説明

液状組成物

【課題】 本発明は、ヒバ油を安定に水系製品に乳化分散する技術に関するものであり、ヒバ油が容易にかつ安定に乳化又は分散された製品を提供する。
【解決手段】 ヒバ油と親水性界面活性剤及び油脂類又は親油性界面活性剤の3成分を同時に混合して室温で液状の組成物(「本発明プレミックス」と称する)となすことにより、全く予期せざることに、ヒバ油が長期間にわたり分離することなく非常に安定に乳化分散した状態を維持する水性の製品を得ることができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒバ油、親水性界面活性剤及び油脂又は親油性界面活性剤を混合した室温で液状の組成物に関するものであり、ヒバ油を安定に水系製品に乳化分散する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
青森ヒバの木部より水蒸気蒸留によって抽出される天然精油のヒバ油は、その芳香性、抗菌、殺菌、抗カビ及び殺虫性等を活用して各種の養毛剤、洗浄用又は化粧用化粧品、入浴剤、練歯磨等の医薬部外品、食品の鮮度保持包装、植物病害防除及び殺虫剤等の各種雑貨製品等への活用が期待される。この際、この分野の殆どの製品は水を溶媒として用いた液状又は半固形状の形態であること多い。一方、ヒバ油は疎水性なので、水を溶媒として用いた製品に配合した場合は長期間にわたって安定な混合分散状態を保持できない。そのため、親水性界面活性剤やエタノールを用いて分散を安定化する試みが一般になされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、親水性界面活性剤のみの乳化分散力に依存しては満足な乳化分散効果は得られず、また水を避けて溶媒としてエタノールを用いて製品を設計することも可能であるが、実用上で製品自体が危険物的要素を包含することになるので安全性の点からは好ましいことではなく、また使用時にヒバ油の芳香臭のみならずエタノールの消毒剤臭や刺激臭が鼻を刺激する等の欠点がある。更にヒバ油の芳香臭がエタノール臭で阻害されるとともに、殺菌を目的とした場合はエタノール溶液ではスプレー又は塗布のいずれにおいても殺菌対象物にヒバ油は十分に展着されにくい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで本発明者らはヒバ油が容易且つ安定に水を溶媒とする製品中に乳化又は分散できる手段を見出すべく種々な検討を行った。その結果、 ヒバ油と親水性界面活性剤及び油脂類又は親油性界面活性剤の3成分を同時に混合して室温で液状の組成物(以下、「本発明プレミックス」と称する)となすことにより、ヒバ油、親水性界面活性剤及び油脂類又は親油性界面活性剤を個別に水系製品に投入したり、親水性界面活性剤で乳化させたりする通常の手法とは異なり、「本発明プレミックス」を水を溶媒とする製品中に投入した場合には、全く予期せざることに、ヒバ油は長期間にわたり分離することなく非常に安定に乳化分散した状態を維持することができた。即ち、「本発明プレミックス」を用いることによって、ヒバ油が非常に安定に乳化分散された水を溶媒とした製品が容易に得られることを見出した。
「本発明プレミックス」を用いたヒバ油を含む水を溶媒とした製品はエタノールを溶媒とした製品よりも安全であると共にヒバ油のマイルドな芳香臭が長時間持続すると共に殺菌対象に対して良く展着できるので、殺菌効果がより高まった。本発明の組成物は以上の知見に基づいて完成されたものである。
【0005】
「本発明プレミックス」は、ヒバ油と親水性界面活性剤及び油脂類又は親油性界面活性剤とを適宜の重量比で混合して室温で液状の組成物となすことによって得られる。
【0006】
「本発明プレミックス」におけるヒバ油の添加量は特に制限はなく、また「本発明プレミックス」の水性製品に対する添加量も用途ごとの要求に応じて適宜増減する。
【0007】
「本発明プレミックス」を添加する水を溶媒とした製品の種類は特に限定されないが、例えば、化粧品、医薬部外品又は雑貨品に類するものとしては石鹸、クリーム、シャンプー、コンディッショナー、抗フケ液、抗ニキビ液、抗腋臭液、、育毛液、美白剤化粧水、洗浄用化粧料、乳液、パック、ファンデーション、整髪料、養毛料、染毛料、浴用剤等の香粧品製品、水性塗料、防虫・白蟻駆除液、抗菌、防カビ液、防腐剤分散液、農薬乳剤及びエアゾール剤などが挙げられる。
【0008】
ヒバ油は青森ヒバの木部を水蒸気蒸留することによって得られたものであり、組成的には92%の中性油成分(ツヨブセン;86%、パラサイメン,ジヒドロサイメン,セドロール,ウィドロール各6%)及び酸性油成分8%(カルバクロール1.2%,1−ロジン酸1.2%,ヒノキチオール1.0%,β−ドラブリン4.3%)が含まれる。この中で抗菌活性成分のヒノキチオールは極性〜非極性溶媒のいずれにも幅広く溶けるがエタノールには特に可溶性であり、また水に対する溶解度は0.02W/V%程度であり、酸、アルカリ又は塩類の添加により若干溶解度は変動する。更に、水中における各成分の化学的安定性はフェノール性水酸基や発色基なども有するためにpHにも依存する傾向がある。従って余り酸性又はアルカリ性に極端に偏ると不安定であり、酸化が促進されたり着色することがある。従って「本発明プレミックス」を含む水性の製品のpHは少なくとも4.5〜8、より好ましくは5〜7.5、更に好ましくは6〜7の範囲に限定することが好ましい。
【0009】
また「本発明プレミックス」の構成成分である親水性界面活性剤としては、その種類は特に限定しないが、HLB値は極力高いものが望ましい。例えばアルキルアンモニウムクロライド、アルキルピリジニウムクロライド、アルキルベタインなどの陽イオン性および両性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリエチレングリコールジステアレートなどのポリキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエートなどのポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンンソルビット、ポリエチレングリコールモノラウレート、同ステアレート、同オレエート、ポリオキシエチレンステアレート、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体及び、蔗糖脂肪酸エステル類等などの非イオン性界面活性剤、脂肪酸ソーダ石けん、ステアリン酸ソーダ石けんなどの石けん、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩などの陰イオン性界面活性剤が挙げられる。以上のようなものの中から1種または2種以上併用して選択し添加する。この細、添加量は液状組成物に対して1〜60W/W%、より好ましくは2〜50W/W%、更に好ましくは3〜40W/W%である。
【0010】
次に「本発明プレミックス」の構成成分である油脂及び親油性界面活性剤としては、一般に医薬品製剤、医薬部外品、化粧品及び雑貨等に用いられるものであれば特に限定は無い。例えばダイズ油、ゴマ油等の植物油、シリコーン油、スクワラン、ラノリン、ミツロウ、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル及びリノール酸エチル、脂肪酸トリグリセリド等の脂肪酸エステル類、モノカプリル酸プロピレングリコール等の多価アルコール脂肪酸エステル、α−オレフィンオリゴマー、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類等が挙げられ、これらの1種を単独に又は2種以上併用して添加する。その添加量は液状の組成物に対して5〜90W/W%、より好ましくは10〜80W/W%、更に好ましくは15〜70W/W%である。
【0011】
以下、本発明を実施例及び応用例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0012】
次に実施例をあげて本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0013】
鉄以外の材質の攪拌釜またはバットにヒバ油40W/W%、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween80)40W/W%、脂肪酸の炭素数が8〜12近辺の脂肪酸トリグリセリド(ODO油)20W/W%をとり、室温で攪拌混和して均一な液状の「本発明プレミックス」を得る。
【実施例2】
【0014】
鉄以外の材質の攪拌釜またはバットにヒバ油30W/W%、ポリオキシエチレンセチルエーテル35W/W%、ミリスチン酸イソプロピル35W/W%をとり、室温で攪拌混和して均一な液状の「本発明プレミックス」を得る。
【実施例3】
【0015】
鉄以外の材質の攪拌釜またはバットにヒバ油30W/W%、ポリオキシエチレンソルビタンジステアレート40W/W%、ODO油30W/W%をとり、室温で攪拌混和して均一な液状の「本発明プレミックス」を得る。
【実施例4】
【0016】
鉄以の材質の攪拌釜またはバットにヒバ油30W/W%、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル30W/W%、流動パラフィン40W/W%をとり、室温で攪拌混和して均一な液状の「本発明プレミックス」を得る。
【実施例5】
【0017】
鉄以外の材質の攪拌釜またはバットにヒバ油20W/W%、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート40W/W%、モノカプリル酸プロピレングリコール20W/W%、プロピレングリコールW/W%をとり、室温で攪拌混和して均一な液状の「本発明プレミックス」を得る。
【実施例6】
【0018】
鉄以外の材質の攪拌釜またはバットにヒバ油10W/W%、ヒノキチオール10W/W%、ヒノキチオールの銅イオン結合体10W/W%、Tween80の40W/W%、カプリル酸プロピレングリコール30W/W%をとり、室温で攪拌混和して均一な液状の「本発明プレミックス」を得る。
【実施例7】
【0019】
鉄以外の材質の攪拌釜またはバットにヒバ油30W/W%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体(HCO−60)30W/W%、Span85の20W/W%のODO油20W/W%をとり、室温で攪拌混和して均一な液状の「本発明プレミックス」を得る。
【応用例1】
【0020】
シャンプー
ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムの25%水溶液35質量部、ラウリル硫酸ナトリウムの30%水溶液10質量部、アルキルアルカノールアミド4質量部、グリセリン1質量部、エデト酸ナトリウム0.2質量部、パラオキシ安息香酸メチル0.3質量部の均一な混合溶液を調製する(A液)。次にメチルセルロース400の4質量%水溶液を調製する(B液)。更に実施例1の「本発明プレミックス」を調製する(C液)。次に、鉄以外の材質の撹拌釜にA液の50.5質量部をとり、これにB液の10容量部と精製水38.5質量部を添加混合する。次にこの混合液にC液1質量部を添加撹拌し均一なpH5.8の乳化液とする。この乳化液において、ヒバ油は室温3年保存後分離せず安定に乳化状態を維持した。
【応用例2】
【0021】
リンス
パーソナルケア用シリコーン3.3質量部、流動パラフィン1.1質量部、セチルアルコール1.7質量部、ステアリルアルコール1.1質量部、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム0.8質量部、グリセリン5.6質量部、パラオキシ安息香酸メチル0.2質量部、及びエチレンジアミン4酢酸2ナトリウム0.2質量部を精製水84質量部に加え70℃で加熱しつつ急速に撹拌して均一な乳化液を得る(A液)。次に実施例2の「本発明プレミックス」を調製する(B液)。鉄以外の材質の撹拌釜またはバットにA液の98質量部をとり、これにB液の2質量部を添加拌し均一なpH6.5の乳化液とする。この乳化液において、ヒバ油は室温3年保存後分離せず安定に乳化状態を維持した。
【応用例3】
【0022】
化粧水
クレワットNの0.5質量、メチルセルロース400の0.2質量部、クインシード0.1質量部、ソルビット4質量部、ジプロピレングリコール6質量部、ポリエチレングリコール1500の5質量部、アルコール10部、フェノキシエタノール0.3質量部、POE(20)オレイルアルコールエーテルの0.5質量部を精製水55.6質量部に均一に溶解する(A液)。次に実施例3の「本発明プレミックス」を調製する(B液)。鉄以外の材質の撹拌釜またはバットにA液の98質量部をとり、これにB液の2質量部を添加拌し均一なpH7.1の乳化液とする。この乳化液において、ヒバ油は室温3年保存後分離せず安定に乳化状態を維持した。
【応用例4】
【0023】
ボディシャンプー
ラウリル硫酸トリエタノールアミン40%水溶液40質量部、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムの25%水溶液25質量部、アルキルアルカノールアミド5質量部、プロピレングリコール5質量部、エデト酸ナトリウム0.2質量部、パラオキシ安息香酸メチル0.3質量部及び精製水22.5質量部の均一な混合溶液を調製する(A液)。次に実施例4の「本発明プレミックス」を調製する(B液)。鉄以外の材質の撹拌釜またはバットにA液の98質量部をとり、これにB液の2質量部を添加拌し均一なpH6.8の乳化液とする。この乳化液において、ヒバ油は室温3年保存後分離せず安定に乳化状態を維持した。
【応用例4】
【0024】
エモリエントクリーム
ホモミキサー中でステアリルアルコール4質量部、ステアリン酸8質量部、ステアリン酸ブチル6質量部及びステアリン酸グリセリン2質量部を70℃で混合融解して置き、これに「本発明プレミックス」を2質量部、プロピレングリコール5質量部、パラオキシ安息香酸メチル0・4質量部、水酸化カリウム0.4質量部及び精製水72.2質量部を加えて70℃で乳化させ、脱気、冷却して任意の容器に充てんして製品とする。このクリームにおいて、ヒバ油は室温3年保存後も分離せず安定に混和状態を維持した。
【発明の効果】
【0025】
実施例1〜7の「本発明プレミックス」を水性の製品に添加することにより、いずれもヒバ油が均一で安定に乳化分散状態ものが得られた。即ち、「本発明プレミックス」を水を溶媒とする製品中に混合した場合には、ヒバ油は長期間にわたり分離することなく安定に乳化又は分散した均一な混合状態を維持し、均一で安定な水を溶媒とする水性の製品を容易に与えることが明らかである。この様にして得られたヒバ油を含む水を溶媒とした製品はエタノールを溶媒とした製品よりも安全であると共にヒバ油のマイルドな芳香臭が長時間持続すると共に殺菌対象に対しても良く展着できるので、殺菌効果がより高まることが期待できる。
以上により、本発明の組成物は安価な手法で水を溶媒とする抗フケ剤、抗ニキビ剤、抗腋臭剤、育毛剤、美白剤化粧水、洗浄用化粧料、クリーム、乳液、パック、ファンデーション、整髪料、養毛料、染毛料、浴用剤等の香粧品製品、水性塗料、防虫・白蟻駆除剤、抗菌、防カビ剤、防腐剤、農薬乳剤、水溶剤、フロアブル製剤、エアゾール剤、その他の工業製品などへの適用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒバ油、親水性界面活性剤及び油脂又は親油性界面活性剤を混合した室温で液状の組成物。
【請求項2】
油脂が脂肪酸トリグリセリドである請求項1の組成物。
【請求項3】
請求項1の組成物を含む化粧品、医薬部外品又は雑貨品。
【請求項4】
pHが4.5〜8である請求項2の化粧品、医薬部外品又は雑貨品。

【公開番号】特開2008−81481(P2008−81481A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288075(P2006−288075)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(302068988)ヒバ開発株式会社 (1)
【Fターム(参考)】