説明

液状注型組成物、製造方法、及びフォトクロミック光学素子

本発明は、フォトクロミック光学素子を製造するための液状注型組成物を提供し、該組成物は、(i)アクリレート又はメタクリレートモノマー、(ii)フォトクロミック化合物、(iii)テルピノレンをベースにしたラジカル連鎖移動剤、及び(iv)熱フリーラジカル開始剤を含む。また、該液状注型組成物を使用するフォトクロミック光学素子の製造方法、及びそれによって製造されるフォトクロミック光学素子が提供される。フォトクロミック光学素子には、例えば、眼鏡レンズが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる2009年3月16に出願のオーストラリア特許仮出願第2009901119号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、フォトクロミック光学素子を製造するための液状注型組成物、該組成物を含む光学素子の製造方法、並びに該組成物及び/又は方法を使用して製造されるフォトクロミック光学素子に関する。
【背景技術】
【0003】
変化する光に応答して色が自動的に暗色化及び褪色する、レンズなどのフォトクロミック光学素子は、広く使用されている。光学素子は、褪色した基底状態から太陽光への曝露によって暗色化された活性化状態へ変化するフォトクロミック化合物を含む。基底状態から活性化状態への移行は可逆的であり、その結果、該化合物は、太陽光から遮られると、透明な(又は極く僅かに着色した)基底状態に戻る。
【0004】
フォトクロミック光学素子は、該光学素子の基体内に、又は該光学素子の表面上にフォトクロミック化合物を含めることによって典型的には形成され、該光学素子は、光学素子の基体中にフォトクロミック化合物を直接的に含めることによって、又はフォトクロミック化合物を含む層で光学素子を被覆することによって典型的には形成される。フォトクロミック化合物を含む層で光学素子を被覆することに比べて、製造中にフォトクロミック化合物を基体中に含めることはより費用がかからないので、製造上の観点から、フォトクロミック化合物を光学素子の基体内に存在させることが好ましい。
【0005】
光学素子の基体中にフォトクロミック化合物を含めることは、通常、2つの方法の中の1つ、すなわち(i)形成された又は半形成された光学素子中にフォトクロミック化合物を浸潤させる(それゆえ「浸潤」法と呼ばれる)によって、或いは(ii)重合可能なモノマーを含む注型組成物中にフォトクロミック化合物を含め、次いで、該組成物を硬化させて光学素子を製造すること(それゆえ「キャスト−イン」法と呼ばれる)によって達成される。どちらの場合においても、光学素子中にフォトクロミック化合物を含めることは困難であることが広く認識されている。例えば、浸潤法を使用して光学素子中に導入されるフォトクロミック化合物の量を調節することは困難である。対照的に、キャスト−イン法を使用して光学素子中のフォトクロミック化合物の量を調節することはより容易であるが、フォトクロミック化合物は、重合条件によって不都合な影響を受けることが多く、フォトクロミック化合物の分解及び得られるレンズ素子の不十分なフォトクロミック性能をもたらす。
【0006】
フォトクロミック光学素子の製造においてさらに考慮すべき事柄は、フォトクロミック化合物が光学素子の基体中に存在する場合の該フォトクロミック化合物の性能である。フォトクロミック光学素子は、それらが照明条件のいかなる変化にも可能な限り敏速に反応するように、褪色状態と暗色化状態との間で敏速な転換を示すことが一般には期待される。フォトクロミック化合物を取り囲む基体マトリックスの化学的及び物理的特性は、暗色化速度及び褪色速度、並びに暗色化深度などのフォトクロミック特性に大きな影響を及ぼすことが知られている。
【0007】
フォトクロミック光学素子の多くの既存の製造方法は、また、規格に達しない品質の光学素子をもたらす。例えば、多くの方法は、割れ及び/又は表面欠陥を呈する光学素子をもたらす。これは、液状注型組成物を使用して異なる厚さの光学素子を作製する場合にしばしば起こる事例である。例えば、2mmの平面レンズに対して成功裡に使用できる組成物は、規格に達しない品質を有する厚さが10mmの半完成レンズをもたらす可能性がある。したがって、光学素子の品質を危うくすることなく、異なる厚さのフォトクロミック光学素子を製造するのに十分なほど確固とした重合可能な組成物を得ることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまでの説明から、商業的に実現可能なフォトクロミック光学素子の製造において、多くの因子を考慮することが必要であることは、明白である。改善された及び/又は代替の液状注型組成物、並びにポリマー系フォトクロミック光学素子の形成方法が必要とされている。
【0009】
本明細書でのいずれかの先行技術に対する言及は、この先行技術がいずれかの国において普通の一般的な知識の一部を形成することの承認又はいずれかの形態の示唆ではなく、且つ承認又はいずれかの形態の示唆と解釈されるべきでない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、特定の液状注型組成物を使用することによって、高品質、高性能のフォトクロミック光学素子を製造することができるという本発明者らの発見に由来する。
【0011】
本発明は、フォトクロミック光学素子を製造するための液状注型組成物を提供し、該組成物は、
(i)アクリレート又はメタクリレートモノマー、
(ii)フォトクロミック化合物、
(iii)テルピノレンをベースにしたラジカル連鎖移動剤、及び
(iv)熱フリーラジカル開始剤
を含む。
【0012】
用語「液状注型組成物」は、本明細書で使用する場合、固形フォトクロミック光学素子を形成するために、鋳型に添加し且つ熱重合反応に供することのできる重合可能な注型組成物を意味することが意図される。
【0013】
アクリレート又はメタクリレートモノマーと、テルピノレンをベースにしたラジカル連鎖移動剤との組合せが有利である。なぜなら、アクリレート又はメタクリレートモノマーは、比較的容易に重合し、それによって重合に対するフォトクロミック化合物のなんらかの影響が最小化され、且つテルピノレン連鎖移動剤は、形成される光学素子が、フォトクロミック化合物が暗色化状態と褪色状態との間で敏速に転換することを可能にする適切な柔軟性を有するが、光学素子をコーティング層で被覆することのできるような適切な硬度を有するように重合速度を調節するからである。さらに、テルピノレン連鎖移動剤は、均一で条痕のない光学素子をもたらすように重合反応速度を調節する。
【0014】
一部の実施形態において、アクリレート又はメタクリレートモノマーは、ウレタンアクリレート又はメタクリレートモノマーを含むことができる。例えば、ウレタンアクリレート又はメタクリレートモノマーは、NKオリゴU−4HA、NKオリゴU−6HA、及び次の構造のモノマー:
【化1】


(式中、R1は、水素原子又はメチル基を表す)
からなる群から選択される任意の1種又は複数のモノマーを含むことができる。
【0015】
組成物中にウレタンアクリレート又はメタクリレートモノマーを含めることによって、組成物から形成される光学素子の1種又は複数の特性を改善することができる。例えば、ウレタンアクリレート又はメタクリレートモノマーは、形成される光学素子の衝撃強度を改善することができる。
【0016】
組成物は、また、光安定剤及び/又はUV吸収剤を含むことができ、且つ酸化防止剤を含むこともできる。
【0017】
理想的には、組成物は、60から85の間、60から80の間、又は70から80の間のバーコル硬度を有するフォトクロミック光学素子を形成するのに適している。バーコル硬度は、圧子の侵入深さ及び参照材料との比較により材料の押込み硬度を測定するバーコル硬度試験を使用することによって測定される。該試験は、当技術分野内で公知であり、ASTM D 2583(07 バーコルインプレッサーを使用する硬質プラスチックの押込み硬度の標準測定法(07 Standard Test Method for Indentation Hardness of Rigid Plastics by Means of a Barcol Impressor))によって規定される。一部の実施形態において、バーコル硬度試験では、87/89の刻印されたGYZJ935型バーコル試験リグ及び試験ディスク(GYZJ 69)を利用することができる。これらの試験ディスクは、87/89のバーコル参照硬度を有し、試験サンプルの参照として使用される。
【0018】
組成物は、また、300秒未満のフォトクロミックT3/4褪色時間、又は250秒未満のフォトクロミックT3/4褪色時間を有するフォトクロミック光学素子を形成するのに適している場合がある。
【0019】
さらに、組成物は、1.5mmから17mmの間の中心厚さを有する割れがなく且つ表面欠陥のない第1及び第2のフォトクロミック光学素子を形成するのに適している可能性があり、ここで、第1の光学素子の中心厚さは、第2の光学素子のそれに比べて、少なくとも6mm又は少なくとも12mm厚い。これに関して、同じ組成物を使用して異なる厚さ範囲の光学素子を製造することができ、このことは、製造を単純化することができる。例えば、一部の実施形態において、同じ組成物を使用して、2mmの平面レンズ、−2.00ストックレンズ、+4.00ストックレンズ、10mm厚半完成レンズ、及び15mm厚半完成レンズのいずれか1種又は複数を製造することができる。
【0020】
本発明は、また、フォトクロミック光学素子の製造方法を提供し、該方法は、
・上記の組成物を鋳型中に導入すること、及び
・該組成物を熱硬化ステップに供して固形フォトクロミック光学素子を得ること
を含む。
【0021】
本発明は、また、本明細書に記載のような組成物から、又は本明細書に記載のような方法により形成される光学素子を包含する。
【0022】
一部の実施形態において、光学素子は眼鏡レンズなどのレンズである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<一般的説明>
考察したように、本発明は、フォトクロミック光学素子を製造するための液状注型組成物、該組成物を含む光学素子の製造方法、並びに該組成物及び/又は方法を使用して製造されるフォトクロミック光学素子を提供する。光学素子は、レンズ(眼鏡レンズ及びサングラスレンズを含む)、レンズ素材、窓ガラス、透明ディスプレイパネルなどの任意の光学的に透明な物品でよい。一部の実施形態において、光学素子は、レンズ素子である。用語「レンズ素子」は、本明細書で使用する場合、光学的に透明なプラスチック材料から製造される完成した又は未完成のレンズ又はレンズ素材を指す。一部の実施形態において、レンズ素子は眼鏡レンズである。眼鏡レンズは、サングラス、ファッションレンズ、非度付き(平面)レンズ、度付きレンズ(完成及び半完成の)、スポーツマスク、フェイスシールド、及びゴーグル中で使用することができる。本発明は、フォトクロミック眼鏡レンズの製造の文脈で開発されたが、同時に、本明細書に記載の方法及び組成物を使用して他の透明なフォトクロミック物品を形成することもできることは明白であろう。
【0024】
光学素子は、(i)アクリレート又はメタクリレートモノマー、(ii)フォトクロミック化合物、(iii)テルピノレンをベースにしたラジカル連鎖移動剤、及び(iv)熱フリーラジカル開始剤を含む組成物から形成される。組成物は、鋳型中に導入され、次いで、熱硬化されて、固形フォトクロミック光学素子を提供する。
【0025】
アクリレート又はメタクリレートモノマーは、デカンジオールジアクリレートなどのアルキレンジアクリレート;NKエステルA200(ポリエチレングリコール200ジアクリレート)、NKエステルA400(ポリエチレングリコール400ジアクリレート)、NKエステルA600(ポリエチレングリコール600ジアクリレート)、NKエステルAPG−200(トリプロピレングリコールジアクリレート)及びNKエステルAPG−400(ポリプロピレングリコール400ジアクリレート)などのポリ(アルキレンオキシド)ジアクリレート;NKエステル14G、NKエステル9G、4g及びNKエステル2Gなどのポリ(アルキレンオキシド)ジメタクリレート;並びにNKオリゴU−4HA、NKオリゴU−6HA、NKオリゴU−2PPAなどのウレタンアクリレート又はメタクリレートからなる群から選択される1種又は複数のモノマーを含むことができる。一部の実施形態において、アクリレート又はメタクリレートモノマーは、NKエステル14G、NKエステル9G、NKエステル2G、及びエトキシル化ビスフェノール−Aジメタクリレート(1分子当たり1〜10個のエトキシ基を有する)からなる群から選択される。任意選択で、アクリレート又はメタクリレートモノマーは、また、NKオリゴU−4HA、NKオリゴU−6HA又はNKオリゴU−2PPAなどのウレタンアクリレート又はメタクリレートモノマーを含む。
【0026】
本発明は、ある範囲の適切なアクリレート及びメタクリレートを含む化合物を想定していることが認識されるであろう。例えば、アクリレート又はメタクリレートは、エトキシル化o−フェニルフェノールアクリレート、メトキシポリエチレングリコール400アクリレート(EO9モル)、メトキシポリエチレングリコール550アクリレート(EO13モル)、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、グリシジルアクリレート、ラウリルメタクリレート、イソステアリルアクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリルオキシ−3−メタクリルオキシプロパン、ポリエチレングリコール200ジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレート、ポリプロピレングリコール600ジアクリレート、プロポキシル化エトキシル化Bis−Aジアクリレート(PO12/EO6)、2.2ビス[4−(アクリルオキシポリエトキシ]フェニル]プロパン(EO3モル)、2.2ビス[4−(アクリルオキシポリエトキシ]フェニル]プロパン(EO10モル)、2.2ビス[4−(アクリルオキシポリエトキシ]フェニル]プロパン(EO20モル)、2.2ビス[4−(アクリルオキシジエトキシ]フェニル]プロパン(EO4モル)、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルロリン、2.2ビス[4−(アクリルオキシポリプロポキシ]フェニル]プロパン(PO3モル)、トリシロデカンジメタノールジアクリレート、1,12−ドデカンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコール#400ジアクリレート、ポリプロピレングリコール#700ジアクリレート、トリス(2−アクリルオキシエチル)イソシアヌレート、ε−カプロラクトンエトキシル化イソシアヌル酸トリアクリレート及びエトキシル化イソシアヌル酸トリアクリレート、エトキシル化グリセリントリアクリレート(EO9モル)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(EO20モル)、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(EO35モル)、テトラメチロールメタンテタアクリレート、ジ−ペンタエリスリトールポリアクリレート、ジ−ペンタエリスリトールポリアクリレート、β−メタクリロイルオキシエチル水素フタレート、メトキシポリエチレングリコール400メタクリレート(EO9モル)、メトキシポリエチレングリコール1000メタクリレート(EO23モル)、フェノキシエチルメタクリレート(EO1モル)、グリシジルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール200ジメタクリレート、ポリエチレングリコール400ジメタクリレート、ポリプロピレングリコール400ジメタクリレート、ポリプロピレングリコール600ジメタクリレート、ポリエチレングリコール1000ジメタクリレート、2.2ビス[4−(メタクリルオキシエトキシ]フェニル]プロパン(EO2.3モル)、2.2ビス[4−(メタクリルオキシエトキシ]フェニル]プロパン(EO2.6モル)、2.2ビス[4−(メタクリルオキシジエトキシ]フェニル]プロパン(EO4モル)、2.2ビス[4−(メタクリルオキシポリエトキシ]フェニル]プロパン(EO10モル)、2.2ビス[4−(メタクリルオキシポリエトキシ]フェニル]プロパン(EO17モル)、2.2ビス[4−(メタクリルオキシポリエトキシ]フェニル]プロパン(EO30モル)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,12−ドデカンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エトキシル化ポリプロピレングリコールジメタクリレート(PO12/EO6)、2−ヒドロキシ1,3−ジメタクリルオキシプロパン、ポリプロピレングリコール#400ジメタクリレート、トリス(2−メタクリルオキシエチル)イソシアヌレート、ε−カプロラクトンエトキシル化イソシアヌル酸トリメタクリレート、エトキシル化イソシアヌル酸トリメタクリレート、エトキシル化グリセリントリメタクリレート(EO9モル)、エトキシル化グリセリントリメタクリレート(EO20モル)、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート(EO35モル)、テトラメチロールメタンテタメタクリレート、ジ−ペンタエリスリトールポリメタクリレート、ジ−ペンタエリスリトールポリアクリレート、NKオリゴU−4HA、NKオリゴU−6HA、NKオリゴU−200PA、NKオリゴUA−122P、NKオリゴUA−4200、NKオリゴU−2PPA、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリブタジエンジメタクリレート、ポリブタジエンジアクリレート、並びにポリエステルアクリレートからなる群から選択される1種又は複数を含むことができる。
【0027】
アクリレート又はメタクリレートモノマーの典型的な例には、NKエステル14G、NKエステル9G、NKエステル2G、1,12−ドデカンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート(ライトエステル1.9ND)、ラウリル(メタ)アクリレート(NKエステルLA)、イソステアリル(メタ)アクリレート、及びエトキシル化ビスフェノール−Aジメタクリレート(1分子につき1から10個の間のエトキシ基を有する)からなる群から選択される任意の1種又は複数のモノマーが含まれる。
【0028】
光学素子の基体ポリマーの性質は、その中に組み込まれるフォトクロミック化合物の性能に影響を及ぼすことがある。例えば、特定のポリマーは、それによってフォトクロミック化合物が色を変える環状電子機構が十分に現れることを可能にする十分な自由体積又は可撓性を有さない可能性がある。しかし、十分な自由体積又は可撓性を有するポリマーは、十分な硬度を有する光学素子をもたらさない可能性がある。結果として、商業的に許容されるフォトクロミック反応速度及び商業的に許容される硬度を有するフォトクロミック光学素子を製造することは困難である。
【0029】
本発明者らは、
(i)ポリアルキレンオキシドアクリレート又はメタクリレートモノマーから形成される比較的硬質のポリマー、
(ii)ポリアルキレンオキシドアクリレート又はメタクリレートモノマーから形成される比較的可撓性のあるポリマー、及び
(iii)ウレタンアクリレート又はメタクリレートモノマー、
の組合せが、商業的に許容されるフォトクロミック反応速度を可能にする十分な可撓性を有しながら、商業的に許容される硬度及び衝撃強度をも有する光学素子基体を提供することを見出した。
【0030】
比較的硬質のポリマーを形成するポリアルキレンオキシドアクリレート又はメタクリレートモノマーの例には、1モノマー単位当たり少数のアルキレンオキシド単位を有するモノマー(例えば、ジエチレングリコールジメタクリレートのように、1モノマー単位当たり4個以下のアルキレンオキシド単位を有するモノマー)が含まれる。比較的可撓性のあるポリマーを形成するポリアルキレンオキシドアクリレート又はメタクリレートモノマーの例には、1モノマー単位当たりより多数のアルキレンオキシド単位(例えば、NKエステル9G、NKエステル14G及びライトエステル14EGのように、1モノマー単位当たり6個以上、9個以上、又は14個以上のアルキレンオキシド単位)を有するモノマーが含まれる。これらの特定範囲内のアルキレンオキシド単位を有する一部のポリアルキレンオキシドアクリレート又はメタクリレートモノマーは、比較的硬質の又は比較的可撓性のあるポリマーをもたらさない可能性があり、且つこれらの特定範囲外のアルキレンオキシド単位を有する一部のモノマーが、比較的硬質の又は比較的可撓性のあるポリマーをもたらす可能性があることが認識されるであろう。しかし、当業者は、特定のポリアルキレンオキシドアクリレート又はメタクリレートモノマーが、比較的硬質の又は比較的可撓性のあるポリマーを形成するかどうかを、定型的な試行錯誤によって、特に提供される実施例と比較することによって判定できるであろう。
【0031】
別法として、本発明者らは、
(i)ポリアルキレンオキシドアクリレート又はメタクリレートモノマー、ポリプロピレングリコールアクリレート又はメタクリレートモノマー、ラウリルアクリレート又はメタクリレートモノマー、或いはイソステアリルアクリレート又はメタクリレートモノマーから形成される比較的可撓性のあるポリマー、
(ii)ビスフェノールAエトキシル化ジアクリレート又はメタクリレートから形成される比較的硬質のポリマー、及び
(iii)ウレタンアクリレート又はメタクリレートモノマー、
の組合せが、商業的に許容されるフォトクロミック反応速度を可能にする十分な可撓性を有しながら、同時に商業的に許容される硬度及び衝撃強度をも有する光学素子基体を提供することを見出した。
【0032】
比較的可撓性のあるポリマーを形成するポリアルキレンオキシドアクリレート又はメタクリレートモノマーの例には、1モノマー単位当たり多数のアルキレンオキシド単位(例えば、NKエステル9G、NKエステル14G及びライトエステル14EGのように、1モノマー単位当たり6以上、9以上、又は14以上のアルキレンオキシド単位)を有するモノマーが含まれる。これらの特定範囲内のアルキレンオキシド単位を有する一部のポリアルキレンオキシドアクリレート又はメタクリレートモノマーは、比較的可撓性のあるポリマーをもたらさない可能性があり、且つこれらの特定範囲外のアルキレンオキシド単位を有する一部のモノマーが、比較的可撓性のあるポリマーをもたらす可能性があることが認識されるであろう。しかし、当業者は、特定のポリアルキレンオキシドアクリレート又はメタクリレートモノマーが、比較的可撓性のあるポリマーを形成するかどうかを、定型的な試行錯誤によって、特に提供される実施例と比較することによって判定できるであろう。
【0033】
使用されるモノマーの比率は、所望の硬度を有する光学素子をもたらすように変更することができる。
【0034】
前に考察したように、組成物は、60から85の間、60から80の間、又は70から80の間のバーコル硬度を有するフォトクロミック光学素子を形成するのに適している可能性がある。したがって、モノマーの組合せは、これらの範囲のいずれかに含まれるバーコル硬度を有する光学素子を提供するように選択することができる。
【0035】
本発明による組成物の一例は、
・重合可能な組成物に対して式(II)のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー:
【化2】


(式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、bは、5〜20からなる群から選択される整数である)30〜60重量部、
・ビスフェノールAエトキシル化ジ(メタ)アクリレート30〜60重量部、
・重合可能な組成物に対してウレタン(メタ)アクリレートモノマー0〜40重量部、
・重合可能な組成物に対してフォトクロミック化合物0.02〜0.2重量部、
・重合可能な組成物に対してテルピノレンをベースにしたラジカル連鎖移動剤0.1〜1.0重量部、及び
・重合可能な組成物に対して熱フリーラジカル開始剤0.1〜1.5重量部
を含むことができる。
【0036】
別法として、組成物は、
・重合可能な組成物に対して式(I)のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー:
【化3】


(式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、aは、2〜4からなる群から選択される整数である)20〜60重量部、
・重合可能な組成物に対して式(II)のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー:
【化4】


(式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、bは、5〜20からなる群から選択される整数である)15〜60重量部、
・重合可能な組成物に対してウレタン(メタ)アクリレートモノマー0〜40重量部、
・重合可能な組成物に対してフォトクロミック化合物0.02〜0.2重量部、
・重合可能な組成物に対してテルピノレンをベースにしたラジカル連鎖移動剤0.1〜1.0重量部、
・重合可能な組成物に対して熱フリーラジカル開始剤0.1〜1.5重量部
を含むことができる。
【0037】
組成物は、さらに、重合可能な組成物に対して1,9ノナンジオールジメタクリレート5〜20重量部を含むことができるか、或いは、さらに、重合可能な組成物に対してn−ラウリルメタクリレート5〜20重量部を含むことができる。
【0038】
さらなる例として、組成物は、
・重合可能な組成物に対して式(I)のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー:
【化5】


(式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、aは、2〜4からなる群から選択される整数である)30〜50重量部、
・重合可能な組成物に対して式(II)のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー:
【化6】


(式中、R2は、水素原子又はメチル基であり、m及びnは、合計して7までの整数である)30〜60重量部、
・重合可能な組成物に対してウレタン(メタ)アクリレートモノマー0〜40重量部、
・重合可能な組成物に対してフォトクロミック化合物0.02〜0.2重量部、
・重合可能な組成物に対してテルピノレンをベースにしたラジカル連鎖移動剤0.1〜1.0重量部、及び
・重合可能な組成物に対して熱フリーラジカル開始剤0.1〜1.5重量部
を含むことができる。
【0039】
化合物のいくつかの典型的な例を説明してきたので、化合物の成分のいくつかを詳細に説明することに注目する。
【0040】
フォトクロミック化合物は、既知であり、且つ太陽光で誘導される可逆的な変色又は暗色化が所望される応用分野で使用されているある範囲の化合物から選択することができる。フォトクロミック化合物の既知化学物質の部類には、ナフトピラン、アントラキノン、フタロシアニン、スピロ−オキサジン、クロメン、ピラン、フルギド、スピロ−ナフトオキサジン、スピロピラン、トリアリールメタン、スチルベン、アザスチルベン、ニトロン、スピロピラン、スピロ−オキサジン、キノン類が含まれる。典型的には、フォトクロミック化合物は、400nm〜700nmの可視のλmaxを有する。
【0041】
フォトクロミック化合物の例は、
1,3−ジヒドロスピロ[2H−アントラ[2,3−d]イミダゾール−2,1’−シクロヘキサン」−5,10−ジオン;
1,3−ジヒドロスピロ[2H−アントラ[2,3−d]イミダゾール−2,1’−シクロヘキサン」−6,11−ジオン;
1,3−ジヒドロ−4−(フェニルチオ)スピロ[2H−アントラ−1’,2−ジイミダゾール−2,1’−シクロヘキサン−6,11−ジオン;
1,3−ジヒドロスピロ[2H−アントラ[1,2−d]イミダゾール−2,1’−シクロへプタン]−6,11−ジオン−1,3,3−トリメチルスピロインドール−2,3’−[3H]ナフト[2,1−b]−1,4−オキサジン];
2−メチル−3,3’−スピロ−ビ−[3H−ナフト[2,1−ビピラン](2−Me);
2−フェニル−3−メチル−7−メトキシ−8’−ニトロスピロ[4H]−1−ベンゾピラン−4,3’−[3H]−ナフト[2,1−b]ピラン;
スピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,9’−キサンテン];
8−メトキシ−1’,3’−ジメチルスピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(1’H)−キノリン;
2,2’−スピロ−ビ−[2H−1−ベンゾピラン];
5’−アミノ−1’,3’,3’−トリメチルスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン;
エチル−β−メチル−β−(3’,3’−ジメチル−6−ニトロスピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン−1’−イル)−プロペノエート;
(1,3−プロパンジイル)ビス[3’,3’−ジメチル−6−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン];
3,3’−ジメチル−6−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−ベンゾキサゾリン];
6’−メチルチオ−3,3’−ジメチル−8−メトキシ−6−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−ベンゾチオゾリン];
(1,2−エタンジイル)ビス[8−メトキシ−3−メチル−6−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−ベンゾチオゾリン];
N,N’−ビス(3,3’−ジメチル−6−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’(3’H)−ベンゾチオアゾール−6’−イル)デカンジアミド];
α−(2,5−ジメチル−3−フリル)エチリデン(Z)−エチリデンスクシニカンヒドリド;
α−(2,5−ジメチル−3−フリル)−α’,δ−ジメチルフルギド;
2,5−ジフェニル−4−(2’−クロロフェニル)イミダゾール;
(2’,4’−ジニトロフェニル)メチル]−1H−ベンズイミダゾール;
N,N−ジエチル−2−フェニル−2H−フェナントロ[9,10−d]イミダゾール−2−アミン;
2−ニトロ−3−アミノフルオレン2−アミノ−4−(2’−フラニル)−6H−1,3−チアジン−6−チオン;
からなる群から選択することができる。
【0042】
市販のフォトクロミック化合物を使用することもできる。市販のフォトクロミック化合物の例としては、CNN11、CNN12、CNN13、CNN14、CNN15、CNN16、CNN17(Tokuyamaからの);Reversacol Midnight Gray、Reversacol Pacific Blue、Reversacol Sunflower及びReversacol Corn Yellow(James Robinsonからの)からなる群から選択される任意の1種又は複数を挙げることができる。その他既知の市販フォトクロミック化合物も使用することができる。
【0043】
任意選択で、2種以上のフォトクロミック化合物の混合物を使用することができる。フォトクロミック化合物の適切な混合物を使用することによって、特殊な活性化色を獲得することができる。
【0044】
テルピノレンをベースにしたラジカル連鎖移動剤は、重合調節剤として機能し、したがって、製造される光学素子中で条痕などの歪の形成を最小化するのを助ける。用語「テルピノレンをベースにしたラジカル連鎖移動剤」は、本明細書で使用する場合、テルピノレンそれ自体、並びに1−イソプロピル−4−メチル−1,4−シクロヘキサジエン及び1−イソプロピル−4−メチル−1,3−シクロヘキサジエンなどの構造的に関連したテルピノレン類似体をその範囲内に包含することが意図される。586−62−9のCAS登録IDを有するテルピノレンは、次の構造:
【化7】


を有する。
【0045】
テルピノレンをベースにしたラジカル連鎖移動剤は、化合物の混合物であってもよい。テルピノレンをベースにしたラジカル連鎖移動剤は、重合可能な組成物に、重合可能な有機組成物の総重量を基準にして0.01重量%〜2重量%の量で添加することができる。当業者は、使用されるテルピノレンをベースにしたラジカル連鎖移動剤の実際量は、使用される具体的なアクリレート又はメタクリレートモノマー、使用される熱フリーラジカル開始剤、フォトクロミック化合物、及び重合可能な組成物中の各成分の量を含むいくつかの因子を考慮して決定することができることを認識するであろう。
【0046】
本発明者らは、テルピノレンを含む組成物の重合は、標準的な試験条件下(すなわち、偏光器及びシャドウスコープ)で試験した場合に均一であり、且つまた良好なフォトクロミック反応速度を示す光学素子の形成をもたすことを見出した。対照的に、テルピノレンを含まない組成物の重合は、同一試験条件下で均一でなく、且つ/又はより遅いフォトクロミック反応速度を有する光学素子の形成をもたらす。
【0047】
熱フリーラジカル開始剤は、熱で活性化される触媒であり、これは重合反応を開始させる。いくつかの熱フリーラジカル開始剤が、当技術分野で知られており、使用することができる。例には、AIBN(アゾジイソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2.4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2.4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]などのアゾ系フリーラジカル開始剤;1,1−ジ−(ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン)などのジアルキルパーオキシド系フリーラジカル開始剤;TBPEH(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)などのアルキルパーエステル系フリーラジカル開始剤;ベンゾイルパーオキシドなどのジアシルパーオキシド系フリーラジカル開始剤;エチルヘキシルパーカーボネートなどのパーオキシジカーボネート系ラジカル開始剤;メチルエチルケトンパーオキシドなどのケトンパーオキシド系開始剤;ビス(t−ブチルパーオキシド)ジイソプロピルベンゼン;t−ブチルパーベンゾエート;t−ブチルパーオキシネオデカネート;及びこれらの組合せが含まれる。有機パーオキシド系フリーラジカル開始剤のさらなる例には、ジラウロイルパーオキシド、2,2−ジ(4,4−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、ジ(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、ジクミルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルモノパーオキシマレエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、tert−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−アミルパーオキシピバレート、tert−アミルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ(3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジイソブチルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(Trigonox 21S)、1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、tert−ブチルパーオキシジエチルアセテート、1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキシノナン、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert―ブチルパーオキシアセテート、イソプロピルクミルヒドロパーオキシド、及びtert−ブチルクミルパーオキシドが含まれる。
【0048】
組成物及び/又は熱硬化された光学素子は、光学素子に所望される特性又は特徴を付与する、或いは光学素子の性能を高める通常の付加的補助剤を含むことができる。このような補助剤としては、限定はされないが、光安定剤、UV吸収剤、熱安定剤、着色剤、染料、フリーラジカル捕捉剤、可塑剤、流動添加剤、酸化防止剤、及びその他の加工助剤が挙げられる。UV吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、シアノアクリレート類、又はトリアジン類のメンバー又は誘導体を挙げることができる。市販のUV吸収剤としては、例えば、Chimassorb 81、又はTinuvin 81/213/234/326/328/329/360/571/1577/P(Cibaからの)を挙げることができる。
【0049】
組成物は、さらに、光安定剤を含むことができる。ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)が市販されている。HALSは、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの誘導体であり、ほとんどのポリマー及びフォトクロミック染料の光誘起分解に対して極めて有効な安定剤である。適切な光安定剤の典型的な例は、Cibaから入手可能なTinuvin 765である。HALSのその他の例には、Chimassorb 2020/944、Tinuvin 111/123/494/622/770/783/791/B75/NOR 371/XT 833/XT 850が含まれる。
【0050】
重合可能な組成物は、さらに、1種又は複数の酸化防止剤を含むことができる。一部の実施形態において、1種又は複数の酸化防止剤は、重合可能な組成物から形成される光学素子の品質及び/又は耐久性を改善することができる。1種又は複数の酸化防止剤は、一次酸化防止剤(例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)又はヒンダードフェノール)及び/又は二次酸化防止剤(例えば、ホスファイト又はチオエステル)を含むことができる。市販の酸化防止剤としては、例えば、Irganox 1010、Irganox 1076、Irganox 245、Irganox 1035、Irganox B225、Irganox B900、Irgafos 126、Irgafos P−EPQ、Irgafos 168、及びIrgafos 38が挙げられる。酸化防止剤は、重合可能な組成物中で、重合可能な組成物の0.01〜0.5重量部の濃度で使用することができる。好ましくは、酸化防止剤は、重合可能な組成物中で、重合可能な組成物のほぼ0.1重量部の濃度で使用される。
【0051】
組成物は、さらに、少量の永続性染料(すなわち、Solvaperm red BBのような非フォトクロミック染料)を含むことができる。少量の永続性染料は、重合可能な組成物から形成される光学素子中の望ましくない残留色を最小化又は遮蔽するために使用することができる。例えば、永続性染料濃縮液の0.025%溶液の0.01〜0.1部を、重合可能な組成物中で使用することができる。
【0052】
本発明は、また、本明細書に記載の組成物から形成される、且つ/又は本明細書に記載のいずれかの方法により製造される光学素子を包含する。一部の実施形態において、光学素子はレンズ(例えば、眼鏡レンズ)である。
【0053】
光学素子は、組み立てた鋳型中に組成物を導入することによって形成することができる。プラスチック系光学素子を成型する方法は、当技術分野で公知である。鋳型中に重合可能な組成物を導入するに先立って、組成物を脱気することができる。また、熱硬化された光学素子の品質に影響を及ぼす可能性のある任意の粒子状物質を除去するために、重合可能な組成物を、鋳型中への導入に先立って濾過することができる。
【0054】
重合可能な組成物を鋳型中に導入した後、組成物を硬化して固形光学素子を形成する。一部の実施形態において、重合ステップを注意深く制御すると、高品質、高性能のフォトクロミック光学素子を製造することが可能になる。硬化は、熱的条件下で、すなわち、重合可能な組成物を含む組み立てられた鋳型を加熱することによって実施し、且つ熱勾配を利用することを含むことができる。例えば、熱勾配は、約50℃の時点で始まって、その後、温度を約12時間にわたって約120℃の最終温度まで漸増的に上昇させ、次いで、約70℃又は約80℃まで下降させる。
【0055】
したがって、熱硬化ステップは、組成物の温度を約50℃から80℃〜120℃の間まで7〜14時間にわたって上昇させることを含むことができる。任意選択で、熱硬化ステップは、最終ステップとして、組成物の温度を約70℃〜80℃の間で0.5〜2時間維持することを含むことができる。
【0056】
典型的な熱硬化ステップは、
・組成物を52℃で3時間加熱すること、
・組成物を52℃から53.5℃まで1.5時間にわたって加熱すること、
・組成物を53.5℃から62.5℃まで4.5時間にわたって加熱すること、
・組成物を62.5℃から80℃まで4時間にわたって加熱すること、及び
・温度を80℃で8時間維持すること
を含むことができる。
【0057】
上記の熱硬化ステップに対する小さな変形形態も考えることができ、且つ本発明の範囲内にあることが認識されるであろう。
【0058】
冷却後、硬化した光学素子を鋳型から取り出し、所望なら、さらなる加工処理に供することができる。例えば、当技術分野で公知のその他のコーティングを、光学素子上に被覆することができる。例えば、摩擦及び引掻き抵抗性を提供する1種又は複数のコーティングを光学素子上に被覆することができる。適切な摩擦抵抗性コーティング材料は、当技術分野で公知であり、多官能性アクリル硬質コーティング、ウレタンをベースにした硬質コーティング、アルキルをベースにしたコーティング、シロキサンをベースにした硬質コーティング、或いはその他の有機又は無機/有機硬質コーティングが挙げられる。
【0059】
用語「フォトクロミック反応速度」は、フォトクロミック光学素子の褪色に関して本明細書で使用する場合、光学素子の光学密度が、活性化された値の所定の分率まで褪色するのに要する時間を指す。したがって、用語「T3/4」は、フォトクロミック光学素子の褪色に関して本明細書で使用する場合、レンズの光学密度が活性化された状態から75%まで低下するのに要する時間を指す。
【0060】
一部の実施形態において、本発明により製造された光学素子は、300秒未満のフォトクロミックT3/4褪色時間、又は250秒未満のフォトクロミックT3/4褪色時間を有する可能性がある。
【実施例】
【0061】
<実施形態の説明>
本発明の組成物及び方法で使用するための材料及び方法の実施例を、これより提供する。これらの実施例を提供する上で、以下の説明の特定の性質は、上記説明の普遍性を制約するものではないことを理解されたい。
【0062】
本明細書で提供されるそれぞれの実施例は、次の鋳型アセンブリのそれぞれから光学素子を製造するのに使用された:
【表1】

【0063】
(例1)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表2】


*NKオリゴU−4HAは、4個の末端アクリル又はメタクリル基を有するウレタンモノマーである。**Tinuvin 765は、ヒンダードアミン系光安定剤である。***Trigonox 21Sは熱フリーラジカル開始剤である。
【0064】
フォトクロミック染料を、熱開始剤を添加する前に、モノマー中に8時間で溶解した。脱気及び濾過の後、鋳型アセンブリをモノマー混合物で満たし、オーブン中、次の加熱プロフィールで硬化させた:
【表3】

【0065】
各鋳型アセンブリからの硬化されたレンズは、偏光器及びシャドウスコープ下で均一であった。材料中に光学的歪は存在せず、フォトクロミック反応速度は良好であった。レンズは、太陽光中で活性化されると青灰色を呈した。
【0066】
(例2)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表4】


これらの成分の中で、Reversacol Pacific Blueは青色のフォトクロミック染料であり、Reversacol Sunflowerは黄色のフォトクロミック染料であり、NKエステル2Gはジエチレングリコールジメタクリレートであり、ライトエステル14EGはポリエチレングリコールジメタクリレートであり、NKオリゴU−2PPAはウレタンジアクリレートである。
【0067】
先ず、フォトクロミック染料をNKエステル2G中で3時間溶解し、次いで、残りの成分を添加し、撹拌した。脱気及び濾過の後、モノマー混合物を鋳型アセンブリ中に満たし、オーブン中、次の加熱プロフィールで硬化させた:
【表5】

【0068】
各鋳型アセンブリからの硬化されたレンズは、偏光器及びシャドウスコープ下で均一であった。材料中に光学的歪は存在せず、フォトクロミック反応速度は良好であった。レンズは、太陽光中で活性化されると灰色を呈した。
【0069】
(例3)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表6】


Reversacol midnight grayは青色のフォトクロミック染料であり、Reversacol corn yellowは黄色のフォトクロミック染料である。
【0070】
先ず、フォトクロミック染料をNKエステル2G中で3時間溶解し、次いで、残りの成分を添加し、撹拌した。脱気及び濾過の後、モノマー混合物を鋳型アセンブリ中に満たし、オーブン中、次の加熱プロフィールで硬化した:
【表7】

【0071】
各鋳型アセンブリからの硬化されたレンズは、偏光器及びシャドウスコープ下で均一であった。材料中に光学的歪は存在せず、フォトクロミック反応速度は良好であった。レンズは、太陽光中で活性化されると灰色を呈した。
【0072】
(例4)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表8】

【0073】
先ず、フォトクロミック染料をNKエステル2G中で3時間溶解し、次いで、残りの成分を添加し、撹拌した。脱気及び濾過の後、モノマー混合物を鋳型アセンブリ中に満たし、オーブン中、次の加熱プロフィールで硬化した:
【表9】

【0074】
各鋳型アセンブリからの硬化されたレンズは、偏光器及びシャドウスコープ下で均一であった。材料中に光学的歪は存在せず、フォトクロミック反応速度は良好であった。レンズは、太陽光中で活性化されると灰色を呈した。
【0075】
(例5)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表10】


これらの成分の中で、Reversacol Pacific Blueは青色のフォトクロミック染料であり、Reversacol Sunflowerは黄色のフォトクロミック染料であり、NKエステル2Gはジエチレングリコールジメタクリレートであり、ライトエステル14EGはポリエチレングリコールジメタクリレートであり、NKオリゴU−2PPAはウレタンジアクリレートである。
【0076】
先ず、フォトクロミック染料をNKエステル2G中で3時間溶解し、次いで、残りの成分を添加し、撹拌した。脱気及び濾過の後、モノマー混合物を鋳型アセンブリ中に満たし、オーブン中、次の加熱プロフィールで硬化した:
【表11】

【0077】
各鋳型アセンブリからの硬化されたレンズは、偏光器及びシャドウスコープ下で均一であった。材料中に光学的歪は存在せず、フォトクロミック反応速度は良好であった。レンズは、太陽光中で活性化されると灰色を呈した。
【0078】
(例6)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表12】


*Tinuvin 765はヒンダードアミン系光安定剤(HALS)であり、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートとの混合物である。
**NKオリゴU−2PPAは、次の化学構造を有するモノマーである:
【化8】

【0079】
モノマー混合物を上記の処方に基づいて調製した。撹拌、脱気及び濾過の後、モノマー混合物を鋳型/ガスケットアセンブリ中に満たした。
【0080】
アセンブリをオーブン内に配置し、次の硬化プロフィールを使用して硬化させた:
【表13】

【0081】
この処方及び硬化プロフィールは、厚い半完成のレンズ素材及び薄いストックレンズを製造するのに適していた。各鋳型アセンブリから製造されたレンズは、良好な品質を有し、注型歩留まりは高かった。レンズは、灰色のフォトクロミックレンズであり、製造されたこのようなレンズの基本的材料特性は次の通りである:
【表14】

【0082】
この実施例、及び次の実施例で、初期T%及び完全活性化T%は、暗又は明条件中に維持された光学素子の光透過試験結果に関する。該試験は、調光ビーム(標準中に規定された通りの)を50kルクスに設定してEN1836:1997及びISO 8980−3中に規定された通りに実施した。すべてのレンズを23℃で試験した。
【0083】
(例7)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表15】


*ライトエステル1.9NDは1.9ノナンジオールジメタクリレートの化学名を有するモノマーである。
【0084】
モノマー混合物を上記処方に基づいて調製した。撹拌、脱気及び濾過の後、モノマー混合物を鋳型/ガスケットアセンブリ中に満たした。アセンブリをオーブン中に配置し、次の硬化プロフィールを使用して硬化させた:
【表16】

【0085】
この処方及び硬化プロフィールは、厚い半完成レンズ素材及びストックレンズを製造するのに適していた。各鋳型アセンブリから製造されたレンズは、良好な品質を有し、注型歩留まりは高かった。レンズは灰色のフォトクロミックレンズであり、製造されたこのようなレンズの基本的材料特性は次の通りである:
【表17】

【0086】
(例8)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表18】


*NKエステルLAはn−ラウリルメタクリレートの化学名を有するモノマーである。
【0087】
この処方では、単官能性メタクリレートであるn−ラウリルメタクリレートを使用した。モノマー混合物を、上記処方を使用して調製した。撹拌、脱気及び濾過の後、モノマー混合物を鋳型アセンブリに満たした。鋳型アセンブリをオーブン中に配置し、次の硬化プロフィールを使用して硬化させた:
【表19】

【0088】
各鋳型アセンブリからこの方法で作り出されたレンズは、良好でバランスの取れたレンズ特性を有する。厚い半完成レンズ及び薄いストックレンズの双方を、この方法及び処方を使用して問題なく注型することができる。レンズは灰色のフォトクロミックレンズであり、獲得されたこのようなレンズの基本的材料特性を次表に列挙する:
【表20】

【0089】
(例9)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表21】


NKエステル9PGは、ポリプロピレングリコール#400ジメタクリレートの化学名を有するモノマーである。このモノマーの化学構造は:
【化9】


である。
【0090】
上記処方を使用してモノマー混合物を調製した。撹拌、脱気及び濾過の後、モノマー混合物を鋳型アセンブリ中に満たした。鋳型アセンブリをオーブン中に配置し、次の硬化プロフィールを使用して硬化させた:
【表22】

【0091】
各鋳型アセンブリからこの方法で作り出されたレンズは、良好でバランスの取れたレンズ特性を有する。厚い半完成レンズ及び薄いストックレンズの双方を、この方法及び処方を使用して問題なく注型することができる。レンズは灰色のフォトクロミックレンズであり、獲得されたこのようなレンズの基本的材料特性を次表に列挙する:
【表23】

【0092】
(例10)
それが0.005%の追加のUV吸収剤Tinuvin 329(CIBAから)を含むことを除けば例7と同様の重合可能な組成物を製造した。レンズを、例7中に示した方法に従って形成した。
【0093】
この実施例で使用されるUV吸収剤の化学名は、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールである。
【0094】
各鋳型アセンブリから得られたレンズは、灰色のフォトクロミックレンズであり、品質は良好であった。該レンズのフォトクロミック性能は次の通りである:
【表24】

【0095】
得られたレンズは78.7のバーコル硬度を有していた。
【0096】
(例11)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表25】


この処方では、Tokuyamaからの褐色染料パーケージを使用した。
【0097】
モノマー混合物を上記処方に基づいて調製した。撹拌、脱気及び濾過の後、モノマー混合物を鋳型/ガスケットアセンブリ中に満たした。アセンブリを、オーブン中に配置し、次の硬化プロフィールを使用して硬化させた:
【表26】

【0098】
この処方及び硬化プロフィールは、厚い半完成レンズ素材及びストックレンズを製造するのに適していた。各鋳型アセンブリから製造されたレンズは、褐色のフォトクロミックレンズであり、良好な品質を有し、注型歩留まりは高かった。レンズのフォトクロミック特性は次の通りである:
【表27】

【0099】
得られたレンズは、76.2のバーコル硬度を有していた。
【0100】
(比較例1)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表28】

【0101】
熱開始剤を添加する前に、フォトクロミック染料をモノマー中で8時間溶解した。脱気及び濾過の後に、鋳型アセンブリを、モノマー混合物で満たし、オーブン中、次の加熱プロフィールを使用して硬化させた:
【表29】

【0102】
この比較例では、処方中にテルピノレンを使用しなかった。得られたレンズは、偏光器及びシャドウスコープ下で均一でなく、レンズ中に多くの歪が存在した。それらは、良好なレンズであるとは考えられなかった。
【0103】
(比較例2)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表30】

【0104】
先ず、フォトクロミック染料をNKエステル2G中で3時間溶解し、次いで、残りの成分を添加し、撹拌した。脱気及び濾過の後、モノマー混合物を鋳型アセンブリ中に満たし、オーブン中、次の加熱プロフィールで硬化させた:
【表31】

【0105】
この比較例では、処方中でテルピノレンを使用しなかった。得られたレンズは、偏光器及びシャドウスコープ下で均一でなく、レンズ中に多くの歪が存在した。それらは、良好なレンズであるとは考えられなかった。
【0106】
(比較例3)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表32】

【0107】
先ず、フォトクロミック染料をNKエステル2G中で3時間溶解し、次いで、残りの成分を添加し、撹拌した。脱気及び濾過の後、モノマー混合物を鋳型アセンブリ中に満たし、オーブン中、次の加熱プロフィールで硬化させた:
【表33】

【0108】
この比較例では、処方中でテルピノレンを使用しなかった。硬化したレンズは、光学的歪を有し、偏光器及びシャドウスコープ下で均一でなかった。それらはレンズとして有用であるとは考えられなかった。
【0109】
(比較例4)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表34】

【0110】
先ず、フォトクロミック染料をNKエステル2G中で3時間溶解し、次いで、残りの成分を添加し、撹拌した。脱気及び濾過の後、モノマー混合物を鋳型アセンブリ中に満たし、オーブン中、次の加熱プロフィールで硬化させた:
【表35】

【0111】
この比較例では、処方中でテルピノレンを使用しなかった。得られたレンズは、偏光器及びシャドウスコープ下で均一でなかった。レンズのフォトクロミック反応速度は、また、テルピノレンを使用して製造された同等のレンズに比べてはるかに遅かった。
【0112】
(比較例5)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表36】

【0113】
先ず、フォトクロミック染料をNKエステル2G中で3時間溶解し、次いで、残りの成分を添加し、撹拌した。脱気及び濾過の後、モノマー混合物を鋳型アセンブリ中に満たし、オーブン中、次の加熱プロフィールで硬化させた:
【表37】

【0114】
この比較例では、処方中でテルピノレンを使用しなかった。硬化したレンズは、偏光器及びシャドウスコープ下で均一でなく、またレンズ中に多くの歪が存在した。これらは、良好なレンズであるとは考えられなかった。
【0115】
(比較例6)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表38】

【0116】
250gのモノマー混合物を上記処方に基づいて調製した。この実施例と例6との間の唯一の相違は、この実施例中にはテルピノレンが存在しないことである。撹拌、濾過及び脱気の後、モノマー混合物を次の鋳型及びガスケットアセンブリ中に満たした:
【表39】

【0117】
充填されたアセンブリをオーブン中に配置し、次の硬化サイクルで硬化させた:
【表40】

【0118】
硬化の後、レンズを開放する。得られたレンズは、低品質であり、市場には許容されないであろう。次表はこれらのレンズの品質問題を要約する:
【表41】

【0119】
レンズのフォトクロミック特性は次の通りであった:
【表42】

【0120】
得られたレンズは、85.4のバーコル硬度を有していた。
【0121】
レンズ品質が劣るのみならず、レンズのフォトクロミック特性も劣っていた。完全に活性化された暗さは低く、且つフォトクロミック褪色速度は遅かった。
【0122】
(比較例7)
次の成分を含む重合可能な組成物を次のように調製した:
【表43】

【0123】
250gのモノマー混合物を上記処方に基づいて調製した。この実施例と例6との間の唯一の相違は、この実施例中にはテルピノレンが存在しないことである。撹拌、濾過及び脱気の後、モノマー混合物を次の鋳型及びガスケットアセンブリ中に満たす:
【表44】

【0124】
充填されたアセンブリをオーブン中に配置し、次の硬化サイクルで硬化させた:
【表45】

【0125】
硬化の後、レンズを開放した。得られたレンズは、低品質であり、市場には許容されないであろう。次表はこれらのレンズの品質問題を要約する:
【表46】

【0126】
レンズのフォトクロミック特性は次の通りであった:
【表47】

【0127】
得られたレンズは、88.3のバーコル硬度を有していた。
【0128】
上に示したように、レンズのフォトクロミック反応速度は極めて遅く、且つレンズはフォトクロミック切り替え性能に劣る。
【0129】
(比較例8)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表48】

【0130】
250gのモノマー混合物を上記処方に基づいて調製し、この実施例と例8との間の唯一の相違は、この実施例中にテルピノレンが存在しないことである。撹拌、濾過及び脱気の後、モノマー混合物を次の鋳型及びガスケットアセンブリ中に充填した:
【表49】

【0131】
充填されたアセンブリをオーブン中に配置し、次の硬化サイクルで硬化させた:
【表50】

【0132】
硬化の後、レンズを開放した。得られたレンズは、低品質であり、市場には許容されないであろう。次表はこれらのレンズの品質問題を要約する:
【表51】

【0133】
レンズのフォトクロミック特性は次の通りであった:
【表52】

【0134】
得られたレンズは、86.4のバーコル硬度を有していた。
【0135】
レンズは、フォトクロミック切り替え速度が遅いので、劣悪なフォトクロミック特性を有する。
【0136】
(比較例9)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表53】

【0137】
250gのモノマー混合物を上記処方に基づいて調製した。この実施例と例9との間の唯一の相違は、この実施例中にはテルピノレンが存在しないことである。撹拌、濾過及び脱気の後、モノマー混合物を次の鋳型及びガスケットアセンブリ中に満たす:
【表54】

【0138】
充填されたアセンブリをオーブン中に配置し、次の硬化サイクルで硬化させた:
【表55】

【0139】
硬化の後、レンズを開放した。得られたレンズは、低品質であり、市場には許容されないであろう。次表はこれらのレンズの品質問題を要約する:
【表56】

【0140】
レンズのフォトクロミック特性は次の通りであった:
【表57】

【0141】
得られたレンズは、88.1のバーコル硬度を有していた。
【0142】
レンズは、フォトクロミック褪色速度が遅いので、劣悪なフォトクロミック特性を有する。
【0143】
(比較例10)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表58】

【0144】
硬化調節剤としてテルピノレンを使用する代わりに、この実施例では、テルピノレンの代わりにα−メチルスチレンを使用した。その他の条件は、すべて例6と同じとした。
【0145】
250gのモノマー混合物を上記処方に基づいて調製した。撹拌、濾過及び脱気の後、モノマー混合物を次の鋳型及びガスケットアセンブリ中に満たした:
【表59】

【0146】
充填されたアセンブリをオーブン中に配置し、次の硬化サイクルで硬化させた:
【表60】

【0147】
硬化の後、レンズを開放した。得られたレンズは、低品質であり、市場には許容されないであろう。次表はこれらのレンズの品質問題を要約する:
【表61】

【0148】
レンズのフォトクロミック特性は次の通りであった:
【表62】

【0149】
得られたレンズは、86.5のバーコル硬度を有していた。
【0150】
レンズは、フォトクロミック反応速度が遅いので、劣悪なフォトクロミック特性を有する。
【0151】
(比較例11)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表63】

【0152】
硬化調節剤としてテルピノレンを使用する代わりに、この実施例では、テルピノレンの代わりにα−メチルスチレンを使用した。その他の条件は、すべて、例7と同様とした。
【0153】
250gのモノマー混合物を上記処方に基づいて調製した。撹拌、濾過及び脱気の後、モノマー混合物を次の鋳型及びガスケットアセンブリ中に満たす:
【表64】

【0154】
充填されたアセンブリをオーブン中に配置し、次の硬化サイクルで硬化させた:
【表65】

【0155】
硬化の後、レンズを開放した。得られたレンズは、低品質であり、市場には許容されないであろう。次表はこれらのレンズの品質問題を要約する:
【表66】

【0156】
レンズのフォトクロミック特性は次の通りであった:
【表67】

【0157】
得られたレンズは、86.5のバーコル硬度を有していた。
【0158】
レンズは、フォトクロミック切り替え速度が極めて遅いので、劣悪なフォトクロミック特性を有する。
【0159】
(比較例12)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表68】

【0160】
硬化調節剤としてテルピノレンを使用する代わりに、この実施例では、α−メチルスチレンを使用した。その他の条件は、すべて、例8と同様とした。
【0161】
250gのモノマー混合物を上記処方に基づいて調製した。撹拌、濾過及び脱気の後、モノマー混合物を次の鋳型及びガスケットアセンブリ中に満たした:
【表69】

【0162】
充填されたアセンブリをオーブン中に配置し、次の硬化サイクルで硬化させた:
【表70】

【0163】
硬化の後、レンズを開放した。得られたレンズは、低品質であり、市場には許容されないであろう。次表はこれらのレンズの品質問題を要約する:
【表71】

【0164】
レンズのフォトクロミック特性は次の通りであった:
【表72】

【0165】
得られたレンズは、87.3のバーコル硬度を有していた。
【0166】
レンズは、フォトクロミック切り替え速度が極めて遅いので、劣悪なフォトクロミック特性を有する。
【0167】
(比較例13)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表73】

【0168】
硬化調節剤としてテルピノレンを使用する代わりに、この実施例ではα−メチルスチレンを使用した。その他の条件は、すべて、例9と同様とした。
【0169】
250gのモノマー混合物を上記処方に基づいて調製した。撹拌、濾過及び脱気の後、モノマー混合物を次の鋳型及びガスケットアセンブリ中に満たした。
【表74】

【0170】
充填されたアセンブリをオーブン中に配置し、次の硬化サイクルで硬化させた:
【表75】

【0171】
硬化の後、レンズを開放した。得られたレンズは、低品質であり、市場には許容されないであろう。次表はこれらのレンズの品質問題を要約する:
【表76】

【0172】
レンズのフォトクロミック特性は次の通りであった:
【表77】

【0173】
得られたレンズは、89.1のバーコル硬度を有していた。
【0174】
レンズは、フォトクロミック切り替え速度が遅いので、劣悪なフォトクロミック特性を有する。
【0175】
(比較例14)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表78】

【0176】
硬化調節剤としてテルピノレンを使用する代わりに、この実施例では1−ドデカンチオールを使用した。その他の条件は、すべて、例6と同様とした。
【0177】
250gのモノマー混合物を上記処方に基づいて調製した。撹拌、濾過及び脱気の後、モノマー混合物を次の鋳型及びガスケットアセンブリ中に満たした:
【表79】

【0178】
充填されたアセンブリをオーブン中に配置し、次の硬化サイクルで硬化させた:
【表80】

【0179】
硬化の後、レンズを開放した。得られたレンズは、低品質であり、市場には許容されないであろう。次表はこれらのレンズの品質問題を要約する:
【表81】

【0180】
レンズのフォトクロミック特性は次の通りであった:
【表82】

【0181】
得られたレンズは、87.2のバーコル硬度を有していた。
【0182】
レンズは、フォトクロミック切り替え速度が遅いので、劣悪なフォトクロミック特性を有する。
【0183】
(比較例15)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表83】

【0184】
硬化調節剤としてテルピノレンを使用する代わりに、この実施例では1−ドデカンチオールを使用した。その他の条件は、すべて、例7と同様とした。
【0185】
250gのモノマー混合物を上記処方に基づいて調製した。撹拌、濾過及び脱気の後、モノマー混合物を次の鋳型及びガスケットアセンブリ中に満たした:
【表84】

【0186】
充填されたアセンブリをオーブン中に配置し、次の硬化サイクルで硬化させた:
【表85】

【0187】
硬化の後、レンズを開放した。得られたレンズは、低品質であり、市場には許容されないであろう。次表はこれらのレンズの品質問題を要約する:
【表86】

【0188】
レンズのフォトクロミック特性は次の通りであった:
【表87】

【0189】
得られたレンズは、88.2のバーコル硬度を有していた。
【0190】
レンズは、フォトクロミック切り替え速度が極めて遅いので、劣悪なフォトクロミック特性を有する。
【0191】
(比較例16)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表88】

【0192】
硬化調節剤としてテルピノレンを使用する代わりに、この実施例では1−ドデカンチオールを使用した。その他の条件は、すべて、例8と同様とした。
【0193】
250gのモノマー混合物を上記処方に基づいて調製した。撹拌、濾過及び脱気の後、モノマー混合物を次の鋳型及びガスケットアセンブリ中に満たした:
【表89】

【0194】
充填されたアセンブリをオーブン中に配置し、次の硬化サイクルで硬化させた:
【表90】

【0195】
硬化の後、レンズを開放した。得られたレンズは、低品質であり、市場には許容されないであろう。次表はこれらのレンズの品質問題を要約する:
【表91】

【0196】
レンズのフォトクロミック特性は次の通りであった:
【表92】

【0197】
得られたレンズは、87.1のバーコル硬度を有していた。
【0198】
レンズは、フォトクロミック切り替え速度が遅いので、劣悪なフォトクロミック特性を有する。
【0199】
(比較例17)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表93】

【0200】
硬化調節剤としてテルピノレンを使用する代わりに、この実施例では1-ドデカンチオールを使用した。その他の条件は、すべて、例9と同様とした。
【0201】
250gのモノマー混合物を上記処方に基づいて調製した。撹拌、濾過及び脱気の後、モノマー混合物を次の鋳型及びガスケットアセンブリ中に満たした:
【表94】

【0202】
充填されたアセンブリをオーブン中に配置し、次の硬化サイクルで硬化させた:
【表95】

【0203】
硬化の後、レンズを開放した。得られたレンズは、低品質であり、市場には許容されないであろう。次表はこれらのレンズの品質問題を要約する:
【表96】

【0204】
レンズのフォトクロミック特性は次の通りであった:
【表97】

【0205】
得られたレンズは、89.5のバーコル硬度を有していた。
【0206】
レンズは、フォトクロミック切り替え速度が極めて遅いので、劣悪なフォトクロミック特性を有する。
【0207】
(比較例18)
次の成分を含む重合可能な組成物を下記のように調製した:
【表98】

【0208】
モノマー混合物を上記処方に基づいて調製した。モノマー混合物を次の鋳型アセンブリ中に満たし、オーブン中、次の硬化プロフィールを用いて硬化させた:
【表99】

【0209】
硬化の後、レンズを開放した。得られたレンズは、76.5のバーコル硬度を有し、フォトクロミック活性を有さなかった。フォトクロミック活性を獲得するためには、費用のかかる別の加工処理ステップを導入してこれらのレンズ中にフォトクロミック活性を付加する必要がある。これらの余分なステップは、フォトクロミックコーティングの塗布、又はフォトクロミック浸潤法の実行でよいであろう。しかし、これらは、加工処理費用をかなり増大させるので、望ましくない。
【0210】
典型的な実施例の要約
次表は、これまで考察した典型的な実施例、及び典型的な比較例の要約を示す:
【表100】

【0211】
上に示したように、重合可能な組成物中で硬化調節剤としてテルピノレンを使用すると、硬化調節剤を含まないもの、或いは硬化調節剤としてα−メチルスチレン又は1−ドデカンチオールを使用するものと比べてより高品質のレンズが生じる。
【0212】
当業者は、本明細書に記載の本発明が、具体的に記載されたもの以外の変形及び修正を受けやすいことを認識するであろう。本発明は、このような変形及び修正のすべてを包含することを理解されたい。本発明は、また、本明細書で言及又は示されたステップ、特徴、組成物及び化合物のすべてを、個別的又は集合的に、且つ任意の2つ以上のステップ又は特徴のいずれか及びすべての組合せを包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトクロミック光学素子を製造するための液状注型組成物であって、
(i)アクリレート又はメタクリレートモノマー、
(ii)フォトクロミック化合物、
(iii)テルピノレンをベースにしたラジカル連鎖移動剤、及び
(iv)熱フリーラジカル開始剤
を含む上記液状注型組成物。
【請求項2】
アクリレート又はメタクリレートモノマーが、アルキレンアクリレート、アルキレンメタクリレート、ポリ(アルキレンオキシド)アクリレート、ポリ(アルキレンオキシド)メタクリレート、ウレタンアクリレート、及びウレタンメタクリレートからなる群から選択される1種又は複数のモノマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1種又は複数のモノマーが、1種又は複数のモノアクリレート、モノメタクリレート、ジアクリレート、ジメタクリレート、トリアクリレート、又はトリメタクリレートを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
アクリレート又はメタクリレートモノマーが、デカンジオールジアクリレート、NKエステルA200(ポリエチレングリコール200ジアクリレート)、NKエステルA400(ポリエチレングリコール400ジアクリレート)、NKエステルA600(ポリエチレングリコール600ジアクリレート)、NKエステルAPG−200(トリプロピレングリコールジアクリレート)、NKエステルAPG−400(ポリプロピレングリコール400ジアクリレート)、NKエステル14G、NKエステル9G、NKエステル9PG、NKエステル4G、NKエステル2G、NKオリゴU−4HA、NKオリゴU−6HA、NKオリゴU−2PPA、及びNKエステルLAからなる群から選択される1種又は複数のモノマーを含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
アクリレート又はメタクリレートモノマーが、NKエステル14G、NKエステル9PG、NKエステル9G、NKエステル2G、1,12−ドデカンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート(ライトエステル1.9ND)、ラウリル(メタ)アクリレート(NKエステルLA)、イソステアリル(メタ)アクリレート、及び1分子当たり1〜10個のエトキシ基を有するエトキシル化ビスフェノール−Aジメタクリレートからなる群から選択される1種又は複数のモノマーを含む、請求項1から4までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
アクリレート又はメタクリレートモノマーが、ウレタンアクリレート又はウレタンメタクリレートモノマーも含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
ウレタンアクリレート又はウレタンメタクリレートモノマーが、NKオリゴU−4HA、NKオリゴU−6HA、及び次の構造のモノマー:
【化1】


(式中、R1は、水素原子又はメチル基を表す)
からなる群から選択される1種又は複数のモノマーを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
アクリレート又はメタクリレートモノマーが、
ポリアルキレンオキシドアクリレート又はメタクリレートモノマーから形成される比較的硬質のポリマー、
ポリアルキレンオキシドアクリレート又はメタクリレートモノマーから形成される比較的可撓性のあるポリマー、及び
ウレタンアクリレート又はメタクリレートモノマー
の組合せを含む、請求項1から7までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
比較的硬質のポリマーが、ジエチレングリコールジメタクリレート又は類似のモノマーから形成される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
比較的可撓性のあるポリマーが、1モノマー分子当たり14個のアルキレンオキシド単位を有するモノマーから形成される、請求項8又は請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
比較的可撓性のあるポリマーが、ライトエステル14EG又は類似のモノマーから形成される、請求項8から10までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
アクリレート又はメタクリレートモノマーが、
ポリアルキレンオキシドアクリレート又はメタクリレートモノマー、ポリプロピレングリコールアクリレート又はメタクリレートモノマー、ラウリルアクリレート又はメタクリレートモノマー、或いはイソステアリルアクリレート又はメタクリレートモノマーから形成される比較的可撓性のあるポリマー、
ビスフェノール−Aエトキシル化ジアクリレート又はメタクリレートから形成される比較的硬質のポリマー、及び
ウレタンアクリレート又はメタクリレートモノマー
の組合せを含む、請求項1から7までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
比較的可撓性のあるポリマーが、1モノマー分子当たり9個のアルキレンオキシド単位を有するモノマーから形成される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
比較的可撓性のあるポリマーが、NKエステル9G又は類似のモノマーから形成される、請求項12又は請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
比較的可撓性のあるポリマーが、NKエステル9PG又は類似のモノマーから形成される、請求項12又は請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
重合可能な組成物に対して式(II)のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー:
【化2】


(式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、bは、5〜20からなる群から選択される整数である)
30〜60重量部、
ビスフェノールAエトキシル化ジ(メタ)アクリレート30〜60重量部、
重合可能な組成物に対してウレタン(メタ)アクリレートモノマー0〜40重量部、
重合可能な組成物に対してフォトクロミック化合物0.02〜0.2重量部、
重合可能な組成物に対してテルピノレンをベースにしたラジカル連鎖移動剤0.1〜1.0重量部、及び
重合可能な組成物に対して熱フリーラジカル開始剤0.1〜1.5重量部
を含む、請求項1から15までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
重合可能な組成物に対して式(I)のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー:
【化3】


(式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、aは、2〜4からなる群から選択される整数である)
20〜60重量部、
重合可能な組成物に対して式(II)のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー:
【化4】


(式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、bは、5〜20からなる群から選択される整数である)15〜60重量部、
重合可能な組成物に対してウレタン(メタ)アクリレートモノマー0〜40重量部、
重合可能な組成物に対してフォトクロミック化合物0.02〜0.2重量部、
重合可能な組成物に対してテルピノレンをベースにしたラジカル連鎖移動剤0.1〜1.0重量部、及び
重合可能な組成物に対して熱フリーラジカル開始剤0.1〜1.5重量部、
を含む、請求項1から15までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
重合可能な組成物に対して1,9ノナンジオールジメタクリレート5〜20重量部をさらに含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
重合可能な組成物に対してn−ラウリルメタクリレート5〜20重量部をさらに含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
重合可能な組成物に対して式(I)のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー:
【化5】


(式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、aは、2〜4からなる群から選択される整数である)30〜50重量部、
重合可能な組成物に対して式(II)のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー:
【化6】


(式中、R2は、水素原子又はメチル基を表し、m及びnは、合計して7までの整数である)30〜60重量部、
重合可能な組成物に対してウレタン(メタ)アクリレートモノマー0〜40重量部、
重合可能な組成物に対してフォトクロミック化合物0.02〜0.2重量部、
重合可能な組成物に対してテルピノレンをベースにしたラジカル連鎖移動剤0.1〜1.0重量部、及び
重合可能な組成物に対して熱フリーラジカル開始剤0.1〜1.5重量部、
を含む、請求項1から15までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
フォトクロミック化合物が、スピロ−ナフトオキサジン、スピロピラン、ナフトピラン、トリアリールメタン、スチルベン、アザスチルベン、ニトロン、フルギド、スピロピラン、スピロ−オキサジン、キノン、及びクロメンからなる群から選択される1種又は複数のフォトクロミック化合物を含む、請求項1から20までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
テルピノレンをベースにしたラジカル連鎖移動剤が、テルピノレン、1−イソプロピル−4−メチル−1,4−シクロヘキサジエン、及び1−イソプロピル−4−メチル−1,3−シクロヘキサジエンからなる群から選択される1種又は複数の連鎖移動剤を含む、請求項1から21までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
テルピノレンをベースにしたラジカル連鎖移動剤が、重合可能な組成物に、重合可能な組成物の総重量を基準にして0.01重量%〜2重量%の量で添加される、請求項1から22までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
テルピノレンをベースにしたラジカル連鎖移動剤が、重合可能な組成物に、重合可能な組成物の総重量を基準にして0.01重量%〜1重量%の量で添加される、請求項1から23までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
熱フリーラジカル開始剤が、有機パーオキシド系熱フリーラジカル開始剤又はアゾ系フリーラジカル開始剤を含む、請求項1から24までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
熱フリーラジカル開始剤が、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを含む、請求項1から24までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
1種又は複数の付加的補助剤を含む、請求項1から26までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
1種又は複数の付加的補助剤が、光安定剤及び/又はUV吸収剤を含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
光安定剤が、ヒンダードアミン系光安定剤を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
UV吸収剤が、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、シアノアクリレート類、トリアジン類のメンバー又は誘導体、或いはこれらのいずれかの組合せを含む、請求項28又は請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
1種又は複数の付加的補助剤が、酸化防止剤を含む、請求項27から30までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
酸化防止剤が、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ヒンダードフェノール、ホスフェート、チオエステル、又はこれらのいずれかの組合せを含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
1種又は複数の付加的補助剤が、永続性染料を含む、請求項27から32までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
永続性染料が、組成物及び/又は光学素子を別に着色することなく組成物及び/又は光学素子中の残留色を遮蔽するための量で含められる、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
60から80の間のバーコル硬度を有するフォトクロミック光学素子を形成するのに適している、請求項1から34までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
300秒未満のフォトクロミックT3/4褪色時間を有するフォトクロミック光学素子を形成するのに適している、請求項1から35までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
250秒未満のフォトクロミックT3/4褪色時間を有するフォトクロミック光学素子を形成するのに適している、請求項1から36までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
1.5mmから17mmの間の中心厚さを有する、割れのない、且つ表面欠陥のない第1及び第2のフォトクロミック光学素子を形成するのに適しており、ここで、第1の光学素子の中心厚さは、第2の光学素子の中心厚さに比べて少なくとも6mm厚い、請求項1から37までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
1.5mmから17mmの間の中心厚さを有する、割れのない、且つ表面欠陥のない第1及び第2のフォトクロミック光学素子を形成するのに適しており、ここで、第1の光学素子の中心厚さは、第2の光学素子の中心厚さに比べて少なくとも12mm厚い、請求項1から38までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
フォトクロミック光学素子の製造方法であって、
鋳型中に、請求項1から38までのいずれか一項に記載の組成物を導入すること、及び
前記組成物を熱硬化ステップに供して、固形フォトクロミック光学素子を得ること
を含む上記方法。
【請求項41】
熱硬化ステップが、組成物の温度を約50℃から80℃〜120℃の間まで、7〜14時間にわたって上昇させることを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
熱硬化ステップが、
組成物を52℃で3時間加熱すること、
組成物を1.5時間にわたって52℃から53.5℃まで加熱すること、
組成物を4.5時間にわたって53.5℃から62.5℃まで加熱すること、
組成物を4時間にわたって62.5℃から80℃まで加熱すること、及び
温度を80℃で8時間維持すること
を含む、請求項40又は請求項41に記載の方法。
【請求項43】
請求項1から39までのいずれか一項に記載の組成物、又は請求項40から42までのいずれか一項に記載の方法から形成される光学素子。
【請求項44】
レンズである、請求項43に記載の光学素子。
【請求項45】
レンズが眼鏡レンズである、請求項42に記載の光学素子。
【請求項46】
300秒未満のフォトクロミックT3/4褪色時間を有する、請求項43から45までのいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項47】
250秒未満のフォトクロミックT3/4褪色時間を有する、請求項43から46までのいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項48】
60から80の間のバーコル硬度を有する、請求項43から47までのいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項49】
1.5mmから17mmの間の中心厚さを有する、請求項43から48までのいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項50】
本明細書に記載の通りの、及び実質的には添付の実施例に関して前に説明した通りの液状注型組成物。
【請求項51】
本明細書に記載の通りの、及び実質的には添付の実施例に関して前に説明した通りの方法。
【請求項52】
本明細書に記載の通りの、及び実質的には添付の実施例に関して前に説明した通りの光学素子。

【公表番号】特表2012−520383(P2012−520383A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500003(P2012−500003)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000297
【国際公開番号】WO2010/105289
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(508111246)カール ツァイス ビジョン オーストラリア ホールディングス リミテッド (3)
【Fターム(参考)】