説明

液状硬化性樹脂組成物

【課題】 高n値の硬化体が得られるとともに、被覆除去後にもファイバ強度が高い液状硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (A)ラジカル重合性の官能基を有さないアルコキシシラン化合物0.1〜10質量%、及び(B)非ラジカル重合性の有機スズ又は有機チタン化合物0.05〜1質量%を含有することを特徴とする光ファイバ被覆用液状硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高n値の硬化体が得られるとともに、被覆除去後のファイバ強度も高い液状硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバは、ガラスを熱溶融紡糸して得たガラスファイバ素線に、保護補強を目的として樹脂を被覆して製造されている。この樹脂被覆としては、光ファイバの表面にまず柔軟な第一次の被覆層(以下、「一次被覆層」ともいう。)を設け、その外側に剛性の高い第二次の被覆層(以下、「二次被覆層」ともいう。)を設けた構造が知られている。これらの樹脂被覆を施して得られる光ファイバ素線を平面上に複数並べて結束材料で固めた光ファイバテープもよく知られている。光ファイバ素線の第一次の被覆層を形成するための樹脂組成物をプライマリ材、第二次の被覆層を形成するための樹脂組成物をセカンダリ材、テープ状ファイバの結束材として用いられる樹脂組成物をテープ材と称している。これらの樹脂被覆方法としては、液状硬化性樹脂組成物を塗布し、熱または光、特に紫外線により硬化させる方法が広く用いられている。
【0003】
近年、このような液状硬化性樹脂組成物には、シランカップリング剤として、アルコキシシラン化合物等が用いられている。このアルコキシシラン化合物は、ファイバの欠損部位へ水素結合し、その後は加水分解・縮合することにより欠損部位を修復しファイバ強度を向上させると考えられている。
しかして、このような液状硬化性樹脂組成物の硬化膜からなる被覆層を有する光ファイバは、被覆が施されている状態での強度(n値)は高いが、被覆を除去するとファイバ強度が大幅に低下するという問題が発生した。すなわち、従来用いられている被覆材は、ラジカル重合性のアルコキシシラン化合物が添加されており、このアルコキシシラン化合物とともに、縮合触媒であるアミン化合物も除去されていたため、強度が低下していたものである。
【0004】
例えば、特許文献1には、非ラジカル重合性のアルコキシシラン化合物として、テトラエトキシシランを用いた液状硬化性樹脂組成物が記載されている。しかしながら、この液状硬化性樹脂組成物では、前記のように、被覆除去後のファイバ強度が低くなってしまう。
【0005】
一方、特許文献2には、酸化チタンを光分解性触媒として配合した光ファイバ用被覆材が記載されており、特許文献3には、ケイ素化合物、チタン化合物等を含有する硬化性塗料組成物が記載されている。しかしながら、これらの特許文献においては、本願発明のように特定のアルコキシシラン化合物と有機スズ化合物又は有機チタン化合物を組み合わせて用いることや、被覆除去後のファイバ強度については何の記載もされていない。
【特許文献1】特開2005−36192号公報
【特許文献2】特開2003−29098号公報
【特許文献3】特表平9−508886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高n値の硬化体が得られるとともに、被覆除去後のファイバ強度も高い液状硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、この様な状況に鑑みて鋭意研究した結果、ラジカル重合性の官能基を有さないアルコキシシラン化合物と、特定の有機スズ化合物又は有機チタン化合物を特定の割合で組み合わせて用いれば、高n値の硬化体が得られ、しかも被覆除去後にもファイバ強度が高い液状硬化性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)ラジカル重合性の官能基を有さないアルコキシシラン化合物0.1〜10質量%、及び(B)非ラジカル重合性の有機スズ又は有機チタン化合物0.05〜1質量%を含有することを特徴とする光ファイバ被覆用液状硬化性樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、当該液状硬化性樹脂組成物を、放射線により硬化せしめることにより得られる光ファイバ被覆層及び当該被覆層を有する光ファイバを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液状硬化性樹脂組成物は、高n値の硬化体が得られるとともに、被覆除去後のファイバ強度も高いものである。また、保存安定性も良好である。光ファイバ用の被覆材、特にプライマリ材や、種々の光学部材の表面コーティング材、光学接着剤等として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の液状硬化性樹脂組成物に用いられる(A)成分のアルコキシシラン化合物は、エチレン性不飽和結合等のラジカル重合性の官能基を有さないものである。このため、紫外線硬化後も硬化物中を容易に移動してガラスの欠損部位に接近でき、また、アルコキシシラン部位を有するため、ガラスの欠損部位と化学反応により結合し修復することが可能である。
【0011】
かかるアルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラエトキシシラン(正珪酸エチル、多摩化学工業社製;AY43−101、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、メチルトリメトキシシラン(SZ6070、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、メチルトリエトキシシラン(SZ6072、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、メチルトリフェノキシシラン(Z−6721、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、ジメチルジメトキシシラン(AY43−004、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、トリメチルメトキシシラン(AY43−043、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、ヘキサメチルジシラザン(Z−6079、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、n−プロピルトリメトキシシラン(Z−6265、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、イソブチルトリメトキシシラン(AY43−048、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、イソブチルトリエトキシシラン(Z−6403、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、n−ヘキシルトリメトキシシラン(AY43−206M、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、n−ヘキシルトリエトキシシラン(AY43−206E、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(SZ6187、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、n−オクチルトリエトキシシラン(Z−6341、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、n−デシルトリメトキシシラン(AY43−210MC、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、1,6ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン(AY43−083、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、フェニルトリメトキシシラン(AY43−040、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、ジフェニルジメトキシシラン(AY43−047、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(AY43−013、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン(AY43−158E、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、ジフェニルジメトキシシラン(AY43−047、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(SH6020、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(AY43−059、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン(SZ6023、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、3−アニリノプロピルトリメトキシシラン(SZ6083、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン(AY43−031、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(SH6040、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(AY43−026、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、ビス[(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド(Z−6920、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、ビス[(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド(Z−6940、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、テトラエトキシシラン縮合物(シリケート40、シリケート45、シリケート48、以上、多摩化学工業社製)、メチルトリメトキシシラン縮合物(Mシリケート51、多摩化学工業社製)、テトラプロポキシシラン(プロピルシリケート、多摩化学工業社製)、テトラブトキシシラン(ブチルシリケート、多摩化学工業社製)等が挙げられる。
【0012】
成分(A)としては、一般式(1):
【0013】
(R1n−Si−(OR24-n (1)
【0014】
(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基、エポキシアルキル基、パーフルオロアルキル基又はアリール基を示し、R2は炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは0、1又は2を示す)
で表されるものが好ましい。特に、メトキシシリル化合物、エトキシシリル化合物が好ましく、更に、2官能以上のメトキシシリル化合物、エトキシシリル化合物が、加水分解性に優れ、立体障害も少ないためガラスの欠損部位との反応が容易になるので好ましい。
【0015】
(A)成分は、1種又は2種以上を用いることができ、本発明の液状硬化性樹脂組成物中に0.1〜10質量%、好ましくは0.25〜5質量%、特に好ましくは0.5〜1質量%配合される。この範囲内であれば、高n値の硬化物が得られ、被覆除去後のファイバ強度にも優れる。
【0016】
本発明で用いる(B)成分は、非ラジカル重合性の有機スズ又は有機チタン化合物である。これらは、エチレン性不飽和結合等のラジカル重合性の配位子を有さないため、光硬化後も硬化物中を自由に移動でき、アルコキシシラン化合物の加水分解・縮合には効果的であり、n値と被覆除去後のファイバ強度を向上させることができる。また、これらの化合物は、樹脂組成物の液性に影響を与えない中性の化合物であるため、保存安定性も良好である。
【0017】
成分(B)のうち、有機スズ化合物としては、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等が挙げられる。また、有機チタン化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート(オルガチックスTA−10、松本製薬工業社製)、テトラノルマルブチルチタネート(オルガチックスTA−25、松本製薬工業社製)、ブチルチタネートダイマー(オルガチックスTA−22、松本製薬工業社製)、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート(オルガチックスTA−30、松本製薬工業社製)、テトラメチルチタネート(オルガチックスTA−70、松本製薬工業社製)、チタンアセチルアセトナート(オルガチックスTC−100、松本製薬工業社製)、チタンテトラアセチルアセトナート(オルガチックスTC−401、松本製薬工業社製)、チタンオクチレングリコレート(オルガチックスTC−200、松本製薬工業社製)、チタンエチルアセトアセテート(オルガチックスTC−750、松本製薬工業社製)、チタンラクテート(オルガチックスTC−310、松本製薬工業社製)、チタントリエタノールアミネート(オルガチックスTC−400、松本製薬工業社製)等が挙げられる。
【0018】
(B)成分としては、加水分解を受けやすい配位子を有する4価の有機スズ化合物又は有機チタン化合物が、より触媒活性が高いので好ましい。これらの中で、特に、ジブチル錫ジアセテート、チタンアセチルアセトナートが好ましい。
【0019】
(B)成分は、1種又は2種以上を用いることができ、有機スズ化合物と有機チタン化合物を組み合わせて用いることもできる。(B)成分は、本発明の液状硬化性樹脂組成物中に0.05〜1質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%、特に好ましくは0.1〜0.15質量%配合される。この範囲内であれば、高n値の硬化物が得られ、被覆除去後にもファイバ強度が低下しない。
【0020】
本発明の液状硬化性樹脂組成物には、さらに(C)ウレタン(メタ)アクリレート及び(D)(C)成分を共重合可能な反応性希釈剤を含有させるのが好ましい。(C)ウレタン(メタ)アクリレートは、特に限定されないが、例えば、(a)ポリオール化合物、(b)ポリイソシアネート化合物、および(c)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させて得られる。
【0021】
この(C)ウレタン(メタ)アクリレートを製造する具体的方法としては、例えば(a)ポリオール、(b)ポリイソシアネート化合物および(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを一括して仕込んで反応させる方法;(a)ポリオールおよび(b)ポリイソシアネート化合物を反応させ、次いで(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法;(b)ポリイソシアネート化合物および(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いで(a)ポリオールを反応させる方法;(b)ポリイソシアネート化合物および(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いで(a)ポリオールを反応させ、最後にまた(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法等が挙げられる。
【0022】
ここで用いる(a)ポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールのような一種のイオン重合性環状化合物を開環重合させて得られるポリエーテルジオール、または二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られるポリエーテルジオールが挙げられる。イオン重合性環状化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン−1−オキシド、イソブテンオキシド、オキセタン、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。また、上記イオン重合性環状化合物と、エチレンイミン等の環状イミン類、γ−プロピオラクトン、グリコール酸ラクチド等の環状ラクトン酸、あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルジオールを使用することもできる。上記二種以上のイオン重合性環状化合物の具体的な組み合わせとしては、テトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテン−1−オキシドとエチレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブテン−1−オキシド、エチレンオキシドの3元重合体等を挙げることができる。これらのイオン重合性環状化合物の開環共重合体はランダムに結合していてもよいし、ブロック状の結合をしていてもよい。本発明の硬化物に耐ジェリー性および耐水性を付与する点から、これらのポリエーテルジオールのうち、ポリプロピレングリコールがより好ましく、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC法)によるポリスチレン換算の数平均分子量で1000〜7000のポリプロピレングリコールが特に好ましい。
【0023】
これらのポリエーテルジオールは、例えばPTMG650、PTMG1000、PTMG2000(以上、三菱化学社製)、エクセノール 1020、2020、3020、プレミノール PML−4002、PML−5005(以上、旭硝子社製)、ユニセーフ DC1100、DC1800、DCB1000(以上、日本油脂社製)、PPTG1000、PPTG2000、PPTG4000、PTG400、PTG650、PTG1000、PGT2000、PTG−L1000、PTG−L2000(以上、保土谷化学工業社製)、Z−3001−4、Z−3001−5、PBG2000(以上、第一工業製薬社製)、Acclaim 2200、2220、3201、3205、4200、4220、8200、12000(以上、ライオンデール社製)等の市販品として入手することができる。
【0024】
ポリオールとしては、上記ポリエーテルジオールが好ましいが、この他にポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール等も用いることができ、これらのジオールをポリエーテルジオールと併用することもできる。これらの構造単位の重合様式は特に制限されず、ランダム重合、ブロック重合、グラフト重合のいずれであってもよい。
【0025】
(C)ウレタン(メタ)アクリレートの合成に用いられる(b)ポリイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。具体的化合物としては、光ファイバ用樹脂組成物として使用できるものであれば特に制限はないが、好ましい例としては芳香族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネート、より好ましくは、2,4−トリレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートが挙げられる。これらのジイソシアネート化合物は単独で用いても、2種以上併用しても良い。
【0026】
(C)ウレタン(メタ)アクリレートの合成に用いられる(c)水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、ポリイソシアネートのイソシアネート基との反応性の点から、水酸基が第一級炭素原子に結合した水酸基含有(メタ)アクリレート(第一水酸基含有(メタ)アクリレートという)および水酸基が第二級炭素原子に結合した水酸基含有(メタ)アクリレート(第二水酸基含有(メタ)アクリレートという)が好ましい。
【0027】
第一水酸基含有(メタ)アクリレートとして、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
第二水酸基含有(メタ)アクリレートとして、例えば、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、さらに、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物が挙げられる。これら水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用できる。
【0029】
(C)ウレタン(メタ)アクリレートの合成に用いる(a)ポリオール、(b)ポリイソシアネート化合物および水酸基含有(メタ)アクリレートの使用割合は、ポリオールに含まれる水酸基1当量に対してポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基が1.1〜2当量、水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基が0.1〜1当量となるようにするのが好ましい。
【0030】
また、(C)ウレタン(メタ)アクリレートの合成において、ポリオールとともにジアミンを併用することも可能であり、このようなジアミンとしてはエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン等のジアミンやヘテロ原子を含むジアミン、ポリエーテルジアミン等が挙げられる。
【0031】
水酸基含有(メタ)アクリレートの一部をイソシアネート基に付加しうる官能基を持った化合物、又はアルコール類に置き換えて用いることもできる。イソシアネート基に付加しうる官能基を持った化合物としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの化合物を使用することにより、ガラス等の基材への密着性をさらに高めることができる。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等を挙げることができる。これらの化合物を使用することにより、樹脂のヤング率を調節することができる。
【0032】
(C)ウレタン(メタ)アクリレートの合成においては、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ジブチル錫ジラウレート、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、2,6,7−トリメチル−1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン等のウレタン化触媒を、反応物の総量に対して0.01〜1質量%用いるのが好ましい。また、反応温度は、通常5〜90℃、特に10〜80℃が好ましい。
【0033】
(C)ウレタン(メタ)アクリレートの好ましい分子量は、硬化物の良好な破断伸びおよび液状硬化性樹脂組成物の適度な粘度を得る観点から、GPC法によるポリスチレン換算の数平均分子量で、通常500〜40,000であり、特に700〜30,000が好ましい。
【0034】
(C)ウレタン(メタ)アクリレートは、硬化物のヤング率、破断伸び等の良好な力学特性および液状硬化性樹脂組成物の適度な粘度を得る観点から、本発明の液状硬化性樹脂組成物中に、35〜85質量%、特に55〜65質量%配合することが好ましい。85質量%を超えると硬化物のヤング率が2.0MPaを超えてしまうため光ファイバ被覆用樹脂としては好ましくなく、また液状硬化性樹脂組成物の粘度が6.0Pa・sを超えてしまうため作業性も低下し、また硬化物の耐水性も悪化する。35質量%を下回ると破断強度が悪化してしまう。
【0035】
本発明の液状硬化性樹脂組成物に使用される(D)成分は、(C)成分と共重合可能な反応性希釈剤である。(D)成分としては、例えば(D1)重合性単官能化合物、または(D2)重合性多官能化合物が挙げられる。このような、(D1)重合性単官能性化合物としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラクタム、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン等が挙げられる。さらに、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピルアクリレート及び下記一般式で表される化合物等が挙げられる。
【0036】
CH2=C(R3)−COO(R4O)p−C64−R5
【0037】
(式中、R3は水素原子又はメチル基を示し、R4は炭素数2〜6、好ましくは2〜4のアルキレン基を示し、R5は水素原子又は炭素数1〜12、好ましくは1〜9のアルキル基を示し、pは0〜12、好ましくは1〜8の自然数を示す。)
【0038】
これら(D1)重合性単官能性化合物のうち、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラクタム、炭素数10以上の脂肪族炭化水素基を有する単官能性(メタ)アクリレートが好ましい。ここで炭素数10以上の脂肪族基としては、直鎖、分岐鎖および脂環式のいずれも含まれ、炭素数は10〜24が好ましい。これらのうちイソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレートおよび/またはイソデシル(メタ)アクリレートが特に好ましい。これら(D1)重合性単官能性化合物の市販品としては、IBXA(大阪有機化学工業社製)、アロニックスM−110、M−111、M−113、M114、M−117、TO−1210(以上、東亞合成社製)、エポキシエステルM−600A(共栄社社製)等を使用することができる。
【0039】
また、(D2)重合性多官能性化合物としては、光ファイバ用樹脂組成物として使用できるものであれば特に制限はないが、好ましい例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドを付加させたビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イアオシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)等が挙げられる。これら(D2)重合性多官能性化合物の市販品として、例えば、ライトアクリレート9EG−A、4EG−A(以上、共栄社化学社製)、ユピマーUV、SA1002(以上、三菱化学社製)、アロニックスM−215、M−315、M−325(以上、東亞合成社製)等が挙げられる。
【0040】
これらの(D1)重合性単官能化合物と(D2)重合性多官能化合物を併用して用いることもできる。
【0041】
これらの(D)成分は、本発明の液状硬化性樹脂組成物中に1〜60質量%、特に2〜45質量%配合することが好ましい。1質量%未満であると硬化性を損ねる可能性があり、60質量%を超えると低粘度による塗布形状の変化が起き、塗布が安定しない。
【0042】
本発明の液状硬化性樹脂組成物には、必要に応じて(E)重合開始剤を添加することができる。(E)成分としては、通常(E1)光重合開始剤を用いるが、必要に応じて(E2)熱重合開始剤を(E1)光重合開始剤と併用しても良い。
【0043】
(E1)光重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等が挙げられる。これらの市販品としては、イルガキュア184、369、651、500、907、819、CGI1700、CGI1850、CGI1870、CG2461、ダロキュア1116、1173(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、LUCIRIN TPO(BASF社製)、ユベクリルP36(UCB社製)等が挙げられる。
【0044】
(E2)熱重合開始剤としては、過酸化物、アゾ化合物等が挙げられ、具体的には、例えばベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−オキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0045】
また、本発明の液状樹脂組成物を光硬化させる場合には、光重合開始剤に加えて必要に応じて光増感剤を添加することができる。光増感剤としては、例えばトリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等が挙げられる。市販品としては、ユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB社製)等が挙げられる。
【0046】
(E)重合開始剤は、本発明の液状硬化性樹脂組成物中に0.1〜10質量%、特に0.5〜5質量%配合することが好ましい。
【0047】
また、本発明の液状硬化性樹脂組成物には、上記成分以外に各種添加剤、例えば着色剤、光安定剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を必要に応じて配合することができる。ここで光安定剤としては、例えばチヌビン 292、144、622LD(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、サノールLS770(三共社製)、TM−061(住友化学工業社製)、SEESORB101、SEESORB103、SEESORB709(以上、シプロ化成社製)、Sumisorb130(住友化学社製)等が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、市販品として、SH6062、SZ6030(以上、東レ・ダウ・コーニングシリコーン社製)、KBE903、603、403(以上、信越化学工業社製)等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えばSumilizer GA−80(住友化学社製)、Irganox1010、Irganox1035(以上、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0048】
本発明の液状硬化性樹脂組成物の25℃における粘度は、1.0〜6.0Pa・sが好ましい。また、光ファイバプライマリ層として用いる場合、硬化物のヤング率は0.1〜2.0MPaが好ましい。
【0049】
本発明の液状硬化性樹脂組成物は、放射線によって硬化される。ここで放射線とは、赤外線、可視光線、紫外線、X線、α線、β線、γ線、電子線等であるが、特に紫外線が好ましい。
【0050】
本発明の別の態様は、以上述べた液状硬化性樹脂組成物を、ガラスファイバ素線または他の光ファイバ被覆層の上に塗布して、放射線により硬化せしめることに得られる光ファイバ被覆層である。放射線として紫外線を用いる場合における、好ましい照射条件は、50〜300J/cm2である。本発明の光ファイバ被覆層は、光ファイバの被覆層の任意の一部の層又は全部の層を成すものであるが、好ましくは、光ファイバの一次被覆層を成す。
【0051】
本発明のさらに別の態様は、上記の光ファイバ被覆層を有する光ファイバである。本発明の光ファイバは、上記光ファイバ被覆層を有していれば、その被覆層がいずれの層であるかによって限定されるものではないが、好ましくは、上記光ファイバ被覆層が一次被覆層であって、さらに二次被覆層を有する光ファイバ、又は、複数本の光ファイバをテープ材で結束した光ファイバテープを挙げることができる。本発明の光ファイバは、石英母材を溶融して得られるガラスファイバ素線に、例えば、一次被覆材を塗布し放射線を照射して硬化させた後に、さらに、二次被覆材を塗布し放射線を照射して硬化させることによって得られる。
【実施例】
【0052】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0053】
合成例1(ウレタン(メタ)アクリレートの合成)
撹拌機を備えた反応容器に、数平均分子量が2000のポリプロピレングリコール(旭硝子ウレタン社製、NPML−2002A)50.700部、トルエンジイソシアネート6.739部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.014部を仕込み、これらを撹拌しながら液温度が15℃となるまで冷却した。ジブチル錫ジラウレート0.044部を添加した後、攪拌しながら液温度を1時間かけて40℃まで徐々に上げた。その後、液温度を45℃に上げて反応させた。残留イソシアネート基濃度が1.49質量%(仕込量に対する割合)以下となった後、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウ コーニング社製、SH6062)0.300部を添加し、液温度約50℃で2時間攪拌した。その後、2−ヒドロキシエチルアクリレート2.010部を添加し、液温度約55℃にて1時間撹拌して反応させた。さらにメタノール0.251部を添加し、液温度約60℃で1時間攪拌した。その後、残留イソシアネート基濃度が0.05質量%以下になった時を反応終了とした。得られたウレタン(メタ)アクリレートを「オリゴマーA」とする。
【0054】
実施例1〜2、比較例1〜6(一次被覆材の調製)
撹拌機を備えた反応容器に表1に示す配合比(質量部)で化合物を仕込み、均一な溶液になるまで液温度50℃で攪拌して、実施例及び比較例の液状硬化性樹脂組成物を得た。
【0055】
合成例2(二次被覆材の調製)
撹拌機を備えた反応容器に、イソホロンジイソシアネート15.429部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.013部、ジブチル錫ジラウレート0.047部を仕込み、これらを撹拌しながら液温度が10℃以下になるまで氷冷した。ヒドロキシエチルアクリレートを液温度が20℃以下になるように制御しながら11.32g滴下した後、さらに、1時間撹拌して、反応させた。次に数平均分子量1,000のポリテトラメチレングリコール25.40gおよび数平均分子量400のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ジオール9.36gを加え、液温度70〜75℃にて3時間撹拌を継続させ、残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。液温度50〜60℃に冷却し、イソボニルアクリレート9.70g、SA−1002(三菱化学社製)14.55g、N−ビニルカプロラクタム9.70g、Irgacure184(チバスペシャリティーケミカルズ社製)2.91gおよびスミライザー GA−80(住友化学社製)0.3gを加え均一な樹脂液になるまで撹拌して液状硬化性樹脂組成物を得た。
【0056】
試験例
(1)保存安定性:
(1−1)粘度変化率:
実施例および比較例で得られた樹脂組成物の25℃における粘度を、粘度計B8H−BII(トキメック社製)を用いて測定した(初期粘度)。さらに、この組成物を、60℃のオーブンに7日間放置した後、再度粘度を測定した(耐久後粘度)。初期粘度と耐久後粘度の変化率を(式1)より算出して、樹脂組成物の熱的安定性を評価した。
【0057】
粘度変化率(%)=100−(初期粘度/耐久後粘度)×100 (式1)
【0058】
(1−2)ヤング率変化率:
実施例および比較例で得られた樹脂組成物について、硬化後のヤング率を測定した。354μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状硬化性樹脂組成物を塗布し、これを空気中で1J/cm2のエネルギーの紫外線を照射して硬化させ、試験用フィルムを得た。この硬化フィルムから、延伸部が幅6mm、長さ25mmとなるように短冊状サンプルを作成した。温度23℃、湿度50%の条件下、引っ張り試験機AGS−1KND(島津製作所社製)を用い、JIS K7127に準拠して引張試験を行った。引張速度は1mm/minで、2.5%歪みでの抗張力からヤング率を求めた(初期ヤング率)。さらに、この硬化フィルムを、100℃のオーブンに60日間放置した後、再度ヤング率を測定した(耐久後ヤング率)。初期ヤング率と耐久後ヤング率の変化率を(式2)式より算出して、硬化物の熱的安定性を評価した。
【0059】
ヤング率変化率(%)=100−(初期ヤング率/耐久後ヤング率)×100(式2)
【0060】
(1−3)ガラス密着力変化率:
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のガラス密着力を測定した。354μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状硬化性樹脂組成物を塗布し、これを空気中で1J/cm2のエネルギーの紫外線を照射して硬化させ、試験用フィルムを得た。この硬化フィルムから、延伸部が幅10mm、長さ50mmとなるように短冊状サンプルを作成した。温度23℃、湿度50%の条件下、引っ張り試験機AGS−1KND(島津製作所社製)を用い、ガラス密着力試験を行った。引張速度は50mm/minで、30秒後の抗張力からガラス密着力を求めた(初期ガラス密着力)。また、各組成物を、60℃のオーブンに60日間放置した後、再度ガラス密着力を測定した(耐久後ガラス密着力)。初期ガラス密着力と耐久後ガラス密着力の変化率を(式3)より算出して、樹脂組成物の熱的安定性を評価した。
【0061】
ガラス密着力変化率(%)
=100−(初期ガラス密着力/耐久後ガラス密着力)×100 (式3)
【0062】
(1−4)判定:
粘度変化率およびヤング率変化率が±20.0%以内、ガラス密着力変化率が±50.0%以内である場合を合格と判定した。
【0063】
(2)ファイバ強度:
(2−1)光ファイバの製造:
光ファイバ線引き装置(吉田工業製)を使用して、石英ガラスファイバ上に一次被覆材として、実施例又は比較例の組成物を塗布硬化させた後、二次被覆材(JSR社製、デソライトR3203)を塗布して硬化させた。光ファイバの製造条件は以下のとおりである。
光ファイバの線径は、ガラスファイバは直径125μmであったが、これに上記の一次被覆材を塗布硬化させ、直径が200μmになるように調整した。さらに形成された一次被覆材の上に、二次被覆材を塗布し、硬化した時点で250μmになるように調節して塗布した。紫外線照射装置はORC製UVランプ(SMX3.5kw)を使用した。光ファイバの線引き速度は200m/minとした。
【0064】
(2−2)n値の測定:
(2−1)で得られた光ファイバを温度23℃及び湿度50%となる環境下で2週間保管し、2−ポイントベンディングマシーン(FiberSigma製、TP−2)を用い、TIA/EIA(ITM−13;Telecommunication Industry Association,Electronic Industiries Alliance,TELECOMMUNICATIONS SYSTEMS BULLETIN62−13)に準拠して、n値を測定した。
【0065】
(2−3)被覆除去後のファイバ強度測定:
(2−1)で得られた光ファイバの被覆除去後のファイバ強度を測定した。温度23℃及び湿度50%となる環境下で、光ファイバの被覆部位を被覆除去治具(NO−NIKワイヤストリッパー)を使用して除去した。得られたガラス部位が露出した光ファイバを、引張試験機(島津製作所社製、AGS−50G)を用い、TIA/EIA(ITM−13)の引張方法に準拠して引張試験を行った。引張速度は100μm/sで行い、ファイバが破断する応力を算出し、被覆除去後のファイバ強度を求めた。
【0066】
(2−3)判定:
n値が20以上、被覆除去後のファイバ強度が1.0GPa以上である場合を合格と判定した。
以上の結果を表1に併せて示す。
【0067】
【表1】

【0068】
表1中、
Lucirin TPO−X:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(ビーエーエスエフジャパン製)
Sumilizer GA−80:3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニロキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデセン(住友化学工業株式会社製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ラジカル重合性の官能基を有さないアルコキシシラン化合物0.1〜10質量%、及び(B)非ラジカル重合性の有機スズ又は有機チタン化合物0.05〜1質量%を含有することを特徴とする光ファイバ被覆用液状硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、(C)ウレタン(メタ)アクリレート35〜85質量%、及び(D)(C)成分と共重合可能な反応性希釈剤1〜60質量%を含有する請求項1記載の光ファイバ被覆用液状硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
成分(A)が、一般式(1):
(R1n−Si−(OR24-n (1)
(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基、エポキシアルキル基、パーフルオロアルキル基又はアリール基を示し、R2は炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは0、1又は2を示す)
で表されるアルコキシシラン化合物である請求項1又は2記載の光ファイバ被覆用液状硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の光ファイバ被覆用液状硬化性樹脂組成物を、放射線により硬化せしめることにより得られる光ファイバ被覆層。
【請求項5】
請求項4に記載の被覆層を有する光ファイバ。

【公開番号】特開2006−249263(P2006−249263A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68479(P2005−68479)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】