101と画素電極103とは、実質的に導通する。このとき、データ線101に所望のデータ(電圧)を供給した状態であれば、このデータ(電圧)は画素電極103に供給される。
これにより、画素電極103と透明電極403との間に電界が生じ、この電界の方向、強さ、電気泳動粒子421、422の特性等に応じて、電気泳動粒子421、422は、いずれかの電極に向かって電気泳動する。
【0062】
一方、この状態から、走査線102への選択信号(選択電圧)の供給を停止すると、薄膜トランジスタ1はOFFとなり、かかる薄膜トランジスタ1に接続されているデータ線101と画素電極103とは非導通状態となる。
したがって、走査線102への選択信号の供給および停止、あるいは、データ線101へのデータの供給および停止を適宜組み合わせて行うことにより、電気泳動表示装置200の表示面側(透明基板404側)に、所望の画像(情報)を表示させることができる。
【0063】
特に、本実施形態の電気泳動表示装置200では、電気泳動粒子421、422の色を異ならせていることにより、多階調の画像を表示することが可能となっている。
また、本実施形態の電気泳動表示装置200は、アクティブマトリクス装置100を有することにより、特定の走査線102に接続された薄膜トランジスタ1を選択的かつ確実にON/OFFすることができるので、クロストークの問題が生じにくく、また、回路動作の高速化が可能であることから、高品位の画像(情報)を得ることができる。
【0064】
また、本実施形態の電気泳動表示装置200は、低い駆動電圧で作動するため、省電力化が可能である。
なお、前述したような薄膜トランジスタ1を備えるアクティブマトリクス装置100が組み込まれた電気光学装置は、このような電気泳動表示装置200への適用に限定されるものではなく、例えば、液晶装置、有機または無機EL装置等の表示装置、あるいは発光装置に適用することもできる。
【0065】
このような電気泳動表示装置(電気光学装置)は、例えば、透明基板404、透明電極403、マイクロカプセル402およびバインダ材405を備える電気泳動表示シートを用意する工程と、この電気泳動表示シートに画素電極103が接触するように、本発明の膜付き基板の製造方法で製造されたアクティブマトリクス装置100を貼り合わせる工程とを有する製造方法(本発明の電気光学装置の製造方法)により製造することができる。
【0066】
さらに、この電気光学装置が、液晶装置である場合、例えば、この液晶装置は、本発明の膜付き基板の製造方法で製造されたアクティブマトリクス装置100と透明基板とを貼り合わせる工程と、貼り合わせたアクティブマトリクス装置100と透明基板との間に液晶材料を注入する工程とを有する製造方法(本発明の電気光学装置の製造方法)により製造することができる。
【0067】
<電子機器>
このような電気泳動表示装置200は、各種電子機器に組み込むことができる。以下、電気泳動表示装置200を備える本発明の電子機器について説明する。
<<電子ペーパー>>
まず、本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態について説明する。
【0068】
図6は、本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
この図に示す電子ペーパー600は、紙と同様の質感および柔軟性を有するリライタブルシートで構成される本体601と、表示ユニット602とを備えている。
このような電子ペーパー600では、表示ユニット602が、前述したような電気泳動表示装置200で構成されている。
【0069】
<<ディスプレイ>>
次に、本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態について説明する。
図7は、本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態を示す図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。
この図に示すディスプレイ800は、本体部801と、この本体部801に対して着脱自在に設けられた電子ペーパー600とを備えている。なお、この電子ペーパー600は、前述したような構成、すなわち、図6に示す構成と同様のものである。
【0070】
本体部801は、その側部(図中、右側)に電子ペーパー600を挿入可能な挿入口805が形成され、また、内部に二組の搬送ローラ対802a、802bが設けられている。電子ペーパー600を、挿入口805を介して本体部801内に挿入すると、電子ペーパー600は、搬送ローラ対802a、802bにより挟持された状態で本体部801に設置される。
【0071】
また、本体部801の表示面側(下図(b)中、紙面手前側)には、矩形状の孔部803が形成され、この孔部803には、透明ガラス板804が嵌め込まれている。これにより、本体部801の外部から、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を視認することができる。すなわち、このディスプレイ800では、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を、透明ガラス板804において視認させることで表示面を構成している。
【0072】
また、電子ペーパー600の挿入方向先端部(図中、左側)には、端子部806が設けられており、本体部801の内部には、電子ペーパー600を本体部801に設置した状態で端子部806が接続されるソケット807が設けられている。このソケット807には、コントローラー808と操作部809とが電気的に接続されている。
このようなディスプレイ800では、電子ペーパー600は、本体部801に着脱自在に設置されており、本体部801から取り外した状態で携帯して使用することもできる。
また、このようなディスプレイ800では、電子ペーパー600が、前述したような電気泳動表示装置200で構成されている。
【0073】
なお、本発明の電子機器は、以上のようなものへの適用に限定されず、例えば、テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、電子新聞、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等を挙げることができ、これらの各種電子機器の表示部に、電気泳動表示装置200を適用することが可能である。
【0074】
このような電子機器は、例えば、電気光学装置を製造する工程と、この電気光学装置と、電子機器を構成する各構成部品とを組み立てる工程とを有する製造方法(本発明の電子機器の製造方法)により製造することができる。
以上、本発明の液状材料、膜付き基板の製造方法、電気光学装置の製造方法および電子機器の製造方法について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
また、本発明の膜付き基板の製造方法、電気光学装置の製造方法および電子機器の製造方法は、それぞれ、任意の目的の工程が1または2以上追加されていてもよい。
【実施例】
【0075】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1−1.液状材料の調製
(実施例A)
以下に示すようにして、液状材料No.1〜4を、それぞれ調製した。
【0076】
((液状材料No.1))
ポリスチレン(重量平均分子量:200000)を、γ−ブチロラクトン(溶媒)に、0.1wt%の割合で分散・溶解することにより液状材料を調製した。
なお、γ−ブチロラクトンのこのポリスチレンに対する第二ビリアル係数は、1.07×10−4cm・mol/gである。
また、ポリスチレンの単位構造の双極子モーメントは、0.1Dである。
【0077】
((液状材料No.2))
溶媒を、シクロヘキサンに変更した以外は、前記液状材料No.1と同様にして、液状材料を調製した。
なお、シクロヘキサンのこのポリスチレンに対する第二ビリアル係数は、−1.90×10−4cm・mol/gである。
【0078】
(比較例A)
((液状材料No.3、4))
溶媒を、表1に示すものに変更した以外は、前記液状材料No.1と同様にして、液状材料を調製した。
なお、各溶媒の前記ポリスチレンに対する第二ビリアル係数を、表1に示す。
【0079】
1−2.液状材料の評価
各液状材料について、それぞれ、基板に対する静的接触角および後退接触角を測定した。
また、各液状材料中の溶媒についても、それぞれ、基板に対する静的接触角および後退接触角を測定した。
なお、基板は、オクチルトリエトキシシラン(シランカップリング剤)で撥液処理されたシリコン基板を用いた。
測定結果を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
表1に示すように、液状材料No.1、2(実施例A)は、それぞれ、基板に対する液状材料の後退接触角が、溶媒の後退接触角より大きいことが認められた。このことから、この基板に対して、液状材料No.1、2は、ピニングを起こし易いものであると言える。
特に、液状材料No.1は、液状材料と溶媒の後退接触角の差が40°以上と非常に大きく、また、溶媒の静的接触角が50°以上であったことから、特にピニングを起こし易いものであることが明らかとなった。
【0082】
さらに、液状材料No.1では、溶媒が非プロトン性極性有機溶媒であり、かつ、溶質に対する溶媒の第二ビリアル係数もピニングを起こし易い条件に合致していたため、前述のような傾向は、より顕著なものになると考えられる。
一方、液状材料No.3、4(比較例A)は、それぞれ、基板に対する液状材料の後退接触角が、溶媒の後退接触角とほぼ同等であった。
【0083】
2−1.評価用膜付き基板の製造
(実施例B)
以下に示すようにして、サンプルNo.1〜4の評価用膜付き基板を、それぞれ製造した。
((サンプルNo.1))
まず、シリコン基板を用意し、水を用いて洗浄した後、乾燥した。
【0084】
次に、オクチルトリエトキシシラン(シランカップリング剤)を用いてシリコン基板に撥液処理を施した。
次に、シリコン基板の撥液処理を施した面に、インクジェット法により、液状材料No.1を液滴として供給した。
続いて、この状態で液滴を放置して自然乾燥させ、乾燥膜を得た。これにより、評価用膜付き基板を得た。
((サンプルNo.2))
液状材料No.2を用いた以外は、前記サンプルNo.1と同様にして、評価用膜付き基板を製造した。
【0085】
(比較例B)
((サンプルNo.3、4))
液状材料を、それぞれ、液状材料No.3および液状材料No.4に変更した以外は、前記サンプルNo.1と同様にして、評価用膜付き基板を製造した。
【0086】
2−2.評価用膜付き基板の評価
各サンプルNo.の評価用膜付き基板の膜を、それぞれ、光学顕微鏡で観察した。
そして、得られた膜を、以下の基準にしたがって評価した。
○:膜のサイズが液滴とほぼ同等であった(膜の外径が液滴の外径の95%以上)
△:膜のサイズが液滴より若干小さい(膜の外径が液滴の外径の80%以上95%未満)
×:膜のサイズが液滴より著しく小さい(膜の外径が液滴の外径の80%未満)
評価結果を表2に示す。
【0087】
【表2】

【0088】
表2に示すように、各実施例Bの評価用膜付き基板では、外径が液滴の80%以上の膜が得られており、十分な寸法精度の膜が得られた。特に、サンプルNo.1の基板では、この傾向がより顕著であった。
一方、各比較例Bの評価用膜付き基板では、いずれも、外径が液滴の80%未満に収縮した膜が認められた。
【0089】
3−1.アクティブマトリクス装置の製造
(実施例C1)
<1>まず、シリコン基板を用意し、水を用いて洗浄した後、乾燥した。続いて、フォトリソグラフィー法により、ソース電極およびドレイン電極を形成した。
<2>次に、シリコン基板上に、オクチルトリエトキシシラン(シランカップリング剤)を用いてシリコン基板に撥液処理を施した。
<3>次に、真空蒸着により、ソース電極とドレイン電極の間隙を埋めるように、ペンタセンを成膜し、半導体層を形成した。
【0090】
<4>次に、ソース電極、ドレイン電極および半導体層を覆うように、インクジェット法により、液状材料No.1を供給し、液状被膜を形成した。
<5>次に、自然乾燥により、液状被膜中から溶媒を揮発・除去して、ゲート絶縁膜を形成した。
<6>次に、走査線、データ線および画素電極等を形成して、アクティブマトリクス装置を得た。
(実施例C2)
前記工程<4>において、液状材料No.2を用いた以外は、前記実施例C1と同様にしてアクティブマトリクス装置を得た。
【0091】
(比較例C1)
前記工程<4>において、液状材料No.3を用いた以外は、前記実施例C1と同様にしてアクティブマトリクス装置を得た。
(比較例C2)
前記工程<4>において、液状材料No.4を用いた以外は、前記実施例C1と同様にしてアクティブマトリクス装置を得た。
【0092】
3−2.アクティブマトリクス装置の評価
各実施例および各比較例のアクティブマトリクス装置に形成された各薄膜トランジスタの特性を評価した。
その結果、各実施例で得られた薄膜トランジスタは、それぞれ、トランジスタとして機能した。
一方、各比較例で得られた薄膜トランジスタは、ゲート絶縁膜の絶縁性が不十分なため、機能しなかった。また、各比較例で得られた薄膜トランジスタの縦断面を電子顕微鏡で観察したところ、ゲート絶縁膜が薄い部分が認められ、さらに、一部では、ゲート電極と半導体層が短絡している部分も認められた。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本実施形態にかかるアクティブマトリクス装置(膜付き基板)の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態のアクティブマトリクス装置が備える薄膜トランジスタの構成を示す図(縦断面図および平面図)である。
【図3】本実施形態のアクティブマトリクス装置の製造方法を説明するための図(断面図)である。
【図4】静的接触角および動的接触角を説明するための図である。
【図5】電気泳動表示装置の実施形態を示す縦断面図である。
【図6】本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
【図7】本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0094】
1……薄膜トランジスタ 48……基板 72……ソース電極 73……ドレイン電極 78……半導体層 79……ゲート絶縁膜 80……ゲート電極 100……アクティブマトリクス装置(膜付き基板) 101……データ線 102……走査線 103……画素電極 200……電気泳動表示装置(電気光学装置) 400……電気泳動表示部 402……マイクロカプセル 420……電気泳動分散液 421、422……電気泳動粒子 403……透明電極 404……透明基板 405……バインダ材 600……電子ペーパー 601……本体 602……表示ユニット 800……ディスプレイ 801……本体部 802a、802b……搬送ローラ対 803……孔部 804……透明ガラス板 805……挿入口 806……端子部 807……ソケット 808……コントローラー 809……操作部 L……液滴 S……基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に所定パターンの膜を形成するのに用いられる液状材料であって、
前記液状材料は、実質的に極性を有さないポリマーを溶媒に溶解してなり、前記溶媒の前記基板に対する後退接触角をA[°]とし、前記液状材料の前記基板に対する後退接触角をB[°]としたとき、A−B≧5°となる関係を満足することを特徴とする液状材料。
【請求項2】
前記ポリマーの繰り返し単位を構成する単位構造の双極子モーメントが1D(デバイ単位)以下である請求項1に記載の液状材料。
【請求項3】
前記溶媒の前記基板に対する静的接触角が50°以上である請求項1または2に記載の液状材料。
【請求項4】
前記溶媒の前記ポリマーに対する第二ビリアル係数が、0〜1.5×10−4cm・mol/gである請求項1ないし3のいずれかに記載の液状材料。
【請求項5】
前記溶媒は、非プロトン性の極性有機溶媒を主成分とする請求項1ないし4のいずれかに記載の液状材料。
【請求項6】
前記ポリマーは、ポリスチレンを主成分とし、前記溶媒は、γ−ブチロラクトンを主成分とする請求項1ないし5のいずれかに記載の液状材料。
【請求項7】
前記液状材料は、その粘度(常温)が0.5〜20cPである請求項1ないし6のいずれかに記載の液状材料。
【請求項8】
前記液状材料は、その表面張力が20〜40mN/mである請求項1ないし7のいずれかに記載の液状材料。
【請求項9】
前記液状材料は、液滴吐出法に用いられるものである請求項1ないし8のいずれかに記載の液状材料。
【請求項10】
基板上に膜を形成して膜付き基板を製造する膜付き基板の製造方法であって、
前記基板上に、実質的に極性を有さないポリマーを溶媒に溶解してなる液状材料を供給して液状被膜を形成する第1の工程と、
前記液状被膜から前記溶媒を除去して、前記膜を得る第2の工程とを有し、
前記液状材料として、前記溶媒の前記基板に対する後退接触角をA[°]とし、前記液状材料の前記基板に対する後退接触角をB[°]としたとき、A−B≧5°となる関係を満足するものを用いることを特徴とする膜付き基板の製造方法。
【請求項11】
前記第1の工程に先立って、前記基板の少なくとも一方の面に撥液処理を施す工程を有する請求項10に記載の膜付き基板の製造方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の膜付き基板の製造方法を含むことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の電気光学装置の製造方法を含むことを特徴とする電子機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−238724(P2007−238724A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61871(P2006−61871)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】