説明

液状硬化性樹脂組成物、ナノ粒子蛍光体を含む硬化樹脂の製造方法、発光装置の製造方法、発光装置及び照明装置

【課題】ナノ粒子蛍光体を含む安定性に優れた液状硬化性樹脂組成物、この液状硬化性樹脂組成物を用いて調製される発光装置及び照明装置を提供する。
【解決手段】青色LED(発光ダイオード)66と青色LED66が発光する光が透過する封止部(光透過性部材)69とを備える発光チップ(発光装置)52であって、封止部69は、液状の主剤及び硬化剤と硬化反応を促進する硬化反応触媒を有する液状硬化性樹脂を硬化させて形成され、ケイ素原子結合アルケニル基とケイ素原子に結合した水素原子との間のヒドロシリル化反応により硬化したシリコーン樹脂硬化物と、無機蛍光体及び無機蛍光体に配位した炭化水素基から構成されるナノ粒子蛍光体とを有する。複数個の発光チップ52を直列接続することにより照明装置が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状硬化性樹脂組成物等に関し、より詳しくは、ナノ粒子蛍光体を含む液状硬化性樹脂組成物及びナノ粒子蛍光体を含む硬化樹脂の製造方法等に関する。また、本発明は、液状硬化性樹脂組成物と発光ダイオードを含む発光装置の製造方法、発光装置及び発光装置を用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノサイズの半導体物質粒子として、量子閉じ込め(quantum confinement)効果を示す物質である量子ドットが報告されている。このような量子ドットの利用方法として、特許文献1には、量子ドットをペーストマトリックスに分散させて蛍光体として用いた発光ダイオードが記載されている。また、特許文献2には、感光性作用基を有する化合物で表面配位された半導体ナノ結晶が記載されている。
(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,501,091号明細書
【特許文献2】特開2005−128539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ナノ粒子をペーストマトリックスに分散させて蛍光体として用いる場合、ペーストマトリックスには、照射される光に対し耐光性、熱安定性等の性能が要求される。
しかし、ナノ粒子のこのような利用方法における従来のマトリックスには、光開始剤や過酸化物を用いる硬化性樹脂が採用されている。このため、残留する開始剤の後反応作用により、マトリックスが変性する等の不具合が生じるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、ナノ粒子蛍光体を含む安定性に優れた液状硬化性樹脂組成物、ナノ粒子蛍光体を含む硬化樹脂の製造方法、発光装置の製造方法、発光装置及び照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、ナノ粒子蛍光体を含む液状硬化性樹脂組成物であって、無機蛍光体及び無機蛍光体に配位した炭化水素基から構成されるナノ粒子蛍光体と、液状の主剤と硬化剤と、主剤の硬化反応を促進する硬化反応触媒を有する液状硬化性樹脂と、を含むことを特徴とする液状硬化性樹脂組成物が提供される。
【0007】
ここで、液状硬化性樹脂組成物に含まれるナノ粒子蛍光体は、ナノ粒子蛍光体と液状硬化性樹脂との合計量に対し、0.1質量%〜30質量%の範囲で含まれることが好ましい。
また、ナノ粒子蛍光体の無機蛍光体は、II族−VI族化合物半導体、III族−V族化合物半導体から選ばれることが好ましい。
さらに、ナノ粒子蛍光体の炭化水素基は、主鎖に不飽和結合を有することが好ましい。
また、液状硬化性樹脂は、ケイ素原子結合アルケニル基とケイ素原子に結合した水素原子とが、白金族金属系触媒からなる硬化反応促進剤を用いるヒドロシリル化反応により硬化する液状硬化性シリコーン樹脂であることが好ましい。
【0008】
また、本発明の液状硬化性樹脂組成物を所定の型枠内に入れ、次いで、50℃〜300℃の温度下で液状硬化性樹脂組成物を加熱硬化することにより、液状硬化性樹脂組成物が硬化したナノ粒子蛍光体を含む硬化樹脂を製造することができる。
さらに、加熱硬化は、硬化処理温度の異なる少なくとも2段階の加熱硬化工程を含むことが好ましい。
また、本発明によれば、液状硬化性樹脂組成物を、発光ダイオードを具備したパッケージ容器内(型枠内)に入れ、次いで、50℃〜300℃の温度下で液状硬化性樹脂組成物を加熱硬化することが好ましい。
その際には、加熱硬化は、硬化処理温度の異なる少なくとも2段階の加熱硬化工程を含むことが好ましい。
【0009】
次に、本発明によれば、発光ダイオードと、発光ダイオードが発光する光が透過する光透過性部材と、を備え、光透過性部材は、ケイ素原子結合アルケニル基とケイ素原子に結合した水素原子との間のヒドロシリル化反応により硬化したシリコーン樹脂硬化物と、シリコーン樹脂硬化物により被覆され、無機蛍光体及び無機蛍光体に配位した炭化水素基から構成されるナノ粒子蛍光体と、を有することを特徴とする発光装置が提供される。
ここで、光透過性部材に含まれるナノ粒子蛍光体の炭化水素基は、炭素数4〜炭素数20のα−オレフィンに由来することが好ましい。
【0010】
さらに、本発明によれば、複数の上記発光装置と、これらの複数の発光装置を直列接続して保持する基板と、基板が取り付けられ、電気的に接地される筐体と、を有することを特徴とする照明装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ナノ粒子蛍光体を含む安定性に優れた液状硬化性樹脂組成物が得られ、この液状硬化性樹脂組成物を用いた発光装置(発光チップとも言う。)及び照明装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0013】
(照明装置)
図1は、本実施の形態が適用される照明装置の一例を説明する図である。ここで、図1(a)は照明装置10を被照射側からみた正面図であり、図1(b)は照明装置10の側面図である。
この照明装置10は、配線やスルーホール等が形成された基板51と、基板51の表面に取り付けられた複数の発光チップ(発光装置)52とを備えた発光チップ列11と、凹字状の断面形状を有し、凹部内側の底部に発光チップ列11が取り付けられるように構成されたシェード(筐体)12とを備えている。
【0014】
また、照明装置10は、発光チップ列11の基板51の裏面と、シェード12の凹部内側の底部との間に挟まれるように配置された放熱部材13をさらに備えている。そして、発光チップ列11および放熱部材13は、金属製のねじ14によってシェード12に取り付けられ、固定されている。このため、基板51には、ねじ14の取り付け位置に対応したねじ穴(図示せず)が形成されている。なお、照明装置10には、必要に応じて、発光チップ52から出射される光を均一にするための拡散レンズ等を設けるようにしてもよい。
【0015】
基板51は、例えば、ガラス布基材エポキシ樹脂銅張積層板等で構成され、長方形状の形状を有している。そして、基板51の内部には複数の発光チップ52を電気的に接続するための配線が形成され、その表面には白色レジスト膜が塗布形成されている。また、基板51は表面、裏面ともに放熱性をよくするため、できる限り多くの面積の銅箔を残した配線となっており、表裏面はスルーホールで電気的・熱的な導通をとっている。なお、白色レジスト塗装膜に代えて、蒸着等により金属膜を形成するようにしてもよい。
また、発光チップ52は、基板51の表面に、基板51の短手方向に3列且つ長手方向に14列の合計42個が取り付けられている。
【0016】
さらに、筐体および反射部材の一例としてのシェード12は、例えば、折り曲げ加工された金属板で構成されており、その凹部内側は白色に塗装されている。そして、シェード12は、照明装置10を構成した際に、電気的に接地される。なお、シェード12の凹部内側には、白色塗装膜に代えて、蒸着等により金属膜を形成するようにしてもよい。
なお、本実施の形態では、放熱部材13が、絶縁部材として機能している。
【0017】
(発光装置)
図2は、本実施の形態が適用される発光チップ(発光装置)52の構成を説明する図である。ここで、図2(a)は発光チップ52の上面図を、図2(b)は図2(a)のIVB−IVB断面図を、それぞれ示している。
【0018】
発光チップ52は、一方の側に凹部61aが形成されたパッケージ61と、パッケージ61に形成されたリードフレームからなる第1リード部62および第2リード部63と、凹部61aの底面に取り付けられた発光ダイオード(LED)の一例としての青色LED66と、青色LED66が発光する光が透過する光透過性部材として凹部61aを覆うように設けられた封止部69とを備えている。なお、図2(a)においては、封止部69の記載を省略している。
【0019】
パッケージ61は、第1リード部62および第2リード部63を含む金属リード部に、白色の熱可塑性樹脂を射出成型することによって形成されている。
本実施の形態では、第1リード部62および第2リード部63は、0.1mm〜0.5mm程度の厚みをもつ金属板であり、加工性、熱伝導性に優れた金属として例えば鉄/銅合金をベースとし、その上にめっき層としてニッケル、チタン、金、銀などを数μm積層して構成されている。
また、本実施の形態では、第1リード部62および第2リード部63の一部が、凹部61aの底面に露出するようになっている。また、第1リード部62および第2リード部63の一端部側はパッケージ61の外側に露出し、且つ、パッケージ61の外壁面から裏面側に折り曲げられている。
【0020】
金属リード部のうち、第2リード部63は底面の中央部まで延設されており、第1リード部62は、底面において中央部に到達しない部位まで延設されている。そして、青色LED66は、その裏面側が図示しないダイボンディングペーストによって第2リード部63に固定されている。また、第1リード部62と青色LED66の上面に設けられたアノード電極(図示せず)とが、金線によって電気的に接続されている。一方、第2リード部63と青色LED66の上面に設けられたカソード電極(図示せず)とが、金線によって電気的に接続されている。
【0021】
また、本実施の形態では、発光ダイオードの一例としての青色LED66の発光層はGaN(窒化ガリウム)を含む構成を有しており、青色光を出射するようになっている。そして、本実施の形態で用いた青色LED66は、25℃の環境下において+3.2Vの順方向電圧Vを印加した際に、20mAの順方向電流Iが流れるようになっている。また、青色LED66の逆方向電圧Vの絶対最大定格は−5.0Vとなっている。
【0022】
光透過性部材としての封止部69は、可視領域の波長において光透過率が高く、また屈折率が高い光透過性樹脂からなるマトリックスと、このマトリックス中に分散され、青色LED66から出射される青色光の一部を、緑色光および赤色光に変換するナノ粒子蛍光体とから構成されている。また、封止部69の表面側は平坦面となっている。
また、このような蛍光体に代えて、青色光の一部を黄色光に変換する蛍光体、あるいは、青色光の一部を黄色光および赤色光に変換する蛍光体を含有させるようにしてもよい。
【0023】
(液状硬化性樹脂組成物)
本実施の形態において、光透過性部材としての封止部69は、予め調製したナノ粒子蛍光体を含む液状硬化性樹脂組成物を、青色LED66を装着したパッケージ61内に注入後、これを所定の条件で行われる硬化反応により硬化させて形成される。
以下、封止部69を形成する際に用いられる液状硬化性樹脂組成物について説明する。
【0024】
(ナノ粒子蛍光体)
本実施の形態が適用される液状硬化性樹脂組成物は、ナノ粒子蛍光体と液状硬化性樹脂とを含むものである。
液状硬化性樹脂組成物に含まれるナノ粒子蛍光体は、その粒径が1nm〜1000nmを指し、数十nm以下の場合は、量子効果を発現する蛍光体である。ナノ粒子蛍光体の構造は、無機蛍光体コア及びこの無機蛍光体の表面に配位した炭化水素基から構成され、場合によっては、炭化水素基の結合を促進させる無機物質からなるシェルがコアの表面に被覆されている。
【0025】
(無機蛍光体)
ここで、無機蛍光体としては、例えば、II族−VI族化合物半導体のナノ結晶、III族−V族化合物半導体のナノ結晶等が挙げられる。これらのナノ結晶の形態は特に限定されず、例えば、InPナノ結晶のコア部分に、ZnS/ZnO等からなるシェル部分が被覆されたコア・シェル(core−shell)構造を有する結晶、またはコア・シェルの境が明確でなくグラジエント(gradient)に組成が変化する構造を有する結晶、あるいは同一の結晶内に2種以上の化合物結晶が部分的に分けられて存在する混合結晶;2種以上のナノ結晶化合物の合金等が挙げられる。
化合物半導体の具体例としては、二元系では、II族−VI族化合物半導体として、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe等が挙げられる。III族−V族化合物半導体としては、GaN、GaP、GaAs、AlN、AlP、AlAs、InN、InP、InAs等が挙げられる。
【0026】
また、三元系や四元系では、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe、GaNP、GaNAs、GaPAs、AlNP、AlNAs、AlPAs、InNP、InNAs、InPAs、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlPAs、GaInNP、GaInNAs、GaInPAs、InAlNP、InAlNAs、InAlPAs等が挙げられる。
【0027】
本実施の形態で使用する無機蛍光体の調製方法は特に限定されないが、例えば、金属前駆体を用いる化学的湿式方法による調製方法が挙げられ、具体的には、所定の金属前駆体を、分散剤の存在下または分散剤の非存在下に有機溶媒に加えて一定の温度で結晶を成長させる方法で製造することができる。
【0028】
(炭化水素基)
次に、無機蛍光体の表面に配位する炭化水素基としては、炭素数2〜炭素数30、好ましくは炭素数4〜炭素数20の直鎖構造又は分岐構造を有する脂肪族炭化水素基が挙げられる。
本実施の形態が適用されるナノ粒子蛍光体は、無機蛍光体の表面に配位する炭化水素基として、主鎖に不飽和結合を有する炭化水素基が好ましい。炭化水素基の主鎖に結合する不飽和結合の位置は特に限定されず、炭化水素基の主鎖の末端又は主鎖の中間部のいずれでもよい。また、不飽和結合の個数は特に限定されないが、通常、1個〜3個である。
本実施の形態では、無機蛍光体の表面に配位する炭化水素基としては、末端不飽和結合を有するα−オレフィンに由来する長鎖脂肪族炭化水素基が好ましい。即ち、炭化水素基が無機蛍光体の表面に配位した状態で、炭化水素基の末端に不飽和結合が存在する構造であることが好ましい。
炭化水素基が不飽和結合を有することにより、後述する液状硬化性樹脂組成物の成分である液状硬化性樹脂の硬化反応に際し、無機蛍光体に配位した炭化水素基が無機蛍光体からはずれることがなく、安定的にナノ粒子蛍光体が得られる。
【0029】
さらに、無機蛍光体の表面に配位する炭化水素基は、無機蛍光体に配位するための官能基を有する。このような官能基としては、例えば、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトリル基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、スルフォニル基、ホスフォニル基等が挙げられる。これらの中でも、カルボキシル基が好ましい。
尚、炭化水素基は、無機蛍光体に配位するための官能基以外に、炭化水素基の中間または末端に、さらに官能基を有する場合がある。このような官能基としては、例えば、ニトリル基、カルボキシル基、ハロゲン基、ハロゲン化アルキル基、アミノ基、芳香族炭化水素基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基、炭素−炭素二重結合等が挙げられる。
【0030】
(ナノ粒子蛍光体の調製方法)
本実施の形態で使用するナノ粒子蛍光体は、所望の化合物半導体のナノ結晶が得られる金属前駆体を用いてナノ結晶を製造した後、次いで、これをさらに有機溶媒に分散する。
そして、ナノ結晶を所定の反応性化合物により処理することにより、無機蛍光体の表面に炭化水素基が配位した構造を有するナノ粒子蛍光体を調製することができる。
処理方法は、特に制限されず、例えば、ナノ結晶の分散液を反応性化合物の存在下に還流させる方法が挙げられる。
【0031】
ナノ粒子蛍光体を調製するために使用するこのような反応性化合物としては、例えば、無機蛍光体に配位する官能基がカルボキシル基である場合は、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、チグリン酸、3,3−ジメチルアクリル酸、トランス−2−ペンテン酸、4−ペンテン酸、トランス−2−メチル−2−ペンテン酸、2,2−ジメチル−4−ペンテン酸、トランス−2−ヘキセン酸、トランス−3−ヘキセン酸、2−エチル−2−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、2−オクテン酸、シトロネル酸、ウンデシレン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、シス−11−エルコセン酸、ユール酸、ネルボン酸、トランス−2,4−ペンタジエン酸、2,4−ヘキサジエン酸、2,6−ヘプタジエン酸、ゲラン酸、リノール酸、11,14−エイコサジエン酸、シス−8,11,14−エイコサトリエン酸、アラキドン酸、シス−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸、シス−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シラコン酸、メサコン酸、トランス−グルタコン酸、トランス−β−ヒドロムコン酸、トランス−トラウマチン酸、トランス−ムコン酸、シス−アコニット酸、トランスアコニット酸、シス−3−クロロアクリル酸、トランス−3−クロロアクリル酸、2−ブロモアクリル酸、2−(トリフルオロメチル)アクリル酸、トランス−スチリル酢酸、トランス−桂皮酸、α−メチル桂皮酸、2−メチル桂皮酸、2−フルオロ桂皮酸、2−(トリフルオロメチル)桂皮酸、2−クロロ桂皮酸、2−メトキシ桂皮酸、2−ヒドロキシ桂皮酸、2−ニトロ桂皮酸、2−カルボキシ桂皮酸、トランス−3−フルオロ桂皮酸、3−(トリフルオロメチル)桂皮酸、3−クロロ桂皮酸、3−ブロモ桂皮酸、3−メトキシ桂皮酸、3−ヒドロキシ桂皮酸、3−ニトロ桂皮酸、4−メチル桂皮酸、4−フルオロ桂皮酸、トランス−4−(トリフルオロメチル)−桂皮酸、4−クロロ桂皮酸、4−ブロモ桂皮酸、4−メトキシ桂皮酸、4−ヒドロキシ桂皮酸、4−ニトロ桂皮酸、3,3−ジメトキシ桂皮酸、4−ビニル安息香酸等が挙げられる。
【0032】
これらの中でも、ウンデシレン酸が好ましい。化合物半導体のナノ結晶をウンデシレン酸によって処理することにより、炭化水素基(炭素数11個)が無機蛍光体の表面にカルボキシル基により配位した状態で、炭化水素基の末端に不飽和結合が1個存在する構造を有するナノ粒子蛍光体を調製することができる。
【0033】
無機蛍光体に配位する官能基がニトリル基である場合は、4−クロロシンナモニトリル、4−メトキシシンナモニトリル、3,4−ジメトキシシンナモニトリル、4−ジメチルアミノシンナモニトリル、アクリロニトリル、シアン化アリル、クロトンニトリル、メタクリロニトリル、シス−2−ペンテンニトリル、トランス−3−ペンテンニトリル、3,7−ジメチル−2,6−オクタジエンニトリル、1,4−ジシアノ−2−ブテン等が挙げられる。無機蛍光体に配位する官能基がアミノ基である場合は、ジアリルアミン、オレイルアミン等が挙げられる。さらに、3−アミノ−1−プロパノールビニルエーテルも使用することができる。
【0034】
本実施の形態で使用するナノ粒子蛍光体において、無機蛍光体に配位する炭化水素基の量は特に限定されないが、通常、無機蛍光体1粒子に対し、炭化水素基2モル〜200モル、好ましくは3モル〜100モルである。
無機蛍光体に配位する炭化水素基の量が過度に少ないと、蛍光体粒子が凝縮しやすくなるうえに、液状封止樹脂との反応点が少なくなり無機蛍光体の安定性が低下する傾向がある。
また、無機蛍光体に配位する炭化水素基の量が過度に多いと、無機蛍光体に配位できない過剰の炭化水素基が存在するようになり、液状封止樹脂の性能低下を引き起こしやすくなる傾向がある。
【0035】
(液状硬化性樹脂)
次に、液状硬化性樹脂について説明する。
本実施の形態で使用する液状硬化性樹脂は、液状の主剤及び硬化剤と、主剤と硬化剤との硬化反応を促進する硬化反応促進剤を含む2液型硬化性樹脂が挙げられる。
このような液状の2液型硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。
【0036】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂の主剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、室温(例えば、25℃)で液状のものであれば使用可能である。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂等のトリフェノールアルカン型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂は1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0037】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)等の脂肪族ポリアミン;ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m−フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)等の芳香族ポリアミン;ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジド等を含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)等の脂環族酸無水物;無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)等の芳香族酸無水物等を含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、フェノールポリマー等のポリフェノール化合物;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテル等のポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネート等のイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂等の有機酸類等の重付加型の硬化剤;ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP−30)等の3級アミン化合物;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI24)等のイミダゾール化合物;BF錯体等のルイス酸等の触媒型の硬化剤;レゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂;メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂等の縮合型の硬化剤が挙げられる。これらの硬化剤は単独あるいは2種類以上組み合わせて使用することができる。
硬化剤の含有量は、特に限定されないが、通常、液状硬化性樹脂組成物全体の0.1重量%〜30重量%、好ましくは、5重量%〜15重量%の範囲で適宜選択される。
【0038】
エポキシ樹脂の硬化反応促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、アミン化合物、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ安息香酸ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイックアシッドボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイルオキシボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフチルオキシボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート;ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物等が挙げられる。これらの中でも、イミダゾール化合物と、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物とが好ましい。
【0039】
イミダゾール化合物、アミン化合物は、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケンおよびその誘導体、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等のアミン系化合物、2−メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0040】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が得られるホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン等が挙げられる。
また、キノン化合物としては、例えば、1,4−ベンゾキノン、メチル−1,4−ベンゾキノン、メトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン、1,4−ナフトキノン等が挙げられる。
【0041】
(シリコーン樹脂)
本実施の形態で使用する液状硬化性樹脂であるシリコーン樹脂としては、一般に、分子中にケイ素原子結合アルケニル基を有する化合物(主剤)と、分子中にケイ素原子結合水素原子を有する化合物(硬化剤)と、ヒドロシリル化反応触媒(硬化反応促進剤)とを含有してなる液状硬化性シリコーン樹脂が好ましい。
このような液状硬化性シリコーン樹脂は、例えば、特開2006−202952号公報(段落(0040)〜(0060))に詳述されている。
【0042】
(主剤)
具体的には、主剤として、下記平均組成式(1)で表される、23℃における粘度が10mPa・s以上であるオルガノポリシロキサンが挙げられる。
SiO(4−a)/2 (1)
(式(1)中、Rは、独立に、炭素原子数1〜12である非置換または置換の一価炭化水素基、アルコキシ基または水酸基であり、全Rの5モル%〜50モル%がアルケニル基である。aは、1≦a<2を満たす数であり、好ましくは1〜1.8の正数である。)
【0043】
オルガノポリシロキサンは、1分子中に、好ましくは2個〜6個のアルケニル基を有する。ケイ素原子の結合したアルケニル基は、オルガノポリシロキサン分子中、分子鎖末端にあっても、分子鎖非末端にあっても、あるいはその両方にあってもよい。
また、オルガノポリシロキサンの構造は、特に限定されるものではなく、例えば、直鎖状、分岐鎖状、三次元網状、環状等のいずれであってもよいが、好ましくは三次元網状である。
【0044】
の、一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノルボルニル基、イソノルボルニル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素、塩素等のハロゲン原子で置換した、トリフルオロプロピル基等の置換炭化水素基等が挙げられる。
の、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。
これらの中でも、メチル基、フェニル基、ビニル基、ノルボルニル基、イソノルボルニル基が好ましい。
上述したオルガノポリシロキサンは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0045】
(硬化剤)
次に、硬化剤としては、下記平均組成式(2)で表される、ケイ素原子結合水素原子を1分子中に少なくとも2個有し、23℃における粘度が1,000mPa・s以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
SiO(4−b−c)/2 (2)
(式(2)中、Rは、独立に、炭素原子数が1〜12である脂肪族不飽和結合を有しない、非置換または置換の一価炭化水素基であり、bは0.7〜2.1の数である。cは、0.01〜1.0の数であり、但し、(b+c)は、0.8〜3を満たす。)
【0046】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ケイ素原子に結合した水素原子を一分子中に少なくとも2個有し、好ましくは2個〜100個、より好ましくは3個〜50個有する。
ケイ素原子に結合した水素原子は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン分子中、分子鎖末端にあっても、分子鎖非末端にあっても、あるいはその両方にあってもよい。
また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの構造は、特に限定されるものではなく、例えば、直鎖状、分岐鎖状、三次元網状、環状等のいずれであってもよいが、好ましくは直鎖状または環状である。
【0047】
の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素、塩素等のハロゲン原子で置換した、クロロメチル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換1価炭化水素基等が挙げられる。これらの中でも、水素原子、メチル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基が好ましい。
上述したオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0048】
本実施の形態で使用する液状硬化性シリコーン樹脂における主剤と硬化剤との配合量は、平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン100質量部に対し、通常、平均組成式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン2質量部〜200質量部、好ましくは、10質量部〜100質量部である。
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量が過度に少ないと、オルガノポリシロキサン中の不飽和結合が残存しやすくなり、耐候性等の性能が低くなる傾向がある。
また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量が過度に多いと、ケイ素−水素結合が過剰なり、異常分解によりボイド等が発生しやすくなる傾向がある。
【0049】
(ヒドロシリル化反応触媒)
硬化反応促進剤としてのヒドロシリル化反応触媒は、主剤であるオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合したアルケニル基と、硬化剤であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子とのヒドロシリル化反応を促進する硬化反応促進剤である。
ヒドロシリル化反応触媒としては、特に限定されず、従来公知のものが全て使用できる。例えば、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応生成物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒;パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族金属系触媒等が挙げられる。
【0050】
本実施の形態では、エレクトロニクス分野である封止型LEDの作製に用いられることから、ジビニルテトラメチルジシロキサン、ジビニルジフェニルジメチルジシロキサン等で変性されたものが好ましい。具体的には、Pt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
これらのヒドロシリル化反応触媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
ヒドロシリル化反応触媒の配合量は、通常、シリコーン樹脂組成物中、白金族金属元素の質量換算で、200ppm以下であり、好ましくは2ppm〜50ppm、より好ましくは3ppm〜20ppmである。
【0051】
本実施の形態において、液状硬化性シリコーン樹脂には、必要に応じて反応抑制剤、無機充填剤等を配合してもよい。
液状硬化性シリコーン樹脂組成物は、上述した主剤と硬化剤とヒドロシリル化反応触媒と、必要に応じてその他の成分と一緒に、通常の方法で撹拌・混合することにより調製される。硬化反応は、通常、80℃〜150℃で行われる。
【0052】
本実施の形態が適用される液状硬化性樹脂組成物において、液状硬化性樹脂として、上述したオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合したアルケニル基と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子とのヒドロシリル化反応によって硬化する液状硬化性シリコーン樹脂を採用する場合、ナノ粒子蛍光体として、無機蛍光体の表面に末端不飽和結合を有するα−オレフィンに由来する長鎖脂肪族炭化水素基が配位した構造を有するものを使用することが好ましい。
【0053】
この場合、無機蛍光体の表面に配位する炭化水素基が不飽和結合を有することにより、液状硬化性シリコーン樹脂のヒドロシリル化反応に際し、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素と炭化水素基が有する無機蛍光体と配位するための官能基との反応が抑制され、その結果、液状硬化性樹脂組成物中に安定的にナノ粒子蛍光体が存在すると考えられる。
【0054】
本実施の形態が適用される液状硬化性樹脂組成物中に含まれるナノ粒子蛍光体の含有量は、ナノ粒子蛍光体と液状硬化性樹脂との合計量に対し、通常、0.1質量%〜30質量%、好ましくは、1質量%〜10質量%の範囲で含まれる。
ナノ粒子蛍光体の含有量が過度に少ないと、所望の色調を発現することが出来なくなる傾向がある。
また、ナノ粒子蛍光体の含有量が過度に多いと、発光効率が低下する傾向がある。
【実施例】
【0055】
以下、実施例において本発明をさらに説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
全ての操作において酸素及び水分の混入に十分注意した上で、20mlのねじ口試験管に以下の混合物を採取し、シーラムキャップで栓をした後、減圧装置を用い、脱気を行った。
(主剤)ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体トリメチルシロキシ末端化合物(CAS No.67762−94−1)0.225g
但し、主剤中に、ヒドロシリル化反応触媒(Pt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(CAS No.68478−92−2)160ppmが含まれる。
(硬化剤)メチルハイドロシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体トリメチルシロキシ末端化合物(CAS No.68037−59−2)0.225g
【0057】
脱気後、主鎖に不飽和結合を有する炭化水素基が無機蛍光体に配位したナノ粒子蛍光体0.5ml(固形分18.4mg/ml、トルエン溶液)を加え、均一になるよう混合した。尚、ナノ粒子蛍光体の分子構造は以下の通りである。
無機蛍光体:InPコア−ZnSシェル
コア直径2.1nmとコア直径3.3nmの2種類の無機蛍光体混合物
不飽和結合を有する炭化水素基:ウンデシレン酸由来の炭化水素基
配位するための官能基:ウンデシレン酸由来のカルボキシル基
次いで、再びシーラムキャップで栓をした後、減圧装置を用いて蛍光体の溶媒であるトルエンを室温下で除去した。以上の操作により、ナノ粒子蛍光体を含む液状硬化性樹脂組成物を調製した。
【0058】
このように調製したナノ粒子蛍光体を含む液状硬化性樹脂組成物を、図2に示すような発光波長450nmのLEDチップを装着したパッケージに注入後、70℃、1時間の条件で液状硬化性樹脂を硬化させ、その後更に150℃、4時間の条件で硬化させた。
作製したナノ粒子蛍光体入りLEDは、20mA印加時の色度座標が、(x,y)=(0.26,0.20)であり、全光束は1.5lmである結果が得られた。
【0059】
(実施例2)
以下の混合物を20mlのねじ口試験管に採取し、実施例1と同様な操作を行ってナノ粒子蛍光体を含む液状硬化性樹脂組成物を調製した。
(主剤)ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体トリメチルシロキシ末端化合物(CAS No.67762−94−1)0.188g
但し、主剤中に、ヒドロシリル化反応触媒(Pt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(CAS No.68478−92−2)170ppmが含まれる。
(硬化剤)メチルハイドロシロキサン−フェニルメチルシロキサン共重合体水素末端化合物(CAS No.115487−49−5)0.188g
また、実施例1で使用したナノ粒子蛍光体1.2ml(固形分20.0mg/ml、トルエン溶液)を用いた。
【0060】
作製しナノ粒子蛍光体入りLEDは、20mA印加時の色度座標が、(x,y)=(0.26,0.20)であり、全光束は1.6lmである結果が得られた。
【0061】
(比較例1)
以下の混合物を使用し、実施例1と同様な操作を行ってナノ粒子蛍光体を含む液状硬化性樹脂組成物を調製した。
(オルガノポリシロキサン)
ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体トリメチルシロキシ末端化合物(CAS No.67762−94−1)0.247g
但し、白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(CAS No.68478−92−2)170ppmを含む。
(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)
メチルハイドロシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体トリメチルシロキシ末端化合物(CAS No.68037−59−2)0.247g
また、実施例1で使用したナノ粒子蛍光体0.16ml(固形分72.8mg/ml、トルエン溶液)を用いた。
【0062】
このように調製したナノ粒子蛍光体を含む液状硬化性樹脂組成物を、実施例1と同様に、図2に示すようなLEDチップを装着したパッケージに注入後、70℃、1時間の条件で液状硬化性樹脂を加熱処理し、その後更に150℃、4時間の条件で加熱処理した。
加熱処理後、シリコーン樹脂が硬化しないものと硬化したものが確認されたが、いずれも20mA印加時の色度座標が青色光のままの(x,y)=(0.16,0.02)であり、蛍光体の失活が確認された。
【0063】
以上の結果により、無機蛍光体に不飽和結合を有する炭化水素基が配位した構造を有するナノ粒子蛍光体を含み、液状硬化性樹脂として、オルガノポリシロキサン(主剤)中のケイ素原子結合アルケニル基とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(硬化剤)中のケイ素原子結合水素原子とのヒドロシリル化反応により硬化する液状硬化性シリコーン樹脂を含む液状硬化性樹脂組成物は、ヒドロシリル化反応による硬化処理の際に、ナノ粒子蛍光体が失活することなく安定して存在することが分かる。
従って、本発明のナノ粒子蛍光体を含む液状硬化性樹脂組成物は、LEDの量産において重要な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本実施の形態が適用される照明装置の一例を説明する図である。
【図2】本実施の形態が適用される発光チップの構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0065】
10…照明装置、11…発光チップ列、12…シェード(筐体)、13…放熱部材、14…ねじ、51…基板、52…発光チップ、61…パッケージ、66…青色LED、69…封止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子蛍光体を含む液状硬化性樹脂組成物であって、
無機蛍光体及び当該無機蛍光体に配位した炭化水素基から構成されるナノ粒子蛍光体と、
液状の主剤と硬化剤と、当該主剤の硬化反応を促進する硬化反応触媒を有する液状硬化性樹脂と、
を含むことを特徴とする液状硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ナノ粒子蛍光体は、当該ナノ粒子蛍光体と前記液状硬化性樹脂との合計量に対し0.1質量%〜30質量%の範囲で含まれることを特徴とする請求項1に記載の液状硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ナノ粒子蛍光体の前記無機蛍光体は、II族−VI族化合物半導体、III族−V族化合物半導体から選ばれることを特徴とする請求項1または2に記載の液状硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ナノ粒子蛍光体の炭化水素基は、主鎖に不飽和結合を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液状硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記液状硬化性樹脂は、ケイ素原子結合アルケニル基とケイ素原子に結合した水素原子とが、白金族金属系触媒からなる硬化反応促進剤を用いるヒドロシリル化反応により硬化する液状硬化性シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液状硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液状硬化性樹脂組成物を型枠内に入れ、次いで、50℃〜300℃の温度下で当該液状硬化性樹脂組成物を加熱硬化する工程を含むことを特徴とするナノ粒子蛍光体を含む硬化樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記加熱硬化は、硬化処理温度の異なる少なくとも2段階の加熱硬化工程を含むことを特徴とする請求項6に記載のナノ粒子蛍光体を含む硬化樹脂の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液状硬化性樹脂組成物を発光ダイオードを具備した型枠内に入れ、次いで、50℃〜300℃の温度下で当該液状硬化性樹脂組成物を加熱硬化することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記加熱硬化が、硬化処理温度の異なる少なくとも2段階の加熱硬化工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の発光装置の製造方法。
【請求項10】
発光ダイオードと、
前記発光ダイオードが発光する光が透過する光透過性部材と、を備え、
前記光透過性部材は、
ケイ素原子結合アルケニル基とケイ素原子に結合した水素原子との間のヒドロシリル化反応により硬化したシリコーン樹脂硬化物と、
前記シリコーン樹脂硬化物により被覆され、無機蛍光体及び当該無機蛍光体に配位した炭化水素基から構成されるナノ粒子蛍光体と、
を有することを特徴とする発光装置。
【請求項11】
前記ナノ粒子蛍光体の炭化水素基は、炭素数4〜炭素数20のα−オレフィンに由来することを特徴とする請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
複数の請求項11に記載の発光装置と、
前記複数の発光装置を直列接続して保持する基板と、
前記基板が取り付けられ、電気的に接地される筐体と、
を有することを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−126596(P2010−126596A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301363(P2008−301363)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】