説明

液状硬化性樹脂組成物

【課題】アップジャケット材としての機能に優れ、特に硬くて外傷を受けにくく、液状組成物の保存安定性や隣接被覆層との剥離性に優れた光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(A1)、(A2)、(B)及び(C):
(A1)芳香族構造又は脂環式構造を有するポリオールに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、及びジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物であってポリオールに由来する構造を有しないウレタン(メタ)アクリレートから選択される1種以上のウレタン(メタ)アクリレート、
(A2)ポリエステルポリオールに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、(B)ウレタン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和基を有する化合物、
(C)数平均分子量3000以上のポリエステルポリオール化合物
を含有する光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ素線の二次被覆層又はインキ層の表面に塗布後硬化して使用する、光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの製造においては、ガラスファイバを熱溶融紡糸し、保護補強を目的として樹脂被覆が施されている。樹脂被覆としては、光ファイバの表面にまず柔軟な一次被覆層を設け、その外側に剛性の高い二次被覆層を設けた構造が知られている。さらに、二次被覆層の外側に識別のための着色層(インキ層ともいう)を設ける場合もある。
【0003】
ガラスファイバに一次被覆層及び二次被覆層を設けた状態での外径は通常250μm程度であるが、手作業による作業性を改善する目的で、この外周をさらに別の樹脂層で被覆して外径を500〜900μm程度に増大させることが行われている。このような樹脂被覆層を通常アップジャケット層という。ガラスファイバに一次被覆層及び二次被覆層を設けた状態を、通常、光ファイバ素線というが、インキ層、アップジャケット層を有する場合には、これらの層までを有する状態を光ファイバ素線という。よって、アップジャケット層は、光ファイバ素線の最外層である。
アップジャケット層自体は光学的特性を要するものではないため、特に透明性は必要とされず、着色を付して目視による識別性を付与することもある。アップジャケット層は、光ファイバ素線の結線作業等を行う場合に、下層にある一次被覆層、二次被覆層やインキ層を破損させずに、かつ、容易に剥離できることが重要な特性である。
【0004】
アップジャケット層を形成するための液状硬化性樹脂(以下、「アップジャケット材」又は「最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物」という。)には、塗布性に優れ高速で線引き可能なこと;十分な強度を有すること;耐熱性に優れること;耐候性に優れること;酸、アルカリなどに対する耐性に優れること;耐油性に優れること;吸水、吸湿性が低いこと;水素ガス発生量が少ないこと;液状で保存安定性が良好なこと;インキ層や二次被覆層との剥離性が良好であることなどの特性が要求されている。
【0005】
しかし、従来のアップジャケット材では、アップジャケット層が二次被覆層やインキ層と強固に接着しているため、光ファイバの結線作業等において光ファイバ素線からアップジャケット層を剥離させる際に一次被覆層、二次被覆層やインキ層を破損させることが多かった。このため、光ファイバの接続作業の作業性が低下しているという問題があった。
【0006】
かかる剥離性を改善したアップジャケット材として、3種類のポリシロキサン化合物を配合した組成物(特許文献1)、樹脂材料中に有機または無機材料からなる粒子を配合した組成物(特許文献2,3)、ポリエーテルポリオールを配合した組成物(特許文献4)が報告されている。
【0007】
従来、光ファイバ素線のアップジャケット層は、ヤング率が低い柔軟性を重視した設計が主流であったが(特許文献1〜3)、光ファイバ素線の最外層であるため、外気に晒されることがあり、外傷を受けやすいという問題がある。このため、硬度が高く、外傷を受けにくいことが望まれる場合があった。
一方、ヤング率の高い光ファイバ素線の最外層も知られているが(特許文献4)、液状組成物の保存安定性の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−287717号公報
【特許文献2】特開平9−324136号公報
【特許文献3】特開2000−273127号公報
【特許文献4】特開2008−249788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、アップジャケット材としての機能に優れ、特に硬くて外傷を受けにくく、液状組成物の保存安定性や隣接被覆層との剥離性に優れた光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明者らは、ウレタン(メタ)アクリレートを含有する液状硬化性樹脂組成物に種々の成分を配合して、その硬化物であるアップジャケット層の強度や剥離性、液状組成物の保存安定性について検討してきたところ、剛直な構造を有するウレタン(メタ)アクリレートと、柔軟な構造を有するウレタン(メタ)アクリレートと、特定分子量のポリエステルポリオールとを組み合わせて用いることにより、上記目的が達成できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、次の成分(A1)、(A2)、(B)及び(C):
(A1)芳香族構造又は脂環式構造を有するポリオールに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、及びジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物であってポリオールに由来する構造を有しないウレタン(メタ)アクリレートから選択される1種以上のウレタン(メタ)アクリレート、
(A2)ポリエステルポリオールに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、
(B)ウレタン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和基を有する化合物、
(C)数平均分子量3000以上のポリエステルポリオール化合物
を含有する光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、当該光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる光ファイバ素線の最外被覆層を提供する。
さらに、本発明は、当該最外被覆層を有する光ファイバ素線を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液状硬化性樹脂組成物は、保存安定性に優れたものであり、これを硬化して得られる被覆は、ヤング率が非常に高く、適度な靱性を有するため、外傷を受けにくく、また、隣接被覆層との剥離性が良好である。光ファイバ素線の最外層、すなわちアップジャケット層の形成用に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で用いる成分(A)は、ウレタン(メタ)アクリレートである。(A)ウレタン(メタ)アクリレートには、ヤング率の高い硬化物を得るための剛直な構造を有するウレタン(メタ)アクリレート及び靱性に優れる硬化物を得るための柔軟な構造を有するウレタン(メタ)アクリレートが含まれる。
剛直な構造を有するウレタン(メタ)アクリレートとしては、(A1)芳香族構造又は脂環式構造を有するポリオールに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、及びジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物であってポリオールに由来する構造を有しないウレタン(メタ)アクリレートから選択される1種以上のウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。成分(A1)のウレタン(メタ)アクリレートは、剛直な構造を有しているため、硬化物のヤング率を高めることができる。
柔軟な構造を有するウレタン(メタ)アクリレートとしては、(A2)ポリエステルポリオールに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。また、成分(A2)に加えて、(A3)ポリエステルポリオール以外の脂肪族ポリオールとジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートを配合することもできる。これら成分(A2)や成分(A3)のウレタン(メタ)アクリレートは、柔軟な構造を有しているため、硬化物が過度に脆くなることを回避することができる。特に成分(A2)は、極性の高いポリエステル構造を有しているため、靱性(破断強度、破断伸び)に優れた硬化物を形成することができる。
本発明の組成物は、剛直な構造を有するウレタン(メタ)アクリレートと柔軟な構造を有するウレタン(メタ)アクリレートとを配合することにより、高いヤング率と適度な靱性をバランスさせた硬化物を得ることができる。
【0014】
成分(A1)のうち、芳香族構造又は脂環式構造を有するポリオールに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、及び(A2)ポリエステルポリオールに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、芳香族構造若しくは脂環式構造を有するポリオール又はポリエステルポリオールと、ジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させることにより製造される。すなわち、ジイソシアネートのイソシアネート基を、ポリオールの水酸基及び水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基と、それぞれ反応させることにより製造される。
【0015】
この反応としては、例えば、ポリオール、ジイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを一括に仕込んで反応させる方法;ポリオール及びジイソシアネートを反応させ、次いで水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法;ジイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでポリオールを反応させる方法;ジイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでポリオールを反応させ、最後にまた水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法等が挙げられる。
【0016】
成分(A1)のうち、ジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物であって、ポリオールに由来する構造を有しないウレタン(メタ)アクリレートは、ジイソシアネートのイソシアネート基を、水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基と反応させることにより製造される。
以下、成分(A1)又は(A2)であるウレタン(メタ)アクリレートの製造に用いられるポリオール、ジイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートについて説明する。
【0017】
成分(A1)の合成に用いられる芳香族構造又は脂環式構造を有するポリオールとしては、例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ポリオール、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加ポリオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ポリオール、水添ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加ポリオール等のビスフェノール構造を有するポリオール、ハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ポリオール、ナフトハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ポリオール、アントラハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ポリオール、1,4−シクロヘキサンポリオールおよびそのアルキレンオキサイド付加ポリオール、トリシクロデカンポリオール、ペンタシクロペンタデカンポリオール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、キシレンオキシド付加ポリオール、ビスフェノールFのアルキレンオキシド付加ポリオール、1,4−シクロヘキサンポリオールのアルキレンノキシド付加ポリオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジシクロペンタジエンのジメチロール化合物、トリシクロデカンジメタノール等が挙げられる。
【0018】
これらのポリオールは、単独あるいは二種類以上を組み合わせて用いることができる。特に、ビスフェノール構造を有するポリオールが好ましく、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ポリオールが好ましい。これらのポリオールは、例えば、ユニオールDA400、DA700、DA1000、DB400(以上、日本油脂製)等の市販品として入手することができる。
【0019】
成分(A2)の合成に用いられるポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン等のアルキルポリオール、前記芳香族構造を有するポリオール若しくは前記脂環式構造を有するポリオール、又はこれらの重合体等の多価アルコールと多塩基酸を反応させて得られるポリエステルポリール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。特に、ポリカプロラクトンポリオールが好ましい。
【0020】
ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ε−カプロラクトンの重合体、又はエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンポリオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンポリオール等の2価のポリオール若しくはこれらの重合体とε−カプロラクトンとを反応させて得られるポリカプロラクトンポリオールなどが挙げられる。これらのポリオールは、プラクセル205、205AL、212、212AL、220、220AL(以上、ダイセル化学工業製)等の市販品として入手することができる。
【0021】
ジイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環構造を有するジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、2,5(または2,6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等の脂環式構造を有するジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族構造を有するジイソシアネートなどが挙げられる。これらの中では、芳香環構造を有するジイソシアネート、脂環式構造を有するジイソシアネートが好ましく、特に、2,4−トリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート等が好ましい。
【0022】
これらのジイソシアネートは、単独あるいは二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンポリオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンポリオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、下記式(1)又は(2)
【0024】
【化1】

【0025】
(式中、R1は水素原子またはメチル基を示し、nは1〜15の数を示す)
で表される(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物を使用することもできる。これら水酸基含有(メタ)アクリレートのうち、特に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0026】
これらの、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、単独であるいは二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
芳香族構造若しくは脂環式構造を有するポリオール又はポリエステルポリオールに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレートを合成する場合の、ポリオール、ジイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの使用割合は、ポリオールに含まれる水酸基1当量に対してジイソシアネートに含まれるイソシアネート基が1.1〜3当量、水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基が0.2〜1.5当量となるようにするのが好ましい。
【0028】
これらの化合物の反応においては、例えば、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ジブチル錫ジラウレート、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,6,7−トリメチル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等のウレタン化触媒を、反応物の総量100質量部に対して0.01〜1質量部用いるのが好ましい。また、反応温度は、通常10〜90℃、特に30〜80℃で行うのが好ましい。
【0029】
成分(A1)のウレタン(メタ)アクリレートは、本発明の液状硬化性樹脂組成物の全体100質量%に対して、10〜50質量%、さらに10〜45質量%、特に20〜30質量%配合されるのが、硬化物のヤング率の点で好ましい。
成分(A2)のウレタン(メタ)アクリレートは、本発明の液状硬化性樹脂組成物の全体100質量%に対して、5〜45質量%、さらに10〜40質量%、特に10〜30質量%配合されるのが、硬化物のヤング率や破断強度、破断伸び等の力学特性の点で好ましい。
【0030】
本発明においては、成分(A1)は、成分(A)ウレタン(メタ)アクリレートの全体100質量%に対して、50〜100質量%、さらに50〜80質量%、特に55〜70質量%配合されることが好ましい。この範囲内で配合することにより、高いヤング率と適度な靱性(破断強度、破断伸び)のバランスされた硬化物を得ることができる。
【0031】
本発明の成分(A3)は、ポリエステルポリオール以外の脂肪族ポリオールとジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートである。成分(A3)は、ジイソシアネートのイソシアネート基を、脂肪族ポリオールの水酸基及び水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基と、それぞれ反応させることにより製造される。
【0032】
(A3)のウレタン(メタ)アクリレートは、前記成分(A1)及び(A2)のウレタン(メタ)アクリレートの合成法におけるポリオール成分として、ポリエステルポリオール以外の脂肪族ポリオールを用いることにより、製造することができる。
【0033】
成分(A3)の合成に用いられる脂肪族ポリオールとしては、ポリエステルポリオール以外の脂肪族ポリオールであれば特に限定されず、例えばポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびその他のポリオールが挙げられる。これらのポリオールの各構造単位の重合様式には特に制限されず、ランダム重合、ブロック重合、グラフト重合のいずれであってもよい。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールあるいは二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られる脂肪族ポリエーテルポリオール等が挙げられる。上記イオン重合性環状化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン−1−オキシド、イソブテンオキシド、3,3−ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。また、上記イオン重合性環状化合物と、エチレンイミン等の環状イミン類、β−プロピオラクトン、グリコール酸ラクチド等の環状ラクトン酸、あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルポリオールを使用することもできる。上記二種以上のイオン重合性環状化合物の具体的な組み合わせとしては、例えば、テトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテン−1−オキシドとエチレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブテン−1−オキシド、エチレンオキシドの3元重合体等を挙げることができる。これらのイオン重合性環状化合物の開環共重合体はランダムに結合していてもよいし、ブロック状の結合をしていてもよい。
【0034】
これらの脂肪族ポリオールは、例えばPTMG650、PTMG1000、PTMG2000(以上、三菱化学製)、PPG−400、PPG1000、PPG2000、PPG3000、EXCENOL720、1020、2020(以上、旭硝子ウレタン製)、PEG1000、ユニセーフDC1100、DC1800(以上、日本油脂製)、PPTG2000、PPTG1000、PTG400、PTGL2000(以上、保土谷化学製)、Z−3001−4、Z−3001−5、PBG2000A、PBG2000B(以上、第一工業製薬製)等の市販品として入手することができる。また、ブテン−1−オキシドとエチレンオキシドとの共重合体であるジオールは、EO/BO500、EO/BO1000、EO/BO2000、EO/BO3000、EO/BO4000(以上、第一工業製薬製)などの市販品として入手することができる。
【0035】
また、ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリテトラヒドロフランのポリカーボネート、1,6−ヘキサンポリオールのポリカーボネート等が挙げられ、市販品としては、DN−980、981、982、983(以上、日本ポリウレタン製)、PC−8000(米国PPG製)、PC−THF−CD(BASF製)等が挙げられる。
【0036】
(A3)ポリエステルポリオール以外の脂肪族ポリオールとジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートは、本発明の液状硬化性樹脂組成物の全組成中に0〜40質量%、さらに3〜35質量%、特に3〜30質量%配合されるのが、硬化物の破断強度、破断伸び等を改善して靱性を付与する上で好ましい。
【0037】
成分(B)は、ウレタン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和基を有する化合物である。成分(B)は重合性単官能化合物および/または重合性多官能化合物を用いることができる。ここで、重合性単官能化合物とは、(B1)エチレン性不飽和基を1個有する化合物であり、重合性多官能化合物とは、(B2)エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物である。
【0038】
(B1)エチレン性不飽和基を1個有する化合物としては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラクタム、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、下記式(4)又は(5)で表される(メタ)アクリレート等の脂環式構造を有する(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、下記式(6)で表される(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン等の芳香族構造を有する(メタ)アクリレート(本願明細書では、複素芳香族構造を有する(メタ)アクリレートも芳香族構造を有する(メタ)アクリレートとして扱う。)が挙げられる。さらに、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、下記式(3)で表される化合物を挙げることができる。
【0039】
【化2】

【0040】
(式中、R2は水素原子またはメチル基を示し、R3は炭素数2〜6、好ましくは2〜4のアルキレン基を示し、R4は水素原子または炭素数1〜12、好ましくは1〜9のアルキル基を示し、rは0〜12、好ましくは1〜8の数を示す)
【0041】
【化3】

【0042】
(式中、R5は水素原子またはメチル基を示し、R6は炭素数2〜8、好ましくは2〜5のアルキレン基を示し、R7は水素原子またはメチル基を示し、pは好ましくは1〜4の数を示す)
【0043】
【化4】

【0044】
(式中、R8、R9、R10およびR11は互いに独立で、水素原子またはメチル基を示し、qは1〜5の数を示す)
【0045】
これら(B1)エチレン性不飽和基を1個有する化合物のうち、脂環式構造を有する(メタ)アクリレート、芳香族構造を有する(メタ)アクリレートが、硬化物のヤング率を高めることができるため好ましく、中でもイソボルニル(メタ)アクリレートが特に好ましい。また、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラクタムは硬化速度を向上させるため好ましい。
【0046】
これら(B1)エチレン性不飽和基を1個有する化合物の市販品としては、例えば、IBXA(大阪有機化学工業製)、アロニックスM−111、M−113、M114、M−117、TO−1210(以上、東亞合成製)等を使用することができる。
【0047】
これらの(B1)エチレン性不飽和基を1個有する化合物は、本発明の液状硬化性樹脂組成物の全組成中に10〜70質量%、さらに20〜60質量%、特に25〜40質量%配合されるのが好ましい。
【0048】
芳香族構造又は脂環式構造を有する(メタ)アクリレートは、成分(B1)の全体100質量%に対して、50質量%を超えて100質量%以下、特に55〜80質量%、さらに60〜75質量%配合されるのが好ましい。
【0049】
また、(B2)エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、1,4−ブタンポリオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテルおよび下記式(7)
【0050】
【化5】

【0051】
(式中、R12およびR13は互いに独立で、水素原子またはメチル基を示し、nは1〜100の数を示す)
で表わされる化合物等が挙げられる。
【0052】
これら(B2)エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物のうち、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0053】
これら(B2)エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の市販品としては、例えば、ユピマーUV、SA1002(以上、三菱化学製)、アロニックスM−215、M−315、M−325(以上、東亞合成製)を使用することができる。また、アローニックスTO−1210(東亞合成製)を使用することができる。
【0054】
これらの成分(B2)エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物は、本発明の液状硬化性樹脂組成物の全組成中に3〜20質量%、さらに5〜18質量%、特に8〜15質量%配合されるのが好ましい。
【0055】
成分(B)は、成分(B1)及び(B2)の合計で、本発明の液状硬化性樹脂組成物の全組成中に15〜80質量%、さらに25〜70質量%、特に30〜55質量%配合されるのが好ましい。
【0056】
本発明で用いる成分(C)は、数平均分子量3000以上のポリエステルポリオール化合物である。成分(C)を添加することにより、光ファイバ素線の最外層と隣接するインキ層等からの剥離性をさらに向上させることができる。成分(C)がポリエステルポリオールであることにより、本発明の組成物中での溶解性が良好であり、液状組成物を長期間保存しても均一な状態を保つことができる。成分(C)の分子量が3000以上であるため、インキ層への移行を抑えることができ長期にわたり良好は剥離性を保つことができる。より好ましいポリオール化合物の分子量は3000〜10000であり、さらに好ましくは4000〜8000である。
【0057】
(C)ポリエステルポリオール化合物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で求めたポリスチレン換算分子量である。
【0058】
ポリエステルポリオール化合物としては、例えば、二価アルコールと二塩基酸とを反応させて得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。上記二価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンポリオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンポリオール、1,9−ノナンポリオール、2−メチル−1,8−オクタンポリオール等が挙げられる。二塩基酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸、セバシン酸等の二塩基酸を挙げられる。市販品としては、クラレポリオールP−3010(クラレ製)等が入手できる。
【0059】
成分(C)の配合量は、最外層の剥離性及び強度や耐候性の点から、本発明の液状硬化性樹脂組成物の全組成中に1〜35質量%、さらに5〜30質量%、特に5〜25質量%であるのが好ましい。
【0060】
本発明の液状硬化性樹脂組成物には、本発明の特性を阻害しない範囲で、成分(C)ポリエステルポリオール以外のポリオール化合物を配合することができる。このようなポリオール化合物の具体例としては、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、成分(C)以外のポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0061】
本発明の液状硬化性樹脂組成物は、さらに、成分(D)として数平均分子量1,500〜35,000のシリコーン化合物を含有することができる。当該成分(D)を配合することにより、本発明の樹脂組成物を用いて形成された光ファイバ素線の最外層の隣接する層からの剥離性をさらに向上させることができる。成分(D)の平均分子量が1,500未満では、十分な剥離性向上効果が得られず、数平均分子量が35,000を超えると剥離性向上効果が不十分となる。より好ましい数平均分子量は1,500〜20,000であり、さらに1,500〜20,000が好ましく、特に3,000〜15,000が好ましい。
また、成分(D)は、エチレン性不飽和基等の重合性基を有しないことが好ましい。成分(D)がエチレン性不飽和基等の重合性基を有しないことにより、熱履歴を与えても良好な剥離性を維持することができる。
【0062】
(D)シリコーン化合物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で求めたポリスチレン換算分子量である。
【0063】
(D)シリコーン化合物としては、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、ウレタンアクリレート変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン、メチルスチリル変性シリコーン、エポキシポリエーテル変性シリコーン、アルキルアラルキルポリエーテル変性シリコーン等が挙げられ、これらのうちポリエーテル変性シリコーンが特に好ましい。ポリエーテル変性シリコーンとしては、少なくとも1個のケイ素原子に基R14−(R15O)s−R16−(ここで、R14は水酸基又は炭素数1〜10のアルコキシ基を示し、R15は炭素数2〜4のアルキレン基を示し(R15は2種以上のアルキレン基が混在していてもよい)、R16は炭素数2〜12のアルキレン基を示し、sは1〜20の数を示す)が結合しているポリジメチルシロキサン化合物が好ましい。このうちR15としては、エチレン基、プロピレン基が好ましく、特にエチレン基が好ましい。
【0064】
当該シリコーン化合物の市販品のうち、エチレン性不飽和基等の重合性基を有しないものとしては、例えば、SH28PA、SH190(東レ・ダウコーニング製、ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体)、ペインタッド19、54(東レ・ダウコーニング社、ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体)、FM0411(チッソ製、サイラプレーン)、SF8428(東レ・ダウコーニング製、ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体(側鎖OH含有))、BYK UV3510(ビックケミー・ジャパン製、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体)、DC57(東レ・ダウコーニング製、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体)等を挙げることができる。また、エチレン性不飽和基を有する当該シリコーン化合物の市販品としては、例えば、Tego Rad 2300、2200N(テゴ・ケミー製)等を挙げることができる。
【0065】
成分(D)の配合量は、最外層層の剥離性及び強度や耐候性の点から、本発明の液状硬化性樹脂組成物の全組成中に0.1〜50質量%、さらに0.5〜40質量%、特に1〜20質量%であるのが好ましい。
【0066】
さらに、本発明の液状硬化性樹脂組成物は、(E)重合開始剤を含有することができる。重合開始剤としては、熱重合開始剤または光開始剤を用いることができる。
【0067】
本発明の液状硬化性樹脂組成物が熱硬化性の場合には、通常、過酸化物、アゾ化合物等の熱重合開始剤が用いられる。具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−オキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0068】
また、本発明の液状硬化性樹脂組成物が光硬化性の場合には、光重合開始剤を用い、必要に応じて、さらに光増感剤を併用するのが好ましい。ここで、光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、4,4′−ジア
ミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォフフィンオキシド;IRGACURE184、369、651、500、907、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61;Darocure1116、1173(以上、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製);LucirinTPO(BASF製);ユベクリルP36(UCB製)等が挙げられる。
【0069】
また、光増感剤としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル;ユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB製)等が挙げられる。
【0070】
本発明の液状硬化性樹脂組成物を熱及び紫外線を併用して硬化させる場合には、前記熱重合開始剤と光重合開始剤を併用することもできる。重合開始剤は、全組成中に0.1〜10質量%、特に0.3〜7質量%配合するのが好ましい。
【0071】
本発明の液状硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の特性を損なわない範囲で各種添加剤、例えば、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を配合することができる。
【0072】
本発明の液状硬化性樹脂組成物は、1〜20Pa・sの粘度を示すのが好ましく、さらに1〜10Pa・sが好ましい。
【0073】
なお、本発明の液状硬化性樹脂組成物は、熱および/または放射線によって硬化されるが、ここで放射線とは、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等をいう。
【0074】
本発明の液状硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる被膜は、500〜2,000MPaのヤング率を示すのが好ましく、さらに600〜1,500MPaが好ましい。破断伸びは、5〜50%を示すのが好ましく、さらに15〜40%が好ましい。破断強度は、1〜70MPaを示すのが好ましく、さらに1〜50MPaが好ましい。
【0075】
本発明の液状硬化性樹脂組成物は、熱および/または放射線によって硬化させることにより、光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物として好適である。
最外被覆層(アップジャケット層)を形成させるには、膜厚100〜400μmに被覆するのが好ましい。
【実施例】
【0076】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれら実施例に限定されるものではない。
【0077】
[製造例1:(A1)ウレタン(メタ)アクリレートの合成1]
攪拌機を備えた反応容器に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.018g、2,4−トリレンジイソシアネート27.1g、イソボニルアクリレート23.1g、ジブチル錫ジラウレート0.061gを添加した後、攪拌しながら、15℃まで冷却した。ヒドロキシエチルアクリレートを液温度が20℃以下になるように制御しながら18.0g滴下した後、湯浴にして40℃にし1時間攪拌した。その後、液温を20℃に冷却し、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジオール(日本油脂製,DA400)を31.8g添加した。発熱を確認した後に、65℃で3時間攪拌させ、残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。得られたウレタン(メタ)アクリレートをUA1−1とする。
得られたウレタン(メタ)アクリレートは、ビスフェノールA構造を有するジオールの両末端に、2,4−トリレンジイソシアネートを介して2−ヒドロキシエチルアクリレートが結合した構造を有している。
【0078】
[製造例2:(A1)ウレタン(メタ)アクリレートの合成2]
攪拌機を備えた反応容器に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.024g、2,4−トリレンジイソシアネート42.8g、ジブチル錫ジラウレート0.080gを加え、攪拌しながら、15℃まで冷却した。ヒドロキシエチルアクリレートを液温度が20℃以下になるように制御しながら57.1g滴下した後、湯浴40℃にして1時間攪拌した。その後、温度上昇が見られないことを確認した後、65℃で3時間攪拌させ、残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。得られたウレタン(メタ)アクリレートをUA1−2とする。
得られたウレタン(メタ)アクリレートは、2,4−トリレンジイソシアネートの両端に2−ヒドロキシエチルアクリレートが結合した構造を有している。
【0079】
[製造例3:(A2)ウレタン(メタ)アクリレートの合成1]
攪拌機を備えた反応容器に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.054g、2,4−トリレンジイソシアネート22.1g、ジブチル錫ジラウレート0.016gを添加した後、攪拌しながら、15℃まで冷却した。ヒドロキシエチルアクリレートを液温度が20℃以下になるように制御しながら14.8g滴下した後、湯浴にして40℃にして1時間攪拌した。その後、液温を20℃に冷却し、プラクセル205(ダイセル化学製)を30.6g添加した。発熱を確認した後に、65℃で3時間攪拌し、残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。得られたウレタン(メタ)アクリレートをUA2とする。
得られたウレタン(メタ)アクリレートは、ポリエステルポリオール構造を有するジオールの両末端に、2,4−トリレンジイソシアネートを介して2−ヒドロキシエチルアクリレートが結合した構造を有している。
【0080】
[製造例4:(A3)ウレタン(メタ)アクリレートの合成1]
攪拌機を備えた反応容器に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.024g、2,4−トリレンジイソシアネート28.3g、数平均分子量が650であるポリテトラエチレングリコール52.8gを加え、液温が15℃になるまで冷却した。ジブチル錫ジラウレート0.080gを添加した後、液温が40℃以上にならないように1時間攪拌した。これらを撹拌しながら液温度が15℃以下になるまで氷冷した。その後、ヒドロキシエチルアクリレートを液温度が20℃以下になるように制御しながら18.8g滴下した後、さらに、1時間撹拌して反応させた。液温度70〜75℃にて3時間撹拌を継続させ、残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。得られたウレタン(メタ)アクリレートをUA3−1とする。
得られたウレタン(メタ)アクリレートは、プロピレングリコールの両末端に、2,4−トリレンジイソシアネートを介して2−ヒドロキシエチルアクリレートが結合した構造を有している。
【0081】
[製造例5:(A3)ウレタン(メタ)アクリレートの合成2]
攪拌機を備えた反応容器に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.24g、2,4−トリレンジイソシアネート271g、数平均分子量が700であるポリプロピレングリコール546gを加え、液温が15℃になるまで冷却した。ジブチル錫ジラウレート0.80gを添加した後、液温が40℃以上にならないように1時間攪拌した。これらを撹拌しながら液温度が15℃以下になるまで氷冷した。その後、ヒドロキシエチルアクリレートを液温度が20℃以下になるように制御しながら181g滴下した後、さらに、1時間撹拌して反応させた。液温度70〜75℃にて3時間撹拌を継続させ、残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。得られたウレタン(メタ)アクリレートを、UA3−2とする。
得られたウレタン(メタ)アクリレートは、プロピレングリコールの両末端に、2,4−トリレンジイソシアネートを介して2−ヒドロキシエチルアクリレートが結合した構造を有している。
【0082】
実施例1〜3、比較例1〜4
表1に示す組成の各成分を、攪拌機を備えた反応容器に仕込み、液温度を50℃に制御しながら1時間攪拌し、液状硬化性樹脂組成物を得た。
【0083】
試験例
前記実施例及び比較例で得た液状硬化性樹脂組成物を、以下のような方法で硬化させて試験片を作製し、下記の各評価を行った。結果を表1に併せて示す。
【0084】
1.組成物の安定性:
各液状硬化性樹脂組成物を調製直後、及び温度5℃の環境下で1ヶ月間静置した後に、その外観を目視により観察した。組成物が透明であった場合を「○」、濁りが見られた場合や相分離が見られた場合を「×」とした。
【0085】
2.粘度:
液状硬化性樹脂組成物を25℃の恒温水槽で30分間放置した後、B型粘度計を用いて粘度を測定した。
【0086】
3.ヤング率:
250μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状硬化性樹脂組成物を塗布し、これを空気下で1J/cm2のエネルギーの紫外線で照射して硬化させ、ヤング率測定用フィルムを得た。このフィルムから、延伸部が幅6mm、長さ25mmとなるよう短冊状サンプルを作成し、温度23℃、湿度50%で引っ張り試験を行った。引っ張り速度は1mm/minで2.5%歪みでの抗張力からヤング率を求めた。
【0087】
4.破断強度及び破断伸び:
引張試験器(島津製作所社製、AGS−50G)を用い、試験片の破断強度及び破断伸びを下記測定条件にて測定した。
引張速度 :50mm/分
標線間距離(測定距離):25mm
測定温度 :23℃
相対湿度 :50%RH
【0088】
5.インキ層との密着性:
ガラス上にセカンダリ材(JSR社製、デソライト)を厚さ130μmで塗布し、3.5kWメタルハライドランプ(オーク社製、SMX−3500/F−OS)を用いて空気雰囲気下で0.1J/cm2の紫外線を照射し、硬化フィルムを得た。その後、UVインキ(DSM社製、751インキ)をスピンコーターにより塗布し、3.5kWメタルハライドランプ(オーク社製、SMX−3500/F−OS)を用いて、1%酸素濃度又は5%酸素濃度下で0.05J/cm2の紫外線を照射し、厚さ約10μm厚でセカンダリ材の上に硬化させた。この硬化フィルム上に、各液状硬化性樹脂組成物を同じくスピンコーターで塗布(2000rpm、20秒)し、3.5kWメタルハライドランプ(オーク社製、SMX−3500/F−OS)を用いて空気雰囲気下で0.5J/cm2の紫外線を照射し、多層硬化フィルムを得た。1cm幅に短冊を切り出し、JIS K6854に準拠し、90度剥離試験を実施した。UVインキから本発明による樹脂を剥がすことによって密着力を測定した。引っ張り速度は、5mm/minとした。
【0089】
【表1】

【0090】
表1において、
Irgacure184;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)。
ルシリンTPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ製)。
Irganox1035:2,2′−チオジエチルビス[3−(3,5−ジ−tert
−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ製)。
Irganox245:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](チバ・スペシャリティー・ケミカルズ製)。
SH28PA:ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体(東レ・ダウコーニング製)。
ポリエステルポリオール(数平均分子量3000):ポリ[(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)−alt−(アジピン酸)];クラレポリオールP3010(クラレ製)。
ポリエステルポリオール(数平均分子量2000):ポリ[(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)−alt−(アジピン酸)];クラレポリオールP2010(クラレ製)。
ポリエーテルポリオール(数平均分子量4000):ポリプロピレングリコール;PPG2000(旭硝子ウレタン製)
【0091】
表1から明らかなように、各実施例に示された本発明の樹脂組成物はいずれも、安定性に優れ、各組成物から形成された硬化物は、ヤング率が高く破断伸びが小さく、しかもインキ層との密着性が低く良好である。これに対して、剛直な構造を有するウレタン(メタ)アクリレートである成分(A1)が配合されず柔軟な構造の成分(A3)のみからなるウレタン(メタ)アクリレートを用いて形成された比較例1では、硬化物のヤング率が低い。成分(C)を含まない比較例2では、インキ層との密着力が過大である。成分(C)に替えて数平均分子量2,000のポリエステルポリオールを配合した比較例3では、硬化物のヤング率が低い。成分(C)に替えて数平均分子量4,000のポリエーテルポリオールを配合した比較例4では、ポリエーテルポリオールの相溶性が成分(C)より劣るため、液状樹脂組成物の保存安定性が低下した。
従って、本発明の樹脂組成物は、アップジャケット層の光ファイバ素線の最外層被覆用組成物として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A1)、(A2)、(B)及び(C):
(A1)芳香族構造又は脂環式構造を有するポリオールに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、及びジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物であってポリオールに由来する構造を有しないウレタン(メタ)アクリレートから選択される1種以上のウレタン(メタ)アクリレート、
(A2)ポリエステルポリオールに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、(B)ウレタン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和基を有する化合物、
(C)数平均分子量3000以上のポリエステルポリオール化合物
を含有する光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
更に、(A3)ポリエステルポリオール以外の脂肪族ポリオールとジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートを含有する、請求項1に記載の光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
成分(A1)、(A2)及び(A3)の合計含有量の50〜100質量%が、成分(A1)である、請求項2に記載の光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
成分(A1)がビスフェノール構造を有するポリオールに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレートを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
成分(B)が、成分(B1)エチレン性不飽和基を1個有する化合物を含有し、芳香族構造又は脂環式構造を有する(メタ)アクリレートを、成分(B1)の全体100質量%に対して、50質量%超えて含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
更に、(D)数平均分子量が1,500〜35,000のシリコーン化合物を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の液状硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる光ファイバ素線の最外被覆層。
【請求項8】
ヤング率が500〜2,000MPaである請求項7記載の光ファイバ素線の最外被覆層。
【請求項9】
請求項7又は8記載の最外被覆層を有する光ファイバ素線。

【公開番号】特開2011−140568(P2011−140568A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2140(P2010−2140)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】