説明

液状物の充填封止方法

【課題】互いに対向して配置されている基材シート間の空間内に電解液等の液状物を、気泡の混入を効果的に回避しながら、効率よく連続的に充填し封止することが可能な方法を提供する。
【解決手段】互いに対向して配置されている一対の基材シートA,Bの間の空間内に液状物を充填し封止する方法において、一方の基材シートAに液状物10を充填するための開口1を設け、開口1を通して、液状物10を他方の基材シートBの表面上に流し込み、流し込まれた液状物10を、一方の基材シートAによって押し広げながら、一方の基材シートAを他方の基材シートBに貼り付けて封止を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに対向している一対の基材シートの間の空間内に液状物を充填し封止する方法に関するものであり、より詳細には、一対の基材シートの貼り合わせを行いながら基材シート間の空間に液状物を充填し封止する方法に関するものであり、特に色素増感型太陽電池における電極間への電解液の充填に適用し得る充填封止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、地球規模の環境問題や化石エネルギー資源枯渇問題などの観点から太陽光発電に対する期待が大きく、単結晶及び多結晶シリコン光電変換素子が太陽電池として実用化されている。しかし、この種の太陽電池は、高価格であること、シリコン原料の供給問題などを有しており、シリコン以外の材料を用いた太陽電池の実用化が望まれている。
【0003】
上記のような見地から、最近では、シリコン以外の材料を用いた太陽電池として、色素増感型太陽電池が注目されている。この色素増感型太陽電池の代表的なものとして、ガラス基板や透明プラスチック基板の表面にITO等の透明導電膜を設けた透明電極と、金属電極とが、色素で増感された多孔質光電変換層(半導体多孔質層)と電解質層とを間に挟んで対峙した構造を有しており、金属電極と透明電極との周縁部分は、電解質層が漏洩しないように、封止材で封止されている。即ち、多孔質光電変換層と電解質層とを間に挟んで金属電極基板と透明電極基板とが対峙している領域が発電領域となっており、封止材で封止されている領域が発電とは無関係の封止領域となっている。この多孔質光電変換層は、一般に透明電極基板上に設けられているが、金属電極基板上に設けることもできる(特許文献1参照)。
【0004】
上記のような構造の色素増感型太陽電池では、透明電極側から可視光を照射すると、色素増感多孔質層中の色素が励起され、基底状態から励起状態へと遷移し、励起された色素の電子は、この半導体多孔質層中の伝導帯へ注入され、この半導体多孔質層が形成されている透明電極或いは金属電極から外部回路を通って、対極である金属電極或いは透明電極に移動する。対極の電極に移動した電子は、電解質層中のイオンによって運ばれ、色素に戻る。このような過程の繰り返しにより電気エネルギーが取り出されるわけである。このような色素増感型太陽電池の発電メカニズムは、pn接合型光電変換素子と異なり、光の捕捉と電子伝導が別々の場所で行われ、植物の光電変換プロセスに非常に似たものとなっている。
【0005】
ところで、上記のような構造の色素増感型太陽電池では、一対の電極(透明電極と金属電極)との間に電解質層を形成する電解液を気泡が混入しないように充填することが必要である。
【0006】
上記のような電解液の充填手段として、真空注入方式によるものが知られている。かかる方法では、例えば所定の構造の透明電極と金属電極(一方の電極の内面に多孔質光電変換層が形成されている)とが封止材により貼り合わされた封止済みのセルに開口を設けた後に、真空排気されているチャンバー内に配置し、この開口を塞ぐように電解液を滴下し、次いで、チャンバー内を大気開放することにより、セル内外圧力差によって電解液がセル内に充填される。この方法によれば、実験室レベルでは、気泡が混入することなく、効率よく電解液を充填して封止することができる。
【0007】
しかしながら、上記の方法は、バッチ式であり、実験室レベルで効率よく電解液を充填できるが、明らかに量産には不適当である。また、アスペクト比の大きい構造(即ち、電極形状が細長い矩形となっている構造)のセルについては、気泡の混入を防止することが困難であるという問題もある。
【0008】
このため、電解液をセル内に充填する方法について、多くの提案がなされているが、ほとんどの方法はバッチ式であり、量産に不適当である(特許文献2,3)。
【0009】
一方、特許文献4の図8には、一対の電極ウエブを加熱された多数のロール対の間を通してのヒートシールにより貼り合せるに際して、ノズルを用いて、これらロール対への導入側から電解液を射出することによりセル内に電解液を充填する方法が開示されている。
【0010】
上記の方法は、バッチ式ではなく、連続して電解液の充填を行うことができるという利点を有しているのであるが、閉ざされた狭い空間内に電解液を射出して充填するため、セル中に気泡が残存しやすく、特にアスペクト比が大きいセルについては、電解液の充填を効果的に行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−273937
【特許文献2】特開2009−129651
【特許文献3】特開2005−228613
【特許文献4】特表2010−518552
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、互いに対向して配置されている基材シート間の空間内に電解液等の液状物を、気泡の混入を効果的に回避しながら、効率よく連続的に充填し封止することが可能な方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、色素増感型太陽電池における電極間への電解液の充填に適用し得る液状物の充填封止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、互いに対向して配置されている一対の基材シートの間の空間内に液状物を充填し封止する方法において、
一方の基材シートに前記液状物を充填するための開口を設け、
前記開口を通して、前記液状物を他方の基材シートの表面上に流し込み、
前記他方の基材シート上に流し込まれた液状物を、前記一方の基材シートによって押し広げながら、該一方の基材シートを他方の基材シートに貼り付けて封止を行うことを特徴とする方法が提供される。
【0014】
本発明方法においては、
(1)前記他方の基材シートの表面には、ヒートシール性の封止材からなり且つ前記液状物を充填するための領域を画定する無端状枠体が設けられており、前記開口が前記無端状枠体で囲まれ得るように前記他方の基材シートの少なくとも一部を対面させ、この状態で、該無端状枠体の上端に前記一方の基材シートを貼り付けていくことにより、前記一方の基材シートの他方の基材シートへの貼り付けが進行していくこと、
(2)側面から見て、前記開口に対応する部位での貼り付けが終了した後に、前記開口を通しての前記液状物の流し込みを開始すること、
(3)前記貼り付け及び前記一方の基材シートによる液状物の押し広げを、ヒーターロールを用いての熱圧着により行うこと、
(4)前記一対の基材シートが長尺シートであること、
(5)前記一対の基材シートが、それぞれ色素増感型太陽電池に使用される負電極及び正電極であり、前記液状物が電解液であること、
が好ましい。
尚、本発明において、液状物とは液体やペースト状のものを意味する。
【発明の効果】
【0015】
本発明方法においては、互いに対向して配置されている一対の基材シート間の空間内への液状物の充填及び封止を、一方の基材シートに形成されている開口から液状物を他方の基材シートの表面に流し込みながら両基材シートの貼り付けを進行させていくのであるが、特に、他方の基材シートの表面に流し込まれた液状物を、これに貼り付ける一方の基材シートによって押し広げながら、貼り付けを進行せしめる。即ち、開放された空間内に液状物を流し込んでいくため、空間内のエアにより阻害されることなく、所定の空間内の隅々まで液状物がスムーズに流れ込み、しかも、流れ込んだ液状物が空間内のエアを押し出しながら貼り付けが進行していくため、貼り付け後の空間内は液状物が充満した状態となり、気泡の混入が有効に防止されている。
【0016】
かかる本発明方法によれば、液状物が充填される空間がアスペクト比の大きな細長い形態を有する場合であっても、効率よく、液状物を充填して封止することができる。特に、一対の基材シートとして長尺シートを用いたときには、その長手方向に、ヒートシール性の枠体により液状物が充填される空間を多数配列して形成しておくことにより、連続的に効率よく、液状物の充填及び封止を行うことができ、工業的な量産に極めて適している。
この方法は、特に、色素増感型太陽電池における電極間への電解液の充填に好適に適用することができ、色素増感型太陽電池を量産化に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の液状物の充填封止方法に用いる一対の基材シートについて、その平面形状を示す図。
【図2】図1に示された基材シートを用い、本発明に従って、両基材シート間の空間に液状物を充填封止するプロセスを示す図。
【図3】基材シートとして、長尺のシートを用いて連続的に液状物の充填封止を行う工程の平面配置を示す図。
【図4】図3の工程の側面構造を示す図。
【図5】本発明の液状物の充填封止方法が好適に適用される色素増感型太陽電池の断面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照して、本発明の液状物の充填方法では、一対の基材シートA,Bの間に所定の液状物(例えば、各種の液体やペースト)を充填し封止するものであり、一方の基材シートAには、液状物を充填するための開口1が打抜き、カッティング等によって形成されている(図1(a)参照)。開口1の形状は、液状物の充填が可能であればよく、円形、矩形等、種々の形状が使用される。また、他方の基材シートBの表面には、枠体3が設けられている(図1(b)参照)。
即ち、本発明では、基材シートAと基材シートBとが枠体3を間に挟んで貼り付けられ且つ該枠体3で囲まれた空間内に所定の液状物が充填された構造体が得られる。
【0019】
上記枠体3は、基材シートA,Bを貼り合わせることが可能な接着性を有している限り、例えば公知の接着剤で形成されていてもよいが、基材シートA,Bを貼り合わせた後にも適当な高さを確保することができ、液状物が充填される空間の容積を確保できるという観点から、ヒートシール性の熱可塑性樹脂乃至熱可塑性エラストマーで形成されていることが好ましい。
【0020】
このようなヒートシール性の熱可塑性樹脂乃至熱可塑性エラストマーの例としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、或いはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダム乃至ブロック共重合体等のポリオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体等のエチレン−ビニル化合物共重合体樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキサイド;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体;酸化澱粉、エーテル化澱粉、デキストリンなどの澱粉;及びこれらの混合物からなる樹脂;などを挙げることができる。即ち、これらのヒートシール性の材料の中から、充填される液状物の種類に応じて適宜のものを選択して枠体3を形成すればよい。
【0021】
尚、上記のヒートシール性の熱可塑性樹脂等を用いての枠体3の形成は、押出成形、射出成形等の成形手段を用いて所定の枠形状に成形し、これを基材シートBの表面にヒートシールにより固定することにより行うことができる。また、その大きさによっては、例えば、適当な有機溶剤を用いてコーティング液を調製し、このコーティング液をスクリーン印刷等によって所定の枠形状に基材シートB上に塗布し、次いで加熱により有機溶媒を除去することによっても行うことができる。
このようにして形成される枠体3の幅は、適度な接着強度が確保される程度の大きさとすればよい。
【0022】
本発明では、上記のような基材シートA及びBを用い、図2に示すプロセスで両基材シートA,Bの貼り合せ及び枠体3で囲まれた空間内への液状物の充填が行われる。
【0023】
即ち、基材シートBの一方側の端部の上に基材シートAの一方側端部を重ね合わせた状態で、基材シートA及びBをヒーターロール5と対向ロール7とのロール対の間に通してヒーターロール5による加熱圧着によって基材シートAと基材シートBとの貼り付けを開始する(図2(a)参照)。
即ち、これにより、基材シートAの内面が枠体3の上端にヒートシールにより接合し、枠体3の一方側の端部3aから他方側の端部3bに向かって貼り合わせが進行していくわけである。
【0024】
上記のようにして基材シートAと基材シーとBとの貼り合せを進行するが、本発明では、この貼り合わせが基材シートAに形成されている開口1を超えた段階で、該開口1から液状物10の注入を開始し、これにより、粒状物10は、基材シートBの表面上であって、枠体3により囲まれている領域に流し込まれる(図2(b)参照)。
【0025】
本発明では、上記のようなタイミングで液状物10の注入(即ち充填)が開始されるのであるが、特に重要な点は、液状物10の注入速度やヒーターロール5と対向ロール7とのロール対を通過するシートA,Bの移動速度を調整し、ヒーターロール5による圧着を介して、注入された液状物10が押し広げられながらヒートシールを進行せしめることにある。即ち、ヒートシールが行われる領域には、常に液状物10が充満した状態にあるわけである。
【0026】
上記のようにして液状物10を充填していくことにより、最終的にヒートシールが終了した段階で枠体3内の空間は基材シートA,Bにより完全にシールされ且つ該空間内には液状物10が充満して充填された状態となる。
即ち、本発明では、液状物10の充填(注入)が枠体3内の空間が開放された状態で進行していくため、この充填がエア圧等によって阻害されることがなく、充填がスムーズに進行する。しかも、ヒートシールの完了前の段階で(枠体3の他方側の端部3bでのヒートシールが行われる前)、必ず、液状物10が押し広げられながら貼り合せ(ヒートシール)が進行し、貼り合せの完了前にエアが押出されていく。従って、エアが残存することなく、ヒートシールを完了させることができ、気泡が混入することなく、液状物10の充填及び封止を行うことが可能となる。
【0027】
図2においては、プラスチックフィルムのような可撓性のあるシートを想定したものになっているが、本発明においては、ガラス基板のような可撓性のないリジットなものであっても、開口状態があればスムーズな充填封止が可能である。
尚、上記のようにして液状物10の充填及び封止が完了した後は、ヒートシールフィルム等を用いての封止や適当なバルブ等の嵌め込みなどによって、開口1の閉塞が行われる。
【0028】
上記のような液状物10の充填及び封止は、液状物10が充填される空間、即ち、枠体3により囲まれる空間がアスペクト比の大きな形態(細長い矩形状)の場合にも効果的に行うことができ、さらには、基材シートA,Bとして長尺のシートを使用して連続的に行うこともできる。
【0029】
図3及び4には、このような長尺のシートを用いて連続的に液状物の充填を行うプロセスが示されている。
即ち、図3及び4を参照して、このプロセスでは、基材シートA,Bとしては何れも長尺のシートが使用されている。尚、平面配置を示す図3では、基材シートAは省略されており、側面構造を示す図4において、基材シートBの枠体3も省略されている。
【0030】
かかるプロセスにおいては、長尺の基材シートA及び基材シートBは、前述した図2の例と同様、ヒーターロール5と対向ロール7とのロール対の間で重なるようにして搬送されるが、このシートA,Bの流れ方向に対して下流側に、複数の充填ノズルヘッド20を適当な間隔で連続して回転送りするロータリーユニット21が並列して配置されている。
【0031】
また、上記のロール対の下流側近傍には冷却ロール23の対が設けられており、ヒートシール後の冷却が直ちに行われるようになっている。
さらに、上記のロール対の上流側には、適宜スリッタ25が設けられており、一方の基材シートBが適宜所定の幅に分断された状態で搬送されるようになっている。
【0032】
上記のような各部材の配置で液状物の充填を連続して行うために、基材シートAには、適当な間隔で開口1が複数形成されており、基材シートAを連続送りしながら、複数のノズルヘッド20が順次、各開口1に係合して液状物の充填が行われるようになっている。
また、基材シートBには、アスペクト比の大きな細長い充填空間27が並列して形成されるように、ヒートシール性の封止材3がコラム状に形成されている。図3に示されているように、この例では、細長い充填空間27が3列形成されている。
【0033】
即ち、上記のプロセスにおいて、長尺の基材シートA及び基材シートBを、ヒーターロール5と対向ロール7との間に送ることにより、前述した例と同様、枠体3の一方側の端部3aからのヒートシールが進行し、その直後、ロータリーユニット21により回転送りされてくる充填ノズル20が順次、基材シートAに設けられている開口1に係合し、アスペクト比の大きな充填空間27に液状物が連続して充填されるようになっている。
【0034】
即ち、上記のようにしてヒートシール及び液状物の充填を行うに際し、本発明では、少なくとも一つの充填空間27の周囲の封止材3についてのヒートシールが完了する前に、充填ノズル20から注入された液状物を押し広げるようにしヒートシールが行われる。
このことから理解されるように、この態様においても、前述した図2の例と同様、液状物10の充填が、充填空間27が開放された状態で進行していくため、この充填がエア圧等によって阻害されることがなく、スムーズに進行する。また、途中の段階からではあるが、液状物が押し広げられながらヒートシールが進行し、エアの押出しとヒートシールとが並行して進行していく。この結果、気泡が混入することなく、液状物10の充填及び封止を連続的に行うことが可能となる。
【0035】
尚、図3には、図示されていないが、ロータリーユニット21が設けられている部分よりもさらに下流側には、複数の開口1を閉じるためのシール領域が適宜配置されている。
【0036】
このように、本発明では、一対の基材シートの間に液状物を充填して封止する操作を連続して且つ内部に気泡が混入しないように効果的に行うことができ、特に、液状物が充填される空間がアスペクト比の非常に大きな形態を有する場合であっても、液状物の充填を、気泡の混入を防止しつつ、迅速に行うことができる。従って、本発明は、色素増感型太陽電池において、電極間への電解液の充填封止に適用することができ、色素増感型太陽電池の量産に極めて有用である。
【0037】
このような色素増感型太陽電池の概略構造は、図5に示す通りである。
即ち、このタイプの太陽電池は、負電極シート30と正電極シート40との周縁部が封止材50(前述したヒートシール性の枠体3に相当)で貼り合わされたものであり、中央部の封止材50で囲まれた空間には、電解液51が充填されている。
尚、電解液51としては、通常、リチウムイオン等の陽イオンや塩素イオン等の陰イオンを含む種々の公知の電解質溶液を使用することができる。また、この電解質溶液中には、酸化型構造及び還元型構造を可逆的にとり得るような酸化還元対を存在させることが好ましく、このような酸化還元対としては、例えばヨウ素−ヨウ素化合物、臭素−臭素化合物、キノン−ヒドロキノンなどを挙げることができる。
【0038】
かかる図5において、負電極シート30は、例えば、アルミニウム等の導電性の金属製シート31の表面に、多孔質の酸化物半導体(例えば酸化チタン等)の層33が形成されており、この多孔質半導体層33は色素で増感されている。
また、多孔質半導体層33と金属製シート31との間には、適宜、化成処理膜などからなる逆電子防止層が形成されていてよい。
【0039】
一方、対向電極である正電極シート40は、透明ガラスや透明樹脂などからなる透明基材シート41と、該シート41の表面に設けられたITO等の透明電極層43と、透明電極層43上に形成された白金等からなる電子還元導電層45とからなる。この電子還元導電層45は、透明電極層43に流れ込んだ電子を電解液51で形成される電界質層に速やかに移行せしめる機能を有するものであり、光透過性が損なわれないような薄層となっている。
【0040】
即ち、かかる構造の太陽電池では、正電極シート40側からの光照射によって、多孔質半導体層33に担持されている増感色素が励起され、励起された色素の電子が半導体層33に注入され、該半導体層33から金属製シート31から透明電極層43に流れ込み、電解液51中のイオンによって運ばれ、再び色素で増感されている半導体層33に戻り、このような過程の繰り返しにより電気エネルギーが取り出され、電池として機能することとなる。
【0041】
勿論、色素増感型太陽電池の構造は、図5の態様に限定するものではなく、例えば負電極シート30側からの光照射により発電する構造とすることもできる。この場合には、色素で増感された多孔質半導体層33が透明基材シート上に設けられた透明導電膜上に形成され、対向する正電極シート40が金属製シートから形成されることとなる。
【0042】
即ち、本発明の液状物の充填封止方法では、例えば前述した基材シートAとして前述した正電極シート40或いは負電極シート30を使用し、基材シートBとして、対向電極である負電極シート30或いは正電極シート40を使用し、一方のシートに封止材50を設けて、前述した本発明にしたがって、電解液51の充填及び封止を行うことにより、色素増感型太陽電池を迅速に効率よく量産することができる。
【符号の説明】
【0043】
A,B:基材シート
1:開口
3:枠体
5:ヒーターロール
10:液状物
20:充填ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配置されている一対の基材シートの間の空間内に液状物を充填し封止する方法において、
一方の基材シートに前記液状物を充填するための開口を設け、
前記開口を通して、前記液状物を他方の基材シートの表面上に流し込み、
前記他方の基材シート上に流し込まれた液状物を、前記一方の基材シートによって押し広げながら、該一方の基材シートを他方の基材シートに貼り付けて封止を行うことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記他方の基材シートの表面には、ヒートシール性の封止材からなり且つ前記液状物を充填するための領域を画定する無端状枠体が設けられており、前記開口が前記無端状枠体で囲まれ得るように前記他方の基材シートの少なくとも一部を対面させ、この状態で、該無端状枠体の上端に前記一方の基材シートを貼り付けていくことにより、前記一方の基材シートの他方の基材シートへの貼り付けが進行していく請求項1に記載の方法。
【請求項3】
側面から見て、前記開口に対応する部位での貼り付けが終了した後に、前記開口を通しての前記液状物の流し込みを開始する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記貼り付け及び前記一方の基材シートによる液状物の押し広げを、ヒーターロールを用いての熱圧着により行う請求項1乃至3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
前記一対の基材シートが長尺シートである請求項1乃至4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記一対の基材シートが、それぞれ色素増感型太陽電池に使用される負電極及び正電極であり、前記液状物が電解液である請求項1乃至5の何れかに記載の充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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