説明

液状粘着剤組成物、この組成物が封入された光学部材及びこの光学部材の製造方法

【課題】印刷インキ層と透明基材の表面との間で生じる段差の追従性を高め、リワーク性にも優れ、かつ、真空状態での貼り合わせにも対応可能な液状粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明の液状粘着剤組成物は、エネルギー線重合型のウレタン(メタ)アクリレートと、エネルギー線重合開始剤と、架橋性置換基を有し、質量平均分子量(Mw)が400から5000であるシリコーンオイルとを含有し、25℃における粘度が1000mPa・s以上4000mPa・s以下である。また、本発明の光学部材1は、上記液状粘着剤組成物11が透明前面基板12と透明導電性膜13との間に配置されている枠状の周縁部14内に封入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルや液晶ディスプレイ、電子ペーパー等の画像表示装置に用いる光学部材に用いられる液状粘着剤組成物と、この組成物が封入された光学部材と、この光学部材の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タッチパネルや液晶ディスプレイ、電子ペーパー等の画像表示装置に用いる光学部材が普及している。この光学部材は、ガラス等の透明基材と、酸化インジウムスズ(以下「ITO」ともいう)等の透明導電性膜とを備え、これら透明基材及び透明導電性膜は、粘着剤組成物からなる粘着剤層を介して積層されている。
【0003】
光学部材の視認性及び耐衝撃性を高めるため、上記粘着剤組成物として、エネルギー線重合型のウレタン(メタ)アクリレート又はエポキシアクリレートと、エネルギー線重合開始剤とを含有するものが用いられている。しかし、近年では、携帯電話、タッチパネルに意匠性を付与するため、ガラス等の透明基材の周縁部には印刷インキ層が形成されている。この印刷インキ層の存在により、透明基材/粘着剤層/透明導電性膜で構成された光学部材に紫外光を照射したとしても、印刷インキ層に接する領域では紫外光が透過しないため、未硬化となり得る。
【0004】
この課題を解決するため、一分子中に加水分解性シリル基を平均して少なくとも一個有する化合物を粘着剤組成物に配合することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。これによると、紫外光によって速硬化可能で、かつ、紫外光の当らない部分についても未硬化になることを回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−248347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、印刷インキ層と透明基材の表面との間では段差が生じており、粘着剤組成物に対し、この段差に追従する段差追従性も要求される。そのため、粘着剤組成物の粘度をさらに下げることが求められる。また、特に透明導電性膜は高価であるため、リワーク性をいっそう高めることが求められる。また、粘着剤層を形成したときに層内に気泡が入ることを防止するため、透明基材と透明導電性膜との真空状態での貼り合わせを可能にすることが求められる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、印刷インキ層と透明基材の表面との間で生じる段差の追従性を高め、リワーク性にも優れ、かつ、真空状態での貼り合わせにも対応可能な液状粘着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねたところ、エネルギー線重合型のウレタン(メタ)アクリレートと、エネルギー線重合開始剤と、架橋性置換基を有し、質量平均分子量(Mw)が400から5000であるシリコーンオイルとを含有し、25℃における粘度が1000mPa・s以上4000mPa・s以下である液状粘着剤組成物を用いることで、印刷インキ層と透明基材の表面との間で生じる段差の追従性、リワーク性のいずれにも優れ、かつ、真空状態での貼り合わせにも対応可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1)本発明は、エネルギー線重合型のウレタン(メタ)アクリレートと、エネルギー線重合開始剤と、架橋性置換基を有し、質量平均分子量(Mw)が400から5000であるシリコーンオイルとを含有し、25℃における粘度が1000mPa・s以上4000mPa・s以下である液状粘着剤組成物である。
【0010】
(2)また、本発明は、前記架橋性置換基がアルコキシ基である(1)に記載の液状粘着剤組成物である。
【0011】
(3)また、本発明は、前記ウレタン(メタ)アクリレート100質量部に対して、前記シリコーンオイルを10質量部以上100質量部以下含有する(1)又は(2)に記載の液状粘着剤組成物である。
【0012】
(4)また、本発明は、(1)から(3)いずれかに記載の液状粘着剤組成物が透明基材と、他の基材との間に配置されている枠状の周縁部内に封入されている光学部材である。
【0013】
(5)また、本発明は、前記透明基材と他の基材との組み合わせが透明前面基板と透明導電性膜であるか、又は透明導電性膜と液晶基板である(4)に記載の光学部材である。
【0014】
(6)また、本発明は、タッチパネルに用いられる(4)又は(5)に記載の光学部材である。
【0015】
(7)また、本発明は、透明基材又は他の基材から選択される一方の第1基材上に(1)から(3)いずれかに記載の液状粘着剤組成物を塗工する塗工工程と、前記液状粘着剤組成物を介して、前記透明基材又は前記他の基材から選択される他方の第2基材を貼り合わせる貼合工程と、前記第2基材の上方又は前記液状粘着剤組成物の側方からエネルギー線を照射し、前記第1基材上の周縁に塗工された液状粘着剤組成物が硬化し、他の領域に塗工された液状粘着剤組成物が未硬化である仮硬化の状態にする仮硬化工程と、を備える光学部材の製造方法である。
【0016】
(8)また、本発明は、前記貼合工程を減圧下において行う、(7)に記載の光学部材の製造方法である。
【0017】
(9)また、本発明は、仮硬化後の前記液状粘着剤組成物に対して前記透明基材側からエネルギー線をさらに照射し、前記液状粘着剤組成物を硬化させる(7)又は(8)に記載の光学部材の製造方法である。
【0018】
(10)また、本発明は、さらに、湿分及び/又は熱による前記液状粘着剤組成物の硬化を行う(9)に記載の光学部材の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、印刷インキ層と透明基材の表面との間で生じる段差の追従性を高め、リワーク性にも優れ、かつ、真空状態での貼り合わせにも対応可能な液状粘着剤組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】透明基材と他の基材との組み合わせが透明前面基板と透明導電性膜との組み合わせである場合の本発明に係る光学部材の概略平面図である。
【図2】図1におけるA−A’断面からみた概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0022】
<液状粘着剤組成物>
本発明の液状粘着剤組成物は、エネルギー線重合型のウレタン(メタ)アクリレートと、エネルギー線重合開始剤と、架橋性置換基を有するシリコーンオイルとを含有する。
【0023】
[エネルギー線重合型のウレタン(メタ)アクリレート]
ウレタン(メタ)アクリレートは、エネルギー線の照射により重合し得るものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、光ラジカル重合性、光カチオン重合性、光アニオン重合性等が挙げられる。これらの中でも、光ラジカル重合性オリゴマーが好ましい。硬化速度が速く、また、多種多様な化合物から選択することができ、さらには、硬化前の粘着性や硬化後の剥離性等の物性を容易に所望のものに制御することができるからである。
【0024】
ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量(Mw)は、特に限定されるものではないが、減圧下において2種の基材(例えば、透明基材と透明導電性膜)を貼り合わせる用途で液状粘着剤組成物を用いる場合には、10000以上であることが好ましい。質量平均分子量(Mw)が10000未満であると、減圧下においてウレタン(メタ)アクリレートが揮発し、真空状態での貼り合わせに対応できない可能性がある。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際の、ポリスチレン換算の値である。
【0025】
エネルギー線としては、例えば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波のほか、電子線、プロトン線、中性子線等が挙げられる。硬化速度、照射装置の入手容易さ、価格等の観点において、紫外線照射による硬化が好ましい。
【0026】
上記粘着剤組成物の一例として、ケーエスエム社製のT−100,110,470,1000等が挙げられる。
【0027】
[エネルギー線重合開始剤]
本発明の粘着剤組成物は、エネルギー線重合開始剤を含有する。エネルギー線重合開始剤を含有することで、上記ウレタン(メタ)アクリレートの感応性を増進させることができるので、エネルギー線による重合硬化時間やエネルギー線照射量の低減が可能となる。
【0028】
重合開始剤の含有量は、例えば、ラジカル連鎖反応が開始し、進行する量であれば、特に限定されるものではない。一般には、市販の分光光度計を用いて測定した重合開始剤の極大吸収波長における吸光度が0.4〜0.5の範囲内となる量の重合開始剤を配合する。
【0029】
重合開始剤の一例として、TPO,IRGACURE184(いずれもBASFジャパン社製)等が挙げられる。
【0030】
[架橋性置換基を有するシリコーンオイル]
本発明の粘着剤組成物は、シリコーンオイルを含有する。このシリコーンオイルは、湿気硬化型のオリゴマーとして用いられる。そのため、シリコーンオイルは、架橋性置換基を有する。架橋性置換基を有しないと、湿気が加えられても硬化せず、透明基材の周縁部に形成された印刷インキ層に接する領域では、エネルギー線が透過せず、未硬化となり得る点で好ましくない。
【0031】
架橋性置換基は、特に限定されるものではなく、例えば、メトキシ基、エトキシ基等に例示されるアルコキシ基が挙げられる。
【0032】
ところで、湿気硬化型の物質として、架橋性置換基を有するシリコーンオイルのほか、アクリルモノマーをはじめとした単官能モノマーが知られている。しかし、単官能モノマーを用いると、減圧下において2種の基材を貼り合わせる際に単官能モノマーが揮発し、真空状態での貼り合わせに対応できない可能性があるため、好ましくない。この観点から、シリコーンオイルの質量平均分子量(Mw)の上限は、5000以下であることが好ましい。質量平均分子量(Mw)が5000を超えると、液状粘着剤組成物の粘度が4000mPa・sを超え、適度な段差追従性及び適度なリワーク性を提供できない可能性があるため、好ましくない。シリコーンオイルの質量平均分子量(Mw)の下限は、特に限定されるものではないが、減圧下において2種の基材(例えば、透明基材と透明導電性膜)を貼り合わせる用途で液状粘着剤組成物を用いる場合には、400以上であることが好ましい。質量平均分子量(Mw)が400未満であると、減圧下において2種の基材を貼り合わせる際にシリコーンオイルが揮発し、真空状態での貼り合わせに対応できない可能性がある。
【0033】
シリコーンオイルは、ウレタン(メタ)アクリレート100質量部に対して、10質量部以上100質量部以下含有することが好ましい。10質量部未満であると、硬化不足であるため、好ましくない。100質量部を超えると、粘着性が劣るため、好ましくない。
【0034】
好ましいアルコキシ基含有有機シラン化合物として、具体的には、商品名、DC3074、DC3037、SR2402(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、商品名、KR9218、KR−213、KR510、X40−9227、X40−9247、KR500、KR400、X40−9225、X40−9246、X40−9250(以上、信越化学工業社製)等の市販品が挙げられる。
【0035】
本発明の粘着剤組成物には、その他、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、シランカップリング剤、粘着付与剤、金属キレート剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、着色剤、耐電防止剤、防腐剤、消泡剤、ぬれ性調整剤、可塑剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0036】
[粘度]
上記液状粘着剤組成物の25℃における粘度の上限は、4000以下であることが好ましい。粘度が4000mPa・sを超えると、適度な段差追従性及び適度なリワーク性を提供できない可能性があるため、好ましくない。液状粘着剤組成物の25℃における粘度の下限は、特に限定されるものではないが、減圧下において2種の基材(例えば、透明基材と透明導電性膜)を貼り合わせる用途で液状粘着剤組成物を用いる場合には、1000mPa・s以上であることが好適である。粘度が1000mPa・s未満であると、上記ウレタン(メタ)アクリレート及び/又は上記シリコーンオイルの質量平均分子量(Mw)が小さ過ぎると推定され、その結果、減圧下において2種の基材を貼り合わせる際に上記ウレタン(メタ)アクリレート及び/又は上記シリコーンオイルが揮発し、真空状態での貼り合わせに対応できない可能性がある。
【0037】
<液状粘着剤組成物の製造方法>
本発明の液状粘着剤組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、上記ウレタン(メタ)アクリレートと、上記エネルギー線重合開始剤と、上記シリコーンオイルと、必要に応じて各種添加剤とを有機溶剤に溶解又は分散させることにより製造できる。有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジメチルアセトアミド、これらの混合溶液等を好適に使用することができる。
【0038】
<光学部材>
本発明の光学部材は、上記液状粘着剤組成物が透明基材と他の基材との間に封入されたものである。そして、透明基材と他の基材との組み合わせは、透明前面基板と透明導電性膜であるか、又は透明導電性膜と液晶基板である。また、上記液状粘着剤組成物を硬化させた硬化物は、適度な粘弾性を有することから、本発明の光学部材は、特にタッチパネルに用いることが好適である。以下では、透明基材と他の基材との組み合わせが透明前面基板と透明導電性膜との組み合わせである場合について説明するが、透明導電性膜と液晶基板との組み合わせにすることもできる。
【0039】
図1は、透明基材と他の基材との組み合わせが透明前面基板と透明導電性膜との組み合わせである場合の光学部材1の概略平面図を示す。図2は、図1におけるA−A’断面からみた概略断面図である。
【0040】
透明光学部材1において、上記した液状粘着剤組成物11は、透明前面基板12と透明導電性膜13との間に封入されている。その際、液状粘着剤組成物11は、透明前面基板12と透明導電性膜13との間に配置されている枠状の周縁部14内に封入されている。硬化物14は、上記液状粘着剤組成物がエネルギー線によって硬化された硬化物であり、透明前面基板12又は透明導電性膜13から選択される一方の第1基材上の周縁に形成されている。周縁部14を設けることで、長時間にわたって高いリワーク性をできるだけ維持できるとともに、周縁部14において、透明前面基板12と透明導電性膜13とが貼合されていることから、周縁部14内が液状であっても透明前面基板12と透明導電性膜13とが剥離することを防止できる。
【0041】
[透明前面基板12]
透明前面基板12は、透明光学部材1の最外層に配置される。この透明前面基板12上の周縁部には、印刷インキ層15が形成されている。透明前面基板12は、画像表示装置の表面に用いられるものであればどのようなものであってもよく、ガラスであってもよいし、透明フィルムであってもよい。
【0042】
[透明導電性膜13]
透明導電性膜13は、フィルム基材13aと、このフィルム基材13a上に形成される金属酸化物層13bとを有する。
【0043】
フィルム基材13aは、ポリエステルフィルム等の基材フィルム上にITO膜や酸化亜鉛(AZO:Al−Zn−O)膜等、導電性を有する膜を形成したものであればどのようなものであってもよい。フィルム基材13aの厚さは、25μmから250μmであることが好適である。25μm未満であると、薄膜であるために加工適性が悪く、かつ耐久性も不十分であるため、好ましくない。250μmを超えると、費用面で好ましくない上、厚膜であるために光線透過率が低下し、光学部材として好ましくない。
【0044】
金属酸化物層13bは、電極として形成される。金属酸化物として、ZnO、TiO、CeO、Sb、SnO、Y、La、ZrO、Al、Nb等が挙げられるが、この限りではない。金属酸化物層13bの膜厚は10〜200nmであることが好ましい。10nm未満であると、層形成時に塗布ムラ等から電極として抜け部分が生じるため、適切な集電効果が得られない可能性がある点で、好ましくない。200nmを超えると、コストが嵩む点で好ましくない。
【0045】
金属酸化物層13b上の一部には、集電のための金属電極16が形成されている。金属電極16は、イオン化傾向が異なる2種類の金属の電極であれば、どのようなものであってもよく、正極であれば、アルミニウム電極が広く用いられ、負極であれば、アルミニウムよりもイオン化傾向が低い銅電極が広く用いられる。
【0046】
印刷インキ層15と金属電極16とは、透明前面基板12の表面からみて周縁部の略同じ位置に形成されることが好適である。これにより、金属酸化物層13b上に形成される金属電極16を隠すことができ、光学部材1やこの光学部材1を用いた情報端末機器の意匠性が高まる。
【0047】
[液状粘着剤組成物11からなる粘着剤層の厚さ]
【0048】
液状粘着剤組成物11からなる粘着剤層の厚さは、50μm以上300μm以下であることが好適である。厚さが50μm未満であると、適度な段差追従性を提供できない可能性があるため、好ましくない。一方、厚さが300μmを超えると、光線透過率等の光学特性に悪影響を及ぼす場合があり、好ましくない。
【0049】
[液晶基板]
先に述べたとおり、図1及び図2では、透明基材と他の基材との組み合わせが透明前面基板12と透明導電性膜13との組み合わせである場合について説明しているが、透明導電性膜13と液晶基板(図示せず)との組み合わせにすることもできる。液晶基板は、従来用いられるものであればどのようなものであってもよい。
【0050】
<光学部材1の製造方法>
本発明の光学部材1は次の方法によって製造される。ここでは、土手部(図示せず)を設ける場合について説明するが、土手部は、必須の構成ではない。
【0051】
まず、透明前面基板12又は透明導電性膜13から選択される一方の第1基材上に、枠状の土手部を形成する。この工程では、まず、第1基材上の周縁に上記液状粘着剤組成物を塗工する。その後、上記液状粘着剤組成物の上方側から液状粘着剤組成物に対してエネルギー線を照射し、液状粘着剤組成物を硬化させる。
【0052】
エネルギー線としては、200〜450nmの波長域の光が好ましく、300〜450nmの波長域の光がより好ましい。光源24は、特に限定されるものではなく、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、炭素アーク灯、水銀蒸気アーク、蛍光ランプ、アルゴングローランプ、ハロゲンランプ、白熱ランプ、低圧水銀灯、フラッシュUVランプ、ディープUVランプ、キセノンランプ、タングステンフィラメントランプ、太陽光等が挙げられる。これらの光源24を用い、積算光量が0.5〜6J/cm、好ましくは1〜6J/cmの範囲となるように光を照射することにより、液状粘着剤組成物を硬化させることができる。積算光量が0.5J/cm未満であると、液状粘着剤組成物の硬化が不十分となるおそれがあり、6J/cmを超えると、第1基材及び粘着剤の変形、劣化のおそれがあるため、好ましくない。
【0053】
続いて、マルチノズルから液状粘着剤組成物11を上記第1基材上の土手部内に面状に液吐出してレベリングさせる。続いて、土手部及び液状粘着剤組成物11を介して、第1基材と、透明前面基板12又は透明導電性膜13から選択される他方の第2基材を貼り合わせる。
【0054】
この貼り合わせは、大気圧下で行ってもよいし、液状粘着剤組成物11の内部に気泡が入り込むことを防止するため、50Pa以下の減圧下で行ってもよい。減圧下で行う場合、第1基材と、枠状の土手部及びこの土手部内に液吐出された液状粘着剤組成物11とで構成される積層体を減圧下に移し、この減圧下において、土手部及び液状粘着剤組成物11を介して、透明前面基板12又は透明導電性膜13から選択される他方の第2基材を貼り合わせる。
【0055】
第2基材を貼り合わせた後、光学部材1の上方又は側方から液状粘着剤組成物に対してエネルギー線を照射し、液状粘着剤組成物を仮硬化させる。ここでは、光学部材1の周縁だけが硬化して周縁部14を形成するようにし、光学部材1の中央では未硬化の状態を維持する。
【0056】
本発明では、上記工程までで留めた形態において、他の加工業者への流通が可能である。本発明によると、長時間にわたって高いリワーク性をできるだけ維持できるとともに、周縁部14において、透明前面基板12と透明導電性膜13とを貼合していることから、周縁部14内が液状であっても透明前面基板12と透明導電性膜13とが剥離することを防止できる。
【0057】
最終的な加工の段階では、未硬化の液状粘着剤組成物11に対して、透明前面基板12側からエネルギー線を照射し、未硬化の液状粘着剤組成物を硬化させる。そしてさらに、湿分及び/又は熱による液状粘着剤組成物11の硬化を行う。エネルギー線の照射による硬化だけでなく、湿分及び/又は熱による硬化も行うことで、印刷インキ層15に接する領域での液状粘着剤組成物11の未硬化を防止できる。
【0058】
なお、本製造方法においても、透明基材と他の基材との組み合わせが透明前面基板12と透明導電性膜13との組み合わせである場合について説明したが、上記組み合わせは、透明導電性膜と液晶基板との組み合わせにすることもできる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
【表1】

【0061】
<実施例1>
エネルギー線重合型のウレタンアクリレート(商品名:T−100,ケーエスエム社製)60質量部と、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(商品名:F−512M,質量平均分子量(Mw):262,日立化成工業社製)10.6質量部と、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(商品名:HOP,質量平均分子量(Mw):130,共栄社化学社製)3.5質量部と、紫外線重合開始剤である2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィン−オキサイド(商品名:TPO,質量平均分子量(Mw):348.37,BASF社製)0.2質量部及び1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名:IRGACURE 184,質量平均分子量(Mw):204.26,BASF社製)1.4質量部と、シリコーンメトキシオリゴマー(商品名:KR−213,質量平均分子量(Mw):約440,固形分:100%,粘度:18mPa・s,信越化学工業社製)24質量部と、酸化防止剤である4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール(商品名:IRGASNOX 1520L,質量平均分子量(Mw):425,BASF社製)0.1質量部とを溶解させ、実施例1に係る液状粘着剤組成物を得た。液状粘着剤組成物の色は、透明であった。
【0062】
<実施例2>
ウレタンアクリレート「T−100」の代わりにウレタンアクリレート「T−110」(商品名:T−110,ケーエスエム社製)60質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて実施例2の液状粘着剤組成物を得た。液状粘着剤組成物の色は、透明であった。
【0063】
<実施例3>
ウレタンアクリレート「T−100」の代わりにウレタンアクリレート「T−110」68質量部を用い、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート5.4質量部を用い、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート2質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて実施例3の液状粘着剤組成物を得た。液状粘着剤組成物の色は、透明であった。
【0064】
<実施例4>
ウレタンアクリレート「T−100」の代わりにウレタンアクリレート「T−470」(商品名:T−470,ケーエスエム社製)60質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて実施例4の液状粘着剤組成物を得た。液状粘着剤組成物の色は、透明であった。
【0065】
<実施例5>
ウレタンアクリレート「T−100」の代わりにウレタンアクリレート「T−1000」(商品名:T−1000,ケーエスエム社製)60質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて実施例5の液状粘着剤組成物を得た。液状粘着剤組成物の色は、透明であった。
【0066】
<比較例1>
ウレタンアクリレート「T−100」を12.3質量部用い、シリコーンメトキシオリゴマーの代わりにブタジエン重合体(商品名:POLYVEST 110,質量平均分子量(Mw):2600,EVONIK社製)24.6質量部を用いるとともに、粘着付与剤として新たに水添テルペン系樹脂(商品名:クリアロンP−85,ヤスハラケミカル社製)5.3質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて比較例1の液状粘着剤組成物を得た。液状粘着剤組成物は、白く濁っていたため、比較例1の光学部材を得るまでもなく、比較例1の液状粘着剤組成物が好ましくないことが確認された。
【0067】
<比較例2>
ウレタンアクリレート「T−100」の代わりにイソプレン樹脂(商品名:UC203,無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物,質量平均分子量(Mw):35,000,クラレ社製)を24.6質量部用い、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートを10.5質量部用い、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートを3.5質量部用い、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィン−オキサイドを0.2質量部用い、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンを1.4質量部用い、シリコーンメトキシオリゴマーの代わりにブタジエン重合体を49.2質量部を用い、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾールを0.01質量部用いるとともに、粘着付与剤として新たに水添テルペン系樹脂10.5質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて比較例2の液状粘着剤組成物を得た。液状粘着剤組成物の色は、透明であった。
【0068】
<粘度の測定>
実施例及び比較例に係る液状粘着剤組成物の25℃における粘度を測定した。粘度の測定は、Anton Paar社製の粘弾性測定装置「MCR301」を用いて行った。粘度が1000mPa・s以上4000mPa・s以下である場合を“○”とし、そうでない場合を“×”とした。結果を表2に示す。
【0069】
<減圧残存率の評価>
実施例及び比較例に係る液状粘着剤組成物を100×100mmのガラス基板上にアプリケータにより膜厚100μmで全面塗工して積層体を形成し、減圧前の重量W1を測定した。その後、この積層体を50Paに減圧し、減圧後の重量W2を測定した。そして、W2/W1×100を減圧残存率とした。90%以上100%以下である場合を“○”とし、そうでない場合を“×”とした。結果を表2に示す。
【0070】
<全光線透過度及びヘイズの評価>
実施例及び比較例に係る液状粘着剤組成物を100×100mmのガラス基板上にアプリケータにより膜厚100μmで全面塗工した後、液状粘着剤組成物に対して紫外線をさらに照射し、液状粘着剤組成物を硬化させた。このとき、紫外線の波長は365nm、積算照射量は3000,4000,5000mJ/cmの3種類であった。
そして、硬化後の積層体を温度80℃,湿度90%RHの高温多湿条件下にて3日間放置した。そして、日本電色社製のヘーズメーター「NDH2000」を用い、放置前、放置後における、ガラス基板込みの全光線透過度及びヘイズを測定した。全光線透過度は、85%以上である場合を“○”とし、そうでない場合を“×”とした。ヘイズは、1%以下である場合を“○”とし、そうでない場合を“×”とした。結果を表2に示す。
【0071】
<硬化収縮率の評価>
実施例及び比較例に係る液状粘着剤組成物を100×100mmのガラス基板上にアプリケータにより膜厚100μmで全面塗工した後、液状粘着剤組成物に対して紫外線をさらに照射し、液状粘着剤組成物を硬化させた。そして、硬化前後の粘着剤組成物の比重を測定した。紫外線の波長は365nm、積算照射量は3000,4000,5000mJ/cmの3種類であった。また、比重の測定は、島津製作所社製の分析天秤「AUX220」を用いて行った。
硬化収縮率の評価は、(硬化後の粘着剤組成物の比重−硬化前の粘着剤組成物の比重)/(硬化後の粘着剤組成物の比重)×100/3を計算することによって行った。硬化収縮率は、5%以下である場合を“○”とし、そうでない場合を“×”とした。結果を表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
エネルギー線重合型のウレタン(メタ)アクリレートと、エネルギー線重合開始剤と、架橋性置換基を有し、質量平均分子量(Mw)が400から5000であるシリコーンオイルとを含有する液状粘着剤組成物は、25℃における粘度が1000mPa・s以上4000mPa・s以下であり、印刷インキ層と透明基材の表面との間で生じる段差の追従性に優れることが確認された。また、高温多湿下に放置した後の全光線透過度及びヘイズのいずれも優れており、品質において問題ないことが確認された。また、減圧残存率及び硬化収縮率が適性であることから、液状粘着剤組成物に含まれる各種成分の減圧状態下における揮発量が十分に少なく、真空状態での貼り合わせにも対応可能であることが確認された。また、液状粘着剤組成物がガラス基材と、ITOフィルムとの間に配置されている枠状の周縁部内に封入された状態で供給できるため、リワーク性に非常に優れることが確認された(実施例1〜5)。
【0074】
一方、架橋性置換基を有し、質量平均分子量(Mw)が400から5000であるシリコーンオイルの代わりにブタジエン重合体が用いられた場合、液状粘着剤組成物が白く濁っており、品質において劣る可能性があることが確認された(比較例1)。また、シリコーンオイルの代わりにブタジエン重合体が用いられた場合において、品質改善のため、エネルギー線重合型のウレタン(メタ)アクリレートをイソプレン樹脂に置き換えたとしても、25℃における粘度が4000mPa・sを超え、適度な段差追従性及び適度なリワーク性を提供できない可能性があることが確認された(比較例2)。
【符号の説明】
【0075】
1 光学部材
11 液状粘着剤組成物
12 透明前面基板
13 透明導電性膜
14 周縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー線重合型のウレタン(メタ)アクリレートと、エネルギー線重合開始剤と、架橋性置換基を有し、質量平均分子量(Mw)が400から5000であるシリコーンオイルとを含有し、25℃における粘度が1000mPa・s以上4000mPa・s以下である液状粘着剤組成物。
【請求項2】
前記架橋性置換基は、アルコキシ基である請求項1に記載の液状粘着剤組成物。
【請求項3】
前記ウレタン(メタ)アクリレート100質量部に対して、前記シリコーンオイルを10質量部以上100質量部以下含有する請求項1又は2に記載の液状粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1から3いずれかに記載の液状粘着剤組成物が、透明基材と、他の基材との間に配置されている枠状の周縁部内に封入されている光学部材。
【請求項5】
前記透明基材と他の基材との組み合わせが、透明前面基板と透明導電性膜であるか、又は透明導電性膜と液晶基板である請求項4に記載の光学部材。
【請求項6】
タッチパネルに用いられる請求項4又は5に記載の光学部材。
【請求項7】
透明基材又は他の基材から選択される一方の第1基材上に請求項1から3いずれかに記載の液状粘着剤組成物を塗工する塗工工程と、
前記液状粘着剤組成物を介して、前記透明基材又は前記他の基材から選択される他方の第2基材を貼り合わせる貼合工程と、
前記第2基材の上方又は前記液状粘着剤組成物の側方からエネルギー線を照射し、前記第1基材上の周縁に塗工された液状粘着剤組成物が硬化し、他の領域に塗工された液状粘着剤組成物が未硬化である仮硬化の状態にする仮硬化工程と、
を備える光学部材の製造方法。
【請求項8】
前記貼合工程は、減圧下において行う、請求項7に記載の光学部材の製造方法。
【請求項9】
仮硬化後の前記液状粘着剤組成物に対して前記透明基材側からエネルギー線をさらに照射し、前記液状粘着剤組成物を硬化させる請求項7又は8に記載の光学部材の製造方法。
【請求項10】
さらに、湿分及び/又は熱による前記液状粘着剤組成物の硬化を行う請求項9に記載の光学部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−64075(P2013−64075A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203708(P2011−203708)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】