説明

液状洗浄剤組成物

【課題】有機物を含む硬度塩(尿石)の除去効果に優れる中性洗浄剤を提供する
【解決手段】ポリエチレンイミン、キレート剤及び界面活性剤を含有することを特徴とする液状洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物と硬度塩によって形成された汚れ、特に尿石汚れの除去に適する液状洗浄剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
尿には尿素、尿酸、クレアチニン等の有機物や、リン酸イオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等の無機物が含まれていて、これらの成分が析出凝固して有機物を含む硬度塩(尿石)が析出したり、又は微生物による変性を受けて臭気が発生する等の問題が頻発する。この尿石は便器を不衛生にしたり、配管詰まりを引き起こしたりする原因となるため、これを除去する必要がある。これらの問題を解消するため、次亜塩素酸ナトリウムを配合したアルカリ性の洗浄剤および塩酸等を配合した酸性の洗浄剤が使用されている。しかし、これらの洗浄剤は危険であるので、中性の洗浄剤が要望されている。例えば、特許文献1では、スルホベタイン型両性界面活性剤を用いる方法が、特許文献2および3では及びアニオン界面活性剤と両性界面活性剤を組み合わせて作用させる方法が提案されている。しかし、これらの方法では、有機汚れを除去性が不十分である。特許文献4では、機汚れを除去するために、pH2〜6の範囲において酸性プロテアーゼと第四級アンモニム塩を作用させる方法が提案されている。この方法では、洗浄剤を保存中に酸性プロテアーゼが失活して性能が低下することが問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−145697号報
【特許文献2】特許第441885号報
【特許文献3】特開平10−1697号公報
【特許文献4】特開2005−194296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような状況の下、本発明の解決しようとする課題は、有機物を含む硬度塩(尿石)の除去効果に優れる中性洗浄剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねたところ、非イオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤、ポリエチレンイミン及びキレート剤を配合することにより、尿石を効果的に除去できることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて完成したものであり、以下の態様の洗浄剤を提供する。
項1 ポリエチレンイミン、キレート剤及び界面活性剤を含有することを特徴とする液状洗浄剤組成物。
項2 界面活性剤が非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする項1に記載の液状洗浄剤組成物。
項3 尿石汚れの除去用である項1または2に記載の液状洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明における液状洗浄剤組成物を用いれば、尿石を簡便にかつ効果的に除去できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に用いられるポリエチレンイミンは水に溶解するものであれば、特に限定されない。本発明の液状洗浄剤組成物におけるポリエチレンイミンの濃度は0.001〜10重量%、好ましくは0.005〜5重量%、更に好ましくは0.01〜1重量%である。0.001重量%以下の濃度では十分な尿石除去効果を得ることが出来ず、ポリエチレンイミンを10重量%以上添加しても効果が増強することはない。
【0008】
本発明の液状洗浄剤組成物に用いられるキレート剤としては、通常使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、リン酸系化合物(例えば、オルトリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸等)、ホスホン酸類(例えば、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン―1−ヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸等)、ホスホノカルボン酸類(例えば、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、αメチルホスホノコハク酸等)、アミノカルボン酸類(例えば、ニトリロトリ酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、イミノジコハク酸、アスパラギン酸ジ酢酸、アミノメチルグリシンジ酢酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸等)、有機酸(例えば、ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、アスコルビン酸、グルコン酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸等)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン等)、これらのアルカリ金属塩、アンモニア塩又はアルカノールアミン塩を挙げることができる。好ましいキレート剤は、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、クエン酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸である。
【0009】
本発明の液状洗浄剤組成物におけるキレート剤の濃度は、0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%である。また、本発明の液状洗浄剤組成物におけるポリエチレンイミン/キレート剤(重量比)は、0.0001〜100、好ましくは0.0005〜50、更に好ましくは0.001〜10である。
【0010】
本発明の液状洗浄剤組成物に用いられる両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン型、コカミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン等の脂肪酸アミドベタイン型、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のアルキルイミダゾール型、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルメチル−β―アラニン等のアミノ酸型、ラウリルジメチルアミンN−オキサイド、オレイルジメチルアミンN−オキサイド等のアルキルアミンオキサイド、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型が挙げられる。好ましい両性界面活性剤は、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタインである。
【0011】
本発明の液状洗浄剤組成物に用いられる非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等)、グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、モノエルカ酸フリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノスレアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ひまし油誘導体、グリセリンアルキレート、ポリオキシエチレン(POE)−ソルビタンエステル類(例えば、POE−ソルビットラウレート、POE−ソルビットモノオレエート、POE−ソルビタンモノステアレート等)、POE−脂肪酸エステル類、POE−アルキルエーテル類(例えば、POE−ラウリルエーテル、POE−オレイルエーテル、POE−ステアリルエーテル等)、プルロニック類、ポリオキシエチレン(POE)・ポリオキシプロピレン(POP)−アルキルエーテル類(例えば、POE・POP−モノセチルエーテル、POE・POP−モノブチルエーテル、POE・POP−グリセリンエーテル等)、テトロニック類、POE-ひまし油誘導体(例えば、POE-ひまし油、POE−硬化ひまし油、POE-硬化ひまし油モノイソステアレート等)、アルカノールアミド(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等)、POE−プロピレングリコールエステル、POE−アルキルアミン、POE−脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。好ましい非イオン性界面活性剤は、POE−アルキルエーテル類である。
【0012】
本発明の液状洗浄剤組成物における界面活性剤濃度は、0.01〜30重量%、好ましくは0.05〜20重量%、更に好ましくは0.1〜10重量%である。ポリエチレンイミンに対する界面活性剤の重量比(界面活性剤/ポリエチレンイミン)は、界面活性剤の種類によって異なるので特に限定されないが、一般には、0.001〜30000、好ましくは0.01〜4000、更に好ましくは0.1〜1000である。
【0013】
本発明の液状洗浄剤組成物には、適宜、溶剤、殺菌剤、消臭剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料を添加することができる。溶剤としては、グリセリン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル、グリセンモノエチルエーテル、グリセリンモノプロピルエーテル、グリセンモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジグリセリンモノメチルエーテル、ジグリセリンモノエチルエーテル、ジグリセリンモノプロピルエーテル、ジグリセリンモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0014】
殺菌剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ハイジェニア等の四級アンモニウム塩、ヒノキチオール等があげられる。
【0015】
消臭剤としては、αサイクロデキストリン、βシクロデキストリン、γシクロデキストリン、メチルβデキストリン等の環状オリゴ糖が挙げられる。
【0016】
増粘剤としては、例えば、アラビアゴム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、PVA、ポリアクリル酸ナトリウム、グアーガム、タマリントガム、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライト、ラポナイト等が挙げられる。
【0017】
保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、マルチトール等が挙げられる。
【0018】
着色料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、チタン酸鉄、黄酸化鉄、黄土、黒酸化鉄、コバルトバイオレット、チタン酸コバルト、群青、パール顔料、金属粉末顔料、有機顔料、クロロフィル、βカロチン等が挙げられる。
【0019】
香料としては、ジャコウ、ライム、ビャクダン、ハッカ、バニリン、シトロネラール、オイゲノール、リナロール、クマリン、ケイ皮酸エチル等が挙げられる。
【0020】
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤等が挙げられる。
【0021】
本発明の液状洗浄剤組成物は、中性付近のpHを有するものが好ましい。具体的には、本発明の液状洗浄剤組成物のpHは、4〜9付近、好ましくは6〜8付近である。pHは、本発明の液状洗浄剤組成物に酸(塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、蟻酸、メタンスルホン酸などの有機酸もしくは無機酸)またはアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物など)を加えて調整してもよく、緩衝剤(特に中性付近のpHで緩衝能を有する緩衝剤)を用いてpHを調整してもよい。
【実施例】
【0022】
<モデル尿石汚れの作成>
尿石のモデルとして、硬度塩/タンパク質複合汚れを以下のように調製した。カゼインナトリウム0.5g、リン酸二水素ナトリウム2.73g、尿酸0.5g、尿素1g、塩化カルシウム二水塩2.32gおよび水50gを混合した。この混合液をイオン交換水で10倍に希釈し、希釈液0.1gをポリプロピレン製試験管に採取した後、100℃で2時間乾燥固化したものをモデル汚れとした。
【0023】
実施例1〜4、比較例1〜7
モデル汚れを含む試験管に表1に示す洗浄剤1mLを注入し、28℃にて5分静置後に液を抜き出した。イオン交換水で3回洗浄した後、次の方法で残存するタンパクを定量した。
【0024】
細菌染色用メチレンブルー溶液(和光純薬株式会社)20μLを注入してタンパクを染色した後、イオン交換水で5回洗浄し、余分な洗浄液を除去した。グリコール酸溶液(関東化学株式会社)0.1mlとイオン交換水1mlを添加してメチレンブルーを抽出し、660nmの吸光度を測定した。
【0025】
洗浄剤を作用させなかったモデル汚れについメチレンブルー溶液で処理後、吸光度を測定して初期値とした。また、モデル汚れを含まない試験管についても同様の操作を行い、ブランク値とした。尿石除去率を下式により求めた。
【0026】
除去率(%)=100×[{(初期値―ブランク値)−(測定値―ブランク値}/((初期値―ブランク値)]
【0027】
得られた結果を第1表に示した。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
*1:BASFジャパン社製ポリエチレンイミン(MW2000)50%溶液
*2:和光純薬株式会社
*3:第一工業製薬株式会社製、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン溶液
*4:第一工業製薬株式会社製、ラウリン酸アミドプロピルベタイン溶液
*5:川研ファインケミカル株式会社、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン
*6:第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル溶液
【0031】
本発明の液状洗浄剤組成物は、非常に優れた尿石の除去作用を有することが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンイミン、キレート剤及び界面活性剤を含有することを特徴とする液状洗浄剤組成物。
【請求項2】
界面活性剤が非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の液状洗浄剤組成物。
【請求項3】
尿石汚れの除去用である請求項1または2に記載の液状洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2013−95891(P2013−95891A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242085(P2011−242085)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000135265)株式会社ネオス (95)
【Fターム(参考)】